JP2001018743A - 車両の乗員保護装置 - Google Patents

車両の乗員保護装置

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JP2001018743A JP11197280A JP19728099A JP2001018743A JP 2001018743 A JP2001018743 A JP 2001018743A JP 11197280 A JP11197280 A JP 11197280A JP 19728099 A JP19728099 A JP 19728099A JP 2001018743 A JP2001018743 A JP 2001018743A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】車両1の左右両側にそれぞれ配設され、側部へ
の衝撃作用時にルーフサイドレール5から下方に向かっ
てエアバッグ10を展開させて、サイドウインドウ7,
9の内側を覆うようにしたカーテンエアバッグ装置Aに
おいて、展開状態のエアバッグ10に前後方向の張力を
作用させて乗員の拘束性を担保しながら、エアバッグ1
0の縫い目を減らして保護性能の向上とコスト低減とを
図る。 【解決手段】エアバッグ10の下部の前端部及び後端部
をそれぞれフロントピラー2及びクォータピラー4に連
結する前側及び後側テザー18,19を設ける。エアバ
ッグ10前端の膨張部10cの後側に貫通孔部10bを
設け、前側テザー18の端部を膨張部10cに対しその
前方右側から巻き付け、孔部10bを通して反対の左側
で前方に折り返し、該左側の膨張部10cに巻き付けて
エアバッグ10の縫い目で一緒に縫い付ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に衝撃が加わ
ったときに乗員を保護するためのエアバッグ等の乗員保
護装置に関し、特に、乗員の頭部を保護しかつ乗員の車
外への飛び出しを防止できるように車両のサイドウィン
ドウに沿って展開するカーテンエアバッグの技術分野に
属する。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の車両の乗員保護装置
として、例えば特開平10−166988号公報に開示
されるように、前後方向に長いエアバッグを車両のフロ
ントピラーからルーフサイドフレームに跨るように折り
畳み状態で格納し、車両の側部に衝撃が作用したとき
に、前記エアバッグをサイドウィンドウに沿って下方に
カーテン状に展開するようにしたものが知られている。
【0003】前記のものでは、エアバッグの前端部が車
両のフロントピラーの下側に連結される一方、後端部が
クォータピラーの上側に連結されるとともに、エアバッ
グが前端部から後端部に亘って略上下方向に延びる複数
の小袋(膨張部)に分割されており、この小袋がエアバ
ッグの展開時にそれぞれ円筒状に膨張することによっ
て、エアバッグが全体としてカーテン状に展開するよう
になっている。そして、そのように複数の小袋がそれぞ
れ膨張することで、エアバッグ全体の前後方向の長さが
短くなり、これにより、自ずと前後方向に張力が作用し
て、乗員の頭部等を拘束できるようになっている。
【0004】さらに、前記従来のものでは、複数の小袋
のうちでも車両のセンターピラーの後側に位置するもの
の直径を特に大きくしており、このことで、例えば、車
室外方へ向かおうとする乗員の頭部をエアバッグにより
拘束するときに、前記大径の小袋がセンターピラーに引
っかかってエアバッグの変位を規制するようになるの
で、乗員の拘束性を一層、高めることができるものであ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来の
カーテンエアバッグでは、エアバッグを複数の小袋に分
けるために縫製しており、その縫い目の付近で十分な緩
衝性能が得られないことから、全体としても乗員の保護
性能が低下するという不具合がある。しかも、縫い目が
多いほどエアバッグの強度も低くなるので、展開時にエ
アバッグが破れて、乗員を保護できなくなる虞れもあ
る。
【0006】また、そのようにエアバッグを縫製する作
業に加えて、その縫い目からのガス漏れを抑えるために
シール剤を塗布する等の対策が必要になり、これらの作
業に多大な労力と時間がかかることから、製造コストの
増大が著しい。
【0007】本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、車両に衝撃が作用し
たときにサイドウィンドウの内側を覆うように展開する
カーテンエアバッグにおいて、該エアバッグを展開時に
前後方向に張らせるための構成に工夫を凝らし、乗員の
拘束性を担保しながら、エアバッグの縫い目を減らして
保護性能の向上とコスト低減とを図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の解決手段では、エアバッグの下部の前後両
端部をそれぞれ車体に連結する連結部材を設けるととも
に、該連結部材の少なくとも一方に、エアバッグの展開
に伴い該連結部材の弛みを吸収する弛み吸収機構を取り
付けた。
【0009】具体的に、請求項1の発明では、車両のサ
イドウィンドウの前方及び後方にそれぞれ前側及び後側
ピラーが配置され、該両ピラーの各上端部を繋ぐように
前後方向に延びるルーフサイドレールが設けられてお
り、前記前側ピラーからルーフサイドレールを経て後側
ピラーに至る範囲内にエアバッグを折り畳んで格納し、
車両の側部へ衝撃が作用したときに、該エアバッグを前
記サイドウインドウの内側を覆うように展開させるよう
にした車両の乗員保護装置を前提とする。そして、前記
エアバッグの上端縁部が少なくとも前記ルーフサイドレ
ールに固定されている一方、前記エアバッグの下部の前
端部をサイドウィンドウよりも前方の車体に連結する前
側連結部材と、前記エアバッグの下部の後端部をサイド
ウィンドウよりも後方の車体に連結する後側連結部材と
を設け、前記前側及び後側連結部材の少なくとも一方
に、前記エアバッグの展開に伴い該連結部材の弛みを吸
収する弛み吸収機構を取り付ける構成とする。
【0010】前記の構成により、主に車両のルーフサイ
ドレールに格納されたエアバッグは、車両の側部へ衝撃
が作用したときに下方へ拡がって、サイドウィンドウの
内側を覆うように展開する。このとき、折り畳まれてい
たエアバッグは全体として上方から下方に移動し、これ
に伴い、該エアバッグの下部に固定されている連結部材
の弛みが弛み吸収機構により吸収されることで、前側及
び後側連結部材によりエアバッグを前後方向に引張っ
て、十分な張力を作用させることができる。これによ
り、従来までのようにエアバッグを複数の小袋に分割す
る必要がなくなるので、乗員に接触する部分の縫い目を
減らして保護性能を高めることができ、また、全体とし
てエアバッグの縫い目を減らすことで、コスト低減が図
られる。
【0011】請求項2記載の発明では、弛み吸収機構
は、エアバッグの前端及び後端の少なくとも一方に設け
られ、該エアバッグの展開時に膨張する膨張部を有し、
連結部材のエアバッグ側の端部を前記膨張部において少
なくとも左右方向に膨張する部分に固定するものとす
る。このことで、エアバッグの展開時にその端部に設け
られた膨張部が膨張すると、該膨張部に固定された連結
部材の端部は少なくとも左右方向に変位することにな
り、その分、前後方向の長さが短くなって弛みが吸収さ
れる。
【0012】請求項3の発明では、弛み吸収機構は、エ
アバッグの前端及び後端の少なくとも一方に設けられ、
該エアバッグの展開時に膨張する膨張部と、エアバッグ
の前記前記膨張部よりも中央部寄りの部位に設けられた
左右方向の貫通孔部とを有し、連結部材のエアバッグ側
の端部を、前記膨張部の左右いずれか一側から前記孔部
を通って反対側に延ばし、該反対側の膨張部に巻き付け
て固定するものとする。
【0013】このことで、エアバッグの展開時にその端
部の膨張部が膨張すると、該膨張部により連結部材の端
部が大きく巻き取られることになり、該連結部材の弛み
が大きくてもこれを不足なく吸収して、エアバッグに十
分な張力を作用させることができる。また、前記連結部
材からエアバッグへの引張力は膨張部の周囲に分散して
作用するようになるので、荷重の集中を回避して、エア
バッグの破損を防止できる、請求項4の発明では、弛み
吸収機構を連結部材と車体との間に設けるものとする。
こうすれば、弛み吸収機構を設けるためにエアバッグに
加工を施す必要がないので、その加工のためにエアバッ
グの縫い目が増えたり、エアバッグの構造が複雑になる
ことがなくなり、従って、エアバッグの保護性能の低下
やコスト増大を防止できる。
【0014】請求項5の発明では、請求項4の発明にお
ける連結部材を、エアバッグの格納時に該連結部材のエ
アバッグ側の端部が車体側の端部よりも上方に位置する
ように配置し、弛み吸収機構は、エアバッグの展開に伴
い前記連結部材のエアバッグ側の端部が下方へ移動する
ときに、該連結部材を折れ曲がった状態になるようにガ
イドするガイド部材を備えるものとする。
【0015】このことで、連結部材のエアバッグ側の端
部は、エアバッグの格納時には車体側の端部よりも上方
に位置する一方、エアバッグの展開に伴い下方に移動す
るので、該エアバッグの展開状態ではその格納状態より
も連結部材の両端部間の距離が短くなり、弛みを生じる
ことになる。これに対しこの発明では、エアバッグの展
開に伴い前記連結部材のエアバッグ側の端部が下方へ移
動するときに、該連結部材がガイド部材によりガイドさ
れて折れ曲がった状態になるので、連結部材の弛みを吸
収できる。
【0016】請求項6の発明では、請求項5の発明にお
けるガイド部材に、エアバッグの展開状態で連結部材を
車室内方に押圧する土手部を設けるものとする。このこ
とで、エアバッグが展開した状態で、連結部材がその途
中で土手部により押圧されて折れ曲がった状態になり、
これにより、連結部材の弛みが吸収される。また、連結
部材を介してエアバッグ全体が車室内方に付勢されるの
で、乗員の拘束性を一層、高めることができる。
【0017】請求項7の発明では、連結部材のエアバッ
グ側の端部を、エアバッグの縫い目或いは縫い目の近傍
で該エアバッグに縫い付けるものとする。こうすれば、
エアバッグは縫い目の付近では元々、緩衝性能が低いの
で、その付近に連結部材の端部を縫いつけても、そのこ
とによってエアバッグの緩衝性能が低下することはな
い。さらに、連結部材をエアバッグの縫い目で一緒に縫
い合わせるようにすれば、縫製に起因するエアバッグの
強度低下を回避できる。
【0018】請求項8の発明では、前側及び後側連結部
材をエアバッグの格納時にはピラーと該ピラーの内装部
材との間に収納するものとする。こうすることで、連結
部材が内装部材により隠蔽されて、商品性が向上する。
【0019】請求項9の発明では、車両は前後方向に複
数の座席を有し、前側座席よりも前方に配置されたフロ
ントピラーと、前記前側座席の後方に位置する後側座席
の略側方から後方にかけて配置されたクォータピラーと
を備えるものとし、前側ピラーは前記フロントピラーで
あり、また、後側ピラーは前記クォータピラーであり、
エアバッグは、前記フロントピラー及びクォータピラー
の間に配置されたサイドウインドウを覆うように展開さ
れるものとする。このことで、エアバッグは車両の前側
方向に極めて長いものになり、自ずと左右方向の拘束性
が低下するので、連結部材の弛みを吸収してエアバッグ
に前後方向の張力を作用させることが、乗員の拘束性を
高める上で極めて有効な作用効果を奏する。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基いて説明する。
【0021】(実施形態1)図1は、本発明の実施形態
1に係るカーテンエアバッグ装置(乗員保護装置)Aを
示す。このカーテンエアバッグ装置Aは3ボックスタイ
プの乗用車両1の右側サイドボディに配設され、該車両
1の右側面に所定以上の大きさの衝撃が作用したとき
に、図示の如く展開して乗員を保護するものである。
尚、図示しないが、このカーテンエアバッグ装置Aは車
両の左側サイドボディにも同様に配設されている。
【0022】前記車両1の右側サイドボディには前側
(図の左側)から順に、図外のボンネットに連なるフロ
ントピラー2と、センターピラー3と、クォータピラー
4とが配設され、該フロントピラー2、センターピラー
3及びクォータピラー4の各上端部を繋ぐように、前後
方向に延びるルーフサイドレール5が架設されている。
また、前記フロントピラー2とセンターピラー3の間に
はフロントドア6及びフロントサイドウィンドウ7が、
また、センターピラー3とクォータピラー4との間には
リアドア8及びリアサイドウィンドウ9がそれぞれ配置
されている。
【0023】前記ルーフサイドレール5の前端部からク
ォータピラー4に跨る範囲には、図2に示すように、エ
アバッグ10が折り畳まれて格納されている。このエア
バッグ10は、2枚のシートを周縁部で縫合して大きな
袋状としたものであり、図1に示す展開状態のときに側
方から見ると、前後方向に長くかつ前端縁部が上下方向
に略真直ぐに延びる形状である一方、後端縁部は下側に
進むほど後側に延びる傾斜部とされている。そして、該
傾斜部の下端部に開口部が設けられ、この開口部に樹脂
製のホース11が気密状態で挿入されている。このホー
ス11は、点火部と爆薬とを内蔵した円筒管状のインフ
レータ12に接続される一方、エアバッグ10の内部に
その上端縁部に沿って前端部まで延びるように配設され
ている。また、このホース11の途中には複数のガス供
給孔が設けられており、前記インフレータ12からの高
圧ガスはホース11の供給孔からエアバッグ10内に万
遍なく供給されるようになっている。
【0024】また、前記エアバッグ10の上端縁部に
は、前端部から後端部に亘って略一定の間隔を空けて、
6つの取付金具13,13,…が配設されている。この
各取付金具13は、図3に詳しく示すように、例えば鋼
板を折り曲げてエアバッグ10の上端縁部とホース11
とを挟持するように形成され、ボルト14によりルーフ
サイドレール5のインナパネル5aに締結されている。
すなわち、エアバッグ10はその上端縁部を取付金具1
3,13,…によりルーフサイドレール5に固定され、
その下側に折り畳まれた状態で、該ルーフサイドレール
5とルーフトリム16との間に収納されている。尚、同
図において、17は、ルーフインナパネル5a及びルー
フアウタパネル5bの接合フランジ部を被覆するシーミ
ングウエルトであり、このシーミングウエルト17に
は、ルーフトリム16の端縁部に係合して保持する突起
部17aが設けられている。
【0025】そして、車両1の右側面に衝撃が作用し
て、図示しないセンサからインフレータ12に点火信号
が入力されると、該インフレータ12から供給された高
圧ガスにより膨張したエアバッグは、図4及び図5にも
示すように、ルーフトリム16を押し開いて下方に展開
し、車両1の乗員の頭部を拘束して保護するとともに、
乗員の車外への飛び出しを防止するようになる。尚、図
1及び図5にそれぞれ示すように、エアバッグ10の中
央部よりもやや後側には、エアバッグ10の左右のシー
トを膨張しないように互いに縫い合わせた非膨張領域1
0aが設けられている。このように、乗員に接触しない
部分に非膨張領域を設けることで、エアバッグ10の容
積を抑えて展開に要する時間を短縮することができ、装
置全体の小型化も図られる。
【0026】また、一般的に、前後に長いエアバッグ1
0が展開時に左右方向に大きく拡がると、このときにエ
アバッグ10が乗員に向かって展開して、乗員に接触し
てしまう虞れがあるが、前記のように非膨張領域10a
を設けることで、エアバッグ10の左右方向への膨張を
適度に抑制してそのような弊害を回避できる。
【0027】一方、前記エアバッグ10の下側の前後両
端部には、それぞれ展開状態のエアバッグ10を前後方
向に引張るためのテザー18,19(前側及び後側連結
部材)が配設されている。すなわち、エアバッグ10の
前端部には前側テザー18の一端部が取り付けられ、こ
の前側テザー18の他端部はフロントピラー2の下端側
に固定されている。詳しくは図6に示すように、前側テ
ザー18のピラー側の端部はバックル20に固定されて
おり、このバックル20がカラー21と一体的にボルト
22の回りに回動自在に取り付けられるとともに、この
ボルト22によりフロントピラー2のインナパネル2a
の内面に固定されている。これにより、前側テザー18
は、エアバッグ10の格納状態では図2に示すようにフ
ロントピラー2に沿って配置される一方、エアバッグ1
0の展開に伴い該エアバッグ10側の端部が下方に移動
することで、ボルト22の回りに回動し、図1及び図8
に示すように前方向後に延びた状態になる。
【0028】また、エアバッグ10後端の傾斜部の途中
には、取付金具13が1つ配設されており、該傾斜部の
下端、即ちホース11が挿入されている開口部の近傍に
は、前側テザー18よりも短い後側テザー19の一端部
が縫い付けられている。そして、この後側テザー19の
他端部は前記前側テザー18と同様にバックル20を介
してクォータピラー4の下端側に回動可能に固定されて
いる。前記図2に示すエアバッグ10の格納状態におい
て、前側テザー18は、図7に示すようにピラートリム
23の内部に収納され、また同様に、エアバッグ10後
端の取付金具13や後側テザー19もピラートリムの内
部に収納されるようになっており、これにより、見栄え
が良くなり商品性が向上する。
【0029】尚、前記図7において、2bはピラーイン
ナパネル2aと共に閉断面状のフロントピラー2を構成
するピラーアウタパネルであり、該ピラーアウタパネル
2bにはシール部材24を介してフロントウィンドウ2
5が支持されている。また、26は、前記ピラーインナ
パネル2a及びピラーアウタパネル2bの接合フランジ
部を被覆するシーミングウエルトであり、このシーミン
グウエルト26には、ピラートリム23の端縁部に係合
して保持する突起部26aが設けられている。
【0030】ところで、この実施形態のエアバッグ10
は、前記のように前後に長いものでありながら、従来ま
でのカーテンエアバッグのように複数の小袋に分割せず
に、全体として1つの大きな袋状のものとしている。こ
のため、図2に示す格納状態から図1に示す展開状態に
移行したときに、エアバッグ10そのもの前後方向の長
さはあまり短くはならず、むしろ前側テザー18に弛み
が生じて、エアバッグ10の前後方向の張力が不十分に
なり、車体が衝撃を受けたり或いはその後に転覆したり
すると、乗員がエアバッグ10を車外方向へ変位させ
て、サイドウィンドウから車外へ飛び出してしまう虞れ
があった。
【0031】そこで、この実施形態では、本発明の特徴
部分であるが、前記前側テザー18とエアバッグ10の
前端部との連結構造に工夫を凝らし、エアバッグ10の
展開に伴い前側テザー18の弛みが吸収されて、エアバ
ッグ10に十分な張力が作用するようにしている。この
ように構成することで、前記のように車体が衝撃を受け
たり或いはその後に転覆したりするときにも、前後方向
に十分な張力が作用しているエアバッグ10によって、
乗員が車室内に留まるように保護することが可能にな
り、これにより、上院保護性能を向上できるものであ
る。
【0032】具体的には図1及び図8に示すように、前
記エアバッグ10の前端側には該エアバッグ10を左右
に貫通する孔部10bが設けられている。そして、前側
テザー18のエアバッグ10側の端部は、前記孔部10
bよりも前側の膨張部10cに対しその前方右側から巻
き付くように延び、前記孔部10bを通って反対の左側
で前方に向かって折り返された後に、該左側の膨張部1
0cに巻き付けられて、エアバッグ10の縫い目10d
で一緒に縫い付けられている。言い換えると、エアバッ
グ10の前端部にはその展開時に膨張する膨張部10c
が設けられ、この膨張部10cよりも後側(エアバッグ
10の中央部寄りの部位)に貫通孔部10bが設けら
れ、前側テザー18のエアバッグ10側の端部は、前記
膨張部10cの周囲を約1周した上でエアバッグ10の
前端縁部に固定されている。
【0033】このような構成により、格納されていたエ
アバッグ10が展開すると、その前端部の膨張部10c
が膨張して、図8に示すように、前側テザー18の端部
が該膨張部10cにより大きく巻き取られて、弛みが吸
収されることになる。これにより、前側テザー18の弛
みが大きくてもそれを不足なく吸収して、エアバッグ1
0に十分な張力を作用させることができる。また、前側
テザー18からの荷重は膨張部10cの周囲に分散する
ようになり、エアバッグ10の信頼性が向上する。前記
エアバッグの孔部10b及び膨張部10c、並びにそれ
らに対する前側テザー18の取付構成が、エアバッグ1
0の展開に伴いテザー18の弛みを吸収する弛み吸収機
構Sに対応している。
【0034】したがって、この実施形態に係る車両の乗
員保護装置Aによれば、例えば車両1の右側面に別の車
両が衝突して、所定以上の大きさの衝撃が作用したと
き、センサからの入力に応じてインフレータ12の点火
部が点火して、爆薬が高速燃焼し、そのときに発生する
多量のガスがホース11によりエアバッグ10に供給さ
れる。そして、エアバッグ10はルーフサイドレール5
から下方に向かって急速に膨張展開し、フロント及びリ
アサイドウィンドウ7,9の内側を覆って、乗員を保護
できる状態になる。
【0035】このとき、エアバッグ10の前端の膨張部
10cが高圧ガスの供給により略円筒状に膨張して、前
側テザー18の端部を大きく巻き取ることで、該テザー
18の弛みが吸収され、エアバッグ10には前後方向の
張力が十分に作用するようになる。これにより、従来ま
でのカーテンエアバッグのように、エアバッグ10を複
数の小袋に分割していなくても、乗員の拘束性を担保す
ることができる。
【0036】しかも、エアバッグ10を分割していない
ので、乗員に接触する部分の縫い目をなくすことがで
き、そのことによってエアバッグ10の保護性能を全体
として高めることができる。また、エアバッグ10を分
割するために縫製することがなく、さらにその縫製部分
をシールする必要もないので、これらの作業に要する労
力及び時間を節約して、製造コストを大幅に低減するこ
とができる。
【0037】また、この実施形態におけるエアバッグ1
0は、車両の前席だけでなく後席も含めて、フロント及
びリアサイドウインドウ7,9の両方を覆うように展開
するものなので、前側方向に極めて長く、自ずと左右方
向の拘束性の低いものになる。従って、前記のように簡
単な構成でテザー18の弛みを吸収して、前後に極めて
長いエアバッグ10に前後方向の張力を十分に作用させ
ることができるという本発明の作用効果は、極めて有効
なものになる。
【0038】さらに、この実施形態では、前側テザー1
8の端縁部をエアバッグ10の縫い目10dので一緒に
縫い付けるようにしているので、縫製箇所が増えてエア
バッグの強度が低下することもない。
【0039】尚、前記実施形態では、前側テザー18の
エアバッグ10側の端部を膨張部10cに巻き付けてか
ら、その端縁部をエアバッグ10の縫い目で一緒に縫い
付けるようにしているが、これに限るものではない。す
なわち、前側テザー18の端縁部は必ずしもエアバッグ
10の縫い目の近傍に縫い付けなくてもよい。また、例
えば、前側テザー18の端部を前記のように膨張部10
cに巻き付けずに、端にその膨張部10cのうちの少な
くとも左右方向に膨張する部分に縫い付けるようにして
もよい。
【0040】(実施形態2)図9〜図11は、本発明の
カーテンエアバッグ装置Aをワゴン型車両30に適用し
た実施形態を示す。この実施形態2に係るカーテンエア
バッグ装置Aは、エアバッグ10の概略構成や前側テザ
ー18の取付構造等が前記実施形態1のものと同じなの
で、以下、同一部材には同一の符号を付してその説明は
省略する。そして、この実施形態2に係るカーテンエア
バッグ装置Aの特徴は、エアバッグ10の後端部に取り
付けられた後側テザー19と車両1のリアピラー31と
の間に、エアバッグ10の展開に伴い後側テザー19の
弛みを吸収する弛み吸収機構S′を設けたことにある。
【0041】詳しくは、図10に示すように、エアバッ
グ10の格納状態では、該エアバッグ10は前記実施形
態1と同様に折り畳まれてルーフサイドレール5とルー
フトリム16との間に収納されており、同様に後側テザ
ー19は、リアピラー31とピラートリム32との間に
収納されている。また、この状態では、後側テザー19
のエアバッグ10側の端部がリアピラー31側の端部よ
りも上方に位置している。
【0042】前記ピラートリム32は、前側のフレーム
部材33と後側のパネル部材34とからなるものであ
る。すなわち、詳しくは図示しないが、フレーム部材3
3はリアピラー31のインナパネルにボルトにより固定
されていて、上方から下方に向かってなだらかに車室内
方に突出し、その下端側に車室内方に向かって突出する
土手部33aを有するとともに、エアバッグ10の展開
力に対抗できるだけの高い剛性を有するものである。ま
た、パネル部材34はその前端部を前記フレーム部材3
3の後端縁部に係合して、リアピラー31の内側に沿う
ように保持されている。
【0043】そして、インフレータ12から高圧ガスが
供給されて、図11に示すようにエアバッグ10が展開
するとき、同図に仮想線で示すように、エアバッグ10
がルーフトリム16を押し開いて下方の車室内に膨出す
ると、該エアバッグ10の下部に取り付けられた後側テ
ザー19もピラートリム32のパネル部材34を押し開
いて、下方に移動する。このとき、後側テザー19は常
にフレーム部材33に沿って下方に移動することにな
り、従って、後側テザー19はエアバッグ10の展開に
伴い車室内方に向かって押圧され、同図に実線で示すよ
うに、エアバッグ10が完全に展開したときには、フレ
ーム部材33の土手部33aにより車室内方に向かって
押圧されて略L字状に折れ曲がった状態になる。
【0044】したがって、この実施形態では、エアバッ
グ10が下方へ膨張展開する力を利用して、後側テザー
19をフレーム部材33に沿って車室内方に張り出させ
ることで、該後側テザー19の弛みを吸収して十分な張
力を持たせることができる。これにより、前記実施形態
1と同様の作用効果が得られ、エアバッグ10による乗
員の拘束性を担保しながら、該エアバッグ10の保護性
能を高めかつコスト低減を図ることができる。また、後
側テザー19を介してエアバッグ10を車室内方に付勢
することで、該エアバッグによる乗員の保護性能を一
層、高めることができる。
【0045】前記フレーム部材33は、エアバッグ10
が展開するときにその展開に伴い後側テザー19をガイ
ドするガイド部材に対応しており、このフレーム部材3
3やその下端側の土手部33a、及び前記のような後側
テザー19の配置構成により、弛み吸収機構S′が構成
されている。そして、この弛み吸収機構S′によれば、
エアバッグ10の前端部に設けた弛み吸収機構Sのよう
に、エアバッグ10に孔部10b等を設ける必要がない
ので、そのためにエアバッグの縫い目が増えたり、エア
バッグの構造が複雑になることを回避できる。
【0046】尚、本発明は前記各実施形態に限定される
ものではなく、その他の種々の実施形態を包含するもの
である。すなわち、前記実施形態1では、テザーの弛み
を吸収する弛み吸収機構Sをエアバッグ10の前側に設
けており、また、実施形態2ではそれとは異なる弛み吸
収機構S′をエアバッグ10の後側に設けているが、こ
れに限るものではなく、いずれの弛み吸収機構S,S′
もエアバッグの前側及び後側の両方に適用可能である。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
おける車両の乗員保護装置によると、車両の側部へ衝撃
が作用したときにエアバッグをルーフサイドレールから
下方のサイドウィンドウの内側を覆うように展開させる
ようにしたカーテンエアバッグ装置において、前記エア
バッグの下部をそれぞれ車体に連結する前側及び後側連
結部材を配設するとともに、その少なくとも一方に、エ
アバッグの展開に伴い連結部材の弛みを吸収する弛み吸
収機構を取り付けることで、前側及び後側連結部材によ
りエアバッグを前後方向に引張って、十分な張力を作用
させることができ、これにより、エアバッグを複数の小
袋に分割する必要がなくなるので、エアバッグの縫い目
を減らして、保護性能の向上及びコスト低減を図ること
ができる。
【0048】請求項2の発明によると、エアバッグの端
部の膨張部が膨張して、該膨張部に固定された連結部材
の端部が少なくとも左右方向に変位することで、該連結
部材の弛みを吸収して、エアバッグに十分な張力を作用
させることができる。
【0049】請求項3の発明によると、エアバッグの端
部の膨張部が膨張して、該膨張部により連結部材の端部
が巻き取られることで、連結部材の弛みが大きくてもこ
れを不足なく吸収して、エアバッグに十分な張力を作用
させることができる。また、連結部材からエアバッグへ
の荷重を分散させて、エアバッグの信頼性を向上でき
る、請求項4の発明によると、弛み吸収機構を連結部材
と車体との間に設けることで、エアバッグに弛み吸収機
構を設ける場合の保護性能低下等を確実に防止できる。
【0050】請求項5の発明によると、エアバッグの展
開に伴い連結部材のエアバッグ側の端部が下方に移動す
るときに、該連結部材を折れ曲がった状態になるように
ガイドして弛みを吸収し、エアバッグに十分な張力を作
用させることができる。
【0051】請求項6の発明によると、エアバッグが展
開した状態で連結部材を土手部により車室内方に押圧し
て、折れ曲がった状態にすることができ、また、該連結
部材を介してエアバッグ全体を車室内方に付勢して、乗
員の拘束性を一層、高めることができる。
【0052】請求項7の発明によると、連結部材のエア
バッグ側の端部をエアバッグの縫い目の近傍に縫い付け
ることで、緩衝性能の低下を回避でき、さらに、エアバ
ッグの縫い目で一緒に縫うようにすれば、強度低下も回
避できる。
【0053】請求項8の発明によると、連結部材を内装
部材により隠蔽して、商品性を向上できる。
【0054】請求項9の発明によると、車両の前席及び
後席の乗員を併せて保護できるような前後に極めて長い
エアバッグにおいて、連結部材の弛みを吸収してエアバ
ッグに前後方向の張力を作用させることが極めて有効に
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るカーテンエアバッグ
装置の展開状態の構成を示す図である。
【図2】エアバッグの格納状態を示す図1相当図であ
る。
【図3】エアバッグをルーフサイドレールへ固定する構
造を示す、図2のIII-III線における断面図である。
【図4】図1のIV-IV線における断面図である。
【図5】図1のV-V線における断面図である。
【図6】前側テザーのフロントピラーへの取付構造を示
す部分拡大図である。
【図7】図2のVII-VII線における断面図である。
【図8】図1のVIII-VIII線における断面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る図1相当図である。
【図10】エアバッグの格納状態で車両のリアピラーに
収納されている後側テザーの配置構成を示す斜視図であ
る。
【図11】エアバッグの展開状態を示す図11相当図で
ある。
【符号の説明】
A カーテンエアバッグ装置 S,S′ 弛み吸収機構 1 車両 2 フロントピラー(前側ピラー) 4 クォータピラー(後側ピラー) 5 ルーフサイドレール 7,9 サイドウィンドウ 10 エアバッグ 10b 孔部 10c 膨張部 18 前側テザー(前側連結部材) 19 後側テザー(後側連結部材) 30 車両 31 リアピラー(後側ピラー) 33 フレーム部材(ガイド部材) 33a 土手部

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両のサイドウィンドウの前方及び後方
    にそれぞれ前側及び後側ピラーが配置され、該両ピラー
    の各上端部を繋ぐように前後方向に延びるルーフサイド
    レールが設けられており、 前記前側ピラーからルーフサイドレールを経て後側ピラ
    ーに至る範囲内にエアバッグを折り畳んで格納し、車両
    の側部へ衝撃が作用したときに、該エアバッグを前記サ
    イドウインドウの内側を覆うように展開させるようにし
    た車両の乗員保護装置において、 前記エアバッグの上端縁部が少なくとも前記ルーフサイ
    ドレールに固定されている一方、 前記エアバッグの下部の前端部をサイドウィンドウより
    も前方の車体に連結する前側連結部材と、 前記エアバッグの下部の後端部をサイドウィンドウより
    も後方の車体に連結する後側連結部材とが設けられ、 前記前側及び後側連結部材の少なくとも一方には、前記
    エアバッグの展開に伴い該連結部材の弛みを吸収する弛
    み吸収機構が取り付けられていることを特徴とする車両
    の乗員保護装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 弛み吸収機構は、エアバッグの前端及び後端の少なくと
    も一方に設けられ、該エアバッグの展開時に膨張する膨
    張部を有し、 連結部材のエアバッグ側の端部は、前記膨張部において
    少なくとも左右方向に膨張する部分に固定されているこ
    とを特徴とする車両の乗員保護装置。
  3. 【請求項3】 請求項1において、 弛み吸収機構は、エアバッグの前端及び後端の少なくと
    も一方に設けられ、該エアバッグの展開時に膨張する膨
    張部と、 エアバッグの前記膨張部よりも中央部寄りの部位に設け
    られ、エアバッグを左右に貫通する孔部とを有し、 連結部材のエアバッグ側の端部は、前記膨張部の左右い
    ずれか一側から前記孔部を通って反対側に延び、該反対
    側の膨張部に巻き付けられて固定されていることを特徴
    とする車両の乗員保護装置。
  4. 【請求項4】 請求項1において、弛み吸収機構は、連
    結部材と車体との間に設けられていることを特徴とする
    車両の乗員保護装置。
  5. 【請求項5】 請求項4において、 連結部材は、エアバッグの格納時には該連結部材のエア
    バッグ側の端部が車体側の端部よりも上方に位置するよ
    うに配置され、 弛み吸収機構は、エアバッグの展開に伴い前記連結部材
    のエアバッグ側の端部が下方へ移動するときに、該連結
    部材を折れ曲がった状態になるようにガイドするガイド
    部材を備えていることを特徴とする車両の乗員保護装
    置。
  6. 【請求項6】 請求項5において、 ガイド部材には、エアバッグの展開状態で連結部材を車
    室内方に押圧する土手部が設けられていることを特徴と
    する車両の乗員保護装置。
  7. 【請求項7】 請求項1において、 連結部材のエアバッグ側の端部は、エアバッグの縫い目
    或いは縫い目の近傍で該エアバッグに縫い付けられてい
    ることを特徴とする車両の乗員保護装置。
  8. 【請求項8】 請求項1において、 前側及び後側連結部材は、エアバッグの格納時にはピラ
    ーと該ピラーの内装部材との間に収納されていることを
    特徴とする車両の乗員保護装置。
  9. 【請求項9】 請求項1において、車両は前後方向に複
    数の座席を有し、前側座席よりも前方に配置されたフロ
    ントピラーと、前記前側座席の後方に位置する後側座席
    の略側方から後方にかけて配置されたクォータピラーと
    を備え、 前側ピラーは前記フロントピラーであり、 後側ピラーは前記クォータピラーであり、 エアバッグは、前記フロントピラー及びクォータピラー
    の間に配置されたサイドウインドウを覆うように展開さ
    れるものであることを特徴とする車両の乗員保護装置。
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