JP2001026886A - 表面被覆金属板およびその製造方法 - Google Patents
表面被覆金属板およびその製造方法Info
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Abstract
金属板であって、耐食性に優れた皮膜を有する表面被覆
金属板およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 金属板またはめっき金属板に複数層の皮
膜が形成されている表面被覆金属板であって、前記皮膜
の内、最下層皮膜は、Si系及びLi系無機化合物をS
i/Li(モル比)が5以上36未満となるように含有
していると共に、実質的にCrを含有していないもので
ある。また本発明の表面被覆金属板を製造する方法は、
金属板またはめっき金属板に、クロメート処理を施すこ
となく、Si系及びLi系無機化合物をSi/Li(モ
ル比)が5以上36未満となるように含有する処理溶液
を塗布し、乾燥して最下層皮膜を形成する工程を含むも
のである。
Description
施さなくても良好な耐食性を示す皮膜が形成された表面
被覆金属板およびその製造方法に関するものである。本
発明の表面被覆金属板は、家庭用電気製品、建材、自動
車部品等の分野に適用することができる。
料としては、電気Znめっき鋼板或いは溶融Znめっき
鋼板等のZn系めっき鋼板や、より一層の耐食性及び塗
装性(塗膜の密着性)の向上を目的として、Znめっき
鋼板上にクロメート皮膜やりん酸塩皮膜等の化成皮膜を
形成した表面被覆鋼板が多く用いられている。
いられる処理液中にはCrなどの有毒金属およびイオン
が含まれており、所定の無害化対策を行ったとしても、
地下水や土壌を汚染する可能性が皆無ではないという問
題があった。
る表面被覆法が提案されている。例えば、特公昭53−
47774号には、正リン酸、アルミナ系ゾル、金属系
ヒドロゾルを含む処理液で被覆する方法が、特公昭58
−31390号には、水ガラスやケイ酸ソーダとピラゾ
ールを含む処理液で被覆する方法が、特開平2−255
80号には、SiO2/M2O(Mはアルカリ金属)比が
1以上の処理液で被覆した後、脱アルカリ処理を施す方
法が、また特開平4−293789号にはシリケートコ
ーティングを行う方法が夫々開示されている。しかしな
がら、これらの方法で形成された皮膜は、耐食性が不充
分であったり、塗装性が悪かったり、耐疵付き性に劣る
などの問題があり、さらなる改善が嘱望されていた。
みてなされたものであり、その目的は、クロメート処理
を行わないことを前提とし、クロメート皮膜に代替可能
な表面被覆金属板であって、耐食性に優れた皮膜を有す
る表面被覆金属板、およびその様な表面被覆金属板を効
率良く製造することのできる方法を提供するにある。
覆金属板は、金属板またはめっき金属板に複数層の皮膜
が形成されている表面被覆金属板であって、前記皮膜の
内、最下層皮膜は、Si系及び/Li系無機化合物をS
i/Li(モル比)が5以上36未満となるように含有
していると共に、実質的にCrを含有していないところ
に要旨を有する。
くは8〜33重量%)、或いは更にシランカップリング
剤(好ましくは0.8〜17重量%)を構成成分として
含むものは、いずれも本発明の好ましい実施態様であ
る。またCr以外であれば、他に任意の成分が含まれ得
ることを排除するものではない。
0.02〜0.6g/m2であることが好ましい。ま
た、上記複数層の上層側皮膜は、有機樹脂を主成分とす
るものが好ましく、このとき、該上層側皮膜中にシリカ
がSiO2として15重量%以下含まれているものは、
耐食性が一層向上するので特に好ましい。なお、上層側
皮膜の付着量はSi換算で0.2〜2.5g/m2であ
ることが推奨される。
法は、金属板またはめっき金属板に、クロメート処理を
施すことなく、Si系及びLi系無機化合物をSi/L
i(モル比)が5以上36未満となるように含有する処
理溶液を塗布し、乾燥して最下層皮膜を形成する工程を
含むところに要旨を有する。
ルシリカ、Li系無機化合物としてリチウムシリケート
を含有する処理液を塗布後、200℃以下で乾燥するこ
とは、皮膜物性が向上するため好ましい。
の複層より構成されるものであり、上記で述べた2層に
限定されず、上記最下層皮膜に、有機樹脂を主成分とす
る皮膜層を積層した上へ、若しくはこれらの層の間に、
他の層、例えば最上層として、固形潤滑剤層等を含有す
る皮膜層を用途に応じて被覆してなる、3層以上の複数
層より構成される金属板も本発明の好ましい実施態様で
ある。
ート処理を行なうことなく、耐食性及び塗装性を向上し
得る表面被覆金属板を製造する技術について研究を行な
っており、こうした研究の結果、Si/Li(モル比)
が36〜66である皮膜を被覆した金属板は耐食性、塗
装性等の各種特性に優れていることを見出し、先に特許
出願を行なっている(特願平10−209971)。
れた耐食性を発揮し、またその表面へ有機塗装を施すと
きには、優れた塗装性を発揮するものであるが、本発明
者らは、更に研究を進めた結果、Si/Li(モル比換
算)を36未満とした場合であっても、これを最下層と
し、上層側に有機樹脂を主成分とする皮膜等が複数層形
成されたものは、先願に比べ一層優れた耐食性が得られ
ることを見出し、本発明に至った。
膜は形成されていないが、最下層皮膜の上層側に有機樹
脂を主成分とする皮膜が施されているため、塗布型クロ
メート処理金属板と同等以上の高耐食性を示す点で極め
て有用である。以下、本発明金属板を構成する各要件に
ついて詳細に説明する。
き金属板は、特に限定されず、鋼板、ステンレス鋼板、
アルミ板、アルミ合金板、チタン板等の金属板、あるい
はこれらに単一金属または各種合金のめっきを施したも
のを用いることができる。耐食性の観点からはめっき金
属板を用いる方が好ましく、汎用されているZnめっき
鋼板やZn合金めっき鋼板の使用が推奨される。もちろ
ん本発明ではめっき方法やめっき層の組成・構成等は特
に限定されない。
皮膜について説明する。この最下層皮膜は、必須成分と
してSiとLiを含有する。上記皮膜中では、両者の
比:Si/Li(モル比)が5以上36未満を満足して
いなければならない。また、皮膜には、実質的にCrが
含まれていないことも必要である。
下層皮膜形成用処理液(以下単に処理液と省略する)中
に配合するSi系無機化合物とLi系無機化合物の量を
調整することによって制御される。また、本発明金属板
はクロメート皮膜を有していないため、理論上Crは上
記最下層皮膜に含まれるはずはないが、金属板中または
めっき層中に不可避不純物として含まれていたCrが皮
膜中に析出してくる可能性もあり、このような場合に皮
膜からCrが検出された金属板も、本発明の技術範囲内
に包含される。本発明において「実質的にCrが含まれ
ていない」とはこの様な意味である。
光X線分析法等の定量分析法を用いて分析することがで
きる。この分析にあたっては、皮膜が付いたままの表面
被覆金属板試料について各元素の定量分析を行うと共
に、この試料を濃塩酸(例えば、50%塩酸)に浸漬し
て金属板から皮膜を溶解剥離させて得られる金属板のみ
についても定量分析を行い、両者の差から、皮膜中の元
素量を算出することが必要である。めっき金属板の場合
は、塩酸の濃度や浸漬時間を調整して剥離部分を変える
ことにより、皮膜、めっき層、金属板の各部分における
定量が可能である。蛍光X線分析には、例えば、島津製
作所製のMULTI-CHANNEL X-RAY FLUORESCENCE SPECTROME
TER 「MFX−2100」を用いることができ、測定誤
差±3mg/m2レベルで定量分析を行うことができ
る。
OHを有し、かつ、ある程度移動可能な状態で存在して
いる水分散型シリカと、4個の酸素原子と共有結合して
完全にガラス状で移動不可能な状態で存在している非晶
質のガラス質皮膜を形成する水ガラスとの2形態で存在
している。皮膜に疵が発生すると、このうち移動可能な
Siが疵部に移動して皮膜を修復し、疵の広がりを防御
することによって、耐食性が発揮されるのではないかと
考えられる。この観点からすれば、Siとしては、吸着
水やOH基を有する水分散型シリカを皮膜中に存在させ
ることが好ましく、完全結晶化した乾式シリカは好まし
くない。処理液としての使いやすさを考慮すれば、Si
系無機化合物のうち、いわゆるコロイダルシリカが好適
に用いられるが、その他のシリカも使用可能である。
るために添加される。しかし、Liが多くなると、皮膜
から溶出するLi成分が多くなり、上層側皮膜に発生す
るピンホールなどの塗膜欠陥からLi成分が溶出し、空
気中の炭酸ガスと反応し白色粉末状の炭酸水素リチウム
が生成するため外観品質が著しく劣化する。また、Li
成分の溶出により皮膜の造膜性が損なわれると同時に、
皮膜の自己修復に必要なSiが相対的に少なくなるため
耐食性が著しく劣化する。そのため本発明では、Si/
Li(SiとLiのモル比)の下限を5とした。一方、
Liに比べてSiが多すぎると、皮膜形成性が悪化し、
有機樹脂の添加による皮膜形成向上作用をもってして
も、その低下を制御することは困難であり、耐食性のあ
る均一で緻密な皮膜が形成できなくなると共に、形成さ
れた皮膜に亀裂が生じやすくなる。従って、Si/Li
の上限は36未満とする。より好ましいSi/Liの下
限は10、上限は25である。尚、皮膜中にLiを含有
させるためには、処理液中にリチウムシリケートを加え
ればよい。ただし、リチウムシリケートに由来するSi
も皮膜中のSiとしてカウントされるので、Si/Li
が上記最適範囲に入るようにリチウムシリケート量を調
整するとよい。
iおよびLiのみから形成することもできるが、最下層
皮膜の上に形成される上層側皮膜との密着性を考慮する
と、有機樹脂バインダーを用いて、有機・無機複合皮膜
とすることが好ましい。有機・無機複合皮膜とすること
により、均一な皮膜が形成されるので、耐食性向上に有
効であるのみならず、Li成分による皮膜の耐水性低下
を補う効果も発揮されるからである。
レタン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリエ
チレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリス
チレン等のスチレン系樹脂、ポリエステルあるいはこれ
らの共重合物や変成物等、塗料用として公知の樹脂であ
ればいずれも使用可能である。中でも、ウレタン系樹
脂、アクリル系樹脂、これらの変性樹脂等が、皮膜特性
の点から好ましく用いられる。本発明では、Si系無機
化合物とLi系無機化合物の混合処理液とすることを考
慮すれば、有機樹脂はエマルジョンタイプのものを用い
ることが好ましい。また、これらの樹脂に組み合わせて
処理することが知られている公知の架橋剤を添加しても
よい。樹脂中のポリマー鎖同士を架橋することにより緻
密な皮膜が形成されるので、耐食性や皮膜硬度の向上を
図ることができるからである。
る比率量として8重量%以上が好ましく、より好ましく
は10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上であ
る。またその上限は33重量%以下が好ましく、より好
ましくは30重量%以下、特に好ましくは25重量%以
下である。有機樹脂の含有量が8重量%未満の場合に
は、有機樹脂添加による造膜性や皮膜特性の改善効果が
不充分となる。一方、有機樹脂の含有量が33重量%を
上回る場合には、無機成分が減少することとなり、所望
の皮膜耐食性が得られない。
あるときは、さらにシランカップリング剤を加えること
が好ましい。シランカップリング剤を介して有機樹脂
と、Si系無機化合物およびLi系無機化合物が結合
し、緻密な耐食性に優れた皮膜が形成されるからであ
る。またシランカップリング剤は金属板あるいはめっき
層に対する結合作用も有し、密着性の向上効果も発揮す
る。
は、特に限定されず、表面被覆金属板に汎用されるもの
であればいずれも使用できる。ただし、シランカップリ
ング剤は加水分解によりシラノール基を生成する際に、
アルコールが生成して、造膜性に悪影響を及ぼすことが
あるので、アルコキシ基部分がメトキシ基やエトキシ基
であるシランカップリング剤を選択することが好まし
い。この様なシランカップリング剤を使用すれば、加水
分解後にメタノール・エタノール等の低沸点アルコール
が生成して、アルコールが速やかに揮散するからであ
る。また、水溶液中での分散性や相溶性等を考慮すれ
ば、エポキシ基やアミノ基を有するシランカップリング
剤を用いることが好ましい。好ましいシランカップリン
グ剤の具体例として、γ−グリシドキシプロピルトリメ
トキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメト
キシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)
エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエ
トキシシランなどが挙げられる。
率は、0.8〜17.0重量%が好ましい。0.8重量
%未満では、有機・無機複合皮膜の複合化(結合化)効
果が発揮されにくい。一方、17.0重量%を超える
と、Si系無機化合物とシランカップリング剤が急速に
加水分解反応し、処理液の安定性が低下するため、処理
液の塗装作業が困難になるからである。なお、本発明で
は、シランカップリング剤に由来するSiも皮膜中のS
i量としてカウントするものとする。従って、シランカ
ップリング剤が多すぎると、本発明で特定するSi/L
iの範囲に調整するために、Si系無機化合物の量を減
少しなければならず、耐食性が低下するため好ましくな
い。
い。本発明では皮膜の厚みよりも、自己修復作用を有す
るSiがどれだけ皮膜に含まれているかが重要である。
この観点からすれば、最下層皮膜付着量の下限は、好ま
しくはSi換算で0.02g/m2以上、より好ましく
は0.05g/m2以上である。また上限は好ましくは
0.6g/m2以下、より好ましくは0.3g/m2以下
である。Si付着量が少ないと所望の耐食性が得られ
ず、皮膜としても薄すぎて塗装性が劣化する。一方、S
i付着量が多くなると、造膜性の悪化に伴い耐食性が低
下する他、塗装性も低下するため好ましくない。
皮膜について説明する。前述した様に本発明表面被覆金
属板の皮膜は複数層より構成されているが、上層側皮膜
には有機樹脂を主成分とする皮膜(以下樹脂コーティン
グと省略する)を施すことが推奨される。樹脂コーティ
ングは、特に、耐食性を向上させる効果があるので有用
である。このような効果を有効に発揮させるためには、
樹脂コーティングの付着量を、0.2〜2.5g/m2
とすることが好ましい。付着量が少ないと、上記効果が
十分得られず、また付着量が多すぎると塗装性が低下す
る。
前記バインダー用有機樹脂として例示したものがいずれ
も使用できる。また、最下層皮膜に使用した樹脂と、樹
脂コーティングに使用する樹脂は同種でも異種でも構わ
ない。
有機樹脂を含有する場合、上層側皮膜は実質的にLiを
含まないため、Liの有無により最下層皮膜と上層側皮
膜を識別することができる。上層側皮膜にはLiを含有
しないため、理論上は最下層皮膜と上層側皮膜の識別が
容易にできるはずであるが、最下層皮膜中に含まれるL
iが上層側皮膜塗布中に溶出し、微量のLiが析出して
くる可能性がある。このような場合に上層側皮膜から微
量のLiが検出された金属板も、本発明の範囲内に包含
される。
のためにコロイダルシリカを好ましくは1重量%以上を
加えることが推奨される。尚、その上限はSiO2換算
で、樹脂コーティング層中に好ましくは15重量%以
下、より好ましくは5重量%以下含ませるとよい。15
重量%よりも多いと最下層皮膜中のLiが溶出し、耐食
性の劣化を招き易い。これは、SiO2の添加により上
層側皮膜中に微小な塗膜欠陥が生じるためであると推定
される。尚、皮膜の中間層又は最表層の皮膜には固体潤
滑剤、架橋剤等を含有してもよい。例えば、固体潤滑剤
を表面被覆金属板の最表面に使用すると、皮膜の潤滑性
を改善して、疵付きを防止することが可能である。
ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸
化ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、パラフ
ィンワックス、モンタン酸ワックス、ライスワックス、
テフロンワックス(四フッ化エチレンワックス)、二硫
化モリブデン、二硫化炭素、グラファイト等が例示さ
れ、これらの固体潤滑剤の中から1種又は2種以上を任
意に選択すればよい。処理液中での分散状態や潤滑性能
を考慮すると、ワックスタイプの潤滑剤、特にポリエチ
レンワックス、酸化ポリエチレンワックスを用いて、水
分散型ワックスの状態で処理液に添加することが推奨さ
れる。
20重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上で
ある。また好ましくは2.8重量%以下、より好ましく
は1.5重量%以下とする。0.20重量%未満では、
耐疵付き性の改善効果が有効に発揮されない。一方、
2.8重量%を超えると、造膜性が低下して、結果とし
て皮膜の耐食性が低下する傾向がある。
1.0μmであることが好ましい。固体潤滑剤の粒径が
0.1μm未満では皮膜中に潤滑剤が埋もれてしまい所
望の性能が得られないことがある。一方1.0μmを超
える粒径のものは、処理液中における均一分散性や液安
定性が悪くなるので、塗布作業性が低下する傾向があ
る。
造する方法について説明する。本発明の製造方法は、S
i系無機化合物およびLi系無機化合物をSi/Li
(モル比)が5以上36未満となるように含有する処理
溶液を、金属板またはめっき金属板に塗布し、次いで乾
燥して最下層皮膜を形成するところに特徴がある。尚、
本発明法ではクロメート皮膜の形成工程を包含していな
い「クロメート処理を行わない」という本発明の目的に
合致させるべく、本発明法ではSi/Liが所定範囲に
制御された処理溶液を金属板またはめっき金属板に塗布
した後、200℃以下で乾燥を行うことが好ましい。本
発明者らの検討結果によれば、乾燥温度が200℃を超
えると、完全に結晶化したSiが増え、移動可能な非結
晶質のSiは減少し、皮膜の自己修復作用が有効に発現
されなくなることが分かった。
℃以下とすることがさらに好ましい。なお処理液の塗布
方法は限定されるものではなく、ロールコーター法、ナ
イフコーター法、スプレー法等の公知の塗布方法の中か
ら任意に選択すればよい。
が、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発
明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて
本発明の範囲内に含まれる。
は以下の通りである。
S Z2371に規定された塩水噴霧試験を実施し、2
40時間後の白錆の発生率で耐食性を評価した。評価基
準を以下に示す。 ◎:白錆なし ○:白錆発生面積10%未満 △:白錆発生面積10%以上30%未満 ×:白錆発生面積30%以上
ターナイフでクロスカットを入れ、平板と同様にして塩
水噴霧試験を実施し、96時間後のクロスカット部から
の白錆侵食幅を観察した。評価基準を以下に示す。 ◎:クロスカット部からの侵食幅が5mm以内 ○:クロスカット部からの侵食幅が5mm超15mm以内 △:クロスカット部からの侵食幅が15mm超30mm以
内 ×:クロスカット部からの侵食幅が30mm超
10mm)で表面性試験装置(HEIDON社製)にセッ
トし、1kgの荷重をかけた状態で2枚の試供材を相互
に揺動させて、疵付き性を評価した。評価基準を以下に
示す。 ◎:擦り疵が発生しない ○:わずかに擦り疵が発生した △:かなり擦り疵が発生した ×:全面に目立つ疵が発生した
膜密着性を1mm桝目の碁盤目テストで評価した。メラ
ミン塗装は、試供材に膜厚20±1μmとなるようにス
プレー塗装した後、160℃で20分間焼き付けて塗装
性を評価した。評価基準を以下に示す。 ◎:剥がれ無し ○:塗膜残存率90〜100% △:塗膜残存率80%以上90%未満 ×:塗膜残存率80%未満
て検討した。表1に示す様に最下層皮膜処理液中のSi
/Li比を種々変化させた表面被覆鋼板を製造した。な
お金属板は、クロメート皮膜を施していない電気Znめ
っき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)
を用いた。
層皮膜処理液(組成は後述)を、塗布乾燥後のSi重量
で0.1g/m2となるように絞りロールで塗布し、板
温120℃で乾燥させた。該最下層皮膜の上に樹脂コー
ティング膜(組成後述)を乾燥後の付着量として1.0
g/m2となるように形成して(塗布・乾燥条件は同
上)2層タイプの供試材を作成した。なお、表1のN
o.11は電気Znめっき鋼板(Zn付着量20g/m
2、板厚0.8mm)にクロメート皮膜(Cr付着量2
0mg/m2)を施し、更に上記と同一組成の樹脂コー
ティング膜を施した例であり、No.12は、電気Zn
めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8m
m)に、上記と同一組成の樹脂コーティング膜のみを施
した例である。
たSi/Li比になるように調整(Siには、リチウム
シリケートおよびシランカップリング剤由来のものも含
まれる。) ・有機樹脂:水分散型ウレタン樹脂:25重量%(処理
液中の固形分総量に対する重量比率である。以下同じ) ・シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルト
リメトキシシラン:10重量% <上層側> 〔樹脂コーティング膜組成〕 ・コロイダルシリカ:SiO2として10重量%(樹脂
コーティング膜形成用組成物の固形分総量に対する重量
比率である。以下同じ) ・有機樹脂:水分散型ポリエチレン樹脂:1g/m2
足する本発明例No.1〜5は、耐食性に優れていた。
特に、Si/Li比が10〜25の本発明例No.2〜
4は、クロメート皮膜を施したNo.11よりも耐食性
が極めて優れていた。一方、Si/Li比が小さ過ぎる
No.6、7;Si/Li比が大き過ぎるNo.8、
9、10;最下層皮膜を施さず樹脂コーティング膜のみ
を施したNo.12は、いずれも耐食性が悪かった。
下層皮膜液の組成は、Si/Li比を15(モル比)と
一定にし、水分散型ウレタン樹脂の量を表2に示すよう
に変化させたこと以外は実施例1と同様にして、供試材
を作成した。得られた結果を表2に併記する。
の好ましい範囲を満足する本発明例No.13〜17
は、耐食性に優れていた。このうち有機樹脂添加量が1
5〜25重量%の範囲内にあるNo.14〜16は特に
優れた耐食性を示した。一方、有機樹脂量が本発明の好
ましい範囲を外れるNo.18〜20は耐食性が劣って
いた。
した。Si/Li比を15と一定にし、シランカップリ
ング剤の種類と添加量を表3に示すように変更した以外
は、実施例1と同様にして供試材を作成した。得られた
結果を表3に併記する。
発明の好ましい範囲を満足する本発明例No.21〜2
8はいずれのシランカップリング剤を用いても良好な耐
食性を示すことがわかった。また、シランカップリング
剤の添加量が少ないNo.29は耐食性に劣り、一方、
添加量が多すぎるNo.30〜32は耐食性に劣ってお
り、添加量が増加するに従って耐食性が低下する傾向を
示した。
と一定にし、Si付着量を表4に示すように変えた以外
は実施例1と同様にして供試材を作成し、特性を評価し
た。得られた評価結果を表4に併記する。
本発明の好ましい範囲を満足する本発明例No.33〜
37は、耐食性に優れているが、Si付着量が少ないN
o.38及びSi付着量が多いNo.39〜41は耐食
性が劣っていた。
とし、乾燥温度を表5に示すように変更した以外は実施
例1と同様にして供試材を作成した。評価結果を表5に
併記する。
満足する本発明例No.42〜46は優れた耐食性を示
した。このうち乾燥温度が100〜180℃の範囲にあ
るNo.43〜45は特に優れた耐食性を示した。これ
に対し乾燥温度が200℃を超える参考例No.47、
48は、耐食性が劣化する傾向にあることがわかった。
について検討した。Si/Li比を15とし、上層側皮
膜の樹脂の種類と付着量を表6に示すように変更した以
外は実施例1と同様にして試供材を作成し、特性を評価
した。評価結果を表6に併記する。
g/m2と本発明の好ましい範囲を満足する本発明例N
o.49〜56はいずれの樹脂を使用しても優れた耐食
性を示した。これに対し樹脂付着量が0.15g/m2と
少ないNo.57は耐食性、塗装性共に劣っていた。ま
た、付着量が多いNo.58は塗装性が劣っていた。
ダルシリカの添加量(重量%)について検討した。Si
/Li比を15とし、コロイダルシリカの添加量を表5
に示すように変更した以外は実施例1と同様にして供試
材を作成し、特性を評価した。評価結果を表7に併記す
る。
発明の好ましい範囲を満足する本発明例No.59〜6
4は耐食性に優れていた。一方、コロイダルシリカの添
加量が多いNo.65〜67は耐食性に劣っていた。
体潤滑剤含有量と種類について検討した。Si/Li比
を15とし、表8に示す様に種類と含有量の異なる固体
潤滑剤を上層側皮膜に添加した以外は実施例1と同様に
して試供材を作成し、特性を評価した。評価結果を表8
に併記する。
本発明の好ましい範囲を満足する本発明例No.68〜
77は、固体潤滑剤の種類にかかわらず耐食性、疵付性
共に優れた特性を示すことがわかった。特に固体潤滑剤
の含有量が0.25〜1.5%にある本発明例No.6
9〜72及びNo.75〜77は耐食性、耐疵付き性と
もに極めて優れた特性を示した。しかし固体潤滑剤の含
有量が少ないNo.78は良好な耐食性を示すものの、
疵付性が悪かった。また固体潤滑剤が多いNo.79、
80は耐食性、疵付性共に劣る傾向を示した。
中のSi/Liモル比について検討した。表9に示すよ
うにSi/Li比の異なる最下層皮膜を施した後、下記
成分からなる中間皮膜層を施し、更に実施例1と同じ上
層皮膜を施した以外は、実施例1と同様にして試供材を
作成し、特性を評価した。評価結果を表9に併記する。 <中間層> 〔皮膜液組成〕 ・処理液 有機樹脂:水分散型ポリエチレン樹脂 ・コロイダルシリカ:SiO2 10重量% ・乾燥後の付着量:0.5g/m2
満と本発明の範囲を満足する3層タイプからなる本発明
例No.81〜85は、皮膜層が2層タイプのNo.1
〜5と同様、耐食性に優れていた。特にSi/Li比が
10〜25のNo.82〜84は、耐食性が極めて優れ
ていた。一方、Si/Li比が少な過ぎるNo.86、
87;Si/Li比が大きすぎるNo.88〜90は耐
食性が劣っていた。
されており、自己修復作用を有する無機複合皮膜が形成
されているので、クロメート皮膜を行わなくても良好な
耐食性を示すことが明らかになった。本発明によれば、
クロメート処理が不要になるため、環境保護の点で極め
て有用である。
7)
覆金属板は、金属板またはめっき金属板に複数層の皮膜
が形成されている表面被覆金属板であって、前記皮膜の
内、最下層皮膜は、水分散型シリカを含むSi系及び/
Li系無機化合物をSi/Li(モル比)が5以上36
未満となるように含有していると共に、実質的にCrを
含有していないところに要旨を有する。
Claims (11)
- 【請求項1】 金属板またはめっき金属板に複数層の皮
膜が形成されている表面被覆金属板であって、前記皮膜
の内、最下層皮膜は、Si及びLi系無機化合物をSi
/Li(モル比換算)が5以上36未満となるように含
有していると共に、実質的にCrを含有していないこと
を特徴とする表面被覆金属板。 - 【請求項2】 上記最下層皮膜が、更に有機樹脂を含む
ものである請求項1に記載の表面被覆金属板。 - 【請求項3】 上記有機樹脂の含有量が、8〜33重量
%である請求項2に記載の表面被覆金属板。 - 【請求項4】 上記最下層皮膜が、更に、シランカップ
リング剤を含むものである請求項1〜3のいずれかに記
載の表面被覆金属板。 - 【請求項5】 上記シランカップリング剤の含有量が、
0.8〜17重量%である請求項4に記載の表面処理金
属板。 - 【請求項6】 上記最下層皮膜の付着量が、Si換算で
0.02〜0.6g/m2である請求項1〜5のいずれ
かに記載の表面被覆金属板。 - 【請求項7】 上記複数層皮膜の内、上層側の皮膜が、
有機樹脂を主成分とするものである請求項1〜6のいず
れかに記載の表面被覆金属板。 - 【請求項8】 上記上層側の皮膜中に含まれる有機樹脂
の付着量が0.2〜2.5g/m2である請求項7に記
載の表面被覆金属板。 - 【請求項9】 上記上層側皮膜中にシリカがSiO2と
して15重量%以下含まれている請求項7または8に記
載の表面被覆金属板。 - 【請求項10】 請求項1〜9のいずれかに記載の表面
被覆金属板の製造方法であって、金属板またはめっき金
属板に、クロメート処理を施すことなく、Si系及びL
i系無機化合物をSi/Li(モル比)が5以上36未
満となるように含有する処理溶液を塗布し、次いで乾燥
して最下層皮膜を形成する工程を含むことを特徴とする
表面被覆金属板の製造方法。 - 【請求項11】 Si系無機化合物としてコロイダルシ
リカ、Li系無機化合物としてリチウムシリケートを用
い、200℃以下で乾燥を行うものである請求項10に
記載の表面被覆金属板の製造方法。
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JP11202055A Expired - Lifetime JP3069094B1 (ja) | 1999-07-15 | 1999-07-15 | 表面被覆金属板およびその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2009072648A1 (ja) | 2007-12-07 | 2009-06-11 | Dipsol Chemicals Co., Ltd. | 亜鉛又は亜鉛合金めっきに耐食性皮膜を形成させるための表面処理水溶液及び処理方法 |
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CN103909696A (zh) * | 2012-12-28 | 2014-07-09 | 福田金属箔粉工业株式会社 | 表面处理铜箔及使用了该表面处理铜箔的印刷布线板 |
CN107000381A (zh) * | 2014-12-18 | 2017-08-01 | 株式会社神户制钢所 | 水系两层涂覆处理金属板 |
-
1999
- 1999-07-15 JP JP11202055A patent/JP3069094B1/ja not_active Expired - Lifetime
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