JP2000354497A - S,s−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸製造反応の制御法 - Google Patents

S,s−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸製造反応の制御法

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JP2000354497A
JP2000354497A JP11167518A JP16751899A JP2000354497A JP 2000354497 A JP2000354497 A JP 2000354497A JP 11167518 A JP11167518 A JP 11167518A JP 16751899 A JP16751899 A JP 16751899A JP 2000354497 A JP2000354497 A JP 2000354497A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸エ
チレンジアミンリアーゼ活性を有する微生物の作用によ
りフマル酸とエチレンジアミンからS,S−エチレンジ
アミン−N,N’−ジコハク酸を製造する方法におい
て、随時、反応の操作あるいは制御に連動させるべく、
基質、生成物の濃度を迅速に把握し得る手段の提供。 【解決手段】 反応系内に電気伝導率計を設置し、検知
した電気伝導率の変化に基づいて原料供給および/また
は反応液回収を行い反応を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は微生物由来のエチレ
ンジアミン−N,N’−ジコハク酸エチレンジアミンリ
アーゼの作用によりフマル酸とエチレンジアミンから
S,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸を製
造する方法に関し、より詳しくは、電気伝導率計を使用
した同製造反応の制御方法に関する。S,S−エチレン
ジアミン−N,N’−ジコハク酸は生分解性キレート剤
として写真、洗剤および製紙等の分野で使用される有用
な化合物である。
【0002】
【従来の技術】 本発明者らは、先に、フマル酸とエチ
レンジアミンをS,S−エチレンジアミン−N,N’−
ジコハク酸(SS−EDDS)に変換する微生物の新規
なリアーゼ活性を見い出し(以下、本リアーゼをエチレ
ンジアミン−N,N’−ジコハク酸エチレンジアミンリ
アーゼと呼び、EDDSアーゼと略記する)、本触媒作
用を利用したフマル酸と各種アミンからの効率的な光学
活性アミノポリカルボン酸の製造方法を提案している
〔特開平9−140390号公報参照〕。しかしなが
ら、EDDSアーゼによるSS−EDDS等の光学活性
アミノポリカルボン酸生産反応は副反応が極めて少ない
ものの、平衡反応であるために未反応原料が残存してし
まうことが課題であった。これに対し、本発明者らは、
反応液に金属イオンを共存させると反応平衡が生産物側
に傾き、反応をほぼ完結し得ることを見い出した〔特開
平10−52292号および同10−271999号各
公報参照〕。
【0003】一方、微生物反応の制御に電気伝導率計を
使用した報告として、フマル酸とアンモニアのみの原料
からアスパルターゼの作用によりアスパラギン酸の製造
に適用した例が知られている〔ソビエト連邦特許857
115号公報参照〕。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】酵素は最適基質濃度を
持つ場合が多く、また、基質阻害、生成物阻害がある場
合もあり、十分な反応速度を得るためには、基質、生成
物濃度を最適に保つ必要がある。また、SS−EDDS
塩は原料であるフマル酸塩よりも一般に溶解度が高く、
フマル酸またはその塩をその飽和溶解度以上、すなわち
スラリー状態で反応液に存在させても、反応の進行とと
もにSS−EDDSに変換され溶解する現象を確認して
おり、装置容積に対して効率的なSS−EDDSの高濃
度蓄積反応が可能である。しかし、スラリー状態の原料
は撹拌や連続反応時の障害となる場合がありフマル酸ま
たはその塩を逐次添加する方が好ましいが、フマル酸を
常に溶解した状態にするためには、反応液中の原料、生
成物濃度を常に把握しなければならない。
【0005】一方、回分反応を行う場合には、原料液を
反応槽内に添加し、目的とする基質、または生成物濃度
に達した時点で反応終了液を回収するが、そのためには
反応液組成を迅速に把握する手段を持たなければ、結果
として操作時間の延長を招くことになる。また、この原
料添加、反応液回収を同時かつ連続的に行うことで効率
的な連続反応とすることができるが、このような操作に
より目的とする基質、生成物濃度の反応終了液を得るた
めには、原料添加および反応液回収速度を常に調節しな
ければならない。
【0006】しかしながら、反応液中のSS−EDDS
の定量は、反応液の一部を分取し液体クロマトグラフィ
ー等により行われるが、このような方法では反応液の状
態、すなわち、基質、生成物の濃度を迅速に把握し、随
時、反応を操作あるいは制御することは難しく、また、
多大な労力を必要とするという問題があった。
【0007】さらに、本発明のSS−EDDSの製法に
おいては、十分な収率を得るためには大量の金属イオン
を添加しなければならず、またpHを一定の範囲に維持
するために相当量のアルカリまたは酸を必要とし、例え
ばマグネシウムを添加しNaOHにて反応中のpHを維
持する場合は、添加したマグネシウムと等モル近いNa
OHが必要である。
【0008】したがって、本発明は、上述のような複雑
な反応系において、随時、反応の操作あるいは制御に連
動させるべく、基質、生成物の濃度を如何にして迅速に
把握し得るか、その手段を見いだすことを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意検討を行った結果、前記、微生物法にお
けるSS−EDDS製造反応において、生成物/基質比
および反応液電気伝導率の両者が高い相関性を示し、電
気伝導率計を用いることにより反応の進行状態を瞬時か
つ連続的に把握できることを見い出した。さらに、電気
伝導率計と原料供給および/または反応液回収を連動さ
せることにより、反応系内の原料および生成物を任意の
濃度で制御できることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は、エチレンジアミン−
N,N’−ジコハク酸エチレンジアミンリアーゼ活性を
有する微生物またはその調製物の作用により、フマル酸
とエチレンジアミンからS,S−エチレンジアミン−
N,N’−ジコハク酸を製造する方法において、反応系
内に電気伝導率計を設置し、検知した電気伝導率の変化
に基づいて原料供給および/または反応液回収を行い反
応を制御することを特徴とするS,S−エチレンジアミ
ン−N,N’−ジコハク酸製造反応の制御法である。
【0011】上記反応の好ましい態様においては、反応
系内にアルカリ土類金属、鉄、亜鉛、銅、ニッケル、ア
ルミニウム、チタニウムおよびマンガンからなる群から
選ばれる少なくとも1種の金属イオンを存在させる。ま
た、反応に伴うpHの変化に対して、反応系内にアルカ
リまたは酸を添加してpH7〜10の範囲から選ばれる
一定の値にpHを保持する。該アルカリとしてはアルカ
リ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アン
モニアまたはその水酸化物およびエチレンジアミンから
選ばれる少なくとも1種であり、該酸としては硫酸、塩
酸、硝酸、リン酸、フマル酸、マレイン酸および S,
S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸から選ば
れる少なくとも1種である。
【0012】本発明は、反応の進行と共に電気伝導率が
有意に低下すること、さらに高濃度の金属イオン存在下
に、相当量のアルカリまたは酸を添加して反応中のpH
を一定に維持する高イオン濃度の反応系においても、驚
くべきことに電気伝導率の低下がさらに顕著になること
を見い出したことによる。したがって、予め電気伝導率
と生成物/基質比の相関データを取得することにより、
それに基づいて原料供給および/または反応液回収を操
作することで容易に原料、生成物濃度を制御することが
できる。電気伝導率計は通常、副反応等の影響を大きく
受けるため厳密な制御には適用できないが、本発明によ
るところの微生物反応は極めて副反応が少なく、かつ反
応進行とともに十分な電気伝導率変化を示すため、精度
の高い制御が可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の対象となる微生物は後記
のとおりである。本発明で使用される微生物の培地には
何ら特別の制限がなく、資化しうる炭素源、窒素源、無
機塩、更に微量の有機栄養物などを適当に含有するもの
であれば合成培地、天然培地のいずれを用いることもで
きる。また、培地へのエチレンジアミン−N,N’−ジ
コハク酸、エチレンジアミン−N−モノコハク酸、アス
パラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジンなどのアミノ酸
やフマル酸等の添加は、目的とする活性の高い菌体が得
られることがあり好ましい。培養条件は菌体や培地によ
り異なるが、培地のpHは4〜10、好ましくは6〜9
の範囲、培養温度は20〜45℃、好ましくは25〜3
5℃の範囲で、活性が最大となるまで1〜10日間好気
的に培養すればよい。
【0014】微生物に存在するフマラーゼ活性は、特願
平9−311046号明細書記載の方法により除去する
のが好ましい。除去処理は、菌体または該菌体処理物に
対して、pHは8〜10.5、好ましくは8.5〜10
の範囲、温度は、通常、氷結温度〜55℃の範囲で、処
理時間に制限なく行うことができる。
【0015】一般に、SS−EDDSの生産反応はフマ
ル酸とエチレンジアミン、および必要に応じて、アルカ
リ土類金属、鉄、亜鉛、銅、ニッケル、アルミニウム、
チタニウムおよびマンガン等の金属イオンを含む水溶液
中で、前記微生物またはその調製物、例えば、菌体また
は該菌体処理物(菌体破砕物、菌体抽出液、抽出した粗
・精製酵素、固定化した菌体または酵素、薬剤処理(安
定化処理等)した菌体または酵素)を接触させることに
より行われるが、菌体培養液にフマル酸とエチレンジア
ミンおよび該金属化合物を直接添加しても行うこともで
きる。
【0016】本発明における金属イオンは、例えば、M
g(II)、Ca(II)、Sr(II)、Ba(II)、Fe(II)、F
e(III) 、Zn(II))、Cu(II)、Ni(II)、Al(II
I) 、Ti(IV)およびMn(II)イオンならびにこれらの
各種錯イオンを挙げることができる。
【0017】これら金属イオン源としては、金属の水酸
化物、酸化物ならびに硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、炭酸
および酢酸等の無機または有機酸塩、さらにこれら金属
化合物を含む鉱物や本発明の基質であるフマル酸やエチ
レンジアミンとの化合物等を挙げることができる。これ
らの化合物は2種以上混合して用いることも可能であ
る。
【0018】また、これらの金属化合物中には、水に対
し溶解度の低いものあるいは難溶性のものもあるが、こ
れらを飽和濃度以上に、例えば、懸濁状態として存在さ
せた場合でも、SS−EDDSの配位能により相当量が
可溶化されるため使用可能である。
【0019】反応は、通常、0〜60℃、好ましくは2
0〜45℃の範囲で行う。pHは、通常、4〜11、好
ましくはpH7〜10の範囲である。反応で用いるフマ
ル酸の濃度は反応温度やpHにより異なるが、通常、
0.01〜3Mであり、反応液中に飽和溶解度以上の沈
殿物として存在させても反応の進行と共に溶解するため
差し支えない。エチレンジアミンの濃度は、通常、0.
01〜2Mである。反応液中への金属化合物添加量は生
成するSS−EDDSに対して、通常、0.01〜2倍
モルである。微生物などの使用量は基質に対する乾燥菌
体換算で、通常、0.01〜5重量%である。また、原
料がいずれかに関わらず、エチレンジアミン、フマル酸
を他の化合物から合成し得る反応系を本反応系と共存さ
せたとしても、本発明の効果が得られる限り差し支えな
い。
【0020】電気伝導率計の方式には、交流2電極方
式、交流4電極方式、電磁誘導方式等があるが、本発明
の効果が得られる限りいずれも使用可能である。電気伝
導率計の設定はあらかじめ一定濃度の反応液でのSS−
EDDS生成量と検出器の表示値との相関関係を示す検
量線を作成しておき、検出器の表示値が所定の幅となる
ようにすればよい。
【0021】原料供給および/または反応液回収の制御
は、電気伝導率検出器(通常、電極あるいはセルと呼ば
れる)を反応液中に接触させ、その電気信号を増幅器、
変換器、リレー等を内蔵する調節器に送り自動で行う
か、あるいは電気伝導率を随時モニターしながら手動で
行う。回分反応では、目的の基質、生成物に相当する電
気伝導率となった時点で反応液を回収すればよいし、ま
た、反応槽内の電気伝導率が一定となるように原料添加
と反応液回収を同時に行えば、連続反応とすることがで
きる。連続反応は、反応槽を連結して多槽で行うことも
可能である。
【0022】反応に当たっては菌体あたりの生産性や活
性等を判断して温度、pH条件を選択して行えばよい
が、電気伝導率はpH、温度の影響を受け易いので、反
応時にpHや温度の変化がある場合にはpH、温度によ
り電気伝導率がどのように変化するかを把握しておく必
要がある。より好ましくは適当な酸、またはアルカリ溶
液によりpH調節および温度調節を行う。pH調節を行
う場合、金属イオンを添加しないときおよびアルカリ土
類金属を添加したときにはpHが低下するので、アルカ
リ金属の水酸化物、エチレンジアミン、SS−EDDS
のアルカリ金属やアンモニウム塩等のアルカリによって
行い、アルカリ土類金属以外の金属イオンを添加する場
合は、通常、pHが上昇するので硫酸、塩酸、硝酸、リ
ン酸、フマル酸、マレイン酸、SS−EDDS等の酸に
よって行う。これらの反応、回収は、回分、連続のいず
れの方法でも行うことができる。
【0023】本発明で使用される微生物としてはEDD
Sアーゼ活性を有する微生物であればいずれも対象とな
る。例えば、バークホルデリア(Burkholderia)属、ア
シドボラックス(Acidovorax)属、シュードモナス(Ps
eudomonas)属、パラコッカス(Paracoccus)属、スフィ
ンゴモナス(Sphingomonas)属およびブレブンジモナス
(Brevundimonas)属に属する細菌、さらに宿主としてエ
シェリヒア(Esherichia)属またはロドコッカス(Rhod
ococcus)属に属する細菌を用い、これにEDDSアーゼ
をコードする遺伝子DNAを導入した形質転換体などを
例として挙げることができる。具体的には、Burkholder
ia sp.KK−5株〔FERM BP−5412〕、同K
K−9株〔FERM BP−5413〕、Acidovorax s
p.TN−51株〔FERM BP−5416〕、Pseudo
monas sp. TN−131株〔FERM BP−541
8〕、Paracoccus sp.KK−6株〔FERM BP−5
415〕、同TNO−5株〔FERM P-16435〕、Sphingom
onas sp.TN−28株〔FERM BP−5419〕、
Brevundimonas sp. TN−30株〔FERM BP−5
417〕および同TN−3株〔FERM BP−588
6〕、さらに、宿主として大腸菌JM109 株〔Esherichia
coli ATCC53323株〕またはRhodococcus rhodochrous A
TCC17895 株を用いた形質転換体を挙げることができ
る。上記微生物のうち、KK−5株、KK−9株、TN
−51株、TN−131株、KK−6株、TN−28
株、TN−30株、TN−3株は、本発明者らにより自
然界から新たに分離され、上記番号にて通産省工業技術
院生命工学工業技術研究所に寄託されており、これらの
菌株の菌学的性質は、前記特開平9−140390号公
報、特開平10−52292号公報等に記載されてい
る。また、TNO−5株も、本発明者らにより自然界か
ら新たに分離され、上記番号にて通産省工業技術院生命
工学工業技術研究所に寄託されている。本菌の菌学的性
質は以下に示す通りである。
【0024】
【0025】上記菌学的性質を、Bergey's Manual of S
ystematic Bacteriology Vol.9(1990)により分類すると
TNO−5株はパラコッカス(Paracoccus)属に属する
細菌と同定された。尚、TN−3株はディミヌタ(dimi
nuta) 種であることが確認されている。
【0026】大腸菌 JM109株(Esherichia coli ATCC53
323 株)、Rhodococcus rhodochrous ATCC17895 株は公
知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション
(ATCC)から容易に入手することができる。これらの菌
株を宿主として、TN−3株のEDDSアーゼ活性を有
するタンパク質をコードする遺伝子DNAを含むプラス
ミド pEDS020および pSE001 を導入した形質転換体が、
E. coli JM109/pEDS020(FERM BP-6161) および Rhodoco
ccus rhodochrous ATCC17895/pSE001(FERM BP-6548) と
して、それぞれ通産省工業技術院生命工学工業技術研究
所に寄託されている。なお、これら形質転換体の作成方
法は、本出願人の出願に係る特開平10−210984
号公報に記載されている。
【0027】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明す
る。
【0028】(1)SS−EDDS、フマル酸濃度の測
定 反応液中の不溶物を15,000rpm、5℃、5分間
の遠心分離にて除去した後、液体クロマトグラフィーに
てSS−EDDSを定量した。定量用カラムとしては W
AKOSIL 5C8(和光純薬)〔溶出液;10mM 水酸化テ
トラ−n−ブチルアンモニウムと0.4mM CuSO
を含む50mMリン酸、pH2〕を、また光学分割
カラムとして MCI GEL CRS 10W(三菱化学社製)〔溶出
液;10mM CuSO〕を使用した。
【0029】(2)電気伝導率の測定 交流2電極式電気伝導率指示調節計(東亜電波工業;C
DIC−7型)および電気伝導率セル(同;CGS−3
511型)をKCl水溶液を標準として校正し使用し
た。
【0030】参考例1 (1)菌体触媒の調製 Esherichia coli JM109/pEDS020を斜面培地から1白金
耳とり、50mg/Lアンピシリンを含有するLB培地
(1%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキ
ス、0.5%NaCl)に接種して37℃にて8時間振
とう培養した。これを、LB培地(50mg/Lアンピ
シリン、1mM isopropyl-b-galactosideを含有)に、
2.5%量接種し、37℃、30時間、好気的に振とう
培養した。培養液1Lから、菌体を遠心分離(7,00
0rpm,20分)により集菌し、100mM 1,4−
ジアミノブタンを含む50mMほう酸緩衝液pH7.7
5、500mLで1回洗浄した。500mLの同様の緩
衝液に菌体を再懸濁した後、氷中において25%グルタ
ルアルデヒドを25mMとなるように徐々に添加した。
pHが低下するので6N NaOHにてpH7.75に
調整した後、撹拌しながら2時間放置した。エチレンジ
アミンを50mMとなるように添加し、6NNaOHで
pH9.0とした後、2時間放置した。次に水素化ほう
素ナトリウムを25mMとなるように添加して撹拌しな
がら更に2時間放置した。さらに、6N NaOHにて
pH9.2に調整した後、水浴中で45℃、4時間、加
熱処理を行い、フマラーゼ活性を除去した。
【0031】(2)反応液の調製と反応 反応液組成は最終濃度換算で、1Kgあたりフマル酸
1.027モル、エチレンジアミン0.513モル、水
酸化マグネシウム0.513モル、NaOH0.513
モル、菌体50g(乾燥重量換算)であり、水、フマル
酸、水酸化マグネシウムを透明となるまで激しく撹拌し
たあと、24wt%NaOH、エチレンジアミンの順に
加え、透明となるまで撹拌し、40℃にて菌体を添加す
ることにより反応を開始し、24時間、40℃にて反応
を行った。菌体添加前のpHは約8.5であったが、反
応中pHが低下するので、24wt%NaOHによりp
Hを8.5に保った。反応中の電気伝導率変化と反応液
組成を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】実施例1 (1)菌体触媒の調製 参考例1と同様。
【0034】(2)反応液の調製と反応 参考例1と同様に反応を行い、電気伝導率が36.0m
S/cmとなった時点で反応液を回収し分析した。SS
−EDDS濃度は448mM、フマル酸は40mMであ
った。
【0035】実施例2 (1)菌体触媒の調製 参考例1と同様。
【0036】(2)反応液の調製と反応 参考例1と同様に反応を行い、電気伝導率が36.0m
S/cmとなった時でチューブポンプで同じ組成の反応
液を定速で供給、同時に反応液の一部を回収することに
より、電気伝導率を35.8〜36.2mS/cmの幅
に保った。この回収の際、ギアポンプと中空糸膜[クラ
レ;SF−8102(孔径0.1μm、内径×長さ=
1.2×350mm)]を用いることで、菌体は反応槽
に戻し、ろ液のみを回収できる様にした。48時間操作
を行い、この間のSS−EDDS濃度は、442〜45
0mM、フマル酸濃度は、38〜41mMであった。
【0037】参考例2 (1)菌体触媒の調製 参考例1と同様。
【0038】(2)反応液の調製と反応 反応液組成は最終濃度換算で、1Kgあたりフマル酸
1.027モル、エチレンジアミン0.513モル、N
aOH1.027モル、菌体50g(乾燥重量換算)で
あり、水、フマル酸、24wt%NaOH、エチレンジ
アミンの順に加え、透明となるまで撹拌し、40℃にて
菌体を添加することにより反応を開始し、40℃で48
時間反応を行った。菌体添加前のpHは約8.8であ
り、反応中pHが低下したが、pHを一定に保つための
アルカリは添加しなかった。反応中の電気伝導率変化と
反応液組成を表2に示す。
【0039】
【表2】 実施例3 (1)菌体触媒の調製 参考例1と同様。
【0040】(2)反応液の調製と反応 参考例2と同様に反応を行い、電気伝導率が51.8m
S/cmとなった時点で反応液を回収し分析した。SS
−EDDS濃度は220mM、フマル酸は656mMで
あった。
【0041】
【発明の効果】予め電気伝導率と生成物/基質比の相関
データを取得することにより、それに基づいて原料供給
および/または反応液回収を操作することで容易に原
料、生成物濃度を制御することができる。電気伝導率計
は通常、副反応等の影響を大きく受けるため厳密な制御
には適用できないが、本発明によるところの微生物反応
は極めて副反応が少なく、かつ反応進行とともに十分な
電気伝導率変化を示すため、精度の高い制御が可能であ
る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年12月17日(1999.12.
17)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正内容】
【0023】本発明で使用される微生物としてはEDD
Sアーゼ活性を有する微生物であればいずれも対象とな
る。例えば、バークホルデリア(Burkholder
ia)属、アシドボラックス(Acidovorax)
属、シュードモナス(Pseudomonas)属、パ
ラコッカス(Paracoccus)属、スフィンゴモ
ナス(Sphingomonas)属およびブレブンジ
モナス(Brevundimonas)属に属する細
菌、さらに宿主としてエシェリヒア(Esherich
ia)属またはロドコッカス(Rhodococcu
s)属に属する細菌を用い、これにEDDSアーゼをコ
ードする遺伝子DNAを導入した形質転換体などを例と
して挙げることができる。具体的には、Burkhol
deria sp.KK−5株〔FERM BP−54
12〕、同KK−9株〔FERM BP−5413〕、
Acidovorax sp.TN−51株〔FERM
BP−5416〕、Pseudomonas sp.
TN−131株〔FERM BP−5418〕、Par
acoccus sp.KK−6株〔FERM BP−
5415〕、同TNO−5株〔FERM BP−654
〕、Sphingomonas sp.TN−28株
〔FERM BP−5419〕、Brevundimo
nas sp.TN−30株〔FERM BP−541
7〕および同TN−3株〔FERM BP−588
6〕、さらに、宿主として大腸菌JM109株〔Esh
erichia coliATCC53323株〕また
はRhodococcus rhodochrous
ATCC17895株を用いた形質転換体を挙げること
ができる。上記微生物のうち、KK−5株、KK−9
株、TN−51株、TN−131株、KK−6株、TN
−28株、TN−30株、TN−3株は、本発明者らに
より自然界から新たに分離され、上記番号にて通産省工
業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されており、こ
れらの菌株の菌学的性質は、前記特開平9−14039
0号公報、特開平10−52292号公報等に記載され
ている。また、TNO−5株も、本発明者らにより自然
界から新たに分離され、上記番号にて通産省工業技術院
生命工学工業技術研究所に寄託されている。本菌の菌学
【書類名】 受託番号変更届
【提出日】 平成11年12月17日(1999.1
2.17)
【旧寄託機関の名称】 工業技術院生命工学工業技術研
究所
【旧受託番号】 微工研菌寄第16435号
【新寄託機関の名称】 工業技術院生命工学工業技術研
究所
【新受託番号】 FERM BP−6547

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンジアミン−N,N’−ジコハク
    酸エチレンジアミンリアーゼ活性を有する微生物または
    その調製物の作用により、フマル酸とエチレンジアミン
    からS,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸
    を製造する方法において、反応系内に電気伝導率計を設
    置し、検知した電気伝導率の変化に基づいて原料供給お
    よび/または反応液回収を行い反応を制御することを特
    徴とするS,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハ
    ク酸製造反応の制御法。
  2. 【請求項2】 反応系内に、アルカリ土類金属、鉄、亜
    鉛、銅、ニッケル、アルミニウム、チタニウムおよびマ
    ンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イ
    オンを存在させる請求項1に記載のS,S−エチレンジ
    アミン−N,N’−ジコハク酸製造反応の制御法。
  3. 【請求項3】 反応に伴うpHの変化に対して、反応系
    内にアルカリまたは酸を添加してpH7〜10の範囲か
    ら選ばれる一定の値にpHを保持する請求項1または2
    記載のS,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク
    酸製造反応の制御法。
  4. 【請求項4】 アルカリがアルカリ金属の水酸化物、ア
    ルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアまたはその水酸
    化物およびエチレンジアミンから選ばれる少なくとも1
    種であり、酸が硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、フマル酸、
    マレイン酸および S,S−エチレンジアミン−N,
    N’−ジコハク酸から選ばれる少なくとも1種である請
    求項3記載のS,S−エチレンジアミン−N,N’−ジ
    コハク酸製造反応の制御法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006187257A (ja) * 2005-01-07 2006-07-20 Daiyanitorikkusu Kk アミド化合物の製造方法およびアクリルアミド系ポリマー
JP2016521574A (ja) * 2013-06-10 2016-07-25 イネオス バイオ ソシエテ アノニム 水利用の低減に有効な低ホスファート培地中でco含有ガス状基質を発酵させるためのプロセス

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