JP2000331813A - フェライト磁石粉末 - Google Patents

フェライト磁石粉末

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のフェライト磁石粉末に比べて高い飽和
磁化または高い飽和磁化及び保磁力を有する新しい高性
能フェライト磁石粉末を提供する。 【解決手段】 原子比率で、(Sr1−x)O・n
[(Fe1−y](RはLa、Nd及びP
rの少なくとも1種であり、MはMn、Co及びNiの
少なくとも1種である)、0.05≦x≦0.5、{x/(2.2
n)}≦y≦{x/(1.8n)}、5.7≦n≦6.0で表され
る基本組成を有し、実質的にマグネトプランバイト型結
晶構造を有することを特徴とするフェライト磁石粉末。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来のフェライト
磁石粉末に比べて高い飽和磁化または高い飽和磁化と保
磁力とが得られ、実質的にマグネトプランバイト型結晶
構造を有する新しい高性能フェライト磁石粉末に関す
る。
【0002】
【従来の技術】フェライト磁石はモーター、発電機等の
回転機を含む種々の用途に使用されている。最近は特に
自動車用回転機分野では小型・軽量化を目的とし、電気
機器用回転機分野では高効率化を目的としてより高い磁
気特性を有するフェライト磁石が求められている。従来
SrフェライトあるいはBaフェライトの高性能焼結磁
石は以下のようにして製造されていた。即ち、酸化鉄と
SrまたはBaの炭酸塩を混合後、仮焼処理によりフェ
ライト化反応を終了させる。仮焼されたクリンカーを粗
粉砕する。次に得られた粗粉砕粉を、焼結挙動を制御す
る添加物:SiO、SrCO及びCaCO、さら
には保磁力iHcを制御する添加物:Alあるいは
Cr 等とともに平均粒径値が0.7〜1.0μmになる
まで微粉砕する。微粉砕し、作製したスラリーを用いて
磁場中で配向させながら湿式成形し成形体とする。成形
体を焼成し、その後製品形状に加工する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような製造方法を
前提とした場合、フェライト磁石の高性能化の方法は以
下の5つに大きく分類されると考えられる。第1の方法
は微粒化である。焼成体における結晶粒の大きさが、M
(マグネトプランバイト)型Srフェライト磁石の臨界
単磁区粒子径値である約0.9μmに近いほど保磁力iHcは
最大となるため、焼成時の結晶粒成長を見込んで、微粉
砕平均粒径値を例えば0.7μm以下に微粒化すればよ
い。しかしながら本方法では、微粒化するほど湿式成形
時の脱水特性が悪くなり、生産効率が落ちるという副作
用を有する。第2の方法は焼成体の結晶粒の大きさをで
きるだけ均一にすることである。理想的には均一にして
その値を上記の臨界単磁区粒子径値約0.9μmとすれば
よい。この値より大きな結晶粒も小さな結晶粒も保磁力
iHcの低下につながるからである。この方式による具体
的な高性能化の手段は微粉砕粉の粒径分布を改善するこ
とにあるが、工業的生産を前提とした場合にはボールミ
ルあるいはアトライターなどの既存の粉砕機を用いざる
を得ず、その改善程度には自ずから限界がある。また近
年、化学的沈殿法により均一な粒子径を有するフェライ
ト微粒子を作製する試みが公表されているが、工業的大
量生産に適合する方式とはいえない。第3の方法は磁気
的異方性を左右する結晶配向度を向上させることであ
る。本方法における具体的手段としては、表面活性剤を
微粉砕スラリーに添加してスラリー中のフェライト粒子
の分散性を向上したり、配向時の磁場強度を強くするこ
と等が挙げられる。第4の方法は焼成体の密度を向上さ
せることである。Srフェライト焼成体の理論密度は5.
15g/ccである。現在市場に供されているSrフェライト
磁石の密度は概ね4.9〜5.0g/ccの範囲にあり、この値は
対理論密度比で95〜97%に相当する。高密度化すれば残
留磁束密度Brの向上が期待されるが、上記の現状値以上
に密度を向上するにはHIP等の特殊な高密度化手段が必
要である。しかしながらこのような特殊なプロセスの導
入は製造原価の増加に結びつき、廉価磁石としてのフェ
ライト磁石の特長を失わしめる可能性がある。第5の方
法はフェライト磁石を構成する主組成物であるフェライ
ト化合物自体の飽和磁化σsを向上させることである。
飽和磁化σsの向上は直接的に残留磁束密度Brの向上へ
結びつく可能性を有している。従来において生産されて
いるフェライト化合物はM(マグネトプランバイト)型
の結晶構造を有している。このM型より大きな飽和磁化
を有するW型フェライトの検討も鋭意行われているもの
の、雰囲気制御の困難さのため量産化が実現されるには
至っていない。このような状況の中で、上記第1〜第4
の方法によりフェライト磁石の高性能化が図られ、代表
特性;Br=4100G、iHc=4000Oeを有する高性能フェ
ライト磁石の製品化まで進んでいるのが現状である。し
かしながら、SrO・nFe(nはモル比)で表
される化合物を主組成物とし、上記第1〜第4の方法で
これ以上の格段の高性能化を図ることは下記の理由によ
り困難になっている。即ち第1の理由は上記第1〜第4
の方法が生産性に対し副作用ともいうべき悪影響を有し
ていたり、量産工程を考慮した場合の実現が困難な内容
を含んでいるためである。第2の理由は磁気特性のう
ち、特に残留磁束密度Brが既に理論値に近いレベルに達
しているためである。このことはSrフェライト焼結磁
石のみならず、Srフェライト磁石粉末でも同様であ
る。従って、本発明の課題は、上記第5の方法により、
従来のフェライト磁石粉末に比べて高い飽和磁化または
高い飽和磁化及び保磁力を有する新しい高性能フェライ
ト磁石粉末を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
に、本発明者らはSrO・nFe(nはモル比)
で表すことができる組成物のSrおよびFe元素の一部
を異種元素で置換する方法を見い出した。マグネトプラ
ンバイト型Srフェライトの磁性はFeイオンの磁気モ
ーメントが担っており、この磁気モーメントがFeイオ
ンサイトにより部分的に反平行方向に配列したフェリ磁
性体の磁気構造を有している。この磁気構造において飽
和磁化を向上させるには2つの方法がある。第1の方法
は反平行方向に向いた磁気モーメントに対応するサイト
のFeイオンを、Feイオンより小さな磁気モーメント
を有するか非磁性の別種の元素で置換することである。
第2の方法は平行方向に向いた磁気モーメントに対応す
るサイトのFeイオンを、Feイオンより大きな磁気モ
ーメントを有する別種の元素で置換することである。本
発明者らは以上を念頭におき、Feイオンを種々の元素
で置換する検討を鋭意行った結果、Mn、CoまたはN
iが飽和磁化を向上し、かつ磁気特性を改善する元素で
あることを見い出した。しかしながら単純に前記元素を
添加しただけでは十分な効果は得られない。なぜなら
ば、Feイオンを別種の元素で置換しようとすると、イ
オン価数のバランスがくずれ異相が発生してしまうため
である。この現象を回避するには、電荷補償を目的にS
rサイトを別種の元素で置換すればよく、その目的のた
めにはLa、NdまたはPrが特に有効であることを見
い出し本発明をなしたものである。
【0005】即ち本発明は、原子比率で、 (S1−x)O・n[(Fe1−y] (RはLa、Nd及びPrの少なくとも1種であり、M
はMn、Co及びNiの少なくとも1種である)、0.05
≦x≦0.5、{x/(2.2n)}≦y≦{x/(1.8
n)}、5.7≦n≦6.0 で表される基本組成を有し、実
質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有するフェラ
イト磁石粉末である。本発明の磁石粉末は、従来のフェ
ライト磁石粉末に比べて高い飽和磁化または高い飽和磁
化及び保磁力を有しており、有用なものである。
【0006】本発明のフェライト磁石粉末のモル比n
は、良好な磁気特性を得るためにn=5.7〜6.0とするこ
とが好ましい。nが5.7未満では磁気特性の減少傾向が
認められ、nが6.0を超えるとマグネトプランバイト相
以外の異相(例えばα−Fe)が生成して磁気特
性が顕著に低下する。xは0.05以上、0.5以下とする。
xが0.05未満では従来のフェライト磁石粉末よりも磁気
特性を高めることが困難であり、0.5を超えると逆に磁
気特性が低下する。yは、電荷バランスを理想的に満足
する条件(x=2ny)のみならず、x/(ny)が1.
8〜2.2の範囲にあれば、従来のフェライト磁石粉末より
も磁気特性を高めることができる。従って、{x/(2.
2n)}≦y≦{x/(1.8n)}がyの望ましい範囲で
ある。
【0007】本発明のフェライト磁石粉末は標準製造工
程(混合→仮焼→粉砕)の仮焼段階で実質的に形成さ
れ、粉砕を経て製造される。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明を実施例により詳細
に説明する。 (実施例1〜3、参考例1〜9)SrCO、Fe
、R元素の各酸化物及びM元素の各酸化物をそれぞれ
用い、下記の化学式において、原子比率でn=5.85、x
=2ny、x=0.117になるように配合し、湿式にて混
合した。その後、1200℃で2時間、大気中で仮焼した。 (Sr1−x)O・n[(Fe1−y
] R元素としては、Srイオンと類似のイオン半径を有す
ることを基準として、La、Pr、Nd、Sm、Eu、
Gdを選択した。またM元素としては、Feイオンと類
似のイオン半径を有することを基準として、Ti、V、
Mn、Co、Ni、Cu、Znを選択した。また比較例
として、上記化学式において、n=5.85、x=y=0な
る組成物に配合し、混合した以外は前記と同様にして仮
焼した。仮焼粉をローラーミルで乾式粉砕を行い粗粉砕
粉とした。次に、試料振動型磁力計により得られた粗粉
砕粉の磁気特性を測定し、評価した。この測定は最大磁
場強度12kOeで行い、1/Hプロット(Hは印加磁
場強度)により飽和磁化σsを求めた。また保磁力Hc
を求めた。またX線回折により生成した相の同定を行っ
た。結果を表1に示す。表1において、M相とはマグネ
トプランバイト型の結晶構造を有する相である。表1よ
り、(R元素、M元素)の組み合わせで(La、M
n)、(La、Co)及び(La、Ni)をそれぞれ選
択した実施例1〜3の磁石粉末は比較例の磁石粉末に比
べて高い飽和磁化σs及び良好な保磁力Hcを有してい
ることがわかる。
【0009】
【表1】
【0010】(参考例10)R元素としてLa、M元素
としてZnをそれぞれ選択し、SrCO、Fe
、La及びZnOを用い、下記に示す化学
式において、原子比率でn=5.85、x=2ny、x=0
〜0.6になるように配合し、湿式にて混合した。その
後、1200℃で2時間、大気中で仮焼した。 (Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yZn
] その後は実施例1と同様にして粗粉砕粉を作製し、磁気
特性を測定した。結果を図1に示す。図1よりLa
及びZnOを同時に添加することにより、飽和磁化σ
sが向上することがわかる。またLa含有量xが0.05以
上でσs向上効果が認められ、0.5を超えると逆にσs
が減少することがわかる。従ってxは、0.05以上、0.5
以下が望ましく、さらに望ましくは0.07以上、0.4以下
である。 (実施例4)R元素がPrまたはNd、及びM元素がM
n、Co、Niのいずれかの組み合わせとした以外は参
考例10と同様にして評価した場合においても図1とほ
ぼ同様の結果が得られた。またnが5.7〜6.0の範囲では
有意に差異は認められず、同様な効果が得られることを
確認した。
【0011】(参考例11)電荷補償と関連して、R元
素とM元素の添加量比の許容範囲を求める検討を行っ
た。R元素としてLa、M元素としてZnをそれぞれ選
択し、SrCO、Fe、La及びZnO
を用いて、下記に示す化学式において、原子比率でn=
5.85、y=0.83〜1.25x10−2、x=0.117 になるよ
う配合し、湿式にて混合した。その後、1200℃で2時
間、大気中で仮焼した。 (Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yZn
] 以降は実施例1と同様にして粗粉砕粉を作製し、磁気特
性を測定した。結果を表2に示す。表2より、電荷バラ
ンスが完全に満たされた条件、即ちx=2nyが成り立
つ添加量比のみならず、x/(ny)値が1.8から2.2の
範囲にあれば、磁気特性の実質的な劣化は認められず、
高い磁気特性が維持されることがわかる。 一方、x/
(ny)値が2.2を超えた場合あるいは1.8未満では磁気
特性の顕著な減少が認められた。従って、x/(ny)
値の望ましい範囲は1.8以上、2.2以下であることがわか
る。これをyについて整理すると、y値の望ましい範囲
は下記の式で示される。 {x/(2.2n)}≦y≦{x/(1.8n)}
【0012】
【表2】
【0013】
【発明の効果】以上に記述の如く、本発明によれば、従
来に比べて高い磁気特性を有するフェライト磁石粉末を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】xと飽和磁化σsとの相関の一例を示す図であ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原子比率で、 (Sr1−x)O・n[(Fe1−y
    ] (RはLa、Nd及びPrの少なくとも1種であり、M
    はMn、Co及びNiの少なくとも1種である)、0.05
    ≦x≦0.5、{x/(2.2n)}≦y≦{x/(1.8
    n)}、5.7≦n≦6.0 で表される基本組成を有し、実
    質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有することを
    特徴とするフェライト磁石粉末。
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