JP2001057851A - 安定化された絹フィブロイン及びそれを含有する飲食品 - Google Patents
安定化された絹フィブロイン及びそれを含有する飲食品Info
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Abstract
ル化を防止し、粉末化による不溶化などの不具合を解消
し、各種の飲食品、化粧品、医薬品等において広く使用
することができる安定化された絹フィブロインを提供す
る。 【解決手段】 絹フィブロイン、特に絹フィブロインを
塩水溶液に溶解させた後、脱塩して得られる絹フィブロ
イン溶液にトレハロースを添加することにより得られる
安定化された絹フィブロイン。
Description
医薬品など広い分野で有用な、安定化された絹フィブロ
イン及びそれを含有する飲食品に関する。
パク質原料としてとらえ、その機能性が注目され、種々
の応用研究が進められている。たとえば、絹フィブロイ
ンの保湿性などを利用して化粧品に応用されている。ま
た、絹フィブロイン水溶液は、無色、無味、無臭で消化
・吸収性に優れ、必須アミノ酸の補給、肝機能向上機
能、コレステロール低下作用、糖尿病の予防などの効果
があり、ドリンク剤、飲料、ゼリー等の食品として利用
されている。さらに、絹フィブロインは、機能性食品や
医薬品の分野への利用も期待されている。
繭、屑生糸などの原料を、高濃度の塩水溶液に溶解した
後透析脱塩する方法が一般的に行われているが、絹フィ
ブロインを溶解するために高濃度の塩水溶液を用いるの
で、絹フィブロイン溶液は多量の塩を含有し、工業的に
これを透析脱塩して高品質の絹フィブロイン溶液を効率
よく得ることは容易ではない。そこで、絹フィブロイン
溶液を効率よく製造する方法として、例えば、多層膜構
造物又は中空糸集束構造物の透析装置を用いる方法(特
公昭57−4723号公報参照)や、絹フィブロインを
塩水溶液に溶解した原液を透析する際に、透析膜内外に
圧力差を生じせしめて透析を行う高濃度絹フィブロイン
水溶液の製造法(特開平8−295697号公報参照)
などが提案されている。しかしながら、これらの方法で
は、食品原料として用いた場合にアミノ酸や低分子量の
ペプチドが不快な呈味を惹起するという問題があり、食
品工業への利用が制約される大きな原因となっている。
そこで、本発明者らは先に、限外濾過膜を利用して脱塩
とともに低分子ペプチドを実質的に除去した精製絹フィ
ブロイン溶液を提案した(特開平11−180999号
公報参照)。
であり、保存中に沈殿やゲル化を生じ、pHや加熱など
によってさらにその不具合が促進される。絹フィブロイ
ン溶液の保存は通常冷凍で行われるが、冷解凍の繰り返
しによって、沈殿生成やゲル化が起き、また、噴霧乾
燥、真空乾燥によって粉末化して保存すると、再溶解時
に十分溶解しないなどのトラブルがあり、工業的に利用
する際の課題となっており、これらの課題を解決できる
絹フィブロインの安定化が望まれている。
類の添加が知られているが、絹フィブロインの加糖によ
る増粘安定化は、多糖類ではタンパク質が凝集し、ま
た、二糖類や単糖類では沈殿生成や強い甘味を感じるな
どの欠点がある。
溶液を得るため、たとえば、多価アルコールなどのポリ
オール、防カビ剤・防腐剤及びキレート化剤を添加した
絹フィブロイン水溶液が提案されている(特許2634
448号公報参照)が、必ずしも満足できるものではな
い。
は、蛋白質又は巨大分子を含有する水を含んだ系をトレ
ハロースの存在のもとで氷点を超える温度で乾燥する方
法(特公平7−79694号公報参照)や、冷凍豆腐、
冷凍茶碗蒸し、厚焼き卵、親子丼などのタンパク質含有
食品にトレハロースを添加すること、タンパク質の変性
防止に効果があること(「食品と開発」,31(7)4
7−48(1996)参照)などが提案されているが、
絹フィブロインの安定化に関してはなんら開示もされて
いないし、示唆もされていない。
化された絹フィブロインを提供することであり、さらに
詳しくは、絹フィブロイン水溶液の冷解凍による沈殿生
成やゲル化を防止、また、噴霧乾燥や真空乾燥による粉
末化に伴う再溶解時の不溶化などの問題を解消し、各種
の飲食品、化粧品、医薬品等の分野で広く利用すること
のできる安定化された絹フィブロインを提供することで
ある。
を解決するため鋭意研究を行った結果、絹フィブロイン
特に好ましくは絹フィブロインを塩水溶液に溶解させた
後、脱塩して得た絹フィブロイン溶液にトレハロースを
添加すると、冷解凍による沈殿生成やゲル化が起こら
ず、また、粉末化しても再溶解時に容易に溶解する、安
定化された絹フィブロインが得られることを見いだし本
発明を完成した。
ンにトレハロースを添加してなる安定化された絹フィブ
ロインが提供される。さらに、本発明によれば、上記の
安定化された絹フィブロインを含有する飲食品が提供さ
れる。
細に説明する。
ハロースを添加する、特に好ましくは、絹フィブロイン
を塩水溶液に溶解させた後、脱塩して得た絹フィブロイ
ン溶液にトレハロースを添加することを特徴とする安定
化された絹フィブロイン及びそれを含有する飲食品を提
供するものである。
としては、特に限定はなく、例えば、屑繭、生糸、生糸
屑、絹紡糸、絹紡績工程で発生する屑絹などを精練して
セリシン及び油分を除いた後乾燥処理したものを例示す
ることができるが、一般に溶液状態のもの、例えば、精
練後乾燥して得た絹フィブロインを塩類溶液に溶解した
絹フィブロイン溶液、特に、該絹フィブロイン溶液を脱
塩処理して得られる絹フィブロイン溶液を、中でも、該
絹フィブロイン溶液を限外濾過膜で処理して得られる分
子量8,000以下の低分子タンパク質を含有しない絹
フィブロイン溶液が好適である。
に溶解する際に使用される塩類溶液としては、例えば、
カルシウム、マグネシウム又は亜鉛の塩酸塩、硝酸塩又
はチオシアン酸塩の水溶液、銅−エチレンジアミン水溶
液、臭化リチウム水溶液などが挙げられるが、工業的に
はカルシウムの塩酸塩(塩化カルシウム)を用いること
がより好ましい。また、塩類溶液に絹フィブロインの溶
解を容易にするため、必要に応じて、例えば、メタノー
ル、エタノール、アセトン等の水溶性有機溶剤を添加す
ることができる。
%〜80%、好ましくは30%〜60%の範囲内を例示
することができ、また、溶解は、通常、室温〜約125
℃の温度で、約1分間〜約24時間攪拌することにより
行うことができる。
95697号公報に記載の透析法や、特開平11−18
0999号公報に記載の限外濾過膜法などの方法により
行うことができる。特に後者の限外濾過膜法の場合、限
外濾過装置としては市販されているものを利用するこど
できるが、それに用いる限外濾過膜については膜特性及
び分画分子量を選択する必要がある。限外濾過膜として
は、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリビ
ニリデンフロライド、セルロースアセテート等の材質の
ものであって、分画分子量が5,000〜50,00
0,好ましくは8,000〜20,000の限外濾過膜
を用いることができる。5,000以下の分画分子量の
膜では低分子のペプチドを除去することが難しくなり、
また、50,000以上の膜では絹フィブロインの収率
が悪くなる。
して用いられるトレハロースは、例えば、ブドウ糖溶液
中で酵母を培養して、酵母菌中にトレハロースをつくら
せ、このトレハロースを菌体から分離する方法;ブドウ
糖溶液中でバクテリアを培養することにより培養液中に
トレハロースを産生させ、このトレハロースを培養液か
ら分離回収する方法などの方法により製造することがで
きるが、市販のトレハロースを利用することもできる。
るものではなく、安定化された絹フィブロインの用途等
に応じて変えることができるが、一般には、絹フィブロ
イン1重量部に対して約0.01〜約100重量部、特
に約0.1〜約10重量部の範囲内が好適である。0.
01重量部より少ない量では絹フィブロインの安定化が
十分でなくなり、逆に、100重量部より多い場合には
絹フィブロインの風味に影響がでる可能性がある。
方法としては特に制約はないが、例えば、絹フィブロイ
ンを塩水溶液に溶解し、脱塩処理した後に添加する方法
を好ましく例示することができる。
インは、溶液状態で、各種の飲食品、化粧品、医薬品な
どに使用することができ、また、凍結乾燥、噴霧乾燥、
真空乾燥等の方法で乾燥して粉末化し、安定化絹フィブ
ロイン粉末として利用することもできる。
ン溶液及び絹フィブロイン粉末は、例えば、飲料、デザ
ート、菓子、水産加工品、畜肉加工品、レトルト食品、
機能性食品など各種飲食品に対して、約0.01〜約5
0重量部の範囲内で使用することができる。次に、実施
例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
ルシウム水溶液を入れ、さらに95%エタノールを20
g添加した。この溶液をオイルバスにより90〜95℃
に溶解し、乾燥精練切り繭100gを加えて攪拌溶解し
た。溶解後、約105℃で8時間加熱し、次いで約40
℃に冷却して粗絹フィブロイン溶液を得た。この粗絹フ
ィブロイン溶液に2,000gの軟水を添加し、濾過し
た。得られた粗絹フィブロイン濾液3,050gを約8
5℃で約15分間加熱殺菌した後、分子量10,000
の限外濾過膜(フィルトロン社製)を用いて、約50℃
に加温しながら限外濾過して脱塩を行った。脱塩後、約
85℃で約15分間加熱殺菌し、次いで約40℃以下に
冷却し、メッシュ濾過を行い精製絹フィブロイン400
g(固形15%)(参考品1)を得た。
0gにトレハロース350gを添加し、約85℃で約1
5分間殺菌した。殺菌後約40℃まで冷却し、メッシュ
濾過により不純物を除去し、本発明品1を得た。
gを用いる以外は実施例1と同様に処理して、比較品1
を得た。
化学社製デキストリンの商品名)350gを用いる以外
は実施例1と同様に処理して、比較品2を得た。
N−S(新田ゼラチン社製)30gを用いる以外は実施
例1と同様に処理して、比較品3を得た。
V(新田ゼラチン社製)30gを用いる以外は実施例1
と同様に処理して、比較品4を得た。
チン350gを用いる以外は実施例1と同様に処理し
て、比較品5を得た。
2時間おきに冷解凍を3日間繰り返し、冷解凍での安定
性確認を行った。
冷解凍後の風味・状態共に優れているのは本発明品1の
みであった。
とトレハロース770gとを混合してスプレードライす
ることにより、本発明品2の絹フィブロイン粉末(粉末
収量約1,000g)を得た。
とBLD(松谷化学社製デキストリンの商品名)874
gとを混合してスプレードライすることにより、比較品
6の絹フィブロイン粉末(粉末収量約1,000g)を
得る。
討 実施例3及び比較例6で得られた絹フィブロイン粉末各
1グラムを各100gの水に溶解してパウダー溶解性を
比較検討した。下記表2から明らかなように、本発明品
2は溶解性も良好で、沈殿も見られなかった。
(重量%)により、絹フィブロイン含有桃ゼリーを調製
した。
較品7の桃ゼリーは、シルクの不溶物と思われるざらつ
きがあるが、トレハロースを混合した本発明品1を配合
した本発明品3の桃ゼリーは、なめらかなテクスチャー
を有し食感の良好なゼリーであった。
(重量%)により、絹フィブロイン含有ナシ飲料を調製
した。
較品8のナシ飲料は、1週間の冷蔵により、底部に沈殿
が見られるが、トレハロースを混合した本発明品1を配
合した本発明品4のナシ飲料は、1週間の冷蔵による沈
殿生成は見られなかった。
も、沈殿やゲル化が起きず、また、粉末化によっても不
溶化などの不具合が生じず、各種の飲食品、化粧品、医
薬品等において広く使用することができる安定化された
絹フィブロイン溶液が得られ、きわめて有用である。
Claims (3)
- 【請求項1】 絹フィブロインにトレハロースを添加し
てなる安定化された絹フィブロイン。 - 【請求項2】 絹フィブロイン1重量部に対して、トレ
ハロースを0.01〜100重量部添加してなる安定化
された絹フィブロイン。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の安定化された絹フ
ィブロインを含有する飲食品。
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