JP2001065578A5 - - Google Patents
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Description
【発明の名称】グリースを封入した密封板付転がり軸受
【特許請求の範囲】
【請求項1】内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けた複数の転動体と、上記外輪の内周面両端部と上記内輪の外周面両端部との間に設けられ、これら外輪の内周面と内輪の外周面との間に存在し上記各転動体を設けた空間の軸方向両端開口部を塞ぐ、それぞれが弾性材を有する1対の密封板と、この空間内でこれら両密封板同士の間部分に封入したグリースとを備えたグリースを封入した密封板付転がり軸受に於いて、このグリースはウレア系グリースであり、上記弾性材は、少なくとも弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体を含み、加硫可能な弗素ゴム組成物である事を特徴とするグリースを封入した密封板付転がり軸受。
【請求項2】内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けた複数の転動体と、上記外輪の内周面両端部と上記内輪の外周面両端部との間に設けられ、これら外輪の内周面と内輪の外周面との間に存在し上記各転動体を設けた空間の軸方向両端開口部を塞ぐ、それぞれが弾性材を有する1対の密封板と、この空間内でこれら両密封板同士の間部分に封入したグリースとを備えたグリースを封入した密封板付転がり軸受に於いて、このグリースはウレア系グリースであり、上記弾性材は、少なくともテトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体を含み、加硫可能な弗素ゴム組成物である事を特徴とするグリースを封入した密封板付転がり軸受。
【請求項3】弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体の共重合の割合が、弗化ビニリデンが1〜70モル%、テトラフルオロエチレンが1〜70モル%、プロピレンが凡そ1〜70モル%である、請求項1に記載したグリースを封入した密封板付転がり軸受。
【請求項4】テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体の共重合の割合が、テトラフルオロエチレンが20〜80モル%、プロピレンが凡そ20〜80モル%である、請求項2に記載したグリースを封入した密封板付転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係るグリースを封入した密封板付転がり軸受は、例えばオルタネータ、コンプレッサ等、エンジンルーム内に設置する自動車用補機の回転支持部を構成する為に利用する。即ち、本発明は、使用時に高温(例えば最高使用温度が170℃以上)で使用される、グリースを封入した密封板付転がり軸受の信頼性並びに耐久性の向上を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
各種機械装置の回転支持部分を構成する為に、図1又は図2に示す様な密封板付転がり軸受1、1aを使用している。この密封板付転がり軸受1、1aは、内周面の軸方向中間部に外輪軌道2を有する外輪3と、外周面の軸方向中間部に内輪軌道4を有する内輪5と、これら外輪軌道2と内輪軌道4との間に転動自在に設けた複数の転動体6とを備える。又、上記外輪3の内周面両端部と上記内輪5の外周面両端部との間には密封板7a、7bを設け、この密封板7a、7bにより、上記外輪3の内周面と内輪5の外周面との間に存在し上記各転動体6を設けた空間8の軸方向両端開口部を塞いでいる。そして、この空間8内で1対の密封板7a、7b同士の間部分にグリースを封入して、上記外輪軌道2及び内輪軌道4と上記各転動体6の転動面との転がり接触部の潤滑を図っている。
【0003】
上記各密封板7a、7bは何れも、鋼板等の金属板を円輪状に形成して成る芯金9と、この芯金9を包み込む様にして設け、この芯金9により補強された弾性材10a、10bとから成る。この弾性材10a、10bの内外両周縁部は、上記芯金9の内外両周縁部よりも直径方向に突出している。この様な密封板7a、7bは、何れの場合も、上記弾性材10a、10bを、上記外輪3の内周面両端部に形成した係止溝11に係止する事により、上記空間8の軸方向両端位置に支持している。尚、上記弾性材10a、10bのうち、図1に示した弾性材10aの内周縁部は、上記内輪5の一部表面に摺接させているのに対して、図2に示した弾性材10bの内周縁部は、上記内輪5の一部表面に近接対向させている。即ち、図1に示した密封板7aは接触式シールであり、図2に示した密封板7bは、非接触式シールである。
【0004】
上述の様な、グリースを封入した密封板付転がり軸受1、1aを構成する、上記空間8内に封入するグリース、上記密封板7a、7bを構成する弾性材10a、10bの材質としては、従来からそれぞれ次の(1) 〜(5) の様なものが、一般的に使用されている。
[グリース]
(1) 増ちょう剤をイソシアネートとアミンとから成るウレア化合物とし、基油をPAO又はエーテル又はPAOとエーテルとの混合物としたウレア系グリース
(2) 優れた高温特性を有する弗素系グリース
[弾性材10a、10b]
(3) アクリル酸エチルを重合して得られるアクリルゴム
(4) 弗化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとを共重合して得られる弗素ゴム
(5) 弗化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとを共重合して得られる弗素ゴム
【0005】
従来は、上記(1)(2)のうちから選択したグリースと、上記(3) 〜(5) のうちから選択したゴムにより造った弾性材10a、10bを含んで構成した密封板7a、7bとを適宜組み合わせて、グリースを封入した密封板付転がり軸受1、1aを構成していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な、従来から知られている材質による、グリースと弾性材10a、10bとの組み合わせでは、高温下では必ずしも十分な信頼性並びに耐久性を確保できない可能性がある。
【0007】
先ず、(2) に示した弗素系グリースと、(4) 又は(5) に示した弗素ゴムとを組み合わせた場合には、耐熱性は十分ではあるが、高速、高荷重となる様な使用条件下では、グリースの耐久性が不十分である。従って、オルタネータ、コンプレッサ等の回転支持部を構成するには不適である。
又、(2) に示した弗素系グリースと、(3) に示したアクリルゴムとの組み合わせでは、高速、高荷重となる様な使用条件下でグリースの耐久性が不十分になるだけでなく、高温状態で長期間使用した場合にアクリルゴムの弾性が低下し、密封板7a、7bによるシール性が低下する。従って、この様な組み合わせも、オルタネータ、コンプレッサ等の回転支持部を構成するには不適である。
【0008】
又、(1) に示したウレア系グリースと、(3) に示したアクリルゴムとの組み合わせでは、高温状態で長期間使用した場合にアクリルゴムの弾性が低下し(硬くなり)、密封板7a、7bによるシール性が低下する。従って、この様な組み合わせも、オルタネータ、コンプレッサ等の回転支持部を構成するには不適である。
更に、(1) に示したウレア系グリースと、(4) 又は(5) に示した弗素ゴムとを組み合わせた場合には、高温時に弗素ゴムがウレア化合物による影響で弾性が低下し密封板7a、7bによるシール性が低下する。従って、この様な組み合わせも、オルタネータ、コンプレッサ等の回転支持部を構成するには不適である。
【0009】
上述の様に、グリースとして弗素系グリースを使用した場合には、何れの場合でも、高速、高荷重となる様な使用条件下でのグリースの耐久性が不十分になり、グリースを封入した密封板付転がり軸受の耐久性を十分に確保できない。この点に就いて、本発明者が行なった実験の結果に就いて、図3により説明する。実験は、内径が17mm、外径が52mm、幅が17mmである深溝型の玉軸受を使用して行なった。この玉軸受を、雰囲気温度を180℃とし、150kgf のラジアル荷重を付与した状態で、内輪を18000r.p.m.で回転させ、潤滑不良に基づく焼き付きが発生するまでの時間を測定した。試料として、ウレア系グリースを封入したものと、弗素系グリースを封入したものとを2個ずつ、合計4個用意した。この様にして行なった実験の結果を表す図3から明らかな通り、弗素系グリースを使用した場合には、10〜20時間程度で焼き付きが発生した。これに対して、ウレア系グリースを使用した場合には、何れの試料に就いても、500時間経過した時点でも焼き付きは発生しなかった。尚、実験は、500時間経過した時点で終了した。
【0010】
上述の様な実験の結果から、オルタネータ、コンプレッサ等、エンジンルーム内に設置する自動車用補機の回転支持部を構成する為の密封板付転がり軸受に封入するグリースはウレア系のものが好ましい事が分る。一方、前述した様に、ウレア系グリースと前述の(4) 又は(5) に示した従来から知られている弗素ゴムとの組み合わせの場合には、前述した様に高温下で弗素ゴムが硬くなって、十分なシール性確保が難しい。この点に就いて、本発明者が行なった実験の結果を次の表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
この表1にその結果を示した実験は、ウレア系又は弗素系のグリース中に、従来から密封板7a、7bの弾性材10a、10b用として使用していた、前述の(4)(5)の様な弗素ゴム、及び前述の(3) の様なアクリルゴムの試料片を埋没させる事で行なった。試験時の雰囲気温度は190℃、試験時間(埋没継続時間)は100時間とした。そして、この100時間経過後にグリース中から取り出した試験片を目視観察し、膨潤、損傷等の外観異常がある場合を×とし、ない場合を○として、上記表1に記載した。前記図3にその結果を表した実験と、上記表1にその結果を示した実験とから、オルタネータ、コンプレッサ等、エンジンルーム内に設置する自動車用補機の回転支持部を構成する為の密封板付転がり軸受に封入するグリースはウレア系のものが好ましく、ウレア系のグリースとの相性が良い、密封板7a、7bの弾性材10a、10bは、アクリルゴムである事が分る。
【0013】
但し、上記密封板7a、7bの弾性材10a、10bとしてアクリルゴムを使用した場合には、前述した様に、高温状態で長期間使用した場合にアクリルゴムの弾性が低下し、密封板7a、7bによるシール性を長期間に亙り十分に確保する事が難しい。従って、アクリルゴムも、上記密封板付転がり軸受の弾性材10a、10b用としては好ましくない。
本発明のグリースを封入した密封板付転がり軸受は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のグリースを封入した密封板付転がり軸受は、前述した従来から知られているグリースを封入した密封板付転がり軸受と同様に、内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けた複数の転動体と、上記外輪の内周面両端部と上記内輪の外周面両端部との間に設けられ、これら外輪の内周面と内輪の外周面との間に存在し上記各転動体を設けた空間の軸方向両端開口部を塞ぐ、それぞれが弾性材を有する1対の密封板と、この空間内でこれら両密封板同士の間部分に封入したグリースとを備える。
【0015】
特に、請求項1に記載したグリースを封入した密封板付転がり軸受に於いては、上記グリースは、ウレア系グリースである。又、上記弾性材は、少なくとも弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体を含み、加硫可能な弗素ゴム組成物である。
【0016】
尚、上記弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体として好ましくは、請求項3に記載した様に、共重合の割合が、弗化ビニリデンが凡そ1〜70モル%(より好ましくは2〜65モル%)、テトラフルオロエチレンが凡そ1〜70モル%(より好ましくは20〜60モル%)、プロピレンが凡そ1〜70モル%(より好ましくは10〜45モル%)であるものを使用する。この様な弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体としては、住友スリーエム社製の「BRE LJ−298005」(商品名)等の市販品を使用できる。
【0017】
更に、請求項2に記載したグリースを封入した密封板付転がり軸受に於いては、上記グリースはウレア系グリースである。又、上記弾性材は、少なくともテトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体を含み、加硫可能な弗素ゴム組成物である。
【0018】
尚、上記テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体として好ましくは、請求項4に記載した様に、共重合の割合が、テトラフルオロエチレンが凡そ20〜80モル%(より好ましくは40〜60モル%)、プロピレンが凡そ20〜80モル%(より好ましくは40〜60モル%)であるものを使用する。この様なテトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体としては、旭硝子社製の「アフラス150」(商品名)等の市販品を使用できる。
【0019】
上記した3元共重合体、2元共重合体、又はこれらを適宜混合した複合体の何れの弗素ゴムの場合も、加硫上、物性上、加工上、要求される各種配合剤を添加してから、オープンロール、ニーダー等を使用した公知の方法により混練して成分を調整する。そして、この調整作業により得られた組成物を、ヒートプレス等の公知の加硫方法により加硫成形して、前述の図1又は図2に示す様な弾性材10a、10bとする。この加硫成形の際、この弾性材10a、10bと共に密封板7a、7bを構成する芯金9は、成形用のキャビティ内にセットしておく。
【0020】
【作用】
本発明のグリースを封入した密封板付転がり軸受の場合、グリースとしてウレア化合物を使用するので、高温でしかも高速、高荷重となる様な使用条件下でも、グリースの耐久性を十分に確保できる。又、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体、又は上記テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体、更にはこれら各共重体を混合した複合体である弗素ゴムは、十分な耐熱性を有し、しかも高温下でウレア化合物と接触した場合でもあまり硬くならない。この為、高温化で長期間に亙り使用した場合でも、密封板によるシール性を十分に確保できる。
【0021】
【実施例】
本発明の効果を確認する為に、本発明者が行なった実験の結果に就いて説明する。実験には、次の表2に示した4種類の試料(本発明の技術的範囲から外れる比較例を2種類、本発明の技術的範囲に属する実施例を2種類)を用意し、それぞれに就いてウレア系グリースによる物性変化を測定した。
【0022】
【表2】
【0023】
尚、上記表2の最左欄中、*1は、日本ゼオン社製のアクリルゴムの商品名を、*2は、住友スリーエム社製の弗化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンの2元共重合体である弗素ゴムの商品名を、*3は、住友スリーエム社製の弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体である弗素ゴムの商品名を、*4は、旭硝子社製のテトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体である弗素ゴムの商品名を、*5は、旭カーボン社製のMAFカーボンの商品名を、*6は、Manville社製の珪藻土の商品名を、*7は、協和化学工業社製の酸化マグネシウムの商品名を、*8は、近江化学社製の水酸化カルシウムの商品名を、*9は、日本化成社製のトリアリルイソシアネートの商品名を、*10は、日本油脂社製の有機過酸化物の商品名を、*11は、基油がエーテルであり、増ちょう剤がウレア化合物であるウレア系グリースを、*12は、基油がエーテルとPAOとの混合物であり、増ちょう剤がウレア化合物であるウレア系グリースを、それぞれ表している。
【0024】
上述の様な表2に記載した組成物をオープンロールで混練して得た混練物を、この表2に示した条件で加硫して加硫成形物を得た。この様にして得られた加硫成形物のうち、弗素系ゴムを使用した比較例2と実施例1、2とに就いて、それぞれ180℃に加熱したウレア系グリース中に70時間浸漬した後取り出して、各加硫成形物の常態物性及び体積の変化を測定した。このうちの常態値の測定は、JIS K 6251、JIS K 6253に準拠する方法で行ない、体積変化の測定は、JIS K 6258に準拠する方法で行なった。この様にして得られた実験の結果を、前記表2に示す。
【0025】
この様な表2の記載から明らかな通り、密封板を構成する弾性材を、テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体である弗素ゴム、或は弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体である弗素ゴムにより構成すれば、高温下でウレア系グリースと接触した場合でも、物性並びに体積の変化を少なく抑える事ができる。この事は、ウレア系グリースを使用した場合でも、長期間に亙り良好なシール性を発揮できる事を意味する。
【0026】
又、本発明者は、密封板を構成する弾性材の硬度が、この弾性材の材質とグリースの材質との相性や温度との関係で変化する状態を知る為に、第二の実験を行なった。この第二の実験は、内径が15mm、外径が35mm、幅が11mmである、呼び番号が6202で接触型の密封板を有する深溝型の玉軸受を使用して、高温雰囲気中に放置する事により行なった。雰囲気温度は180℃、放置する時間は500時間とした。そして、開始してから70時間、168時間、500時間経過した時点で、それぞれの試料に組み込んだ密封板を構成する弾性材の硬度を、JIS K 6253(IRHD)に規定した、国際ゴム硬さ試験の測定方法により測定した。
【0027】
この様な第二の実験の結果を図4に示す。この図4に示した4本の曲線のうち、実線aは、従来から知られている弗素ゴム製の弾性材を備えた密封板とウレア系グリースとを組み合わせたものの、破線bは、アクリルゴム製の弾性材を備えた密封板とウレア系グリースとを組み合わせたものの、一点鎖線cは、本発明に属する、弗素ゴム製の弾性材を備えた密封板とウレア系グリースとを組み合わせたものの、二点鎖線dは、従来から知られている弗素ゴム製の弾性材を備えた密封板と弗素系グリースとを組み合わせたものの、それぞれ実験結果を示している。この様な図4に示した実験結果から明らかな通り、本発明によれば、グリースとして弗素系グリースを使用した場合と同様に、弾性材の硬度の変化を低く抑えられる。尚、弗素系グリースを使用した場合には、高回転、高荷重の運転条件では、十分な耐久性を確保できない事は、前述の通りである。又、図4で、アクリルゴム製の弾性材の硬度が大きくなっているのは、ウレア系グリースとの相性の問題ではなく、アクリルゴム自体の耐熱性の問題からである。
【0028】
更に本発明者は、高速運転時に於けるグリースの耐久性に就いて実験した。この実験の結果に就いて、図5により説明する。実験は、内径が17mm、外径が52mm、幅が17mmである深溝型の玉軸受を使用して行なった。この玉軸受を、雰囲気温度を180℃とした状態で、内輪を18000r.p.m.で回転させ、潤滑不良に基づく焼き付きが発生するまでの時間を測定した。試料として、前述の表2に示した様な、アクリルゴム製の弾性材を含む密封板とウレア系グリースとを組み合わせたもの(比較例1)と、本発明に属する弗素ゴム製の弾性材を含む密封板とウレア系グリースとを組み合わせたもの(本発明品)と、従来から知られている弗素ゴム製の弾性材を含む密封板とウレア系グリースとを組み合わせたもの(比較例2)とを2個ずつ、合計6個用意した。この様にして行なった実験の結果を表す図5から明らかな通り、アクリルゴム製或は従来から知られている弗素ゴム製の弾性材を含む密封板を使用した場合には、650〜800時間程度でシール欠損が発生した為、評価試験を中止した。これに対して、本発明に属する弗素ゴム製の弾性材を含む密封板を使用した場合には、何れの試料に就いても、1000時間経過した時点でも問題は発生しなかった。尚、実験は、1000時間経過した時点で終了した。
【0029】
【発明の効果】
本発明のグリースを封入した密封板付転がり軸受は、以上に述べた通り構成され作用するので、自動車用補機等、高温雰囲気中で、しかも高荷重、高速回転で使用される各種機器の回転支持部分の信頼性及び耐久性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象となる密封板付転がり軸受の第1例を示す部分拡大断面図。
【図2】同第2例を示す部分拡大断面図。
【図3】グリースの種類が転がり軸受の耐久性に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示すグラフ。
【図4】密封板を構成する弾性材の材質とグリースの材質とが、この弾性材の硬さの変化に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示すグラフ。
【図5】密封板を構成する弾性材の材質とグリースの材質とが、転がり軸受の耐久性に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1、1a 密封板付転がり軸受
2 外輪軌道
3 外輪
4 内輪軌道
5 内輪
6 転動体
7a、7b 密封板
8 空間
9 芯金
10a、10b 弾性材
11 係止溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けた複数の転動体と、上記外輪の内周面両端部と上記内輪の外周面両端部との間に設けられ、これら外輪の内周面と内輪の外周面との間に存在し上記各転動体を設けた空間の軸方向両端開口部を塞ぐ、それぞれが弾性材を有する1対の密封板と、この空間内でこれら両密封板同士の間部分に封入したグリースとを備えたグリースを封入した密封板付転がり軸受に於いて、このグリースはウレア系グリースであり、上記弾性材は、少なくとも弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体を含み、加硫可能な弗素ゴム組成物である事を特徴とするグリースを封入した密封板付転がり軸受。
【請求項2】内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けた複数の転動体と、上記外輪の内周面両端部と上記内輪の外周面両端部との間に設けられ、これら外輪の内周面と内輪の外周面との間に存在し上記各転動体を設けた空間の軸方向両端開口部を塞ぐ、それぞれが弾性材を有する1対の密封板と、この空間内でこれら両密封板同士の間部分に封入したグリースとを備えたグリースを封入した密封板付転がり軸受に於いて、このグリースはウレア系グリースであり、上記弾性材は、少なくともテトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体を含み、加硫可能な弗素ゴム組成物である事を特徴とするグリースを封入した密封板付転がり軸受。
【請求項3】弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体の共重合の割合が、弗化ビニリデンが1〜70モル%、テトラフルオロエチレンが1〜70モル%、プロピレンが凡そ1〜70モル%である、請求項1に記載したグリースを封入した密封板付転がり軸受。
【請求項4】テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体の共重合の割合が、テトラフルオロエチレンが20〜80モル%、プロピレンが凡そ20〜80モル%である、請求項2に記載したグリースを封入した密封板付転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係るグリースを封入した密封板付転がり軸受は、例えばオルタネータ、コンプレッサ等、エンジンルーム内に設置する自動車用補機の回転支持部を構成する為に利用する。即ち、本発明は、使用時に高温(例えば最高使用温度が170℃以上)で使用される、グリースを封入した密封板付転がり軸受の信頼性並びに耐久性の向上を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
各種機械装置の回転支持部分を構成する為に、図1又は図2に示す様な密封板付転がり軸受1、1aを使用している。この密封板付転がり軸受1、1aは、内周面の軸方向中間部に外輪軌道2を有する外輪3と、外周面の軸方向中間部に内輪軌道4を有する内輪5と、これら外輪軌道2と内輪軌道4との間に転動自在に設けた複数の転動体6とを備える。又、上記外輪3の内周面両端部と上記内輪5の外周面両端部との間には密封板7a、7bを設け、この密封板7a、7bにより、上記外輪3の内周面と内輪5の外周面との間に存在し上記各転動体6を設けた空間8の軸方向両端開口部を塞いでいる。そして、この空間8内で1対の密封板7a、7b同士の間部分にグリースを封入して、上記外輪軌道2及び内輪軌道4と上記各転動体6の転動面との転がり接触部の潤滑を図っている。
【0003】
上記各密封板7a、7bは何れも、鋼板等の金属板を円輪状に形成して成る芯金9と、この芯金9を包み込む様にして設け、この芯金9により補強された弾性材10a、10bとから成る。この弾性材10a、10bの内外両周縁部は、上記芯金9の内外両周縁部よりも直径方向に突出している。この様な密封板7a、7bは、何れの場合も、上記弾性材10a、10bを、上記外輪3の内周面両端部に形成した係止溝11に係止する事により、上記空間8の軸方向両端位置に支持している。尚、上記弾性材10a、10bのうち、図1に示した弾性材10aの内周縁部は、上記内輪5の一部表面に摺接させているのに対して、図2に示した弾性材10bの内周縁部は、上記内輪5の一部表面に近接対向させている。即ち、図1に示した密封板7aは接触式シールであり、図2に示した密封板7bは、非接触式シールである。
【0004】
上述の様な、グリースを封入した密封板付転がり軸受1、1aを構成する、上記空間8内に封入するグリース、上記密封板7a、7bを構成する弾性材10a、10bの材質としては、従来からそれぞれ次の(1) 〜(5) の様なものが、一般的に使用されている。
[グリース]
(1) 増ちょう剤をイソシアネートとアミンとから成るウレア化合物とし、基油をPAO又はエーテル又はPAOとエーテルとの混合物としたウレア系グリース
(2) 優れた高温特性を有する弗素系グリース
[弾性材10a、10b]
(3) アクリル酸エチルを重合して得られるアクリルゴム
(4) 弗化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとを共重合して得られる弗素ゴム
(5) 弗化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとを共重合して得られる弗素ゴム
【0005】
従来は、上記(1)(2)のうちから選択したグリースと、上記(3) 〜(5) のうちから選択したゴムにより造った弾性材10a、10bを含んで構成した密封板7a、7bとを適宜組み合わせて、グリースを封入した密封板付転がり軸受1、1aを構成していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な、従来から知られている材質による、グリースと弾性材10a、10bとの組み合わせでは、高温下では必ずしも十分な信頼性並びに耐久性を確保できない可能性がある。
【0007】
先ず、(2) に示した弗素系グリースと、(4) 又は(5) に示した弗素ゴムとを組み合わせた場合には、耐熱性は十分ではあるが、高速、高荷重となる様な使用条件下では、グリースの耐久性が不十分である。従って、オルタネータ、コンプレッサ等の回転支持部を構成するには不適である。
又、(2) に示した弗素系グリースと、(3) に示したアクリルゴムとの組み合わせでは、高速、高荷重となる様な使用条件下でグリースの耐久性が不十分になるだけでなく、高温状態で長期間使用した場合にアクリルゴムの弾性が低下し、密封板7a、7bによるシール性が低下する。従って、この様な組み合わせも、オルタネータ、コンプレッサ等の回転支持部を構成するには不適である。
【0008】
又、(1) に示したウレア系グリースと、(3) に示したアクリルゴムとの組み合わせでは、高温状態で長期間使用した場合にアクリルゴムの弾性が低下し(硬くなり)、密封板7a、7bによるシール性が低下する。従って、この様な組み合わせも、オルタネータ、コンプレッサ等の回転支持部を構成するには不適である。
更に、(1) に示したウレア系グリースと、(4) 又は(5) に示した弗素ゴムとを組み合わせた場合には、高温時に弗素ゴムがウレア化合物による影響で弾性が低下し密封板7a、7bによるシール性が低下する。従って、この様な組み合わせも、オルタネータ、コンプレッサ等の回転支持部を構成するには不適である。
【0009】
上述の様に、グリースとして弗素系グリースを使用した場合には、何れの場合でも、高速、高荷重となる様な使用条件下でのグリースの耐久性が不十分になり、グリースを封入した密封板付転がり軸受の耐久性を十分に確保できない。この点に就いて、本発明者が行なった実験の結果に就いて、図3により説明する。実験は、内径が17mm、外径が52mm、幅が17mmである深溝型の玉軸受を使用して行なった。この玉軸受を、雰囲気温度を180℃とし、150kgf のラジアル荷重を付与した状態で、内輪を18000r.p.m.で回転させ、潤滑不良に基づく焼き付きが発生するまでの時間を測定した。試料として、ウレア系グリースを封入したものと、弗素系グリースを封入したものとを2個ずつ、合計4個用意した。この様にして行なった実験の結果を表す図3から明らかな通り、弗素系グリースを使用した場合には、10〜20時間程度で焼き付きが発生した。これに対して、ウレア系グリースを使用した場合には、何れの試料に就いても、500時間経過した時点でも焼き付きは発生しなかった。尚、実験は、500時間経過した時点で終了した。
【0010】
上述の様な実験の結果から、オルタネータ、コンプレッサ等、エンジンルーム内に設置する自動車用補機の回転支持部を構成する為の密封板付転がり軸受に封入するグリースはウレア系のものが好ましい事が分る。一方、前述した様に、ウレア系グリースと前述の(4) 又は(5) に示した従来から知られている弗素ゴムとの組み合わせの場合には、前述した様に高温下で弗素ゴムが硬くなって、十分なシール性確保が難しい。この点に就いて、本発明者が行なった実験の結果を次の表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
この表1にその結果を示した実験は、ウレア系又は弗素系のグリース中に、従来から密封板7a、7bの弾性材10a、10b用として使用していた、前述の(4)(5)の様な弗素ゴム、及び前述の(3) の様なアクリルゴムの試料片を埋没させる事で行なった。試験時の雰囲気温度は190℃、試験時間(埋没継続時間)は100時間とした。そして、この100時間経過後にグリース中から取り出した試験片を目視観察し、膨潤、損傷等の外観異常がある場合を×とし、ない場合を○として、上記表1に記載した。前記図3にその結果を表した実験と、上記表1にその結果を示した実験とから、オルタネータ、コンプレッサ等、エンジンルーム内に設置する自動車用補機の回転支持部を構成する為の密封板付転がり軸受に封入するグリースはウレア系のものが好ましく、ウレア系のグリースとの相性が良い、密封板7a、7bの弾性材10a、10bは、アクリルゴムである事が分る。
【0013】
但し、上記密封板7a、7bの弾性材10a、10bとしてアクリルゴムを使用した場合には、前述した様に、高温状態で長期間使用した場合にアクリルゴムの弾性が低下し、密封板7a、7bによるシール性を長期間に亙り十分に確保する事が難しい。従って、アクリルゴムも、上記密封板付転がり軸受の弾性材10a、10b用としては好ましくない。
本発明のグリースを封入した密封板付転がり軸受は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のグリースを封入した密封板付転がり軸受は、前述した従来から知られているグリースを封入した密封板付転がり軸受と同様に、内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けた複数の転動体と、上記外輪の内周面両端部と上記内輪の外周面両端部との間に設けられ、これら外輪の内周面と内輪の外周面との間に存在し上記各転動体を設けた空間の軸方向両端開口部を塞ぐ、それぞれが弾性材を有する1対の密封板と、この空間内でこれら両密封板同士の間部分に封入したグリースとを備える。
【0015】
特に、請求項1に記載したグリースを封入した密封板付転がり軸受に於いては、上記グリースは、ウレア系グリースである。又、上記弾性材は、少なくとも弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体を含み、加硫可能な弗素ゴム組成物である。
【0016】
尚、上記弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体として好ましくは、請求項3に記載した様に、共重合の割合が、弗化ビニリデンが凡そ1〜70モル%(より好ましくは2〜65モル%)、テトラフルオロエチレンが凡そ1〜70モル%(より好ましくは20〜60モル%)、プロピレンが凡そ1〜70モル%(より好ましくは10〜45モル%)であるものを使用する。この様な弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体としては、住友スリーエム社製の「BRE LJ−298005」(商品名)等の市販品を使用できる。
【0017】
更に、請求項2に記載したグリースを封入した密封板付転がり軸受に於いては、上記グリースはウレア系グリースである。又、上記弾性材は、少なくともテトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体を含み、加硫可能な弗素ゴム組成物である。
【0018】
尚、上記テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体として好ましくは、請求項4に記載した様に、共重合の割合が、テトラフルオロエチレンが凡そ20〜80モル%(より好ましくは40〜60モル%)、プロピレンが凡そ20〜80モル%(より好ましくは40〜60モル%)であるものを使用する。この様なテトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体としては、旭硝子社製の「アフラス150」(商品名)等の市販品を使用できる。
【0019】
上記した3元共重合体、2元共重合体、又はこれらを適宜混合した複合体の何れの弗素ゴムの場合も、加硫上、物性上、加工上、要求される各種配合剤を添加してから、オープンロール、ニーダー等を使用した公知の方法により混練して成分を調整する。そして、この調整作業により得られた組成物を、ヒートプレス等の公知の加硫方法により加硫成形して、前述の図1又は図2に示す様な弾性材10a、10bとする。この加硫成形の際、この弾性材10a、10bと共に密封板7a、7bを構成する芯金9は、成形用のキャビティ内にセットしておく。
【0020】
【作用】
本発明のグリースを封入した密封板付転がり軸受の場合、グリースとしてウレア化合物を使用するので、高温でしかも高速、高荷重となる様な使用条件下でも、グリースの耐久性を十分に確保できる。又、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体、又は上記テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体、更にはこれら各共重体を混合した複合体である弗素ゴムは、十分な耐熱性を有し、しかも高温下でウレア化合物と接触した場合でもあまり硬くならない。この為、高温化で長期間に亙り使用した場合でも、密封板によるシール性を十分に確保できる。
【0021】
【実施例】
本発明の効果を確認する為に、本発明者が行なった実験の結果に就いて説明する。実験には、次の表2に示した4種類の試料(本発明の技術的範囲から外れる比較例を2種類、本発明の技術的範囲に属する実施例を2種類)を用意し、それぞれに就いてウレア系グリースによる物性変化を測定した。
【0022】
【表2】
【0023】
尚、上記表2の最左欄中、*1は、日本ゼオン社製のアクリルゴムの商品名を、*2は、住友スリーエム社製の弗化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンの2元共重合体である弗素ゴムの商品名を、*3は、住友スリーエム社製の弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体である弗素ゴムの商品名を、*4は、旭硝子社製のテトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体である弗素ゴムの商品名を、*5は、旭カーボン社製のMAFカーボンの商品名を、*6は、Manville社製の珪藻土の商品名を、*7は、協和化学工業社製の酸化マグネシウムの商品名を、*8は、近江化学社製の水酸化カルシウムの商品名を、*9は、日本化成社製のトリアリルイソシアネートの商品名を、*10は、日本油脂社製の有機過酸化物の商品名を、*11は、基油がエーテルであり、増ちょう剤がウレア化合物であるウレア系グリースを、*12は、基油がエーテルとPAOとの混合物であり、増ちょう剤がウレア化合物であるウレア系グリースを、それぞれ表している。
【0024】
上述の様な表2に記載した組成物をオープンロールで混練して得た混練物を、この表2に示した条件で加硫して加硫成形物を得た。この様にして得られた加硫成形物のうち、弗素系ゴムを使用した比較例2と実施例1、2とに就いて、それぞれ180℃に加熱したウレア系グリース中に70時間浸漬した後取り出して、各加硫成形物の常態物性及び体積の変化を測定した。このうちの常態値の測定は、JIS K 6251、JIS K 6253に準拠する方法で行ない、体積変化の測定は、JIS K 6258に準拠する方法で行なった。この様にして得られた実験の結果を、前記表2に示す。
【0025】
この様な表2の記載から明らかな通り、密封板を構成する弾性材を、テトラフルオロエチレン−プロピレン2元共重合体である弗素ゴム、或は弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン3元共重合体である弗素ゴムにより構成すれば、高温下でウレア系グリースと接触した場合でも、物性並びに体積の変化を少なく抑える事ができる。この事は、ウレア系グリースを使用した場合でも、長期間に亙り良好なシール性を発揮できる事を意味する。
【0026】
又、本発明者は、密封板を構成する弾性材の硬度が、この弾性材の材質とグリースの材質との相性や温度との関係で変化する状態を知る為に、第二の実験を行なった。この第二の実験は、内径が15mm、外径が35mm、幅が11mmである、呼び番号が6202で接触型の密封板を有する深溝型の玉軸受を使用して、高温雰囲気中に放置する事により行なった。雰囲気温度は180℃、放置する時間は500時間とした。そして、開始してから70時間、168時間、500時間経過した時点で、それぞれの試料に組み込んだ密封板を構成する弾性材の硬度を、JIS K 6253(IRHD)に規定した、国際ゴム硬さ試験の測定方法により測定した。
【0027】
この様な第二の実験の結果を図4に示す。この図4に示した4本の曲線のうち、実線aは、従来から知られている弗素ゴム製の弾性材を備えた密封板とウレア系グリースとを組み合わせたものの、破線bは、アクリルゴム製の弾性材を備えた密封板とウレア系グリースとを組み合わせたものの、一点鎖線cは、本発明に属する、弗素ゴム製の弾性材を備えた密封板とウレア系グリースとを組み合わせたものの、二点鎖線dは、従来から知られている弗素ゴム製の弾性材を備えた密封板と弗素系グリースとを組み合わせたものの、それぞれ実験結果を示している。この様な図4に示した実験結果から明らかな通り、本発明によれば、グリースとして弗素系グリースを使用した場合と同様に、弾性材の硬度の変化を低く抑えられる。尚、弗素系グリースを使用した場合には、高回転、高荷重の運転条件では、十分な耐久性を確保できない事は、前述の通りである。又、図4で、アクリルゴム製の弾性材の硬度が大きくなっているのは、ウレア系グリースとの相性の問題ではなく、アクリルゴム自体の耐熱性の問題からである。
【0028】
更に本発明者は、高速運転時に於けるグリースの耐久性に就いて実験した。この実験の結果に就いて、図5により説明する。実験は、内径が17mm、外径が52mm、幅が17mmである深溝型の玉軸受を使用して行なった。この玉軸受を、雰囲気温度を180℃とした状態で、内輪を18000r.p.m.で回転させ、潤滑不良に基づく焼き付きが発生するまでの時間を測定した。試料として、前述の表2に示した様な、アクリルゴム製の弾性材を含む密封板とウレア系グリースとを組み合わせたもの(比較例1)と、本発明に属する弗素ゴム製の弾性材を含む密封板とウレア系グリースとを組み合わせたもの(本発明品)と、従来から知られている弗素ゴム製の弾性材を含む密封板とウレア系グリースとを組み合わせたもの(比較例2)とを2個ずつ、合計6個用意した。この様にして行なった実験の結果を表す図5から明らかな通り、アクリルゴム製或は従来から知られている弗素ゴム製の弾性材を含む密封板を使用した場合には、650〜800時間程度でシール欠損が発生した為、評価試験を中止した。これに対して、本発明に属する弗素ゴム製の弾性材を含む密封板を使用した場合には、何れの試料に就いても、1000時間経過した時点でも問題は発生しなかった。尚、実験は、1000時間経過した時点で終了した。
【0029】
【発明の効果】
本発明のグリースを封入した密封板付転がり軸受は、以上に述べた通り構成され作用するので、自動車用補機等、高温雰囲気中で、しかも高荷重、高速回転で使用される各種機器の回転支持部分の信頼性及び耐久性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象となる密封板付転がり軸受の第1例を示す部分拡大断面図。
【図2】同第2例を示す部分拡大断面図。
【図3】グリースの種類が転がり軸受の耐久性に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示すグラフ。
【図4】密封板を構成する弾性材の材質とグリースの材質とが、この弾性材の硬さの変化に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示すグラフ。
【図5】密封板を構成する弾性材の材質とグリースの材質とが、転がり軸受の耐久性に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1、1a 密封板付転がり軸受
2 外輪軌道
3 外輪
4 内輪軌道
5 内輪
6 転動体
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