JP4587739B2 - 深絞り後の二次加工性および耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板並びに深絞り容器 - Google Patents

深絞り後の二次加工性および耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板並びに深絞り容器 Download PDF

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Description

本発明は、深絞り性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼板であって、特に深絞り後の二次加工性および耐食性を改善したもの、並びにそれを用いた深絞り容器に関する。
代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304は、耐食性、加工性ともに良好であり、流し台シンクをはじめとする多くのプレス加工品に使用されている。SUS304の加工性が優れているのは、オーステナイト(γ)相が加工されると硬質な加工誘起マルテンサイト(α')相への変態が起こり、加工硬化指数(n値)が高くなることによる。これはTRIP(Transformation Induced Plasticity)と呼ばれる現象である。
この特性を活かし、SUS304は深絞り加工用途にも多く使用されている。深絞り加工は周知のとおり、円板(ブランク)をポンチとダイスによって絞り抜いて継ぎ目のない底付き円筒状容器を作る加工法であるが、材料が受ける歪みの分布は複雑である。すなわち、深絞り後の容器は「底部」、「ポンチ肩部」、「側面部」からなり、底部とポンチ肩部は、いわゆる張出し変形を受けるので2軸引張歪となる。これに対し円筒形状の「側面部」は、ダイスとしわ押さえの間およびダイス肩部を通過するときに、ブランク半径方向の引張変形と円周方向の圧縮変形を受けるため、引張歪と圧縮歪を同時に併せ持つことになる。しかも通常、円周方向の圧縮歪の方が半径方向の引張歪よりも勝った状態となる。
SUS304のような加工誘起マルテンサイト(α')が生成する準安定オーステナイト系鋼種を深絞りに用いると、特にポンチ肩部で生成したα'によって当該部位の強度が向上し、絞り加工中にこの部位での割れが防止されて高い限界絞り比(LDR)が得られる。しかし、SUS304では用途によって時期割れが問題になることがあり、また、より優れた深絞り性・張出し性が求められるようになったことから、種々の深絞り用オーステナイト系ステンレス鋼が開発されている(特許文献1〜5)。
特開平8−269618号公報 特開平8−269634号公報 特開平8−269635号公報 特開平9−3605号公報 特開平9−13149号公報
上記特許文献にはLDRが2.20以上の優れた深絞り性を有するオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。しかしながら、深絞り製品は、それをベースに更なる加工(二次加工)に供され、最終製品に仕上げられることが多い。この場合、深絞り後の容器は硬質なα'を多量に含んでいるため、そのまま二次加工に供すると割れなどのトラブルが起きやすい。特に「側面部」は加工歪の状態に異方性を生じており、二次加工を施す際には一層の注意が必要となる。
今後、各種金属加工品の製造においては、より複雑形状への加工性や、加工工程の簡略化がますます求められるようになり、素材に対する要求も一段と厳しいものとなることが予想される。深絞りに供される鋼板についても例外ではない。これまでに開発されてきた高深絞り性オーステナイト鋼においても、深絞り後の二次加工性については更なる改善が望まれるところである。
本発明は、このような現状に鑑み、深絞り後の二次加工性および耐食性を改善した鋼板、並びにそれを用いた深絞り容器を安定的に提供することを目的とする。
発明者らは種々実験の結果、加工誘起マルテンサイト(α')が生じる準安定オーステナイト系ステンレス鋼においては、「圧縮歪」を受けたときのα'生成量と「引張歪」を受けたときのα'生成量に大きな差が生じるものと、そうでないものがあることを知見した。そして更なる調査により、そのようなα'生成挙動の相違は、鋼の積層欠陥エネルギー(SFE)に大きく依存することを突き止めた。積層欠陥エネルギーが高いほど、圧縮歪に起因するα'変態が抑制されるのである。
詳細な検討の結果、積層欠陥エネルギーは化学組成によってコントロール可能であることがわかった。つまり、特定の組成範囲において積層欠陥エネルギーの高い鋼が得られる。積層欠陥エネルギーの高い鋼を深絞りに使うと、絞り比2.20というような高い加工率の深絞りにおいても、圧縮歪成分の大きい側面部においてα'生成量が顕著に抑制されることが明らかになった。そして、側面部のα'量が低減すれば、側面部での二次加工性が顕著に改善されることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明で提供する深絞り後の二次加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板は、下記K値が0.75以下となるものである。
K値=真歪0.2の圧縮変形で生成するα'量/真歪0.2の引張変形で生成するα'量
ただし、試験温度は20℃とする。
より具体的には、K値は次のようにして求めることができる。すなわち、調査対象の鋼板から、圧延方向に平行方向の試験片を、圧縮試験用と引張試験用に採取する。圧縮試験用、引張試験用とも、JIS 13B号引張試験片を用いることができる。圧縮試験は、試験片を通常の引張試験と同様に引張試験機(ただし圧縮方向の応力−歪曲線が採れるもの)にセットし、20mm/minの速度で圧縮歪を加えていく方法で行う。そして、真歪0.2の圧縮歪を付与したサンプルを作製する。この真歪0.2は応力を除去した状態での歪量である。引張試験も、試験片を通常の引張試験と同様に引張試験機にセットし、20mm/minの速度で引張歪を加えていく方法で行い、真歪0.2の引張歪を付与したサンプルを作製する。この真歪0.2も応力を除去した状態での歪量である。次いで、圧縮歪を付与したサンプルおよび引張歪を付与したサンプルについて、それぞれ試験片平行部の長手方向に垂直な断面を顕微鏡観察することにより、金属組織からα'量を求める。そして、前者と後者のα'量の比を算出し、これをK値とする。なお、試験温度は圧縮試験および引張試験とも、変形中、20℃±2℃に制御する。
K値が0.75以下となるオーステナイト系ステンレス鋼板において、特にSi、Mn、Ni、Cr、CuおよびAlの含有量がそれぞれ、質量%で、Si:0.1〜1.5%、Mn:1.5%未満、Ni:6〜10%、Cr:16〜20%、Cu:0.5〜1.9%、Al:0〜1.5%を満たすものが提供される。
ここでAlの下限0%は、製鋼における通常の分析で含有量が測定限界以下となる場合である。
上記のような深絞り後の二次加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板は、例えば以下の化学組成において実現できる。
質量%で、C:0.005〜0.080%、Si:0.1〜1.5%、Mn:1.5%未満、Ni:6〜10%、Cr:16〜20%、N:0.005〜0.070%、Cu:0.5〜1.9%、Al:0〜1.5%、残部Feおよび不可避的不純物であり、下記A値が1.5以下、下記B値が1.73以上好ましくは1.73以上3.5以下である組成。
A値=Si+Mn
B値=Cu+3Al
ここで、A値およびB値の元素記号の箇所には質量%で表されたそれぞれの元素の含有量が代入される。
また本発明では、上記のステンレス鋼板において、特に側面部に穴拡げ加工を施す深絞り容器用のオーステナイト系ステンレス鋼板が提供される。さらに、上記のオーステナイト系ステンレス鋼板を深絞り加工してなる側面穴拡げ加工用深絞り容器が提供される。
本発明によれば、従来、深絞り性を改善したオーステナイト系ステンレス鋼において実現が難しかった、「良好な深絞り性」と「深絞り後の二次加工性の改善」を同時に達成することができた。特に、引張歪と圧縮歪が混在して、加工歪に異方性のある側面部において、二次加工性を安定的に顕著に改善することが可能になった。したがって本発明は、深絞り製品をベースにした加工品の設計自由度を高め、工程簡略化や、より複雑形状への加工を可能にするものである。
前述のように、発明者らは準安定オーステナイト系ステンレス鋼の積層欠陥エネルギーが、圧縮変形時および引張変形時の加工誘起マルテンサイト(α')相の生成挙動と深く関わっていることを知見した。
積層欠陥エネルギーが低い場合は、外部から応力が加わると、まずγ相からε相への変態が優先的に起きる。ε相は母相γ(fcc構造)の最密面に生成する積層欠陥の1種である。ε相が種々の最密面に生成すると、その交差した場所で応力集中が生じる。外部からの応力がさらに加わるとα'変態が起きるが、そのα'変態はε相の交差した箇所に生じた内部応力を駆動力として起きると考えられる。このため、引張、圧縮といった外部の応力状態にあまり依存することなくα'変態が生じる。
一方、積層欠陥エネルギーが高い場合はε変態が起こりにくい。ε変態が起こりにくいと、α'変態は外部の応力を直接の駆動力として起きることになる。後述するように、発明者らは積層欠陥エネルギーが高い場合に、圧縮応力状態と引張応力状態とでα'相の生成量に差が生じることを知見した。圧縮応力下では引張応力下よりもα'変態が起こりにくいのである。そのメカニズムについては十分解明されていないところもあるが、α'変態によって生じる「体積膨張」が大きく関わっているものと推察される。すなわち、圧縮応力成分を伴う応力場では、例えば2軸引張のような引張応力成分優位の応力場と比べ、体積膨張を伴う変態は生じにくいと考えられる。このようなことから、意図的に積層欠陥エネルギーを高めた準安定オーステナイト系ステンレス鋼を採用することにより、圧縮応力を伴う変形モードでのみ選択的にα'の生成量を抑制することが可能になると考えられる。
積層欠陥エネルギーは、一定の歪量を付与した試料中に生じるε相あるいは積層欠陥の量を測定することによって評価することができる。発明者らは、種々の成分組成を有する準安定オーステナイト系ステンレス鋼について、以下のような方法で積層欠陥エネルギーを評価した。
通常の製法により熱間圧延→焼鈍→冷間圧延→焼鈍を含む工程で板厚1.0mmの冷延焼鈍鋼板を作り、圧延方向に平行方向のJIS 13B号引張試験片を採取し、これを用いて常温で真歪0.2の引張歪を付与したサンプルを作製する。このサンプルの平行部における引張方向と垂直な断面について透過型電子顕微鏡観察を行い、倍率30000倍の観察視野をランダムに20以上選び、視野中にε相あるいは積層欠陥が認められるか否かを判定する。そして、全観察視野数のうち、ε相あるいは積層欠陥が認められた視野の割合(以下「積層欠陥生成頻度」という)を求め、積層欠陥生成頻度が小さい(すなわち積層欠陥が生じにくい)ほど積層欠陥エネルギーが高いと評価する。
このような詳細な調査の結果、準安定オーステナイト系ステンレス鋼の積層欠陥エネルギーは化学組成によって意図的にコントロールできることがわかった。すなわち、SiおよびMnは積層欠陥エネルギーを低下させ、CuおよびAlは積層欠陥エネルギーを高める。具体的には、準安定オーステナイト系ステンレス鋼において、下記A値が1.5以下およびB値が1.5以上の組成域で積層欠陥エネルギー(積層欠陥生成頻度)は顕著に増大する。本発明ではA値が1.5以下、B値が1.73以上のものを対象とする。
A値=Si+Mn
B値=Cu+3Al
図1には、後述表1の準安定オーステナイト系ステンレス鋼について、A値およびB値と積層欠陥生成頻度の関係を示す。図中の数字は積層欠陥生成頻度(%)を表し、●は本発明対象鋼である。本発明対象鋼の積層欠陥エネルギー(積層欠陥生成頻度)は他のものと比べ急変していることがわかる。
実際に、積層欠陥エネルギーが高い準安定オーステナイト系ステンレス鋼板を用いて深絞りを行うと、得られた深絞り容器の側面部においてα'相の生成量が顕著に低減する。容器の側面部は前述のように圧縮成分を多く含んだ歪をもつ部位である。
また、深絞り容器の側面部に穴拡げなどの二次加工を施すと、α'量の少ない場合には顕著に加工性が改善されることが確認された。
その例として、図2には積層欠陥エネルギーが低い比較例の準安定オーステナイト系ステンレス鋼板(図2(a))と積層欠陥エネルギーが高い本発明例の準安定オーステナイト系ステンレス鋼板(図2(b))について、深絞り後の側面部に同じ穴拡げ加工を施した後のサンプル外観写真を示す。これらはいずれも、板厚1.0mmの冷延焼鈍鋼板(2D仕上)について、ポンチφ40mmR6、絞り速度20mm/min、絞り比2.20の深絞りを行った後、側面部に内側から2.0mm径の小穴を開け、円錐状のポンチで穴を3.0mm径に拡げたものである。図2(a)は後述表1のNo.7鋼、図2(b)は同表のNo.1鋼である。写真の容器左端は耳部を切断除去した端面である。
側面部のα'生成量を低く抑えた本発明例のものは、比較例のものに比べ、側面部での二次加工性が顕著に改善されていることがわかる。
以下、本発明を特定するための事項について説明する。
下記K値は、圧縮変形時と引張変形時における加工誘起マルテンサイト(α')の生成量の比を採ったものである。
K値=真歪0.2の圧縮変形で生成するα'量/真歪0.2の引張変形で生成するα'量
このK値は、前述した試験方法により算出することができる。K値が0.75%以下の鋼板では、絞り比2.20という加工度の高い深絞りを施した後において、側面部での二次加工性が顕著に改善される。K値は0.70以下とすることがより好ましく、0.67%以下とすることが一層好ましい。
Cは、強力なオーステナイト生成元素であり、α'相の強度を高め、深絞り性、張出し性の向上に有効である。その効果を十分得るには0.005質量%以上のC含有が必要である。ただし、耐時期割れ性を確保するために0.080質量%以下とする。
Siは、脱酸剤として0.1質量%以上添加することが望ましい。ただし、Si含有量が多くなると積層欠陥エネルギーが低下し、K値が高くなる。このため、Si含有量の上限は1.5質量%に制限される。Siは1.0質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以下が一層好ましい。
Mnは、オーステナイトを安定化し、鋼材の軟質化にも有利に作用する。その効果を十分に発揮させるためには0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上のMn含有が望ましい。しかし、Mn含有量が増大すると積層欠陥エネルギーが低下し、K値が高くなる。このため、Mn含有量は1.5質量%未満に制限され、1.1質量%以下が一層好ましい。
Niは、オーステナイト生成元素であり、またオーステナイトを安定化する元素である。焼鈍状態でオーステナイト単相組織とし、適度な加工性を持たせるために、本発明では6質量%以上の含有が必要である。7質量%以上を確保することが望ましい。ただし多量に添加すると過度にオーステナイトが安定化し、却って加工性が低下する。このため、10質量%以下の含有量に抑える必要があり、9質量%以下とすることが好ましい。
Crは、耐食性を確保するために16質量%以上必要である。ただし、多量に添加するとδフェライトが生じやすくなり、熱間加工性を損なうので20質量%以下とする。
Nは、強力なオーステナイト生成元素であり、α'相の強度を高め、深絞り性、張出し性の向上に有効である。このため、0.005質量%以上含有させる。ただし、耐時期割れ性を確保するために0.070質量%以下とする。
Cuは、オーステナイトを安定化する元素である。また、積層欠陥エネルギーを高め、K値を低減する上で有効である。ただし、多量に添加すると熱間加工性が低下するため、2.5質量%以下にする必要がある。
なお、耐食性を重視する用途では、Cu含有量は2質量%未満に抑えるべきである。図3のグラフは、Cuを除く各元素の含有量が本発明規定範囲にある準安定オーステナイト系ステンレス鋼について、30℃の3.5%NaCl水溶液中での孔食電位に及ぼすCu含有量の影響を見たものある。本発明ではSUS430系鋼レベルの孔食電位(約150mV vs SCE)を確保するために、Cu含有量は好ましい範囲である1.9質量%以下とする
Alは、積層欠陥エネルギーを高める元素である。ただし、多量に添加するとδフェライトが生じやすくなり、熱間加工性を損なうので、Alを含有させる場合は1.5質量%以下の範囲で行う。1.0質量%以下とすることが好ましい。
本発明で目的とする深絞り後の側面部での二次加工性を顕著に改善した鋼板は、前述のように、前記A値を1.5以下、かつB値を1.73以上としたものにおいて実現できる。ただし、B値については3.5以下とすることが好ましい。B値が3.5を超えると熱間加工性の低下が問題となりやすいからである
表1に示す準安定オーステナイト系ステンレス鋼を真空溶解炉にて溶製し、熱間圧延して板厚3.0mmの熱延板を得た。これを1050℃で2分焼鈍し、酸洗後、1mmまで冷間圧延し、その後1050℃×2分の焼鈍を施し、酸洗し、供試鋼板を得た。
各供試鋼板(板厚1.0mm)から、圧延方向に平行方向のJIS 13B号引張試験片を切り出し、これを用いて室温(20℃)での圧縮試験および引張試験を実施し、前記K値を求めた。変形中の温度変化は圧縮試験、引張試験とも±2℃以内に制御した。試験法の詳細は前述の通りである。
また、各供試鋼板について深絞り試験(板厚1.0mm、ポンチφ40mmR6、速度20mm/min)を実施し、限界絞り比(LDR)を求めた。
LDRが2.20以上の優れた深絞り性を示した材料については、絞り比2.20で絞った深絞り容器(カップ)を用いて、カップ側面部の穴拡げ試験を実施し、二次加工性を評価した。
穴拡げ試験は、カップ側面部の内側からD0=2.0mm径の穴を開け、円錐状ポンチで内側から穴を拡げる方法で行った。穴周辺に亀裂または割れが生じた時の穴径D1(mm)を測定し、下記の式により穴拡げ比を求めた。
穴拡げ比=(D1−D0)/D0
これらの試験結果を表2に示す。
表2からわかるように、引張変形時のα'生成量に比べ圧縮変形時のα'生成量が大幅に抑制される特性をもち、K値≦0.75を満たす本発明例の鋼板は、LDRが2.20と良好であるとともに、深絞り後の側面部における穴拡げ比も0.4以上の優れた値を示し、二次加工性に優れるものであった。すなわち、「良好な深絞り性」と「深絞り後の二次加工性の改善」を両立させることができた。これら本発明例の鋼板は、前記A値≦1.5、かつB値≧1.73を満たす組成に調整したものである。なお、これらの本発明例の鋼板は、B値が3.5以下に組成コントロールされているため、熱間加工性も良好であり、特段の製造コストの上昇は生じなかった。
これに対し、引張変形時と圧縮変形時でα'生成量にあまり差が見られず、K値≦0.75を満たしていない比較例のものは、LDR2.20の良好な深絞り性を示すものにおいて側面部の穴拡げ比は高々0.24であり、「良好な深絞り性」と「深絞り後の二次加工性の改善」を両立できなかった。これら比較例の鋼板はA値≦1.5およびB値≧1.73の一方または両方を満たしていないものである。
準安定オーステナイト系ステンレス鋼板について、積層欠陥生成頻度(%)に及ぼすA値(Si+Mn)とB値(Cu+3Al)の影響を表したグラフ。 積層欠陥エネルギーが低い比較例の準安定オーステナイト系ステンレス鋼板(図2(a))と積層欠陥エネルギーが高い本発明例の準安定オーステナイト系ステンレス鋼板(図2(b))について、深絞り後の側面部に同じ穴拡げ加工を施した後のサンプル外観写真。 準安定オーステナイト系ステンレス鋼板について、3.5%NaCl水溶液中での孔食電位に及ぼすCu含有量の影響を表すグラフ。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.080%、Si:0.1〜1.5%、Mn:1.5%未満、Ni:6〜10%、Cr:16〜20%、N:0.005〜0.070%、Cu:0.5〜1.9%、Al:0〜1.5%、残部Feおよび不可避的不純物であり、下記A値が1.5以下、下記B値が1.73以上である深絞り後の二次加工性および耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
    A値=Si+Mn
    B値=Cu+3Al
  2. 前記B値が1.73〜3.5である請求項に記載の深絞り後の二次加工性および耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
  3. さらに下記K値が0.75以下となる請求項1または2に記載の深絞り後の二次加工性および耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
    K値=真歪0.2の圧縮変形で生成するα'量/真歪0.2の引張変形で生成するα'量
    ただし、試験温度は20℃とする。
  4. 側面部に穴拡げ加工を施す深絞り容器用である請求項1〜3のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼板を深絞り加工してなる側面穴拡げ加工用深絞り容器。
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