JP2001084942A - 走査電子顕微鏡 - Google Patents

走査電子顕微鏡

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 インレンズ方式の走査電子顕微鏡において、
試料像(二次電子像)観察とX線分析のどちらも低倍率
モードによる観察を行えるようにする。 【解決手段】 対物レンズ電流を0もしくは弱励磁に設
定する第一低倍率モードと、対物レンズ電流を加速電圧
の平方根に比例する大きさの電流値に変化させて設定す
る第二低倍率モードを設け、通常の試料像(二次電子
像)観察は第一低倍率モードで行い、X線分析時は第二
低倍率モードに切り替える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走査電子顕微鏡に
関し、特に試料の拡大像(高倍率像)と全体像(低倍率
像)を効率よく観察するのに好適な走査電子顕微鏡に関
する。
【0002】
【従来の技術】走査電子顕微鏡においては、従来より高
い分解能の走査像を得るために、例えば対物レンズの磁
極間に試料を配置して走査像を得るインレンズ方式に代
表されるように、対物レンズを非常に短い焦点距離で使
用している。対物レンズを短焦点で使用し高倍率で試料
の観察を行う場合、対物レンズに起因する歪みや走査領
域周辺での一次電子線のビーム径拡大を防止するため
に、一次電子線走査のための偏向コイルを光軸に沿って
2段に配置し、一次電子線の偏向支点が対物レンズの主
面近傍になるようにして、一次電子線を走査するレンズ
制御方法とする(高倍率モード)。一方、こうした高倍
率での観察に移行する前段階としての低い倍率での視野
探し、及び試料の全体像などを低倍率で観察する場合
は、一次電子線を広い領域(倍率の低い状態)まで走査
できるように対物レンズの励磁電流を0又は、弱励磁状
態にし、偏向コイルを1段、あるいは、偏向支点と試料
面との距離を高倍率モードよりも長くなるように設定さ
れた2段の偏向コイルで一次電子線を試料上で走査する
レンズ制御方法とする(低倍率モード)。このように、
観察倍率によって2つの倍率モードを切り替えて高い倍
率から低い倍率まで広い倍率範囲での観察を行えるよう
にしていた。
【0003】さて、走査電子顕微鏡を用いた試料のX線
分析では、一次電子線の走査範囲(視野)より発生する
X線を検出し、X線スペクトルにより視野内の構成元素
を同定したり、構成元素が視野内でどのように分布して
いるか(X線マッピング像)等の情報を収集する。特に
X線マッピング像では高倍率観察による試料の局所的な
元素マッピングから低倍率観察による試料の全体的な元
素マッピングまでが求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】走査電子顕微鏡におい
てX線観察を行う場合、試料の近傍にX線検出器を配置
することができれば、X線の取り出し角を大きくするこ
とができ高効率なX線分析を行うことができる。しか
し、X線と同じく一次電子線の照射により試料から発生
する反射電子がX線検出器の検出面に入射すると誤差や
故障の原因となるため、これを避けなければならない。
【0005】インレンズ方式のように試料が対物レンズ
磁場の中に配置される場合、対物レンズを強励磁で使用
する高倍率モードでは、対物レンズ磁場によって反射電
子の軌道はX線検出器の検出面よりそれるため、X線分
析が可能となる。しかし、対物レンズの励磁電流を0も
しくは弱励磁にする低倍率モードでは、反射電子の軌道
をX線検出器の検出面よりそらすほどの対物レンズ磁場
を発生させることができないため、X線分析が困難であ
った。
【0006】低倍率モードにおいてX線観察を行う手段
としては、X線検出器を移動させて反射電子の軌道を避
ける手段や、検出面に磁石を配置して反射電子の軌道を
そらす手段等があるが、インレンズ方式では構造上採用
が困難である。
【0007】本発明の目的は、試料像(二次電子像)の
観察に適した従来の低倍率モードに加え、X線観察可能
な低倍率モードを設定し、これらを切り替えることによ
って、広い視野でのX線分析、特にX線マッピング像を
得ることのできる走査電子顕微鏡を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明では、対物レンズ電流を0もしくは弱励磁に設
定する第一低倍率モードと、対物レンズ電流を使用する
加速電圧の平方根に比例する大きさの電流値に変化させ
て設定する第二低倍率モードとを設け、通常の試料像
(二次電子像)の観察時には第一低倍率モードに、X線
分析時には第二低倍率モードに替えるようにした。
【0009】すなわち、本発明による走査電子顕微鏡
は、電子源と、電子源から放出された一次電子線を集束
する第一の集束レンズと、第一の集束レンズで集束され
た一次電子線の不要領域を除去する対物レンズ絞りと、
対物レンズ絞りを通過した一次電子線を集束する第二の
集束レンズと、第二の集束レンズで集束された一次電子
線を試料に集束するための対物レンズと、一次電子線を
試料上に走査する偏向手段と、電子線照射によって試料
から放出された二次電子を検出する二次電子検出器と、
試料から放出されたX線を検出するX線検出器とを備え
る走査電子顕微鏡において、走査像の倍率が予め設定さ
れた値より大きいときは対物レンズで一次電子線を試料
上にフォーカスする(高倍率モード)とともに走査像の
倍率が予め設定された値より小さいときは第二の集束レ
ンズで一次電子線を試料上にフォーカスする(低倍率モ
ード)機能を有し、低倍率モードのとき、対物レンズの
励磁電流を一次電子線の加速電圧によらず一定値とする
第一低倍率モードと、励磁電流を一次電子線の加速電圧
の関数として変化させる第二低倍率モードとが選択可能
であることを特徴とする。
【0010】対物レンズ絞りは、一次電子線の試料上で
の集束角度(開口)を制限する。また、プローブ電流の
制御は第一の集束レンズの集束条件を制御して行われ
る。第一の集束レンズあるいは第二の集束レンズは、一
段のレンズで構成されていてもよいし複数段のレンズに
よって構成されていてもよい。試料は対物レンズのレン
ズ磁界中に配置される。この種の対物レンズとしては、
インレンズと呼ばれるタイプの対物レンズあるいはシュ
ノーケルレンズと呼ばれるタイプの対物レンズがある。
【0011】第一低倍率モードは対物レンズの励磁電流
を0又は弱励磁に設定する。換言すると、第一低倍率モ
ードは対物レンズの励磁電流を二次電子の検出効率が低
下しない最小の対物レンズ励磁電流、又は観察倍率に対
して最大視野が得られる対物レンズ励磁電流に設定す
る。また、第二低倍率モードにおける対物レンズの励磁
電流は、一次電子線の加速電圧の平方根に比例するよう
に設定する。
【0012】第一低倍率モードと第二低倍率モードは、
低倍率観察における観察倍率の設定値に連動して自動的
に切り替えるように構成することができる。第一低倍率
モードは第二低倍率モードに比べて対物レンズ励磁電流
が少なく、明るさ領域が広い(より低い倍率での観察が
可能)。従って、走査電子顕微鏡に予め観察倍率の閾値
を設定しておき、所望の観察倍率が閾値より低い場合に
は第一低倍率モード、閾値より高いときには第二低倍率
モードに切り換えるようにすれば、観察倍率範囲が広く
なる。例えば、像回転角補正が容易である点、X線観察
が可能である点から、通常の低倍率観察時は第二低倍率
モードを選択し、更に低倍率で観察を行いたい場合に自
動的に第一低倍率モードに切り換えるような利用法が可
能である。
【0013】また、試料像の明るさ及びコントラストの
設定値を、高倍率モード、第一低倍率モード、第二低倍
率モードでそれぞれ独立に記憶する記憶手段を有し、倍
率モードの切り替えに連動して各倍率モードの明るさ及
びコントラスト設定値を記憶手段に記憶された値に自動
的に設定するように構成するのが好ましい。
【0014】偏向手段は一次電子線の走査方向を制御す
る機能を有し、高倍率モード、第一低倍率モード、第二
低倍率モードの切り替えに連動して走査方向を制御する
のが好ましい。偏向手段による走査方向の制御は、は試
料上での一次電子線の走査方向が試料ステージのX方向
とほぼ一致するよう制御するのが好ましい。
【0015】本発明による走査電子顕微鏡を用いて試料
観察を行う場合、第一低倍率モードにおける対物レンズ
励磁電流設定値を通常は弱励磁とし、試料の走査像を記
録するときは0に切り替えるようにすることができる。
試料の走査像記録は、ディスプレイに表示された像を撮
影することによって、あるいは走査像の画像をファイル
として記憶したり、出力することによって行われる。本
発明による走査電子顕微鏡を用いて試料観察を行う場
合、低倍率モードでのX線マッピング像の観察は第二低
倍率モードにて行う。
【0016】また、本発明による走査電子顕微鏡は、電
子源と、電子源から放出された一次電子線を集束する第
一の集束レンズと、第一の集束レンズで集束された一次
電子線の不要領域を除去する対物レンズ絞りと、対物レ
ンズ絞りを通過した一次電子線を集束する第二の集束レ
ンズと、試料の位置に磁界を発生することができ第二の
集束レンズで集束された一次電子線を試料に集束するた
めの対物レンズと、一次電子線を試料上に走査する電子
線偏向手段と、電子線照射によって試料から発生された
X線を検出するX線検出器とを備え、試料のX線マッピ
ング像を得ることのできる走査電子顕微鏡において、走
査像の倍率が予め設定された値よりも大きいときは対物
レンズで一次電子線を試料上にフォーカスして走査し、
走査像の倍率が予め設定された値よりも小さいときは、
第二の集束レンズで一次電子線を試料上にフォーカスし
て走査するとともに対物レンズの励磁電流を弱励磁とし
て試料からの反射電子がX線検出器に入射するのを防止
することを特徴とする。ここで、走査像の倍率が予め設
定された値よりも小さいとき、対物レンズの励磁電流を
一次電子線の加速電圧の平方根に比例させて変化させ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施例を用いて、詳
細に説明する。図1は、本発明による走査電子顕微鏡の
一例を示す概略図である。電子源1内の陰極2と第一陽
極3との間には、高圧制御電源11により引き出し電圧
が印加され、陰極2から一次電子線5が放出される。こ
の一次電子線5は、高圧制御電源11により、陰極2と
第二陽極4との間に印加された電圧で加速されて、後段
のレンズ系に進行する。一次電子線5は、その後、レン
ズ制御電源13から給電される第一の集束レンズ6(C
1レンズ)にて集束され、対物レンズ絞り7を通過する
ことにより、ビームの不要な領域が除去される。対物レ
ンズ絞り7を通過した一次電子線5は、レンズ制御電源
15から給電される第二の集束レンズ8(C2レンズ)
にて集束された後、対物レンズ駆動電源18で駆動され
る対物レンズ10によって試料26上に集束される。C
2レンズ8と対物レンズ10との間には、走査電源16
によって駆動される二段の偏向コイル9a,9bが配置
されており、この偏向コイル9a,9bにより、一次電
子線5は試料26上を2次元的に走査される。ビームア
ライメントコイル制御電源12によって駆動されるビー
ムアライメントコイル22は、一次電子線の軌道を磁気
的に修正する(光軸の調整)ためのコイルであり、非点
補正コイル制御電源14によって駆動される非点補正コ
イル23は、非点収差による像の歪みを磁気的に修正す
るためのコイルである。
【0018】試料26から発生する二次電子24は、対
物レンズ10を通過し、対物レンズ上部に配置した直交
電磁界発生器27で二次電子検出器側に偏向されて、二
次電子検出器25で検出される。直交電磁界発生器27
では、光軸と電界、磁界とが互いに直交する場が作られ
ており、一次電子線に対しては偏向作用を与えずに、ま
た、一次電子線5と逆向きに進行する二次電子24に対
しては、二次電子検出器25の方向に偏向するように電
界と磁界の強さが設定されている。二次電子検出器25
の検出信号は信号増幅器41で増幅され、信号処理手段
20を経てCRT21上に試料像として表示されるとと
もに、必要に応じて画像メモリ28に画像信号として記
憶される。
【0019】通常の高分解能観察(高倍率モード)で
は、このように対物レンズ10により一次電子線5を試
料上に集束するが、特に対物レンズ10と試料26との
距離が短い高分解能観察条件においては、偏向支点から
試料26までの距離も短くなるため、高倍率モードで得
られる最大観察視野(走査領域)を広くできない。この
ため、更に観察視野を広げたい場合には、偏向コイルを
一段走査に切り替えて試料26上の走査領域を拡大す
る。このとき、対物レンズ10の励磁が高倍率モードの
ように強励磁では、レンズ収差のために表示画像が大き
く歪むために、対物レンズ10の励磁を0もしくは弱励
磁状態にして、C2レンズ8を用いて一次電子線5を試
料上に集束させる(第一低倍率モード)。
【0020】また、X線分析では、試料26より発生す
るX線32は試料近傍に配置されたX線検出器33の検
出面に入射し、X線検出器33の検出信号は信号増幅器
42で増幅され、信号処理手段20を経てCRT21上
にX線スペクトル及びX線マッピング像として表示され
る。通常の高分解能観察では二次電子像の観察時と同じ
くレンズ制御を高倍率モードとするが、高倍率モードで
得られる最大観察視野より広い視野でX線観察を行う場
合は、対物レンズ10の励磁電流を加速電圧の平方根に
比例する電流値に設定して、C2レンズ8を用いて一次
電子線5を試料上に集束させる(第二低倍率モード)。
【0021】前記各電源11〜18はCPU19により
制御される。CPU19は信号処理手段20も制御す
る。また、CPU19には、高倍率モード専用のメモリ
(記憶領域)29及び低倍率モード専用のメモリ(記憶
領域)30が接続されている。高倍率モード専用のメモ
リ29には、高倍率モードで試料像を観察する際の試料
像の明るさ及びコントラストに対する信号増幅器41及
び信号処理手段20の設定値が格納され、低倍率モード
専用のメモリ30には第一低倍率モードで試料像を観察
する際の試料像の明るさ及びコントラストに対する信号
増幅器41及び信号処理手段20の設定値、及び第二低
倍率モードで試料像を観察する際の試料像の明るさ及び
コントラストに対する信号増幅器41及び信号処理手段
20の設定値がそれぞれ格納されている。
【0022】次に、第一低倍率モードと第二低倍率モー
ドについて説明する。図2は低倍率モードにおける対物
レンズ励磁電流と二次電子検出効率/明るさ領域との関
係を示す図、図3は対物レンズ磁場の有無と反射電子の
軌道を示す図、図4は反射電子がX線検出面に入射した
時にX線検出器で検出されるX線スペクトルの説明図で
ある。
【0023】一般的に、レンズ制御において対物レンズ
の励磁電流を変化させると、二次電子の検出信号量と像
の明るさ領域は図2のように変化する。二次電子の検出
信号量は試料像の明るさを表し、対物レンズ電流を大き
くするほど、対物レンズ磁場の巻き上げ効果によって検
出信号量が増え、明るい像が得られるが、ある電流値で
集束に達する。一方、像の明るさ領域は像の最低倍率を
決定するもので、励磁電流が0の時には最も広視野で明
るさムラのない試料像が得られが、対物レンズ電流が大
きくなると明るさ領域は小さくなり像の周辺が暗くな
る。
【0024】そのため、第一低倍率モードでの対物レン
ズ励磁電流値は、二次電子の検出信号量が集束する電流
値の中で明るさ領域を最も大きくできる電流値に設定す
る。また、試料像の撮影などに特化する場合は、明るさ
領域が最大となるように対物レンズ励磁電流の電流値を
0に設定する。対物レンズ励磁電流の電流値が0のとき
二次電子検出信号量は少ないが、試料像を撮影するだけ
であれば、露出時間を長くしたり、信号蓄積時間を長く
設定することで二次電子検出信号量の少なさをカバーで
きるからである。
【0025】これに対して、第二低倍率モードは、X線
分析用の低倍率モードであり、第一低倍率モードでの対
物レンズ励磁電流値より大きな電流値領域で電流値を変
化させる。X線分析時には、反射電子の軌道をX線検出
器の検出面からそらすために反射電子のエネルギー(=
加速電圧)に応じた対物レンズ磁場を発生させてやる必
要があり、加速電圧の平方根に比例して電流値を設定す
る。
【0026】通常の低倍率モード(第一低倍率モード)
では、図3(b)に示すように対物レンズ10の磁場が
ないか、もしくは微弱であるために、試料26より発生
する反射電子35がX線検出器33の検出面に入射す
る。このとき、X線検出器33で検出されるX線スペク
トルは図4のようになり、反射電子35の入射が検出誤
差や故障の原因となるためにX線分析を行うのは困難で
ある。従って、X線分析用の低倍率モードでは、図3
(a)に示すように、反射電子35をX線検出器33の
検出面からそらす対物レンズ励磁電流を電流値とし、こ
れを最小の電流値とすることで明るさ領域を確保する。
一次電子線の加速電圧が高いほど対物レンズ励磁電流を
大きくしなければならないので、そのぶん明るさ領域は
小さくなる。
【0027】また、走査電子顕微鏡による通常の二次電
子像の観察では、同一試料観察時の加速電圧が一定とな
ることが多いのに対し、X線観察時は加速電圧を変化さ
せて観察することが必要になる。これは、試料を構成す
る元素のうち軽元素は低加速の一次電子線の照射によっ
てX線を発生するが、重元素では高加速の一次電子線の
照射が必要になる。そのため、同一試料であっても、ど
のような元素に着目するかによって一次電子線の加速電
圧を変えながら観察を行う必要があるからである。
【0028】一次電子線は対物レンズ磁場の中をらせん
軌道を描きながら進み、試料上に集束される。ここで加
速電圧を変化させたり、励磁電流を変化させると、一次
電子線の軌道が変化し像の回転が起こる。しかし、励磁
IN/√V(I:励磁電流、N:コイル巻数、V:加速
電圧)を一定に保てば、一次電子線の軌道は変化しない
ため、像回転の制御は容易となる。コイル巻数Nは対物
レンズに固有の一定値であるので、励磁電流Iを加速電
圧Vの平方根に比例して変化させることにより、常に励
磁を一定に保つことが出来る。同様に、倍率の制御にお
いても一次電子線の走査を行う偏向コイルの電流を加速
電圧Vの平方根に比例して変化させることによって制御
が容易となる。
【0029】ここで、対物レンズの励磁について簡単に
補足説明する。高倍率モード時は、対物レンズ10の発
生する磁場によって一次電子線5の焦点を試料26上に
結ぶよう制御している。このとき対物レンズ10には強
い励磁電流が流れ、短い焦点を結ぶことが出来るため、
高倍率観察が可能となる。このような対物レンズ10の
励磁を強励磁と呼ぶ。
【0030】第一低倍率モード時は、対物レンズ10の
励磁電流を0もしくは弱励磁にして、対物レンズ10に
最も近い集束レンズ(第二集束レンズ8)によって、一
次電子線5の焦点を試料26上に結ぶよう制御してい
る。これによって明るさ領域が大きくなり、広視野によ
る観察(低倍率観察)が可能となる。このとき対物レン
ズ10に流れる励磁電流は高倍率モード時にくらべて小
さく、一次電子線5を試料上に集束することは出来な
い。第二低倍率モード時は、対物レンズ10の励磁電流
を加速電圧Vの平方根に比例して変化するよう制御す
る。励磁電流は第一低倍率モード時よりは大きいが、高
倍率モード時より小さく、第一低倍率モード時と同様、
対物レンズ10では一次電子線5を試料10上に集束す
ることは出来ない(弱励磁)。第二低倍率モードでは、
第一低倍率モード時より大きな励磁電流によって発生す
る対物レンズ磁場により、X線検出器33のX線検出面
への反射電子35の入射を制限することが出来る。
【0031】図5は、X線分析手順の一例を示すフロー
チャートである。試料観察に当たっては、まずステップ
11において第一低倍率モードに入り、C2レンズ(第
二集束レンズ)条件の設定、軸調整、フォーカス調整、
明るさ・コントラストの調整を行う。明るさの調整は二
次電子検出器25の信号増幅器41の設定値をメモリ3
0に予め記憶されている第一低倍率モード用の値に設定
することによって行い、コントラストの調整は信号処理
手段20の設定値をメモリ30に予め記憶されている第
一低倍率モード用の値に設定することによって行う。次
に、ステップ12に進んで低倍率での視野探しを行う。
【0032】観察視野が決まると、ステップ13に進ん
で高倍率モードへの切り替えを行う。高倍率モードで
は、2段の偏向器9a,9bを用い、対物レンズ10を
強励磁で使用する。高倍率モードに移行すると、ステッ
プ14に進んでC2レンズ条件の設定、軸調整、フォー
カス調整、明るさ・コントラストの調整を行う。明るさ
の調整は二次電子検出器25の信号増幅器41の設定値
をメモリ29に予め記憶されている高倍率モード用の値
に設定することによって行い、コントラストの調整は信
号処理手段20の設定値をメモリ29に予め記憶されて
いる高倍率モード用の値に設定することによって行う。
【0033】高倍率モードに切り替わると、ステップ1
5において高倍率での走査電子顕微鏡像を観察する。ま
た、ステップ16において、高倍率でのX線分析を行
う。具体的には、試料の局所領域のX線スペクトル観
察、及び局所的X線マッピング像の観察を行う。
【0034】次に、ステップ17に進み、第二低倍率モ
ードへ切り替える。第二低倍率モードでは、偏向器を1
段にして使用するとともに、対物レンズ10を励磁電流
が一次電子線5の加速電圧の平方根に比例するように変
化させた弱励磁状態で使用する。第二低倍率モードに移
行すると、ステップ18に進んでC2レンズ条件の設
定、軸調整、フォーカス調整、明るさ・コントラストの
調整を行う。明るさの調整は二次電子検出器25の信号
増幅器41の設定値をメモリ30に予め記憶されている
第二低倍率モード用の値に設定することによって行い、
コントラストの調整は信号処理手段20の設定値をメモ
リ30に予め記憶されている第二低倍率モード用の値に
設定することによって行う。
【0035】次にステップ19に進み、低倍率でのX線
分析、すなわち試料の全体的X線マッピング像を観察す
る。この第二低倍率モードでは、試料から発生された反
射電子が弱励磁された対物レンズ10のレンズ磁界によ
ってそらされてX線検出器33に入射しないため、従来
のようにX線検出器が故障したり、検出信号にノイズが
入ることなく低倍率における元素マッピング像を観察す
ることができる。
【0036】ところで、倍率モードの切り替えによって
対物レンズ10の励磁を変化させると、対物レンズによ
って一次電子線の走査方向に回転作用を受け、像が回転
してしまう。図6は、対物レンズ励磁電流と像回転との
関係を表す図である。本発明では、対物レンズの励磁に
連動して対物レンズによる像回転をキャンセルするよう
走査方向を制御して、一次電子線走査方向と試料ステー
ジのX方向とを対応させる。
【0037】第二低倍率モードは励磁IN/√V(I:
励磁電流、N:コイル巻数、V:加速電圧)を一定にし
た条件で使用するので、対物レンズ磁場内で一次電子線
の軌道は変化せず、像の回転は生じない。高倍率モード
も励磁IN/√Vを一定とする条件で使用すれば像回転
は生じないが、励磁を一定としない条件で使用すると対
物レンズ電流値等を変化させたとき像回転が生じる。ま
た、第一低倍率モードは対物レンズの励磁電流を一定に
する条件で使用するため、一次電子線の加速電圧を変え
ると像回転が生じる。従って、励磁IN/√Vを一定と
しない観察モードにおいては、偏向コイル9a,9bの
X偏向コイルとY偏向コイルに流す偏向電流比を調整す
ることで一次電子線の走査方向を像回転をキャンセルで
きる方向とし、試料上での一次電子線の走査方向を常に
試料ステージのX方向に一致させる。
【0038】
【発明の効果】本発明によると、試料像(二次電子像)
の観察用とX線分析用にそれぞれに適した複数の低倍率
モードを設定することで、効率のよい低倍率観察が可能
となる。特に、これまで困難であったX線分析時におけ
る低倍率モードの使用が可能となり、広い視野でのX線
マッピング像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による走査電子顕微鏡の一例を示す概略
図。
【図2】低倍率モードにおける対物レンズ励磁電流と二
次電子検出効率/明るさ領域との関係図。
【図3】対物レンズ磁場の有無と反射電子の軌道を示す
説明図。
【図4】反射電子がX線検出面に入射した時にX線検出
器で検出されるX線スペクトルの説明図。
【図5】X線分析手順の一例を示すフローチャート。
【図6】対物レンズ励磁の変化によって起こる像回転を
説明する図。
【符号の説明】
1…電子源、2…陰極、3…第一陽極、4…第二陽極、
5…一次電子線、6…C1レンズ、7…対物レンズ絞
り、8…C2レンズ、9…偏向コイル、10…対物レン
ズ、11…高圧制御電源、12…ビームアライメントコ
イル制御電源、13…C1レンズ制御電源、14…非点
補正コイル制御電源、15…C2レンズ制御電源、16
…走査電源、18…対物レンズ制御電源、19…CP
U、20…信号処理手段、21…CRT、22…ビーム
アライメントコイル、23…非点補正コイル、24…二
次電子、25…二次電子検出器、26…試料、27…直
交電磁界発生器、28…画像メモリ、29…高倍率モー
ド専用の記憶領域、30…低倍率モード専用の記憶領
域、31…焦点位置、32…X線、33…X線検出器、
35…反射電子、41,42…信号増幅器

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子源と、前記電子源から放出された一
    次電子線を集束する第一の集束レンズと、前記第一の集
    束レンズで集束された一次電子線の不要領域を除去する
    対物レンズ絞りと、前記対物レンズ絞りを通過した一次
    電子線を集束する第二の集束レンズと、前記第二の集束
    レンズで集束された一次電子線を試料に集束するための
    対物レンズと、一次電子線を試料上に走査する偏向手段
    と、電子線照射によって試料から放出された二次電子を
    検出する二次電子検出器と、試料から放出されたX線を
    検出するX線検出器とを備える走査電子顕微鏡におい
    て、 走査像の倍率が予め設定された値より大きいときは前記
    対物レンズで一次電子線を試料上にフォーカスする(高
    倍率モード)とともに走査像の倍率が予め設定された値
    より小さいときは前記第二の集束レンズで一次電子線を
    試料上にフォーカスする(低倍率モード)機能を有し、
    前記低倍率モードのとき、前記対物レンズの励磁電流を
    一次電子線の加速電圧によらず一定値とする第一低倍率
    モードと、励磁電流を一次電子線の加速電圧の関数とし
    て変化させる第二低倍率モードとが選択可能であること
    を特徴とする走査電子顕微鏡。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の走査電子顕微鏡におい
    て、試料は前記対物レンズのレンズ磁界中に配置される
    ことを特徴とする走査電子顕微鏡。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の走査電子顕微鏡に
    おいて、前記第一低倍率モードは前記対物レンズの励磁
    電流を0又は弱励磁に設定することを特徴とする走査電
    子顕微鏡。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載の走査電子顕微鏡に
    おいて、前記第一低倍率モードは前記対物レンズの励磁
    電流を二次電子の検出効率が低下しない最小の対物レン
    ズ励磁電流、又は観察倍率に対して最大視野が得られる
    対物レンズ励磁電流に設定することを特徴とする走査電
    子顕微鏡。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項記載の走査
    電子顕微鏡において、前記第二低倍率モードにおける対
    物レンズの励磁電流を一次電子線の加速電圧の平方根に
    比例するように設定することを特徴とする走査電子顕微
    鏡。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項記載の走査
    電子顕微鏡において、前記第一低倍率モードと第二低倍
    率モードを観察倍率の設定値に連動して自動的に切り替
    えることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項記載の走査
    電子顕微鏡において、試料像の明るさ及びコントラスト
    の設定値を、高倍率モード、第一低倍率モード、第二低
    倍率モードでそれぞれ独立に記憶する記憶手段を有し、
    倍率モードの切り替えに連動して各倍率モードの明るさ
    及びコントラスト設定値を前記記憶手段に記憶された値
    に自動的に設定することを特徴とする走査電子顕微鏡。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項記載の走査
    電子顕微鏡において、前記偏向手段は一次電子線の走査
    方向を制御する機能を有し、高倍率モード、第一低倍率
    モード、第二低倍率モードの切り替えに連動して走査方
    向を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の走査電子顕微鏡におい
    て、前記偏向手段は試料上での一次電子線の走査方向が
    試料ステージのX方向とほぼ一致するよう制御すること
    を特徴とする走査電子顕微鏡。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれか1項記載の走
    査電子顕微鏡を用いた試料観察方法において、前記第一
    低倍率モードにおける対物レンズ励磁電流設定値を通常
    は弱励磁とし、試料の走査像を記録するときは0に切り
    替えることを特徴とする試料観察方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜9のいずれか1項記載の走
    査電子顕微鏡を用いた試料観察方法において、前記第二
    低倍率モードで試料のX線マッピング像を観察すること
    を特徴とする試料観察方法。
  12. 【請求項12】 電子源と、前記電子源から放出された
    一次電子線を集束する第一の集束レンズと、前記第一の
    集束レンズで集束された一次電子線の不要領域を除去す
    る対物レンズ絞りと、前記対物レンズ絞りを通過した一
    次電子線を集束する第二の集束レンズと、試料の位置に
    磁界を発生することができ前記第二の集束レンズで集束
    された一次電子線を試料に集束するための対物レンズ
    と、一次電子線を試料上に走査する電子線偏向手段と、
    電子線照射によって試料から発生されたX線を検出する
    X線検出器とを備え、試料のX線マッピング像を得るこ
    とのできる走査電子顕微鏡において、 走査像の倍率が予め設定された値よりも大きいときは前
    記対物レンズで一次電子線を試料上にフォーカスして走
    査し、走査像の倍率が予め設定された値よりも小さいと
    きは、前記第二の集束レンズで一次電子線を試料上にフ
    ォーカスして走査するとともに前記対物レンズの励磁電
    流を弱励磁として試料からの反射電子が前記X線検出器
    に入射するのを防止することを特徴とする走査電子顕微
    鏡。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の走査電子顕微鏡にお
    いて、前記走査像の倍率が予め設定された値よりも小さ
    いとき前記対物レンズの励磁電流を一次電子線の加速電
    圧の平方根に比例させて変化させることを特徴とする走
    査電子顕微鏡。
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