JP2001035549A - 光電変換素子の製造方法 - Google Patents

光電変換素子の製造方法

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JP2001035549A
JP2001035549A JP11203787A JP20378799A JP2001035549A JP 2001035549 A JP2001035549 A JP 2001035549A JP 11203787 A JP11203787 A JP 11203787A JP 20378799 A JP20378799 A JP 20378799A JP 2001035549 A JP2001035549 A JP 2001035549A
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layer
inert gas
semiconductor
charge transfer
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JP11203787A
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Tsutomu Miyasaka
力 宮坂
Tadahiko Kubota
忠彦 窪田
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】エネルギー変換効率に優れ、光耐久性の改良さ
れた光電変換素子およびこれを用いた太陽電池を提供す
る。 【解決手段】導電性支持体上に色素が吸着された半導体
の微粒子を含有する感光層が塗設されてなる作用極と、
電荷移動層および対極によって構成される色素増感され
た光電変換素子の製造において、作用極と電荷移動層、
および対極を接合して一体化する素子組立て工程の少な
くとも一部を、不活性ガスを主成分とし酸素濃度が7%
以下の雰囲気中で実施する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は色素により増感され
た半導体微粒子を用いた光電変換素子の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】現在、太陽光発電は単結晶シリコン太陽
電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン
太陽電池、テルル化カドミウムやセレン化インジウム銅
等の化合物太陽電池の改良が、実用化の主力技術となっ
ており、発電効率として10%を超える太陽光エネルギ
ー変換効率が得られている。しかし、将来に向けてこれ
らを普及さ素子上では、素材製造にかかるエネルギーコ
ストが高く製品化への環境負荷が大きいこと、ユーザー
にとってエネルギーペイバックタイムが長い等の問題点
を克服する必要がある。このため、低価格化を目指し、
大面積化も容易な有機材料をシリコンに替わる感光材料
として用いた太陽電池がこれまでに多く提案されてきた
が、エネルギー変換効率が1%以下と低く、耐久性も悪
いという問題があった。
【0003】こうした中で、Nature(第353
巻、第737〜740頁、1991年)および米国特許
4927721号等に、色素によって増感された半導体
微粒子を用いた光電変換素子および太陽電池、ならびに
この作製に必要な材料および製造技術が開示された。提
案された電池は、ルテニウム錯体によって分光増感され
た二酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電
池である。この方式の第一の利点は二酸化チタン等の安
価な酸化物半導体を高純度まで精製する必要なしに用い
ることができるため、安価な光電変換素子として提供で
きる点であり、第二には用いられる色素の吸収がブロー
ドであり、広い可視光の波長域にわたって太陽光を電気
に変換できることであり、第三にはエネルギー変換効率
が10%近くに達することである。
【0004】しかし、高いエネルギー変換効率を維持す
るために必要な、素子の耐久性の確保に関しては製造法
上の技術開発が不充分であった。上記の湿式太陽電池の
構成を用いて、Advanced Material
s,11,p904(1997)には1kW/m2の光照
射下、7000時間におよぶ性能劣化試験が報告されて
おり、素子の経時劣化が、電解質中の還元剤濃度の増加
と色素の脱着防止によって押さえられる可能性が記載さ
れている。しかしながら、素子を構成する電解質と色素
などの素材の構成を改良するだけでは耐久性を高める手
段に限界がある。耐久性および電池性能の一層の改良の
ためには、製造ラインの雰囲気の制御を含めた製造環境
の改良が必要と考えられるが、この観点での技術開発は
されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、エネ
ルギー変換性能と耐久性に優れた色素増感光電変換素
子、特に光電変換セルの製造法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は本発明を
特定する下記の事項およびその好ましい態様により達成
された。
【0007】(1)導電性支持体上に色素が吸着された
半導体の微粒子を含有する感光層が塗設されてなる作用
極と、電荷移動層および対極を接合して一体化する素子
組立て工程が、不活性ガスを主成分とし、酸素濃度が外
気中酸素濃度の約3分の1以下である7%以下の雰囲気
中で行われること。
【0008】(2)不活性ガスを主成分とする雰囲気が
酸素濃度1%以下であること。
【0009】(3)不活性ガスを主成分とする雰囲気が
酸素濃度0.1%以下であること。
【0010】(4)不活性ガスを主成分とする雰囲気が
酸素濃度300ppm以下であること。
【0011】(5)不活性ガスを主成分とする雰囲気が
用いられる工程が、光電変換素子組立て工程のなかで、
電荷移動層を素子に組み込む工程であること。
【0012】(6)不活性ガスを主成分とする雰囲気が
用いられる工程が、光電変換素子組立て工程のなかで、
流動性の電解質を素子に注入する工程であること。
【0013】(7)電荷移動層としてイオン伝導性の電
解質を用いる素子を製造すること。
【0014】(8)電荷移動層がイオン伝導性の固体電
解質であること。
【0015】(9)色素が吸着された半導体の微粒子が
金属カルコゲナイドであること。
【0016】(10)色素が吸着された半導体の微粒子
がTiO2、TiSrO3、ZnO、WO3及びNb25
から選ばれる金属酸化物の1種以上であること。
【0017】(11)不活性ガスがアルゴン、窒素から
選ばれる不活性ガスであること。
【0018】(12)不活性ガスを主成分とする雰囲気
が、露点が−20℃以下の低湿度の雰囲気であること。
【0019】(13)不活性ガスを主成分とする雰囲気
が、露点が−40℃以下の低湿度の雰囲気であること。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。
【0021】まず、本発明で製造する光電変換素子の構
成について詳述する。
【0022】色素増感した光電変換素子は、導電性支持
体上に設置され、色素により増感された半導体膜(感光
層)からなる作用極(光電極)、対極、そして作用極と
対極に電気的に接触しこれらを接合する電荷移動層から
なる積層構成をとる。色素増感半導体膜を設置した導電
性支持体は光電変換素子における作用電極であり、光ア
ノードとして機能する。この光電変換素子は、作用極の
光照射下で外部回路に電流と起電力を発生する光電変換
セルとなり、電荷移動層がイオン伝導性電解質の場合は
光電気化学電池(photo−electrochem
ical cell)として特徴づけられる。感光層で
ある色素増感半導体層は目的に応じて設計され、単層構
成でも多層構成でもよい。感光層に入射した光は色素を
励起する。励起状態の色素はエネルギーの高い励起電子
を半導体微粒子の伝導帯に注入し、伝導帯電子はさらに
拡散によって導電性支持体に到達する。半導体微粒子に
電子を注入した色素分子は電子の欠損した酸化体とな
り、色素と接する電荷移動材料中の電子供与体によって
電子的に還元され再生される。すなわち、導電性支持体
上が受け取った励起電子は外部回路で電気的仕事をして
対極に受け取られ、電荷移動層を経て色素酸化体に戻
り、色素が再生する。なお、本発明では層構成をとるも
のの、それぞれの層の接触部(たとえば、導電性支持体
の導電層と感光層の境界、感光層と電荷移動層の境界、
電荷移動層と対極の境界など)においては、層を構成す
る材料もしくは化合物、イオンは、相互に拡散して混合
した状態であってもよい。
【0023】次に、本発明における光電変換素子の製造
工程について説明する。製造工程は、(1)半導体電極
基板の製造、(2)半導体層への色素の吸着、(3)対
極基板の表面処理、(4)電荷移動材料の封入、(5)
素子の組立てとシーリング(封止)、の工程に大きく分
けられる。
【0024】半導体電極の製造は、半導体粒子の製造原
料の分散物を導電性電極基板へ塗設する工程と塗布基板
の焼成処理からなる。
【0025】半導体層への色素の吸着は、半導体電極の
色素溶液への浸漬と、温度、時間の制御された環境下で
の保存による色素吸着工程、そして色素吸着された半導
体電極基板の洗浄処理、からなる。
【0026】対極基板の表面処理は、対極の表面への処
理薬品の塗布と加熱処理からなる。
【0027】電荷移動材料の封入は、色素吸着半導体電
極基板上へ電荷移動層を接合する工程であり、電荷移動
層が液体の場合は、液体層を電極の半導体層上に添加し
て展開する工程、電荷移動層が固体の場合は、蒸着など
の手段で固体薄膜を形成する工程である。とくに液体層
を設ける場合は、あらかじめ対向する色素吸着半導体電
極基板と対極基板とをスペーサーを介して接合した後
に、2つの電極の間隙に液体を注入する(以下、注液と
称する)。液体は、必要に応じては電極の接合の前に、
半導体電極基板上に添加して展開し、ついでこの上にス
ペーサーを介して対極を重ねて液体層をサンドイッチす
る方法で封入する。
【0028】素子の組立ては、電荷移動層の封入を含め
た両電極基板の接合と絶縁と外気からの遮断のためのシ
ーリングの工程からなる。シーリングは素子の接合部周
辺を接着剤で封じて固め、電荷移動層を外気から遮断す
る工程である。
【0029】本発明では、上記の(1)から(5)まで
の工程の一部を酸素濃度の低い、実質的に不活性なガス
の雰囲気中で実施する。とくにこれらの工程のうち、
(2)、(4)、(5)の工程の一部もしくは全体を酸
素濃度の低い、実質的に不活性なガスの雰囲気中で実施
することを特徴とする。
【0030】酸素濃度を制限した雰囲気中で製造を行う
ことが、素子性能を改善する理由として、光吸収にかか
わる増感色素の自己光酸化分解の抑制が考えられる。半
導体に吸着した色素の周辺に酸素分子が介在すると、色
素の励起状態と酸素との反応によって、反応性の高い一
重項酸素が形成され、この一重項酸素が色素に結合し、
色素を不可逆的に酸化分解する反応の頻度が増加する。
この反応は長期にわたって光励起される色素を徐々に分
解し、本発明の光電変換素子の光耐久性を弱める。この
点で、素子の構成の内部に酸素が侵入するあらゆる可能
性を排除した製造工程が必要とされる。
【0031】具体的には、半導体塗布層への酸素の吸着
の排除、電解質を含めた電荷移動層への酸素の混入の排
除、対極、スペーサーなどの素子構成部材への酸素の吸
着の排除などが、必要となる。
【0032】この目的から、(2)から(5)までの素
子組立ての工程を、酸素濃度が7%以下の雰囲気中で行
うことが必要であり、より好ましくは、酸素濃度が1%
以下、さらに好ましくは、0.1%以下、最も好ましく
は酸素濃度が300ppm以下に制御された雰囲気中で
工程が行われる。
【0033】色素と直接反応を行う電荷移動層は、酸素
の溶け込みの影響がもっとも大きい要素であり、したが
って、酸素濃度の低い不活性ガスを主成分とする雰囲気
中で扱い、素子に組み込む必要がある。電荷移動層とし
てイオン伝導性の電解質を用いる素子を製造する場合、
とくに上記の必要が生じる。また、電荷移動層が流動性
の電解質である場合も同様である。また、電荷移動層が
イオン伝導性の固体電解質である場合も同様である。
【0034】本発明で用いる酸素濃度の低い不活性ガス
としては、アルゴン、窒素から選ばれる不活性ガスが好
ましい。酸素濃度の低い雰囲気は、同時に、乾燥した雰
囲気であることが好ましい。水分の混入は、増感色素の
反応を介した水の光化学分解あるいは電気化学分解によ
る酸素の生成をもたらす点で、抑制すべきである。不活
性ガスを主成分とする雰囲気は、露点が−20℃以下の
低湿度の雰囲気であることが好ましく、露点が−40℃
以下の低湿度の雰囲気であることが、より好ましい。
【0035】次に、光電変換素子に用いる各材料につい
て詳述する。本発明の光電変換素子において作用極に用
いる半導体材料は光エネルギーの吸収などで励起された
状態で伝導性を生じる材料であり、エネルギー準位とし
て価電子帯と伝導帯を有し、バンドギャップに相当する
波長の光で励起すると伝導帯電子と価電子帯正孔を生じ
る。このときn型半導体では伝導帯電子がキャリアー、
p型半導体では正孔がキャリアーとなり伝導性を生じ
る。伝導に関わるキャリアーの濃度として1014〜10
20個/cm3の範囲の半導体が好ましい。本発明の色素
増感された半導体では、光吸収およびこれによる励起電
子と正孔の発生は主として色素の分子において起こり、
半導体はこの励起電子を伝導帯で受け取り、支持体の電
極に伝達する役割を担う。本発明に関わるこのような半
導体電極の色素増感の機構は、本多健一、藤嶋昭、化学
総説No7、p77(1976)、渡辺正、滝澤卓朗、
本多健一、触媒、20、p370(1978)に詳解さ
れている。
【0036】半導体としてはシリコン、ゲルマニウムの
ような単体半導体の他に、III-V系の化合物半導体、金
属のカルコゲナイド(例えば酸化物、硫化物、セレン化
物、テルル化物等)またはペロブスカイト構造を有する
化合物等を使用することができる。金属カルコゲナイド
として、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングス
テン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、イ
ンジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジ
ウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、カドミウ
ム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カ
ドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等
が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウ
ム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウムヒ
素、銅−インジウム−セレン化合物、銅−インジウム−
硫黄化合物等が挙げられる。
【0037】また、ペロブスカイト構造を有する金属化
合物として好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン
酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウ
ム、ニオブ酸カリウムが挙げられる。
【0038】本発明で色素増感に用いる半導体は、光励
起下で伝導帯電子がキャリアーとなりアノード電流を与
えるn型半導体であることが好ましい。n型半導体は電
極をアノード分極(正に分極)の状態で伝導帯励起電子
を発生したとき、アノーディックに整流された電流を生
じる。
【0039】本発明に用いられる半導体の具体例は、好
ましくは、Si、TiO2、TiSrO3、SnO2、F
23、WO3、ZnO、Nb25、CdS、ZnS、
PbS、Bi23、CdSe、CdTe、GaP、In
P、GaAs、CuInS2、CuInSe2が挙げられ
る。さらに好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Fe
23、WO3、Nb25、CdS、PbS、CdSe、
TiSrO3、InP、GaAs、CuInS2、CuI
nSe2であり、これらのうちn型半導体が好ましい。
特に好ましくは、TiO2、TiSrO3、ZnO、WO
3またはNb2 5であり、最も好ましいものはn型のT
iO2である。
【0040】本発明に用いられる半導体は、単結晶で
も、多結晶でもよい。変換効率としては単結晶が好まし
いが、製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバック
タイム等の点では多結晶が好ましく、特にナノメートル
からマイクロメートルサイズの微粒子半導体が好まし
い。
【0041】これらの半導体微粒子の粒径は、投影面積
を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で一次粒子
として5〜200nmであることが好ましく、特に8〜
100nmであることが好ましい。また、分散物中の半
導体微粒子(二次粒子)の平均粒径としては0.01〜
100μmであることが好ましい。
【0042】また、2種類以上の粒子サイズ分布の異な
る微粒子を混合して用いてもよく、この場合、小さい粒
子の平均サイズは5nm以下であることが好ましい。ま
た、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、
粒子サイズの大きな、例えば300nm程度の半導体粒
子を混合してもよい。
【0043】半導体微粒子の作製法は、作花済夫の「ゾ
ルーゲル法の科学」アグネ承風社(1988年)、技術
情報協会の「ゾルーゲル法による薄膜コーティング技
術」(1995)等に記載のゾルーゲル法、杉本忠夫の
「新合成法ゲルーゾル法による単分散粒子の合成とサイ
ズ形態制御」 まてりあ、第35巻、第9号 1012
頁から1018頁(1996)記載のゲルーゾル法が好
ましい。
【0044】またDegussa社が開発した塩化物を
酸水素炎中で高温加水分解により酸化物を作製する方法
も好ましい。
【0045】また酸化チタンの場合は上記のゾルーゲル
法、ゲルーゾル法、塩化物を酸水素炎中で高温加水分解
法がいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン
物性と応用技術」技報堂出版(1997)に記載の硫
酸法、塩素法を用いることもできる。
【0046】酸化チタンの場合は上記のゾルーゲル法の
うち特にバーブ等の「ジャーナル・オブ・アメリカン・
セラミック・ソサエティー 第80巻、第12号、31
57頁から3171頁(1997)」記載のものと、バ
ーンサイド等の「ケミカル・マテリアルズ 第10巻
第9号、2419頁から2425頁」記載の方法が好ま
しい。
【0047】導電性支持体は、金属のように支持体その
ものに導電性があるものか、または表面に導電剤を含む
導電層(導電剤層)を有するガラスもしくはプラスチッ
クの支持体を使用することができる。後者の場合好まし
い導電剤としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アル
ミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは
導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸
化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。上
記導電剤層の厚さは、0.02〜10μm程度であるこ
とが好ましい。
【0048】導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好
ましい表面抵抗の範囲としては100Ω/□以下であ
り、さらに好ましくは40Ω/□以下である。この下限
には特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
【0049】導電性支持体は実質的に透明であることが
好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%
以上であることを意味し、50%以上であることが好ま
しく、70%以上が特に好ましい。透明導電性支持体と
してはガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化
物を塗設したものが好ましい。この中でもフッ素をドー
ピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソー
ダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導
電性ガラスが特に好ましい。また、低コストでフレキシ
ブルな光電変換素子または太陽電池には、透明ポリマー
フィルムに上記導電層を設けたものを用いるのがよい。
透明ポリマーフィルムには、テトラアセチルセルロース
(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET),
ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチ
ックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィ
ド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレ
ート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエス
テルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PE
I)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等があ
る。透明導電性支持体を用いる場合、光はその支持体側
から入射させることが好ましい。この場合、導電性金属
酸化物の塗布量はガラスもしくはプラスチックの支持体
1m2当たり0.01〜100gが好ましい。
【0050】透明導電性基板の抵抗を下げる目的で金属
リードを用いることが好ましい。金属リードの材質はア
ルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が好
ましく、特にアルミニウム、銀が好ましい。金属リード
は透明基板に蒸着、スッパタリング等で設置し、その上
にフッ素をドープした酸化スズ、またはITO膜からな
る透明導電層を設けることが好ましい。また上記の透明
導電層を透明基板に設けたあと、透明導電層上に金属リ
ードを設置することも好ましい。金属リード設置による
入射光量の低下は1〜10%、より好ましくは1〜5%
である。
【0051】半導体微粒子を導電性基板上に塗設する方
法としては、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液
を導電性基板上に塗布する方法、前述のゾル−ゲル法な
どが挙げられる。光電変換素子の量産化、液物性や支持
体の融通性を考えた場合、湿式の膜付与方式が比較的有
利である。湿式の膜付与方式としては、塗布法、印刷法
が代表的である。
【0052】半導体微粒子層は単層であってもよいし、
微粒子の粒径の違った分散液を多層塗布した多層構成で
あってもよい。また半導体の種類が異なる、あるいはバ
インダー、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布した
構成であってもよい。
【0053】半導体微粒子層の厚みが増大すると単位投
影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高
くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結
合によるロスも大きくなる。したがって、半導体微粒子
含有層には好ましい厚さが存在するが、典型的には0.
1〜100μmである。光電気化学電池として用いる場
合は1〜30μmであることが好ましく、2〜25μmで
あることがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m2
たりの塗布量は0.5〜400g、さらには5〜100g
が好ましい。
【0054】半導体微粒子は導電性基板に塗布した後に
粒子同士を電子的にコンタクトさせるため、および塗膜
強度の向上や基板との密着性を向上させるために加熱処
理することが好ましい。好ましい加熱処理温度の範囲は
40℃以上700℃未満であり、より好ましくは100
℃以上600℃以下である。また加熱処理時間は10分
〜10時間程度である。また、加熱処理後、半導体粒子
の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高
め、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的
で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三
塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行っ
てもよい。
【0055】本発明の半導体電極製造工程では、上記の
半導体微粒子に色素を物理的あるいは化学的に吸着させ
て色素吸着半導体層を製造する。感光層では、色素の吸
収波長領域での光吸収によって生じた励起電子が半導体
の伝導帯に注入され、これが導電性支持体に伝達されて
電流を生じる。ここで使用する色素は錯体色素、特に金
属錯体色素またはポリメチン色素が好ましい。光電変換
の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるた
め、二種類以上の色素を混合することもできる。そし
て、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるよう
に混合する色素とその割合を選ぶことができる。こうし
た色素は半導体微粒子の表面に対する適当な結合基(i
nterlocking group)を有しているこ
とが好ましい。好ましい結合基としては、COOH基、
SO3H基、シアノ基、−P(O)(OH)2基、−OP
(O)(OH)2基、または、オキシム、ジオキシム、
ヒドロキシキノリン、サリチレートおよびα−ケトエノ
レートのようなπ伝導性を有するキレート化基が挙げら
れる。この中でもCOOH基、−P(O)(OH)
2基、−OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これら
の基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また
分子内塩を形成していてもよい。また、ポリメチン色素
の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環
を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部
分を結合基としてもよい。
【0056】以下に本発明で好ましく用いられる色素を
具体的に説明する。
【0057】本発明に使用する色素が金属錯体色素の場
合、ルテニウム錯体色素が好ましく、さらに下記式
(I)で表される色素が好ましい。
【0058】式(I) (A1)pRuBaBbBc 式(I)中、pは0〜2であり、好ましくは2である。
Ruはルテニウムを表す。A1はCl、SCN、H
2O、Br、I、CN、NCO、およびSeCNから選
択される配位子である。Ba、Bb、Bcはそれぞれ独
立に以下のB-1〜B-8から選択される有機配位子であ
る。
【0059】
【化1】
【0060】ここで、Raは水素原子、ハロゲン原子、
炭素原子数(以下C数という)1〜12個で置換もしく
は無置換のアルキル基、C数7〜12個で置換もしくは
無置換のアラルキル基、またはC数6〜12個で置換も
しくは無置換のアリール基を表す。上記のアルキル基、
アラルキル基のアルキル部分は直鎖状であっても分岐状
であってもよく、アリール基、アラルキル基のアリール
部分は単環であっても多環(縮合環、環集合)であって
もよい。
【0061】本発明に用いられるルテニウム錯体色素と
しては、例えば、米国特許4927721号、同468
4537号、同5084365号、同5350644
号、同5463057号、同5525440号および特
開平7−249790号明細書に記載の錯体色素が挙げ
られる。
【0062】以下に本発明に使用する金属錯体色素の好
ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。
【0063】
【化2】
【0064】
【化3】
【0065】
【化4】
【0066】本発明に使用する色素がメチン色素である
場合、以下で説明する式(II)、式(III)、式(IV)
または式(V)で表される色素が好ましい。
【0067】
【化5】
【0068】式中、RbおよびRfは各々水素原子、ア
ルキル基、アリール基、または複素環基を表し、Rc〜
Reは各々水素原子または置換基を表す。Rb〜Rfは
互いに結合して環を形成してもよい。X11およびX1
2は各々窒素、酸素、硫黄、セレン、テルルを表す。n
11およびn13は各々0〜2の整数を表し、n12は
1〜6の整数を表す。式(II)で表される化合物は分子
全体の電荷に応じて対イオンを有してもよい。
【0069】上記におけるアルキル基、アリール基、複
素環基は、置換基を有していてもよい。アルキル基は直
鎖であっても分岐鎖であってもよく、アリール基、複素
環基は、単環でも、多環(縮合環、環集合)であっても
よい。またRb〜Rfによって形成される環は、置換基
を有していてもよく、単環であっても縮合環であっても
よい。
【0070】
【化6】
【0071】式中、Zaは含窒素複素環を形成するに必
要な非金属原子群を表す。Rgはアルキル基またはアリ
ール基である。Qaは式(III)で表される化合物がメ
チン色素を形成するのに必要なメチン基またはポリメチ
ン基を表す。X13は電荷均衡対イオンを表し、n14
は分子の電荷を中和するのに必要な0以上10以下の数
を表す。
【0072】上記のZaで形成される含窒素複素環は置
換基を有していてもよく、単環であっても縮合環であっ
てもよい。また、アルキル基、アリール基は置換基を有
していてもよく、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖で
あってもよく、アリール基は単環であっても多環(縮合
環、環集合)であってもよい。
【0073】式(III)で表される色素は、下記式(III
−a)〜(III−d)で表される色素であることが好ま
しい。
【0074】
【化7】
【0075】式(III−a)〜(III−d)中、R11〜
R15、R21〜R24、R31〜R33、およびR4
1〜R43はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ア
リール基、または複素環基を表し、Y11、Y12、Y
21、Y22、Y31〜Y35、およびY41〜Y46
はそれぞれ独立に酸素、硫黄、セレン、テルル、−CR
16R17−、または−NR18−を表す。R16〜R
18はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール
基、または複素環基を表す。Y23はO‐、S‐、Se
‐、Te‐、または−NR18‐を表す。
【0076】V11、V12、V21、V22、V3
1、およびV41はそれぞれ独立に置換基を表し、n1
5、n31およびn41はそれぞれ独立に1〜6の整数
を表す。式(III−a)〜(III−d)で表される化合物
は、分子全体の電荷に応じて対イオンを有していてもよ
い。
【0077】上記におけるアルキル基、アリール基、複
素環基は置換基を有していてもよく、アルキル基は直鎖
であっても分岐鎖であってもよく、アリール基、複素環
基は単環であっても多環(縮合環、環集合)であっても
よい。
【0078】以上のようなポリメチン色素の具体例はM.
Okawara,T. Kitao,T.Hirasima, M.Matuoka著Organic Co
lorants(Elsevier)等に詳しく記載されている。以下
に式(II)または(III)で表されるポリメチン色素の
好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定される
ものではない。
【0079】
【化8】
【0080】
【化9】
【0081】
【化10】
【0082】
【化11】
【0083】
【化12】
【0084】
【化13】
【0085】
【化14】
【0086】
【化15】
【0087】
【化16】
【0088】式(II)および式(III)で表される化合
物は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサ
イクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・
リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-
Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウ
ィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニュ
ーヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スタ
ーマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロ素サイクリック・コン
パウンズースペシャル・トピックス・イン・複素サイク
リック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Specia
l topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、
第14節、第482から515項、ジョン・ウィリー・
アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨー
ク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー
・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of
Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977
刊、第15章、第369から422項、エルセビア・サ
イエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier
Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨー
ク、英国特許第1,077,611号などに記載の方法
に基づいて合成することができる。
【0089】色素を半導体微粒子に吸着させるには色素
等の溶液中に、よく乾燥した半導体微粒子を数時間浸漬
する方法が一般的である。色素の吸着は室温で行っても
よいし、特開平7−249790号に記載されているよ
うに加熱還流して行ってもよい。色素の吸着は、半導体
微粒子を導電性支持体に塗設する前に行うか塗設後に行
うこともできるし、半導体微粒子と色素等を同時に塗設
して吸着させても良いが、塗設後の半導体微粒子膜に吸
着させるのが最も好ましい。
【0090】導電性支持体に塗設した半導体微粒子膜に
色素を吸着させる方法は色素溶液中によく乾燥した半導
体微粒子膜を浸漬するか、もしくは色素溶液を半導体微
粒子膜上に塗布して吸着させる方法を用いることができ
る。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エア
ーナイフ法などが使える。後者の塗布方法としては、ワ
イヤーバー法、スライドホッパ法、エクストルージョン
法、カーテン法、スピン法、スプレー法があり、印刷方
法としては、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン
印刷等がある。
【0091】色素の使用量は、全体で、支持体1m2当た
り0.01〜100ミリモルが好ましい。また、色素の
半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対し
て0.01〜1ミリモルが好ましい。このような色素量
とすることによって、半導体における増感効果が十分に
得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不
十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着してい
ない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0092】電解液は電解質、溶媒、および添加物から
構成されることが好ましい。本発明の電解質はI2とヨウ
化物の組み合わせ(ヨウ化物としてはLiI、NaI、
KI、CsI、CaI2 などの金属ヨウ化物、あるいは
テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウム
ヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモ
ニウム化合物のヨウ素塩など)、Br2と臭化物の組み
合わせ(臭化物としてはLiBr、NaBr、KBr、
CsBr、CaBr2 などの金属臭化物、あるいはテト
ラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロ
マイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩など)のほ
か、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン
−フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナト
リウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィドなど
のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノ
ンなどを用いることができる。この中でもI2とLiIや
ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドな
ど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩を組み合わせた電
解質が本発明では好ましい。上述した電解質は混合して
用いてもよい。また、電解質はEP-718288号、WO95/1845
6号、J. Electrochem. Soc., Vol.143,No.10,3099(199
6)、Inorg. Chem. 1996,35,1168-1178に記載された室温
で溶融状態の塩(溶融塩)を使用することもできる。溶
融塩を電解質として使用する場合、溶媒は使用しなくて
も構わない。
【0093】好ましい電解質濃度は0.1M以上15M以
下であり、さらに好ましくは0.2 M以上10M以下であ
る。また、電解質にヨウ素を添加する場合の好ましいヨ
ウ素の添加濃度は0.01M以上0.5M以下である。
【0094】本発明で電解質に使用する溶媒は、粘度が
低くイオン易動度を向上したり、もしくは誘電率が高く
有効キャリアー濃度を向上したりして、優れたイオン伝
導性を発現できる化合物であることが望ましい。このよ
うな溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プ
ロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート化合
物、3−メチル−2−オキサゾリジノン(NMO)など
の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメ
トキシエタン(DME)などのエーテル化合物、エチレ
ングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコー
ルジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアル
キルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエ
ーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノー
ル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピ
レングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレング
リコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコ
ールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレング
リコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなど
の多価アルコール類、アセトニトリル(AN)、グルタ
ロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニト
リル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、ジメチル
スルフォキシド(DMSO)、スルフォランなど非プロ
トン極性物質、水などを用いることができる。
【0095】本発明では、電解質はポリマー添加、オイ
ルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマ
ーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)させて使
用することもできる。ポリマー添加によりゲル化させる
場合は、"Polymer Electrolyte Reviews-1および2"(J.
R.MacCallumとC.A. Vincentの共編、ELSEVIER APPLIEDS
CIENCE)に記載された化合物を使用することができる
が、特にポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン
を好ましく使用することができる。オイルゲル化剤添加
によりゲル化させる場合はJ. Chem Soc. Japan, Ind. C
hem.Soc., 46779(1943), J. Am. Chem. Soc., 111,5542
(1989), J. Chem. Soc., Chem. Commun.,1993, 390, An
gew. Chem. Int. Ed. Engl., 35,1949(1996), Chem. Le
tt., 1996, 885, J. Chm. Soc., Chem. Commun., 1997,
545に記載されている化合物を使用することができる
が、好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する
化合物である。
【0096】本発明では、電解質の替わりに有機または
無機あるいはこの両者を組み合わせた正孔輸送材料を使
用することができる。本発明に適用可能な有機正孔輸送
材料としては、N,N'-ジフエニル-N、N'-ビス(4-メト
キシフェニル)-(1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン
(J.Hagen et al.,Synthetic Metal 89(1997)215-22
0)、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニ
ルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(Nature,Vol.395,
8 Oct. 1998,p583-585およびWO97/10617)、1,1-ビス
{4-(ジ-P-トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン
の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン
化合物(特開昭59−194393号公報)、4,4,‐ビス
[(N-1-ナフチル)‐N-フェニルアミノ]ビフェニルで
代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合
芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5
−234681号公報)、トリフェニルベンゼンの誘導体でス
ターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許
第4,923,774号、特開平4−308688号公報)、N,N'-ジ
フエニル-N、N'-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1'-ビ
フェニル)-4,4'-ジアミン等の芳香族ジアミン(米国
特許第4,764,625号)、α,α,α',α'-テトラメチル
-α,α'-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-p-キ
シレン(特開平3−269084号公報)、p-フェニレンジア
ミン誘導体、分子全体として立体的に非対称なトリフェ
ニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報)、ピレニ
ル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開
平4−175395号公報)、エチレン基で3級芳香族アミンユ
ニツトを連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号
公報)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平
4−290851号公報)、ベンジルフェニル化合物(特開平4
−364153号公報)、フルオレン基で3級アミンを連結し
たもの(特開平5−25473号公報)、トリアミン化合物
(特開平5−239455号公報)、ピスジピリジルアミノビ
フェニル(特開平5−320634号公報)、N,N,N−トリフ
ェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報)、フェノ
キザジン構造を有する芳香族ジアミン(特願平5−29072
8号)、ジアミノフエニルフエナントリジン誘導体(特
願平6−45669号)等に示される芳香族アミン類、α-オ
クチルチオフェンおよびα,ω-ジヘキシル-α-オクチル
チオフェン(Adv.Mater. 1997,9,N0.7,p557)、ヘキサド
デシルドデシチオフェン(Angew. Chem. Int. Ed. Engl.
1995, 34, No.3,p303-307)、2,8-ジヘキシルアンスラ
[2,3-b:6,7-b']ジチオフェン(JACS,Vol120, N0.4,1998,
p664-672)等のオリゴチオフェン化合物、ポリピロール
(K. Murakoshi et al.,;Chem. Lett. 1997, p471)、"
Handbook of Organic Conductive Molecules and Poly
mers Vol.1,2,3,4"(NALWA著、WILEY出版)に記載され
ているポリアセチレンおよびその誘導体、ポリ(p-フェ
ニレン) およびその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレ
ン) およびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよび
その誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリア
ニリンおよびその誘導体、ポリトルイジンおよびその誘
導体等の導電性高分子を好ましく使用することができ
る。また、有機正孔輸送材料にはNature,Vol.395, 8 Oc
t. 1998,p583-585に記載されているようにドーパントレ
ベルをコントロールするためにトリス(4-ブロモフェ
ニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのような
カチオンラジカルを含有する化合物を添加したり、酸化
物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)
を行うためにLi[(CF3SO2)2N]のような塩を添加しても構
わない。
【0097】有機正孔輸送材料は真空蒸着法,キャスト
法,塗布法,スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光
電解重合法等の手法により電極内部に導入することがで
きる。また、正孔輸送材料を電解液の替わりに使用する
ときは短絡防止のためElectorochim. Acta 40, 643-652
(1995)に記載されているスプレーパイロリシス等の手法
を用いて二酸化チタン薄層を下塗り層として塗設するこ
とが好ましい。
【0098】無機固体化合物を電解質の替わりに使用す
る場合、ヨウ化銅(p-CuI)(J. Phys. D:Appl. Phys. 31
(1998)1492-1496)、チオシアン化銅(Thin Solid Film
s 261(1995)307-310、J. Appl. Phys. 80(8),15 Octobe
r 1996, p4749-4754、Chem.Mater. 1998, 10, 1501-150
9、Semicond. Sci. Technol. 10, 1689-1693)等をキャ
スト法,塗布法,スピンコート法、浸漬法、電解メッキ
法等の手法により電極内部に導入することができる。
【0099】電荷移動層はその水分の含量が10,00
0ppm以下であることが好ましく、さらには2,00
0ppm以下、特に100ppm以下であることがより
好ましい。
【0100】本発明の素子で用いる対極は、色素増感半
導体層を担持する光電極が光アノードとしてはたらくと
き、カソードとして電荷移動層への電子移動をおこな
う。対極に用いる導電性材料としては金属(例えば白
金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム
等)、炭素、または導電性の金属酸化物(インジウム−
スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの
等)が挙げられる。好ましい対極材料は電気化学的に安
定な貴金属類(白金、金)および導電性金属酸化物(酸
化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等)である。対極
材料の厚さは、特に制限はないが、3nm以上10μm
以下であることが好ましい。金属材料である場合は、そ
の膜厚は好ましくは5μm以下であり、さらに好ましく
は5nm以上3μm以下の範囲である。
【0101】感光層に光が到達するためには、前述の色
素増感半導体層を担持する導電性支持体と対極の少なく
とも一方が実質的に透明でなければならない。本発明の
光電気化学電池においては、色素増感半導体層を担持す
る導電性支持体が透明であって太陽光をその支持体の側
から入射させるのが好ましい。この場合対極は光を反射
する鏡面構造を有することがさらに好ましい。本発明に
おける好ましい対極は、貴金属または導電性の酸化物を
蒸着したガラスまたはプラスチックである。
【0102】対極の塗設については電荷移動層の付与で
記したように、電荷移動層の上に付与する場合と先に半
導体微粒子含有層上に付与する場合の2通りある。いず
れの場合も、対極材の種類や電荷移動層の種類により、
適宜、電荷移動層上または半導体微粒子含有層上に対極
材を塗布、ラミネート、蒸着、貼り合わせなどの方法に
より形成可能である。例えば、対極を貼り合わせる場合
は、上記の導電性材料を塗布、蒸着、CVD等の手法に
より導電層として設けられた基板を貼り合わせることが
できる。また、電荷移動層が固体の場合には、その上に
直接、前述の導電性材料を塗布、メッキ、PVD、CV
D等の手法で対極を形成することができる。
【0103】次に本発明の光電変換素子をいわゆる太陽
電池に適用する場合のセル構造およびモジュール構造に
ついて説明する。
【0104】色素増感型太陽電池のセル内部の構造は、
基本的には上述した光電変換素子や光電気化学電池と同
じであるが、図2または図3に示すように目的に合わせ
様々な形態が可能である。大きく二つに分ければ、両面
から光の入射が可能な構造[図2(a)(d)、図3
(g)]と、片面からのみ可能なタイプ[図2(b)
(c)、図3(e)(f)(h)]である。
【0105】図2(a)は、2枚の透明導電層12間に
色素吸着半導体微粒子層であるTiO2層10と電荷移
動層11とを介在させた構造である。図2(b)は、透
明基板13上に一部金属リード9を設け、さらに透明導
電層12を設け、下塗り層14、色素吸着TiO2層1
0、電荷移動層11および金属層8をこの順で設け、さ
らに支持基板15を配置した構造である。図2(c)は
支持基板15上に金属層8を有し、下塗り層14を介し
て色素吸着TiO2層10を設け、さらに電荷移動層1
1と透明導電層12とを設け、一部に金属リード9を設
けた透明基板13を金属リード9を内側にして配置した
構造である。図2(d)は、透明基板13上に一部金属
リード9を設け、これと透明導電層12との間に下塗り
層14と色素吸着TiO2層10と電荷移動層11とを
介在させた構造である。図3(e)は、透明基板13上
に透明導電層12を有し、下塗り層14を介して色素吸
着TiO2層10を設け、さらに電荷移動層11および
金属層8を設け、この上に支持基板15を配置した構造
である。図3(f)は、支持基板15上に金属層8を有
し、下塗り層14を介して色素吸着TiO2層10を設
け、さらに電荷移動層11および透明導電層12を設
け、この上に透明基板13を配置した構造である。図3
(g)は、透明導電層12を有する透明基板13間に、
透明導電層12を内側にして下塗り層14、色素吸着T
iO2層10および電荷移動層11を介在させた構造で
ある。図3(h)は、支持基板15上に金属層8を設
け、下塗り層14を介して色素吸着TiO2層10を設
け、さらに固体の電荷移動層16を設け、この上に一部
金属層8または金属リード9を有する構造である。
【0106】本発明の色素増感型太陽電池のモジュール
構造は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様の
構造をとりうる。一般的には、金属・セラミック等の支
持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護
ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構
造とすることができるが、支持基板に強化ガラス等の透
明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持
基板側から光を取り込むことも可能である。具体的に
は、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイ
プ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造ある
いはアモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基
板一体型などのモジュール構造が可能である。これらの
モジュール構造は使用目的や使用場所(環境)により適
宜選択できる。本発明の素子を基板一体型でモジュール
化した例を図4に示す。
【0107】図4の構造は、透明基板13の一方の面上
に透明導電層12を有し、この上にさらに色素吸着Ti
2層10、固体の電荷移動層16および金属層8を設
けたセルをモジュール化したものであり、透明基板13
の他方の面には反射防止層17が設けられている。この
場合、入射光の利用効率を高めるために、感光部である
色素吸着TiO2層10の面積比率(光の入射面である
透明基板13側から見たときの面積比率)を大きくした
方が好ましい。
【0108】スーパーストレートタイプやサブストレー
トタイプの代表的な構造は、片側または両側が透明で反
射防止処理を施された支持基板の間に、一定間隔にセル
が配置され、隣り合うセル間が金属リードまたはフレキ
シブル配線等によって接続されており、外縁部に集電電
極を配置して、発生した電力を外部に取り出す構造にな
っている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率
アップのため、目的に応じ、エチレンビニルアセテート
(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフイルム
または充填樹脂の形で用いることができる。また、外部
からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必
要のない場所に使う場合には、表面保護層を透明プラス
チックフイルムで構成したり、または、上記充填・封止
材料を硬化させることによって保護機能を付与し、片側
の支持基板をなくすことも可能である。支持基板の周囲
は、内部の密封およびモジュールの剛性確保のため、金
属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板と
フレームの間は封止材で密封シールする。
【0109】また、セルそのものや支持基板、充填材お
よび封止部材に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太
陽電池を構成することもできる。このように、使用目的
や使用環境に合わせて様々な形状・機能を持つ太陽電池
を製作することができる。
【0110】スーパーストレートタイプの太陽電池モジ
ュールは、例えば、基板供給装置から送り出されたフロ
ント基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上に
セルを封止材・セル間接続用リード線・背面封止材等と
共に順次積層した後、背面基板または背面カバーを乗
せ、外縁部にフレームをセットして作ることができる。
【0111】一方、サブストレートタイプの場合、基板
供給装置から送り出された支持基板をベルトコンベヤ等
で搬送しながら、その上にセルをセル間接続用リード線
・封止材等と共に順次積層した後、フロントカバーを乗
せ、周縁部にフレームをセットして作製することができ
る。
【0112】図4に示した構造のモジュールは、支持基
板上に透明電極・感光層・電荷移動層・裏面電極等が立
体的かつ一定間隔で配列されるように、選択メッキ・選
択エッチング・CVD・PVDといった半導体プロセス
技術、あるいはパターン塗布または広幅で塗布した後に
レーザースクライビングやプラズマCVM(Solar Ener
gy Materials and Solar Cells, 48, p373-381等に記
載)または研削等の機械的手法などの方法でパターニン
グすることができ、これらにより所望のモジュール構造
を得ることができる。
【0113】以下にその他の部材や工程について詳述す
る。
【0114】封止材料としては、液状のEVA(エチレ
ンビニルアセテート)やフッ化ビニリデン共重合体とア
クリル樹脂混合物フイルム状のEVA等、耐候性付与・
電気絶縁性付与・集光効率向上・セル保護性(耐衝撃性)
向上等の目的に応じ様々な素材が使用可能である。
【0115】これらを、セル上に固定する方法として
は、封止材の物性に合わせ、フイルム状の素材ではロー
ル加圧後加熱密着や真空加圧後加熱密着、液またはペー
スト状の材料ではロールコート、バーコート、スプレー
コート、スクリーン印刷等の様々な方法がある。
【0116】また、透明フィラーを封止材に混入して強
度を上げたり、光透過率を上げることができる。
【0117】モジュール外縁と周縁を囲むフレームとの
間は、耐候性・防湿性が高い樹脂を使って封止するとよ
い。
【0118】支持基板としてPET・PEN等の可撓性
素材を用いる場合は、ロール状の支持体を繰り出してそ
の上にセルを構成した後、上記の方法で連続して封止層
を積層することができ、生産性の高い工程を造ることが
できる。
【0119】発電効率を上げるため、モジュールの光取
り込み側の基板(一般的には強化ガラス)の表面には反
射防止処理が施される。これには、反射防止膜をラミネ
ートする方法、反射防止層をコーティングする方法があ
る。
【0120】また、セルの表面をグルービングまたはテ
クスチャリング等の方法で処理することによって入射し
た光の利用効率を高めることが可能である。
【0121】発電効率を上げるためには、光を損失なく
モジュール内に取り込むことが最重要だが、光電変換層
を透過してその内側まで到達した光を反射させて光電変
換層側に効率良く戻すことも重要である。このために
は、支持基板面を鏡面研磨した後、AgやAl等を蒸着
またはメッキする方法、セルの最下層にAl−Mgまた
はAl−Tiなどの合金層を反射層として設ける方法、
あるいは、アニール処理によって最下層にテクスチャー
構造を作り反射率を高める方法等がある。
【0122】発電効率を上げるためには、セル間接続抵
抗を小さくすることが、内部電圧降下を抑える意味で重
要である。
【0123】ワイヤーボンディングや導電性のフレキシ
ブルシートで接続するのが一般的だが、導電性粘着テー
プや導電性接着剤を使ってセルの固定機能と電気的な接
続機能を兼ねる方法、導電性ホットメルトを所望の位置
にパターン塗布する方法等が有る。
【0124】ポリマーフィルムなどのフレキシブル支持
体を使った太陽電池では、ロール状の支持体を送り出し
ながら半導体の塗設の説明で示した方法によって、順
次、セルを形成・所望のサイズに切断した後、周縁部を
フレキシブルで防湿性のある素材でシールして、電池本
体を作製できる。また、Solar Energy Materials andSo
lar Cells, 48, p383-391記載の「SCAF」とよばれ
るモジュール構造とすることもできる。
【0125】フレキシブル支持体の太陽電池では、更に
これを曲面ガラス等に接着固定して使用することもでき
る。
【0126】
【実施例】以下、本発明の効果を実施例によって具体的
に説明する。この実施例においては、色素増感用の半導
体としてn型半導体のTiO2の微粒子を用いた。ま
た、実施例において用いる色素は、下記の色素1〜4で
ある。
【0127】
【化17】
【0128】
【化18】
【0129】1.透明導電性支持体(作用電極用)の作
製 厚さ1.9mmの無アルカリガラスの基板に、CVD法
によってフッ素ドープ型の二酸化スズを全面に均一にコ
ーティングし、厚さ600nm、表面抵抗約20Ω/
□、光透過率(500nm)が85%の導電性二酸化ス
ズ膜を片面に被覆した透明導電性支持体(支持体R1)
を形成する。
【0130】2.二酸化チタン粒子含有塗布液の作製 C.J.BarbeらのJ.Am.Ceramic S
oc.80巻,p3157の論文に記載の製造方法に従
い、チタン原料にチタニウムテトライソプロポキシドを
用い、オートクレーブ中での重合反応の温度を230℃
に設定して二酸化チタン濃度11重量%の二酸化チタン
分散物を合成する。得られる二酸化チタン粒子の平均サ
イズは約10nmである。
【0131】この分散物に二酸化チタンに対し30重量
%のポリエチレングリコール(分子量20,000、和
光純薬製)を添加し、混練して塗布液を得る。
【0132】3.色素を吸着した二酸化チタン半導体電
極の作製 上記1で作製する透明導電性基板の導電面側にこの塗布
液をドクターブレード法で100μmの厚みで塗布し、
25℃で30分間乾燥した後、電気炉で450℃にて3
0分間焼成する。二酸化チタンの塗布量は15g/m2であ
り、膜厚は8μmである。
【0133】二酸化チタンを塗布した半導体電極は、真
空度10-5torrの真空下でさらに乾燥させた後、酸
素濃度が300ppm、露点が−50℃の乾燥Ar気中
で保存する。
【0134】半導体電極を、上記のAr気中で、色素−
1の有機溶液(色素濃度が3×10 -4モル/リットル、
溶媒がアセトニトリル:t−ブタノール(1:1)の混
合溶液であり、真空下で脱気し、Arで溶存酸素を置換
処理した溶液)に浸漬して密閉し、40℃で12時間放
置する。このようにして色素の染着した半導体電極をエ
タノールで洗浄し、上記のAr気中で暗所にて自然乾燥
させる。色素の吸着量は、二酸化チタンの塗布面積1m
2あたりおよそ1.5×10-3モルである。
【0135】4.光電気化学電池の作成 上述のようにして作成し色増感されたTiO2電極基板
(2cm×1.5cm)をこれと同じ大きさの対極基板
(主に白金蒸着ガラス、下記表2参照)と、熱圧着性の
ポリエチレンフイルム製のフレーム型スペーサー(厚さ
20μm)を挟んで、長辺方向に端子用の末端部である
幅2mmを交互に外へ出して重ね合わせ、120℃で両
基板を圧着する(図1参照)。セルを受光部であるTi
2透明電極基板の面を残して全体をエポキシ樹脂接着
剤でシールする。スペーサーの内側のエッジにあたるガ
ラス基板には電解液注液用の小孔を設ける。非水電解液
としてヨウ化テトラブチルアンモニウム0.65モル/
リットル,ヨウ素0.05モル/リットルのアセトニト
リル溶液を準備し、酸素濃度90ppmのArガスを通
気して溶存酸素を除去する。この電解液を基板の小孔か
ら毛細管現象を利用して電極間の空間にしみこませる。
以上の素子組立て工程と、電解液注入の工程をすべて上
記のAr雰囲気中で実施し、本発明の電池B3を得る。
同様にして、組立工程の雰囲気と増感色素を変更して表
1に示す本発明の電池を得る。
【0136】また、比較として、焼成した半導体電極の
保存から電池組立てまでの工程内の各工程を、表1にし
めす酸素濃度のより高い雰囲気のもとで実施して作成し
た電池を準備する。
【0137】このようにして、受光面積が約2cm2
あり、図1に示した基本層構成のとおり、導電性ガラス
1(ガラス上に導電剤層2が設層されたもの)、TiO
2電極3、色素層4、電解液5、白金層6および支持体
ガラス7が順に積層された光電気化学電池を組み立て
る。
【0138】
【表1】
【0139】5.光電変換効率の測定 500Wのキセノンランプ(ウシオ電気)に太陽光シミ
ュレーション用補正フィルター(Oriel社製AM
1.5direct)を装着し、電池への入射光強度が
100mW/cm2に調整された模擬太陽光を照射する。
【0140】作製した光電気化学電池の導電性ガラスと
白金蒸着ガラスの末端に設けた端子に導線でオーミック
コンタクトをとり、両電極の電気応答を電流電圧測定装
置(ケースレー製ソースメジャーユニット238型)に
入力する。光源の照射光を電池の透明電極側から入射
し、電流―電圧特性を測定する。これにより求められる
表1に示す代表的な光電気化学電池の開放電圧(Voc)、
短絡電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)を
一括して表2に記載した。
【0141】6.光耐久性の評価 組み立てた光電気化学電池に、紫外線の入射を遮断する
ためのSC42フィルターを装着し、電池を85000
luxの照度のXe灯耐光試験機に露光する。試験機は
3.5時間の露光と1時間の暗中放置のサイクルからな
り、雰囲気の温度は30℃、湿度は80〜100%に調
節する。この試験機で10日間の強制耐光試験を行った
ときの、試験前後のエネルギー変換効率とその変化率を
計測する。表2に、表1に示す代表的な太陽電池(比較
1、比較3、A3、A4、B3、B4)の出力性能の実
測値を示す。
【0142】
【表2】
【0143】表2に示すとおり、比較例1及び3の光耐
久性の低下率が39%以上であるのに対し、サンプルA
3、A4、B3、B4の光耐久性の低下率はたかだか約
10%である。特に色素−1を用いたサンプルB3、B
4ではたかだか約6%である。工程中の酸素濃度、水分
含有率を減少させたことによる明瞭な効果と考えられ
る。本発明に示す工程雰囲気の条件で組み立てた光電気
化学電池が、太陽光の変換の諸性能と保存耐久性におい
てより優れた性能を与えることがわかる。
【0144】
【発明の効果】本発明によって、エネルギー変換効率と
保存耐久性に優れた色素増感光電変換素子および光電気
化学電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例による光電気化学電池の構成を示す断面
図である。
【図2】光電気化学電池の基本的な構成例を示す断面図
である。
【図3】光電気化学電池の基本的な構成例を示す断面図
である。
【図4】光電気化学電池の基本的な構成例を示す断面図
である。
【符号の説明】 1 導電性ガラス 2 導電剤層 3 TiO2層 4 色素層 5 電解液 6 白金層 7 ガラス 8 金属層 9 金属リード 10 色素吸着TiO2層 11 電荷移動層 12 透明導電層 13 透明基板 14 下塗り層 15 支持基板 16 固体の電荷移動層

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性支持体上に色素が吸着された半導
    体の微粒子を含有する感光層が塗設されてなる作用極
    と、電荷移動層および対極を接合して一体化する素子組
    立て工程が、不活性ガスを主成分とし、酸素濃度が(外
    気中酸素濃度の3分の1以下である)7%以下の雰囲気
    中で行われる色素増感された光電変換素子の製造方法。
  2. 【請求項2】前記素子組立て工程は、不活性ガスを主成
    分とし酸素濃度が1%以下の雰囲気中で行われる請求項
    1に記載の光電変換素子の製造方法。
  3. 【請求項3】前記素子組立て工程は、不活性ガスを主成
    分とし酸素濃度が300ppm以下の雰囲気中で行われ
    る請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
  4. 【請求項4】不活性ガスを主成分とする雰囲気が用いら
    れる工程は、素子組立て工程のなかで、電荷移動層を素
    子に組み込む工程である請求項1〜3のいずれかに記載
    の光電変換素子の製造方法。
  5. 【請求項5】前記不活性ガスを主成分とする雰囲気が用
    いられる工程は、素子組立て工程のなかで、流動性の電
    解質を素子に注入する工程である請求項4に記載の光電
    変換素子の製造方法。
  6. 【請求項6】前記電荷移動層はイオン伝導性の電解質で
    ある請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子の製
    造方法。
  7. 【請求項7】前記電荷移動層はイオン伝導性の固体電解
    質である請求項6に記載の光電変換素子の製造方法。
  8. 【請求項8】前記半導体の微粒子は金属カルコゲナイド
    である請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子の
    製造方法。
  9. 【請求項9】前記半導体の微粒子はTiO2、TiSr
    3、ZnO、WO3およびNb25からなる群より選ば
    れる金属酸化物の少なくとも1種である請求項1〜8の
    いずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
  10. 【請求項10】前記不活性ガスはアルゴン、窒素から選
    ばれる不活性ガスである請求項1〜9のいずれかに記載
    の光電変換素子の製造方法。
  11. 【請求項11】不活性ガスを主成分とする雰囲気は、露
    点が−20℃以下の雰囲気である請求項1〜10のいず
    れかに記載の光電変換素子の製造方法。
  12. 【請求項12】不活性ガスを主成分とする雰囲気は、露
    点が−40℃以下の雰囲気である請求項1〜11のいず
    れかに記載の光電変換素子の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007122932A (ja) * 2005-10-25 2007-05-17 Kyocera Corp 光電変換装置
ITRM20130516A1 (it) * 2013-09-17 2015-03-17 Simone Casaluci Process of manufacturing of thin film perovskite based solar cells (pbsc) with laser shaping or patterning of one or more constituent layers
CN105673377A (zh) * 2016-01-13 2016-06-15 吴本刚 一种基于高效率太阳能电池的计量加油泵
EP4343871A4 (en) * 2021-05-21 2024-10-23 Panasonic Holdings Corp SOLAR CELL AND METHOD FOR MANUFACTURING SOLAR CELL

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