JP2001081535A - 成形性および熱間加工性に優れたプレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼および鋼板 - Google Patents

成形性および熱間加工性に優れたプレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼および鋼板

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JP2001081535A JP26194499A JP26194499A JP2001081535A JP 2001081535 A JP2001081535 A JP 2001081535A JP 26194499 A JP26194499 A JP 26194499A JP 26194499 A JP26194499 A JP 26194499A JP 2001081535 A JP2001081535 A JP 2001081535A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複雑形状のプレス成形に耐え得る高レベルの
張出し性と深絞り性を具備するオーステナイト系ステン
レス鋼素材を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.02〜0.07%未満,Si:
0.7〜1.8%,好ましくは1.0超え〜1.7%,さらに好まし
くは1.1〜1.6%,Mn:0.1〜2.5%,Ni:6.5〜8.5%,C
r:12.0〜18.0%,Cu:1.0〜4.0%,Al:0.1〜0.8%,
N:0.03%以下,B:0〜0.010%であり、残部がFeおよび
不可避的不純物からなり、Al+0.5Si≦1.125を満たし、
かつMd30x=775−1390C−684N−6.98Cr−59.5Ni−8.03S
i−52.1Mn−31.4Cu+26.4Alで定義されるMd30x値が−20
〜30,好ましくは−5〜20,さらに好ましくは0〜15とな
る化学組成を有する、成形性および熱間加工性に優れた
プレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形性および熱間
加工性に優れたプレス成形用オーステナイト系ステンレ
ス鋼並びにその鋼を用いたプレス成形用鋼板に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】SUS304に代表される準安定オーステナイ
ト系ステンレス鋼は、加工歪みを加えることによってオ
ーステナイト相の一部がマルテンサイト相(α')に変態
する。この変態挙動が材料の機械的性質や成形性に大き
な影響を及ぼすことが知られており、特にこの変態に起
因して成形性や延性が向上する現象は変態誘起塑性(TR
IP)と呼ばれる。この現象を利用してオーステナイト系
ステンレス鋼の加工性を改善する研究が種々行われ、合
金成分を調整しα'生成量を制御することにより種々の
高加工性オーステナイト系ステンレス鋼が開発されてき
た。
【0003】特公昭51−29854号にはCuとSiの複合添加
によって深絞り性を改善したオーステナイト系ステンレ
ス鋼が開示されている。特公平1−40102号にはAlとCuを
複合添加しSiを低減した深絞り性の良好なオーステナイ
ト系ステンレス鋼が開示されている。特開平8−269633
号,特開平8−269634号にはAl,CuおよびMoの複合添加
により耐時期割れ性や耐食性を改善した高深絞り性オー
ステナイト系ステンレス鋼が開示されている。また、特
開平10−102210号にはAlとCuを複合添加したうえNi当量
を規定することにより深絞り性をさらに改善したオース
テナイト系ステンレス鋼が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、近年、材料の
用途拡大や製品の高意匠化等によって、プレス成形品に
は一層加工の厳しい複雑な形状が求められるようになっ
た。このため、従来の高加工性ステンレス鋼でも要求ど
おりの形状に加工できない場合が少なくない。例えば、
特開平10−102210号に開示のオーステナイト系ステンレ
ス鋼は、確かに高い深絞り性を有するものであるが、複
雑形状の加工に適用した場合、必ずしも満足できる優れ
た加工性を示すとは限らない。種々検討の結果、プレス
成形によって複雑形状の物品を作る場合、「深絞り性」
だけでなく、「張出し性」が非常に重要であることがわ
かった。
【0005】「張出し性」が、「深絞り性」と並んでプ
レス成形性を評価する代表的な特性であることは周知で
あり、張出し性の試験方法としてエリクセン試験がJIS
Z 2247に規定されている。ところが、現実の高加工性オ
ーステナイト系ステンレス鋼は深絞り性の向上を重視し
て開発されたものが多く、それらは意外に複雑形状のプ
レス成形に耐え得る張出し性を充分具備しているとは限
らないことがわかった。つまり、高加工性オーステナイ
ト系ステンレス鋼の張出し性に関しては、未だ検討の余
地が残っていると言える。
【0006】本発明は、このような現状に鑑み、良好な
深絞り性を示すとともに、高いレベルの張出し性を安定
して発現するオーステナイト系ステンレス鋼、およびそ
の鋼からなる成形用鋼板を提供することを目的とする。
また、その鋼の成分設計においては、高価なMoを含有さ
せないこと,熱間加工性を劣化させないこと,および給
湯機器・温水機器・厨房機器等の高温となる部位で高い
耐応力腐食割れ性・耐隙間腐食性を呈することに配慮す
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは種々検討した
結果、Cu,Si,Alを複合添加したオーステナイト系ステ
ンレス鋼において、上記目的を達成し得る組成範囲が存
在することを見出した。すなわち、上記目的を達成する
ために、請求項1の発明は、質量%で、C:0.02〜0.07
%未満,Si:0.7〜1.8%,Mn:0.1〜2.5%,Ni:6.5〜
8.5%,Cr:12.0〜18.0%,Cu:1.0〜4.0%,Al:0.1〜
0.8%,N:0.03%以下,B:0〜0.010%(無添加を含
む)であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
Al+0.5Si≦1.125を満たし、かつ下記(1)式で定義され
るMd30x値が−20〜30となる化学組成を有する、成形性
および熱間加工性に優れたプレス成形用オーステナイト
系ステンレス鋼である。 Md30x=775−1390C−684N−6.98Cr−59.5Ni−8.03Si−52.1Mn−31.4Cu+26.4A l ・・(1) ここで、B含有量の0%とはBを添加しない場合を意味す
る。
【0008】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、特にMd30x値が−5〜20となる点を規定したものであ
る。請求項3の発明は、請求項1の発明において、特に
Md30x値が0〜15となる点を規定したものである。
【0009】請求項4の発明は、請求項1〜3の発明に
おいて、特にSi含有量が1.0超え〜1.7%である点を規定
したものである。請求項5の発明は、請求項1〜3の発
明において、特にSi含有量が1.1〜1.6%である点を規定
したものである。
【0010】請求項6の発明は、請求項1〜5の発明に
おいて、特にBを0.001〜0.010%の範囲で含有する点を
規定したものである。
【0011】請求項7の発明は、質量%で、C:0.02〜
0.07%未満,Si:1.0超え〜1.7%,Mn:0.1〜2.5%,N
i:6.5〜8.5%,Cr:12.0〜18.0%,Cu:1.0〜4.0%,A
l:0.1〜0.8%,N:0.03%以下,B:0〜0.010%(無添
加を含む)であり、残部がFeおよび不可避的不純物から
なり、Al+0.5Si≦1.125を満たし、かつ前記(1)式で定
義されるMd30x値が−5〜20となる化学組成を有し、15.2
以上のエリクセン値を呈する成形性に優れたプレス成形
用オーステナイト系ステンレス鋼板である。ここで、エ
リクセン値は、JIS Z 2247に規定される「エリクセン試
験B法」により、2号試験片を用いて測定したものをい
う。
【0012】請求項8の発明は、請求項7の発明におい
て、特にSi含有量が1.1〜1.6%、Md30x値が0〜15であ
り、15.5以上のエリクセン値を呈する点を規定したもの
である。
【0013】請求項9の発明は、請求項7〜8の発明に
おいて、特にBを0.001〜0.010%の範囲で含有する点を
規定したものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のオーステナイト
系ステンレス鋼の成分限定理由を説明する。Cは、強力
なオーステナイト生成元素であり、加工誘起マルテンサ
イト相の強度を高め、深絞り性および張出し性の向上に
有効である。このため0.02質量%以上含有させる。ただ
し、耐時期割れ性を確保するためにC含有量の上限は0.0
7質量%未満に制限する。この上限の規定は鋭敏化を防
止して耐食性を確保するうえでも有効である。より好ま
しいC含有量の範囲は0.02〜0.05質量%である。
【0015】Siは、オーステナイト系ステンレス鋼の張
出し性をコントロールするうえで極めて重要な成分元素
であることがわかった。後述の図4に示されるように、
Md30x値を狭い範囲に調整したものにおいて、エリクセ
ン値はSi含有量に大きく依存し、しかもピークを有する
のである。Siを0.7〜1.8質量%の範囲で含有させると1
5.0以上といった高いエリクセン値が確保される。Si含
有量を1.0超え〜1.7質量%の範囲とすれば、さらに高い
15.2以上のエリクセン値を得ることが可能となる。Si含
有量を1.1〜1.6%の非常に狭い範囲に調整すれば、ほぼ
ピークに相当する最高レベルの張出し性が安定して実現
でき、15.5以上のエリクセン値を得ることが可能とな
る。このように、Si含有量をエリクセン値のピーク付近
の狭い範囲に規定することにより、素材の張出し性が最
も良好に発揮される状態でオーステナイト系ステンレス
鋼を使用することができ、複雑形状の成形加工用途に対
しても一層信頼性の高い材料が提供できるのである。
【0016】またSiは、Alとともに耐応力腐食性を向上
させる元素として重要である。ただし、あまり多量に含
有させるとδフェライトが生成し易くなって熱間加工性
を損なう。この意味からもSi含有量は0.7〜1.8質量%の
範囲とするのが良く、1.0超え〜1.7質量%の範囲が一層
好ましい。なお、一般的にSi含有量が1.0質量%以上と
もなると耐時期割れ性が懸念されるところであるが、本
発明ではC含有量,N含有量を低減させることでこの問題
を解消している。
【0017】Mnは、オーステナイト相を安定化し、加工
誘起マルテンサイト相の生成を抑制することでマルテン
サイト変態量の適正化に寄与する。この作用を発揮させ
るために0.1質量%以上含有させる。一方、Mnの過剰な
含有はオーステナイト相を過度に安定化させ、却って成
形性を阻害する。このためMn含有量の上限は2.5質量%
とする。より好ましいMn含有量の範囲は1.0〜2.0質量%
である。
【0018】Niは、Mnと同様、オーステナイト相を安定
化し、加工誘起マルテンサイト相の生成を抑制する作用
を呈する。δフェライトの生成抑制にも寄与する。ただ
しNiは高価であるため多量の添加は好ましくない。これ
らを考慮してNi含有量は6.5〜8.5質量%に規定する。
【0019】Crは、耐食性を維持するために12.0質量%
以上の含有が必要である。多量に含有させるとδフェラ
イトが生じ易くなり熱間加工性を損なうので、Cr含有量
の上限は18.0質量%とする。
【0020】Cuは、Niと同様にオーステナイト相の安定
化に寄与し、深絞り性・張出し性を向上させる重要な元
素である。ただし、あまり多量に含有させると熱間加工
性を害する。これらを考慮してCu含有量は1.0〜4.0質量
%に規定する。より好ましいCu含有量の範囲は1.5〜3.5
質量%である。
【0021】Alは、深絞り性の向上に有効な元素である
ことは知られているが、Siとの複合添加によって張出し
性を含めた総合的なプレス成形性を顕著に高めることが
わかった。また、Siと同様、Alは耐応力腐食割れ性を向
上させる。一方、多量に含有させるとδフェライトが生
じ易くなり熱間加工性を損なう。これらを考慮してAl含
有量は0.1〜0.8質量%に規定する。より好ましいAl含有
量の範囲は0.2〜0.5質量%である。
【0022】Nは、Cと同様にオーステナイト相を安定化
し、加工誘起マルテンサイト相の強度を高め、深絞り性
および張出し性の向上に有効である。ただし、多量に含
有させると耐時期割れ性を劣化させ、加工性も低下する
ので、N含有量の上限は0.03質量%に制限する。より好
ましいN含有量の範囲は0.005〜0.02質量%である。
【0023】本発明ではSiとAlを複合添加するため、鋼
の熱間加工性はSUS304に比べ劣化し易い。そこで、後述
のようにBを添加する手段が有効になるが、発明者らの
研究によれば、Bを添加しなくても、Al量とSi量の適正
化によって通常の熱延条件であれば耳割れのない熱延鋼
帯を製造できることがわかった。後述の図5に示される
ように、質量%で「Al+0.5Si≧1.125」となる範囲で耳
割れが生じない。
【0024】Bは、微量の添加で熱間加工性を改善する
効果がある。上記のように「Al+0.5Si≧1.125」の規定
を満たせば、通常の熱延条件では耳割れのない熱延鋼帯
が得られる。しかし、実際の熱延現場では熱延温度が低
下したり通常より強圧下のパスを組み込む必要が生じる
場合もある。そのような場合に「Al+0.5Si≧1.125」の
規定に加え、Bを添加する手段を併用することにより、
耳割れの発生を最小限にくい止めることができるのであ
る。そのためには、Bを0.001質量%以上含有させること
が望ましい。ただし、多量に含有させると低融点化合物
を生成して逆に熱間加工性が低下する。このためBを添
加する場合は、0.010質量%以下の含有量としなくては
ならない。
【0025】前記(1)式で定義されるMd30x値は、本発明
で目的とするプレス成形性を評価するのに適したオース
テナイト安定度の指標である。後述の図2に示されるよ
うに、Si含有量が同一レベルの鋼において、エリクセン
値はMd30x値に大きく依存し、しかもピークを有する。M
d30x値を−20〜30の範囲に調整すると、Si含有量が本発
明規定範囲のもの(高Si材)で15.0以上の高いエリクセ
ン値が確保される。Md30x値を−5〜20の範囲に調整すれ
ば、さらに高い15.2以上のエリクセン値を得ることが可
能となる。Md30x値を0〜15の非常に狭い範囲に調整すれ
ば、ほぼピークに相当する最高レベルの張出し性が安定
して実現でき、15.5以上のエリクセン値を得ることが可
能となる。
【0026】発明者らの検討の結果、Cuを含有するオー
ステナイト系ステンレス鋼にSiおよびAlを複合添加する
と、それぞれの元素を単独で添加するよりも一層顕著に
成形性が向上することが明らかとなった。その成形性向
上のメカニズムについては現時点では不明な点が多い。
ただ、Si含有量とMd30x値をそれぞれ上記の範囲に調整
する本発明の特徴的な規定は、素材の張出し性が最も良
好に発揮される狭い化学組成範囲を特定するものであ
り、このようにしてオーステナイト系ステンレス鋼の成
形性を複雑形状の製品に安定して対応し得る高いレベル
に維持する手法は、従来知られていなかった成形性改善
手法である。
【0027】
【実施例】真空溶解炉で溶製したインゴットから30mm厚
のスラブを作製し、熱間圧延で板厚3.5mmの熱延板とし
た。その後、焼鈍・冷間圧延を繰り返して最終的に板厚
0.7mmの冷延焼鈍板とし、これから各試験片を作製し
た。
【0028】表1に示す試料は、Cu,Si,Alを複合添加
したオーステナイト系ステンレス鋼である。表1中の
「高Si材」はSi含有量が1.1〜1.5質量%レベルのもので
あり、「低Si材」はSi含有量が約0.5質量%レベルのも
のである。図1に、これらの試料の引張試験における伸
びをMd30xで整理した結果を示す。伸びは、Md30x=10付
近で最大になることがわかる。Md30xが−20〜30の範囲
では、Cu,Si,Al複合添加鋼は低Si材・高Si材いずれ
も、既存のSUS304より大きい伸びを示す。
【0029】図2に、表1の試料のエリクセン値に及ぼ
すMd30x値の影響を示す。ここでエリクセン試験は、JIS
Z 2247に規定される「エリクセン試験B法」により、
2号試験片を用いて行った。Md30x値が同程度の場合、
高Si材の方が低Si材より高いエリクセン値を示すことが
わかる。また、高Si材・低Si材とも、エリクセン値はMd
30x値に依存して変化し、Md30x=10付近で最大となるピ
ークを有する。Md30x値をこのピークに近付けるように
鋼組成を調整することにより、各Siレベルにおいて最も
優れた張出し性を実現できることがわかる。特に高Si材
においては、Md30x値を−20〜30の範囲に調整すると、1
5.0以上の高いエリクセン値が確保され、またMd30x値を
−5〜20の範囲に調整すれば、15.2以上のエリクセン値
を得ることが可能となり、さらにMd30x値を0〜15の非常
に狭い範囲に調整すれば、ほぼピークに相当する最高レ
ベルの張出し性が安定して実現でき、15.5以上のエリク
セン値を得ることが可能となることがわかる。
【0030】図3に、表1の試料の成形カップ高さに及
ぼすMd30x値の影響を示す。ここで成形カップ高さは、
絞り比2.15の深絞り試験を行って絞り抜いたカップの、
カップ部の高さ(mm)を表し、この値が大きいほど成形
できる高さが大きいので、深絞り性に優れることを意味
する。図3の結果から、前記の張出し性と同様、深絞り
性もMd30x値に依存して変化し、Md30x=10付近で最大と
なるピークを有することがわかる。このことから、本発
明の規定にしたがって高い張出し性を実現させた材料
は、同時に優れた深絞り性も具備するものであると言う
ことができる。エリクセン値が15.2以上、さらには15.5
以上となる本発明のプレス成形用鋼板は、深絞り性と張
出し性を高レベルで具備していることから、複雑形状の
成形加工に充分に対応し得るものである。
【0031】
【表1】
【0032】表2には、Md30x値が同程度(最も望まし
い0〜15の範囲)の鋼においてSi含有量を変化させた試
料を示してある。図4に、表2の試料のエリクセン値に
及ぼすSi含有量の影響を示す。エリクセン値はSi含有量
に大きく依存し、Si含有量が1.5質量%付近でピークと
なることがわかる。また、Si含有量がこのピークを超え
て多くなるとエリクセン値は急激に低下することがわか
る。Md30x値が最も望ましい0〜15の範囲に調整されてい
る場合、Siを0.7〜1.8質量%の範囲で含有させると15.0
以上のエリクセン値が確保される。Si含有量を1.0超え
〜1.7質量%の範囲とすれば15.2以上のエリクセン値を
得ることが可能となり、さらにSi含有量を1.1〜1.6%の
非常に狭い範囲に調整すれば、ほぼピークに相当する最
高レベルの張出し性が実現でき、15.5以上のエリクセン
値を得ることが可能となることがわかる。
【0033】
【表2】
【0034】表3には、Si含有量とAl含有量を種々変化
させた試料を示してある。表3中、D1〜D7は「Al+0.5S
i」の値が1.125以下のもの、E2〜E6は同1.125を超える
ものである。これらの試料について、30mm厚スラブを12
30℃で抽出して板厚3.5mmまで中間加熱なしで熱間圧延
し、得られた熱延板について耳割れの有無を調べた。そ
の結果を図5に示す。Al+0.5Si=1.125を境に耳割れの
発生状況が変わることがわかる。すなわち、上記のよう
な通常の熱延条件では、Bを添加しなくても、「Al+0.5
Si≦1.125」を満たすように化学組成を調整することで
良好な熱延板が得れることが確認された。
【0035】
【表3】
【0036】次に、表1の試料A3,B2,304について応
力腐食割れ試験を実施した。試験は、冷延焼鈍板から31
×29mmおよび16×14mmの小片を切り出し、これらを重ね
て中央部分をスポット溶接した試験片を作製し、60℃の
50ppmCl-水溶液に浸漬する方法で行った。試験後、試料
B2,および304の溶接部周辺に割れが発生していた。発
明鋼である試料A3には割れは認められず、耐応力腐食割
れ性に優れることが確認された。
【0037】
【発明の効果】以上のように、発明者らは、TRIP現象を
利用する高加工性準安定オーステナイト系ステンレス鋼
において、複雑形状の製品へのプレス成形性の向上を意
図した場合、深絞り性だけでなく、むしろ張出し性を高
レベルで具備していることが極めて重要であることを知
見した。そして、素材の張出し性が最も高い状態で発揮
される、従来知られていなかった組成範囲を明らかに
し、本発明を完成するに至った。したがって本発明は、
昨今のプレス成形の高い要求に応え得る、信頼性の高い
オーステナイト系ステンレス鋼素材を提供するものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】オーステナイト安定度Md30x値と引張試験によ
る材料の伸びの関係を示すグラフである。
【図2】オーステナイト安定度Md30x値とエリクセン値
の関係を示すグラフである。
【図3】オーステナイト安定度Md30x値と深絞り試験
(絞り比2.15)における成形カップ高さの関係を示すグ
ラフである。
【図4】Si含有量とエリクセン値の関係を示すグラフで
ある。
【図5】熱間圧延での耳割れの有無に及ぼすSi含有量お
よびAl含有量の影響を示すグラフである。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.02〜0.07%未満,Si:
    0.7〜1.8%,Mn:0.1〜2.5%,Ni:6.5〜8.5%,Cr:1
    2.0〜18.0%,Cu:1.0〜4.0%,Al:0.1〜0.8%,N:0.
    03%以下,B:0〜0.010%(無添加を含む)であり、残
    部がFeおよび不可避的不純物からなり、Al+0.5Si≦1.1
    25を満たし、かつ下記(1)式で定義されるMd30x値が−20
    〜30となる化学組成を有する、成形性および熱間加工性
    に優れたプレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼。 Md30x=775−1390C−684N−6.98Cr−59.5Ni−8.03Si−52.1Mn−31.4Cu+26.4A l ・・(1)
  2. 【請求項2】 Md30x値が−5〜20となる請求項1に記載
    の鋼。
  3. 【請求項3】 Md30x値が0〜15となる請求項1に記載の
    鋼。
  4. 【請求項4】 Si含有量が1.0超え〜1.7%である請求項
    1〜3に記載の鋼。
  5. 【請求項5】 Si含有量が1.1〜1.6%である請求項1〜
    3に記載の鋼。
  6. 【請求項6】 Bを0.001〜0.010%の範囲で含有する請
    求項1〜5に記載の鋼。
  7. 【請求項7】 質量%で、C:0.02〜0.07%未満,Si:
    1.0超え〜1.7%,Mn:0.1〜2.5%,Ni:6.5〜8.5%,C
    r:12.0〜18.0%,Cu:1.0〜4.0%,Al:0.1〜0.8%,
    N:0.03%以下,B:0〜0.010%(無添加を含む)であ
    り、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Al+0.5S
    i≦1.125を満たし、かつ下記(1)式で定義されるMd30x値
    が−5〜20となる化学組成を有し、15.2以上のエリクセ
    ン値を呈する成形性に優れたプレス成形用オーステナイ
    ト系ステンレス鋼板。 Md30x=775−1390C−684N−6.98Cr−59.5Ni−8.03Si−52.1Mn−31.4Cu+26.4A l ・・(1)
  8. 【請求項8】 Si含有量が1.1〜1.6%、Md30x値が0〜15
    であり、15.5以上のエリクセン値を呈する請求項7に記
    載の鋼板。
  9. 【請求項9】 Bを0.001〜0.010%の範囲で含有する請
    求項7〜8に記載の鋼板。
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