JP2000122701A - 能動型騒音振動制御装置 - Google Patents

能動型騒音振動制御装置

Info

Publication number
JP2000122701A
JP2000122701A JP10298583A JP29858398A JP2000122701A JP 2000122701 A JP2000122701 A JP 2000122701A JP 10298583 A JP10298583 A JP 10298583A JP 29858398 A JP29858398 A JP 29858398A JP 2000122701 A JP2000122701 A JP 2000122701A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
control
vibration
divergence
noise
coefficient
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10298583A
Other languages
English (en)
Inventor
Shigeki Sato
佐藤  茂樹
Takeshi Kimura
健 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP10298583A priority Critical patent/JP2000122701A/ja
Publication of JP2000122701A publication Critical patent/JP2000122701A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Feedback Control In General (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】発散抑制係数を、発散抑制方向に変化させる必
要のない状況ではその変化を抑制する、或いは、より適
切なタイミングで発散抑制係数を発散抑制方向とは逆方
向に変化させたい。 【解決手段】ステップ114で駆動信号yの振幅と所定
しきい値とを比較し、振幅が所定しきい値よりも大きい
場合には、発散を検出したと判断し、ステップ115か
らステップ118に移行する。次いでステップ119に
移行し、ステップ114の処理において発散が検出され
た理由が、制御振動の不足であるか否かを推定するため
の制御力不足推定処理を実行する。そして、上記理由が
制御振動の不足であると推定されている場合にはステッ
プ120から121に移行し、ステップ114の発散検
出処理で用いる所定しきい値を、当初の値よりも大きな
値に変更する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、適応アルゴリズ
ムに従ってフィルタ係数が更新される適応ディジタルフ
ィルタを用いて騒音又は振動の低減制御を実行するよう
になっている能動型騒音振動制御装置に関し、特に、フ
ィルタ係数の更新式に制御の発散抑制作用を有する発散
抑制係数を含んでおり、制御の発散が検出された場合に
は、前記発散抑制係数を発散抑制方向に変化させるよう
になっている能動型騒音振動制御装置において、発散抑
制係数を発散抑制方向に変化させる必要のない状況では
その変化を抑制する、或いは、より適切なタイミングで
発散抑制係数を発散抑制方向とは逆方向に変化させるこ
とができるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の技術としては、本出願人
が先に提案した特開平5−61483号公報に開示され
たものがある。
【0003】即ち、かかる公報記載の従来技術は、LM
Sアルゴリズム等の適応アルゴリズムを利用した能動型
騒音制御装置に関するものであり、より具体的には、適
応アルゴリズムにおける評価関数として、低減対象の騒
音及び制御音の干渉結果である残留騒音信号の自乗値
と、制御音を発するラウドスピーカへの駆動信号の自乗
値との和を用いた能動型騒音制御装置に関するものであ
る。
【0004】そして、上記公報に記載された従来の能動
型騒音制御装置にあっては、評価関数に含まれる駆動信
号の自乗値に掛けられる係数(上記公報内では、努力係
数と称している。)を、制御の発散が進行するに従っ
て、発散を抑制する方向(フィルタ係数を小さくする方
向)に変更するようになっており、これにより、音響伝
達関数が変化したような場合でも制御の発散を有効に抑
制できるから、制御が本格的な発散に至ることを回避で
きて、例えば車両に適用した場合には乗員等に不快感を
与えないで済む、というものであった。
【0005】確かに、上記公報に記載された従来の能動
型騒音制御装置であれば、上記のような発散抑制効果を
得ることはできるが、発散を抑制するために係数を変更
すると、同時に騒音低減効果も低下してしまうという副
作用がある。つまり、発散を抑制する係数を発散抑制方
向に変化させると、それだけフィルタ係数が原点に戻り
易くなるから、発生する制御音が小さくなる傾向となっ
て、騒音低減効果が低下してしまうのである。このよう
な問題点は、能動型騒音制御装置に限られたものではな
く、同様に適応アルゴリズムを用いて振動低減制御を実
行する能動型振動制御装置にも当てはまるものである。
【0006】かかる問題点に対し、本出願人は、特開平
9−319380号公報に開示されるような技術を提案
している。
【0007】即ち、特開平9−319380号公報に開
示された技術にあっては、所定のタイミングで発散抑制
係数を発散抑制方向とは逆の方向に変化させる発散抑制
係数復元手段を設けており、これにより、発散抑制係数
が発散抑制方向に変化していたとしても、その発散抑制
係数は、再び騒音又は振動の低減効果が大きくなる方向
に変化する。そして、騒音又は振動の低減効果が大きく
なる方向に発散抑制係数が変化した後に制御の発散が検
出された場合には、発散抑制係数は逆に発散抑制方向に
変化するから、発散抑制係数は、発散を抑制し得る範囲
内で最も振動又は騒音の低減効果が大きい値を目指すよ
うになる、というものであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
9−319380号公報に開示された技術は、簡単に言
えば、所定のタイミングで発散抑制係数を発散抑制方向
とは逆の方向に変化させることにより発散抑制係数が適
切な値であるか否かの様子を見る、というものであるか
ら、本来の発散である場合及び本来の発散でない場合の
いずれにあっても発散抑制係数を騒音又は振動の低減効
果が大きくなる方向に変化させるものである。このた
め、回復できない理由により発散傾向になったために発
散抑制係数を大きくしたにも関わらず、その発散抑制係
数をそれとは逆の方向に変化させてしまう可能性を、そ
れほど低くできないという改良すべき点があった。
【0009】本発明は、このような従来の技術が有する
未解決の課題に着目してなされたものであって、発散抑
制係数を発散抑制方向に変化させる必要のない状況では
その変化を抑制する、或いは、より適切なタイミングで
発散抑制係数を発散抑制方向とは逆方向に変化させるこ
とができる能動型騒音振動制御装置を提供することを目
的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、適応アルゴリズムに従って
フィルタ係数が更新される適応ディジタルフィルタを用
いて、騒音又は振動の低減制御を実行するとともに、前
記フィルタ係数の更新式は、制御の発散抑制作用を有す
る発散抑制係数を含んでおり、制御の発散が検出された
場合には、前記発散抑制係数を発散抑制方向に変化させ
るようになっている能動型騒音振動制御装置において、
前記発散が検出された理由は前記制御音又は制御振動の
不足であると推定できる場合には、前記発散抑制係数が
発散抑制方向に変化することを抑制する又は前記発散抑
制係数を発散抑制方向とは逆の方向に変化させるように
した。
【0011】上記目的を達成するために、請求項2に係
る発明は、騒音源又は振動源から発せられる騒音又は振
動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御音源
又は制御振動源と、前記騒音又は振動の発生状態を表す
基準信号を生成する基準信号生成手段と、フィルタ係数
可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記
適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音
源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信
号生成手段と、前記干渉後の騒音又は振動を検出し残留
騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出
手段又は残留振動検出手段と、適応アルゴリズムに従っ
て設定され且つ制御の発散抑制作用を有する発散抑制係
数を含んでいる更新式を用いて前記適応ディジタルフィ
ルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段
と、前記駆動信号の振幅が所定しきい値を越えた場合に
制御が発散したと判断する発散検出手段と、この発散検
出手段が制御の発散を検出した場合に前記発散抑制係数
を発散抑制方向に変化させる発散抑制手段と、を備えた
能動型騒音振動制御装置において、前記駆動信号の振幅
が前記所定しきい値を越えた理由は前記制御音又は制御
振動の不足であるか否かを推定する制御力不足推定手段
と、前記理由が前記不足であると推定された場合に前記
所定しきい値を大きくするしきい値変更手段と、を設け
た。
【0012】上記目的を達成するために、請求項3に係
る発明は、騒音源又は振動源から発せられる騒音又は振
動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御音源
又は制御振動源と、前記騒音又は振動の発生状態を表す
基準信号を生成する基準信号生成手段と、フィルタ係数
可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記
適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制御音
源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆動信
号生成手段と、前記干渉後の騒音又は振動を検出し残留
騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音検出
手段又は残留振動検出手段と、適応アルゴリズムに従っ
て設定され且つ制御の発散抑制作用を有する発散抑制係
数を含んでいる更新式を用いて前記適応ディジタルフィ
ルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段
と、前記駆動信号の振幅が所定しきい値を越えた場合に
制御が発散したと判断する発散検出手段と、この発散検
出手段が制御の発散を検出した場合に前記発散抑制係数
を発散抑制方向に変化させる発散抑制手段と、を備えた
能動型騒音振動制御装置において、前記駆動信号の振幅
が前記所定しきい値を越えた理由は前記制御音又は制御
振動の不足であるか否かを推定する制御力不足推定手段
と、前記理由が前記不足であると推定された場合に前記
発散抑制係数が発散抑制方向に変化することを禁止する
又は前記発散抑制係数を発散抑制方向とは逆の方向に変
化させる発散抑制係数調整手段と、を設けた。
【0013】請求項4に係る発明は、上記請求項2又は
3に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、
前記フィルタ係数更新手段は、前記制御音源又は制御振
動源と前記残留騒音検出手段又は残留振動検出手段との
間の伝達関数をモデル化した伝達関数フィルタを有して
おり、前記制御力不足推定手段は、前記駆動信号及び前
記伝達関数フィルタを畳み込んだ信号と、前記残留騒音
信号又は残留振動信号とが同相のときに、前記理由は前
記不足であると推定するようになっている。
【0014】請求項5に係る発明は、上記請求項2又は
請求項3記載の能動型騒音振動制御装置を、振動源とし
てのエンジンから車体に伝達される振動を低減するため
に、自動変速機を有する車両に適用したものであって、
前記制御振動源は、前記エンジンと車体との間に介在す
るエンジンマウントを構成するものであり、前記制御力
不足推定手段は、前記車両が停車中であり且つ前記自動
変速機のシフト位置が駆動輪に駆動力を伝達する位置に
あるときに、前記理由は前記不足であると推定するよう
になっている。
【0015】請求項6に係る発明は、上記請求項2又は
請求項3記載の能動型騒音振動制御装置を、振動源とし
てのエンジンから車体に伝達される振動を低減するため
に車両に適用したものであって、前記制御振動源は、前
記エンジンと車体との間に介在するエンジンマウントを
構成するものであり、前記制御力不足推定手段は、前記
車両が急加速中又は急減速中であるときに、前記理由は
前記不足であると推定するようになっている。
【0016】請求項7に係る発明は、上記請求項2又は
3に係る発明である能動型騒音振動制御装置を車両に適
用したものであって、前記騒音源又は振動源は前記車両
のエンジンであり、前記制御音源又は制御振動源は電気
エネルギにより駆動するようになっており、前記制御力
不足推定手段は、前記制御音源又は制御振動源の駆動回
路への入力電圧が所定しきい値以下のときに、前記理由
は前記不足であると推定するようになっている。
【0017】請求項8に係る発明は、上記請求項2又は
3に係る発明である能動型騒音振動制御装置において、
前記制御力不足推定手段は、前記制御音源又は制御振動
源の温度が所定温度よりも低いときに、前記理由は前記
不足であると推定するようになっている。
【0018】ここで、何らかの理由により制御音又は制
御振動が不足する状況になると、適応ディジタルフィル
タのフィルタ係数はより大きな制御音又は制御振動が発
生するように更新されるため、自動的に制御音又は制御
振動が大きくなる。一方、制御が発散傾向に陥った場合
にも、例えば適応ディジタルフィルタのフィルタ係数が
無秩序に増大してしまい、制御音又は制御振動が大きく
なる。つまり、制御音又は制御振動が大きくなるという
現象だけに着目すると両者は似ているが、前者について
は、制御音又は制御振動が大きくなるのは騒音振動低減
制御にとって正常な作用であるから、発散抑制係数を発
散抑制方向に変化させる又は変化したままにしておくこ
とは望ましくない。これに対し、後者については、制御
音又は制御振動が大きいままでは、却って不快な音や振
動が制御空間・制御対象に残ってしまうから、発散抑制
係数を発散抑制方向に変化させる又は変化したままにし
ておくことが望ましい。
【0019】そこで、請求項1に係る発明にあっては、
制御が発散していると判断された場合であっても、かか
る判断がなされた理由が、制御音又は制御振動の不足
(レベル不足)であるかと推定できるときには、発散抑
制係数が発散抑制方向に変化することが抑制される、又
は、発散抑制係数が既に発散抑制方向に変化している場
合にはそれとは逆の方向に変化する。前者の「発散抑制
係数が発散抑制方向に変化することを抑制する」ための
具体例としては、例えば後述の請求項2に係る発明のよ
うに、駆動信号の振幅に基づいて発散を検出するような
構成の場合には、その発散を判断するためのしきい値を
大きくする、或いは、発散であると判定されても発散抑
制係数の変化を禁止してしまう、というようなことが考
えられる。後者の「発散抑制係数を発散抑制方向とは逆
の方向に変化させる」ための具体例としては、上記理由
が上記不足であると推定された直後にその発散抑制係数
を元の値に戻す、制御が発散していると判断できる状況
が解消した直後に発散抑制係数を元の値に戻す、或い
は、上記理由が上記不足であると推定した判断材料が元
の状態に戻ったときに発散抑制係数を元の値に戻す、と
いうようなことが考えられる。
【0020】そして、上記前者又は後者の対処がなされ
れば、発散抑制作用が小さい状態が維持される又は小さ
くなるから、騒音振動低減制御を実行する上でより望ま
しい状態が得られる。
【0021】一方、制御が発散していると判断された場
合に、その判断がなされた理由が制御音又は制御振動の
不足であると推定できなければ、発散抑制係数が発散抑
制方向に変化することが抑制されることはないし、発散
抑制係数が既に発散抑制方向に変化している場合にはそ
れとは逆の方向に変化することもない。よって、発散抑
制作用が必要な状況下で、その発散抑制作用が強制的に
弱められるようなことを避けることができる。
【0022】また、請求項2に係る発明にあっては、発
散検出手段は、駆動信号の振幅が所定しきい値を越えた
場合に制御が発散したと判断するようになっているが、
制御力不足推定手段が、駆動信号の振幅が所定しきい値
を越えた理由は制御音又は制御振動の不足であると推定
したときには、しきい値変更手段が、発散検出手段にお
ける所定しきい値を大きくする。つまり、制御が発散し
たと判断された場合でも、その判断の理由が制御力不足
であると推定できるときには、制御の発散を判断すると
きの基準値である所定しきい値が大きくなるから、制御
が発散しているという判断が解消される。よって、例え
ばしきい値変更手段による所定しきい値の変更が、発散
抑制手段が発散抑制係数を発散抑制方向に変化させる前
になされるようにすれば、その発散抑制係数が発散抑制
方向に変化することが抑制されるようになる。この結
果、上記請求項1に係る発明と同様の作用が得られる。
【0023】また、請求項3に係る発明にあっては、発
散検出手段が制御が発散したと判断しても、制御力不足
推定手段が上記理由は上記不足であると推定したときに
は、発散抑制係数調整手段によって、発散抑制係数が発
散抑制方向に変化することが禁止される、又は、発散抑
制係数が発散抑制方向とは逆の方向に変化する。この結
果、上記請求項1に係る発明と同様の作用が得られる。
【0024】なお、これら請求項2又は3に係る発明に
おいて、発散検出手段が発散を検出するために用いる
「駆動信号の振幅」は、瞬間的な振幅であってもよい
し、或いは、駆動信号の振幅の所定時間区間内における
平均(単純平均、重み付け平均)であってもよい。
【0025】そして、請求項4に係る発明にあっては、
制御力不足推定手段は、駆動信号及び伝達関数フィルタ
を畳み込んだ信号と、残留騒音信号又は残留振動信号と
が同相であるときには、制御が発散であると判断されて
いても、その判断の理由は制御力の不足であると推定す
る。つまり、制御力が不足している状況では、その不足
した制御力を補うために適応ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数が増大することはあっても、騒音又は振動を低
減するための制御音又は制御振動が発生しているのであ
るから、制御音又は制御振動と、残留騒音信号又は残留
振動信号とは、同相のはずである。即ち、残留騒音信号
又は残留振動信号は、騒音源又は振動源で発生した騒音
又は振動と、制御音又は制御振動との干渉した結果であ
り、制御音又は制御振動は、騒音源又は振動源で発生し
た騒音又は振動と同相であり、しかも、その騒音又は振
動を完全に打ち消すには制御音又は制御振動のレベルが
不足しているのであるから、かかる状況であれば、残留
騒音信号又は残留振動信号は、制御音又は制御振動と同
相の信号になるはずである。よって、両信号が同相であ
ると判断された場合には、上記理由は制御力の不足であ
ると推定できるのである。なお、制御音又は制御振動
は、駆動信号と伝達関数フィルタとを畳み込むことによ
り求められる。
【0026】一方、請求項5に係る発明のように自動変
速機を有する車両に適用した場合、車両が停車中で、且
つ、自動変速機のシフト位置が駆動輪に駆動力を伝達す
る位置(通常は、D(ドライブ)レンジ、2速レンジ、
1速レンジ、R(リバース)レンジ)にあるときには、
エンジン(振動源)と車体との間に介在するエンジンマ
ウントのいずれかに通常よりも大きな荷重が加わる。そ
して、制御振動源が、その大荷重が加わっているエンジ
ンマウントを構成している場合、通常の駆動信号で発生
する制御振動ではエンジンから伝達される振動を打ち消
すには不足してしまい、大きな駆動信号が生成されるよ
うになる。つまり、車両が停車中で且つ自動変速機がD
レンジ等にあるという条件が満たされているときには、
駆動信号の振幅が大きくなったとしても、その理由は制
御振動の不足にある可能性が高いのであるから、上記条
件の成否に基づいて制御力不足推定手段における推定が
可能になるのである。なお、車両が停車中であるか否か
は、例えば車速が0か否かに基づいて判断することがで
きる。
【0027】また、請求項6に係る発明のように車両に
適用した場合、車両が急加速中又は急減速中であるとき
には、エンジン(振動源)と車体との間に介在するエン
ジンマウントのいずれかに通常よりも大きな荷重が加わ
る。そして、制御振動源が、その大荷重が加わっている
エンジンマウントを構成している場合、通常の駆動信号
で発生する制御振動ではエンジンから伝達される振動を
打ち消すには不足してしまい、大きな駆動信号が生成さ
れるようになる。つまり、車両が急加速中又は急減速中
であるという条件が満たされているときには、駆動信号
の振幅が大きくなったとしても、その理由は制御振動の
不足にある可能性が高いのであるから、上記条件の成否
に基づいて制御力不足推定手段における推定が可能にな
るのである。なお、車両が急加速中又は急減速中である
か否かは、例えば車両が前後方向加速度センサを備えて
いる場合であればそのセンサ信号を利用して判断するこ
とができるし、車速センサ出力の微分値に基づいて判断
することもできるし、急加速中であるか否かについて
は、アクセル開度に基づいて判断することも可能であ
る。
【0028】そして、請求項7に係る発明のように車両
に適用した場合であって、制御音源又は制御振動源が電
気エネルギにより駆動するようになっているとき、その
電気エネルギの供給源であるバッテリの電圧が低下して
いるような状況では、制御音源又は制御振動源の駆動回
路への入力電圧も低くなってしまい、同じ駆動信号では
充分な制御音又は制御振動が発生しないことが考えられ
る。つまり、同じ振幅の駆動信号では、駆動回路の入力
電圧が低いために、小さな制御音又は制御振動しか発生
しないため、適応アルゴリズムによって駆動信号の増大
が図られるのである。よって、駆動回路への入力電圧が
所定しきい値以下のときには、駆動信号の振幅が大きく
なったとしても、その理由は制御振動の不足にある可能
性が高いのであるから、駆動回路への入力電圧に基づい
て制御力不足推定手段における推定が可能になるのであ
る。なお、駆動回路の入力電圧は、例えばバッテリ電圧
に基づいて検出することが可能である。
【0029】さらに、請求項8に係る発明にあっては、
制御力不足推定手段は、制御音源又は制御振動源の温度
が所定温度よりも低いときには、制御が発散であると判
断されていても、その判断の理由は制御力の不足である
と推定する。つまり、制御音源又は制御振動源の温度が
低いと、それを構成する部品のうち振動する部分(例え
ば、ゴム状弾性体や金属バネ等)のバネ定数が大きくな
り、同じ制御音又は制御振動では小さな制御音又は制御
振動しか発生しないため、適応アルゴリズムによって駆
動信号の増大が図られるのである。よって、制御音源又
は制御振動源の温度が所定温度以下のときには、駆動信
号の振幅が大きくなったとしても、その理由は制御音又
は制御振動の不足にある可能性が高いのであるから、制
御音源又は制御振動源の温度に基づいて制御力不足推定
手段における推定が可能になるのである。なお、制御音
源又は制御振動源の温度は、それらに温度計を設けるこ
とにより直接測定することも可能であるし、雰囲気温度
から推定することも可能である。
【0030】
【発明の効果】このように、本発明によれば、発散が検
出された理由は制御音又は制御振動の不足であると推定
できる場合には、発散抑制係数が発散抑制方向に変化す
ることを抑制する又は発散抑制係数を発散抑制方向とは
逆の方向に変化させるようにしたため、発散抑制作用を
確保したまま、良好な騒音又は振動の低減効果が得られ
るという効果がある。
【0031】特に、請求項4に係る発明であれば、制御
音又は制御振動が不足しているか否かを高精度に推定す
ることができるから、本発明の効果をより確実に発揮で
きるという利点がある。
【0032】また、請求項5〜8に係る発明であれば、
制御音又は制御振動が不足しているか否かを比較的簡易
な構成で推定することができるという利点がある。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0034】図1乃至図6は本発明の第1の実施の形態
を示す図であって、図1は本発明に係る能動型騒音振動
制御装置の一形態である能動型振動制御装置を適用した
車両の概略側面図である。
【0035】先ず、構成を説明すると、横置きに搭載し
たエンジン17が、車体前後方向の後方に配置した能動
型エンジンマウント20を介して、サスペンションメン
バ等から構成される車体18に支持されている。なお、
実際には、エンジン17及び車体18間には、能動型エ
ンジンマウント20の他にエンジン17及び車体18間
の相対変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエ
ンジンマウントも介在している。受動的なエンジンマウ
ントとしては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する
通常のエンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰
力発生可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマ
ウントインシュレータ等が適用できる。
【0036】図2は、エンジン17に固定したブラケッ
ト(図示せず)を介して連結する能動型エンジンマウン
ト20の上部構造を平面視で示すものであり、エンジン
側連結部材30から上方に向けて突出している2本の連
結ボルト30aを、上述したブラケットの挿通孔に下側
から挿通し、ナットを螺合することによりエンジン17
に上端部が固定される。また、符号60はリバウンド規
制部材であり、このリバウンド規制部材60は、2本の
連結ボルト30a間を結ぶ線に対して直交し、エンジン
側連結部材30の上方をアーチ状に延在しながら装置ケ
ース43に固定されており、エンジン側連結部材30の
上面に固定したゴム製の弾性体からなるリバウンドスト
ッパ31の上方に位置している。
【0037】図3は、図2の矢視断面図で示す能動型エ
ンジンマウント20の内部構造を示すものであり、図2
の2本の連結ボルト30a間を結ぶ線に沿うA−A矢視
断面を、図3の軸心(以下、マウント軸と称する)P1
を境界として右側に示し、図2の2本の連結ボルト30
a間を結ぶ線に対して直交する方向のB−B矢視断面
を、図3のマウント軸P1 を境界として右側に示してい
る。
【0038】この能動型エンジンマウント20は、装置
ケース43に外筒34、中間筒36、オリフィス構成部
材37、支持弾性体32等のマウント部品を内蔵し、こ
れらマウント部品の下部に、流体室84の隔壁の一部を
形成しながら弾性支持された可動部材78を流体室84
の容積が変化する方向に変位させる電磁アクチュエータ
52と、図示しない車体メンバの振動状況を検出する荷
重センサ64とを内蔵した装置であり、より具体的に説
明していくと、前述したエンジン側連結部材30は、下
端周縁部30gが丸みを付けて形成されていると共に、
マウント軸P1に沿う位置に第1孔30cが形成されて
いる。また、このエンジン連結部材30に下側から嵌入
されて上方を向いている連結ボルト30aは、その頭部
30dがエンジン側連結部材30の下面から突出してい
る。ここで、その頭部30dの外周縁部は、丸みが付け
られて形成されている。
【0039】また、エンジン側連結部材30の下面に
は、断面逆台形状の中空筒体30bが固定されている。
この中空筒体30bには、連結ボルト30aに近接する
位置に第2孔30eが形成されていると共に、マウント
軸P1 に沿う下面に第3孔30fが形成されている。な
お、この中空筒体30bの連結ボルト30aから離間し
ている位置には、孔を形成していない。
【0040】そして、前記エンジン側連結部材30の下
面側には、中空筒体30bの内部及びエンジン側連結部
材30の下部側を覆うように、ゴム製の支持弾性体32
が加硫接着により固定されている。
【0041】すなわち、この支持弾性体32は、エンジ
ン側連結部材30側から下方に向けて拡径した形状のゴ
ム製の弾性体であって、内面に断面山形状の空洞部32
aを形成しているが、連結ボルト30aから離れている
部分の支持弾性体32の外周面は、図3の左側に示すよ
うに、エンジン側連結部材30の外周部を覆いながらリ
バウンドストッパ31に連続している。一方、連結ボル
ト30aに近接している支持弾性体32は、図3の右側
に示すように、連結ボルト30aの頭部30dの全域を
覆う被覆部32bが形成されていると共に、頭部30d
の下方位置の外周を、内側に大きく凹んだ形状としてい
る(以下、符号32cで示す凹み外周部と称する)。そ
して、前述した空洞部32aを形成しながら前記凹み外
周部32cに対向している支持弾性体32の内面も、内
側に大きく膨らんだ形状としている(以下、符号32d
で示す膨らみ内周部と称する)。そして、連結ボルト3
0aに近接している部分の支持弾性体32の肉厚は、凹
み外周部32cに対向して膨らみ内周部32dを設けた
ことにより、連結ボルト30aから離れている部分の肉
厚と略同一に設定している。
【0042】そして、薄肉形状とした支持弾性体32の
下端部は、マウント軸P1 が中空筒体30bと同軸に振
動体支持方向を向く中間筒体36の内周面に加硫接着に
より結合している。
【0043】中間筒体36は、同一外周径とした上端筒
部36a及び下端筒部36bの間に小径筒部36cを連
続して形成した部材であり、外周に環状凹部を設けてい
る。また、図示しないが、小径筒部36cには開口部が
形成されており、この開口部を介して中間筒体36の内
側及び外側が連通している。
【0044】中間筒体36の外側には外筒34が嵌合し
ており、この外筒34は内周径を中間筒体36の上端筒
部36a及び下端筒部36bの外周径と同一寸法とし、
軸方向の長さを中間筒体36と同一寸法に設定した円筒
部材である。また、この外筒34には開口部34aが形
成されており、この開口部34aの開口縁部にゴム製の
薄膜弾性体からなるダイアフラム42の外周が結合して
開口部34aを閉塞しつつ、外筒34の内側に向けて膨
出している。
【0045】そして、上記構成の外筒34を、環状凹部
を囲むように中間筒体36に外嵌すると、外筒34及び
中間筒体36間の周方向に環状空間が画成され、その環
状空間にダイアフラム42が膨出した状態で配設され
る。そして、中間筒体36の内側に、筒状のオリフィス
構成部材37が嵌合している。
【0046】このオリフィス構成部材37は、中間筒体
36の小径筒部36cより小径に形成した最小径筒部3
7aを備え、その最小径筒部37aの上下端部に径方向
外方に向けて上部環状部37b及び下部環状部37cが
形成されており、これら最小径筒部37a、上部及び下
部環状部37b、37cで囲んだ位置と中間筒体36と
の間に環状空間が設けられている。また、最小径筒部3
7aの一部に第2開口部37dが形成されている。ここ
で、上部環状部37bは、支持弾性体32の下方に位置
しているが、図2の右側に示すように、連結ボルト30
aに近接している支持弾性体32の下方に位置している
上部環状部37b1 は肉厚を薄く形成して凹みを設けて
おり、支持弾性体32の膨らみ内周部32dから離れた
位置で対向している。
【0047】また、装置ケース43は、その上端部に上
端筒部36aの外周径より小径の円形開口部を有する上
端かしめ部43aが形成されていると共に、この上端か
しめ部43aと連続するケース本体の形状を、内周径が
外筒34の外周径と同一寸法で下端開口部まで連続する
円筒形状(下端開口部を図2の破線で示した形状)とし
た部材であり、全てのマウント部品の組み込みが完了し
た後に下端開口部を径方向内方に向けてかしめていくこ
とにより、図2の実線で示すかしめ部が形成される。
【0048】そして、支持弾性体32、中間筒体36、
オリフィス構成部材37及びダイアフラム42を一体化
した外筒34を装置ケース43の下端開口部から内部に
嵌め込んでいき、上端かしめ部43aの下面に外筒34
及び中間筒体36の上端部を当接させると、それらが装
置ケース43内の上部に配設される。この際、装置ケー
ス43の内周面とダイヤフラム42とで囲まれた部分に
空気室42cが画成されるが、この空気室42cを臨む
位置に空気孔43aが形成されており、この空気孔43
aを介して空気室42cと大気が連通している。
【0049】装置ケース43内の下部には円筒状のスペ
ーサ70が嵌め込まれており、このスペーサ70内の上
部に可動部材78が配置されていると共に、スペーサ7
0内の下部に電磁アクチュエータ52が配置されてい
る。前記スペーサ70は、円筒状の上部筒体70aと、
円筒状の下部筒体70bと、これら筒体の上下端部間に
加硫接着したゴム製の薄膜弾性体からなる略円筒状のダ
イアフラム70cとで構成されている。
【0050】前記電磁アクチュエータ52は、外観円筒
形のヨーク52aと、ヨーク52aの上端面側に配設し
た円環状の励磁コイル52bと、ヨーク52aの上面中
央部に磁極を上下方向に向けて固定した永久磁石52c
とで構成されている。また、前記ヨーク52aは、円環
状の第1ヨーク部材53aと、中央円筒部に永久磁石5
2cを固定した第2ヨーク部材53bとで構成されてい
る。
【0051】そして、上部及び下部筒体70a、70b
間のダイアフラム70cは、ヨーク52aの外周に形成
した凹部52dに向かって膨出している。
【0052】また、ヨーク52aの下面と、車体側連結
ボルト60を備えた蓋部材62との間には、振動低減制
御に必要な残留振動を検出するために、荷重センサ64
が介装されている。荷重センサ64としては、圧電素
子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能であり、このセン
サの検出結果は、図1に示すように、残留振動信号eと
してコントローラ25に供給されるようになっている。
【0053】一方、前記電磁アクチュエータ52の上方
には、シール部材固定用のシールリング72と、後述す
る板ばね82の外周部を下側から自由端支持する支持リ
ング74と、電磁アクチュエータ52の永久磁石52c
及び可動部材78間のギャップHを設定するギャップ保
持リング76とが配置されている。これらシールリング
72、支持リング74及びギャップ保持リング76の外
周径は、前述したスペーサ70の上部筒体70aの内周
径と同一寸法に設定されており、ヨーク52aから上方
に突出している上部筒体70a内にシールリング72、
支持リング74及びギャップ保持リング76の全てが内
嵌されている。そして、これらシールリング72、支持
リング74及びギャップ保持リング76の内側には、上
下方向に変位可能となるように可動部材78が配置され
ている。
【0054】この可動部材78は、外観円盤状の隔壁形
成部材78Aと、この隔壁形成部材78Aより大径円盤
状に形成した磁路形成部材78Bとで構成した部材であ
って、電磁アクチュエータ52に対して遠い方に位置す
る隔壁形成部材78Aの軸心にボルト孔80aを形成
し、電磁アクチュエータ52に近い磁路形成部材78B
を貫通した可動部材用ボルト80がボルト孔80aに螺
合することにより、隔壁形成部材78A及び磁路形成部
材78Bを一体に連結した構造となっている。
【0055】隔壁形成部材78A及び磁路形成部材78
B間には、リング状に連続したくびれ部79が画成され
ているが、このくびれ部79に可動部材78を弾性支持
するための板ばね82が収容されている。つまり、板ば
ね82は、中央部に孔部を形成した円盤形状の部材であ
り、この板ばね82の内周部を隔壁形成部材78Aの裏
面中央部の下側から自由端支持し、板ばね82の外周部
を支持リング74のばね支持部74aが下側から自由端
支持しており、これにより可動部材78が装置ケース4
3に板ばね82を介して弾性支持されている。
【0056】前記隔壁形成部材78Aは、流体室84に
面している隔壁部80cの肉厚を薄くし、隔壁部80c
の外周から上方に突出する環状のリブ80bを形成した
部材である。そして、隔壁形成部材78Aの上面と、支
持弾性体32の下面と、オリフィス構成部材37の内周
面とで流体室84が形成され、この流体室84内に流体
が封入される。
【0057】また、流体室84から板ばね82を収容し
ているくびれ部79側への流体の漏洩を防止するため、
隔壁形成部材78Aの外周とシールリング72の内周と
の間には、ゴム状弾性体からなるリング形状のシール部
材86が固定されており、このシール部材86の弾性変
形によって、シールリング72や装置ケース43に対す
る可動部材78の上下方向への相対変位を許容してい
る。
【0058】次に、本実施形態の能動型エンジンマウン
ト20の振動入力減衰作用について簡潔に説明する。本
実施形態の能動型エンジンマウント20は、支持弾性体
32の空洞部32aとオリフィス構成部材37の軸中央
空間とが連通し、オリフィス構成部材37の軸中央空間
及びオリフィス構成部材37と中間筒体36との間の環
状空間が、第2開口部37dを介して連通し、前記環状
空間及びダイアフラム42が膨出している空間が、中間
筒体36に形成した開口部を介して連通しており、これ
ら支持弾性体32の空洞部32aからダイアフラム42
が膨出している空間までの連通路内に、エチレングリコ
ール等の流体が封入されている。
【0059】そして、支持弾性体32の空洞部32aか
らオリフィス構成部材37と中間筒体36との間の環状
空間までの連通路を主流体室84とすると、中間筒体3
6に形成した開口部の近傍をオリフィスとし、この開口
部に対向しながらダイアフラム42に囲まれている領域
を副流体室とした流体共振系が形成されている。この流
体共振系の特性、即ち、オリフィス内の流体の質量と、
支持弾性体32の拡張方向ばね、ダイアフラム42の拡
張方向ばねで決まる特性は、車両停止中のアイドル振動
の発生時、つまり20〜30Hzでエンジンマウント20
A、20Bが加振された場合に高動ばね定数、高減衰力
を示すように調整されている。
【0060】一方、電磁アクチュエータ52の励磁コイ
ル52bは、コントローラ25から例えばハーネスを通
じて供給される電流である駆動信号yに応じて所定の電
磁力を発生するようになっている。コントローラ25
は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回
路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ、ROM,R
AM等の記憶媒体等を含んで構成され、エンジン17で
発生する振動を低減できる能動的な支持力が能動型エン
ジンマウント20に発生するように、能動型エンジンマ
ウント20に対する駆動信号yを生成し出力するように
なっている。
【0061】また、前述したように能動型エンジンマウ
ント20には荷重センサ64が内蔵されており、車体1
8の振動状況を荷重の形で検出して残留振動信号eとし
て出力し、その残留振動信号eが干渉後における振動を
表す信号として例えばハーネスを通じてコントローラ2
5に供給されている。
【0062】ここで、エンジン17で発生するアイドル
振動やこもり音振動は、例えばレシプロ4気筒エンジン
の場合、エンジン回転2次成分のエンジン振動が車体1
8に伝達されることが主な原因であるから、そのエンジ
ン回転2次成分に同期して駆動信号yを生成し出力すれ
ば、車体側振動の低減が可能となる。そこで、本実施の
形態では、エンジン17のクランク軸の回転に同期した
(例えば、レシプロ4気筒エンジンの場合には、クラン
ク軸が180度回転する度に一つの)インパルス信号を
生成し基準信号xとして出力するパルス信号生成器19
を設けていて、その基準信号xが、コントローラ25に
供給されている。
【0063】そして、コントローラ25は、供給される
残留振動信号e及び基準信号xに基づき、適応アルゴリ
ズムの一つである同期式Filtered−X LMS
アルゴリズム(以下、SFXアルゴリズムと称す。)を
実行することにより、能動型エンジンマウント20に対
する駆動信号yを演算し、その駆動信号yを能動型エン
ジンマウント20に出力するようになっている。
【0064】具体的には、コントローラ25は、フィル
タ係数Wi (i=0,1,2,……,I−1:Iはタッ
プ数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、
最新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリ
ング・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタ
Wのフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力す
る一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応
ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適宜更新す
る処理を実行するようになっている。
【0065】ただし、この実施の形態では、SFXアル
ゴリズムにおける評価関数として、下記の(1)式を用
いている。
【0066】 Jm={e(n)}2 +β{y(n)}2 ……(1) つまり、LMSアルゴリズムにあっては、評価関数Jm
が小さくなる方向にフィルタ係数Wi が更新されるので
あるから、上記(1)式の右辺の内容からも明らかなよ
うに、フィルタ係数Wi は、残留振動信号eの自乗値が
小さくなると共に、駆動信号yの自乗値をβ倍した値が
小さくなるように、逐次更新されることになる。そし
て、βは発散抑制係数と称される係数であって、この発
散抑制係数βが大きくなる程、駆動信号yは小さくなる
傾向となる。つまり、発散抑制係数βには制御の発散を
抑制する作用がある。
【0067】そして、収束係数をαとし、上記(1)式
で表される評価関数Jmに基づいてフィルタ係数Wi
更新式を求めると、下記の(2)式のようになる。
【0068】 Wi (n+1)=Wi (n)+2αRT e(n)−2βαy(n) ……(2) そこで、この(2)式中の「2α」を新たな収束係数α
とし、「2βα」を新たな発散抑制係数βk とすれば、
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wiの更新式
は下記の(3)式のようになる。
【0069】 Wi (n+1)=Wi (n)+αRT e(n)−βk y(n) ……(3) ここで、(n),(n+1)が付く項は、サンプリング
時刻n,n+1,における値であることを表している。
また、更新用基準信号RT は、理論的には、基準信号x
を、能動型エンジンマウント20の電磁アクチュエータ
52及び荷重センサ64間の伝達関数Cをモデル化した
伝達関数フィルタC^でフィルタ処理をした値である
が、基準信号xの大きさは“1”であるから、伝達関数
フィルタC^のインパルス応答を基準信号xに同期して
次々と生成した場合のそれらインパルス応答波形のサン
プリング時刻nにおける和に一致する。
【0070】また、理論的には、基準信号xを適応ディ
ジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成
するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるた
め、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力し
ても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ
結果になる。
【0071】そして、コントローラ25は、上記のよう
な駆動信号yの出力処理及び適応ディジタルフィルタW
の各フィルタ係数Wi の更新処理を、基準信号xの最新
のインパルスが生成された時点を基準に開始される固定
サンプリング・クロックに同期して実行するようになっ
ている。ここで、基準信号xのインパルスの生成に伴っ
てクリアされ固定サンプリング・クロックに同期してイ
ンクリメントされるカウンタをi(=0、1、2、…、
L−1)、サンプリング・クロックの一周期内(サンプ
リング周期内)に実行されるフィルタ係数Wj の更新処
理を各フィルタ係数Wj に対して実行するために用いら
れるカウンタをj(=0、1、2、…、L−1)とする
と、上記(3)式に示した各フィルタ係数Wj の更新式
は、それらi,jの関係から、具体的には下記のように
なる。
【0072】 i=j; Wj (n+1)=Wj (n)+αR(0)e(n)−βk y(n) ……(4) i−j<0; Wj (n+1)=Wj (n)+αR(L1+i−j)e(n) ……(5) i−j≧L1; Wj (n+1)=Wj (n)+αR(i−j−L1)e(n) ……(6) 0<i−j<L1; Wj (n+1)=Wj (n)+αR(i−j)e(n) ……(7) 但し、Lは、基準信号xの一周期(制御周期)内に駆動
信号yとして出力されるフィルタ係数Wj の個数(タッ
プ数)であり、基準信号xの周期Tx を固定サンプリン
グ・クロックの周期Tc で割った結果の小数点以下を切
り上げた値である。また、L1は、基準信号xの一周期
内に駆動信号yとして出力されるフィルタ係数Wj の実
際のタップ長の小数点以下まで考慮して求められる整数
タップ長であって、基準信号xの周期Tx を固定サンプ
リング・クロックの周期Tc で割った結果を小数点第一
位で四捨五入した値である。
【0073】つまり、コントローラ25内では、0〜
(L−1)の間で1ずつ増加するカウンタiのそれぞれ
に対して、カウンタjを0から(L−1)にまで1ずつ
増加させる毎に、上記(4)〜(7)のいずれかの更新
式に従ってフィルタ係数Wj が更新されるのである。
【0074】そして、上記(4)〜(7)式を実行する
ためには、上述したタップ数L及び整数タップ長L1を
常に把握しておかなければならないから、基準信号xの
周期Tx の最新の値を常に検出するようになっている。
具体的には、基準信号xの最新のインパルスとその一つ
前のインパルスとの入力間隔を、クロックパルスをカウ
ントする周期測定用タイマによって常時計測し、これに
より周期Tx を取得するようになっている。
【0075】また、コントローラ25は、周期測定用タ
イマの他に、サンプリング・クロックの周期が経過した
ことを認識するためのタイマ(サンプリング・クロック
測定用タイマ)を有していて、最新の基準信号xのイン
パルスが生成された時点から、サンプリング・クロック
の周期と同じ時間を繰り返し測定し、そのサンプリング
・クロックに同期して駆動信号yを出力するようになっ
ている。
【0076】さらに、コントローラ25は、上記のよう
な適応ディジタルフィルタWを用いた振動低減処理を実
行する一方で、制御の発散を検出するための発散検出処
理を実行するようになっている。発散検出処理は、本実
施の形態では、駆動信号yの振幅に基づいて行われるよ
うになっている。具体的には、駆動信号yの一周期内の
振幅が、予め設定してある所定しきい値γを越えている
場合には、制御に発散が生じていると判定するようにな
っている。
【0077】そして、発散が生じていないと判定された
場合には、発散抑制係数βk は現在地を維持したまま、
上記の振動低減処理を繰り返し実行する。
【0078】これに対し、発散が生じていると判定され
た場合には、そのような判定がなされた理由が、現時点
における制御振動の不足(制御振動のレベルが低いこ
と)であるか否かを推定する。そして、上記理由が制御
振動の不足であると推定されることなく、上記発散が生
じているという判定が複数回数(例えば、4回)連続し
た場合には、発散抑制係数βk を大きくなる方向に更新
するようになっている。即ち、発散抑制係数βk は、そ
の添え字k(k=1,2,…,K)に対応して複数K個
設けられていて、その添え字kが大きくなるに従って発
散抑制係数βk は1段階ずつ大きくなる。そこで、発散
が複数回数連続して検出された場合には、その添え字k
をインクリメント(k=k+1;但し、k=Kの場合に
は、インクリメントせずにそのままとする。)して、発
散抑制係数βk を1段階大きな値に更新するようになっ
ている。
【0079】しかし、上記理由が制御振動の不足である
と推定された場合には、コントローラ25は、発散抑制
係数βk を大きくする必要はないと判断し、発散検出処
理で用いられる所定しきい値γを、それまでよりも大き
な値に変更するようになっている。
【0080】なお、上記理由が制御振動の不足であると
推定する手法として、本実施の形態では、最新の一周期
分の駆動信号yと伝達関数フィルタC^とを畳み込んだ
信号yCと、同じ一周期分の残留振動信号eとを対比
し、両信号が同相のときには、上記理由は制御振動の不
足であると推定し、両信号が同相でないとき(逆相の場
合や、両信号の周期自体が一致していない場合等)に
は、上記理由は制御振動の不足であるとは推定しない、
という手法を採用している。
【0081】次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0082】イグニッションスイッチがオンとなって電
源が供給されるようになると、コントローラ25は、所
定の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ52に駆動
信号yを出力し、能動型エンジンマウント20に振動を
低減し得る能動的な支持力を発生させるようになる。こ
れをコントローラ25内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである図4に従って具体的に説明する。
【0083】即ち、電源が供給されると、コントローラ
25は所定の初期設定を行い、イグニッションスイッチ
がオンになった後に、運転者がエンジンキーをさらに回
すと、エンジン17が起動し、基準信号xがコントロー
ラ25に供給されるようになる。そして、基準信号xの
インパルスが確認されたら、基準信号xの立ち上がりが
検出されて基準信号xの信号周期TX が検出され、その
周期Tx と固定サンプリング・クロックの周期Tc とに
基づき、ステップ101においてタップ数L及び整数タ
ップ長L1が演算される。なお、図4の処理が開始され
てからステップ101の処理の実行回数が2以上の場合
には、後述するカウンタiの値に基づいてタップ数Lを
求め、また、そのカウンタiの値とサンプリング・クロ
ック測定用タイマの値とに基づいて整数タップ長L1を
求めることも可能である。
【0084】次いで、ステップ102に移行し、カウン
タiが零クリアされた後に、ステップ103に移行し、
サンプリング・クロック測定用タイマがクリア・スター
トされる。そして、ステップ104に移行し、適応ディ
ジタルフィルタWのi番目のフィルタ係数Wi が駆動信
号yとして出力される。
【0085】次いで、ステップ105に移行し、カウン
タiが0か否かが判定され、この判定が「YES」の場
合には、制御周期(基準信号xの周期)が始まった直後
であると判断して、一制御周期が始まったことに伴う初
期処理を実行すべく、ステップ106に移行し、伝達関
数フィルタC^に基づき更新用基準信号RT が演算され
る。なお、ステップ106では、基準信号xの新たな一
周期分の更新用基準信号R(更新用基準信号RT は、更
新用基準信号Rの転置行列である。)がまとめて演算さ
れる。
【0086】ステップ105の判定が「NO」の場合並
びにステップ106の処理を終えた場合には、ステップ
107に移行し、残留振動信号eが読み込まれる。そし
て、ステップ108に移行して、カウンタjが零クリア
される。
【0087】そして、ステップ109に移行し、適応デ
ィジタルフィルタWのj番目のフィルタ係数Wj が上記
(4)〜(7)式に従って更新される。
【0088】次いで、ステップ110に移行し、基準信
号xの次のインパルスが入力されているか否かを判定
し、ここで基準信号xが入力されていないと判定された
場合には、適応ディジタルフィルタWの次のフィルタ係
数の更新又は駆動信号yの出力処理を実行すべくステッ
プ111に移行する一方、ステップ110で基準信号x
の新たなインパルスが入力されたと判断された場合に
は、ステップ101に戻って、上述した処理を繰り返し
実行する。
【0089】ステップ111では、全フィルタ係数Wj
に対する更新演算が完了しているか否か、つまりカウン
タjがタップ数L(正確には、カウンタjは0からスタ
ートするため、タップ数Lから1を減じた値)に達して
いるか否かが判定され、この判定が「NO」の場合に
は、ステップ112に移行し、カウンタjをインクリメ
ントした後に、ステップ109に戻って上述した処理を
繰り返し実行する。
【0090】しかし、ステップ111の判定が「YE
S」の場合には、適応ディジタルフィルタWのフィルタ
係数Wj のうち、駆動信号yとして必要な数のフィルタ
係数の更新処理が完了したと判断できるから、ステップ
113に移行してカウンタiをインクリメントする。
【0091】次いで、ステップ114に移行し、発散検
出処理を実行する。即ち、最新の一周期分の駆動信号y
の振幅を検索し、その振幅と、所定しきい値γとを比較
し、振幅が所定しきい値γよりも大きい場合には、発散
を検出したと判断するようになっている。なお、所定し
きい値γには、この図4の処理が開始された直後に、予
め設定した二つの値γ1 とγ2 とのうち、小さい方の値
γ1 が記憶されるようになっている。
【0092】そして、ステップ115に移行し、ステッ
プ114で発散が検出されたか否かを判断し、検出され
ていなければステップ116に移行する。ステップ11
6では、発散の連続検出回数をカウントするためのカウ
ンタdをゼロクリアし、次いでステップ117に移行
し、上記ステップ103でクリア・スタートさせたサン
プリング・クロック測定用タイマの値が固定サンプリン
グ・クロックの周期TCに達するまで待機した後、上記
ステップ103に戻って上述した処理を繰り返し実行す
る。
【0093】しかし、ステップ114で発散が検出され
ている場合には、ステップ115の判定が「YES」と
なって、ステップ118に移行する。ステップ118で
は、カウンタdをインクリメントし、次いでステップ1
19に移行し、ステップ114の処理において発散が検
出された理由が、制御振動の不足であるか否かを推定す
るための制御力不足推定処理を実行する。
【0094】制御力不足推定処理の具体的な内容は、本
実施の形態では、図5に示すようになっている。即ち、
制御力不足推定処理が実行されると、先ず、そのステッ
プ201において、直前の一周期分の駆動信号yと伝達
関数フィルタC^とを畳み込むことにより、信号yCを
演算し、次いで、ステップ202に移行し、一周期分の
数列である信号yCのうちの最大値のタップ番号T
max.yCと、最小値のタップ番号Tmin.yCとを検索する。
【0095】次いで、ステップ203に移行し、最新の
一周期分の残留振動信号eのうちの最大値のタップ番号
max.e と、最小値のタップ番号Tmin.e とを検索す
る。
【0096】そして、ステップ204に移行し、ステッ
プ202で求めたタップ番号とステップ203で求めた
タップ番号とを比較し、最大値同士のタップ番号が一致
し、且つ、最小値同士のタップ番号が一致しているか否
かを判定する。つまり、 Tmax.yC=Tmax.e 、且つ、Tmin.yC=Tmin.e の真偽を判定する。
【0097】このステップ204の判定が「YES」の
場合、信号yCと残留振動信号eとは同相であると判定
できるから、ステップ205に移行し、上記理由は制御
振動の不足であると推定する。しかし、ステップ204
の判定が「NO」の場合、両信号は同相であると判定で
きないから、ステップ206に移行し、上記理由は制御
振動の不足であるとは推定しない。ステップ205又は
206を経たら、図4の処理に復帰し、ステップ120
に移行する。
【0098】ステップ120では、ステップ119の結
果に基づき、上記理由が制御振動の不足であると推定さ
れている場合にはステップ121に移行し、推定されて
いない場合にはステップ122に移行する。
【0099】ステップ121に移行したら、ステップ1
14の発散検出処理で用いる所定しきい値γを、当初の
値γ1 よりも大きなγ2 に変更する。つまり、ステップ
120の判定が「YES」となった場合には、駆動信号
yの振幅が大きく制御が発散傾向にあるとステップ11
4、115で判定はされているものの、駆動信号yの振
幅が大きくなったのは、本来の発散が生じたのではな
く、何らかの理由により制御振動のレベルが振動のレベ
ルに比べて相対的に小さくなったからであり、従って、
かかる状態を制御の発散状態として認識し続ける必要は
ないと判断できるからである。
【0100】そして、所定しきい値γが大きな値に変更
されれば、駆動信号yが多少大きくなった程度では、ス
テップ114、115で発散が生じていると判定されな
くなるから、次回以降のこの図4の処理を実行すると、
ステップ115からステップ116に移行し、カウンタ
dがクリアされるようになる。
【0101】しかし、ステップ120の判定が「NO」
の場合には、ステップ114、115で発散が生じてい
ると判定されたのは、本来の発散が生じたからだという
可能性が高くなる。そこで、ステップ122移行し、カ
ウンタdが所定回数d0 (例えば、d0 =4)に達した
か否かを判定し、この判定が「NO」の場合には、ステ
ップ117に移行する。そして、図4の処理を繰り返し
実行する間、ステップ115の判定が「YES」、ステ
ップ120の判定が「NO」の状態が所定回数d0 連続
すれば、ステップ122の判定が「YES」となり、ス
テップ123に移行する。
【0102】ステップ123では、発散抑制係数βk
の添え字kをインクリメントし、ステップ116に移行
する。なお、ステップ123に移行した際に添え字kが
既に最大値Kである場合には、添え字kをインクリメン
トせずにステップ116に移行する。
【0103】このような図4の処理を繰り返し実行する
結果、コントローラ25から能動型エンジンマウント2
0の電磁アクチュエータ52に対しては、基準信号xが
入力された時点から、固定サンプリング・クロックに同
期して、適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi
が順番に駆動信号yとして供給される。
【0104】この結果、励磁コイル52bに駆動信号y
に応じた磁力が発生するが、磁路形成部材78Bには、
すでに永久磁石52cによる一定の磁力が付与されてい
るから、その励磁コイル52bによる磁力は永久磁石5
2cの磁力を強める又は弱めるように作用すると考える
ことができる。このように、永久磁石52cの磁力が強
まったり弱まったりすると、可動部材78が正逆両方向
に変位し、可動部材78が変位すれば、主流体室84の
容積が変化し、その容積変化によって支持弾性体32の
拡張ばねが変形するから、この能動型エンジンマウント
20に正逆両方向の能動的な支持力が発生するのであ
る。
【0105】そして、駆動信号yとなる適応ディジタル
フィルタWの各フィルタ係数Wi は、SFXアルゴリズ
ムに従った上記(4)〜(7)式によって逐次更新され
るため、ある程度の時間が経過して適応ディジタルフィ
ルタWの各フィルタ係数Wiが最適値に収束した後は、
駆動信号yが能動型エンジンマウント20に供給される
ことによって、エンジン17から能動型エンジンマウン
ト20を介して車体18側に伝達されるアイドル振動や
こもり音振動が低減されるようになる。
【0106】しかも、発散が検出され且つその理由が制
御振動の不足であると推定されなかった状態が所定回数
0 繰り返され、ステップ123の処理が実行されれ
ば、発散抑制係数βk が増加方向(発散抑制方向)に更
新されるから、上記(4)式の右辺第3項は、発散抑制
係数βk が更新される前よりも大きくなる。すると、フ
ィルタ係数Wi は、更新演算される際に原点(=0)に
近づく傾向が強くなるから、制御の発散によって増大傾
向にあったフィルタ係数Wi が小さくなり、それに伴っ
て駆動信号yが小さくなって、能動型エンジンマウント
1で発生する制御振動が小さくなる。そして、発散抑制
係数βk の増加方向への更新は、ステップ122の判定
が「YES」となる限り繰り返し行われるから、発散が
有効に抑制されるようになるまで、その発散抑制係数β
k は増加することになる。
【0107】また、ステップ114、115によって制
御の発散が検出されたと判断されても、制御が発散して
いると判断された理由が制御振動の不足であるという推
定がステップ119、120でなされれば、ステップ1
21の処理が実行され、それ以降は、ステップ114に
おいて制御が発散されていると判断され難くなる。その
結果、発散抑制係数βk が必要もないのに大きくなる可
能性を低減できるのである。
【0108】これを、具体的な波形図を伴って説明す
る。即ち、図6は、駆動信号yの変化の様子を横軸時間
で示したものであって、最初の4周期程の間は駆動信号
yの振幅は所定しきい値γ1 を越えていないから、ステ
ップ115の判定は「NO」である。しかし、何らかの
理由により駆動信号yの振幅が大きくなり、駆動信号y
が所定しきい値γ1 を越えるようになると、ステップ1
14、115の処理は、駆動信号yの一周期毎に実行さ
れるようになっているから、駆動信号yが所定しきい値
γ1 を越えた直後である例えば時刻t1 にステップ11
4、115の処理が実行される結果、ステップ115の
判定が「YES」となって、ステップ118以降の処理
が実行されるようになる。
【0109】そして、制御が発散していると判断した理
由が、本来の発散である場合には、ステップ115→1
18→…→122→…、という処理が繰り返し実行され
るから、例えば時刻t2 においてステップ122の判定
が「YES」となり、ステップ123の処理が実行さ
れ、発散抑制係数βk が増加方向に変更され、発散が抑
制される。
【0110】一方、ステップ120の判定が「YES」
となった場合には、ステップ121の処理が実行される
から、所定しきい値γが大きな値γ2 に変更されるし、
ステップ121からステップ116に移行するから、ス
テップ123の処理は実行されず、従って、発散抑制係
数βk が発散抑制方向に変化することは禁止されてい
る。
【0111】そして、駆動信号yの振幅が図6に示すよ
うに新たな所定しきい値γ2 未満であれば、それ以降
は、ステップ115の判定が「NO」となり、ステップ
118以降の処理は実行されないし、仮に過大な駆動信
号yが生成されてステップ115の判定が「YES」と
なっても、その過大な駆動信号yが生成された理由がや
はり制御振動の不足であるとステップ119で推定され
れば、ステップ120の判定が「NO」となってステッ
プ123の処理は実行されない、つまり発散抑制係数β
k が発散抑制方向に変化することは禁止されるから、制
御振動が不足している状態であるにも関わらず、大きな
駆動信号yが生成され難い状況に陥ることが回避され、
良好な振動低減制御が実行されるのである。
【0112】なお、所定しきい値γを比較的大きな値γ
2 に変更したままでは、本来の発散が発生した場合、そ
の発散により所定しきい値γ2 を越えるような大きな駆
動信号yが生成されるような状況に陥らなければ、発散
を抑制する処理が働かないことになる。そこで、例え
ば、所定しきい値γを大きな値γ2 に設定した後に、駆
動信号yの振幅が元の所定しきい値γ1 を下回るような
状況が所定時間連続して計測された場合(図6の時刻t
3 のような場合)に、所定しきい値γを小さな値γ1
再設定するようにすることが望ましい。
【0113】ここで、本実施の形態では、エンジン17
が振動源に対応し、能動型エンジンマウント20が制御
振動源に対応し、パルス信号生成器19が基準信号生成
手段に対応し、荷重センサ64が残留振動検出手段に対
応し、図4の処理において、所定のサンプリング・クロ
ックに同期してステップ104でフィルタ係数Wi を駆
動信号yとして出力する処理が駆動信号生成手段に対応
し、図4のステップ109の処理がフィルタ係数更新手
段に対応し、ステップ114の処理が発散検出手段に対
応し、ステップ118、122及び123の処理が発散
抑制手段に対応し、ステップ119の処理(図5の処
理)が制御力不足推定手段に対応し、ステップ121の
処理がしきい値変更手段に対応し、ステップ120の判
定が「YES」の場合にステップ123の処理を実行す
ることなくステップ116に移行する処理が発散抑制係
数調整手段に対応する。
【0114】図7及び図8は本発明の第2の実施の形態
を示す図であって、図7は図1と同様の車両概略側面
図、図8は図5と同様の判断力不足推定処理の概要を示
すフローチャートである。なお、振動低減処理の内容は
上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及び
説明は省略するとともに、上記第1の実施の形態と同一
の構成・処理には同じ符号を付し、その重複する説明も
省略する。
【0115】即ち、本実施の形態では、コントローラ2
5には、車速を検出する車速センサ90から車速検出信
号Vが供給されるとともに、自動変速機(図示せず)の
シフト位置(P(パーキング),R,N(ニュートラ
ル),D,2速,1速等)を検出するシフト位置センサ
からシフト位置検出信号Sが供給されるようになってい
る。
【0116】そして、コントローラ25は、発散が検出
された理由が制御振動の不足であるか否かの推定を、車
速検出信号V(以下、車速Vと称す。)及びシフト位置
検出信号S(以下、シフト位置Sと称す。)に基づいて
行うようになっている。
【0117】具体的には、制御が発散していると判断さ
れた場合であっても、車速Vが零であり(つまり、車両
が停車しており)、且つ、シフト位置SがRレンジやD
レンジ等のように駆動輪に駆動力を伝達する位置にある
ときには、発散であると判断した理由は、制御振動が不
足しているからだと推定するようになっている。つま
り、図8に示す制御力不足推定処理が実行されると、先
ずステップ301において車速Vが読み込まれ、次いで
ステップ302に移行し、車速Vが0であるか否かを判
定する。このステップ302の判定が「NO」の場合に
は、上記理由が制御振動の不足であると推定できないと
判断し、ステップ206に移行してから、今回のこの図
8の処理を終了する。
【0118】これに対し、ステップ302の判定が「Y
ES」の場合には、ステップ303に移行し、シフト位
置Sを読み込み、次いでステップ304に移行し、その
シフト位置SがR,D,2及び1のいずれかであるか否
かを判定する。このステップ304の判定が「NO」の
場合には、上記理由が制御振動の不足であると推定でき
ないと判断し、ステップ206に移行してから、今回の
この図8の処理を終了する。
【0119】そして、ステップ304の判定が「YE
S」の場合には、上記理由は制御振動の不足であると推
定できると判断し、ステップ205に移行してから、今
回のこの図8の処理を終了する。
【0120】このような制御力不足推定処理が実行され
れば、上記理由が制御振動の不足であるか否かを、比較
的簡易且つある程度の精度で推定することができる。
【0121】つまり、車両が停車中であって、且つ、シ
フト位置がDレンジ等に入ったままであると、例えば横
置に搭載したエンジン17であれば、車両前後方向の後
側に配置されたエンジンマウントには、通常よりも大き
な荷重が加わることになる。このため、そのエンジンマ
ウントが能動型エンジンマウント1である場合、通常時
よりも大きな制御振動を出力しなければ、エンジン振動
を有効に打ち消すことができず、残留振動が大きくな
り、それを受けて駆動信号yの振幅も大きくなるという
結果を招く。その過程において、駆動信号yの振幅が所
定しきい値γを越えると制御が発散したと判断されるの
であるから、そのように判断されたとしても、車両が停
車中であって且つシフト位置がDレンジ等に入ったまま
であることが確認されれば、発散と判断された理由は制
御振動の不足であったと、比較的高い確率で推定するこ
とができるのである。
【0122】よって、本実施の形態であっても、上記第
1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0123】ここで、本実施の形態では、図8に示す処
理が制御力不足推定手段に対応し、その他の対応関係は
上記第1の実施の形態と同様である。
【0124】図9及び図10は本発明の第3の実施の形
態を示す図であって、図9は図1と同様の車両概略側面
図、図10は図5と同様の判断力不足推定処理の概要を
示すフローチャートである。なお、振動低減処理の内容
は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図示及
び説明は省略するとともに、上記第1の実施の形態と同
一の構成・処理には同じ符号を付し、その重複する説明
も省略する。
【0125】即ち、本実施の形態では、コントローラ2
5には、アクセルの開度を検出するアクセル開度センサ
92からアクセル開度検出信号δが供給されるようにな
っており、コントローラ25は、発散が検出された理由
が制御振動の不足であるか否かの推定を、そのアクセル
開度検出信号δ(以下、アクセル開度δと称す。)に基
づいて行うようになっている。
【0126】具体的には、制御が発散していると判断さ
れた場合であっても、アクセル開度δが所定しきい値δ
0 (車両が急加速中であると判断できるアクセル開度の
値)よりも大きいとき、つまり車両が急加速中であると
判定できるときには、発散であると判断した理由は、制
御振動が不足しているからだと推定するようになってい
る。つまり、図10に示す制御力不足推定処理が実行さ
れると、先ずステップ401においてアクセル開度δが
読み込まれ、次いでステップ402に移行し、アクセル
開度δが所定しきい値δ0 を越えているか否かを判定す
る。このステップ402の判定が「NO」の場合には、
上記理由が制御振動の不足であると推定できないと判断
し、ステップ206に移行してから、今回のこの図10
の処理を終了する。
【0127】そして、ステップ402の判定が「YE
S」の場合には、上記理由は制御振動の不足であると推
定できると判断し、ステップ205に移行してから、今
回のこの図10の処理を終了する。
【0128】このような制御力不足推定処理が実行され
れば、上記理由が制御振動の不足であるか否かを、比較
的簡易且つある程度の精度で推定することができる。
【0129】つまり、車両が急加速中であれば、例えば
横置に搭載したエンジン17であれば、車両前後方向の
後側に配置されたエンジンマウントには、通常よりも大
きな荷重が加わることになる。このため、そのエンジン
マウントが能動型エンジンマウント1である場合、通常
時よりも大きな制御振動を出力しなければ、エンジン振
動を有効に打ち消すことができず、残留振動が大きくな
り、それを受けて駆動信号yの振幅も大きくなるという
結果を招く。その過程において、駆動信号yの振幅が所
定しきい値γを越えると制御が発散したと判断されるの
であるから、そのように判断されたとしても、車両が急
加速中であることが確認されれば、発散と判断された理
由は制御振動の不足であったと、比較的高い確率で推定
することができるのである。
【0130】よって、本実施の形態であっても、上記第
1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0131】ここで、本実施の形態では、図10に示す
処理が制御力不足推定手段に対応し、その他の対応関係
は上記第1の実施の形態と同様である。
【0132】図11及び図12は本発明の第4の実施の
形態を示す図であって、図11は図1と同様の車両概略
側面図、図12は図5と同様の判断力不足推定処理の概
要を示すフローチャートである。なお、振動低減処理の
内容は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図
示及び説明は省略するとともに、上記第1の実施の形態
と同一の構成・処理には同じ符号を付し、その重複する
説明も省略する。
【0133】即ち、本実施の形態では、コントローラ2
5には、車両に搭載されたバッテリ(図示せず)の電圧
を検出する電圧計93から、電圧検出信号VTが供給さ
れるようになっており、コントローラ25は、発散が検
出された理由が制御振動の不足であるか否かの推定を、
その電圧検出信号VT(以下、電圧VTと称す。)に基
づいて行うようになっている。
【0134】具体的には、制御が発散していると判断さ
れた場合であっても、電圧VTが所定しきい値VT
0 (能動型エンジンマウント20の駆動回路を正常に駆
動させることができる範囲の下限電圧値)よりも低いと
きには、発散であると判断した理由は、制御振動が不足
しているからだと推定するようになっている。つまり、
図12に示す制御力不足推定処理が実行されると、先ず
ステップ501において電圧VTが読み込まれ、次いで
ステップ502に移行し、電圧VTが所定しきい値VT
0 を下回っているか否かを判定する。このステップ50
2の判定が「NO」の場合には、上記理由が制御振動の
不足であると推定できないと判断し、ステップ206に
移行してから、今回のこの図12の処理を終了する。
【0135】そして、ステップ502の判定が「YE
S」の場合には、上記理由は制御振動の不足であると推
定できると判断し、ステップ205に移行してから、今
回のこの図12の処理を終了する。
【0136】このような制御力不足推定処理が実行され
れば、上記理由が制御振動の不足であるか否かを、比較
的簡易且つある程度の精度で推定することができる。
【0137】つまり、バッテリ電圧が低下していると、
能動型エンジンマウント20の駆動回路への入力電圧も
低くなるから、その駆動回路に同じ大きさの駆動信号y
を供給しても、能動型エンジンマウント20に発生する
制御振動は、正常時よりも小さくなってしまう。このた
め、エンジン振動を有効に打ち消すことができず、残留
振動が大きくなり、それを受けて駆動信号yの振幅も大
きくなるという結果を招く。その過程において、駆動信
号yの振幅が所定しきい値γを越えると制御が発散した
と判断されるのであるから、そのように判断されたとし
ても、バッテリ電圧が低下していることが確認されれ
ば、発散と判断された理由は制御振動の不足であった
と、比較的高い確率で推定することができるのである。
【0138】よって、本実施の形態であっても、上記第
1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0139】ここで、本実施の形態では、図12に示す
処理が制御力不足推定手段に対応し、その他の対応関係
は上記第1の実施の形態と同様である。
【0140】図13及び図14は本発明の第5の実施の
形態を示す図であって、図13は図1と同様の車両概略
側面図、図14は図5と同様の判断力不足推定処理の概
要を示すフローチャートである。なお、振動低減処理の
内容は上記第1の実施の形態と同様であるため、その図
示及び説明は省略するとともに、上記第1の実施の形態
と同一の構成・処理には同じ符号を付し、その重複する
説明も省略する。
【0141】即ち、本実施の形態では、コントローラ2
5には、能動型エンジンマウント20の雰囲気温度を検
出する温度センサ94から、温度検出信号Tが供給され
るようになっており、コントローラ25は、発散が検出
された理由が制御振動の不足であるか否かの推定を、そ
の温度検出信号T(以下、温度Tと称す。)に基づいて
行うようになっている。
【0142】具体的には、制御が発散していると判断さ
れた場合であっても、温度Tが所定しきい値T0 (能動
型エンジンマウント20内の支持弾性体32のバネ定数
が、常温時に比べて大きくなる温度)よりも低いときに
は、発散であると判断した理由は、制御振動が不足して
いるからだと推定するようになっている。つまり、図1
4に示す制御力不足推定処理が実行されると、先ずステ
ップ601において温度Tが読み込まれ、次いでステッ
プ602に移行し、温度Tが所定しきい値T0を下回っ
ているか否かを判定する。このステップ602の判定が
「NO」の場合には、上記理由が制御振動の不足である
と推定できないと判断し、ステップ206に移行してか
ら、今回のこの図14の処理を終了する。
【0143】そして、ステップ602の判定が「YE
S」の場合には、上記理由は制御振動の不足であると推
定できると判断し、ステップ205に移行してから、今
回のこの図14の処理を終了する。
【0144】このような制御力不足推定処理が実行され
れば、上記理由が制御振動の不足であるか否かを、比較
的簡易且つある程度の精度で推定することができる。
【0145】つまり、能動型エンジンマウント20の雰
囲気温度が低くて、支持弾性体32が常温時よりも硬く
なっていると、同じ大きさの駆動信号yを供給しても、
能動型エンジンマウント20に発生する制御振動は、常
温時よりも小さくなってしまう。このため、エンジン振
動を有効に打ち消すことができず、残留振動が大きくな
り、それを受けて駆動信号yの振幅も大きくなるという
結果を招く。その過程において、駆動信号yの振幅が所
定しきい値γを越えると制御が発散したと判断されるの
であるから、そのように判断されたとしても、温度が低
いことが確認されれば、発散と判断された理由は制御振
動の不足であったと、比較的高い確率で推定することが
できるのである。
【0146】よって、本実施の形態であっても、上記第
1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0147】ここで、本実施の形態では、図14に示す
処理が制御力不足推定手段に対応し、その他の対応関係
は上記第1の実施の形態と同様である。
【0148】なお、上記各実施の形態では、制御が発散
していると判断した理由が、制御振動の不足であると推
定された場合には、制御の発散を判断するための所定し
きい値γを大きくするという処理と、発散抑制係数βk
が増加方向に変更されることを禁止する処理という、二
つの対処を行うようになっているが、コントローラ25
の処理内容としては、例えば、後者の処理のみを実行す
るように構成しても構わない。また、値γ1 、γ2 の選
定にもよるが、前者の処理を実行すれば自動的に後者の
処理も達成される場合もあるから、コントローラ25の
処理の流れとしては、前者のみを構成するようにしても
よい。
【0149】さらには、それら二つの処理以外の処理、
例えば、制御の発散が検出された場合には、取り敢え
ず、発散抑制係数βk の増加方向への変更は許容して
も、発散であると判定された理由が制御振動の不足であ
ると上記各実施の形態におけるのと同様の手法により確
認された場合には、発散抑制係数βk を元の値に戻すよ
うにしても良い。このような対処でも、発散抑制係数β
k を、元の値に戻すべきとき(本来の発散は生じていな
いとき)には戻し、戻すべきでないとき(本来の発散が
生じているとき)には戻さない、ということがより正確
に行えるから、発散抑制作用を大きく損なうことなく、
良好な振動低減効果が得られるという利点がある。かか
る場合、発散抑制係数βk を元に戻すタイミングとして
は、上記理由が制御振動の不足であると推定された直後
であってもよいし、或いは、そのような理由が消滅した
とき(例えば、第2の実施の形態の例であれば、車両が
発進した、又は、シフト位置がP,Nになったとき)で
あってもよい。
【0150】また、上記各実施の形態における制御力不
足推定処理を適宜組み合わせることにより、推定精度を
向上することができる。例えば、上記第1の実施の形態
の処理と第2の実施の形態の処理とをアンド条件として
組み合わせる、上記第1の実施の形態の処理と第3の実
施の形態の処理とをアンド条件として組み合わせる、上
記第1の実施の形態の処理と第4の実施の形態の処理と
をアンド条件として組み合わせる、上記第1の実施の形
態の処理と第5の実施の形態の処理とをアンド条件とし
て組み合わせる、ということが考えられる。その他、上
記第2〜5の実施の形態の処理の何れか二つ以上をオア
条件として組み合わせることも可能であるし、さらに
は、上記第2〜5の実施の形態の処理の何れか二つ以上
をオア条件として組み合わせるとともに、それに上記第
1の実施の形態をアンド条件として組み合わせてもよ
い。
【0151】なお、上記実施の形態においては、残留振
動を能動型エンジンマウント20に内蔵した荷重センサ
64によって検出しているが、これに限定されるもので
はなく、例えば車室内の乗員足元位置にフロア振動を検
出する加速度センサを配設し、その加速度センサの出力
信号を残留振動信号eとしてもよい。
【0152】そして、上記実施の形態においては、本発
明における能動型騒音振動制御装置をエンジン17から
車体18に伝達される振動を低減する車両用の能動型振
動制御装置に適用した場合について説明したが、本発明
の対象はこれに限定されるものではなく、エンジン17
以外で発生する振動を低減するための能動型振動制御装
置であっても本発明は適用可能である。
【0153】また、例えば騒音源としてのエンジン17
から車室内に伝達される騒音を低減する能動型騒音制御
装置であってもよく、かかる能動型騒音制御装置とする
場合には、車室内に制御音を発生するための制御音源と
してのラウドスピーカと、車室内の残留騒音を検出する
残留騒音検出手段としてのマイクロフォンとを設け、上
記実施の形態と同様の演算処理を実行すれば、上記実施
の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0154】さらに、上記各実施の形態では、駆動信号
yを生成するアルゴリズムとしてSFXアルゴリズムを
適用しているが、適用可能なアルゴリズムはこれに限定
されるものではなく、例えば、通常のLMSアルゴリズ
ム、Filtered−XLMSアルゴリズム等であっ
てもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における車両の概略側面図で
ある。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を平面視で示し
た図である。
【図3】図2のA−A矢視断面及びB−B矢視断面図で
ある。
【図4】振動低減処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図5】第1の実施の形態における駆動力不足推定処理
の概要を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態の作用を説明する波形図である。
【図7】第2の実施の形態における車両の概略側面図で
ある。
【図8】第2の実施の形態における駆動力不足推定処理
の概要を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施の形態における車両の概略側面図で
ある。
【図10】第3の実施の形態における駆動力不足推定処
理の概要を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態における車両の概略側面図
である。
【図12】第4の実施の形態における駆動力不足推定処
理の概要を示すフローチャートである。
【図13】第5の実施の形態における車両の概略側面図
である。
【図14】第5の実施の形態における駆動力不足推定処
理の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
17 エンジン(振動源) 18 車体 19 パルス信号生成器(基準信号生成手段) 20 能動型エンジンマウント(制御振動源) 25 コントローラ 52 電磁アクチュエータ 64 荷重センサ(残留振動検出手段)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 適応アルゴリズムに従ってフィルタ係数
    が更新される適応ディジタルフィルタを用いて、騒音又
    は振動の低減制御を実行するとともに、前記フィルタ係
    数の更新式は、制御の発散抑制作用を有する発散抑制係
    数を含んでおり、制御の発散が検出された場合には、前
    記発散抑制係数を発散抑制方向に変化させるようになっ
    ている能動型騒音振動制御装置において、 前記発散が検出された理由は前記制御音又は制御振動の
    不足であると推定できる場合には、前記発散抑制係数が
    発散抑制方向に変化することを抑制する又は前記発散抑
    制係数を発散抑制方向とは逆の方向に変化させるように
    なっていることを特徴とする能動型騒音振動制御装置。
  2. 【請求項2】 騒音源又は振動源から発せられる騒音又
    は振動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御
    音源又は制御振動源と、前記騒音又は振動の発生状態を
    表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、フィルタ
    係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を
    前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制
    御音源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆
    動信号生成手段と、前記干渉後の騒音又は振動を検出し
    残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音
    検出手段又は残留振動検出手段と、適応アルゴリズムに
    従って設定され且つ制御の発散抑制作用を有する発散抑
    制係数を含んでいる更新式を用いて前記適応ディジタル
    フィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手
    段と、前記駆動信号の振幅が所定しきい値を越えた場合
    に制御が発散したと判断する発散検出手段と、この発散
    検出手段が制御の発散を検出した場合に前記発散抑制係
    数を発散抑制方向に変化させる発散抑制手段と、を備え
    た能動型騒音振動制御装置において、 前記駆動信号の振幅が前記所定しきい値を越えた理由は
    前記制御音又は制御振動の不足であるか否かを推定する
    制御力不足推定手段と、前記理由が前記不足であると推
    定された場合に前記所定しきい値を大きくするしきい値
    変更手段と、を設けたことを特徴とする能動型騒音振動
    制御装置。
  3. 【請求項3】 騒音源又は振動源から発せられる騒音又
    は振動と干渉する制御音又は制御振動を発生可能な制御
    音源又は制御振動源と、前記騒音又は振動の発生状態を
    表す基準信号を生成する基準信号生成手段と、フィルタ
    係数可変の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を
    前記適応ディジタルフィルタでフィルタ処理して前記制
    御音源又は制御振動源を駆動する駆動信号を生成する駆
    動信号生成手段と、前記干渉後の騒音又は振動を検出し
    残留騒音信号又は残留振動信号として出力する残留騒音
    検出手段又は残留振動検出手段と、適応アルゴリズムに
    従って設定され且つ制御の発散抑制作用を有する発散抑
    制係数を含んでいる更新式を用いて前記適応ディジタル
    フィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手
    段と、前記駆動信号の振幅が所定しきい値を越えた場合
    に制御が発散したと判断する発散検出手段と、この発散
    検出手段が制御の発散を検出した場合に前記発散抑制係
    数を発散抑制方向に変化させる発散抑制手段と、を備え
    た能動型騒音振動制御装置において、 前記駆動信号の振幅が前記所定しきい値を越えた理由は
    前記制御音又は制御振動の不足であるか否かを推定する
    制御力不足推定手段と、前記理由が前記不足であると推
    定された場合に前記発散抑制係数が発散抑制方向に変化
    することを禁止する又は前記発散抑制係数を発散抑制方
    向とは逆の方向に変化させる発散抑制係数調整手段と、
    を設けたことを特徴とする能動型騒音振動制御装置。
  4. 【請求項4】 前記フィルタ係数更新手段は、前記制御
    音源又は制御振動源と前記残留騒音検出手段又は残留振
    動検出手段との間の伝達関数をモデル化した伝達関数フ
    ィルタを有しており、前記制御力不足推定手段は、前記
    駆動信号及び前記伝達関数フィルタを畳み込んだ信号
    と、前記残留騒音信号又は残留振動信号とが同相のとき
    に、前記理由は前記不足であると推定するようになって
    いる請求項2又は3記載の能動型騒音振動制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項2又は請求項3記載の能動型騒音
    振動制御装置を、振動源としてのエンジンから車体に伝
    達される振動を低減するために、自動変速機を有する車
    両に適用したものであって、前記制御振動源は、前記エ
    ンジンと車体との間に介在するエンジンマウントを構成
    するものであり、前記制御力不足推定手段は、前記車両
    が停車中であり且つ前記自動変速機のシフト位置が駆動
    輪に駆動力を伝達する位置にあるときに、前記理由は前
    記不足であると推定するようになっている能動型騒音振
    動制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項2又は請求項3記載の能動型騒音
    振動制御装置を、振動源としてのエンジンから車体に伝
    達される振動を低減するために車両に適用したものであ
    って、前記制御振動源は、前記エンジンと車体との間に
    介在するエンジンマウントを構成するものであり、前記
    制御力不足推定手段は、前記車両が急加速中又は急減速
    中であるときに、前記理由は前記不足であると推定する
    ようになっている能動型騒音振動制御装置。
  7. 【請求項7】 車両に適用され、前記騒音源又は振動源
    は前記車両のエンジンであり、前記制御音源又は制御振
    動源は電気エネルギにより駆動するようになっており、
    前記制御力不足推定手段は、前記制御音源又は制御振動
    源の駆動回路への入力電圧が所定しきい値以下のとき
    に、前記理由は前記不足であると推定するようになって
    いる請求項2又は3記載の能動型騒音振動制御装置。
  8. 【請求項8】 前記制御力不足推定手段は、前記制御音
    源又は制御振動源の温度が所定温度よりも低いときに、
    前記理由は前記不足であると推定するようになっている
    請求項2又は3記載の能動型騒音振動制御装置。
JP10298583A 1998-10-20 1998-10-20 能動型騒音振動制御装置 Pending JP2000122701A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10298583A JP2000122701A (ja) 1998-10-20 1998-10-20 能動型騒音振動制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10298583A JP2000122701A (ja) 1998-10-20 1998-10-20 能動型騒音振動制御装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000122701A true JP2000122701A (ja) 2000-04-28

Family

ID=17861629

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10298583A Pending JP2000122701A (ja) 1998-10-20 1998-10-20 能動型騒音振動制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000122701A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH09303477A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3336781B2 (ja) 防振支持装置
JP3642189B2 (ja) 車両用能動型騒音振動制御装置
JP2001001767A (ja) 車両用能動型騒音振動制御装置
JP2000122701A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3593886B2 (ja) 車両用能動型振動制御装置
JP3997610B2 (ja) 車両用能動型振動制御装置
JP3598888B2 (ja) 車両用能動型振動制御装置
JP2000120767A (ja) 能動型騒音振動制御装置、車両用能動型振動制御装置及び能動型騒音振動制御方法
JP3695058B2 (ja) 能動型振動制御装置
JP3804275B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3228224B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3624694B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP2000347672A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3743165B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3572444B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3480181B2 (ja) 能動型騒音振動制御装置
JPH09319380A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JPH09317816A (ja) 能動型振動制御装置
JP3829408B2 (ja) 車両用能動型振動制御装置
JP2000003180A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JPH11149291A (ja) 能動型騒音振動制御装置
JP3747619B2 (ja) 能動型振動制御装置
JP3409570B2 (ja) 防振支持装置
JP2000002290A (ja) 能動型騒音振動制御装置及び車両用能動型振動制御装置