JP2000348672A - 電極および放電灯 - Google Patents

電極および放電灯

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JP2000348672A
JP2000348672A JP11346963A JP34696399A JP2000348672A JP 2000348672 A JP2000348672 A JP 2000348672A JP 11346963 A JP11346963 A JP 11346963A JP 34696399 A JP34696399 A JP 34696399A JP 2000348672 A JP2000348672 A JP 2000348672A
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electron
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oxynitride
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electrode
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Makoto Takahashi
誠 高橋
Akira Takeishi
明 武石
Masaru Matsuoka
大 松岡
Munemitsu Hamada
宗光 浜田
Masatada Yodogawa
正忠 淀川
Hiroshi Harada
拓 原田
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低圧水銀蒸気放電灯用の水銀ディスペンサ一
体型冷陰極において、輝度向上、発光効率改善、消費電
力低減を実現する。 【解決手段】 水銀蒸気放電灯に用いられる電極であっ
て、電子放出材料と水銀ディスペンサ材料とを含み、前
記電子放出材料が、Ba、SrおよびCaの少なくとも
1種からなる第1成分と、Ta、Zr、Nb、Tiおよ
びHfの少なくとも1種からなる第2成分とを金属元素
成分として含み、かつ、酸窒化物ペロブスカイトを含有
するものである電極。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水銀蒸気放電灯
と、これに用いられる電極とに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネルギー、省資源の社会的要
求が高まりつつあり、それに対応して、一般照明用光源
やディスプレイの省エネルギー化が積極的に進められて
いる。例えば、白熱電球から、よりエネルギー効率が高
く寿命も長い電球形蛍光ランプへの置き換えや、ブラウ
ン管から、よりエネルギー消費量の少ない液晶ディスプ
レイヘの置き換えが急速に進んでいる。それに伴って、
電球形蛍光ランプ用や、液晶ディスプレイのバックライ
ト光源用として、蛍光ランプの利用が急速に進んでい
る。同様に、ブラウン管の陰極線管やプラズマディスプ
レイ、蛍光表示管などについても、エネルギー効率が高
く省エネルギー化が可能な電極が要求されている。
【0003】従来、蛍光ランプの電極としては、BaO
を主成分とする酸化物電極が一般に利用されている。こ
のような電極は、例えば特開昭59−75553号公報
に記載されている。しかし、BaOを主成分とする酸化
物電極は、電子放出性がよい反面、比抵抗が高い。その
ため、大きな電子放出電流を得ようとすると高温になっ
てしまい、その結果、蒸気圧が高くなって蒸発が多くな
るので、寿命が短くなるという問題が生じる。
【0004】また、米国特許第2,686,274号明
細書には、Ba2TiO4などのセラミックスを還元処理
することにより半導体化した棒状の電極が記載されてい
るが、この種のセラミック半導体電極には、熱衝撃に弱
い、Hgイオンや希ガスイオンによるスパッタリングに
よって劣化しやすい、使用可能な電流密度が小さい、と
いう問題があった。
【0005】このような従来の蛍光ランプ用電極に対
し、本発明者らは、一端が開放し一端が閉じた円筒状の
容器内にセラミック半導体を収容した構造の電極を提案
し、また、この電極について、およびこの電極を用いた
放電灯について、様々な改良を加えている(特公平6−
103627号公報、特許第2628312号、特許第
2773174号、特許第2754647号、特開平4
−43546号公報、特開平6−267404号公報、
特開平9−129177号公報、特開平10−1218
9号公報、特開平6−302298号公報、特開平7−
142031号公報、特開平7−262963号公報、
特開平10−3879号公報)。これらの電極は、耐ス
パッタリング性が良好であり、また、蒸発しにくいた
め、劣化しにくく長寿命であるという特徴をもつ。しか
し、耐スパッタリング性および蒸発しにくさについて
は、さらなる改良が望まれる。
【0006】ところで、低圧水銀蒸気放電灯のうち、液
晶ディスプレイなどのバックライトユニットに利用され
る細管型の冷陰極放電ランプでは、バルブ径が2〜3mm
程度と細いため、バルブ内に水銀を滴下することが難し
く、滴下できたとしても水銀量の制御が困難である。そ
のため、通常、水銀ディスペンサ材料を充填した導電性
スリーブをバルブ内に組み込み、この導電性スリーブを
バルブ外部から高周波誘導加熱して水銀ディスペンサ材
料から水銀蒸気を放出させる構成をとっている。例えば
特開平7−240174号公報では、ニッケルなどから
なる導電性スリーブを電極とし、この導電性スリーブ内
に水銀ディスペンサ材料を充填し、さらに、水銀ガス放
出時に発生する不純物ガスを吸収するゲッター材料も充
填している。
【0007】しかし、同公報に記載されているように金
属製スリーブを冷陰極として利用すると、発光に寄与し
ない陰極降下電圧が高くなり、ランプの発光効率が低く
なるという問題がある。
【0008】また、金属製スリーブの冷陰極は電子放出
性が比較的悪いため、点灯時の温度が高くなってしま
う。放電灯のバルブ内には気化していない水銀が液滴と
して存在しているが、冷陰極の温度上昇によりバルブの
温度が上昇し、特に、管径が細いと著しく温度が上昇す
るため、液滴状の水銀が過度に蒸発し、バルブ内の水銀
蒸気圧が上昇してしまう。そのため、輝度が低下し、発
光効率が下がるほか、管電圧および始動電圧が上昇して
消費電力が増大してしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような事
情からなされたものであり、低圧水銀蒸気放電灯用の水
銀ディスペンサ一体型冷陰極において、輝度向上、発光
効率改善、消費電力低減を実現することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記(1)
〜(8)の本発明により達成される。 (1) 水銀蒸気放電灯に用いられる電極であって、電
子放出材料と水銀ディスペンサ材料とを含み、前記電子
放出材料が、Ba、SrおよびCaの少なくとも1種か
らなる第1成分と、Ta、Zr、Nb、TiおよびHf
の少なくとも1種からなる第2成分とを金属元素成分と
して含み、かつ、酸窒化物ペロブスカイトを含有するも
のである電極。 (2) 前記電子放出材料が、Ce、TbおよびPrの
少なくとも1種からなる第3成分を金属元素成分として
含む上記(1)の放電灯。 (3) ゲッター材を含む上記(1)の電極。 (4) 開口部が存在する導電性容器を有し、この導電
性容器中に、前記電子放出材料と水銀ディスペンサ材料
とが充填されている上記(1)〜(3)のいずれかの電
極。 (5) 開口部が存在する導電性容器を有し、この導電
性容器中に水銀ディスペンサ材料が充填されており、前
記導電性容器の外表面および/または内表面に、前記電
子放出材料を含有する膜が形成されている上記(1)〜
(3)のいずれかの電極。 (6) 導電性基体を有し、この導電性基体の表面に、
前記電子放出材料を含有する膜および水銀ディスペンサ
材料を含有する膜が形成されている上記(1)〜(3)
のいずれかの電極。 (7) 導電性基体を有し、この導電性基体の表面に、
前記電子放出材料および水銀ディスペンサ材料を含有す
る膜が形成されている上記(1)〜(3)のいずれかの
電極。 (8) 上記(1)〜(7)のいずれかの電極を有する
放電灯。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の放電灯の構成例を、図3
に示す。この放電灯は、低圧水銀蒸気放電灯であり、両
端にリード線4、4を通したガラス製のバルブ2と、バ
ルブ2内に設けられ、リード線4、4に接続されている
電極3、3とを有する。バルブ2の内表面には、蛍光体
層21が形成され、バルブ2内には放電媒体として希ガ
スおよび水銀ガスが封入されている。電極3は、開口部
が存在する導電性容器を有し、この導電性容器中には、
電子放出材料と水銀ディスペンサ材料とが充填され、さ
らに、必要に応じゲッター材が充填されている。この電
極は、低圧水銀蒸気放電灯において、冷陰極および水銀
ディスペンサとして機能する。
【0012】以下、電極各部の構成について説明する。
【0013】電子放出材料 本発明で用いる電子放出材料が含有する上記酸窒化物ペ
ロブスカイトは、蒸気圧が低く、しかも、電気抵抗を低
くできる。そのため、BaOを主成分とする従来の電子
放出材料に比べ、より大きな電子放出電流を流すことが
可能であり、しかも、蒸発による電極劣化が少ない。ま
た、本出願人による前記特開平9−129177号公報
等に記載されているBa−Zr−Ta系複合酸化物から
なる電極に比べても、電極劣化が少なくなる。また、上
記酸窒化物は、イオンスパッタリングされても消耗しに
くい。したがって、陰極降下電圧が大きいためにイオン
スパッタリングが激しくなる冷陰極動作においても、消
耗が少なく長寿命が実現する。
【0014】また、本発明で用いる電子放出材料は、前
記特開平7−240174号公報に記載されている冷陰
極、すなわちニッケルなどからなる導電性スリーブに比
べ、電子放出性が著しく良好である。そのため、点灯時
の温度上昇が小さく、放電灯の管径が細い場合でもバル
ブ内の水銀蒸気圧が過度に上昇することがない。したが
って、低圧水銀蒸気放電灯において、輝度向上、発光効
率改善、消費電力低減を実現することができる。
【0015】本発明で用いる電子放出材料において上記
のような高特性が実現するのは、上記酸窒化物を含有す
るためである。上記酸窒化物は、動作温度が高くなると
酸窒化物が分解して窒素が解離する傾向がある。放電灯
に適用したとき酸窒化物が分解してしまうと、管電圧が
上昇して寿命が短くなってしまう。これに対し、上記第
3成分を添加すれば、酸窒化物からの窒素の解離を抑制
できるので、動作温度が高い場合でも長寿命を実現でき
る。ただし、本発明は、冷陰極動作の電極に適用され、
冷陰極では動作温度が700〜1000℃程度なので、
通常は窒素の解離はほとんど問題とはならない。したが
って、動作温度が高めの場合など、必要に応じて第3成
分を添加すればよい。
【0016】なお、ペロブスカイト構造をもつ上記酸窒
化物は、Journal of Materials Science,29,(1994),pp4
686-4693に記載されている。この文献では、アンモニア
気流中において1000℃で焼成することにより上記酸
窒化物を製造しているが、同文献では、このようにして
製造した酸窒化物を誘電体としてしか評価していない。
酸窒化物は還元性雰囲気中でも安定な化合物であるた
め、内部電極を卑金属から構成した積層セラミックコン
デンサに適している。
【0017】また、特開昭63−252920号公報
(米国特許第4,964,016号明細書が対応)に
は、式AB(O,N)3で表される導電性ペロブスカイ
トが記載されている。上記式において、元素Aは、IA
族およびIIA族の金属、イットリウムおよびランタノイ
ドから選ばれる金属を示し、元素Bは、IVA族ないしI
B族の遷移金属から選ばれる金属を示す。同公報では、
この導電性ペロブスカイトを、金属Aと金属Bとの混合
酸化物に対し約700〜900℃の温度でアンモニア気
流中において焼成することにより製造している。同公報
では、この導電性ペロブスカイトをセラミックコンデン
サの電極に使用することを提案しており、同公報には電
子放出材料に適用する旨の記載も示唆もない。同公報に
記載された導電性ペロブスカイトの組成は、本発明で用
いる電子放出材料に含有される上記酸窒化物の組成と重
なる。しかし、同公報では、本発明で限定する組成をも
つ酸窒化物ペロブスカイトの具体的開示はない。また、
本発明において限定する組成を用いて、同公報に記載さ
れた条件でアンモニア気流中において焼成すると、比抵
抗が高くなりすぎて、電子放出材料として好ましい特性
は得られない。
【0018】このように、ペロブスカイト構造をもつ酸
窒化物自体は知られているが、これを電子放出材料とし
て使用することは、本発明者らが全く新規に提案するこ
とであり、この酸窒化物を電極に用いたときに上記効果
が実現することは、従来全く知られていない。すなわ
ち、本発明で用いる電子放出材料が含有する上記酸窒化
物は、電子放出材料としてはこれまで知られていなかっ
た。
【0019】以下、本発明で用いる電子放出材料につい
て詳細に説明する。
【0020】本発明で用いる電子放出材料は、Ba、S
rおよびCaの少なくとも1種からなる第1成分と、T
a、Zr、Nb、TiおよびHfの少なくとも1種から
なる第2成分と金属元素成分として含む。また、動作温
度が高く上記酸窒化物における窒素解離を抑制する必要
がある場合には、Ce、TbおよびPrの少なくとも1
種からなる第3成分も、金属元素成分として添加され
る。第1成分は、低仕事関数の電子放出成分である。第
2成分は、電子放出材料の低抵抗化および高融点化のた
めに必要な成分である。第3成分は、上記酸窒化物から
の窒素の解離を抑えて電子放出材料の劣化を抑制するた
めに必要な成分である。第1成分のうち好ましい元素は
Baであり、Baは第1成分の50〜100原子%、特
に70〜100原子%を占めることが好ましい。第2成
分のうち好ましい元素はTaおよび/またはZr、特に
Taであり、Taは第2成分の50〜100原子%、特
に70〜100原子%を占めることが好ましい。
【0021】本発明で用いる電子放出材料は、ペロブス
カイト構造を有する酸窒化物、すなわち酸窒化物ペロブ
スカイト(オキシナイトライドペロブスカイト)を含有
する。上記第1成分をMI、上記第2成分をMII、第3
成分をMIIIでそれぞれ表したとき、この酸窒化物は、
III2N型結晶を少なくとも含む。MIIIを含有す
る場合には、MIII2N型結晶にMIIIが固溶してい
ることが好ましい。電子放出材料をX線回折により解析
すると、通常、MIII酸化物のピークは存在しないの
で、その場合には上記第3成分はMIII2N型結晶中
に固溶していることが明らかである。なお、出発原料と
して比較的多量のMIII酸化物を用いると、X線回折に
おいてMIII酸化物の弱いピークが観測されることもあ
るが、MIII酸化物は電子放出に寄与しないため、存在
しないほうが好ましい。MIIIがMIII2N型結晶中
に固溶していることは、X線回折におけるピークのシフ
トおよびピーク強度比の変化によっても確認することが
できる。ピーク強度比としては、通常、(001)面の
回折強度と(110)面の回折強度との比をみればよ
い。MIII2N型結晶中においてMIIIが置換するサ
イトは明らかではないが、主としてMIを置換している
と考えられる。MIII2N型結晶において、酸素と窒
素との比は2:1に限定されない。実際の生成物は、酸
素や窒素の欠陥が存在することにより、MIII2+δ
1-δ’として表されるものとなる。ここでδおよび
δ’は、好ましくは−0.5〜0.95、より好ましく
は0〜0.7である。δおよびδ’がこのような範囲に
存在すれば、電子放出材料の蒸発およびスパッタリング
による消耗の抑制効果が高くなる。なお、MIII2
型結晶は、MIII(O,N)3型結晶と表すこともでき
る。
【0022】第3成分をMIIIで表したとき、本発明で
用いる電子放出材料中において MIII/(MI+MII+MIII) は好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは2.
5〜10モル%である。金属元素成分中におけるMIII
の比率が低すぎても高すぎても、MIII添加による効果
が不十分となる。
【0023】本発明で用いる電子放出材料中には、上記
酸窒化物ペロブスカイトのほか、酸化物が含まれていて
もよい。酸化物としては例えば、MI 4II 29型結晶、
III 26型結晶、MIII3型結晶、MI 5II 415
型結晶、MI 7II 622型結晶およびMI 6IIII 418
型結晶等の複合酸化物の少なくとも1種が挙げられる。
なお、MI 6IIII 418型結晶としては、例えばBa6
ZrTa418が挙げられる。MIIIを含有する場合、X
線回折による解析から、これらの複合酸化物中にも、通
常、MIIIが固溶していると考えられる。
【0024】電子放出材料は、上記酸窒化物のほか、炭
化物および/または窒化物、特にTaC等のMII炭化物
を含有していてもよい。この炭化物や窒化物は、後述す
るように、電子放出材料製造の過程で第2成分の一部が
炭化物や窒化物となる結果、含有されるものである。こ
れらの炭化物および窒化物は、高融点で導電性の高い物
質であるため、これらが含まれていても電子放出特性や
耐スパッタリング性は全く損なわれない。なお、第2成
分のうち例えばTaは炭化物となりやすく、Zrは窒化
物となりやすい。
【0025】電子放出材料中の各結晶の存在は、X線回
折により確認することができる。本発明で用いる電子放
出材料の典型的なX線回折パターンを、図4に示す。図
4に示すパターンは、TaCを除き、実質的にMIII
2N型結晶の単一相からなる電子放出材料のものであ
る。本発明で用いる電子放出材料は、MIII2N型結
晶を主成分とすることが好ましく、実質的にこの結晶だ
けから構成されることがより好ましい。ただし、上述し
たように、炭化物および/または窒化物が含まれていて
も問題はない。なお、MIII2N型結晶が主成分であ
るとは、X線回折パターンにおいてそれぞれの結晶の最
大ピーク強度を比較したとき、MIII2N以外の結晶
の最大ピーク強度がMIII2N型結晶の最大ピーク強
度の50%以下、好ましくは30%以下であることを意
味する。ただし、例えばBaZrO 3とBa5Ta415
とのように、最大ピーク位置がほぼ一致する2種または
それ以上の酸化物が同時に生成している場合には、2番
目に大きなピークの強度を用いて、MIII2N型結晶
の最大ピークとの比較を行う。
【0026】電子放出材料において、第1成分、第2成
分の合計に対し、第1成分のモル比をX、第2成分のモ
ル比をYとしたとき、好ましくは 0.8≦X/Y≦1.5 であり、より好ましくは 0.9≦X/Y≦1.2 である。X/Yが小さすぎる場合、放電により第1成分
が早期に枯渇してしまうほか、耐スパッタリング性が不
十分となる。一方、X/Yが大きすぎる場合、放電中に
電子放出材料の蒸発およびスパッタリングによる飛散が
生じやすくなる。そのため、いずれの場合でも、例えば
放電灯に適用した場合には管壁黒化による輝度低下が生
じやすくなる。
【0027】電子放出材料は、第1成分、第2成分およ
び第3成分以外の金属元素成分を含有していてもよい。
このような金属元素成分としては、Mg、Sc、Y、L
a、V、Cr、Mo、W、Fe、NiおよびAlの少な
くとも1種が挙げられる。本明細書では、これらの元素
を元素Mと呼ぶ。元素Mは、焼結性向上のために必要に
応じて添加される。電子放出材料中における元素Mの含
有量は、酸化物換算で好ましくは10質量%以下、より
好ましくは5質量%以下である。元素Mの含有量が多す
ぎると、電子放出材料の融点が低くなってしまうため、
高温使用時の蒸気圧が高くなって寿命が短くなる。一
方、元素M添加による効果を十分に発揮させるために
は、元素Mの含有量は0.5質量%以上とすることが好
ましい。なお、酸化物換算での含有量とは、化学量論組
成の酸化物、すなわち、MgO、Sc 23、Y23、L
23、V25、Cr23、MoO3、WO3、Fe
23、NiOおよびAl23に換算して求めた含有量で
ある。
【0028】元素Mは、前記酸窒化物中においてMI
一部またはMIIの一部と置換されているか、または置換
されずに、酸化物、窒化物、炭化物などとして前記酸窒
化物と混合された状態となっている。なお、前記酸窒化
物結晶においてMIの一部またはMIIの一部が他の金属
元素で置換されていることは、X線回折におけるピーク
のシフトおよびピーク強度比の変化により確認すること
ができる。
【0029】本発明で用いる電子放出材料の室温におけ
る比抵抗は、通常、10-6〜103Ωmなので、誘電体と
はならない。そして、動作温度(通常、冷陰極では70
0〜1000℃程度)において電子放出材料として優れ
た性能を示す。すなわち、大きな放電電流を流すことに
よって高温となった場合でも、蒸気圧が低いために消耗
が少ない。
【0030】電子放出材料の製造方法 本発明で用いる電子放出材料は、従来知られている酸窒
化物の製造方法を利用して製造することができる。すな
わち、例えば前記Journal of Materials Science,29,(1
994),pp4686-4693に示されるように、酸化物や炭酸塩な
どの原料化合物を混合した後、アンモニア気流中で焼成
することにより、上記酸窒化物を得ることができる。た
だし、前述したように、前記Journal of Materials Sci
ence,29,(1994),pp4686-4693に記載された条件で焼成し
た場合には比抵抗が高くなりすぎるため、アンモニア気
流中で焼成する場合には、焼成温度を好ましくは110
0℃以上、より好ましくは1200℃以上とする。な
お、被焼成物の溶融を防ぐためには、焼成温度を好まし
くは2000℃以下、より好ましくは1700℃以下と
する。
【0031】しかし、アンモニア気流中で焼成する場
合、排ガスの中にアルカリ性の強いアンモニアが含まれ
るため、製造装置の耐腐食性に留意する必要があり、ま
た、アンモニアが環境中に放出されないように、硫酸な
どを使用したトラップを排気口に配置する必要がある。
そのため、大量生産に不向きであり、また、設備コスト
が高くなる。
【0032】そこで、本発明者らは、アンモニア気流を
使用せずに酸窒化物ペロブスカイトを生成できる製造方
法を探索した結果、少なくとも原料粉末を含有する被焼
成物と炭素とを近接配置した状態で、窒素ガス含有雰囲
気中において焼成すれば、酸窒化物ペロブスカイトを生
成できることを見いだした。この方法では、安定で扱い
やすい窒素ガスを利用できるため、アンモニア気流を利
用する方法の問題点が解消される。この方法は、酸窒化
物ペロブスカイトの製造方法としては全く新規なもので
あり、本発明者らが初めて提案する方法である。なお、
この方法における被焼成物は、原料粉末そのものであっ
てもよく、原料粉末を含有する塗膜であってもよく、原
料粉末の成形体であってもよい。また、この場合の原料
粉末は、酸化物および/または焼成により酸化物を生成
する出発原料であってもよく、これを焼成して複合酸化
物を生成させた中間生成物であってもよい。
【0033】この方法において、被焼成物と炭素とを近
接配置する手段は特に限定されず、例えば、少なくとも
一部が炭素から構成されている焼成炉を用いたり、炉中
にバルク状、粒状、粉末状の炭素を入れた状態で被焼成
物を焼成したり、被焼成物に粒状、粉末状の炭素を混合
して焼成したり、被焼成物を少なくとも一部が炭素から
なる容器(匣)に入れて焼成したり、これら各手段の2
種以上を併用したりすればよい。これらのうちでは、被
焼成物中の原料粉末と炭素とをほぼ均一に接触させるこ
とが容易であって、かつ、被焼成物を窒素気流にさらし
やすいことから、特に、被焼成物に粒状や粉末状の炭素
を混合して焼成する方法が好ましい。ただし、比較的薄
い塗膜を焼成する際には、塗膜中に炭素粉末を分散させ
なくてもよい。塗膜が薄い場合には、焼成炉や容器から
塗膜中の原料粉末に十分に炭素を供給でき、また、薄い
塗膜に炭素粉末を分散させると、炭素粉末が塗膜の密度
や平坦性などに影響を与えるおそれがあるからである。
【0034】なお、少なくとも一部が炭素で構成された
炉としては、例えば、断熱材の少なくとも一部を炭素で
構成した炉が挙げられ、また、電気炉では、発熱体だ
け、または発熱体および断熱材をそれぞれ炭素で構成し
た炉が挙げられる。また、炭素からなる上記容器として
は、被焼成物に対する窒素ガスの接触を阻害しないよう
に、少なくとも一端が開放された容器を用いる。
【0035】また、炭素単体に替えて、炭素化合物を利
用することもできる。例えば、通常、成形体や塗膜には
有機化合物からなるバインダが含まれるが、焼成する際
に脱バインダを不十分にすることにより、バインダから
炭素を供給して酸窒化物を形成することもできる。ま
た、原料粉末中に有機化合物を入れたり、炉中に有機化
合物を入れて焼成したりすることによっても、酸窒化物
の生成は可能である。しかし、酸窒化物を安定して製造
でき、かつ、有機化合物の残留に起因する電子放出材料
の特性低下を招く心配がないことから、炭素単体を利用
する方法がより好ましい。
【0036】以下、本発明で用いる電子放出材料を粉末
として得る方法について、詳細に説明する。
【0037】粉末の製造方法1A 本発明で用いる電子放出材料を粉末または焼結体として
得るに際しては、酸窒化物の生成を上記した条件で行え
ばよく、そのほかの工程は特に限定されず、例えば図1
(A)、図1(B)、図2(A)および図2(B)にそ
れぞれ工程の流れを示す方法を利用することができる。
まず、図1(A)に示す各工程について説明する。
【0038】秤量工程 秤量工程では、金属元素成分の出発原料を、最終組成に
応じて秤量する。出発原料として用いる化合物は、酸化
物および/または焼成により酸化物となる化合物、例え
ば炭酸塩、蓚酸塩などを用いればよいが、通常、第1成
分を含む化合物には、BaCO3、SrCO3およびCa
CO3を用いることが好ましく、第2成分を含む化合物
には、Ta25、ZrO2、Nb25、TiO2およびH
fO2を用いることが好ましく、第3成分を含む化合物
には、CeO2、Tb47、Pr611を用いることが好
ましい。また、前記元素Mの出発原料としては、MgC
3、Sc23、Y23、La23、V25、Cr
23、MoO3、WO3、Fe2 3、NiOおよびAl2
3を用いることが好ましい。なお、第3成分を添加す
る場合において、最終的に焼結体を得る場合には、第3
成分の出発原料の一部または全部を、後の粉砕工程にお
いて添加してもよい。
【0039】混合工程 混合工程では、秤量した出発原料を混合し、原料粉末を
得る。混合には、ボールミル法、摩擦ミル法、共沈法な
どの方法を用いることができる。混合後、脱水加熱乾燥
法または凍結乾燥法などで乾燥する。
【0040】この混合工程では、必要に応じ出発原料に
炭素を添加する。炭素は、出発原料の混合の際に同時に
湿式混合してもよく、出発原料同士を混合した後に添加
して乾式混合してもよい。炭素は比重が比較的小さく、
分散媒中に分散しにくいため、湿式混合を行う場合には
必要に応じ分散剤を添加する。分散媒は水系であっても
有機系であってもよいが、環境への負荷を考慮すると、
水系のものを利用することが好ましい。
【0041】炭素の添加量は、出発原料に対し好ましく
は50質量%以下、より好ましくは20質量%以下であ
る。添加量が多すぎると、電子放出に寄与しない炭化物
や窒化物が多量に生成しやすくなるため、好ましくな
い。また、焼成後に炭素が多量に残留して、電子放出材
料として使用する際に蒸発してガス化しやすくなる点で
も、好ましくない。一方、炭素からなる容器および炭素
を含む炉材を利用しない場合において炭素の添加量が少
なすぎると、酸窒化物を生成することが困難となる。そ
のためこの場合には、炭素の添加量を出発原料に対し好
ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%とす
る。炭素の種類は特に限定されず、グラファイトや無定
型炭素などのいずれであってもよい。混合物中における
炭素の平均粒径は、好ましくは1mm以下、より好ましく
は500μm以下である。平均粒径が大きすぎると、混
合物中において均一に分散しにくくなるほか、反応しに
くくなるので、焼成後に残留しやすくなる。炭素粉末の
平均粒径は小さいほうが好ましいが、小さすぎると取り
扱いおよび分散が困難となるので、好ましくは0.01
μm以上とする。なお、炭素粉末の分散性を向上させる
ために、分散剤を用いてもよい。
【0042】酸窒化物生成工程 酸窒化物生成工程では、原料粉末を窒素ガス含有雰囲気
中で、好ましくは窒素気流中で焼成し、酸窒化物ペロブ
スカイトを含む電子放出材料を得る。このとき、前述し
たように、必要に応じ、少なくとも一部が炭素で構成さ
れた炉や容器を用いたり、炉中に炭素を配置したり、こ
れらを併用したりする。焼成温度は、好ましくは800
〜2000℃、より好ましくは1100〜1700℃で
ある。焼成温度が低すぎると酸窒化物が生成されにくく
なり、焼成温度が高すぎると炭化物や窒化物の生成量が
多くなって、いずれの場合でも電子放出材料としての性
能が不十分となりやすい。また、焼成温度が高すぎる
と、被焼成物が溶融するおそれもある。焼成時間(温度
保持時間)は、通常、0.5〜5時間程度とすればよ
い。この焼成は、粉末の状態で行ってもよく、取り扱い
を容易にするために粉末を成形した状態で行ってもよ
い。この焼成によりペロブスカイト構造の酸窒化物が生
成される。また、このとき、酸窒化物以外に、前記第2
成分の炭化物および/または窒化物も同時に生成される
ことがあり、特に炭化物は生成されやすい。ただし、こ
れらの炭化物および窒化物は、導電性が高くかつ融点が
高いので、電子放出材料中に含まれていても問題はな
い。
【0043】なお、原料粉末に混合された炭素粉末は、
窒素ガス含有雰囲気中での焼成により反応して消耗する
ため、混合量が適切であれば焼成体中に実質的に残存し
ない。したがって、焼成後、電子放出材料から炭素粉末
を除去する必要はないが、例えば粒径の大きな炭素粉末
を比較的多量に用いた場合などには、必要に応じて除去
作業を行ってもよい。
【0044】上記窒素ガス含有雰囲気としては、窒素1
00%であることが最も好ましいが、Ar等の不活性ガ
ス、CO、H2等の還元性ガス、炭素を構成成分とする
ガス(例えばベンゼンや一酸化炭素など)が含まれてい
てもよい。ただし、その場合でも、窒素が全体の50%
以上を占めることが好ましい。炭素を構成成分とするガ
スは、窒素に比べ一般に取り扱いが難しい上、酸窒化物
ペロブスカイトを安定して生成させることが難しい。
【0045】窒素気流中で焼成する場合、被焼成物近傍
での単位面積当たりの窒素ガス流量、すなわち、被焼成
物近傍の空間において、窒素気流の流れる方向と垂直な
断面における単位面積あたりの窒素ガス流量は、0.0
001m/s以上、特に0.001m/s以上とすることが好
ましい。この程度の流量で被焼成物に窒素ガスを供給す
ることにより、被焼成物中において酸窒化物が迅速かつ
均一に生成しやすくなる。なお、上記流量は被焼成物が
飛散しない範囲内で設定すればよく、その具体的な上限
は特にないが、通常は5m/sを超える流量とする必要は
ない。
【0046】上記酸窒化物は、酸素ガス含有雰囲気中で
加熱した場合に分解されやすいため、焼成雰囲気は低酸
素分圧に保つことが好ましい。酸窒化物の分解されやす
さは加熱温度によっても異なるので、焼成温度に応じて
酸素分圧を適切に制御すればよいが、好ましくは5.0
×103Pa以下、より好ましくは1.0×103Pa以下、
さらに好ましくは0.1×103Pa以下である。なお、
上記酸素分圧の好ましい下限は特になく、酸素分圧がゼ
ロであってもよいが、通常の焼成装置を用いた場合、焼
成雰囲気中の酸素分圧は一般に0.1Pa以上となる。
【0047】粉砕工程 粉砕工程では、酸窒化物生成工程で得られた電子放出材
料を粉砕し、電子放出材料粉末を得る。この粉砕には、
ボールミルや気流粉砕を利用すればよい。粉砕工程を設
けることにより、電子放出材料の粒径を小さくでき、か
つ、粒度分布を狭くできるので、電子放出性の向上およ
びそのばらつきを小さくできる。したがって、粉砕工程
は設けることが好ましい。
【0048】最終的に焼結体を得る場合には、次の成形
工程に進む。その場合には、前述したように、第3成分
の出発原料の一部または全部をこの粉砕工程で添加して
もよい。第3成分の出発原料が存在する状態で酸窒化物
生成処理を行うと、上記酸窒化物が生成しにくくなるこ
とがある。これは、第2成分の出発原料が第3成分の出
発原料と反応して上記酸窒化物以外の結晶が生成される
ためと考えられる。これに対し、酸窒化物生成処理後に
第3成分の出発原料の一部または全部、特に全部を添加
し、続く焼結工程において第3成分を酸窒化物に固溶さ
せれば、このような問題の発生を防ぐことができる。
【0049】粉砕後、造粒工程を必要に応じて設ける。
造粒工程では、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ
エチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイ
ド(PEO)などの有機系バインダを含む水溶液を用い
て粉砕粉を顆粒化する。造粒手段は特に限定されず、例
えば、噴霧乾燥法、押出造粒法、転動造粒法や、乳鉢、
乳棒を用いる方法などを利用することができる。
【0050】粉末の製造方法1B 図1(B)に示す方法は、第3成分を添加する場合にお
いて選択可能な方法である。この方法は、第3成分の出
発原料を、秤量工程において添加せずに第1の粉砕工程
において添加し、成形前に固溶工程を設ける点が、図1
(A)に示す方法と異なる。この固溶工程では、第3成
分の出発原料を添加した被焼成物を窒素含有雰囲気中で
焼成することにより、酸窒化物に第3成分を固溶させ
る。固溶工程における窒素ガス流量、酸素分圧および焼
成温度に関する好ましい条件は、酸窒化物生成工程と同
様である。この固溶工程において、炭素粉末を混合して
焼成すると、電子放出に寄与しないTaC等の炭化物が
生成しやすいため、炭素粉末を混合する必要はない。た
だし、少なくとも一部が炭素から構成されている焼成炉
や容器を用いる場合には特に問題はない。この方法で
は、製造方法1Aの粉砕工程の説明において述べたよう
に、酸窒化物生成後に第3成分の出発原料を添加するた
め、酸窒化物生成工程において第3成分出発原料が酸窒
化物の生成を阻害するおそれがない。ただし第3成分の
出発原料は、秤量工程と第1の粉砕工程とにおいて分割
して添加してもよい。
【0051】製造方法1Bでは、固溶工程後に第2の粉
砕工程を設け、電子放出材料粉末を得る。
【0052】焼結体の製造方法2A 図2(A)に示す方法は、酸窒化物生成工程の前に複合
酸化物生成工程を設ける点が、図1(A)に示す方法と
異なる。上記製造方法1A、1Bのように、BaCO3
などの反応性の高い材料を含む出発原料を用いて比較的
高温の熱処理により酸窒化物を直接生成させた場合、焼
成時に炉材、例えばジルコニア製のセッター、と出発原
料とが反応することがある。焼成時に炉材と出発原料と
が反応すると、炉材が消耗したり、電子放出材料の特性
が影響を受けることがある。これに対し、酸窒化物生成
工程の前に、比較的低温の熱処理により複合酸化物を生
成させる複合酸化物生成工程を設ければ、このような問
題の発生が抑えられる。以下、図2(A)に示す各工程
について説明する。
【0053】秤量工程 図1(A)に示す秤量工程と同様にして行う。ただし、
第3成分の出発原料の一部または全部を、後の粉砕工程
において添加してもよい。
【0054】混合工程 炭素を混合しないほかは図1(A)に示す混合工程と同
様にして行う。
【0055】複合酸化物生成工程 原料粉末を、空気中等の酸化性雰囲気中で焼成し、MI 5
II 415等の複合酸化物を含む中間生成物を生成させ
る。この中間生成物中に含有される複合酸化物として
は、本発明で用いる電子放出材料に含まれ得る前記複合
酸化物の少なくとも1種が挙げられる。この焼成により
得られる中間生成物は、実質的に複合酸化物だけから構
成されていることが好ましい。焼成温度は、好ましくは
800〜1700℃、より好ましくは800〜1500
℃、さらに好ましくは900〜1300℃とする。焼成
温度が低すぎると、MI 5II 415等の複合酸化物が生
成しにくい。一方、焼成温度が高すぎると、焼結が進ん
で粉砕しにくくなり、また、複合酸化物の溶融や分解が
生じることもある。焼成時間は、0.5〜5時間程度と
すればよい。この焼成は、粉末の状態で行ってもよく、
取り扱いを容易にするために粉末を成形した状態で行っ
てもよい。なお、複合酸化物生成工程は、還元性雰囲気
中で行ってもよい。還元性雰囲気中で焼成しても、上記
複合酸化物を生成することができる。ただし、還元性雰
囲気とするためには雰囲気制御が必要になること、最終
的に得られる電子放出材料の性能が複合酸化物生成工程
における焼成雰囲気に依存しないことから、通常、空気
中で焼成することが好ましい。
【0056】第1の粉砕工程 図1(A)に示す粉砕工程と同様にして行う。また、こ
のとき、図1(A)に示す混合工程と同様に、必要に応
じ炭素を混合する。また、前述したように、この工程に
おいて第3成分の出発原料の一部または全部を添加して
もよい。
【0057】酸窒化物生成工程 図1(A)に示す酸窒化物生成工程と同様な条件で焼成
し、酸窒化物を含む電子放出材料の焼結体を得る。この
工程における焼成は、粉末の状態で行ってもよく、取り
扱いを容易にするために粉末を成形した状態で行っても
よい。
【0058】第2の粉砕工程 炭素を混合しないほかは上記第1の粉砕工程と同様にし
て行い、電子放出材料の粉末を得る。
【0059】焼結体(粉末)の製造方法2B 図2(B)に示す方法は、第3成分を添加する場合にお
いて選択可能な方法である。この方法は、図1(A)の
方法に対する図1(B)の方法と同様に、上記製造方法
2Aにおいて、第2の粉砕工程で第3成分の出発原料の
一部または全部を添加すると共に、第2の粉砕工程の後
に、固溶工程および第3の粉砕工程を設ける方法であ
る。
【0060】導電性容器 電子放出材料および水銀ディスペンサ材料が充填される
導電性容器は、W、Mo、Ta、Ni、Zr、Ti等の
高融点金属またはこれらの少なくとも1種を含有する合
金から構成することが好ましい。導電性容器は、両端を
開放した筒状としてもよく、一端が開放し、他端が閉じ
た有底の筒状としてもよい。また、前記特開平7−24
0174号公報に記載されているように、筒状の導電性
容器の側周面に単数ないし複数の孔を設けてもよい。
【0061】水銀ディスペンサ材料 本発明で用いる水銀ディスペンサ材料は特に限定され
ず、例えば、チタニウム水銀(Ti3Hg)などを用い
ればよい。チタニウム水銀の製造方法については、例え
ば平成5年度照明学会全国大会予稿集第47ページに記
載されている。
【0062】ゲッター材 ゲッター材は、水銀ディスペンサ材料をバルブ内に放出
する際に、同時に放出される不純物ガスを吸収するため
に利用される。本発明で用いるゲッター材は特に限定さ
れず、例えばZrとAlとの合金(Zr5Al3、Zr3
Al2、Zr5Al4等)などを用いればよい。また、前
記チタニウム水銀を製造する際に、Ti粉末とTa粉末
とを混合して焼結し、水銀と反応させることにより、ゲ
ッター材であるTaを含有するチタニウム水銀を製造す
ることが可能である。
【0063】電極の製造方法 図3に示す構成の電極を製造するに際しては、電子放出
材料の粉末および水銀ディスペンサ材料の粉末と、必要
に応じゲッター材とを用意し、これらを所定の比率とな
るように混合し、得られた混合物を導電性容器中に充填
する。具体的には、例えば、金属パイプ中に上記混合物
を充填した後、金属パイプの両端を引っ張って絞り加工
することにより細管とし、その後、切断すればよい。ま
た、例えば、電子放出材料の粉末と水銀ディスペンサ材
料の粉末とを含有する成形体を、導電性容器中に挿入な
いし嵌入することにより、電極を形成してもよい。
【0064】また、このほか、導電性容器の外表面およ
び/または内表面に、電子放出材料膜を形成しておき、
この導電性容器中に水銀ディスペンサ材料またはこれと
ゲッター材とを充填する構成としてもよい。電子放出材
料膜の形成には、厚膜法を利用すればよい。厚膜法で
は、上記酸窒化物を含有する電子放出材料の粉末をスラ
リー化し、これを塗布して乾燥ないし焼き付けを行って
もよく、炭酸塩等の原料化合物粉末のスラリー、または
図2(A)または図2(B)に示す方法を利用して複合
酸化物化した粉末のスラリーを塗布して、酸窒化物が生
成する条件で焼成してもよい。
【0065】また、図3に示す構造の電極のほか、板
状、筒状、棒状等の導電性基体の表面に、電子放出材料
膜と水銀ディスペンサ材料膜とを形成する構成としても
よい。
【0066】また、上記導電性基体の表面に、電子放出
材料と水銀ディスペンサ材料とを共に含有する膜を形成
する構成としてもよい。酸窒化物を生成させた状態で電
子放出材料のスラリーを塗布して乾燥することにより膜
を形成すれば、高温熱処理が不要なので、水銀ディスペ
ンサ材料から水銀が放出されてしまうことはない。
【0067】なお、本発明において、電子放出材料を膜
として利用する場合、膜の厚さは、通常、5〜1000
μm程度とすればよい。電子放出材料膜中における電子
放出材料粒子の平均粒径は、好ましくは0.05〜20
μm、より好ましくは0.1〜10μmである。膜中にお
ける平均粒径をさらに小さくしようとすると、取り扱い
が困難な微小粒子を用いなければならなくなる。また、
このような微小粒子は凝集して2次粒子となりやすく、
そのため、粒度分布が広くなってしまい、均一な塗膜を
形成しにくくなる。一方、膜中における平均粒径が大き
すぎると、電子放出材料粒子の脱落が生じやすく、ま
た、塗布の際の作業性も悪くなり、また、電子放出性も
悪くなる。
【0068】
【実施例】図1(A)に示す方法を利用し、以下に示す
手順で電子放出材料の粉末を製造した。
【0069】まず、第1成分としてBa、第2成分とし
てTaおよびZrを選択し、これらの出発原料としてB
aCO3、Ta25およびZrO2を準備した。
【0070】次いで、Ba、TaおよびZrのモル比率
が Ba:Ta:Zr=1:0.8:0.2 となるように上記出発原料を秤量し、ボールミルにより
20時間湿式混合した。
【0071】次いで、混合物を乾燥した後、平均粒径5
0μmの炭素粉末を出発原料に対し5質量%加えて乾式
混合し、圧力10MPaで成形した。得られた成形体に、
酸窒化物生成処理を施した。この処理では、上面が開放
した炭素製の容器に成形体を入れ、容器との間に隙間を
設けて炭素製の蓋をかぶせ、窒素気流中において130
0℃で2時間焼成した。窒素ガスは、炉中の成形体近傍
空間において窒素気流の流れる方向と垂直な断面におけ
る単位面積当たりの窒素ガス流量が0.01m/sとなる
ように供給した。なお、焼成雰囲気中の酸素分圧は、2
0Paとした。得られた電子放出材料をボールミルにより
20時間湿式粉砕し、乾燥して、平均粒径0.8μmの
電子放出材料粉末を得た。
【0072】この粉末に対しX線回折を行ったところ、
図4に示すような酸窒化物ペロブスカイト(MIII2
N型結晶)のピークと第2成分炭化物のピークとが認め
られた。
【0073】なお、電子放出材料粉末の窒素含有量およ
び酸素含有量をガス分析計(堀場製作所製のEMGA−
650A)により調べたところ、MIII2N型結晶
は、M III2+δN1-δ’においてδ=0.5、δ’
=0.5であることがわかった。
【0074】次いで、各電子放出材料粉末にポリエチレ
ンオキサイドの1%水溶液を加えてスラリーとした。こ
のスラリーを、Ni製導電性容器の表面に塗布し、空気
中において100℃で30分間乾燥した。なお、電子放
出材料の塗布量は2.0mgとした。次いで、この導電性
容器中に、金属間化合物であるTi3Hgを充填して、
電極を得た。この電極を、バルブの全長100mm、外径
3mm、封入ガスAr(封入ガス圧5.3kPa)、駆動電
源周波数30kHzの放電灯に組み込み、本発明サンプル
とした。
【0075】また、電子放出材料の塗膜を形成せずに、
上記導電性容器にTi3Hgを充填したものを電極とし
て利用した比較サンプルも作製した。
【0076】これらのサンプルについて連続点灯試験を
行い、発光効率およびランプ寿命を評価したところ、本
発明サンプルは比較サンプルに比べ、ランプ電流を同じ
としたときにランプ電圧が低かった。ランプ条件(バル
ブ寸法および封入ガス圧)が同じであれば、ランプ電圧
が低いほど発光効率が高いことになる。ランプ電流と輝
度とはほぼ比例するので、ランプ電流(輝度)が同じで
あってランプ電圧が低ければ、より少ない電力で同等の
輝度が得られる、すなわち効率が高いことになる。
【0077】また、両サンプルについて、点灯時間とラ
ンプ電圧との関係を調べたところ、本発明サンプルは、
10000時間経過後も比較サンプルより低いランプ電
圧を維持していた。
【0078】これらの結果から、本発明サンプルは、発
光効率が高く、その寿命も長いことがわかる。
【0079】なお、上記各実施例では、第1成分として
Ba、第2成分としてTaおよびZrを用いたが、Ba
の少なくとも一部に替えてSrおよびCaの少なくとも
1種を用いた場合、また、TaおよびZrの少なくとも
一部に替えてNb、TiおよびHfの少なくとも1種を
用いた場合、また、第3成分としてCe、TbおよびP
rの少なくとも1種を用いた場合でも、上記実施例と同
様な効果を得られた。
【0080】
【発明の効果】本発明で用いる電子放出材料は、電子放
出特性が良好であり、しかも、イオンスパッタリングさ
れたときの消耗が少ない。そのため、この電子放出材料
を水銀ディスペンサと一体化した電極を用いることによ
り、低圧水銀蒸気放電灯の高特性化、省エネルギー化、
長寿命化が実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)および(B)は、本発明で用いる電子放
出材料を粉末として製造する際の工程を示すフローチャ
ートである。
【図2】(A)および(B)は、本発明で用いる電子放
出材料を粉末として製造する際の工程を示すフローチャ
ートである。
【図3】本発明の放電灯の構成例を示す断面図である。
【図4】本発明で用いる電子放出材料のX線回折パター
ンである。
【符号の説明】
2 バルブ 21 蛍光体層 3 電極 4 リード線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松岡 大 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 浜田 宗光 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 淀川 正忠 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 原田 拓 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 5C015 AA03 BB02 CC02 CC03 CC04 CC09 UU05

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水銀蒸気放電灯に用いられる電極であっ
    て、電子放出材料と水銀ディスペンサ材料とを含み、 前記電子放出材料が、Ba、SrおよびCaの少なくと
    も1種からなる第1成分と、Ta、Zr、Nb、Tiお
    よびHfの少なくとも1種からなる第2成分とを金属元
    素成分として含み、かつ、酸窒化物ペロブスカイトを含
    有するものである電極。
  2. 【請求項2】 前記電子放出材料が、Ce、Tbおよび
    Prの少なくとも1種からなる第3成分を金属元素成分
    として含む請求項1の放電灯。
  3. 【請求項3】 ゲッター材を含む請求項1の電極。
  4. 【請求項4】 開口部が存在する導電性容器を有し、こ
    の導電性容器中に、前記電子放出材料と水銀ディスペン
    サ材料とが充填されている請求項1〜3のいずれかの電
    極。
  5. 【請求項5】 開口部が存在する導電性容器を有し、こ
    の導電性容器中に水銀ディスペンサ材料が充填されてお
    り、前記導電性容器の外表面および/または内表面に、
    前記電子放出材料を含有する膜が形成されている請求項
    1〜3のいずれかの電極。
  6. 【請求項6】 導電性基体を有し、この導電性基体の表
    面に、前記電子放出材料を含有する膜および水銀ディス
    ペンサ材料を含有する膜が形成されている請求項1〜3
    のいずれかの電極。
  7. 【請求項7】 導電性基体を有し、この導電性基体の表
    面に、前記電子放出材料および水銀ディスペンサ材料を
    含有する膜が形成されている請求項1〜3のいずれかの
    電極。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかの電極を有する
    放電灯。
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JP2008521187A (ja) * 2004-11-24 2008-06-19 ブラックバーン マイクロテック ソリューションズ リミテッド 電極及びこれに関連する改良
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