JP3886864B2 - 二次加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、過酷な加工条件下で製品形状に成形される耐二次加工脆性に優れたフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術及び問題点】
フェライト系ステンレス鋼は、良好な耐食性を呈し、高価なNiを必要としないことからオーステナイト系ステンレス鋼に比較して経済的に有利である。このような特徴を活用し、各種耐久消費財を始めとして広範な分野で使用されている。用途の多様化,機器の高性能化等に応じてステンレス鋼板をプレス成形加工する際の加工条件が過酷になってきており、従来よりも一段と加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼鋼板の要求が強くなってきている。
【0003】
フェライト系ステンレス鋼に含まれるC,N量を低減し、Ti,Nb等の炭窒化物形成元素を添加すると、フェライト系ステンレス鋼鋼板の成形性が向上する。たとえば、JIS G4305は、Cr:16.00〜18.00質量%,C:0.03質量%以下,Si:0.75質量%以下,Mn:1.00質量%以下,P:0.040質量%以下,S:0.30質量%以下,Ti又はNb:0.10〜1.00質量%を含むフェライト系ステンレス鋼SUS430LXを規定している。しかし、C,N量を低減し、Ti,Nb等の炭窒化物形成元素を添加すると、プレス加工後に二次加工脆化に起因する縦割れが発生しやすくなる。
【0004】
Ti,Nb添加高純度フェライト系ステンレス鋼鋼板の耐二次加工脆性を改善するため、Ti,Bの併用添加(特公平2−7391号公報)が知られているが、Bの過剰添加に伴い伸びやランクフォード値が低下する弊害が顕在化し、異方性,伸び等を含めた総合的な材質設計が未解決のままである。Be添加(特開平8−260108号公報)も知られているが、高価なBeを消費するため鋼材コストが上昇する。Mg添加により耐二次加工脆性を改善する(特開2001−3144号公報)ことも検討されているが、Mg添加で低下する清浄度に起因する他の問題が派生しやすい。
【0005】
また、従来では高々2.3程度の絞り比による試験で耐二次加工脆性を調査しているに過ぎない。しかし、最近のプレス加工の進歩に対応し、多段絞りによる絞り比が5を超える超深絞りも採用され始めている。プレス加工中又はプレス後に十分な耐二次加工脆性をもつフェライト系ステンレス鋼を従来技術では製造できないことから、縦割れの発生がなく過酷なプレス加工に耐える材質を得るため、従来よりも耐二次加工脆性が格段に優れたフェライト系ステンレス鋼鋼板が要求されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような要求に応えるべく案出されたものであり、合金設計に加えて素材段階での加工性を規制することにより、プレス加工中及びプレス加工後に十分な耐二次加工脆性が確保され、過酷な二次加工を受けても加工割れの発生がなく良好な製品形状に加工されるフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材を提供することを目的とする。
【0007】
本発明のフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材は、その目的を達成するため、C:0.015質量%以下,Si:0.5質量%以下,Mn:0.5質量%以下,P:0.050質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:10.0〜23.0質量%,Al:0.10質量%以下,N:0.020質量%以下,Ti:0.10〜0.25質量%,Nb:0.15〜0.35質量%,B:0.0005〜0.0035質量%を含み、かつNb/Tiの質量比が0 . 9以上になるように調整され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、面内全方向に沿って測定したランクフォード値rの最小値rminが1.8以上であることを特徴とする。
【0008】
フェライト系ステンレス鋼は、更にNi:0.5質量%以下,Mo:3.0質量%以下,Cu:0.3質量%以下,V:0.3質量%以下,Zr:0.3質量%以下の1種又は2種以上を含むことができる。この場合、Nb/Tiの質量比を1.0以上にすることが好ましい。
このフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材は、所定組成をもつステンレス鋼スラブを熱延鋼帯とし、700〜950℃の温度域で1時間以下加熱する焼鈍を熱延鋼帯に施し、中間冷間圧延後に(再結晶温度−100℃)〜再結晶完了温度の温度域に1分以下加熱する中間焼鈍を施し、圧延率80%以上で仕上げ冷間圧延することにより製造される。
【0009】
【作用】
絞り比が比較的小さい従来の二次加工性の評価条件では加工割れ等の欠陥が発生しないとされる材料であっても、絞り比の増加に応じて二次加工割れ等の加工欠陥が発生する。そこで、本発明者等は、フェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材を二次加工した際に生じる加工欠陥を成分・組成,素材特性等、種々の面から検討した。その結果、冷延焼鈍材の面内全方向に沿って測定したランクフォード値rの最小値rminを1.8以上に規制すると共に、特定組成の合金設計を採用するとき、フェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材の耐二次加工脆性が改善されることを見出した。
【0010】
最小ランクフォード値rminが二次加工脆化に及ぼす影響は、次のように推察される。
圧延方向から圧延方向に直交する方向までの90度の範囲にわたる各方向に沿って測定したランクフォード値rは、当該方向に関するフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材の加工性を示す。フェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材は、通常、圧延方向,直交方向に沿って加工性が良いが、斜め方向に沿った加工性は低くなっている。加工性が面内方向に関して変動すると、絞り比の大きな深絞り加工等では材料の流動が面内方向にばらつき、加工歪みが特定方向に蓄積される。歪の蓄積量が閾値を超えると、当該特定方向に関して二次加工脆化、ひいては加工割れが発生する。
【0011】
面内方向で異なる加工性が二次加工脆化に与える悪影響は、全方向に沿って測定したランクフォード値rの最小値rminを大きくすることにより抑制できる。最小ランクフォード値rminが大きくなると、面内方向に加工性が多少変動しても、加工性に劣る方向と加工性の良好な方向との間に生じる材料の流動変動が加工性の良好な方向に沿った塑性流動で吸収される。その結果、特定方向に関する加工歪みが二次加工脆化を引き起こすまで蓄積されない。したがって、加工性に劣る方向に関しても二次加工割れ等の加工欠陥が生じることなく、目標形状への二次加工が可能となる。
【0012】
本発明者等による調査・研究の結果、最小ランクフォード値rminを1.8以上に調整することにより、加工性の面内異方性が耐二次加工脆性に悪影響を及ぼさない程度に抑えられることが判った。後述の実施例で具体的に示されているように、最小ランクフォード値rmin≧1.8を満足させることによって初めて過酷な条件下で二次加工された鋼材に発生しがちな二次加工割れを防止できる。これに対し、同じ成分・組成をもつフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材であっても、最小ランクフォード値rmin≧1.8が満足されないと二次加工割れが発生しがちになった。
【0013】
最小ランクフォード値rminはステンレス鋼板のステンレス鋼板の集合組織に依存しており、rmin≧1.8と最小ランクフォード値rminが高いステンレス鋼板の集合組織は異方性を大きくする。すなわち、最小ランクフォード値rminを相対的に下げる方位である[211]等の集合組織の発達が小さく、全方位にわたってランクフォード値rを向上させる[111]集合組織が高度に発達している。このような集合組織を形成するためには、低温の熱延板焼鈍によってTi,Nbの炭化物,窒化物やNbのラーベス相及びこれらの複合物を析出させることが好適である。中間焼鈍時にピンニング作用を呈する析出物で[211]等の特定の結晶方位をもつ再結晶の成長を抑制し、仕上げ圧延率を十分に配分することによって目標とする集合組織が作り込まれる。
【0014】
次いで、本発明で採用した合金設計を説明する。
C:0.015質量%以下
炭化物を形成する合金成分であり、最小ランクフォード値rminを下げる特定の結晶方位をもつ再結晶粒の成長を抑制するピンニング作用を呈し、中間焼鈍時に異方性を大きくする。この作用は、0.003質量%のCで効果的になる。しかし、0.015質量%を超える過剰量のCを添加すると、鋼材の強度を上昇させ、延性を低下させる。
Si:0.5質量%以下
製鋼段階で脱酸剤として添加される成分であるが、固溶強化能が大きく、0.5質量%を超える過剰量のSiが含まれると鋼材が硬質化し延性が低下する。
【0015】
Mn:0.5質量%以下
Sを析出固定させ、熱間加工性に有効な合金成分である。しかし、0.5質量%を超える過剰量のMnが含まれると、Mn系ヒュームの発生等によって製造性が低下する。
P:0.050質量%以下
熱間加工性に有害な成分であるが、0.050質量%以下に規制することによりPの悪影響が抑えられる。
S:0.01質量%以下
結晶粒界に偏析しやすく、粒界脆化等の欠陥を引き起こす成分である。Sの悪影響は、0.01質量%以下にS含有量を規制することにより抑制される。
【0016】
Cr:10.0〜23.0質量%
ステンレス鋼に必要な耐食性を確保する上で必須の合金成分であり、Cr:10.0質量%以上でCrの添加効果が顕著になる。しかし、23.0質量%を超える過剰量のCr添加は、靭性,加工性を低下させる。
Al:0.10質量%以下
製鋼段階で脱酸剤として添加される成分であるが、0.10質量%を超える過剰量のAlを添加すると非金属介在物が増加し,靭性低下や表面欠陥の原因となる。
【0017】
N:0.020質量%以下
窒化物となって、中間焼鈍時に特定の結晶方位をもつ再結晶粒の成長を抑制するピンニング作用を呈し、0.005質量%以上のN含有で顕著になる。しかし、0.020質量%を超える過剰量のNを添加すると、延性が低下する。
Ti:0.10〜0.25質量%
C,Nを固定し、加工性,耐食性の向上に有効な合金成分である。Tiの添加効果は、0.10質量%以上のTi添加でみられるが、0.25質量%を超える過剰量のTi添加は鋼材コストの上昇を招き、表面欠陥の原因であるTi系介在物が増加する。
【0018】
Nb:0.15〜0.35質量%
Tiと同様にC,Nを固定し、加工性,耐食性の向上に有効な合金成分である。熱延焼鈍材にNb系炭化物,Fe2Nb等として析出する。このような効果は、0.15質量%以上のNb添加で顕著になる。しかし、0.35質量%を超える過剰量のNbを添加すると、必要量以上のNb系化合物が析出し、再結晶温度を上げることになる。
Nb含有量は、Ti含有量との関連でNb/Ti質量比が0.9以上となるように定められる。Nb/Ti≧0.9は、最小ランクフォード値rminの増加に有効なNb系介在物の作用を効果的に発現させる上で重要な要因である。Nb/Ti<0.9では、全方位のランクフォード値rの最小値rminが1.8を超えることができず、要求する耐二次加工脆性が得られない。なお、Ni,Mo,V,Zr等の任意成分を添加した系では、Nb/Ti質量比の下限を1.0に設定することが好ましい。
【0019】
B:0.0005〜0.0035質量%
耐二次加工脆性の改善に有効な成分であり、0.0005質量%以上でBの添加効果が顕著になる。しかし、0.0035質量%を超える過剰量のB添加は、熱間加工性,溶接性等を低下させる原因となる。
Ni:0.5質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、熱延板の靭性改善に寄与すると共に、過酷な腐食環境に曝されるようとでは高耐食性にも有効である。しかし、高価な元素のため鋼材コストを上昇させ、鋼材を硬質化することにもなるので、Ni含有量の上限を0.5質量%に設定した。
【0020】
Mo:3.0質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、耐食性の改善に有効であるが、3.0質量%を超える過剰量のMn添加は熱間加工性を低下させる。
Cu:0.3質量%以下
溶製段階でスクラップ等の溶解減量から混入してくる不純物であり、過剰量のCuが含まれると熱間加工性,耐食性が劣化するので、Cu含有量の上限を0.3質量%に設定することが好ましい。
V,Zr:0.3質量%以下
Vは固溶Cを炭化物として析出させ、Zrは鋼中のOを酸化物として捕捉することにより、何れも加工性の改善に有効な成分である。しかし、過剰添加は製造性を低下させるので、共に上限を0.3質量%以下に設定する。
【0021】
以上に掲げた成分の他に、スクラップ等の溶解原料から混入してくるCa,Mg,Co等を耐二次加工脆性に悪影響がない程度に含むことができる。
所定組成に調整されたフェライト系ステンレス鋼は、溶製後に鋳造され、熱間圧延,中間焼鈍を伴う冷間圧延,仕上げ冷間圧延,仕上げ焼鈍を経て冷延焼鈍材とされる。
熱延段階では、熱延板を比較的低温で焼鈍することにより、Ti,Nbの炭化物,窒化物,Nbのラーベス相,及びこれらの複合物の析出を促進させる。析出物は、後続する中間焼鈍段階で生じる再結晶をピンニングし、特定結晶方位をもつ再結晶粒の成長を抑制する。また、仕上げ圧延率の十分な配分と相俟って、最小ランクフォード値rminを改善する。析出物を目標状態で析出させるためには、700℃以上で熱延板を焼鈍することが必要である。しかし、焼鈍温度が950℃を超えると、或いは焼鈍時間が1時間を超えると、析出物が粗大に成長しやすくなる。
【0022】
中間焼鈍段階では、フェライト粒が再結晶するが、熱延板焼鈍で生じた析出物のピンニング作用によって微細な再結晶組織となる。焼鈍温度は再結晶組織の粗大化を抑制するため比較的低温に設定されるが、冷延鋼帯の歪取り,軟質化を狙って再結晶完了温度直下に定めることが好ましい。なお、再結晶完了温度から100℃低い温度までの温度域では、再結晶化していない圧延組織が若干残るものの微細な再結晶組織が得られるため、中間焼鈍の下限温度を(再結晶完了温度−100℃)に設定する。通常の連続焼鈍ラインを想定し、1分以下の短時間熱処理を採用すると、再結晶粒の成長が抑制される。
【0023】
中間焼鈍された鋼帯は、圧延率80%以上で仕上げ冷間圧延される。仕上げ冷間圧延時の高い圧延率は、中間焼鈍で生成した微細な再結晶組織との相互作用によって最小ランクフォード値rmin、ひいては耐二次加工脆性を改善する。因みに、仕上げ圧延率が80%に満たないと、ランクフォード値rの面内異方性が悪化し、最小ランクフォード値rminも低位に推移する。
鋼帯のランクフォード値rは、通常、圧延方向(L方向),圧延方向に直交する方向(T方向),圧延方向に45度傾斜した方向(D方向)の三方向に沿って測定し、平均r値,異方性の指標Δrを求めている。また、L,T,Dの三方向の中での最小値で便宜的に最小ランクフォード値rmin(便宜)を表している。
【0024】
【0025】
求められた平均r値,異方性Δr,最小r値rmin(便宜)は、耐二次加工脆性との間に明確な関連性がないと従来から扱われてきた。ところが、L方向からT方向まで90度の範囲を5度刻みに設定して各方向に沿ってランクフォード値rを測定し、最小の測定値を最小ランクフォード値rminとし、最小ランクフォード値rminと耐二次加工脆性との関係をみると明確な関係が成立していることを見出した。換言すると、冷延焼鈍材の面内全方向に関する最小ランクフォード値rminは耐二次加工脆性に大きく影響しており、なかでも絞り比が5に達する超深絞り加工では二次加工割れ防止に重要な因子であることが判った。
耐二次加工脆性に及ぼす最小ランクフォード値rminの影響は、多段絞り等の高度加工時に肉厚減少や歪分布が最小ランクフォード値rminの方向で大きく変動し、最小ランクフォード値rminを1.8以上に調整することにより肉厚減少や歪分布の変動が抑制されることに起因するものと推察される。
【0026】
【実施例1:基礎実験】
C:0.007質量%,Si:0.20質量%,Mn:0.20質量%,P:0.030質量%,S:0.0005質量%,Cr:16.52質量%,Al:0.04質量%,N:0.011質量%,Nb:0.24質量%,Ti:0.17質量%,B:0.0015質量%を含むステンレス鋼を実験用溶解炉で溶製した。ステンレス鋼から得た鋳片を板厚5mmに熱間圧延し、表1に示す製造条件下で板厚0.5mmの冷延焼鈍材を製造した。
【0027】
【0028】
得られた各冷延焼鈍材からJIS 13B号試験片を切り出し、ランクフォード値rを測定すると共に、二次加工試験に供した。
ランクフォード値rの測定では、圧延方向から圧延方向に直交する方向の90度の範囲を5度刻みで設定した各方向に沿ってランクフォード値rを測定し、最も低い測定値を最小ランクフォード値rminとして求めた。
二次加工試験では、多段絞りにより絞り比5で直径15mmのカップを作製した。カップの耳部を切断し、−10℃に保持し、カップの頂点に頂角5度の円錐ポンチを被せ、カップ頭部に1kgの重錘を高さ10cmから落下させた。重錘の落下により拡管方向への衝撃歪を加えた後、カップ側壁部を観察して脆性割れの有無を調査した。同じ冷延焼鈍材から切り出された5個の試験片について重錘を落下させ、全ての試験片で割れが発生しなかった場合を○,一個でも割れが発生した場合を×として耐二次加工脆性を評価した。
【0029】
表2の調査結果にみられるように、最小ランクフォード値rmin≧1.8を満足する製造条件Aで製造された冷延焼鈍材は、重錘の落下衝撃で脆性割れが発生せず、耐二次加工脆性が改善されていた。他方、製造条件B,Cで製造された冷延焼鈍材では、最小ランクフォード値rminが1.8未満であり、重錘の落下衝撃で脆性割れが発生していた。
【0030】
最小ランクフォード値rminと脆性割れの発生有無との関係から、絞り比5と非常に過酷な条件下で加工された後の耐二次加工脆性が最小ランクフォード値rminで評価できることが判る。すなわち、最小ランクフォード値rmin≧1.8では、ランクフォード値rの面内異方性に起因する蓄積歪による影響が小さく、二次加工脆化が抑制されていることが推察される。当該推察は、脆性割れの発生個所が最小ランクフォード値rminの方向とほぼ一致していることによっても支持される。全方位のランクフォード値rの最小値である最小ランクフォード値rminが耐二次加工脆性に大きく影響していることをベースに、適切な合金設計を組み合わせることにより、耐二次加工脆性に優れたフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材が製造されることが判る。
【0031】
【0032】
【実施例2:実試験】
表3の組成をもつフェライト系ステンレス鋼を溶製し、鋳造後、板厚5mmに熱間圧延した。各熱延板に表4の条件下で冷間圧延,焼鈍を施し、板厚0.5mmの冷延焼鈍材を製造した。なお、中間焼鈍,仕上げ焼鈍の時間は、何れの場合も60秒に設定した。
【0033】
【0034】
【0035】
製造された各冷延焼鈍材からJIS 13B号試験片を切り出し、実施例1と同様に最小ランクフォード値rmin及び耐二次加工脆性を調査した。
表5の調査結果にみられるように、合金設計,製造条件共に本発明で既定した条件を満足する冷延焼鈍材では、最小ランクフォード値rminが1.8を超えており、従来法で製造した冷延焼鈍材(たとえばA1)に比較すると耐二次加工脆性が優れていた。
【0036】
A1〜A3,B1,C1の冷延焼鈍材は、本発明で規定した組成条件を満足するものの、製造条件が本発明で規定した条件を外れるため、最小ランクフォード値rminが1.8を超えておらず、耐二次加工脆性が劣っていた。本発明で規定した製造条件で製造された冷延焼鈍材でも、組成が本発明で規定した条件を満足しない場合、E〜Gにみられるように最小ランクフォード値rminが1.8を超えておらず、耐二次加工脆性が劣っていた。
この対比から、合金設計,製造条件共に耐二次加工脆性の向上に重要であることが判る。
【0037】
【0038】
【発明の効果】
以上に説明したように、合金設計に併せて、熱延板焼鈍,中間焼鈍,仕上げ冷間圧延等の製造条件を適正に管理することにより、面内方向全方位に沿ったランクフォード値rの最小値rminが1.8以上となり、過酷な条件下で二次加工されても二次加工脆化に起因する割れの発生がなく、良好な製品形状に成形できるフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材が製造される。このフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材は、優れた耐二次加工脆性及び耐食性を活用し、シンク,各種器物,コンロ用バーナ等の家庭用機器の部品、燃料等のタンク,給油管,パイプ,モータケース,カバー,センサー,インジェクタ,サーモスタットバルブ,ベアリングシール材,フランジ等、広範な分野で使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 冷延焼鈍材の面内全方位に沿って測定したランクフォード値が測定方位で変わることを示したグラフ
Claims (3)
- C:0.015質量%以下,Si:0.5質量%以下,Mn:0.5質量%以下,P:0.050質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:10.0〜23.0質量%,Al:0.10質量%以下,N:0.020質量%以下,Ti:0.10〜0.25質量%,Nb:0.15〜0.35質量%,B:0.0005〜0.0035質量%を含み、かつNb/Tiの質量比が0 . 9以上になるように調整され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、面内全方向に沿って測定したランクフォード値rの最小値rminが1.8以上であることを特徴とする二次加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材。
- 更にNi:0.5質量%以下,Mo:3.0質量%以下,Cu:0.3質量%以下,V:0.3質量%以下,Zr:0.3質量%以下の1種又は2種以上を含み、Nb/Tiの質量比が1.0以上である請求項1記載のフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材。
- 請求項1又は2記載の組成をもつステンレス鋼スラブを熱延鋼帯とし、700〜950℃の温度域で1時間以下加熱する焼鈍を熱延鋼帯に施し、中間冷間圧延後に(再結晶温度−100℃)〜再結晶完了温度の温度域に1分以下加熱する中間焼鈍を施し、圧延率80%以上で仕上げ冷間圧延することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼冷延焼鈍材の製造方法。
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