JP2000340096A - 電子放出電極 - Google Patents

電子放出電極

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子放出材料を有する電子放出電極におい
て、放電時の電子放出材料の蒸発を抑制し、また、イオ
ンスパッタリングに対する電子放出材料の耐性を高め
る。 【解決手段】 Ba、SrおよびCaの少なくとも1種
からなる第1成分と、Ta、Zr、Nb、TiおよびH
fの少なくとも1種からなる第2成分とを金属元素成分
として含み、酸窒化物ペロブスカイトを含有する電子放
出材料を用いた電極。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蛍光ランプ等の種
々の放電灯や陰極線管の電極、プラズマディスプレイ、
蛍光表示管等の電極など、電子放出機能を有する電極に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネルギー、省資源の社会的要
求が高まりつつあり、それに対応して、一般照明用光源
やディスプレイの省エネルギー化が積極的に進められて
いる。例えば、白熱電球から、よりエネルギー効率が高
く寿命も長い電球形蛍光ランプへの置き換えや、ブラウ
ン管から、よりエネルギー消費量の少ない液晶ディスプ
レイヘの置き換えが急速に進んでいる。それに伴って、
電球形蛍光ランプ用や、液晶ディスプレイのバックライ
ト光源用として、蛍光ランプの利用が急速に進んでい
る。同様に、ブラウン管の陰極線管やプラズマディスプ
レイ、蛍光表示管などについても、エネルギー効率が高
く省エネルギー化が可能な電極が要求されている。
【0003】従来、蛍光ランプの電極としては、BaO
を主成分とする酸化物電極が一般に利用されている。こ
のような電極は、例えば特開昭59−75553号公報
に記載されている。しかし、BaOを主成分とする酸化
物電極は、電子放出性がよい反面、比抵抗が高い。その
ため、大きな電子放出電流を得ようとすると高温になっ
てしまい、その結果、蒸気圧が高くなって蒸発が多くな
るので、寿命が短くなるという問題が生じる。また、B
aOを主成分とする酸化物電極では、Baの炭酸塩を塗
布したタングステンコイルに電流を流して炭酸塩を酸化
物とし、その際に脱炭酸を行う必要がある。しかし、こ
の電極を細管化した蛍光ランプに適用する場合、脱炭酸
が不十分となりやすく、その結果、ランプのバルブ内に
炭酸ガスが残留して放電が不安定になったり、輝度維持
率が極端に悪化したりするという問題が生じる。
【0004】また、米国特許第2,686,274号明
細書には、Ba2TiO4などのセラミックスを還元処理
することにより半導体化した棒状の電極が記載されてい
るが、この種のセラミック半導体電極には、熱衝撃に弱
い、Hgイオンや希ガスイオンによるスパッタリングに
よって劣化しやすい、使用可能な電流密度が小さい、と
いう問題があった。
【0005】このような従来の蛍光ランプ用電極に対
し、本発明者らは、一端が開放し一端が閉じた円筒状の
容器内にセラミック半導体を収容した構造の電極を提案
し、また、この電極について、およびこの電極を用いた
放電灯について、様々な改良を加えている(特公平6−
103627号公報、特許第2628312号、特許第
2773174号、特許第2754647号、特開平4
−43546号公報、特開平6−267404号公報、
特開平9−129177号公報、特開平10−1218
9号公報、特開平6−302298号公報、特開平7−
142031号公報、特開平7−262963号公報、
特開平10−3879号公報)。これらの電極は、耐ス
パッタリング性が良好であり、また、蒸発しにくいた
め、劣化しにくく長寿命であるという特徴をもつ。しか
し、耐スパッタリング性および蒸発しにくさについて
は、さらなる改良が望まれる。
【0006】また、蛍光ランプ等の放電灯用電極のほ
か、熱陰極動作または冷陰極動作による放電を利用する
各種電極、例えば、ブラウン管、電子顕微鏡、プラズマ
ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイな
どに使用される電極においても、蒸発やイオンスパッタ
リングによる劣化などが問題となっており、寿命の向上
が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、電子
放出材料を有する電子放出電極において、放電時の電子
放出材料の蒸発を抑制し、また、イオンスパッタリング
に対する電子放出材料の耐性を高めることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記(1)
〜(9)の本発明により達成される。 (1) Ba、SrおよびCaの少なくとも1種からな
る第1成分と、Ta、Zr、Nb、TiおよびHfの少
なくとも1種からなる第2成分とを金属元素成分として
含み、酸窒化物ペロブスカイトを含有する電子放出材料
を用いた電極。 (2) 第1成分をMI、第2成分をMIIでそれぞれ表
したとき、前記電子放出材料が、前記酸窒化物ペロブス
カイトとしてMIII2N型結晶を含む上記(1)の電
極。 (3) 前記電子放出材料において、第1成分と第2成
分との合計に対し、第1成分のモル比をXとし、第2成
分のモル比をYとしたとき、 0.8≦X/Y≦1.5 である上記(1)または(2)の電極。 (4) 前記電子放出材料において、第2成分の一部
が、炭化物および/または窒化物として含有されている
上記(1)〜(3)のいずれかの電極。 (5) 前記電子放出材料において、元素M(Mは、M
g、Sc、Y、La、V、Cr、Mo、W、Fe、Ni
およびAlの少なくとも1種)を金属元素成分として含
有する上記(1)〜(4)のいずれかの電極。 (6) 前記電子放出材料は、前記元素Mを酸化物換算
で0質量%超10質量%以下含有する上記(5)の電
極。 (7) 前記電子放出材料は、第1成分をMI、第2成
分をMIIでそれぞれ表したとき、MI 4II 29型結晶、
III 26型結晶、MIII3型結晶、MI 5II 415
型結晶、MI 7II 622型結晶およびMI 6IIII 418
型結晶の少なくとも1種を含む上記(1)〜(6)のい
ずれかの電極。 (8) 前記電子放出材料は、室温における比抵抗が1
-6〜103Ωmである上記(1)〜(7)のいずれかの
電極。 (9) 放電灯用電極、電子管の電子銃用電極、ガス放
電パネル用電極、フィールドエミッションディスプレイ
用電極、蛍光表示管用電極または電子顕微鏡用電極であ
る上記(1)〜(8)のいずれかの電極。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の電極に用いる電子放出材
料は、上記酸窒化物を含有すする。上記酸窒化物は、蒸
気圧が低く、しかも、電気抵抗を低くできる。そのた
め、BaOを主成分とする従来の電子放出材料に比べ、
より大きな電子放出電流を流すことが可能であり、しか
も、電子放出材料の蒸発による電極劣化が少ない。ま
た、本出願人による前記特開平9−129177号公報
等に記載されているBa−Zr−Ta系複合酸化物から
なる電極に比べても、電極劣化が少なくなる。したがっ
て、熱陰極動作を行う電極に適用したときに、従来の電
極よりも高い輝度が得られ、しかも、電極寿命が著しく
長くなる。
【0010】また、上記酸窒化物は、イオンスパッタリ
ングされても消耗しにくい。したがって、陰極降下電圧
が大きいためにイオンスパッタリングが激しくなる冷陰
極動作においても、消耗が少なく長寿命が実現する。
【0011】なお、ペロブスカイト構造をもつ上記酸窒
化物は、Journal of Materials Science,29,(1994),pp4
686-4693に記載されている。この文献では、アンモニア
気流中において1000℃で焼成することにより上記酸
窒化物を製造しているが、同文献では、このようにして
製造した酸窒化物を誘電体としてしか評価していない。
酸窒化物は還元性雰囲気中でも安定な化合物であるた
め、内部電極を卑金属から構成した積層セラミックコン
デンサに適している。
【0012】また、特開昭63−252920号公報
(米国特許第4,964,016号明細書が対応)に
は、式AB(O,N)3で表される導電性ペロブスカイ
トが記載されている。上記式において、元素Aは、IA
族およびIIA族の金属、イットリウムおよびランタノイ
ドから選ばれる金属を示し、元素Bは、IVA族ないしI
B族の遷移金属から選ばれる金属を示す。同公報では、
この導電性ペロブスカイトを、金属Aと金属Bとの混合
酸化物に対し約700〜900℃の温度でアンモニア気
流中において焼成することにより製造している。同公報
では、この導電性ペロブスカイトをセラミックコンデン
サの電極に使用することを提案しており、同公報には電
子放出材料に適用する旨の記載も示唆もない。同公報に
記載された導電性ペロブスカイトの組成は、本発明にお
いて用いる電子放出材料に含有される上記酸窒化物の組
成と重なる。しかし、同公報では、本発明で限定する組
成をもつ酸窒化物ペロブスカイトの具体的開示はない。
また、本発明において限定する組成を用いて、同公報に
記載された条件でアンモニア気流中において焼成する
と、比抵抗が高くなりすぎて、電子放出材料として好ま
しい特性は得られない。
【0013】このように、ペロブスカイト構造をもつ酸
窒化物自体は知られているが、これを電子放出材料とし
て使用することは、本発明者らが全く新規に提案するこ
とであり、この酸窒化物を電極に用いたときに上記効果
が実現することは、従来全く知られていない。すなわ
ち、本発明において用いる電子放出材料が含有する上記
酸窒化物は、電子放出材料としてはこれまで知られてい
なかった。
【0014】以下、本発明の電極に用いる電子放出材料
について詳細に説明する。
【0015】電子放出材料 本発明で用いる電子放出材料は、Ba、SrおよびCa
の少なくとも1種からなる第1成分と、Ta、Zr、N
b、TiおよびHfの少なくとも1種からなる第2成分
とを、金属元素成分として含む。第1成分は、低仕事関
数の電子放出成分である。第2成分は、電子放出材料の
低抵抗化および高融点化のために必要な成分である。第
1成分のうち好ましい元素はBaであり、Baは第1成
分の50〜100原子%、特に70〜100原子%を占
めることが好ましい。第2成分のうち好ましい元素はT
aおよび/またはZr、特にTaであり、Taは第2成
分の50〜100原子%、特に70〜100原子%を占
めることが好ましい。
【0016】本発明で用いる電子放出材料は、ペロブス
カイト構造を有する酸窒化物、すなわち酸窒化物ペロブ
スカイト(オキシナイトライドペロブスカイト)を含有
する。上記第1成分をMI、上記第2成分をMIIでそれ
ぞれ表したとき、この酸窒化物は、MIII2N型結晶
を少なくとも含むことが好ましい。なお、この結晶にお
いて、酸素と窒素との比は2:1に限定されない。実際
の生成物は、酸素や窒素の欠陥が存在することにより、
III2+δN1-δ’として表されるものとなる。こ
こでδおよびδ’は、好ましくは−0.5〜0.95、
より好ましくは0〜0.7である。δおよびδ’がこの
ような範囲に存在すれば、電子放出材料の蒸発およびス
パッタリングによる消耗の抑制効果が高くなる。なお、
III2N型結晶は、MIII(O,N)3型結晶と表
すこともできる。
【0017】本発明で用いる電子放出材料中には、上記
酸窒化物ペロブスカイトのほか、酸化物が含まれていて
もよい。酸化物としては例えば、MI 4II 29型結晶、
III 26型結晶、MIII3型結晶、MI 5II 415
型結晶、MI 7II 622型結晶およびMI 6IIII 418
型結晶等の複合酸化物の少なくとも1種が挙げられる。
なお、MI 6IIII 418型結晶としては、例えばBa6
ZrTa418が挙げられる。
【0018】電子放出材料は、上記酸窒化物のほか、炭
化物および/または窒化物、特にTaC等のMII炭化物
を含有していてもよい。この炭化物や窒化物は、後述す
るように、電子放出材料製造の過程で第2成分の一部が
炭化物や窒化物となる結果、含有されるものである。こ
れらの炭化物および窒化物は、高融点で導電性の高い物
質であるため、これらが含まれていても電子放出特性や
耐スパッタリング性は全く損なわれない。なお、第2成
分のうち例えばTaは炭化物となりやすく、Zrは窒化
物となりやすい。
【0019】電子放出材料中の各結晶の存在は、X線回
折により確認することができる。本発明で用いる電子放
出材料の典型的なX線回折パターンを、図8に示す。図
8に示すパターンは、TaCを除き、実質的にMIII
2N型結晶の単一相からなる電子放出材料のものであ
る。本発明で用いる電子放出材料は、MIII2N型結
晶を主成分とすることが好ましく、実質的にこの結晶だ
けから構成されることがより好ましい。ただし、上述し
たように、炭化物および/または窒化物が含まれていて
も問題はない。なお、MIII2N型結晶が主成分であ
るとは、X線回折パターンにおいてそれぞれの結晶の最
大ピーク強度を比較したとき、MIII2N以外の結晶
の最大ピーク強度がMIII2N型結晶の最大ピーク強
度の50%以下、好ましくは30%以下であることを意
味する。ただし、例えばBaZrO 3とBa5Ta415
とのように、最大ピーク位置がほぼ一致する2種または
それ以上の酸化物が同時に生成している場合には、2番
目に大きなピークの強度を用いて、MIII2N型結晶
の最大ピークとの比較を行う。
【0020】電子放出材料において、第1成分、第2成
分の合計に対し、第1成分のモル比をX、第2成分のモ
ル比をYとしたとき、好ましくは 0.8≦X/Y≦1.5 であり、より好ましくは 0.9≦X/Y≦1.2 である。X/Yが小さすぎる場合、放電により第1成分
が早期に枯渇してしまうほか、耐スパッタリング性が不
十分となる。一方、X/Yが大きすぎる場合、放電中に
電子放出材料の蒸発およびスパッタリングによる飛散が
生じやすくなる。そのため、いずれの場合でも、例えば
放電灯に適用した場合には管壁黒化による輝度低下が生
じやすくなる。
【0021】電子放出材料は、第1成分および第2成分
以外の金属元素成分を含有していてもよい。このような
金属元素成分としては、元素M(Mは、Mg、Sc、
Y、La、V、Cr、Mo、W、Fe、NiおよびAl
の少なくとも1種)が挙げられる。元素Mは、焼結性向
上のために必要に応じて添加される。電子放出材料中に
おける元素Mの含有量は、酸化物換算で好ましくは10
質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。元素
Mの含有量が多すぎると、電子放出材料の融点が低くな
ってしまうため、高温使用時の蒸気圧が高くなって寿命
が短くなる。一方、元素M添加による効果を十分に発揮
させるためには、元素Mの含有量は0.5質量%以上と
することが好ましい。なお、酸化物換算での含有量と
は、化学量論組成の酸化物、すなわち、MgO、Sc2
3、Y23、La23、V25、Cr 23、MoO3
WO3、Fe23、NiOおよびAl23に換算して求
めた含有量である。
【0022】元素Mは、前記酸窒化物中においてMI
一部またはMIIの一部と置換されているか、または置換
されずに、酸化物、窒化物、炭化物などとして前記酸窒
化物と混合された状態となっている。なお、前記酸窒化
物結晶においてMIの一部またはMIIの一部が他の金属
元素で置換されていることは、X線回折におけるピーク
のシフトにより確認することができる。X線回折におけ
るピークのシフトおよびピーク強度比の変化により確認
することができる。
【0023】本発明で用いる電子放出材料の室温におけ
る比抵抗は、通常、10-6〜103Ωmなので、誘電体と
はならない。そして、動作温度(通常、熱陰極では90
0〜1400℃程度、冷陰極では700〜1000℃程
度)において電子放出材料として優れた性能を示す。す
なわち、大きな放電電流を流すことによって高温となっ
た場合でも、蒸気圧が低いために消耗が少ない。
【0024】電子放出材料の製造方法 本発明で用いる電子放出材料は、従来知られている酸窒
化物の製造方法を利用して製造することができる。すな
わち、前記Journal of Materials Science,29,(1994),p
p4686-4693に示されるように、酸化物や炭酸塩などの原
料化合物を混合した後、アンモニア気流中で焼成するこ
とにより、上記酸窒化物を得ることができる。ただし、
前述したように、前記Journal of Materials Science,2
9,(1994),pp4686-4693に記載された条件で焼成した場合
には比抵抗が高くなりすぎるため、アンモニア気流中で
焼成する場合には、焼成温度を好ましくは1100℃以
上、より好ましくは1200℃以上とする。なお、被焼
成物の溶融を防ぐためには、焼成温度を好ましくは20
00℃以下、より好ましくは1700℃以下とする。
【0025】しかし、アンモニア気流中で焼成する場
合、排ガスの中にアルカリ性の強いアンモニアが含まれ
るため、製造装置の耐腐食性に留意する必要があり、ま
た、アンモニアが環境中に放出されないように、硫酸な
どを使用したトラップを排気口に配置する必要がある。
そのため、大量生産に不向きであり、また、設備コスト
が高くなる。
【0026】そこで、本発明者らは、アンモニア気流を
使用せずに酸窒化物ペロブスカイトを生成できる製造方
法を探索した結果、少なくとも原料粉末を含有する被焼
成物と炭素とを近接配置した状態で、窒素ガス含有雰囲
気中において焼成すれば、酸窒化物ペロブスカイトを生
成できることを見いだした。この方法では、安定で扱い
やすい窒素ガスを利用できるため、アンモニア気流を利
用する方法の問題点が解消される。この方法は、酸窒化
物ペロブスカイトの製造方法としては全く新規なもので
あり、本発明者らが初めて提案する方法である。なお、
この方法における被焼成物は、原料粉末そのものであっ
てもよく、原料粉末を含有する塗膜であってもよく、原
料粉末の成形体であってもよい。また、この場合の原料
粉末は、酸化物および/または焼成により酸化物を生成
する出発原料であってもよく、これを焼成して複合酸化
物を生成させた中間生成物であってもよい。
【0027】この方法において、被焼成物と炭素とを近
接配置する手段は特に限定されず、例えば、少なくとも
一部が炭素から構成されている焼成炉を用いたり、炉中
にバルク状、粒状、粉末状の炭素を入れた状態で被焼成
物を焼成したり、被焼成物に粒状、粉末状の炭素を混合
して焼成したり、被焼成物を少なくとも一部が炭素から
なる容器(匣)に入れて焼成したり、これら各手段の2
種以上を併用したりすればよい。これらのうちでは、被
焼成物中の原料粉末と炭素とをほぼ均一に接触させるこ
とが容易であって、かつ、被焼成物を窒素気流にさらし
やすいことから、特に、被焼成物に粒状や粉末状の炭素
を混合して焼成する方法が好ましい。ただし、比較的薄
い塗膜を焼成する際には、塗膜中に炭素粉末を分散させ
なくてもよい。塗膜が薄い場合には、焼成炉や容器から
塗膜中の原料粉末に十分に炭素を供給でき、また、薄い
塗膜に炭素粉末を分散させると、炭素粉末が塗膜の密度
や平坦性などに影響を与えるおそれがあるからである。
【0028】なお、少なくとも一部が炭素で構成された
炉としては、例えば、断熱材の少なくとも一部を炭素で
構成した炉が挙げられ、また、電気炉では、発熱体だ
け、または発熱体および断熱材をそれぞれ炭素で構成し
た炉が挙げられる。また、炭素からなる上記容器として
は、被焼成物に対する窒素ガスの接触を阻害しないよう
に、少なくとも一端が開放された容器を用いる。
【0029】また、炭素単体に替えて、炭素化合物を利
用することもできる。例えば、通常、成形体や塗膜には
有機化合物からなるバインダが含まれるが、焼成する際
に脱バインダを不十分にすることにより、バインダから
炭素を供給して酸窒化物を形成することもできる。ま
た、原料粉末中に有機化合物を入れたり、炉中に有機化
合物を入れて焼成したりすることによっても、酸窒化物
の生成は可能である。しかし、酸窒化物を安定して製造
でき、かつ、有機化合物の残留に起因する電子放出材料
の特性低下を招く心配がないことから、炭素単体を利用
する方法がより好ましい。
【0030】以下、本発明で用いる電子放出材料を粉
末、焼結体または膜として得る方法のそれぞれについ
て、詳細に説明する。
【0031】焼結体(粉末)の製造方法1 本発明で用いる電子放出材料を粉末または焼結体として
得るに際しては、酸窒化物の生成を上記した条件で行え
ばよく、そのほかの工程は特に限定されず、例えば図
1、図2および図3にそれぞれ工程の流れを示す方法を
利用することができる。まず、図1に示す各工程につい
て説明する。
【0032】秤量工程 秤量工程では、出発原料を最終組成に応じて秤量する。
出発原料として用いる化合物は、酸化物および/または
焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、蓚酸塩
などを用いればよいが、通常、第1成分を含む化合物に
は、BaCO3、SrCO3およびCaCO3を用いるこ
とが好ましく、第2成分を含む化合物には、Ta25
ZrO2、Nb25、TiO2およびHfO2を用いるこ
とが好ましい。また、前記元素Mの出発原料としては、
MgCO3、Sc23、Y23、La23、V25、C
23、MoO3、WO3、Fe23、NiOおよびAl
23を用いることが好ましい。
【0033】混合工程 混合工程では、秤量した出発原料を混合し、原料粉末を
得る。混合には、ボールミル法、摩擦ミル法、共沈法な
どの方法を用いることができる。混合後、脱水加熱乾燥
法または凍結乾燥法などで乾燥する。
【0034】この混合工程では、必要に応じ出発原料に
炭素を添加する。炭素は、出発原料の混合の際に同時に
湿式混合してもよく、出発原料同士を混合した後に添加
して乾式混合してもよい。炭素は比重が比較的小さく、
分散媒中に分散しにくいため、湿式混合を行う場合には
必要に応じ分散剤を添加する。分散媒は水系であっても
有機系であってもよいが、環境への負荷を考慮すると、
水系のものを利用することが好ましい。
【0035】炭素の添加量は、出発原料に対し好ましく
は50質量%以下、より好ましくは20質量%以下であ
る。添加量が多すぎると、電子放出に寄与しない炭化物
や窒化物が多量に生成しやすくなるため、好ましくな
い。また、焼成後に炭素が多量に残留して、電子放出材
料として使用する際に蒸発してガス化しやすくなる点で
も、好ましくない。一方、炭素からなる容器および炭素
を含む炉材を利用しない場合において炭素の添加量が少
なすぎると、酸窒化物を生成することが困難となる。そ
のためこの場合には、炭素の添加量を出発原料に対し好
ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%とす
る。炭素の種類は特に限定されず、グラファイトや無定
型炭素などのいずれであってもよい。混合物中における
炭素の平均粒径は、好ましくは1mm以下、より好ましく
は500μm以下である。平均粒径が大きすぎると、混
合物中において均一に分散しにくくなるほか、反応しに
くくなるので、焼成後に残留しやすくなる。炭素粉末の
平均粒径は小さいほうが好ましいが、小さすぎると取り
扱いおよび分散が困難となるので、好ましくは0.01
μm以上とする。なお、炭素粉末の分散性を向上させる
ために、分散剤を用いてもよい。
【0036】酸窒化物生成工程 酸窒化物生成工程では、原料粉末を窒素ガス含有雰囲気
中で、好ましくは窒素気流中で焼成し、酸窒化物ペロブ
スカイトを含む電子放出材料を得る。このとき、前述し
たように、必要に応じ、少なくとも一部が炭素で構成さ
れた炉や容器を用いたり、炉中に炭素を配置したり、こ
れらを併用したりする。焼成温度は、好ましくは800
〜2000℃、より好ましくは1100〜1700℃で
ある。焼成温度が低すぎると酸窒化物が生成されにくく
なり、焼成温度が高すぎると炭化物や窒化物の生成量が
多くなって、いずれの場合でも電子放出材料としての性
能が不十分となりやすい。また、焼成温度が高すぎる
と、被焼成物が溶融するおそれもある。焼成時間(温度
保持時間)は、通常、0.5〜5時間程度とすればよ
い。この焼成は、粉末の状態で行ってもよく、取り扱い
を容易にするために粉末を成形した状態で行ってもよ
い。この焼成によりペロブスカイト構造の酸窒化物が生
成される。また、このとき、酸窒化物以外に、前記第2
成分の炭化物および/または窒化物も同時に生成される
ことがあり、特に炭化物は生成されやすい。
【0037】なお、原料粉末に混合された炭素粉末は、
窒素ガス含有雰囲気中での焼成により反応して消耗する
ため、混合量が適切であれば焼成体中に実質的に残存し
ない。したがって、焼成後、電子放出材料から炭素粉末
を除去する必要はないが、例えば粒径の大きな炭素粉末
を比較的多量に用いた場合などには、必要に応じて除去
作業を行ってもよい。
【0038】上記窒素ガス含有雰囲気としては、窒素1
00%であることが最も好ましいが、Ar等の不活性ガ
ス、CO、H2等の還元性ガス、炭素を構成成分とする
ガス(例えばベンゼンや一酸化炭素など)が含まれてい
てもよい。ただし、その場合でも、窒素が全体の50%
以上を占めることが好ましい。炭素を構成成分とするガ
スは、窒素に比べ一般に取り扱いが難しい上、酸窒化物
ペロブスカイトを安定して生成させることが難しい。
【0039】窒素気流中で焼成する場合、被焼成物近傍
での単位面積当たりの窒素ガス流量、すなわち、被焼成
物近傍の空間において、窒素気流の流れる方向と垂直な
断面における単位面積あたりの窒素ガス流量は、0.0
001m/s以上、特に0.001m/s以上とすることが好
ましい。この程度の流量で被焼成物に窒素ガスを供給す
ることにより、被焼成物中において酸窒化物が迅速かつ
均一に生成しやすくなる。なお、上記流量は被焼成物が
飛散しない範囲内で設定すればよく、その具体的な上限
は特にないが、通常は5m/sを超える流量とする必要は
ない。
【0040】上記酸窒化物は、酸素ガス含有雰囲気中で
加熱した場合に分解されやすいため、焼成雰囲気は低酸
素分圧に保つことが好ましい。酸窒化物の分解されやす
さは加熱温度によっても異なるので、焼成温度に応じて
酸素分圧を適切に制御すればよいが、好ましくは5.0
×103Pa(0.05気圧)以下、より好ましくは1.
0×103Pa(0.01気圧)以下、さらに好ましくは
0.1×103Pa(0.001気圧)以下である。な
お、上記酸素分圧の好ましい下限は特になく、酸素分圧
がゼロであってもよいが、通常の焼成装置を用いた場
合、焼成雰囲気中の酸素分圧は一般に0.1Pa以上とな
る。
【0041】粉砕工程 粉砕工程では、酸窒化物生成工程で得られた電子放出材
料を粉砕し、電子放出材料粉末を得る。この粉砕には、
ボールミルや気流粉砕を利用すればよい。粉砕工程を設
けることにより、電子放出材料の粒径を小さくでき、か
つ、粒度分布を狭くできるので、電子放出性の向上およ
びそのばらつきを小さくできる。したがって、粉砕工程
は設けることが好ましい。最終的に焼結体を得る場合に
は、次の成形工程に進む。
【0042】粉砕後、造粒工程を必要に応じて設ける。
造粒工程では、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ
エチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイ
ド(PEO)などの有機系バインダを含む水溶液を用い
て粉砕粉を顆粒化する。造粒手段は特に限定されず、例
えば、噴霧乾燥法、押出造粒法、転動造粒法や、乳鉢、
乳棒を用いる方法などを利用することができる。
【0043】成形工程 成形工程では、目的とする電極形状の成形体を圧縮成形
により得る。
【0044】焼結工程 焼結工程では、成形体を焼成し、焼結体(電極)を得
る。焼結工程では、既に生成している酸窒化物の分解を
防ぐため、酸窒化物生成工程と同様に、窒素ガス含有雰
囲気中で焼成を行う。ただし、この焼結工程では、被焼
成物である成形体に対し炭素を近接配置する必要はな
い。このときの窒素ガス含有雰囲気は、酸窒化物生成工
程の説明に記載した窒素ガス含有雰囲気と同様であり、
酸素分圧についても同様である。焼成温度は、好ましく
は、800〜2000℃、さらに好ましくは1100〜
1700℃で行う。焼成温度が低すぎると焼結体の密度
が不十分となりやすく、焼成温度が高すぎると、組成ず
れが生じたりセッターと反応したりしやすい。焼成時間
は、通常、0.5〜5時間程度とすればよい。
【0045】なお、図1に示す方法において、混合工程
の直後に成形工程を設けることにより、焼結工程が酸窒
化物生成工程を兼ねる構成としてもよい。ただし、その
構成において出発原料に炭素粉末を混合する場合、成形
体中に炭素粉末が存在することになる。そのため、成形
体を焼結する際に成形体中の炭素が反応して、炭素の消
耗により焼結体の寸法精度や密度が影響を受けるおそれ
がある。これに対し図1の方法では、酸窒化物生成工程
で炭素を消耗させた後に成形するため、成形体を焼結す
る際に炭素消耗による影響を心配する必要がない。
【0046】焼結体の製造方法2 図2に示す方法は、酸窒化物生成工程の前に複合酸化物
生成工程を設けると共に、酸窒化物生成工程が焼結工程
を兼ねる点が、図1に示す方法と異なる。上記製造方法
1のように、BaCO3などの反応性の高い材料を含む
出発原料を用いて比較的高温の熱処理により酸窒化物を
直接生成させた場合、焼成時に炉材、例えばジルコニア
製のセッター、と出発原料とが反応することがある。焼
成時に炉材と出発原料とが反応すると、炉材が消耗した
り、電子放出材料の特性や形状(成形体の場合)が影響
を受けることがある。これに対し、酸窒化物生成工程の
前に、比較的低温の熱処理により複合酸化物を生成させ
る複合酸化物生成工程を設ければ、このような問題の発
生が抑えられる。以下、図2に示す各工程について説明
する。
【0047】秤量工程 図1に示す秤量工程と同様にして行う。
【0048】混合工程 炭素を混合しないほかは図1に示す混合工程と同様にし
て行う。
【0049】複合酸化物生成工程 原料粉末を、空気中等の酸化性雰囲気中で焼成し、MI 5
II 415等の複合酸化物を含む中間生成物を生成させ
る。この中間生成物中に含有される複合酸化物として
は、本発明で用いる電子放出材料に含まれ得る前記複合
酸化物の少なくとも1種が挙げられる。この焼成により
得られる中間生成物は、実質的に複合酸化物だけから構
成されていることが好ましい。焼成温度は、好ましくは
800〜1700℃、より好ましくは800〜1500
℃、さらに好ましくは900〜1300℃とする。焼成
温度が低すぎると、MI 5II 415等の複合酸化物が生
成しにくい。一方、焼成温度が高すぎると、焼結が進ん
で粉砕しにくくなり、また、複合酸化物の溶融や分解が
生じることもある。焼成時間は、0.5〜5時間程度と
すればよい。この焼成は、粉末の状態で行ってもよく、
取り扱いを容易にするために粉末を成形した状態で行っ
てもよい。なお、複合酸化物生成工程は、還元性雰囲気
中で行ってもよい。還元性雰囲気中で焼成しても、上記
複合酸化物を生成することができる。ただし、還元性雰
囲気とするためには雰囲気制御が必要になること、最終
的に得られる電子放出材料の性能が複合酸化物生成工程
における焼成雰囲気に依存しないことから、通常、空気
中で焼成することが好ましい。
【0050】粉砕工程 図1に示す粉砕工程と同様にして行う。また、このと
き、図1に示す混合工程と同様に、必要に応じ炭素を混
合する。
【0051】成形工程 図1に示す成形工程と同様にして行う。
【0052】酸窒化物生成工程 図1に示す酸窒化物生成工程と同様な条件で焼成し、酸
窒化物を含む電子放出材料の焼結体を得る。
【0053】焼結体(粉末)の製造方法3 図3に示す方法は、酸窒化物生成工程の前に複合酸化物
生成工程を設ける点で図2に示す方法と同様である。し
かし、図2の方法では、酸窒化物生成工程が焼結工程を
兼ねるのに対し、図3の方法では、酸窒化物生成処理の
後に第2の粉砕工程において粉砕して粉末とし、この粉
末を成形して焼成することにより焼結体を得る点が、図
2の方法と異なる。図2の方法において粉砕工程で炭素
を添加する場合、成形体を焼結する際に成形体中の炭素
が反応するため、炭素の消耗により焼結体の寸法精度や
密度が影響を受けるおそれがある。これに対し図3の方
法では、酸窒化物生成工程で炭素を消耗させた後に成形
するため、成形体を焼結する際に炭素消耗による影響を
心配する必要がない。以下、各工程について説明する。
【0054】秤量工程 図2に示す秤量工程と同様にして行う。
【0055】混合工程 図2に示す混合工程と同様にして行う。
【0056】複合酸化物生成工程 図2に示す複合酸化物生成工程と同様にして行い、複合
酸化物を生成させる。
【0057】第1の粉砕工程 図2に示す粉砕工程と同様にして行う。
【0058】酸窒化物生成工程 図2に示す酸窒化物生成工程と同様にして行い、酸窒化
物を含む電子放出材料を得る。この工程における焼成
は、粉末の状態で行ってもよく、取り扱いを容易にする
ために粉末を成形した状態で行ってもよい。
【0059】第2の粉砕工程 炭素を混合しないほかは上記第1の粉砕工程と同様にし
て行い、電子放出材料の粉末を得る。
【0060】成形工程 図2に示す成形工程と同様にして行う。
【0061】焼結工程 図1に示す焼結工程と同様に、酸窒化物の分解を防げる
条件で成形体を焼成し、焼結体を得る。
【0062】膜の製造方法1 電子放出材料を膜として得るに際しては、いわゆる厚膜
法を用いると共に、酸窒化物の生成を上記した条件で行
えばよく、そのほかの工程は特に限定されず、例えば図
4〜図7にそれぞれ工程の流れを示す方法を利用するこ
とができる。まず、図4に示す各工程について説明す
る。
【0063】秤量工程 図1に示す秤量工程と同様にして行う。
【0064】混合工程 図1に示す混合工程と同様にして行えばよい。なお、混
合物中における炭素の平均粒径は、塗膜の厚さや塗膜に
要求される緻密さなどに応じて適宜決定すればよい。
【0065】スラリー調製工程 スラリー調製工程では、出発原料の混合物をスラリー化
する。上記混合工程において湿式混合を行う場合には、
混合工程がスラリー調製工程を兼ねる構成とすることが
好ましい。スラリー化に用いる分散媒は、上記混合工程
において説明したように、水系であっても有機系であっ
てもよい。
【0066】スラリー調製工程では、必要に応じてバイ
ンダを添加する。バインダの種類は特に限定されず、有
機系分散媒に対しては、例えばエチルセルロース、ポリ
ビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択
すればよく、水系分散媒に対しては、例えばポリビニル
アルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用
いればよい。
【0067】スラリー中の固形分濃度、あるいはスラリ
ーの粘度は、塗膜形成方法に応じて適宜決定すればよい
が、通常、スラリー粘度は0.01〜105mPa・s程度
とすることが好ましい。
【0068】塗膜形成工程 この工程では、調製したスラリーを用いて基材表面に塗
膜を形成する。基材構成材料は特に限定されず、各種金
属やセラミックス等のいずれであってもよい。
【0069】塗膜形成方法は特に限定されず、必要とさ
れる塗膜厚さなどに応じ、例えば、印刷法、ドクターブ
レード法、スプレー法などの各種方法から適宜選択すれ
ばよい。
【0070】酸窒化物生成工程 酸窒化物生成工程では、上記塗膜を窒素ガス含有雰囲気
中で焼成し、酸窒化物ペロブスカイトを含有する電子放
出材料膜を得る。この工程における好ましい条件は、図
1に示す方法における酸窒化物生成工程と同様である。
【0071】膜の製造方法2 図5に示す方法は、塗膜形成前に酸窒化物ペロブスカイ
トを生成させる点が、図4に示す方法と異なる。図4に
示す方法において塗膜中に炭素粉末が含まれる場合、焼
成時に塗膜中の炭素が反応するため、炭素の消耗により
電子放出材料膜の寸法精度や密度が影響を受けるおそれ
がある。これに対し図5に示す方法では、塗膜形成前に
設けた酸窒化物生成工程で炭素を消耗させた後に塗膜を
形成するため、炭素消耗による影響を心配する必要がな
い。以下、各工程について説明する。
【0072】秤量工程 図4に示す秤量工程と同様にして行う。
【0073】混合工程 図4に示す混合工程と同様にして行う。
【0074】酸窒化物生成工程 この方法では、出発原料および必要に応じて添加される
炭素の混合物を、粉末の状態で、または取り扱いを容易
にするために必要に応じて成形した状態で、図4に示す
酸窒化物生成工程と同様な条件で焼成し、酸窒化物ペロ
ブスカイトを含む電子放出材料を得る。
【0075】粉砕工程 粉砕工程では、電子放出材料を必要に応じて粉砕する。
この粉砕には、ボールミルや気流粉砕を利用すればよ
い。
【0076】スラリー調製工程 電子放出材料を用いるほかは図4に示すスラリー調製工
程と同様にして行う。なお、直前に設ける粉砕工程にお
いて湿式粉砕を利用すれば、粉砕工程がスラリー調製工
程を兼ねる構成とできる。
【0077】塗膜形成工程 図4に示す塗膜形成工程と同様にして行う。
【0078】熱処理工程 熱処理工程では、塗膜を乾燥すると共に、バインダが添
加されている場合には脱バインダも行う。熱処理は、8
0℃以上、通常、150〜2000℃で0.5〜20時
間程度行えばよい。この熱処理により塗膜が焼結して緻
密化してもよいが、電子放出材料膜は緻密な焼結体でな
いほうが好ましい場合もある。その場合には、粒子が焼
結しない処理条件、例えば1600℃以下で0.5〜5
時間程度とすることが好ましい。
【0079】熱処理の際の雰囲気は、既に生成している
酸窒化物ペロブスカイトの分解が生じないように適宜決
定すればよい。すなわち、比較的低温で熱処理する場合
には、空気中等の酸化性雰囲気であってもよいが、比較
的高温の場合には、窒素ガス等の中性ガスやAr等の不
活性ガスなどからなる非酸化性雰囲気とすることが好ま
しい。その場合の雰囲気中の酸素分圧は、酸窒化物生成
工程の説明に記載した範囲とすることが好ましい。ま
た、より高温で熱処理する場合には、酸窒化物生成工程
の場合と同様に、塗膜に対し炭素を近接配置し、かつ、
窒素ガス含有雰囲気中で熱処理を行うことが好ましい。
すなわち、少なくとも一部が炭素で構成された容器や炉
を用いたり、炉中に炭素を配置したり、これらを併用し
たりすればよい。このときの窒素ガス含有雰囲気におけ
る好ましい条件は、酸窒化物生成工程の説明において記
載した窒素ガス含有雰囲気についての好ましい条件と同
様である。
【0080】膜の製造方法3 図6に示す方法は、複合酸化物生成工程においてMI 5
II 415等の複合酸化物をいったん生成させた後、この
複合酸化物を含む粉末を原料粉末として用いる点が、図
4に示す方法と異なる。図4に示す方法では、出発原料
の粉末をスラリー化して基材表面に塗膜を形成し、この
塗膜中において酸窒化物を生成させるので、焼成中に塗
膜と基材とが反応してしまい、電子放出材料膜の特性低
下を招くことがある。これに対し図6に示す方法では、
いったん複合酸化物を生成させて、この複合酸化物を含
有する粉末を含む塗膜を焼成するため、塗膜と基材とが
反応しにくい。したがって、基材との反応を極端に嫌う
場合、図6に示す方法は有効である。以下、図6に示す
各工程について説明する。
【0081】秤量工程 図4に示す秤量工程と同様にして行う。
【0082】混合工程 炭素を添加しないほかは図4に示す混合工程と同様にし
て行う。
【0083】複合酸化物生成工程 原料粉末を、空気中等の酸化性雰囲気中で焼成し、図2
に示す複合酸化物生成工程と同様に、MI 5II 415
の複合酸化物を含む中間生成物を得る。
【0084】粉砕工程 図4に示す粉砕工程と同様にして行うが、図4に示す混
合工程と同様に、必要に応じ炭素を混合する。
【0085】スラリー調製工程 中間生成物を用いるほかは図4に示すスラリー調製工程
と同様にして行う。
【0086】塗膜形成工程 図4に示す塗膜形成工程と同様にして行う。
【0087】酸窒化物生成工程 図4に示す酸窒化物生成工程と同様にして行い、酸窒化
物ペロブスカイトを生成させる。
【0088】膜の製造方法4 図7に示す方法は、塗膜形成前に酸窒化物生成工程を設
けて酸窒化物ペロブスカイトを生成させる点が、図6に
示す方法と異なる。あるいは、複合酸化物生成工程にお
いていったん複合酸化物を生成させた後、この複合酸化
物を含む粉末を原料粉末として用いる点が、図5に示す
方法と異なるともいえる。したがって、炭素の消耗によ
る塗膜の寸法精度や密度への影響は、図7に示す方法に
おいても心配する必要がない。以下、各工程について説
明する。
【0089】秤量工程 図6に示す秤量工程と同様にして行う。
【0090】混合工程 図6に示す混合工程と同様にして行う。
【0091】複合酸化物生成工程 図6に示す複合酸化物生成工程と同様にして行い、複合
酸化物を生成させる。
【0092】第1の粉砕工程 図6に示す粉砕工程と同様にして行う。
【0093】酸窒化物生成工程 図6に示す酸窒化物生成工程と同様にして行い、酸窒化
物を含む電子放出材料を得る。
【0094】第2の粉砕工程 炭素を添加しないほかは図6に示す粉砕工程と同様にし
て行う。
【0095】スラリー調製工程 電子放出材料を用いるほかは図6に示すスラリー調製工
程と同様にして行う。
【0096】塗膜形成工程 図6に示す塗膜形成工程と同様にして行う。
【0097】熱処理工程 図5に示す熱処理工程と同様にして行う。
【0098】電極 次に、上記電子放出材料を用いた本発明の電極について
説明する。
【0099】本発明は、電子放出機能が必要とされる各
種電極、例えば、放電灯の電極、ブラウン管の電子銃用
電極、プラズマディスプレイの電極、フィールドエミッ
ションディスプレイの電極、蛍光表示管の電極、電子顕
微鏡の電極などに適用される。これらのいずれにおいて
も、本発明による効果、すなわち電極の長寿命化および
特性向上は実現する。
【0100】上記電子放出材料は、焼結体、顆粒、粉
末、粉末の塗膜などとして、上記各種電極に適用され
る。
【0101】上記電子放出材料を膜として利用する場
合、例えば、線状体(コイル状やダブルコイル状のフィ
ラメントなど)や板状体である基材の表面に、電子放出
材料膜を形成して電極とすることができる。基材の構成
材料としては、例えばW、Mo、Ta、Ni、Zr、T
i等の各種金属、またはこれらの少なくとも1種を含有
する合金、あるいは、ZrO2、Al23、MgO、A
lN、Si34等のセラミックス、またはこれらの少な
くとも1種を含有するセラミックス(SIALON等)を用い
ることができる。また、このほか、酸窒化物含有粉末ま
たは焼成により酸窒化物が生成する原料粉末を含有する
塗膜と、導電材料を含有する塗膜とを、印刷法やシート
法により積層し、これを焼成して積層型の電極としても
よい。
【0102】上記電子放出材料を膜として利用する場
合、膜の厚さは、通常、5〜1000μm程度とすれば
よい。電子放出材料膜中における電子放出材料粒子の平
均粒径は、好ましくは0.05〜20μm、より好まし
くは0.1〜10μmである。膜中における平均粒径を
さらに小さくしようとすると、取り扱いが困難な微小粒
子を用いなければならなくなる。また、このような微小
粒子は凝集して2次粒子となりやすく、そのため、粒度
分布が広くなってしまい、均一な塗膜を形成しにくくな
る。一方、膜中における平均粒径が大きすぎると、電子
放出材料粒子の脱落が生じやすく、また、塗布の際の作
業性も悪くなり、また、電子放出性も悪くなる。
【0103】以下、本発明の電極の具体的構成例につい
て説明する。
【0104】放電灯用熱陰極 まず、熱陰極動作を利用する放電灯用電極について説明
する。
【0105】熱陰極動作の電極としては、一端が開放し
一端が閉じた筒状の容器内に、電子放出材料を収容した
構造を有する電極が挙げられる。この放電灯用電極の構
成例を、図8に示す。この放電灯用電極は、一端が開放
された筒状の容器1と、この容器1内に収容された電子
放出材料2とを有する。放電灯管内において、放電に伴
い発生するHgイオン等のイオンは、対向電極の方向か
ら飛来して電極に衝突するが、このときイオンは容器1
により遮られ、電子放出材料2に衝突するイオンの数は
少なくなる。容器1は、このようにイオンによる電子放
出材料2のスパッタリングを防ぐと共に、電子放出材料
2へ電流を供給するための導電路として働く。容器1
は、高融点の金属または半導体セラミックスから構成す
ればよいが、本発明で用いる電子放出材料を含有するこ
とが好ましく、実質的にそれから構成することが好まし
い。電子放出材料2は、塊状、粉状、粒状または多孔質
状であることが好ましい。このような構造の電極は、予
熱なしに熱陰極動作に移行させることができる。
【0106】容器の開口側からみた電子放出材料露出面
における第1成分の含有率は、容器の開口側の端面にお
ける第1成分の含有率よりも高いことが好ましい。第1
成分の含有率にこのような分布をもたせることにより、
グロー放電からアーク放電に速やかに移行させることが
可能となる。第1成分の含有率にこのような分布をもた
せるための手段は特に限定されない。例えば、第1の手
段として、容器の原料組成と電子放出材料の原料組成と
を異なるものとする方法が挙げられる。また、第2の手
段として、炭化物層や窒化物層の組成を、容器表面と電
子放出材料表面とで異なる組成とする方法が挙げられ
る。また、第3の手段として、炭化物層や窒化物層を多
孔質膜ないし網目状膜として形成し、その開口率を、容
器表面と電子放出材料表面とで異なるものとする方法が
挙げられる。なお、第2の手段および第3の手段を利用
する場合、容器と電子放出材料とは同一組成であっても
よい。また、第1〜第3の手段のうちの2つ以上を併用
してもよい。
【0107】なお、容器の開口側からみた電子放出材料
露出面における第1成分の含有率および容器の開口側の
端面における第1成分の含有率は、電子線プローブマイ
クロアナリシス(EPMA)により測定することができ
る。EPMAによる測定に際しては、それぞれの元素に
ついて任意のカウント数を閾値とし、この閾値以上のカ
ウントを示す領域にその元素が存在するとして、第1成
分の含有率を比較すればよい。
【0108】図9に示す電極は、導電性基材11の表面
に、電子放出材料膜12を形成したものである。導電性
基材の形状は、図示する棒状に限らず、筒状や平板状で
あってもよい。導電性基材には、例えばタングステンを
用いればよい。電子放出材料膜は、前述した厚膜法によ
り形成すればよい。この電極は、導電性基材11とリー
ド線3とをスポット溶接し、導電性基材11の溶接側の
端部に絶縁膜5を塗布した状態で、バルブに組み込まれ
る。
【0109】図10に示す電極は、多孔質の導電性基材
21に電子放出材料22を保持させた構成である。導電
性基材21の形状は、好ましくは棒状である。導電性基
材21としては、例えば多孔質のタングステンを用いれ
ばよい。導電性基材の孔中に電子放出材料を保持させる
には、前述した厚膜法を応用して、電子放出材料のスラ
リーを導電性基材に含浸させ、熱処理を行えばよい。
【0110】図11に示す電極は、導電性基材31表面
に電子放出材料32の顆粒を保持させた構成である。導
電性基材31の形状は、好ましくは棒状である。導電性
基材31としては、例えばタングステンを用いればよ
い。導電性基材31表面に顆粒を保持させるには、前述
した厚膜法を応用して、電子放出材料の顆粒を含有する
スラリーを導電性基材に塗布し、熱処理を行えばよい。
【0111】図12に示す電極は、円筒状や角筒状等の
金属筒41の中空部に、電子放出材料42の粉末、顆粒
または多孔質体を保持させた構成である。金属筒41
は、例えばニッケルから構成すればよい。この電極は、
金属筒41内に電子放出材料の粉末、顆粒または多孔質
体を詰め、絞り加工を行った後、所定の大きさに切断す
ることにより製造できる。
【0112】図13に示す電極は、電子放出材料膜52
と、内部電極層53とが積層された積層体を有し、この
積層体の側面が、内部電極層53からの引き出し領域、
すなわちリード線54に接続される領域、を除き、電子
放出材料により覆われている構造を有する。この電極
は、前述した厚膜法を応用し、電子放出材料のスラリー
をドクターブレード法により塗工してシートを作製し、
また、ニッケル粉末などの導電性粉末を含むスラリーを
用いて電極シートを作製し、両シートを交互に積層した
後、焼成することにより製造できる。積層体側面を覆う
電子放出材料も、厚膜法により形成すればよい。
【0113】図14に示す電極は、多孔質材からなるコ
イル状の導電性基材61に、電子放出材料62を含浸さ
せた構成である。
【0114】図15に示す電極は、コイル状の導電性基
材71の中空部に、棒状の電子放出材料72を把持させ
た構成である。
【0115】図16に示す電極は、電子放出材料を含有
し、両端が開放した筒状体82の中空部に、導電性コイ
ル81を把持させた構成である。筒状体82には、電子
放出材料の焼結体を用いることができる。
【0116】図17に示す電極は、一端が閉じた筒状で
あって電子放出材料を含む容器92の内部に、棒状の導
電性基材91を把持させた構成である。この電極は、導
電性基材91とリード線3とをスポット溶接し、導電性
基材91の溶接側の端部に絶縁膜5を塗布した状態で、
バルブに組み込まれる。
【0117】なお、本発明の電子放出材料を用いて電極
を作製し、放電灯に組み込んだところ、図9〜図12お
よび図17にそれぞれ示す電極では、予熱が不要であっ
た。一方、図13〜図16にそれぞれ示す電極では、リ
ード線またはタングステンコイルに予熱電流を流した
後、始動電圧を印加すると、放電を開始し、また、電極
に通電加熱することにより調光も可能であった。
【0118】放電灯用冷陰極 従来、冷陰極にはNi等からなる金属製の筒状体を用い
ることが一般的であり、BaO等の電子放出材料を利用
する場合には、上記筒状体を電極基材として、その周面
に例えば電子放出材料の塗膜を設ける。本発明を冷陰極
放電灯の電極に適用する場合には、従来の塗膜の替わり
に、上記電子放出材料を含有する塗膜を電極基材表面に
設ければよい。なお、電極基材の構成材料としては、N
iのほか、例えばW、Ti、Zr、Mo、Ta等の高融
点金属、またはこれらの少なくとも1種を含有する合金
を好ましく用いることができる。
【0119】図18に、冷陰極動作の電極の構成例を示
す。この電極は、電極基材となる導電性パイプ7を有
し、その内周面には、電子放出材料膜2Aが形成されて
いる。導電性パイプ7には、内部導入線3Aの一端が嵌
入され、内部導入線3Aの他端にはリード線3Bが接続
されている。
【0120】電子管用陰極 次に、ブラウン管等の電子管用の陰極について説明す
る。
【0121】図19に示す電子管用陰極は、導電性基材
101、陰極スリーブ103、前記導電性基材の上面に
被着された電子放出材料膜102、および前記導電性基
材内に配設されたヒータ104を有し、前記ヒータで加
熱することにより前記電子放出材料膜から熱電子を放出
させる構成である。導電性基材は、SiやMgなどの還
元性元素を微量含むニッケルなどの高融点金属から構成
され、陰極スリーブはニクロムなどから構成される。
【0122】図20に示す電子管用陰極は、導電性基材
111、陰極スリーブ113、電子放出材料を多孔質金
属に含浸させた電子放出材料膜112、および前記導電
性基材に配設されたヒータ114を有し、前記ヒータで
加熱することにより前記電子放出材料膜から熱電子を放
出させる構成である。導電性基材は、Niなどの金属か
ら構成され、陰極スリーブはMoなどから構成され、電
子放出材料膜に用いる多孔質金属にはWなどを用いれば
よい。
【0123】熱陰極型電子銃 次に、超LSIなどの微細加工用の電子ビーム描画装置
や、電子顕微鏡に用いられる熱陰極型電子銃について説
明する。
【0124】図21に示す熱陰極型電子銃は、3電極電
子銃であり、陰極122、ウエネルト電極123および
陽極124を有し、ウエネルト電極の中央および陽極の
中央に孔が設けられており、全体が軸対称となるように
それぞれの中心軸が一致するよう配置されている構成で
ある。陰極には、通常、直径0.1mm程度のタングステ
ン線をヘアピン状に屈曲させたものを用い、本発明で
は、このタングステン線の表面に、電子放出材料膜を形
成する。ウエネルト電極の中心に設けられた孔は、直径
1〜2mm程度であり、この孔は陰極を包囲する位置に存
在する。陰極の先端は、ウエネルト電極と同一の平面内
に存在するか、やや奥にはいった位置に存在する。陽極
に設けられた孔は、電子ビームを通過させるためのもの
である。この電子銃において、陰極に対し陽極に正の高
電圧を、ウエネルト電極に負のバイアス電圧を与える
と、ウエネルト電極近傍に形成される電位分布により、
電子レンズとしての収束作用が生じる。
【0125】ガス放電パネル 次に、ガス放電パネル、すなわち、いわゆるプラズマ・
ディスプレイパネル(PDP)について説明する。PD
Pにおける発光メカニズムは、蛍光放電ランプと同様で
ある。図22に例示するガス放電パネルは、基板131
上に形成された陽極134を有し、その対向面に、陰極
132を具備する透明板133を有し、この透明板と前
記基板との間に設けられた隔壁135により、放電空間
が形成されたものである。放電空間内には蛍光体層13
6が形成され、放電ガスが封入されている。本発明の電
子放出材料は、前記陰極に用いられる。
【0126】電子放出素子 次に、フィールドエミッションディスプレイなどに用い
られる電子放出素子について説明する。
【0127】電子放出素子としては、例えば、金属から
なるエミッタ基材と、このエミッタ基材を構成する金属
に比べ仕事関数のより低い導電性材料とを有し、この導
電性材料が、エミッタ基材の表面を被覆しているか、エ
ミッタ基材内に分散されて冷陰極電子源を構成するもの
が挙げられる。本発明の電子放出材料は、前記導電性材
料として用いられる。
【0128】
【実施例】実施例1 図8に示すような、一端が開放し一端が閉じた円筒状の
容器1内にセラミック半導体からなる顆粒2を収容した
構造の電極サンプルを、図1に示す方法を利用して、以
下の手順で作製した。
【0129】まず、第1成分としてBa、第2成分とし
てTaおよびZrを選択し、これらの出発原料としてB
aCO3、Ta25およびZrO2を準備した。
【0130】次いで、Ba、TaおよびZrの比率が表
1に示すものとなるように上記出発原料を秤量し、ボー
ルミルにより20時間湿式混合した。
【0131】次いで、混合物を乾燥した後、平均粒径5
0μmの炭素粉末を出発原料に対し5質量%加えて乾式
混合し、圧力10MPaで成形した。得られた成形体に、
酸窒化物生成処理を施した。この処理では、上面が開放
した炭素製の容器に成形体を入れ、容器との間に隙間を
設けて炭素製の蓋をかぶせ、窒素気流中において130
0℃で2時間焼成した。窒素ガスは、炉中の成形体近傍
空間において窒素気流の流れる方向と垂直な断面におけ
る単位面積当たりの窒素ガス流量が0.01m/sとなる
ように供給した。なお、焼成雰囲気中の酸素分圧は、2
0Paとした。得られた電子放出材料をボールミルにより
20時間湿式粉砕し、乾燥した後、ポリビニルアルコー
ルを含む水溶液を加え、乳鉢と乳棒とを用いて造粒し、
顆粒状にした。
【0132】次に、この顆粒を圧力200MPaで成形
し、一端が開き他端が閉じた円筒状の成形体(密度3.
69g/cm3)を得た。この成形体内に上記顆粒を充填し
た後、炭素発熱体と炭素断熱材とを備える電気炉に入
れ、窒素気流中において1600℃で2時間焼成し、表
1に示す電極サンプルを得た。なお、この焼成の際の窒
素ガス流量および酸素分圧は、上記酸窒化物生成処理と
同じとした。各サンプルの寸法は、外径2.3mm、内径
(顆粒収容部の直径)1.7mm、長さ1.7mmとした。
なお、容器の密度は8.2g/cm3であり、結晶構造から
求められた理論密度の90%以上であった。これらのサ
ンプルにおいて、金属元素成分の構成比は、出発原料に
おける構成比とほぼ同じであった。各サンプルにおける
X/Yを、表1に示す。なお、金属元素成分の構成比
は、蛍光X線分析により測定した。
【0133】また、本出願人による前記特開平9−12
9177号公報記載の方法に基づき、以下の手順で比較
電極サンプルを作製した。まず、上記出発原料の混合物
を圧力100MPaで成形した後、大気中において110
0℃で2時間焼成した。得られた焼成体を、上記と同様
にして湿式粉砕、乾燥、造粒して顆粒とし、この顆粒を
圧縮成形して成形体を得た。そして、上記顆粒を充填し
た上記成形体を炭素粉末中に完全に埋没させ、窒素ガス
を流しながら1600℃で2時間焼成した。窒素ガス
は、炉中の成形体近傍空間において窒素気流の流れる方
向と垂直な断面における単位面積当たりの窒素ガス流量
が0.00005m/sとなるように供給した。なお、焼
成雰囲気中の酸素分圧は、20Paとした。
【0134】これらの電極サンプルに対し、X線回折を
行ったところ、酸窒化物生成工程を経たサンプル、すな
わち、炭素粉末を混合して窒素気流中で焼成したサンプ
ルでは、例えば図23に示すような酸窒化物ペロブスカ
イト(MIII2N型結晶)のピークと第2成分炭化物
のピークとが認められた。なお、図23は、表1に示す
サンプルNo.4のX線回折パターンである。図23で
は、炭化物を除き、酸窒化物ペロブスカイトの単一相と
なっていることがわかる。これに対し比較サンプルで
は、酸窒化物ペロブスカイトは生成せず、MI 5II 4
15型結晶を主体とする酸化物および炭化物(TaC)だ
けが生成していることが確認された。
【0135】これらの電極サンプルを、バルブの全長1
00mm、外径5mm、封入ガスAr、封入圧力9.3kP
a、封入物Hg、駆動電源周波数30kHz、ランプ電流3
0mAの放電灯に組み込み、連続点灯試験を行った。な
お、このときの動作温度は約1100℃であったが、各
サンプルは900〜1400℃の間で安定した熱陰極動
作を示した。
【0136】各サンプルを組み込んだ放電灯の輝度維持
率を、表1に示す。この輝度維持率は、100時間連続
点灯後の輝度を初期値(100%)としたときの、初期
値に対する3000時間連続点灯後の輝度の比率であ
る。なお、放電灯の輝度は、電極先端からバルブの長手
方向中央寄りに5mm進んだ位置において、バルブの表面
輝度を輝度計により測定することにより求めた。
【0137】
【表1】
【0138】表1に示されるように、酸窒化物ペロブス
カイトを含有する本発明サンプルを用いた場合には、酸
化物からなる比較サンプルを用いた場合に比べ、輝度維
持率が高くなっている。比較サンプルを用いた放電灯で
は、バルブ管壁の黒化が認められ、電子放出材料の蒸発
およびスパッタリングによる電子放出材料の消耗が生じ
ていることが確認できた。
【0139】実施例2 出発原料としてBaCO3およびTa25を用い、Ba
とTaとの比率が表2に示すものとなるように混合した
ほかは実施例1と同様にして電極サンプルを作製した。
これらの電極サンプルに対しX線回折を行ったところ、
III2N型結晶のピークと第2成分の炭化物のピー
クとが認められ、炭化物を除き、酸窒化物ペロブスカイ
トの単一相であることが確認された。
【0140】これらの電極サンプルを実施例1と同様に
して放電灯に組み込み、実施例1と同様な連続点灯試験
を行った。結果を表2に示す。
【0141】
【表2】
【0142】表2から、X/Yが0.8〜1.5の範囲
にあれば、高い輝度維持率が得られることがわかる。
【0143】実施例3 第1成分と第2成分とを表3に示すように組み合わせた
ほかは実施例1と同様にして電極サンプルを作製した。
これらの電極サンプルに対しX線回折を行ったところ、
III2N型結晶のピークと第2成分炭化物のピーク
とが認められ、炭化物を除き、酸窒化物ペロブスカイト
の単一相であることが確認された。
【0144】これらの電極サンプルを実施例1と同様に
して放電灯に組み込み、実施例1と同様な連続点灯試験
を行った。結果を表3に示す。なお、表3には、比較の
ためにサンプルNo.4、8も併記してある。
【0145】
【表3】
【0146】表3から、BaおよびTaの組み合わせ、
ならびにこれらとZrとの組み合わせ以外でも、十分な
輝度維持率が実現することがわかる。
【0147】実施例4 表4に示す元素Mの酸化物を出発原料に混合したほかは
表1のサンプルNo.4と同様にして電極サンプルを作製
した。これらの電極サンプルに対しX線回折を行ったと
ころ、MIII2N型結晶のピークと第2成分炭化物の
ピークとが認められ、酸窒化物ペロブスカイトが生成し
ていることが確認された。
【0148】これらの電極サンプルを実施例1と同様に
して放電灯に組み込み、実施例1と同様な連続点灯試験
を行った。結果を表4に示す。なお、表4には、比較の
ためにサンプルNo.4も併記してある。
【0149】
【表4】
【0150】表4から、元素Mの化合物を含む場合で
も、十分な輝度維持率が得られることがわかる。ただ
し、M化合物の含有量が10質量%を超える場合には、
輝度維持率の低下が認められる。
【0151】実施例5 混合工程において炭素粉末の添加量を出発原料に対し1
質量%とし、かつ、酸窒化物生成処理における焼成時間
を5時間としたほかはサンプルNo.4と同様にして電極
サンプルを作製した。このサンプルのX線回折パターン
を、図24に示す。同図に示されるように、このサンプ
ルには、酸窒化物ペロブスカイト(MIII2N型結
晶)に加え、複合酸化物(MI 5II 415型結晶)が存
在していた。ただし、MI 5II 415型結晶の最大ピー
ク強度は、MIII2N型結晶の最大ピーク強度の50
%以下であった。この電極サンプルを放電灯に組み込ん
で連続点灯試験を行い、輝度維持率を測定したところ、
85%と十分に高い値が得られた。
【0152】なお、上記実施例1〜5において、本発明
サンプルでは室温における比抵抗がすべて10-6〜10
3Ωmの範囲内であった。
【0153】
【発明の効果】本発明で用いる電子放出材料は、電子放
出特性が良好であり、しかも、高温での蒸発が少なく、
また、イオンスパッタリングされたときの消耗が少な
い。そのため、この電子放出材料を使用した本発明の電
極は、高特性を示し、かつ、長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる電子放出材料を粉末または焼結
体として製造する際の工程を示すフローチャートであ
る。
【図2】本発明で用いる電子放出材料を焼結体として製
造する際の工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明で用いる電子放出材料を粉末または焼結
体として製造する際の工程を示すフローチャートであ
る。
【図4】本発明で用いる電子放出材料膜の製造工程を示
すフローチャートである。
【図5】本発明で用いる電子放出材料膜の製造工程を示
すフローチャートである。
【図6】本発明で用いる電子放出材料膜の製造工程を示
すフローチャートである。
【図7】本発明で用いる電子放出材料膜の製造工程を示
すフローチャートである。
【図8】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図9】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図10】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図11】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図12】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図13】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図14】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図15】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図16】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図17】放電灯用熱陰極の構成例を示す図である。
【図18】放電灯用冷陰極の構成例を示す図である。
【図19】電子管用陰極の構成例を示す図である。
【図20】電子管用陰極の構成例を示す図である。
【図21】熱陰極型電子銃の構成例を示す図である。
【図22】ガス放電パネルの構成例を示す図である。
【図23】本発明で用いる電子放出材料のX線回折パタ
ーンである。
【図24】本発明で用いる電子放出材料のX線回折パタ
ーンである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年7月13日(2000.7.1
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 電子放出電極
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記(1)
〜(9)の本発明により達成される。 (1) Ba、SrおよびCaの少なくとも1種からな
る第1成分と、Ta、Zr、Nb、TiおよびHfの少
なくとも1種からなる第2成分とを金属元素成分として
含む酸窒化物ペロブスカイトを含有する電子放出材料を
用いた電子放出電極。 (2) 第1成分をMI、第2成分をMIIでそれぞれ表
したとき、前記電子放出材料が、前記酸窒化物ペロブス
カイトとしてMIII2N型結晶を含む上記(1)の電
子放出電極。 (3) 前記電子放出材料において、第1成分と第2成
分との合計に対し、第1成分のモル比をXとし、第2成
分のモル比をYとしたとき、 0.8≦X/Y≦1.5 である上記(1)または(2)の電子放出電極。 (4) 前記電子放出材料において、第2成分の一部
が、炭化物および/または窒化物として含有されている
上記(1)〜(3)のいずれかの電子放出電極。 (5) 前記電子放出材料において、元素M(Mは、M
g、Sc、Y、La、V、Cr、Mo、W、Fe、Ni
およびAlの少なくとも1種)を金属元素成分として含
有する上記(1)〜(4)のいずれかの電子放出電極。 (6) 前記電子放出材料は、前記元素Mを酸化物換算
で0質量%超10質量%以下含有する上記(5)の電子
放出電極。 (7) 前記電子放出材料は、第1成分をMI、第2成
分をMIIでそれぞれ表したとき、MI 4II 29型結晶、
III 26型結晶、MIII3型結晶、MI 5II 415
型結晶、MI 7II 622型結晶およびMI 6IIII 418
型結晶の少なくとも1種を含む上記(1)〜(6)のい
ずれかの電子放出電極。 (8) 前記電子放出材料は、室温における比抵抗が1
-6〜103Ωmである上記(1)〜(7)のいずれかの
電子放出電極。 (9) 放電灯用電極、電子管の電子銃用電極、ガス放
電パネル用電極、フィールドエミッションディスプレイ
用電極、蛍光表示管用電極または電子顕微鏡用電極であ
る上記(1)〜(8)のいずれかの電子放出電極。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正内容】
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の電極に用いる電子放出材
料は、上記酸窒化物を含有する。上記酸窒化物は、蒸気
圧が低く、しかも、電気抵抗を低くできる。そのため、
BaOを主成分とする従来の電子放出材料に比べ、より
大きな電子放出電流を流すことが可能であり、しかも、
電子放出材料の蒸発による電極劣化が少ない。また、本
出願人による前記特開平9−129177号公報等に記
載されているBa−Zr−Ta系複合酸化物からなる電
極に比べても、電極劣化が少なくなる。したがって、熱
陰極動作を行う電極に適用したときに、従来の電極より
も高い輝度が得られ、しかも、電極寿命が著しく長くな
る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】電子放出材料中の各結晶の存在は、X線回
折により確認することができる。本発明で用いる電子放
出材料の典型的なX線回折パターンを、図23に示す。
図23に示すパターンは、TaCを除き、実質的にMI
II2N型結晶の単一相からなる電子放出材料のもの
である。本発明で用いる電子放出材料は、MIII2
型結晶を主成分とすることが好ましく、実質的にこの結
晶だけから構成されることがより好ましい。ただし、上
述したように、炭化物および/または窒化物が含まれて
いても問題はない。なお、MIII2N型結晶が主成分
であるとは、X線回折パターンにおいてそれぞれの結晶
の最大ピーク強度を比較したとき、MII I2N以外の
結晶の最大ピーク強度がMIII2N型結晶の最大ピー
ク強度の50%以下、好ましくは30%以下であること
を意味する。ただし、例えばBaZrO3とBa5Ta4
15とのように、最大ピーク位置がほぼ一致する2種ま
たはそれ以上の酸化物が同時に生成している場合には、
2番目に大きなピークの強度を用いて、MIII2N型
結晶の最大ピークとの比較を行う。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】元素Mは、前記酸窒化物中においてMI
一部またはMIIの一部と置換されているか、または置換
されずに、酸化物、窒化物、炭化物などとして前記酸窒
化物と混合された状態となっている。なお、前記酸窒化
物結晶においてMIの一部またはMIIの一部が他の金属
元素で置換されていることは、X線回折におけるピーク
のシフトおよびピーク強度比の変化により確認すること
ができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正内容】
【0098】電極 次に、上記電子放出材料を用いた本発明の電子放出電極
について説明する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0153
【補正方法】変更
【補正内容】
【0153】
【発明の効果】本発明で用いる電子放出材料は、電子放
出特性が良好であり、しかも、高温での蒸発が少なく、
また、イオンスパッタリングされたときの消耗が少な
い。そのため、この電子放出材料を使用した本発明の電
子放出電極は、高特性を示し、かつ、長寿命である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 誠 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 松岡 大 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 淀川 正忠 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 原田 拓 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ba、SrおよびCaの少なくとも1種
    からなる第1成分と、Ta、Zr、Nb、TiおよびH
    fの少なくとも1種からなる第2成分とを金属元素成分
    として含み、酸窒化物ペロブスカイトを含有する電子放
    出材料を用いた電極。
  2. 【請求項2】 第1成分をMI、第2成分をMIIでそれ
    ぞれ表したとき、前記電子放出材料が、前記酸窒化物ペ
    ロブスカイトとしてMIII2N型結晶を含む請求項1
    の電極。
  3. 【請求項3】 前記電子放出材料において、第1成分と
    第2成分との合計に対し、第1成分のモル比をXとし、
    第2成分のモル比をYとしたとき、 0.8≦X/Y≦1.5 である請求項1または2の電極。
  4. 【請求項4】 前記電子放出材料において、第2成分の
    一部が、炭化物および/または窒化物として含有されて
    いる請求項1〜3のいずれかの電極。
  5. 【請求項5】 前記電子放出材料において、元素M(M
    は、Mg、Sc、Y、La、V、Cr、Mo、W、F
    e、NiおよびAlの少なくとも1種)を金属元素成分
    として含有する請求項1〜4のいずれかの電極。
  6. 【請求項6】 前記電子放出材料は、前記元素Mを酸化
    物換算で0質量%超10質量%以下含有する請求項5の
    電極。
  7. 【請求項7】 前記電子放出材料は、第1成分をMI
    第2成分をMIIでそれぞれ表したとき、 MI 4II 29型結晶、 MIII 26型結晶、 MIII3型結晶、 MI 5II 415型結晶、 MI 7II 622型結晶および MI 6IIII 418型結晶 の少なくとも1種を含む請求項1〜6のいずれかの電
    極。
  8. 【請求項8】 前記電子放出材料は、室温における比抵
    抗が10-6〜103Ωmである請求項1〜7のいずれかの
    電極。
  9. 【請求項9】 放電灯用電極、電子管の電子銃用電極、
    ガス放電パネル用電極、フィールドエミッションディス
    プレイ用電極、蛍光表示管用電極または電子顕微鏡用電
    極である請求項1〜8のいずれかの電極。
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