JP2001112313A5 - - Google Patents

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【書類名】 明細書
【発明の名称】 田植機
【特許請求の範囲】
請求項1】 ステアリングハンドルの左右一方側に苗植付部の駆動入・切及び昇降を行うための操作レバーをステアリングハンドルを握ったまま操作可能に設けるとともに、ステアリングハンドルの左右他方側に機体移動速度の調節を行うための操作レバーを設けたことを特徴とする苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、苗移植機における各種操作レバーの配置に関する。
【0002】
【従来の技術】
田植機等の苗移植機には、ギヤ式主変速装置のシフト位置を切り替える主変速レバー、ベルト式又は油圧式副変速装置の速度調節を行う副変速レバー、苗植付部の駆動入・切及び昇降を行う植付昇降レバー、昇降制御の感度を調節する感度調節レバー等の複数の操作レバーが設けられている。従来の苗移植機の多くは、前記副変速レバーと前記植付昇降レバーが操縦席に対して左右同じ側に配置されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
畦際等で苗移植機を旋回させる際には、苗植付部を上昇させて苗植付けを停止するとともに、機体の移動速度を通常の植付作業速よりも低速にする。一般的に苗移植機は、苗植付部が上昇すると移動速度が自動的に減速する自動減速機構が設けられており、旋回開始時には副変速レバーを操作する必要がないが、旋回終了時には手動で副変速レバーを操作して通常の作業速度に戻すようになっている。これは、旋回終了直後、苗植付け条を揃えるための進路調節いわゆる条合わせを行う間、低速のまま保持できるようにするためである。
【0004】
したがって、旋回終了時には、植付昇降レバーを植付「切」位置から植付「入」位置へ操作し、条合わせを行った後、すぐに副変速レバーを増速操作することとなる。このとき、植付昇降レバーと副変速レバーが左右同じ側に設けられていると、植付昇降レバーを握っていた手を操作終了後、急いで副変速レバーに持ち替えなければならず、レバー操作に混乱を来すことがある。
【0005】
本発明は、上記のようなレバー操作の混乱が起きにくく、誰でも容易に正確なレバー操作が行えるようにすることを課題とするものであり、これを達成するために次に記す構成とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明にかかる苗移植機は、ステアリングハンドルの左右一方側に苗植付部の駆動入・切及び昇降を行うための操作レバーをステアリングハンドルを握ったまま操作可能に設けるとともに、ステアリングハンドルの左右他方側に機体移動速度の調節を行うための操作レバーを設けたことを特徴としている。
【0007】
このように苗植付部の駆動入・切及び昇降を行うための操作レバーと、機体移動速度の調節を行うための操作レバーを左右に振り分けて配置すると、上記2系統のレバーを間違えることがなく、レバー操作に混乱が生じない。また、ステアリングハンドルの左右一方側に設けた苗植付部の駆動入・切及び昇降を行うための操作レバーは、ステアリングハンドルを握ったまま操作可能であるので、ステアリングハンドルを握ったままで、2系統のレバーを左右両手で同時に操作することができる。
【0008】
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1及び図2は苗移植機としての田植機を表している。この田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して6条植の苗植付部4が昇降可能に装着されている。また、走行車体2の前部左右両側には、予備苗載台5,5が拡張状態と収納状態に回動可能に設けられている。
【0010】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該前輪ファイナルケースの変向可能な前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0011】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、エンジン出力軸20aに取り出されるエンジン回転動力は、まずベルト伝動装置21によって油圧ポンプ22の駆動軸22aへ伝達され、次いで油圧ポンプ駆動軸22aからベルト式副変速装置23によってミッションケース入力軸12aへ伝達される。ミッションケース12の入力部には主クラッチが設けられている。
【0012】
ミッションケース12に入力された回転動力は、主変速装置により変速された後、走行動力と外部取出動力に分離される。走行動力の一部は前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動し、残りは後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。後輪への伝動系統には、左右それぞれに後輪ブレーキ装置が設けられている。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝達される。
【0013】
エンジン20の上部はエンジンカバー28で覆われており、その上に座席29が設置されている。座席29の前方には各種操作機構が収容されたフロントカバー30があり、その上方に前輪10,10を操向するステアリングハンドル31が設けられている。また、座席29及びフロントカバー30の周辺部には、後述する各種操作具が設けられている。
【0014】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40及び左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設したリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に連結枠43が枢結されている。そして、その連結枠43に苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム6に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム44の先端部との間に昇降用油圧シリンダ45が介装されており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。昇降用油圧シリンダ25は、リンクベースフレーム42に取り付けた油圧バルブ46によって制御する。
【0015】
苗植付部4は6条植えの構成となっていて、フレームを兼ねる伝動ケース50に、6条分の苗を載せておく苗載台51、該苗載台上の苗を水田面に植え付ける6組の植付装置52,…、植付作業時に次行程における機体進路の左右中心を表土面に線引きする左右一対で1組の線引きマーカ53,53等が組み付けられている。苗植付部4の下側には整地用のセンターフロート54及びサイドフロート55,55が設けられ、これらフロートを水田の泥面に接地させた状態で機体を進行させると各フロートが泥面を整地しつつ滑走する。センターフロート54は水田表土面の凹凸を検出するための接地体でもあり、植付作業時には、センターフロート54によって検出される水田表土面の凹凸に基づいて前記制御バルブ46を駆動することにより、苗の植付け深さを常に一定に維持するように苗植付部4を昇降制御する。
【0016】
走行車体2には次の操作具が設けられている。図中の符号60は主変速装置を操作する主変速レバー、61はスロットルバルブを操作するスロットルレバー、62は苗植付部の駆動入・切及び昇降を操作をする植付昇降レバー、63は副変速装置を操作する副変速レバー、64は苗植付部の昇降制御感度を調節する感度調節レバー、65は主変速を後進にしたとき苗植付部を自動的に上昇させる機能を入・切するバックリフトレバー、66は主クラッチを入・切する主クラッチペダル、67L,67Rは左右の後輪ブレーキ装置を個別に操作する後輪ブレーキペダルである。
【0017】
主変速レバー60は、フロントカバー30の左側面に配置され、前から後に向けて「路上走行速」「中立」「植付走行速」「後進速」の各シフト位置が設けられている。植付作業時に誤って「路上走行速」になると危険であるので、図3に示すように、「路上走行速」にシフトされるのを規制するストッパ70を設けておくとよい。このストッパ70は、操作パネル71の上方に突出しているハンドル70aをつかんで手動で回動操作し、「路上走行速」を規制する状態(実線で示す)と規制しない状態(鎖線で示す)とを切り替えるようになっている。「路上走行速」を規制する状態のときにはハンドル70aが操作パネル71の外側面よりも内側に引っ込むようになっているので、圃場内での作業中に、苗補給等のためオペレータがフロントカバー30の左側方を歩行するときにストッパのハンドル70aが邪魔にならない。
【0018】
植付昇降レバー62は、ステアリングハンドル31の右側近傍に設けられ、右手でステアリングハンドル31を握りながら指で操作するようになっている。例えば、「上げ」「中立」「下げ」「植付」の各位置が設定されていて、レバーの操作位置に応じて昇降用油圧バルブ46と植付クラッチ25を作動させる。植付昇降レバー62が「中立」のときは油圧バルブ46が中立の状態にあり、「上げ」にすると苗植付部4を上昇させる側に油圧バルブ46が切り替わり、「下げ」にすると苗植付部4を下降させる側に油圧バルブ46が切り替わる。植付昇降レバー62を「植付」にすると、前記センターフロート54によって検出される苗植付部4の対地高さの変化に応じ、苗植付部4を常に一定高さに保つように油圧バルブ46を切り替える。この昇降制御の感度は感度調節レバー64によって調節する。また、植付昇降レバー62が「植付」に操作されているときは植付クラッチ入となり、「植付」以外に操作されているときは植付クラッチ切となる。
【0019】
副変速レバー63は、操縦席29の左側に設けられていて、副変速装置23を複数段階、例えば4段階に変速操作できるようになっている。通常、圃場での直進作業時には「最低速」よりも高速域にし、旋回時には「最低速」にする。副変速レバー63の操作とは別に、苗植付部4の上昇に連動して副変速装置23を「最低速」まで減速する自動減速機構が設けられている。
【0020】
この田植機のレバー配置に関し、機体移動速度の調節を行うための操作レバーである主変速レバー60及び副変速レバー63は操縦席29の左右中心よりも左側に配置され、苗植付部の駆動入・切及び昇降を行うための操作レバーである植付昇降レバー62及び感度調節レバー64は操縦席29の左右中心よりも右側に配置されている。なお、スロットルレバー61は機体移動速度の調節を行うための操作レバーであるが、このスロットルレバー61は植付作業時には使用しないので例外としている。
【0021】
この田植機1は、植付作業時には、フロート54,55,55が接地する高さに苗植付部4を保持して苗植付部4を駆動するとともに、適正速度で機体を移動させる。これにより、フロート54,55,55によって整地された泥面に苗が植付けられる。畦際まで植付けを行ったならば、植付昇降レバー62を上方に回動操作し、苗植付部4を駆動停止かつ上昇させる。この苗植付部4の上昇に伴い、副変速が「最低速」に自動的に減速される。そして、ステアリングハンドル11を操作して機体を旋回させる。
【0022】
旋回が終了したなら、ステアリングハンドル11を握った状態のまま右手の指で植付昇降レバー62を操作し、植付作業を再開する。旋回終了直後は、機体の進路を線引きマーカ53によって圃場に引かれたラインに合わせるようにステアリングハンドル11を操作して、条合わせを行う。そして、条合わせが完了したなら、左手で副変速レバー63を操作して旋回前の移動速度まで増速する。このように、旋回開始前から旋回終了後まで右手はステアリングハンドル11を握ったままであるので、旋回を安全かつ確実に行える。また、植付昇降レバー62と副変速レバー63を左右別の手で操作するので、迅速なレバー操作ができる。
【0023】
図4は植付昇降レバー62の近傍に簡易増速手段を設けた構成をあらわしている。この構成では、植付昇降レバー62は上下操作するように設けられ、下に操作すると植付「入」、上に操作すると植付「切」となっている。そして、植付昇降レバー62の下方のメータパネル面に、一度押すと副変速が増速し、もう一度押すか最高速になると副変速の増速が停止する簡易増速手段としての増速ボタン72が設けられている。この位置に増速ボタン72があると、旋回終了時に植付作業を再開するため植付昇降レバー62を下方に回動させたとき、そのまま増速ボタン72を押すことができる。このため、条合わせ後の増速操作を一連の操作のなかで行え、旋回終了時の操作性がさらに向上する。
【0024】
上記第一例の田植機は、副変速装置としてベルト式変速装置を、苗植付部の駆動入切及び昇降を行うための操作レバーしてメカ式の植付昇降レバーを装備したタイプのものである。この第一例のタイプ以外に、副変速装置として油圧式無段変速装置を装備したタイプのもの、苗植付部の駆動入・切及び昇降を行うための操作レバーとしてマイコン制御式のフィンガレバーとメカ式の植付昇降レバーを併用したタイプのものがある。これらのタイプについては、図5、図6、図7に示すレバー配置とするとよい。
【0025】
図5に示す第二例は、フロントカバー30の左側に主変速レバー60、操縦席29の左側にベルト式変速装置用副変速レバー63、ステアリングハンドル31の右側近傍にマイコン制御式のフィンガレバー75、操縦席29の右側にメカ式の植付昇降レバー62が配置されている。
【0026】
図6に示す第三例は、フロントカバー30の左側に主変速レバー60、操縦席29の左側に油圧式無段変速装置用副変速レバー76、ステアリングハンドル31の右側近傍にメカ式の植付昇降レバー62、操縦席29の右側に感度調節レバー64が配置されている。
【0027】
図8に示す第四例は、フロントカバー30の左側に主変速レバー60、操縦席29の左側に油圧式無段変速装置用副変速レバー76、ステアリングハンドル31の右側近傍にマイコン制御式のフィンガレバー75、操縦席29の右側にメカ式の植付昇降レバー62が配置されている。
【0028】
上記第二例〜第四例についても、機体移動速度の調節を行うための操作レバーである主変速レバー60、及び副変速レバー63,76は操縦席29の左右中心よりも左側に配置され、苗植付部の駆動入切及び昇降を行うための操作レバーである植付昇降レバー62,フィンガレバー75及び感度レバー64は操縦席29の左右中心よりも右側に配置されている。このため、2系統の操作レバー間で操作上の混同が生じず、正確なレバー操作を行える。
【0029】
第二例及び第四例のようにマイコン制御式のフィンガレバー75とメカ式の植付昇降レバー62を具備した苗移植機における両レバーの関係は次のようになっている(図8参照)。
【0030】
植付昇降レバー62は、第一例及び第三例のように単独で設けられている場合と同様に、「上げ」「中立」「下げ」「植付」の各操作位置が設定されている。図8の図示例では、これらの操作位置が、位置決めカム78と該カムに係合するローラ79との組み合わせで位置決めされる。植付昇降レバー62の位置を検出センサ80と植付昇降レバー62を回動させるモータ81が設けられていて、フィンガレバー65を操作すると、それに対応する位置まで植付昇降レバー62が移動するようになっている。
【0031】
植付昇降レバー62を手動で操作する場合は、植付昇降レバー62をレバー軸62aの軸心方向にスライドさせ、上記センサ80及びモータ81との連結を解除してから行う。また、植付昇降レバー62は伸縮可能になっていて、ほとんど操作することのない植付作業時には、植付昇降レバー62を短くして他の作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0032】
図9はさらに異なるレバー配置を表している。この第五例は、フロントカバー30の左側に主変速レバー60、操縦席29の左側に副変速レバー63(又は76)、操縦席29の右側にメカ式の植付昇降レバー62、ステアリングハンドル31の右側近傍のパネル面に感度調節レバー64が配置されている。
【0033】
上記位置に感度調節レバー64を設ける場合、図10に示すように、該レバーを前方に操作するほど制御感度が「敏感」となり、後方に操作するほど制御感度が「鈍感」となるように構成すると良い。その理由は、一般的に田植機は比較的軟弱な圃場で使用されることが多いので、軟弱な圃場に適した「敏感」側の操作位置を前方にすることにより、感度調節レバー64がオペレータの膝等に当たることを未然に防げるからである。
【0034】
また、機構上、感度調節レバー64はいずれかの側に操作するほどレバー荷重が大きくなるが、そのレバー荷重の大きい側を「鈍感」(圃場硬)側とすると、人の感性になじみ易く、操作間違いが生じにくくなる。
【0035】
さらに、スロットルレバー61の操作時等に誤って感度調節レバー64に触れた場合に感度調節レバー64がずれないように、レバーガイド82のレバー位置決め凹部82a,…をレバー64に対し左右内側に設けるのが良い。
【0036】
【発明の効果】
以上説明の如く、本発明にかかる苗移植機は、苗植付部の駆動入・切及び昇降を行うための操作レバーと、機体移動速度の調節を行うための操作レバーが左右に振り分けて配置されているので、レバー操作の混乱が生じにくい。しかも、ステアリングハンドルの左右一方側に設けた苗植付部の駆動入・切及び昇降を行うための操作レバーは、ステアリングハンドルを握ったまま操作可能であるので、ステアリングハンドルを握ったままで、2系統のレバーを左右両手で同時に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レバー配置の第一例を採用した田植機の側面図である。
【図2】図1に示す田植機の平面図である。
【図3】主変速レバーの(a)平面図、及び(b)側面図である。
【図4】植付昇降レバーと増速ボタンの斜視図である。
【図5】レバー配置の第二例を示す図である。
【図6】レバー配置の第三例を示す図である。
【図7】レバー配置の第四例を示す図である。
【図8】植付昇降レバーの斜視図である。
【図9】レバー配置の第五例を示す図である。
【図10】感度調節レバーの(a)平面図、及び(b)側面図である。
【符号の説明】
1 田植機
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 苗植付部
23 副変速装置
60 主変速レバー
62 植付昇降レバー
63 ベルト式変速装置用副変速レバー
64 感度調節レバー
75 フィンガレバー
76 油圧式無段変速装置用副変速レバー
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