JP2001022406A - 車両用能動型振動制御装置 - Google Patents

車両用能動型振動制御装置

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JP2001022406A
JP2001022406A JP11189523A JP18952399A JP2001022406A JP 2001022406 A JP2001022406 A JP 2001022406A JP 11189523 A JP11189523 A JP 11189523A JP 18952399 A JP18952399 A JP 18952399A JP 2001022406 A JP2001022406 A JP 2001022406A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】振動低減効果をさらに向上させたい。 【解決手段】ステップ107で残留振動信号eを読み込
んだら、テップ108に移行し、残留振動信号eを、ハ
イパス・フィルタ処理する。かかるハイパス・フィルタ
処理のカットオフ周波数は、例えば5Hzに設定する。そ
して、ステップ109に移行してカウンタjが零クリア
し、ステップ110に移行し、ステップ108でハイパ
ス・フィルタ処理された残留振動信号eを用いて、適応
ディジタルフィルタのフィルタ係数の更新演算を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エンジンから車
体に伝達される振動を、エンジン及び車体間に介在した
能動型エンジンマウントが発生する制御振動によって低
減するようになっている車両用能動型振動制御装置に関
し、特に、振動低減制御のさらなる精度向上を図ったも
のである。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の技術としては、例えば特
開平4−302729号公報に開示されたものがある。
即ち、上記公報には、能動的な支持力を発生可能な液体
封入式の能動型エンジンマウントが開示されており、か
かる能動型エンジンマウントにあっては、エンジンシェ
イクのような比較的低周波の振動に対しては、受動的な
液体封入式のエンジンマウントと同様に、二つの液体室
間を往来する液体の共振を利用して振動体から支持体に
伝達される振動を減衰する一方、アイドル振動以上の比
較的高周波の振動に対しては、液体室の隔壁の一部を形
成する可動部材を能動的に変位させ、液体室の圧力変化
を支持弾性体の拡張ばねに作用させて積極的に支持力を
発生させ振動を打ち消すようにしていた。
【0003】そして、上記公報に開示された装置にあっ
ては、車体側に伝達される残留振動を検出し、その残留
振動を評価関数としてLMSアルゴリズム等の適応アル
ゴリズムを実行することにより、能動型エンジンマウン
トを駆動するための駆動信号を生成するようになってい
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上記のような
能動型エンジンマウントであれば、その能動型エンジン
マウントを通じてパワーユニットから車体に伝達される
振動を、能動的な支持力によってある程度相殺して、車
体側の振動低減に寄与することができる。一方、本発明
者等が鋭意研究したところ、本発明のような装置にあっ
ては、エンジンで発生する振動の基本周波数に対し“整
数分の1”成分の残留振動が大きい場合に、振動低減制
御が低下することが確認された。
【0005】かかる現象が発生する状況としては、例え
ばアイドル時のエンジン回転2次の振動の周波数(20
〜25Hz)に対しエンジン回転0.5次に相当する周波数
(5〜6Hz)の振動が大きい場合や、通常走行時に40
Hz以上の振動を対象とした低減制御の実行中にエンジン
シェイク(10〜15Hz)が大きい場合等がある。つま
り、基本制御周波数より低い外乱定常振動が発生してい
る状況で、その基本制御周波数が、外乱定常振動の周波
数の整数倍に近づくと(逆に言えば、外乱定常振動の周
波数が、基本制御周波数の整数分の1に近づくと)、振
動低減制御の効果が低減してしまうのである。
【0006】本発明は、このような解決すべき課題に着
目してなされたものであって、上記のような振動低減制
御の効果が低減してしまう状況を回避することができる
車両用能動型振動制御装置を提供することを目的として
いる。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、エンジン及び車体間に介在
し且つ前記エンジンで発生した振動と干渉する制御振動
を発生可能な能動型エンジンマウントと、前記干渉後の
振動を検出し残留振動信号として出力する残留振動検出
手段と、前記残留振動信号に基づいて前記車体の振動が
低減するように前記能動型エンジンマウントを駆動制御
する制御手段と、を備えた車両用能動型振動制御装置に
おいて、前記残留振動信号をハイパス・フィルタ処理す
るハイパス・フィルタを設け、前記制御手段は、前記ハ
イパス・フィルタ処理された前記残留振動信号に基づい
て前記駆動制御を行うようにした。
【0008】請求項2に係る発明は、上記請求項1に係
る発明である車両用能動型振動制御装置において、前記
制御手段は、前記振動の発生状態を検出し基準信号とし
て出力する基準信号生成手段と、フィルタ係数可変の適
応ディジタルフィルタと、前記基準信号及び前記残留振
動信号に基づき且つ適応アルゴリズムに従って前記適応
ディジタルフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ
係数更新手段と、前記基準信号及び前記適応ディジタル
フィルタに基づき前記能動型エンジンマウントを駆動す
る駆動信号を生成し出力する駆動信号生成手段と、を備
え、前記フィルタ係数更新手段は、前記基準信号及び前
記ハイパス・フィルタ処理された前記残留振動信号に基
づき前記フィルタ係数を更新するようにした。
【0009】また、請求項3に係る発明は、上記請求項
1又は2に係る発明である車両用能動型振動制御装置に
おいて、前記ハイパス・フィルタのカットオフ周波数
を、5〜6Hzとした。これに対し、請求項4に係る発明
は、上記請求項1又は2に係る発明である車両用能動型
振動制御装置において、前記ハイパス・フィルタのカッ
トオフ周波数を、10〜15Hzとした。
【0010】そして、請求項5に係る発明は、上記請求
項1又は2に係る発明である車両用能動型振動制御装置
において、前記ハイパス・フィルタのカットオフ周波数
を、前記エンジンで発生した振動の周波数に応じて可変
とした。さらに、請求項6に係る発明は、上記請求項5
に係る発明である車両用能動型振動制御装置において、
前記ハイパス・フィルタのカットオフ周波数を、前記エ
ンジンで発生した振動の周波数の1/a(aは2以上の
任意の整数)となるように変化させるようにした。
【0011】ここで、本発明にあっては、ハイパス・フ
ィルタを設けており、残留振動信号はそのハイパス・フ
ィルタでフィルタ処理されてから制御手段における制御
に用いられるから、そのフィルタ処理前の残留振動信号
に種々の低周波成分が含まれていても、ハイパス・フィ
ルタのカットオフ周波数以下の周波数成分は制御手段の
制御には用いられない。
【0012】このため、カットオフ周波数をシミュレー
ション等に基づいて適宜選定してさえいれば、制御対象
周波数に対して所定の関係にある外乱定常振動の周波数
成分が、制御手段における制御に与える影響を低減でき
る。特に、制御手段が、請求項2に係る発明のような構
成の場合には、適応ディジタルフィルタのフィルタ係数
が、上記のような外乱定常振動の周波数成分の影響を受
けて好ましくない形に成長することが防止されるから、
その適応ディジタルフィルタと基準信号とに基づいて生
成される駆動信号の波形も、制御対象振動を低減するの
に適した形になる。
【0013】そして、通常の車両のアイドル時のエンジ
ン回転数が600〜750rpm 程度であり、エンジン振
動が問題となる可能性の高い通常の4気筒エンジンにお
いて、アイドル時のエンジンの燃焼タイミング(エンジ
ン回転2次)に同期して発生する振動の周波数は、20
〜24Hzであるが、かかる20〜24Hzの振動を制御対
象としている場合、制御の効果に最も影響を与える外乱
定常振動の周波数は、その1/4近傍の周波数、つまり
5〜6Hzである。よって、請求項3に係る発明のよう
に、ハイパス・フィルタのカットオフ周波数を設定すれ
ば、アイドル時における振動制御の効果が低下すること
を抑制できる。
【0014】一方、通常の車両におけるエンジンシェイ
クの周波数は、凡そ10〜15Hz近傍にある。このた
め、車両が加減速を行わずに区比較的静かに走行してい
る通常走行時のエンジン回転数は、一般的に1200〜
1800rpm であるが、エンジン振動が問題となる可能
性の高い通常の4気筒エンジンにおいて、そのような通
常走行時のエンジンの燃焼タイミング(エンジン回転2
次)に同期して発生する振動の周波数は、40〜60Hz
である。
【0015】すると、かかる振動の周波数は、エンジン
シェイクの周波数10〜15Hzの約四倍ということにな
るから、通常走行時にエンジンシェイクが過大であると
制御効果が低下する可能性があるのであるが、請求項4
に係る発明のように、ハイパス・フィルタのカットオフ
周波数を設定すれば、エンジンシェイク成分が残留振動
信号から除去されるから、通常走行時における振動制御
の効果が低下することを抑制できる。
【0016】そして、請求項5に係る発明のように、ハ
イパス・フィルタのカットオフ周波数を可変とすれば、
制御に取り込みたくない周波数成分が、エンジンで発生
する振動の周波数に応じて変化しても、そのような周波
数成分を、残留振動信号から除去することが可能とな
る。特に、請求項6に係る発明のように、ハイパス・フ
ィルタのカットオフ周波数を、エンジンで発生する振動
の周波数の1/a(例えば、a=4)とすれば、アイド
ル時や通常走行時に制御効果の低下を招く恐れのある外
乱定常振動の周波数成分を、的確に残留振動信号から除
去することができるようになる。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、残留振動信号をハイパ
ス・フィルタ処理してから振動低減制御に用いるように
したため、外乱定常振動に起因して振動低減効果が低下
する可能性を低減できるという効果がある。特に、請求
項3に係る発明であれば、アイドル時に有効であるし、
請求項4に係る発明であれば、通常走行時に有効であ
る。
【0018】さらに、請求項5、6に係る発明であれ
ば、外乱定常振動の周波数が変化しても対処できるとい
う効果もある。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1乃至図5は本発明の第1の実
施の形態を示す図であって、図1は本発明に係る車両用
能動型振動制御装置を適用した車両の概略側面図であ
る。先ず、構成を説明すると、横置きに搭載したエンジ
ン17が、車体前後方向の後方に配置した能動型エンジ
ンマウント20を介して、サスペンションメンバ等から
構成される車体18に支持されている。なお、実際に
は、エンジン17及び車体18間には、能動型エンジン
マウント20の他にエンジン17及び車体18間の相対
変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジン
マウントも介在している。受動的なエンジンマウントと
しては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常の
エンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生
可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウント
インシュレータ等が適用できる。
【0020】図2は、エンジン17に固定したブラケッ
ト(図示せず)を介して連結する能動型エンジンマウン
ト20の上部構造を平面視で示すものであり、エンジン
側連結部材30から上方に向けて突出している2本の連
結ボルト30aを、上述したブラケットの挿通孔に下側
から挿通し、ナットを螺合することによりエンジン17
に上端部が固定される。また、符号60はリバウンド規
制部材であり、このリバウンド規制部材60は、2本の
連結ボルト30a間を結ぶ線に対して直交し、エンジン
側連結部材30の上方をアーチ状に延在しながら装置ケ
ース43に固定されており、エンジン側連結部材30の
上面に固定したゴム製の弾性体からなるリバウンドスト
ッパ31の上方に位置している。
【0021】図3は、図2の矢視断面図で示す能動型エ
ンジンマウント20の内部構造を示すものであり、図2
の2本の連結ボルト30a間を結ぶ線に沿うA−A矢視
断面を、図3の軸心(以下、マウント軸と称する)P1
を境界として右側に示し、図2の2本の連結ボルト30
a間を結ぶ線に対して直交する方向のB−B矢視断面
を、図3のマウント軸P1 を境界として右側に示してい
る。
【0022】この能動型エンジンマウント20は、装置
ケース43に外筒34、中間筒36、オリフィス構成部
材37、支持弾性体32等のマウント部品を内蔵し、こ
れらマウント部品の下部に、流体室84の隔壁の一部を
形成しながら弾性支持された可動部材78を流体室84
の容積が変化する方向に変位させる電磁アクチュエータ
52と、図示しない車体メンバの振動状況を検出する荷
重センサ64とを内蔵した装置であり、より具体的に説
明していくと、前述したエンジン側連結部材30は、下
端周縁部30gが丸みを付けて形成されていると共に、
マウント軸P1に沿う位置に第1孔30cが形成されて
いる。また、このエンジン連結部材30に下側から嵌入
されて上方を向いている連結ボルト30aは、その頭部
30dがエンジン側連結部材30の下面から突出してい
る。ここで、その頭部30dの外周縁部は、丸みが付け
られて形成されている。
【0023】また、エンジン側連結部材30の下面に
は、断面逆台形状の中空筒体30bが固定されている。
この中空筒体30bには、連結ボルト30aに近接する
位置に第2孔30eが形成されていると共に、マウント
軸P1 に沿う下面に第3孔30fが形成されている。な
お、この中空筒体30bの連結ボルト30aから離間し
ている位置には、孔を形成していない。
【0024】そして、前記エンジン側連結部材30の下
面側には、中空筒体30bの内部及びエンジン側連結部
材30の下部側を覆うように、ゴム製の支持弾性体32
が加硫接着により固定されている。すなわち、この支持
弾性体32は、エンジン側連結部材30側から下方に向
けて拡径した形状のゴム製の弾性体であって、内面に断
面山形状の空洞部32aを形成しているが、連結ボルト
30aから離れている部分の支持弾性体32の外周面
は、図3の左側に示すように、エンジン側連結部材30
の外周部を覆いながらリバウンドストッパ31に連続し
ている。一方、連結ボルト30aに近接している支持弾
性体32は、図3の右側に示すように、連結ボルト30
aの頭部30dの全域を覆う被覆部32bが形成されて
いると共に、頭部30dの下方位置の外周を、内側に大
きく凹んだ形状としている(以下、符号32cで示す凹
み外周部と称する)。そして、前述した空洞部32aを
形成しながら前記凹み外周部32cに対向している支持
弾性体32の内面も、内側に大きく膨らんだ形状として
いる(以下、符号32dで示す膨らみ内周部と称す
る)。そして、連結ボルト30aに近接している部分の
支持弾性体32の肉厚は、凹み外周部32cに対向して
膨らみ内周部32dを設けたことにより、連結ボルト3
0aから離れている部分の肉厚と略同一に設定してい
る。
【0025】そして、薄肉形状とした支持弾性体32の
下端部は、マウント軸P1 が中空筒体30bと同軸に振
動体支持方向を向く中間筒体36の内周面に加硫接着に
より結合している。中間筒体36は、同一外周径とした
上端筒部36a及び下端筒部36bの間に小径筒部36
cを連続して形成した部材であり、外周に環状凹部を設
けている。また、図示しないが、小径筒部36cには開
口部が形成されており、この開口部を介して中間筒体3
6の内側及び外側が連通している。
【0026】中間筒体36の外側には外筒34が嵌合し
ており、この外筒34は内周径を中間筒体36の上端筒
部36a及び下端筒部36bの外周径と同一寸法とし、
軸方向の長さを中間筒体36と同一寸法に設定した円筒
部材である。また、この外筒34には開口部34aが形
成されており、この開口部34aの開口縁部にゴム製の
薄膜弾性体からなるダイアフラム42の外周が結合して
開口部34aを閉塞しつつ、外筒34の内側に向けて膨
出している。
【0027】そして、上記構成の外筒34を、環状凹部
を囲むように中間筒体36に外嵌すると、外筒34及び
中間筒体36間の周方向に環状空間が画成され、その環
状空間にダイアフラム42が膨出した状態で配設され
る。そして、中間筒体36の内側に、筒状のオリフィス
構成部材37が嵌合している。このオリフィス構成部材
37は、中間筒体36の小径筒部36cより小径に形成
した最小径筒部37aを備え、その最小径筒部37aの
上下端部に径方向外方に向けて上部環状部37b及び下
部環状部37cが形成されており、これら最小径筒部3
7a、上部及び下部環状部37b、37cで囲んだ位置
と中間筒体36との間に環状空間が設けられている。ま
た、最小径筒部37aの一部に第2開口部37dが形成
されている。ここで、上部環状部37bは、支持弾性体
32の下方に位置しているが、図2の右側に示すよう
に、連結ボルト30aに近接している支持弾性体32の
下方に位置している上部環状部37b1 は肉厚を薄く形
成して凹みを設けており、支持弾性体32の膨らみ内周
部32dから離れた位置で対向している。
【0028】また、装置ケース43は、その上端部に上
端筒部36aの外周径より小径の円形開口部を有する上
端かしめ部43aが形成されていると共に、この上端か
しめ部43aと連続するケース本体の形状を、内周径が
外筒34の外周径と同一寸法で下端開口部まで連続する
円筒形状(下端開口部を図2の破線で示した形状)とし
た部材であり、全てのマウント部品の組み込みが完了し
た後に下端開口部を径方向内方に向けてかしめていくこ
とにより、図2の実線で示すかしめ部が形成される。
【0029】そして、支持弾性体32、中間筒体36、
オリフィス構成部材37及びダイアフラム42を一体化
した外筒34を装置ケース43の下端開口部から内部に
嵌め込んでいき、上端かしめ部43aの下面に外筒34
及び中間筒体36の上端部を当接させると、それらが装
置ケース43内の上部に配設される。この際、装置ケー
ス43の内周面とダイヤフラム42とで囲まれた部分に
空気室42cが画成されるが、この空気室42cを臨む
位置に空気孔43aが形成されており、この空気孔43
aを介して空気室42cと大気が連通している。
【0030】装置ケース43内の下部には円筒状のスペ
ーサ70が嵌め込まれており、このスペーサ70内の上
部に可動部材78が配置されていると共に、スペーサ7
0内の下部に電磁アクチュエータ52が配置されてい
る。前記スペーサ70は、円筒状の上部筒体70aと、
円筒状の下部筒体70bと、これら筒体の上下端部間に
加硫接着したゴム製の薄膜弾性体からなる略円筒状のダ
イアフラム70cとで構成されている。
【0031】前記電磁アクチュエータ52は、外観円筒
形のヨーク52aと、ヨーク52aの上端面側に配設し
た円環状の励磁コイル52bと、ヨーク52aの上面中
央部に磁極を上下方向に向けて固定した永久磁石52c
とで構成されている。また、前記ヨーク52aは、円環
状の第1ヨーク部材53aと、中央円筒部に永久磁石5
2cを固定した第2ヨーク部材53bとで構成されてい
る。
【0032】そして、上部及び下部筒体70a、70b
間のダイアフラム70cは、ヨーク52aの外周に形成
した凹部52dに向かって膨出している。また、ヨーク
52aの下面と、車体側連結ボルト60を備えた蓋部材
62との間には、振動低減制御に必要な残留振動を検出
するために、荷重センサ64が介装されている。荷重セ
ンサ64としては、圧電素子,磁歪素子,歪ゲージ等が
適用可能であり、このセンサの検出結果は、図1に示す
ように、残留振動信号eとしてコントローラ25に供給
されるようになっている。
【0033】一方、前記電磁アクチュエータ52の上方
には、シール部材固定用のシールリング72と、後述す
る板ばね82の外周部を下側から自由端支持する支持リ
ング74と、電磁アクチュエータ52の永久磁石52c
及び可動部材78間のギャップHを設定するギャップ保
持リング76とが配置されている。これらシールリング
72、支持リング74及びギャップ保持リング76の外
周径は、前述したスペーサ70の上部筒体70aの内周
径と同一寸法に設定されており、ヨーク52aから上方
に突出している上部筒体70a内にシールリング72、
支持リング74及びギャップ保持リング76の全てが内
嵌されている。そして、これらシールリング72、支持
リング74及びギャップ保持リング76の内側には、上
下方向に変位可能となるように可動部材78が配置され
ている。
【0034】この可動部材78は、外観円盤状の隔壁形
成部材78Aと、この隔壁形成部材78Aより大径円盤
状に形成した磁路形成部材78Bとで構成した部材であ
って、電磁アクチュエータ52に対して遠い方に位置す
る隔壁形成部材78Aの軸心にボルト孔80aを形成
し、電磁アクチュエータ52に近い磁路形成部材78B
を貫通した可動部材用ボルト80がボルト孔80aに螺
合することにより、隔壁形成部材78A及び磁路形成部
材78Bを一体に連結した構造となっている。
【0035】隔壁形成部材78A及び磁路形成部材78
B間には、リング状に連続したくびれ部79が画成され
ているが、このくびれ部79に可動部材78を弾性支持
するための板ばね82が収容されている。つまり、板ば
ね82は、中央部に孔部を形成した円盤形状の部材であ
り、この板ばね82の内周部を隔壁形成部材78Aの裏
面中央部の下側から自由端支持し、板ばね82の外周部
を支持リング74のばね支持部74aが下側から自由端
支持しており、これにより可動部材78が装置ケース4
3に板ばね82を介して弾性支持されている。
【0036】前記隔壁形成部材78Aは、流体室84に
面している隔壁部80cの肉厚を薄くし、隔壁部80c
の外周から上方に突出する環状のリブ80bを形成した
部材である。そして、隔壁形成部材78Aの上面と、支
持弾性体32の下面と、オリフィス構成部材37の内周
面とで流体室84が形成され、この流体室84内に流体
が封入される。
【0037】また、流体室84から板ばね82を収容し
ているくびれ部79側への流体の漏洩を防止するため、
隔壁形成部材78Aの外周とシールリング72の内周と
の間には、ゴム状弾性体からなるリング形状のシール部
材86が固定されており、このシール部材86の弾性変
形によって、シールリング72や装置ケース43に対す
る可動部材78の上下方向への相対変位を許容してい
る。
【0038】次に、本実施形態の能動型エンジンマウン
ト20の振動入力減衰作用について簡潔に説明する。本
実施形態の能動型エンジンマウント20は、支持弾性体
32の空洞部32aとオリフィス構成部材37の軸中央
空間とが連通し、オリフィス構成部材37の軸中央空間
及びオリフィス構成部材37と中間筒体36との間の環
状空間が、第2開口部37dを介して連通し、前記環状
空間及びダイアフラム42が膨出している空間が、中間
筒体36に形成した開口部を介して連通しており、これ
ら支持弾性体32の空洞部32aからダイアフラム42
が膨出している空間までの連通路内に、エチレングリコ
ール等の流体が封入されている。
【0039】そして、支持弾性体32の空洞部32aか
らオリフィス構成部材37と中間筒体36との間の環状
空間までの連通路を主流体室84とすると、中間筒体3
6に形成した開口部の近傍をオリフィスとし、この開口
部に対向しながらダイアフラム42に囲まれている領域
を副流体室とした流体共振系が形成されている。この流
体共振系の特性、即ち、オリフィス内の流体の質量と、
支持弾性体32の拡張方向ばね、ダイアフラム42の拡
張方向ばねで決まる特性は、車両停止中のアイドル振動
の発生時、つまり20〜30Hzでエンジンマウント20
A、20Bが加振された場合に高動ばね定数、高減衰力
を示すように調整されている。
【0040】一方、電磁アクチュエータ52の励磁コイ
ル52bは、コントローラ25から例えばハーネスを通
じて供給される電流である駆動信号yに応じて所定の電
磁力を発生するようになっている。コントローラ25
は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回
路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ、ROM,R
AM等の記憶媒体等を含んで構成され、エンジン17で
発生する振動を低減できる能動的な支持力が能動型エン
ジンマウント20に発生するように、能動型エンジンマ
ウント20に対する駆動信号yを生成し出力するように
なっている。
【0041】また、前述したように能動型エンジンマウ
ント20には荷重センサ64が内蔵されており、車体1
8の振動状況を荷重の形で検出して残留振動信号eとし
て出力し、その残留振動信号eが干渉後における振動を
表す信号として例えばハーネスを通じてコントローラ2
5に供給されている。ここで、エンジン17で発生する
アイドル振動やこもり音振動は、例えばレシプロ4気筒
エンジンの場合、エンジン回転2次成分のエンジン振動
が車体18に伝達されることが主な原因であるから、そ
のエンジン回転2次成分に同期して駆動信号yを生成し
出力すれば、車体側振動の低減が可能となる。そこで、
本実施の形態では、エンジン17のクランク軸の回転に
同期した(例えば、レシプロ4気筒エンジンの場合に
は、クランク軸が180度回転する度に一つの)インパ
ルス信号を生成し基準信号xとして出力するパルス信号
生成器19を設けていて、その基準信号xが、コントロ
ーラ25に供給されている。
【0042】そして、コントローラ25は、供給される
残留振動信号e及び基準信号xに基づき、適応アルゴリ
ズムの一つである同期式Filtered−X LMS
アルゴリズム(以下、SFXアルゴリズムと称す。)を
実行することにより、能動型エンジンマウント20に対
する駆動信号yを演算し、その駆動信号yを能動型エン
ジンマウント20に出力するようになっている。
【0043】具体的には、コントローラ25は、フィル
タ係数Wi (i=0,1,2,……,I−1:Iはタッ
プ数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、
最新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリ
ング・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタ
Wのフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力す
る一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応
ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適宜更新す
る処理を実行するようになっている。
【0044】ただし、この実施の形態では、SFXアル
ゴリズムにおける評価関数として、下記の(1)式を用
いている。 Jm={e(n)}2 +β{y(n)}2 ……(1) つまり、SFXアルゴリズムにあっては、評価関数Jm
が小さくなる方向にフィルタ係数Wi が更新されるので
あるから、上記(1)式の右辺の内容からも明らかなよ
うに、フィルタ係数Wi は、残留振動信号eの自乗値が
小さくなると共に、駆動信号yの自乗値をβ倍した値が
小さくなるように、逐次更新されることになる。そし
て、βは発散抑制係数と称される係数であって、この発
散抑制係数βが大きくなる程、駆動信号yは小さくなる
傾向となる。つまり、発散抑制係数βには制御の発散を
抑制する作用がある。
【0045】そして、収束係数をαとし、上記(1)式
で表される評価関数Jmに基づいてフィルタ係数Wi
更新式を求めると、下記の(2)式のようになる。 Wi (n+1)=Wi (n)+2αRT e(n)−2βαy(n) ……(2) そこで、この(2)式中の「2α」を新たな収束係数α
とし、「2βα」を新たな発散抑制係数βとすれば、適
応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi の更新式は
下記の(3)式のようになる。
【0046】 Wi (n+1)=Wi (n)+αRT e(n)−βy(n) ……(3) ここで、(n),(n+1)が付く項は、サンプリング
時刻n,n+1,における値であることを表している。
また、更新用基準信号RT は、理論的には、基準信号x
を、能動型エンジンマウント20の電磁アクチュエータ
52及び荷重センサ64間の伝達関数Cをモデル化した
伝達関数フィルタC^でフィルタ処理をした値である
が、基準信号xの大きさは“1”であるから、伝達関数
フィルタC^のインパルス応答を基準信号xに同期して
次々と生成した場合のそれらインパルス応答波形のサン
プリング時刻nにおける和に一致する。
【0047】また、理論的には、基準信号xを適応ディ
ジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成
するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるた
め、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力し
ても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ
結果になる。そして、コントローラ25は、上記のよう
な駆動信号yの出力処理及び適応ディジタルフィルタW
の各フィルタ係数Wi の更新処理を、基準信号xの最新
のインパルスが生成された時点を基準に開始される固定
サンプリング・クロックに同期して実行するようになっ
ている。ここで、基準信号xのインパルスの生成に伴っ
てクリアされ固定サンプリング・クロックに同期してイ
ンクリメントされるカウンタをi(=0、1、2、…、
L−1)、サンプリング・クロックの一周期内(サンプ
リング周期内)に実行されるフィルタ係数Wj の更新処
理を各フィルタ係数Wj に対して実行するために用いら
れるカウンタをj(=0、1、2、…、L−1)とする
と、上記(3)式に示した各フィルタ係数Wj の更新式
は、それらi,jの関係から、具体的には下記のように
なる。
【0048】 i=j; Wj (n+1)=Wj (n)+αR(0)e(n)−βy(n) ……(4) i−j<0; Wj (n+1)=Wj (n)+αR(L1+i−j)e(n) ……(5) i−j≧L1; Wj (n+1)=Wj (n)+αR(i−j−L1)e(n) ……(6) 0<i−j<L1; Wj (n+1)=Wj (n)+αR(i−j)e(n) ……(7) 但し、Lは、基準信号xの一周期(制御周期)内に駆動
信号yとして出力されるフィルタ係数Wj の個数(タッ
プ数)であり、基準信号xの周期Tx を固定サンプリン
グ・クロックの周期Tc で割った結果の小数点以下を切
り上げた値である。また、L1は、基準信号xの一周期
内に駆動信号yとして出力されるフィルタ係数Wj の実
際のタップ長の小数点以下まで考慮して求められる整数
タップ長であって、基準信号xの周期Tx を固定サンプ
リング・クロックの周期Tc で割った結果を小数点第一
位で四捨五入した値である。
【0049】つまり、コントローラ25内では、0〜
(L−1)の間で1ずつ増加するカウンタiのそれぞれ
に対して、カウンタjを0から(L−1)にまで1ずつ
増加させる毎に、上記(4)〜(7)のいずれかの更新
式に従ってフィルタ係数Wj が更新されるのである。そ
して、上記(4)〜(7)式を実行するためには、上述
したタップ数L及び整数タップ長L1を常に把握してお
かなければならないから、基準信号xの周期Tx の最新
の値を常に検出するようになっている。具体的には、基
準信号xの最新のインパルスとその一つ前のインパルス
との入力間隔を、クロックパルスをカウントする周期測
定用タイマによって常時計測し、これにより周期Tx
取得するようになっている。
【0050】また、コントローラ25は、周期測定用タ
イマの他に、サンプリング・クロックの周期が経過した
ことを認識するためのタイマ(サンプリング・クロック
測定用タイマ)を有していて、最新の基準信号xのイン
パルスが生成された時点から、サンプリング・クロック
の周期と同じ時間を繰り返し測定し、そのサンプリング
・クロックに同期して駆動信号yを出力するようになっ
ている。
【0051】さらに、コントローラ25内では、残留振
動信号eを所定のカットオフ周波数に設定されたハイパ
ス・フィルタでフィルタ処理してから、上記(4)〜
(7)式の更新式に用いるようになっている。かかるハ
イパス・フィルタのカットオフ周波数は、本実施の形態
では5Hzとしている。従って、ハイパス・フィルタの特
性を図示すると、図5の特性Aに示すようになる。
【0052】次に、本実施の形態の動作を説明する。イ
グニッションスイッチがオンとなって電源が供給される
ようになると、コントローラ25は、所定の演算処理を
実行し、電磁アクチュエータ52に駆動信号yを出力
し、能動型エンジンマウント20に振動を低減し得る能
動的な支持力を発生させるようになる。これをコントロ
ーラ25内で実行される処理の概要を示すフローチャー
トである図4に従って具体的に説明する。
【0053】即ち、電源が供給されると、コントローラ
25は所定の初期設定を行い、イグニッションスイッチ
がオンになった後に、運転者がエンジンキーをさらに回
すと、エンジン17が起動し、基準信号xがコントロー
ラ25に供給されるようになる。そして、基準信号xの
インパルスが確認されたら、基準信号xの立ち上がりが
検出されて基準信号xの周期TX が検出され、その周期
x と固定サンプリング・クロックの周期Tc とに基づ
き、ステップ101においてタップ数L及び整数タップ
長L1が演算される。なお、図4の処理が開始されてか
らステップ101の処理の実行回数が2以上の場合に
は、後述するカウンタiの値に基づいてタップ数Lを求
め、また、そのカウンタiの値とサンプリング・クロッ
ク測定用タイマの値とに基づいて整数タップ長L1を求
めることも可能である。
【0054】次いで、ステップ102に移行し、カウン
タiが零クリアされた後に、ステップ103に移行し、
サンプリング・クロック測定用タイマがクリア・スター
トされる。そして、ステップ104に移行し、適応ディ
ジタルフィルタWのi番目のフィルタ係数Wi が駆動信
号yとして出力される。次いで、ステップ105に移行
し、カウンタiが0か否かが判定され、この判定が「Y
ES」の場合には、制御周期(基準信号xの周期)が始
まった直後であると判断して、一制御周期が始まったこ
とに伴う初期処理を実行すべく、ステップ106に移行
し、伝達関数フィルタC^に基づき更新用基準信号RT
が演算される。なお、ステップ106では、基準信号x
の新たな一周期分の更新用基準信号R(更新用基準信号
T は、更新用基準信号Rの転置行列である。)がまと
めて演算される。
【0055】ステップ105の判定が「NO」の場合並
びにステップ106の処理を終えた場合には、ステップ
107に移行し、残留振動信号eが読み込まれる。そし
て、ステップ108に移行し、残留振動信号eを、ハイ
パス・フィルタ処理する。かかるハイパス・フィルタ処
理のカットオフ周波数は、図5の特性Aに示したよう
に、5Hzに設定されているから、このステップ108の
処理を行うことによって、残留振動信号eからは5Hzよ
りも低い周波数成分が除去される。
【0056】次いで、ステップ109に移行して、カウ
ンタjが零クリアされ、そして、ステップ110に移行
し、適応ディジタルフィルタWのj番目のフィルタ係数
jが上記(4)〜(7)式に従って更新される。次い
で、ステップ111に移行し、基準信号xの次のインパ
ルスが入力されているか否かを判定し、ここで基準信号
xが入力されていないと判定された場合には、適応ディ
ジタルフィルタWの次のフィルタ係数の更新又は駆動信
号yの出力処理を実行すべくステップ112に移行する
一方、ステップ111で基準信号xの新たなインパルス
が入力されたと判断された場合には、ステップ101に
戻って、上述した処理を繰り返し実行する。
【0057】ステップ112では、全フィルタ係数Wj
に対する更新演算が完了しているか否か、つまりカウン
タjがタップ数L(正確には、カウンタjは0からスタ
ートするため、タップ数Lから1を減じた値)に達して
いるか否かが判定され、この判定が「NO」の場合に
は、ステップ113に移行し、カウンタjをインクリメ
ントした後に、ステップ110に戻って上述した処理を
繰り返し実行する。
【0058】しかし、ステップ112の判定が「YE
S」の場合には、適応ディジタルフィルタWのフィルタ
係数Wj のうち、駆動信号yとして必要な数のフィルタ
係数の更新処理が完了したと判断できるから、ステップ
114に移行してカウンタiをインクリメントする。次
いで、ステップ115に移行し、上記ステップ103で
クリア・スタートさせたサンプリング・クロック測定用
タイマの値が固定サンプリング・クロックの周期TC
達するまで待機した後、上記ステップ103に戻って上
述した処理を繰り返し実行する。
【0059】このような図4の処理を繰り返し実行する
結果、コントローラ25から能動型エンジンマウント2
0の電磁アクチュエータ52に対しては、基準信号xが
入力された時点から、固定サンプリング・クロックに同
期して、適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi
が順番に駆動信号yとして供給される。この結果、励磁
コイル52bに駆動信号yに応じた磁力が発生するが、
磁路形成部材78Bには、すでに永久磁石52cによる
一定の磁力が付与されているから、その励磁コイル52
bによる磁力は永久磁石52cの磁力を強める又は弱め
るように作用すると考えることができる。このように、
永久磁石52cの磁力が強まったり弱まったりすると、
可動部材78が正逆両方向に変位し、可動部材78が変
位すれば、主流体室84の容積が変化し、その容積変化
によって支持弾性体32の拡張ばねが変形するから、こ
の能動型エンジンマウント20に正逆両方向の能動的な
支持力が発生するのである。
【0060】そして、駆動信号yとなる適応ディジタル
フィルタWの各フィルタ係数Wi は、SFXアルゴリズ
ムに従った上記(4)〜(7)式によって逐次更新され
るため、ある程度の時間が経過して適応ディジタルフィ
ルタWの各フィルタ係数Wiが最適値に収束した後は、
駆動信号yが能動型エンジンマウント20に供給される
ことによって、エンジン17から能動型エンジンマウン
ト20を介して車体18側に伝達されるアイドル振動や
こもり音振動が低減されるようになる。
【0061】しかも、本実施の形態では、残留振動信号
eをハイパス・フィルタ処理してからフィルタ係数Wi
の更新処理に用いるようになっているため、アイドル時
の振動低減効果が低下することを抑制できるという利点
がある。つまり、本実施の形態のエンジン17の場合、
燃焼タイミングに同期して発生する振動は、エンジン回
転2次の振動であり、アイドル時のエンジン回転数が6
00〜750Hzであることから、アイドル時の制御対象
振動の周波数は20〜24Hzである。すると、かかる振
動の1/2の周波数は10〜12Hz、1/3の周波数は
6.66〜8Hz、1/4の周波数は5〜6Hzであるから、ハ
イパス・フィルタ処理のカットオフ周波数を5Hzとすれ
ば、アイドル振動周波数の1/4の周波数の振動(図5
の特性Bで示すような振動)が、残留振動信号としてフ
ィルタ係数Wi の更新式に取り込まれることを回避でき
る。
【0062】その結果、アイドル時にフィルタ係数Wi
が好ましくない形状に成長することが避けられるから、
振動低減効果が低下することを抑制できるのである。な
お、ハイパス・フィルタ処理におけるカットオフ周波数
は、5Hzに限定されるものではなく、例えば、通常走行
時におけるエンジンシェイクの影響が懸念される車両の
場合には、カットオフ周波数を、10〜15Hzに設定し
てもよい。つまり、通常走行時のエンジン17の回転数
が1200rpm 以上だとすると、そのときに燃焼タイミ
ングに同期して発生する振動の周波数は、40Hz以上と
いうことになる。すると、エンジンシェイクの周波数
が、通常10〜15Hz近傍であるから、通常走行時に、
エンジン振動周波数が、エンジンシェイク周波数の4倍
になる状況が考えられ、そのエンジンシェイクが過大な
場合にそれが残留振動信号eに重畳されてフィルタ係数
i の更新式に用いられて振動低減効果が低下する可能
性がある。そこで、図5の特性Cで示すように、ハイパ
ス・フィルタ処理のカットオフ周波数を10Hz程度に設
定することにより、図5の特性Dで示すような振動の成
分がフィルタ係数Wi の更新式に用いられることが回避
されるから、通常走行時にエンジンシェイクが過大であ
ることに起因して振動低減効果が低下することを避けら
れるのである。
【0063】ここで、本実施の形態では、パルス信号生
成器19が基準信号生成手段に対応し、荷重センサ64
が残留振動検出手段に対応し、コントローラ25が制御
手段に対応し、図4の処理において、所定のサンプリン
グ・クロックに同期してステップ104でフィルタ係数
i を駆動信号yとして出力する処理が駆動信号生成手
段に対応し、ステップ108の処理がハイパス・フィル
タを構成し、ステップ110の処理がフィルタ係数更新
手段に対応する。
【0064】図6は、本発明の第2の実施の形態を示す
図であって、図4と同様にコントローラ25内で実行さ
れる振動低減処理の概要を示すフローチャートであり、
図4と同じ処理には同じ符号を付しその重複する説明は
省略する。また、その他の構成は上記第1の実施の形態
と同様であるため、その図示及び説明は省略する。即
ち、本実施の形態における要点は、残留振動信号eをフ
ィルタ処理するハイパス・フィルタのカットオフ周波数
を、可変した点である。
【0065】具体的には、ステップ105の判定が「Y
ES」となってステップ106の処理を実行した後に、
ステップ201に移行し、ここで、カットオフ周波数が
演算される。ハイパス・フィルタ処理のカットオフ周波
数は、そのときエンジン17の燃焼に同期して発生して
いる振動の周波数の、1/aとして設定する。aは、2
以上の整数であるが、アイドル時に残留振動信号eから
除去したい振動の周波数成分や、通常走行時に残留振動
信号eから除去したいエンジンシェイクの周波数成分
は、凡そ、エンジン17の燃焼に同期して発生している
振動の周波数の1/4であることが比較的多いことか
ら、a =4とすることが好ましいが、車両によってはそ
れ以外の値を採用してもよい。
【0066】なお、エンジン17の燃焼に同期して発生
している振動の周波数は、エンジン17の回転数が判れ
ば容易に求められるが、本実施の形態であれば、基準信
号xの周期TX が既知であるから、その周期Tx の逆数
(1/Tx )を演算することにより、エンジン17の燃
焼に同期して発生している振動の周波数を求めることも
可能である。
【0067】このような構成であれば、ステップ108
におけるハイパス・フィルタ処理のカットオフ周波数
は、エンジンで発生する振動の周波数の変化を追従する
ように変化するため、常に的確なハイパス・フィルタ処
理が行われる。つまり、図5を例に説明すれば、ハイパ
ス・フィルタの特性は、エンジンで発生する振動の周波
数の変化に応じて、特性Aと特性Cとの間で連続的に変
化するため、特性Bの振動や特性Dの振動を、的確に除
去できるのである。ちなみに、ハイパス・フィルタのカ
ットオフ周波数が固定であると、例えば特性Aのような
ハイパス・フィルタを設定した場合、通常走行時には、
特性Dのようなエンジンシェイク成分の減衰が不十分と
なる可能性があるし、逆に、特性Cのようなハイパス・
フィルタを設定した場合、アイドル時の振動低減制御に
必要な成分をも減衰してしまい却って振動低減効果が減
少してしまう可能性があるが、本実施の形態であれば、
そのような不具合をも除去することができるのである。
【0068】なお、上記実施の形態においては、残留振
動を能動型エンジンマウント20に内蔵した荷重センサ
64によって検出しているが、これに限定されるもので
はなく、例えば車室内の乗員足元位置にフロア振動を検
出する加速度センサを配設し、その加速度センサの出力
信号を残留振動信号eとしてもよい。また、上記各実施
の形態では、駆動信号yを生成するアルゴリズムとして
SFXアルゴリズムを適用しているが、適用可能なアル
ゴリズムはこれに限定されるものではなく、例えば、通
常のLMSアルゴリズム、Filtered−X LM
Sアルゴリズム等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における車両の概略側面図で
ある。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を平面視で示し
た図である。
【図3】図2のA−A矢視断面及びB−B矢視断面図で
ある。
【図4】振動低減処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図5】ハイパス・フィルタ処理の周波数特性図であ
る。
【図6】第2の実施の形態の振動低減処理の概要を示す
フローチャートである。
【符号の説明】
17 エンジン 18 車体 19 パルス信号生成器(基準信号生成手段) 20 能動型エンジンマウント 25 コントローラ 52 電磁アクチュエータ 64 荷重センサ(残留振動検出手段)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン及び車体間に介在し且つ前記エ
    ンジンで発生した振動と干渉する制御振動を発生可能な
    能動型エンジンマウントと、前記干渉後の振動を検出し
    残留振動信号として出力する残留振動検出手段と、前記
    残留振動信号に基づいて前記車体の振動が低減するよう
    に前記能動型エンジンマウントを駆動制御する制御手段
    と、を備えた車両用能動型振動制御装置において、 前記残留振動信号をハイパス・フィルタ処理するハイパ
    ス・フィルタを設け、前記制御手段は、前記ハイパス・
    フィルタ処理された前記残留振動信号に基づいて前記駆
    動制御を行うようになっていることを特徴とする車両用
    能動型振動制御装置。
  2. 【請求項2】 前記制御手段は、前記振動の発生状態を
    検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、フ
    ィルタ係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準
    信号及び前記残留振動信号に基づき且つ適応アルゴリズ
    ムに従って前記適応ディジタルフィルタのフィルタ係数
    を更新するフィルタ係数更新手段と、前記基準信号及び
    前記適応ディジタルフィルタに基づき前記能動型エンジ
    ンマウントを駆動する駆動信号を生成し出力する駆動信
    号生成手段と、を備え、 前記フィルタ係数更新手段は、前記基準信号及び前記ハ
    イパス・フィルタ処理された前記残留振動信号に基づき
    前記フィルタ係数を更新するようになっている請求項1
    記載の車両用能動型振動制御装置。
  3. 【請求項3】 前記ハイパス・フィルタのカットオフ周
    波数は、5〜6Hzである請求項1又は請求項2記載の車
    両用能動型振動制御装置。
  4. 【請求項4】 前記ハイパス・フィルタのカットオフ周
    波数は、10〜15Hzである請求項1又は請求項2記載
    の車両用能動型振動制御装置。
  5. 【請求項5】 前記ハイパス・フィルタのカットオフ周
    波数を、前記エンジンで発生した振動の周波数に応じて
    可変とした請求項1又は請求項2記載の車両用能動型振
    動制御装置。
  6. 【請求項6】 前記ハイパス・フィルタのカットオフ周
    波数を、前記エンジンで発生した振動の周波数の1/a
    (aは2以上の任意の整数)となるように変化させる請
    求項5記載の車両用能動型振動制御装置。
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JP2005299745A (ja) * 2004-04-08 2005-10-27 Nissan Motor Co Ltd 防振支持装置

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