【発明の詳細な説明】
ジハロジフルオロメタンおよびその同族体の製造方法
発明の属する技術分野
本発明は、反応温度を上げて、選択した金属および金属含有のプロモーターの
存在下にフッ素化エポキシドをジハロゲン化合物と反応させることによってジハ
ロジフルオロメタンおよびその同族体を製造する方法に関する。
背景技術
X(CF2)nY(式中、nは1〜7である)で表せるジハロペルフルオロアル
カンは、機能性フルオロモノマーおよびその他の有用な有機フッ素化材料の製造
に有用である。また、ジヨードペルフルオロアルカンは、フルオロエラストマー
の連鎖移動剤として有用であり、またフッ素化ビニルモノマーのフリー・ラジカ
ル重合においても有用である。たとえば、米国特許第4,243,770号および
第4,361,678号(引用によってここにその記載を導入する)を参照された
い。
CF2I2は、有機フッ化物製造の出発物質として、またフルオロエラストマー
の連鎖移動剤として有用であるが、その製造方法では、低い収率しか達成されて
いない。ステンレス製容器内でのヘキサフルオロシクロプロピレンオキシド(H
FPO)とヨウ素との反応が報告されている(John,E.O.ら、Inorg.Chem.1992,3
1,pp.329-331を参照)が、その収率は報告によれば15〜30%である。Mitsh,
R.A.J.,Heterocyl.Chem.1964,1,p.233、およびその他の文献に報告されているよ
うに、ジフルオロカルベンとヨウ素との反応では、CF2I2の収率は20%未満
にしかならない。
発明の要約
本発明は、α、ω−ジハロペルフルオロメタンおよびその同族体を製造する方
法であって、式(I):
(式中、RFは、ペルフルオロアルキルか、もしくは、1個以上のエーテル酸素
、塩素、臭素、ヨウ素、水素、フッ化スルホニル、ニトリル、エステル、塩化ア
シル、またはフッ化アシル置換基をもつぺルフルオロアルキルを表し;
XおよびYは、それぞれ独立して、I、Br、およびClからなる群より選ば
れ;そして
nは2〜6である)
にしたがって、Ni、CuI、Ni/Cu、およびNi/Znからなる群より選
ばれる、金属または金属含有のプロモーターの存在下にフッ素化エボキシドをジ
ハロゲンと反応させ、その際ジハロペルフルオロアルカンを約70重量%以上の
収率で回収することを特徴とする方法に関する。
発明の詳細な説明
本発明は、フッ素化エポキシドおよびジハロゲンから、一般にCF2XYで表
されるジハロジフルオロメタン、および一般にX(CF2)nY(式中、X、Y=
I、Br、Cl;n=2、3、または4)で表されるその同族体、ならびにアシ
ル基がフッ素化されているフッ化アシルを製造する方法を改善するものである。
一般的な方法は、以下の式(I)によって示すことができる:
この反応を触媒の存在下に行なうと、所望のCF2XYが、約70重量%以上
、好ましくは約80重量%以上の収率で得られることが多い。触媒の非存在下で
は、
所望の生成物の収率は、しばしば約30重量%程度かそれ以下になる。式(I)
におけるRFは、ペルフルオロアルキルか、もしくは、1個以上のエーテル酸素
、塩素、臭素、ヨウ素、水素、フッ化スルホニル、ニトリル、エステル、塩化ア
シル、またはフッ化アシル置換基をもつぺルフルオロアルキルを表すもので、本
発明に有用なフッ素化エポキシドを定義するのに役立つものである。
上記した方法における改善点は、選択された金属または金属含有のプロモータ
ーの存在にある。ここで用いるように、「金属または金属含有のプロモーター」
とは、通常は粉末かスラリーの形である、0価の金属(たとえばNi、Cu)、
金属の組み合わせ(すなわちNi/Cu、Ni/Zn)、またはハロゲン化金属(
たとえばCuI)からなるものである。あるいはまた、「金属または金属含有の
プロモーター」とは、金属または金属の組み合わせであるが、これらの金属が反
応容器(たとえば、管、タンク、オートクレーブ、反応器)を形成し、容器の表
面が反応を促進するようになっているものでもよい。容器の好ましい材料として
は、Hastelloy(登録商標)(コネチカット州ダンベリー所在のUnion Carbide社
製)のようなニッケル合金材料がある。Metals Handbook,American Society for
Metals,Metals Park,OH44073,1985,p.20.28に記載されているように、Hast
elloy(登録商標)Cは、約56%のニッケルを含んでいる。したがって、ここ
で述べるように、プロモーターの「存在」とは、反応物質を粒子状またはスラリ
ー状の金属または金属含有のプロモーターと混合するか、またはプロモーター物
質を含有する容器または反応容器に接触させることによって、反応物質をそのプ
ロモーターに暴露することを意味する。プロモーター金属は、スラリーまたは反
応容器の少なくとも約20〜25%を占めていることが好ましい。プロモーター
が存在しないか、または不十分であると、収率は実質的に低下する。たとえば、
ニッケル合金からなる反応容器以外の容器内で(そして追加のいかなるプロモー
ター粉末またはスラリーも存在しない条件で)この方法を実施すると、最大でも
約30%の収率しか得られない。反応容器やその他の材料の反応促進能について
は、その物質を、切り取り試片を存在させるか、またはその物質で作った容器内
で試験的な反応を行うことによって調べるとよく、そのようにすると最低限の実
験を必要とするだけである。反応促進能を示さない典型的な容器材料の例と
しては、ニッケルを10〜14%としか含まないステンレス316がある。Meta
ls Handbook,American Society for Metals,Metals Park,OH44073,1985,p.15.3
を参照。このことは、前記したInorg.Chem.,31(2),1994,pp.329〜331に要約
されている記載内容と一致する。
本発明の好ましい実施形態においては、オートクレーブのような容器にジハロ
ゲンとフッ素化エポキシド物質(HEPOが好ましい)を入れ、この混合物を一
般に8〜20時間加熱する。容器が触媒物質からなっていない場合は、反応物質
を混合・加熱する前に触媒を容器に入れる。添加した触媒の量は有効最小限の量
であり、それは約1.5モル%であることがわかっている。追加の触媒を約20
モル%まで加えてもよく、そうすると3モル%の添加で達成される50%の収率
よりも収率が高くなる。反応完了後、得られる混合物からその成分を分離するが
、その際に好ましい分離方法は蒸留である。
「ジハロペルフルオロアルカン」は、完全にフッ素化されたアルカンであるが
、フッ素を2つ有するかわりに、特に塩素、臭素、およびヨウ素といったハロゲ
ンを2つ有するものを意味する。これらのハロゲンは、ぺルフルオロアルカンの
末端にある。またこれらのハロゲンは、同じでも異なっていてもよい。「ジハロ
ゲン」とは、XYで表される化合物を意味し、この場合XおよびYは、それぞれ
独立して、Cl、Br、またはIである。この化合物の例としては、限定はない
が、I2、Cl2、Br2、およびIClがある。
「アシル基がフッ素化されているフッ化アシル」は、一般式RCOFの化合物
を意味するもので、この式中、Rは、フッ化脂肪族基を表すか、もしくはエーテ
ル酸素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、フッ化スルホニル、ニトリル、エステル、
フッ化アシル、およびペルフルオロフェニルからなる群より選ばれる1つ以上の
部分で置換されているフッ化脂肪族基を表している。「生成物混合物」は、反応
生成物の混合物を意味する。
式(I)において、RF=−CF3、およびX=Y=I、Br、またはClの場
合、この反応は式(II)で表される:
したがってこの反応は、X=I、およびn=2、3または4の場合、好ましい化
合物CF2I2を生成する。
たとえば、RFがCF2CFClCF2Cl、CF2OC6F5、またはCF2OC
F2CF2SO2Fである他のフッ素化エポキシドも、ハロゲンと反応させた場合
、主な生成物としてCF2X2とこれに対応する、アシル基がフッ素化されている
フッ化アシルを、微量の高級同族体[X(CF2)nX(式中、n=2、3または
4)で表されるようなもの]と共に生じる。これは、式(III)(X=I、Br
またはCl)で示される:
過剰のHFPOまたはその他のエポキシドを用いる場合、主な反応生成物は、実
施例2で証明するように、I(CF2)3Iのような高度の同族体である。
式(IV)に示すように、IClやBrIのようなハロゲン間化合物を用いるこ
とによって、α,ω−ジハロジフルオロメタンCF2XY(X、Y=Cl、Br、
I)の混合物を、少量のX(CF2)nY(X、Y=Cl、Br、I;n=2、3
、または4)と共に得ることができる:
反応は、液相中または気相中のいずれにおいても実施してよく、またそのままの
形(溶媒の非存在下で)、または不活な溶媒(たとえば、存在する他の物質に対
し、いかなる化学的活性ももたない溶媒)溶液中のいずれにおいても実施してよ
い。そのような溶媒の例としては、限定はないが、クロロフルオロカーボン(た
とえばCFC113)、ヒドロフルオロカーボン、ペルフルオロエーテル、および
ペルフルオロベンゼンがある。反応温度は、一般には約150℃〜約300℃、
好ましくは約180℃〜約210℃である。
実施例では、特にことわらないかぎり、すべての試薬はウィスコンシン州ミル
ウォーキー所在のAldnch Chemical Co.から入手したものを用いた。以下の実施
例において、ガスクロマトグラフィー(GC)は、20% OV−210カラム
(ペンシルヴェニア州べルフォント所在のSupelco社製)を用い、HP 589
0 II Plusガスクロマトグラフ(デラウェア州ウィルミントン所在のHe
wlett Packard社製)により、初期温度50℃、最終温度250℃とし、15℃
/分で昇温して行なった。19F核磁気共鳴(NMR)のデータは、GE Plu
s NMR分光計(ニューヨーク州スケネクタディ所在のGeneral Electric社製
)を用いて得た。測定は、すべて重水素置換クロロホルム(CDCl3)に相関
して行なった。記載する比は、特定の実施例において示したNMRデータに基づ
くGCピーク比かモル比である。高分解能質量分析(HRMS)は、Micromass
−7070H(英国マンチェスター所在のVG Analytical社製)を用いて実施
した。GC−MSもMicromass−7070Hを用いて実施した。
触媒の調製
以下の実施例の中には、新たに調製したNiおよびNi/Cu触媒を用いたも
のがある。Ni触媒は、以下の工程にしたがって調製した:
133gのNiCl2を1500mlの水に溶解した攪拌溶液中に、室温で、
65.0gのZnを徐々に加えた。得られる混合物を15時間攪拌した。固形分
を濾過し、10%HClに加え、得られる混合物を30分間攪拌した。濾過の後
、固形分を水、アセトンで洗浄し、60℃で真空乾燥して15.5gのNi触媒
を得た。
Ni/Cu触媒は、以下の工程にしたがって調製した:
13.0gのNiCl2および16.0gのCuSO4を100mlの水に溶解し
た攪拌溶液中に、室温で、13.0gのZnを徐々に加えた。固形分を瀘別し、
10%HClに加え、得られる混合物を30分間攪拌した。濾過の後、固形分を
水、アセトンで洗浄し、60℃で真空乾燥して11.3gのNi/Cu触媒を得た
。
省略記号
以下の省略記号を用いる。
bp=沸点(℃)
s=NMR−重項ピーク
d=NMR二重項ピーク
t=NMR三重項ピーク
m=NMR多重項ピーク
実施例 実施例1 Hastelloy (登録商標)Cオートクレーブ内でのHFPOとヨウ素との反応
1リットルのHastelloy(登録商標)Cオートクレーブに381gのヨウ素を
入れ、低温で脱気した。266gのHFPOを加えた後、得られる混合物を18
5℃で10時間加熱した。次いで、184gのガスを得て、19F MRによって
それが主としてCF3COFであることを決定した。次いで、458gの液体を
Na2SO3水溶液と塩水で洗浄し、蒸留して、比が240:1:4.8(GC面
積)、bpが104〜106℃の、CF2I2、ICF2CF2I、およびICF2
CF2CF2Iの混合物395gを得た。19F NMR:CF2I2については+1
8.6(s);ICF2CF2Iについては−53.3(s);I(CF2)3Iにつ
いては−58.2(t,J=5Hz,4F)、−105.3(m、2F)であった
。HRMS:計算値は、CF2I2について303.8058;C2F4I2について
353.8026;C3F6I2について403.7994であった。実測値は、C
F2I2について303.8002;C2F4I2について353.7975;C3
F6I2について403.7992であった。
実施例2 Hastelloy (登録商標)Cオートクレーブ内での過剰のHFPOとヨウ素との反 応
1リットルのHastelloy(登録商標)Cオートクレーブに254gのヨウ素を
入れ、低温で脱気した。500gのHFPOを加えた後、得られる混合物を18
5℃で30時間加熱した。次いで、350.6gのガスを得て、19F NMRによ
ってそれが主としてCF3COFであることを決定した。371.4gの液体をG
C分析したところ、CF2I2、ICF2CF2I、ICF2CF2CF2I、I(C
F2)4I、およびI(CF2)5Iが、7.1:1:58.7:0.86:0.33の
比(GC面積)で形成されていることがわかった。
1リットルのHastelloy(登録商標)Cオートクレーブに254gのヨウ素を
入れ、低温で脱気した。340gのHFPOを加えた後、得られる混合物を18
5℃で12時間加熱した。239gの液体生成物をGC分析したところ、CF2
I2、ICF2CF2I、ICF2CF2CF2Iが、90.7:2:6.7の比(GC
面積)で形成されていることがわかった。実施例3 ステンレス製攪拌管内でのヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)とヨ ウ素との反応
0.4リットルのステンレス製攪拌管に127gのヨウ素を入れ、低温で脱気
した。90gのHFPOを加えた後、得られる混合物を185℃で8時間加熱し
た。次いで、71.1gのヨウ素を回収し、23.1gの液体を得て、これをNa2
SO3水溶液と塩水で洗浄し、蒸留して、比が95:1:3.3(モル比)の、
CF2I2、ICF2CF2I、およびICF2CF2CF2Iの混合物16.9gを得
た。
実施例4 ステンレス製攪拌管内での、Ni/Cu存在下におけるヘキサフルオロプロピレ ン オキシド(HFPO)とヨウ素との反応
0.4リットルのステンレス製攪拌管に127gのヨウ素および5.0gの新し
く調製したNi/Cu触媒を入れ、低温で脱気した。90gのHFPOを加えた
後、得られる混合物を185℃で8時間加熱した。次いで、112.0gの暗色
液体を得、これを蒸留して、比が39.3:1:3(GC面積)の、CF2I2、
ICF2CF2I、およびICF2CF2CF2Iの混合物79.3gを得た。
実施例5 ステンレス製攪拌管内での、Ni存在下におけるヘキサフルオロプロピレンオキ シド(HFPO)とヨウ素との反応
0.4リットルのステンレス製攪拌管に127gのヨウ素および5.0gのニッ
ケル粉末(99.99%、100メッシュ、ウィスコンシン州ミルウォーキー所
在のAldrich Co.社製)を入れ、低温で脱気した。90gのHFPOを加えた後
、得られる混合物を185℃で8時間加熱した。146.8gの暗色液体を得、
これを蒸留して、比が64.3:1:4.7(GC面積)の、CF2I2、ICF2
CF2I、およびICF2CF2CF2Iの混合物116.8gを得た。
実施例6 ステンレス製攪拌管内での、Ni存在下におけるヘキサフルオロプロピレンオキ シド(HFPO)とヨウ素との反応
0.4リットルのステンレス製攪拌管に127gのヨウ素および5.0gの新し
く調製したニッケル粉末を入れ、低温で脱気した。90gのHFPOを加えた後
、得られる混合物を185℃で8時間加熱した。131.7gの暗色液体を得、
これを蒸留して、比が14.1:1:1.1(GC面積)の、CF2I2、ICF2
CF2I、およびICF2CF2CF2Iの混合物91.6gを得た。
実施例7 ステンレス製攪拌管内での、NiとCuの存在下におけるヘキサフルオロプロピ レンオキシド(HFPO)とヨウ素との反応
0.4リットルのステンレス製攪拌管に127gのヨウ素および2.0gの新し
く調製したNi粉末および3.0gのCu粉末を入れ、低温で脱気した。90g
のHFPOを加えた後、得られる混合物を185℃で8時間加熱した。120.
1gの暗色液体を得、これを蒸留して、比が18.8:1.2:1(GC面積)の
、CF2I2、ICF2CF2I、およびICF2CF2CF2Iの混合物91.1gを
得た。
実施例8 ステンレス製攪拌管内での、NiとZnの存在下におけるヘキサフルオロプロピ レンオキシド(HFPO)とヨウ素との反応
0.4リットルのステンレス製攪拌管に127gのヨウ素および2.0gの新し
く調製したNi粉末および3.0gのZn粉末を入れ、低温で脱気した。90g
のHFPOを加えた後、得られる混合物を185℃で8時間加熱した。次いで、
120.0gの暗色液体を得、これを蒸留して、比が16.1:1.0:1.0:0
2(GC面積)の、CF2I2、ICF2CF2I、ICF2CF2CF2I、I(C
F2)4Iの混合物78.4gを得た。
実施例9 ステンレス製攪拌管内での、CuI存在下におけるヘキサフルオロプロピレンオ キシド(HFPO)とヨウ素との反応
0.4リットルのステンレス製攪拌管に127gのヨウ素および10gのCu
Iを入れ、低温で脱気した。90gのHFPOを加えた後、得られる混合物を1
85℃で8時間加熱した。126.9gの暗色液体を得、これを蒸留して、比が
51.9:1.0:2.5(GC面積)の、CF2I2、ICF2CF2I、およびI
CF2CF2CF2Iの混合物103.6gを得た。
実施例10 ガラス管内でのヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)とヨウ素との反 応
50mlのガラス管に3.8gのヨウ素を入れ、低温で脱気した。1.66gの
HFPOを加えた後、管を密封して、得られる混合物を185℃で20時間加熱
した。液体をNa2so3水溶液と塩水で洗浄し、1.0gの黒色物質を得た。19F
NMR分析によれば、この物質は、比が11.2:0.38:1(モル比)の、
CF2I2、ICF2CF2I、およびICF2CF2CF2Iの混合物であった。
実施例11 ガラス管内での過剰のヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)とヨウ素 との反応
50mlのガラス管に2.5gのヨウ素を入れ、低温で脱気した。2.8gのH
FPOを加えた後、管を密封して、得られる混合物を185℃で20時間加熱し
た。液体をNa2SO3水溶液と塩水で洗浄し、得られる1.1gの黒色物質を
蒸留して、bp100〜123℃の液体0.6gを得た。19F NMR分析によれ
ば、この液体は、比が15:1:20(モル比)の、CF2I2、ICF2CF2I
、およびICF2CF2CF2Iの混合物であった。
実施例12 Hastelloy (登録商標)Cオートクレーブ内での、1,1,2−トリフルオロトリ クロロエタン(CFC113)の存在下におけるヘキサフルオロプロピレンオキシ ド(HFPO)とヨウ素との反応
1リットルのHastelloy(登録商標)Cオートクレーブに、254gのヨウ素
および150mlのCFC113を入れ、低温で脱気した。175gのHFPOを
加えた後、得られる混合物を186℃で10時間加熱した。81.1gのヨウ素
を回収し、GC分析を行って、液体が、比49.2:1:1.35(面積)の、C
F2I2、ICF2CF2I、およびICF2CF2CF2Iの混合物であることを決
定し、これをNa2SO3水溶液と塩水で洗浄し、蒸留して、bpが103〜10
4℃の、182.5gのCF2I2を得た。
実施例13 Hastelloy (登録商標)C攪拌管内での過剰のヘキサフルオロプロピレンオキシ ド(HFPO)と臭素との反応
0.4リットルのHastelloy(登録商標)C攪拌管に80gの臭素を入れ、低温
で脱気した。90gのHFPOを加えた後、得られる混合物を200℃で6時間
加熱した。次いで、91.3gの液体を得て、これをNa2SO3水溶液と塩水で
洗浄し、蒸留して、bpが23〜25℃のCF2Br2を71.3g得た。19F N
MR:+6.5(s)。
実施例14 Hastelloy (登録商標)C攪拌管内での過剰のヘキサフルオロプロピレンオキシ ド(HFPO)と臭素との反応
0.4リットルのHastelloy(登録商標)C攪拌管に80gの臭素を入れ、低温
で脱気した。170gのHFPOを加えた後、得られる混合物を185℃で12
時間加熱した。84gの液体を19F NMR分析したところ、これは、比が56
.3::3.3(モル)の、CF2Br2、BrCF2CF2Br、およびBrCF2
CF2CF2Brの混合物であることがわかった。蒸留して、bpが23〜27℃
の、純度95%のCF2Br2を68.5g得た。19F NMR:+6.5(s)。
実施例15 Hastelloy (登録商標)C攪拌管内での過剰のヘキサフルオロプロピレンオキシ ド(HFPO)と一塩化ヨウ素との反応
0.4リットルのHastelloy(登録商標)C攪拌管に114gの一塩化ヨウ素を
入れ、低温で脱気した。120gのHFPOを加えた後、得られる混合物を18
5℃で8時間加熱した。次いで、112.3gの粗製の液体生成物を得、蒸留し
て、bpが31〜34℃のCF2IClを14.7g、bpが103〜104℃の
CF2I2を61.7g得た。19F NMR:CF2IClについて+8.2(s)。
HRMS:CF2IClについての計算値は311.8637。実測値は311.
8678であった。また、C1CF2CF2CF2Iの痕跡が、GC−MSによっ
て観察された。実施例16 Hastelloy (登録商標)C攪拌管内での過剰のヘキサフルオロプロピレンオキシ ド(HFPO)と一臭化ヨウ素との反応
0.4リットルのHastelloy(登録商標)C攪拌管に62gの一臭化ヨウ素を入
れ、低温で脱気した。58gのHFPOを加えた後、得られる混合物を185℃
で6時間加熱した。液体生成物をNa2SO3水溶液と水で洗浄して、比が1.7
:1:2.5の、CF2I2、CF2BrI、およびCF2Br2の混合物42.3g
、ならびにGC−MSで検出される少量のBr(CF2)3Br、ICF2CF2I
、およびICF2CF2CF2Iを得た。CF2BrIについての19F NMR:+
13.6。HRMS:CF2BrIについての計算値:255.8196。実測値
:255.8103。
実施例17 ガラス管内でのC6F5OCF2CFOCF2とヨウ素との反応
25mlのガラス管に2.54gのヨウ素および3.3gのC6F5OCF2CF
OCF2を入れ、低温で脱気した。管を密封した後、得られる混合物を200℃
で8時間加熱した。4.2gの液体生成物を、−78℃のトラップに移した。19
FNMR分析によれば、この液体は、CF2I2が40.8%(モル)、C6F5
CF2OCF2COFが51.2%、I(CF2)3Iが7.6%、およびICF2C
F2Iが0.8%であった。C6F5OCF2COFについての19F NMR:+16
.7(t,J=2.4Hz,1F)、−77.3(m,2F)、−151.2(m,
2F)、−154.2(t,J=22Hz,1F)、−160.8(m,2F)。
HRMS:C8F8O2についての計算値:279.9771。実測値:279.9
719。実施例18 ガラス管内でのC6F5OCF2CFOCF2と臭素との反応
25mlのガラス管に0.8gの臭素および1.7gのC6F5OCF2CFOC
F2を入れ、低温で脱気した。管を密封した後、得られる混合物を200℃で2
0時間加熱した。2.0gの粗製の液体生成物を得た。19F NMR分析によれば
、この液体は、比が28.7:15.3:5.7:1(モル)の、C6F5CF2OC
F2COF、CF2Br、BrCF2CF2Br、およびBrCF2CF2CF2Br
の混合物であった。
実施例19 ガラス管内でのCF2ClCFClCF2CFOCF2とヨウ素との反応
25mlのガラス管に3.5gのヨウ素および4.1gのCF2ClCFClC
F2CFOCF2を入れ、低温で脱気した。管を密封した後、得られる混合物を1
90℃で8時間、次いで200℃で12時間加熱した。4.3gの液体生成物を
、少量のヨウ素とともに−78℃のトラップに移した。19F NMR分析によれ
ば、この液体は、CF2I2が34%、CF2ClCFClCF2OCF2COFが
62.5%、I(CF2)3Iが3.4%、およびICF2CF2Iが0.8%であっ
た(モル比)。CF2ClCFClCF2COFについての19F NMR:+26.
2(t,J=2.4Hz,1F)、−63.5(dm,J=175Hz,F)、−
64.7(dm,J=175Hz,1F)、−110.4(dm,J=270.3
Hz,1F)、−113.2(dm,J=270.2Hz,1F)、−131.4
(m,1F)。HRMS:C4F6Cl2O−COFについての計算値:200.9
297。実測値:200.9257。
実施例20 ガラス管内でのCF2ClCFClCF2CFOCF2と臭素との反応
25mlのガラス管に0.8gの臭素および1.5gのCF2ClCFClCF2
CFOCF2を入れ、低温で脱気した。管を密封した後、得られる混合物を20
0℃で10時間加熱した。次いで、2.3gの粗生成物を得た。19F NMR分析
によれば、転化率は85%であり、CF2Br2とCF2ClCFClCF2COF
の1:1の混合物が形成していた。実施例21 ガラス管内でのFO2SCF2CF2OCF2CFOCF2とヨウ素との反応
25mlのガラス管に3.5gのヨウ素および4.1gのCF2ClCFClC
F2CFOCF2を入れ、低温で脱気した。管を密封した後、得られる混合物を2
00℃で8時間加熱した。次いで、2.8gの液体生成物を、少量のヨウ素とと
もに−78℃のトラップに移した。19F NMR分析によれば、この液体は、C
F2I2が34%(モル)、FO2SCF2CF2OCF2COFが62.5%、I(
CF2)3Iが3.4%、およびICF2CF2Iが0.8%であった。FO2SCF2
CF2OCF2COFについての19F NMR:+45.6(m,1F)、+14.
9(s,1F)、−76.7(t,J=11.7Hz,2F)、−82.1(m,
2F)、−112.5(m,2F)。HRMS:C4F8SO4−COFについての
計算値:248.9456。実測値:248.9468。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1998年1月21日(1998.1.21)
【補正内容】
明細書
ジハロジフルオロメタンおよびその同族体の製造方法
発明の属する技術分野
本発明は、反応温度を上げて、選択した金属および金属含有のプロモーターの
存在下にフッ素化エポキシドをジハロゲン化合物と反応させることによってジハ
ロジフルオロメタンおよびその同族体を製造する方法に関する。
背景技術
X(CF2)nY(式中、nは1〜7である)で表せるジハロペルフルオロアル
カンは、機能性フルオロモノマーおよびその他の有用な有機フッ素化材料の製造
に有用である。また、ジヨードペルフルオロアルカンは、フルオロエラストマー
の連鎖移動剤として有用であり、またフッ素化ビニルモノマーのフリー・ラジカ
ル重合においても有用である。たとえば、米国特許第4,243,770号および
第4,361,678号(引用によってここにその記載を導入する)を参照された
い
。
CF2I2は、有機フッ化物製造の出発物質として、またフルオロエラストマー
の連鎖移動剤として有用であるが、その製造方法では、低い収率しか達成されて
いない。ステンレス製容器内でのヘキサフルオロシクロプロピレンオキシド(H
FPO)とヨウ素との反応が報告されている(John,E.O.ら、Inorg.Chem.1992,
31,pp.329-331を参照)が、その収率は報告によれば15〜30%である。Mitsh
,R.A.J.,Heterocyl.Chem.1964,l,p.233、およびその他の文献に報告されている
ように、ジフルオロカルベンとヨウ素との反応では、CF2I2の収率は20%未
満にしかならない。
SU−A−1297411は臭素とヘキサフルオロプロピレンオキシドを触
媒を用いずに反応させることによりジフルオロジブロモメタンを調製することを
教示している。
発明の要約
本発明は、α、ω−ジハロペルフルオロメタンおよびその同族体を製造する方
法であって、式(I):
(式中、RFは、ペルフルオロアルキルか、もしくは、1個以上のエーテル酸素
、塩素、臭素、ヨウ素、水素、フッ化スルホニル、ニトリル、エステル、塩化ア
シル、またはフッ化アシル置換基をもつペルフルオロアルキルを表し;
XおよびYは、それぞれ独立して、I、Br、およびClからなる群より選ば
れ;そして
請求の範囲
1.ジハロペルフルオロメタンおよびその同族体を製造する方法であって、式(
I):
(式中、RFは、ペルフルオロアルキルか、もしくは、1個以上のエーテル酸素
、塩素、臭素、ヨウ素、水素、フッ化スルホニル、ニトリル、エステル、塩化ア
シル、またはフッ化アシル置換基をもつペルフルオロアルキルを表し;
XおよびYは、それぞれ独立して、I、Br、およびClからなる群より選ば
れ;そして
nは2〜6である)
にしたがって、Ni、CuI、Ni/Cu、およびNi/Znからなる群より選ば
れる、金属または金属含有のプロモーターの存在下にフッ素化エポキシドをジハ
ロゲンと反応させ、その際ジハロペルフルオロアルカンを少なくとも約70重量
%の収率で回収することを特徴とする方法。
2.前記フッ素化エポキシドがヘキサフルオロプロピレンオキシドであることを
特徴とする請求項1に記載の製造方法。
3.前記の金属または金属含有のプロモーターを少なくとも約3モル%を使用す
ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
4.前記プロモーターが金属または金属含有の粉末またはスラリーの形で存在し
ていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
5.前記プロモーターが反応容器の形で存在していることを特徴とする請求項1
に記載の製造方法。
6.前記の反応を不活な溶媒の存在下で行なうことを特徴とする請求項1に記載
の製造方法。
7.前記の反応を溶媒の非存在下で行なうことを特徴とする請求項1に記載の製
造方法。
8.前記の収率が少なくとも約80重量%であることを特徴とする請求項1に記
載の製造方法。
9.反応温度が約150℃〜約300℃であることを特徴とする請求項1に記載
の製造方法。
10.前記プロモーター金属は少なくとも20%の、スラリー形態の前記プロモ
ーター、または金属もしくは金属含有のプロモーターから形成された反応容器を
含んでなることを特徴とする請求項1に記載の方法。