JP3835729B2 - フェライト焼結磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はマグネトプランバイト型結晶構造を有し、かつ従来に比べて高い残留磁束密度Br及び高い角形比Hk/iHcを有するようにした高性能フェライト焼結磁石及びその製造方法に関する
【0002】
【従来の技術】
フェライト焼結磁石は、モータ、発電機等の回転機を含む種々の用途に使用されている。最近、自動車用回転機分野では小型・軽量化を目的とし、電気機器用回転機分野では高効率化を目的としてより高い磁気特性を有するフェライト焼結磁石が求められている。
従来の高性能フェライト焼結磁石は以下のように製造されていた。例えば、酸化鉄とSr又はBaの炭酸塩とを混合後、仮焼してフェライト化する。次に、仮焼物を粗粉砕し、次いで微粉砕する。微粉砕時に焼結性を制御する添加物としてSiO,SrCO及びCaCO,さらに残留磁束密度Br及び固有保磁力iHcを制御する添加物としてAlあるいはCr等を所定量添加し、所望の平均粒径まで微粉砕する。次いで、前記微粉を用いて配向磁界を印加しつつ圧縮成形し、焼結する。その後所定寸法に加工してフェライト焼結磁石製品とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記製造方法による場合、フェライト焼結磁石の高性能化の手段は以下の5つに大きく分類される。
第1の手段は微粒化である。フェライト焼結磁石の焼結体のc面(実用上最も高いBrの得られる磁気異方性付与方向に対し直角な面と定義する)の結晶粒径が、マグネトプランバイト(M)型フェライト磁石の臨界単磁区粒子径(約0.9μm)に近いほどiHcは大きくなる。よって、焼結時の結晶粒成長を見込んで、微粉砕の平均粒径を例えば0.7μm以下に微粒化すればよい。しかし、この方法によると、微粒化するほど成形性及び湿式成形では脱水特性が悪くなり、工業生産効率が落ちるという問題を有する。
第2の手段は焼結体のc面の結晶粒径分布を約0.9μm近傍の狭い分布にすることである。0.9μmより大きな結晶粒も小さな結晶粒もiHcの低下を招くからである。このための具体的な手段は微粉砕粉の粒径分布を改善することであるが、工業生産上ボールミル又はアトライターなどの既存の粉砕機を用いざるを得ないので微粉砕粉の粒径分布の改善は自ずと制限される。次に、近年、化学的沈殿法により狭い粒径分布に調整したフェライト微粒子を用いて高性能フェライト焼結磁石を作製する試みがなされているが、実用化には至っていない。
第3の手段は磁気異方性化度を左右するフェライト焼結磁石の配向度を向上することであり、具体的には成形体の配向度の向上及び焼結による配向度の向上がある。界面活性剤を微粉砕スラリーに添加してスラリー中のフェライト微粒子の分散性を改善するか、あるいは配向磁界強度を増大して成形体の配向度を向上する方法が考えられる。あるいは仮焼時のフェライト化反応の促進及び/又は成形体の緻密な焼結に寄与する添加物(SiO,CaCO等)を所定量添加して焼結体の配向度を向上することが考えられる。
第4の手段は焼結体の密度を向上することである。Srフェライト焼結磁石の理論密度は5.15Mg/m(g/cm)である。実用に供されているSrフェライト焼結磁石の密度は約4.9〜5.0Mg/m(g/cm)であり、対理論密度比で95〜97%に相当する。高密度化すればBrが向上するが、前記密度範囲を超えてさらに高密度化するにはHIP等の特殊な高密度化手段が必要である。しかし、このような特殊なプロセスの導入は製造原価を増大させる。
第5の手段はM型フェライト焼結磁石を構成する主相のフェライト化合物(M相)自体の飽和磁化σsあるいは結晶磁気異方性定数を向上することである。σsが向上すればBrが向上し、結晶磁気異方性定数が向上すれば保磁力Hc,iHcが向上することが期待される。近年、M型フェライト焼結磁石より大きなσsを有するW型フェライト磁石の開発が行われているが、雰囲気制御の困難さのため実用化には至っていない。
次に、特開平9−115715号公報には、A1−x(Fe12−y19、(AはSr,Ba,Ca及びPbの少なくとも1種であり、RはY及びBiを含む希土類元素の少なくとも1種であってLaを必ず含み、MはZn及び/又はCdであり、モル比で、0.04≦x≦0.45,0.04≦y≦0.45,0.7≦z≦1.2 で表される主要成分及び六方晶マグネトプランバイト型フェライトの主相を有するフェライト焼結磁石が開示されている。しかし、本発明者らの検討によれば、このフェライト焼結磁石では199.0kA/m(2.5kOe)超の高いiHcを実現困難なことがわかった。
次に、国際公開番号:WO98/38654には、Sr,Ba,Ca及びPbから選択される少なくとも1種であってSrを必ず含むものをAとし、Y及びBiを含む希土類元素の少なくとも1種であってLaを必ず含むものをRとし、CoであるかCo及びZnをMとしたとき、A,R,Fe及びMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:1〜13原子%、R:0.05〜10原子%、Fe:80〜95原子%、M:0.1〜5原子%である主要成分組成を有するフェライト焼結磁石が開示されている。このフェライト焼結磁石は従来に比べて高いBr及びiHcを有する高性能フェライト焼結磁石であり、各種磁石応用製品分野へ採用されつつある。しかし、本発明者らの検討によれば、WO98/38654に記載の製造条件に従い作製したフェライト焼結磁石は例えば後述の表1、比較例1(x=0.15)→比較例2(x=0.20)に示す通り、角形比Hk/iHcがLa(Co)置換量の増大とともに顕著に劣化し、高効率の要求される回転機又は高精細の静電現像装置のマグネットロール等に用いたときに要求仕様を十分満足できない場合を発生した。Hkは4πI(磁化の強さ)−H(磁界の強さ)曲線の第2象限において、4πI値が0.95Brになる位置のH値であり、減磁曲線の矩形性の尺度である。Hkを4πI−H曲線のiHcで除した値を角形比(Hk/iHc)と定義する。
次に、国際公開番号:WO99/16087には、A(AはSr,Ba又はCa),Co及びR[Rは希土類元素(Yを含む)及びBiから選択される少なくとも1種を表す]を含有する六方晶フェライトの主相を有する焼結磁石であって、少なくとも2つの異なるキュリー温度を有し、この2つのキュリー温度は400〜480℃の範囲に存在し、かつこれらの差の絶対値が5℃以上である焼結磁石を開示している。又この六方晶フェライトの主相を有する焼結磁石はその構成元素の一部又は全部を、少なくともSr,Ba又はCaを含有する六方晶フェライトを主相とする粒子に添加し、その後、成形し、本焼成を行うことにより製造され、角形比Hk/iHcを顕著に高めたことが記載されている。しかし、WO99/16087には高い角形比Hk/iHcを実現するための好適なミクロ組織を推測する記述があるのみで、具体的な解明はなされていなかった。特に、置換量xが0.2〜0.3において高い角形比Hk/iHcを得られるミクロ組織について何ら解明されていなかった。
【0004】
本発明の課題は、従来に比べて、高いBr及び高い角形比Hk/iHcを有し、かつ特有のミクロ組織を有する高性能フェライト焼結磁石及びその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明のフェライト焼結磁石は、
(A1−x)O・n[(Fe1−y](原子比率)
(ただし、AはSr又はSr及びBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、MはCo又はCoとZnであり、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.0≦n≦6.4
0.01≦x≦0.4,及び
0.005≦y≦0.04
を満たす数字である。)により表される主要成分組成、及びマグネトプランバイト型結晶構造を有するフェライト焼結磁石であって、
EPMAにより前記フェライト焼結磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoのLevelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+Level,min)/2 よりもLa又はCoのLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCoのLevelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在し、前記フェライト焼結磁石のc面を研磨して観察したとき、前記研磨面において1mmあたりのボイド数が3個以下(ただし、直径10μmの円が入るボイドを1個とカウントする。)であり、前記フェライト焼結磁石は、前記主要成分組成に調整された粉砕粉末を分散したスラリーを磁界中成形し、得られた成形体を焼結したものであり、前記粉砕粉末は、少なくともA元素及びFe元素を含む仮焼体粉末と、前記仮焼体粉末の重量を基準にして3〜26重量%に相当するFe を含むことを特徴とする。
前記粉砕粉末は、前記仮焼体粉末の重量を基準にして18〜26重量%に相当するFe を含むことが好ましい
【0006】
又本発明のフェライト焼結磁石の製造方法は、
(A1−x)O・n[(Fe1−y](原子比率)
(ただし、AはSr又はSr及びBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、MはCo又はCoとZnであり、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.0≦n≦6.4
0.01≦x≦0.4,及び
0.005≦y≦0.04
を満たす数字である。)により表される主要成分組成、及びマグネトプランバイト型結晶構造を有するフェライト焼結磁石であって、EPMAにより前記フェライト焼結磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoのLevelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+Level,min)/2 よりもLa又はCoのLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCoのLevelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在するフェライト焼結磁石を製造する方法であって、前記主要成分組成に調整された粉砕粉末を分散したスラリーに対し、前記粉砕粉末の総重量の0.2〜2重量%に相当する分散剤を添加して混練する工程混練後のスラリーを磁界中成形する工程、及び得られた成形体を焼結する工程を有し、前記粉砕粉末は、少なくともA元素及びFe元素を含む仮焼体粉末と、前記仮焼体粉末の重量を基準にして18〜26重量%に相当する磁性酸化鉄を含むことを特徴とする。
前記磁性酸化鉄はFe であることが好ましい。
【0007】
本発明のフェライト焼結磁石の総重量を100重量%としたとき、Alに換算したAl含有量及び/又はCrに換算したCr含有量が0.3〜1.5重量%のときに従来と同等以上のBr及びHk/iHcを有し、かつiHcを高めることができる。Alに換算したAl含有量及び/又はCrに換算したCr含有量が0.3重量%未満ではiHcを高める効果が得られず、1.5重量%超ではBr及びHk/iHcが大きく低下する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のフェライト焼結磁石は後添加方式あるいは前/後添加方式により作製することができる。
まず、後添加方式について説明する。仮焼後にAO・nFe(原子比率)(ただし、AはSr又はSr及びBaであり、n=5.0〜6.4)で示される主要成分組成になるように配合した混合原料を作製する。次いで順次、仮焼、粗砕、粗粉砕及び微粉砕を行い、空気透過法による平均粒径で0.3〜0.8μmの微粉を得る。微粉砕の平均粒径が0.3μm未満では焼結時に異常結晶粒成長を生じて磁気特性が低下し、かつ湿式成形法を採用した場合では脱水特性が大きく悪化する。平均粒径が0.8μm超では粗大な結晶粒が相対的に多くなり、iHc等が低下する。次に、湿式の磁界中成形を行うが、仮焼後から成形前までの製造工程でLaを含むR元素及びM元素を所定量添加し、本発明のフェライト焼結磁石の最終主要成分組成に調整する。次いで、成形体を焼結後、所定寸法に加工し本発明のフェライト焼結磁石を得られる。この方式を後添加方式という。工業生産上、Laを含むR元素及びM元素の添加をバッチ方式の湿式又は乾式の粉砕装置を用いて微粉砕時に行うことにより、粉砕バッチ毎に多様な主要成分組成のフェライト焼結磁石製品アイテムに対応できるので実用性が高い。
前/後添加方式とは、上記本発明のフェライト焼結磁石におけるR元素又はM元素の全含有量に対し、仮焼前にLaを含むR元素及び/又はM元素を0原子%超で90原子%以下の割合で添加し、均一混合後、仮焼する。次いで仮焼後から成形前までの製造工程でLaを含むR元素及び/又はM元素の残量を添加し、上記本発明のフェライト焼結磁石の主要成分組成に調整する方式である。
なお、前添加方式とは、仮焼前の混合時において上記本発明のフェライト焼結磁石の主要成分組成に対応する混合物組成に調整し、仮焼し、次いで順次粗砕、粗粉砕、微粉砕、成形及び焼結する方式である。
前/後添加方式によるフェライト焼結磁石は、前添加方式及び後添加方式のフェライト焼結磁石のほぼ中間的なミクロ組織を呈する。前/後添加方式において、仮焼後の粉砕物(特に微粉砕時)に添加するR元素が全R含有量の10原子%以上でかつ100原子%未満のときにHk/iHc及びBrを高めることができる。又前/後添加方式において、仮焼後の粉砕物(特に微粉砕時)に添加するM元素が全M含有量の10原子%以上でかつ100原子%未満のときにHk/iHc及びBrを高めることができる。
後添加方式又は前/後添加方式の採用により、モル比nが5.0未満になることが懸念される。これは仮焼後から成形前までの製造工程で添加するR元素によりモル比nが顕著に低下するためである。モル比nを5.0〜6.4に調整するために、仮焼後から成形前までの製造工程で、得られた仮焼体(少なくともA元素及びFe元素を含む)の重量を基準にして3〜26重量%に相当するFe を添加する。Fe の添加量は18〜26重量%とすることが好ましい。Fe の添加量が3重量%未満ではモル比nを増大することが困難であり、26重量%超では成形体の配向性が低下し、Hk/iHc及びBrが大きく低下する。
【0009】
後添加方式又は前/後添加方式による本発明のフェライト焼結磁石は、焼結段階において、仮焼後から成形前までの製造工程で添加されたLaを含むR元素及び/又はM元素がSr又はSr及びBaフェライト結晶粒内に拡散し、置換していく。しかし、Sr又はSr及びBaフェライト結晶粒内に十分に拡散し、均一に置換するまでには至らない。このためLaを含むR元素及び/又はM元素の濃度分布が不均一なフェライト焼結磁石の組織を呈する。即ち、Sr又はSr及びBaフェライト結晶粒において、相対的に、La濃度及び/又はCo濃度が高い部分と、La濃度及び/又はCo濃度が低い部分とを有することによりHk/iHc及びBrが高められる。Hk/iHc及びBrが高められるメカニズムは明らかではないが、La及びCoの置換が不十分かあるいは全く置換されないM型フェライト結晶粒部分によるiHcの低下分を、La及びCoが十分に置換されたM型フェライト結晶粒部分が補い、総合的に前添加方式によるフェライト焼結磁石と略同等のiHcを有し、かつHk/iHc及びBrが向上するものと判断される。
【0010】
本発明のフェライト焼結磁石の飽和磁化を高めるために、Rに占めるLaの比率を、好ましくは50原子%以上、より好ましくは70原子%以上、特に好ましくは99原子%以上とすることがよい。理想的には不可避的不純物以外はRがLaからなるのがよい。従って、例えば、R元素供給原料として、Laを50原子%以上含み、残部がPr,Nd及びCeの少なくとも1種並びに不可避的不純物からなる安価なミッシュメタル(混合希土類金属)の酸化物を用いることが実用性が高い。その場合のRはLaとNd,Pr及びCeの少なくとも1種と不可避的不純物とから構成される。
【0011】
本発明のフェライト焼結磁石において、モル比nは5.0〜6.4とする必要があり、5.5〜6.3がより好ましく、5.7〜6.2が特に好ましい。nが6.4超ではM相以外の異相(α−Fe等)の存在によりiHc等が大きく低下し、nが5.0未満ではBrが大きく低下する。
xは0.01〜0.4が好ましく、0.1〜0.3がより好ましく、0.15〜0.25が特に好ましい。xが0.01未満では添加効果が認められず、0.4超では逆に磁気特性が低下する。
yとxとの間には、電荷補償のために理想的には y=x/(2.0n) の関係が成立する必要があるが、yがx/(2.6n)以上、x/(1.6n)以下であれば高いBr及び高いHk/iHcを具備するフェライト焼結磁石を作製可能である。なお、yがx/(2.0n)からずれた場合、Fe2+を含む場合があるが、何ら支障はない。典型的な例では、yの好ましい範囲は0.04以下であり、特に0.005〜0.03である。又、5.7≦n≦6.2,0.2≦x≦0.3及び1.0<x/2ny≦1.3 というR過剰の主要成分組成を選択し、かつCaO含有量が0.5〜1.5重量%及びSiO含有量が0.25〜0.55重量%のときに従来に比べてHk/iHcを顕著に高めることができる。
【0012】
緻密なフェライト焼結磁石を得るために焼結性を制御する添加物としてSiO及びCaO(CaCO)を所定量含有することが実用上重要である。
SiOは焼結時の結晶粒成長を抑制する添加物であり、本発明のフェライト焼結磁石の総重量を100重量%としてSiO含有量を0.05〜0.55重量%とすることが好ましく、0.25〜0.55重量%とするのがより好ましい。SiO含有量が0.05重量%未満では焼結時に結晶粒成長が過度に進行し保磁力が大きく低下し、0.55重量%超では結晶粒成長が過度に抑制され結晶粒成長による配向度の改善が不十分となりBrが大きく低下する。
CaOは結晶粒成長を促進する添加物であり、本発明のフェライト焼結磁石の総重量を100重量%としてCaO含有量は0.35〜1.5重量%が好ましく、0.4〜1.5重量%がより好ましく、0.5〜1.5重量%が特に好ましい。CaO含有量が1.5重量%超では焼結時に結晶粒成長が過度に進行し、保磁力が大きく低下し、0.35重量%未満では結晶粒成長が過度に抑制され、結晶粒成長による配向度の改善が不十分となりBrが大きく低下する。
【0013】
本発明のフェライト焼結磁石のBrを高めるために、湿式微粉砕したスラリーを濃縮後あるいは乾燥し、解砕後、混練し、次いで順次湿式磁界中成形、焼結及び加工する製造工程を採用することが好ましい。あるいはフェライト微粉末がスラリー中で凝集しないように、微粉砕スラリーを乾燥後水を足すか又は濃縮して高濃度のスラリー状態にし、続いて分散剤を所定量添加し、混練することにより、凝集が解かれ、湿式磁界中成形した場合に成形体の配向性が顕著に向上する。分散剤は界面活性剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸石鹸又は高級脂肪酸エステルが好ましく、アニオン系界面活性剤の1種であるポリカルボン酸系分散剤がより好ましく、ポリカルボン酸アンモニウム塩が特に好ましい。分散剤の添加量は、フェライト微粉末の総重量に対し、0.2〜2重量%が好ましい。分散剤の添加量が0.2重量%未満ではBrが向上できず、2重量%超ではBrが逆に低下する。
前記混練時において本発明のフェライト焼結磁石の主要成分組成になるようにLaを含むR元素及び/又はM元素を所定量追添加し、次いで順次成形、焼結及び加工を行えば後添加方式又は前/後添加方式による本発明のフェライト焼結磁石を作製可能である。
【0014】
本発明に用いるR元素の化合物として、例えばLa等の酸化物,La(OH)(水酸化物),La(CO・8HO(炭酸塩の水和物)、La(CHCO・1.5HO及びLa(C・10HO(有機酸塩)の少なくとも1種が挙げられる。又、La,Nd,Pr,Ce及び不可避的不純物からなる混合希土類の酸化物、水酸化物、炭酸塩及び有機酸塩の少なくとも1種が挙げられる。
本発明に用いるCoの化合物として、例えばCo又はCoO等の酸化物,Co(OH),Co・mO(mは正の値)等の水酸化物,CoCO等の炭酸塩及びmCoCO・mCo(OH)・mO(m,m及びmは正の値)等の塩基性炭酸コバルトの少なくとも1種が挙げられる。
本発明に用いるZnの化合物としてZnの酸化物、水酸化物又は炭酸塩が挙げられる。
本発明に用いる鉄化合物として、例えばFe,α−Fe,FeO又はγ−Fe等の酸化物,Fe(OH),Fe(OH)及びFeO(OH)等の水酸化物のうち磁性酸化鉄であるものの少なくとも1種が挙げられ、特にFeに代表される磁性酸化鉄が好ましい。
【0015】
本発明のフェライト焼結磁石のM元素がCo及びZnからなる場合、Co含有量は(Co+Zn)含有量に対し10〜90原子%であることが好ましく、50〜90原子%がより好ましく、70〜90原子%が特に好ましい。Co含有量が90原子%超ではZnの含有によるBrの向上効果が得られず、10原子%未満では安定してiHc>199.0kA/m(2.5kOe)を実現困難である。
【0016】
本発明のフェライト焼結磁石は、Sr又はSr及びBaをAとし、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必ず含むものをRとし、CoであるかCo及びZnをMとしたとき、A,R,Fe及びMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:4.35〜9原子%、R:0.07〜3.64原子%、Fe:86.36〜92.70原子%、M:0.05〜4.64原子%である主要成分組成を有するフェライト焼結磁石として表示される。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む)及びα−Fe粉末を用いて、
仮焼後に原子比率で SrO・5.9Fe になるように湿式混合後、大気中、1300℃で2時間仮焼した。次にローラーミルで粗粉砕し粗粉とした。次にアトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径(空気透過法)0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期にLa粉末,Co粉末及びFe粉末を微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてそれぞれ2.50重量%,1.15重量%及び6.0重量%添加し、原子比率で (Sr0.85La0.l5)O・5.5[(Fe0.986Co0.014] に相当する組成に調整した。又微粉砕初期に焼結助剤として、CaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてそれぞれ0.80重量%(CaO換算で0.45重量%)及び0.45重量%添加した。この微粉砕スラリーにより、磁界強度:798.5kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体を得た。成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、後添加方式によるフェライト焼結磁石を得た。次いで各フェライト焼結磁石を10mm×10mm×20mmの形状に加工し、B−Hトレーサーにより20℃で磁気特性を測定した結果を表1に示す。又各フェライト焼結磁石をX線回折した結果、いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
次に、1210℃で焼結した前記フェライト焼結磁石から所定サイズの試料を切り出し、試料のc面が表面になるようにしてラップ研磨後、さらに鏡面研磨した。次いで、結晶粒界を露呈するために塩酸でエッチング後、水洗し、乾燥した。次いで前記試料を電子プローブマイクロアナライザ(JEOL:日本電子製のEPMA、JXA−8900R型)にセットし、c面の代表的な断面組織写真を撮影した。断面組織写真を図1に示す。また図1に対応する視野においてLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布を調査するためにEPMAにより面分析した。面分析は下記の条件で行った。分光結晶は、La及びCoの分析では高感度型ふっ化リチウム(LiF)を、Srの分析ではペンタエリスリトール(PET、C(CHOH))を、Feの分析ではふっ化リチウム(LiF)を用いた。検出器はキセノン封入型を用いた。倍率:5,000倍、加速電圧:15kV、照射電流:0.3μA、プローブ径:約2μm、画素(面分析範囲の基本単位)サイズ:縦0.04μm×横0.04μmの矩形、1画素あたりの計数時間:30msec、計測画素数:縦(X)方向及び横(Y)方向がともに400画素である。面分析結果を図2に示す。図2の右側に各元素のLevel及び各LevelのArea%を示す。EPMAにより前記フェライト焼結磁石のc面をLa,Co,Fe及びSrについて各々面分析したとき、各検出器からLa,Co,Fe及びSrの各計数値が出力される。調整された各出力値の最大値(Level,max)及び最小値(Level,min)並びに(Level,max)と(Level,min)とを等間隔で16分割したものが各元素のLevelである。全画素に対し各Levelの画素の占める面積比率がArea%である。本発明ではLa,Co,Fe及びSrの各々において、Levelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+Level,min)/2 よりもLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLevelの部分を低濃度領域と定義した。この定義により、例えば図2において、Laの低濃度領域はLevelが36.5以下の部分であり、Coの低濃度領域はLevelが82.5以下の部分である。図2では直径0.5μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が形成されていることがわかる。
なお、図1の走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面組織写真には試料作製時に導入された脱落部が認められるが、本発明者らは脱落部の影響を考慮し面分析結果を解析した。
【0018】
(参考例1)
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む)及びα−Fe粉末を用いて、仮焼後にSrO・6Fe になるように湿式混合し、1300℃で2時間、大気中で仮焼した。次いで仮焼物をローラーミルで乾式粉砕し、粗粉とした。次にアトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径(空気透過法)0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期にLa粉末,Co粉末及びα−Fe粉末を、微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてそれぞれ3.33重量%,1.53重量%及び12.0重量%添加し、原子比率で、(Sr0.80La0.20)O・5.6[(Fe0.982Co0.018] に相当する主要成分組成に調整した。又微粉砕初期に焼結助剤としてCaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてそれぞれ0.80重量%及び0.45重量%添加した。得られた微粉砕スラリーにより、795.8kA/m(10kOe)の磁界中で圧縮成形を行い成形体を得た。成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、次いで10mm×10mm×20mmの形状に加工し、後添加方式によるフェライト焼結磁石の室温(20℃)の磁気特性を測定した結果を表1に示す。又各フェライト焼結磁石をX線回折した結果、いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
次に1210℃で焼結した前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。断面写真を図3に示す。又図3に対応する視野における各成分の相対的な濃度分布を図4に示す。図4より、直径0.2μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が存在していることがわかる。
【0019】
実施例2
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む),α−Fe粉末,La粉末及びCo粉末を用いて、仮焼後に下記式
(Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yCo
x=2ny,x=0.10,n=5.8
で示される主要成分組成になるように配合し、湿式混合した。次いで1250℃で2時間、大気中で仮焼した。仮焼物をローラーミルで乾式粉砕し粗粉を得た。次いで、アトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径が0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期にLa粉末,Co粉末及びFe粉末を微粉砕に投入した粗粉に対する重量比でそれぞれ1.67重量%、0.8重量%及び3重量%添加した。又微粉砕初期に焼結助剤として、SrCO粉末,CaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉に対する重量比でそれぞれ0.1重量%,1.0重量%及び0.3重量%添加した。得られた微粉砕スラリーにより795.8kA/m(10kOe)の磁界中で圧縮成形を行い、成形体を得た。成形体を1200〜1220℃の温度範囲で2時間焼結し、前/後添加方式による焼結体を得た。各焼結体の主要成分組成は概略下記式で示される。
(Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yCo
x=2ny,x=0.20,n=5.5
焼結体を10mm×10mm×20mmの形状に加工し、室温(20℃)の磁気特性を測定した結果を表1に示す。又各フェライト焼結磁石をX線回折した結果、いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
次に、1210℃で焼結した前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。その結果、直径0.3μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察された。
【0020】
(比較例1)
SrCO粉末,α−Fe粉末,La粉末及びCo粉末を用いて、
原子比率で (Sr0.85La0.15)O・5.9[(Fe0.987Co0.013] に相当する主要成分組成に混合後、1300℃で2時間、大気中で仮焼した。仮焼物をローラーミルで乾式粉砕し粗粉を得た。次いで、アトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期に、焼結助剤として、SrCO粉末,CaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉の重量に対しそれぞれ0.50重量%,0.80重量%及び0.45重量%添加した。次に作製した微粉砕スラリーにより795.8kA/m(10kOe)の磁界中で圧縮成形を行い、成形体を得た。成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、前添加方式による焼結体を得た。各焼結体を10mm×10mm×20mmの形状に加工し、室温(20℃)の磁気特性を測定した結果を表1に示す。
次に、1210℃で焼結した前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。断面写真を図5に示す。また、図5に対応するLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布を図6に示す。図6より、この前添加方式によるフェライト焼結磁石のLa,Co,Fe及びSrはほぼ均一に分布していることがわかる。
【0021】
(比較例2)
前添加方式により、原子比率で、(Sr0.80La0.20)O・5.9[(Fe0.983Co0.017] の主要成分組成を有するフェライト焼結磁石を作製した。このフェライト焼結磁石の室温(20℃)の磁気特性を表1に示す。
次に、作製した前記フェライト焼結磁石の任意のものから所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にして撮影したc面の断面組織写真を図7に、又図7に対応するLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布を図8に示す。図8より、この前添加方式によるフェライト焼結磁石のLa,Co,Fe及びSrはほぼ均一に分布していることがわかる。
【0022】
(比較例3)
SrO・5.9Fe の主要成分組成を有するSrフェライト焼結磁石の磁気特性を表1に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003835729
【0024】
表1においてx=0.15の組成で比較すると、後添加方式による実施例1のフェライト焼結磁石は前添加方式による比較例1に比べて、Hk/iHc及びBrが大きく、iHcはやや低いことがわかる。次に、表1においてx=0.20の組成でかつ同一焼結温度で比較した場合、後添加方式による参考例1のフェライト焼結磁石は前添加方式による比較例2に比べて、Hk/iHc及びBrが高く、iHcはやや低いことがわかる。又、参考例1(x=0.20)では実施例1(x=0.15)に比べてHk/iHcの顕著な低下認められる。次に、前/後添加方式による実施例2のフェライト焼結磁石(x=0.20)は比較例2に比べて高いBr,iHc及びHk/iHcを有することがわかる。
【0025】
次に、実施例1、2、参考例1及び比較例1〜3のフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線の測定結果を説明する。
実施例1、2、参考例1及び比較例1〜3で作製したフェライト焼結磁石から、各々3mm×3mm×5mm(磁化方向)の直方体形状の試料を切り出した。次に振動試料型磁力計(東英工業(株)製、VSM−3型)に各試料を順次セットし、500℃まで加熱後、2〜5℃/分の降温速度で冷却しつつ磁化M(emu/g)−温度T(℃)曲線を描いた。
実施例1のフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線を図9の下側に、参考例1のフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線を図10の下側に、実施例2のフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線を図11の下側に、比較例1〜3のフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線を図12の下側に示す。また、図9〜12の上側に各々(dM/dT)−温度T曲線を示す。
図9〜11より、実施例1、2、参考例1のフェライト焼結磁石はいずれも磁化Mの温度Tに対する変化率(dM/dT)−T曲線が2つの極小点及び1つの極大点を有することがわかる。図9に例示するように、極小点P,R及び極大点Qに対応する磁化−温度曲線の接点P’,Q’及びR’から磁化−温度曲線の接線L,L及びLを引いたとき、接線LとLとの交点Sの温度を第2キュリー点(Tc)、接線Lと磁化=0の横軸(温度T軸)との交点Sを第1キュリー点(Tc)と定義した。実施例1のフェライト焼結磁石は2つのTcを有しており、Tc=453℃,Tc=441℃であった。
同様にして、図10(参考例1)のフェライト焼結磁石のTc=452℃、Tc=437℃であった。図11(実施例2)のフェライト焼結磁石のTc=450℃,Tc=439℃であった。
これに対し、図12の比較例1〜3のフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線はいずれも1つのTcのみを有し、かつ(dM/dT)−温度T曲線は1つの極小点のみを有することがわかる。この極小点に対応する各磁化−温度曲線の位置を接点として各磁化−温度曲線に接線を引き、各接線と温度T軸との交点を読取り、キュリー点(Tc)を求めた。比較例3(x=0)ではTc=453℃,比較例1(x=0.15)ではTc=443℃,比較例2(x=0.20)ではTc=439℃であった。
【0026】
実施例3
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む)及びα−Fe粉末を用いて、
仮焼後に原子比率で SrO・5.9Fe の組成になるように湿式混合後、大気中、1300℃で2時間仮焼した。次にローラーミルで粗粉砕し粗粉を得、次いでアトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期にLa粉末,Co粉末,Fe粉末及びAl粉末を微粉砕に投入した粗粉に対する重量比でそれぞれ2.50重量%,1.15重量%,6.0重量%及び0.7重量%添加した。又微粉砕初期に焼結助剤として、CaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉に対する重量比でそれぞれ0.80重量%及び0.45重量%添加した。作製した微粉砕スラリーにより、磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体を得た。成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、得られた後添加方式による焼結体は下記の主要成分組成を有し、前記焼結体の総重量を100重量%としてAlに換算したAl含有量は0.6重量%であった。
(Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yCo)
x=2ny=0.15,n=5.6
次に、前記焼結体を10mm×10mm×20mmの形状に加工し、室温(20℃)の磁気特性を測定した結果を表2に示す。又各フェライト焼結磁石をX線回折した結果、いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
次に、1210℃で焼結した前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。その結果、直径0.2μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察された。
【0027】
実施例4
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む),α−Fe粉末,Co粉末及びLa粉末を用いて、
仮焼後に原子比率で (Sr1−xLa)O・[(Fe1−yCo],n=6,x=2ny=0.075 の主要成分組成になるように湿式混合後、1200℃で2時間、大気中で仮焼した。仮焼物をローラーミルで乾式粉砕し粗粉を得た。次いで、アトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕の初期にx=2ny=0.15,n=5.7 の最終組成になるようにLa粉末,Co粉末及びFe粉末を添加した。又微粉砕初期にCr粉末を微粉砕に投入した粗粉の重量に対し1.1重量%添加した。又微粉砕初期に焼結助剤としてCaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉の重量に対し0.80重量%及び0.45重量%添加した。作製した微粉砕スラリーにより、磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体を得た。成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、得られた前/後添加方式による焼結体は下記の主要成分組成を有し、前記焼結体の総重量を100重量%としてCrに換算したCr含有量は1.1重量%であった。
(Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yCo)
x=2ny=0.15,n=5.7
次に、前記焼結体を10mm×10mm×20mmの形状に加工し、室温(20℃)の磁気特性を測定した結果を表2に示す。又各焼結体をX線回折した結果、いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
次に、1210℃で焼結した前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。その結果、直径0.3μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察された。
【0028】
実施例5
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む)及びα−Fe粉末を用いて、
仮焼後に SrO・6Fe の主要成分組成になるように湿式混合し、次いで1200℃で2時間、大気中で仮焼した。次いで仮焼物をローラーミルで乾式粉砕し粗粉を得た。次いでアトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期に、
(Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yCoy/2Zny/2],x=2ny=0.15,n=5.7 の最終組成になるようにLa粉末,Co粉末,ZnO粉末及びFe粉末を所定量ずつ追添加した。又微粉砕初期に焼結助剤として、SrCO粉末,SiO粉末及びCaCO粉末を微粉砕に投入した粗粉の重量対比でそれぞれ0.50重量%,0.40重量%及び0.8重量%添加した。得られた微粉砕スラリーにより、磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体を得た。次いで成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、後添加方式による焼結体を得た。次いで10mm×10mm×20mmの形状に加工し、以降は実施例1と同様にして磁気特性を測定した結果を表2に示す。又各フェライト焼結磁石をX線回折した結果、いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
次に、1210℃で焼結した前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。その結果、直径0.4μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察された。
【0029】
実施例6
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む),α−Fe粉末,La粉末,Co粉末及びZnO粉末を用いて、
仮焼後に原子比率で (Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yCoy/2Zny/2]、n=6,x=2ny=0.075 の組成になるように湿式混合後、1200℃で2時間、大気中で仮焼した。仮焼物をローラーミルで乾式粉砕し粗粉を得た。次に、アトライターにより湿式微粉砕し、平均粒径0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期に、x=2ny=0.15,n=5.7 の最終主要成分組成になるようにLa粉末,Co粉末,ZnO粉末及びFe粉末を所定量ずつ追添加した。又微粉砕初期に焼結助剤としてSrCO粉末,SiO粉末及びCaCO粉末を微粉砕に投入した粗粉の重量対比でそれぞれ0.50重量%,0.40重量%及び0.80重量%添加した。得られた微粉砕スラリーにより、磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体を得た。成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、前/後添加方式による焼結体を得た。次いで10mm×10mm×20mmの形状に加工し、以降は実施例1と同様にして磁気特性を測定した結果を表2に示す。又各フェライト焼結磁石をX線回折した結果、いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
次に、1210℃で焼結した前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。その結果、直径0.3μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察された。
【0030】
(比較例4)
SrCO粉末,α−Fe粉末,La粉末及びCo粉末を用いて、
仮焼後に原子比率で (Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yCo)] ,x=2ny=0.15,n=5.9 の主要成分組成になるように混合後、1300℃で2時間、大気中で仮焼した。仮焼物をローラーミルで乾式粉砕し粗粉を得た。次いでアトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期に、焼結助剤としてSrCO粉末,CaCO粉末,SiO粉末及びAl粉末を微粉砕に投入した粗粉重量に対してそれぞれ0.50重量%,0.80重量%,0.45重量%及び0.7重量%添加した。次いで作製した微粉砕スラリーにより、磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体を得た。次いで成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、前添加方式による焼結体を得た。焼結体を10mm×10mm×20mmの形状に加工し、室温(20℃)の磁気特性を測定した結果を表2に示す。
【0031】
(比較例5)
SrCO粉末,α−Fe粉末,La粉末,Co粉末及びZnO粉末を用いて、仮焼後に原子比率で (Sr1−xLa)O・n[(Fe1−yCoy/2Zny/2],x=2ny=0.15,n=5.9 の主要成分組成になるように混合後、1300℃で2時間、大気中で仮焼した。仮焼物をローラーミルで乾式粉砕し粗粉を得た。次いで、アトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径が0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期に、焼結助剤として、SrCO粉末,CaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉重量に対してそれぞれ0.50重量%,0.80重量%及び0.45重量%添加した。次に微粉砕したスラリーにより、磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体を得た。次いで成形体を1200〜1220℃で2時間焼結し、前添加方式による焼結体を得た。各焼結体を10mm×10mm×20mmの形状に加工し、室温(20℃)の磁気特性を測定した結果を表2に示す。
次に、1210℃で焼結した前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。その結果、前記前添加方式によるフェライト焼結磁石はLa,Co,Fe及びSrがほぼ均一に分布していることがわかった。
【0032】
【表2】
Figure 0003835729
【0033】
表2の実施例3と比較例4との比較から、後添加方式によるフェライト焼結磁石でありAlを所定量含有することにより、0.417T(4170G)以上のBrと338.2kA/m(4250Oe)以上のiHcと82.4%以上のHk/iHcを得られることがわかる。
実施例4と比較例4との比較から、前/後添加方式によるフェライト焼結磁石でありCrを所定量含有することにより、0.406T(4060G)以上のBrと370.0kA/m(4650Oe)以上のiHcと83.3%以上のHk/iHcを得られることがわかる。次に、M=Co+Zn であり、後添加方式による実施例5のフェライト焼結磁石は前添加方式による比較例5に比べてiHcはやや低いが、Hk/iHc及びBrを高められていることがわかる。次に、 M=Co+Zn であり、前/後添加方式による実施例6のフェライト焼結磁石は前添加方式による比較例5と後添加方式による実施例5との略中間の磁気特性を有することがわかる。
【0034】
次に、実施例3、5及び比較例5のフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線の測定結果を説明する。
実施例3、5及び比較例5のフェライト焼結磁石から各々3mm×3mm×5mm(磁化方向)の直方体形状の試料を切り出し、以降は実施例1と同様にして磁化−温度曲線を描いた。実施例3の後添加方式によるフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線を図13の下側に、実施例5の後添加方式によるフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線を図14の下側に、比較例5の前添加方式によるフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線を図15の下側に示す。また、図13〜15の上側に各磁化−温度曲線の微分値(dM/dT)−温度T曲線を示す。
図13,14より、実施例3、5のフェライト焼結磁石はいずれも(dM/dT)−T曲線が2つの極小点及び1つの極大点を有し、かつ2つのキュリー点を有することがわかる。図13のTc=443℃,Tc=431℃であった。図14のTc=451℃、Tc=436℃であった。これに対し、図15では磁化−温度曲線が1つのTcのみを有し、かつ(dM/dT)−温度T曲線は1つの極小点のみを有することがわかる。図15のTc=434℃であった。
【0035】
本発明の代表的な後添加方式によるフェライト焼結磁石のx−Tcの関係を図16の(−○−)で示す。又本発明の代表的な前/後添加方式によるフェライト焼結磁石のx−Tcの関係を図16の(−△−)で示す。又比較材として、前添加方式によるフェライト焼結磁石のx−Tcの関係を図16の(−●−)で示す。図16から、後添加方式又は前/後添加方式により作製された本発明のフェライト焼結磁石は2つのキュリー点(Tc,Tc)を有し、TcとTcとの温度差はxに比例して増大し、後添加方式のものが最も大きいことがわかる。このことは、上述の通り、後添加方式又は前/後添加方式により作製した本発明のフェライト焼結磁石のLa濃度及び/又はCo濃度が相対的に高いM型結晶粒部分と、La濃度及び/又はCo濃度が相対的に低いM型結晶粒部分とを有する不均一なミクロ組織性状を反映したものといえる。さらにいえば、相対的にLa濃度及び/又はCo濃度が高いM型結晶粒部分がTcに主に寄与し、相対的にLa濃度及び/又はCo濃度が低いか全く置換されていないM型結晶粒部分がTcに主に寄与していると判断される。
【0036】
粉砕時に追添加する磁性酸化鉄原料(Fe粉末)及び非磁性酸化鉄原料(α−Fe粉末)の効果を比較した実施例を以下に説明する。
実施例7
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む)及びα−Fe粉末を用いて、
仮焼後に原子比率で SrO・5.85Fe になるように湿式混合後、大気中、1300℃で2時間仮焼した。次にローラーミルで粗粉砕し粗粉とした。次にアトライターにより湿式微粉砕を行い、平均粒径(空気透過法)0.8μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期に微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてLa粉末及びCo粉末の所定量、並びにFe粉末を18〜26重量%追添加し、最終主要成分組成が原子比率で (Sr0.8La0.2)O・n[(Fe1−yCo],x=0.2,n=5.75〜6.18,x/2ny=1.07(R過剰組成) になるように調整した。又微粉砕初期に焼結助剤として、CaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてそれぞれ1.60重量%及び0.40重量%添加した。得られた微粉砕スラリーの全重量に対する微粉の比率(スラリー濃度)を50重量%に調整後、磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形し成形体を得た。成形体を1220℃で2時間焼結し、後添加方式によるフェライト焼結磁石を得た。次いで各フェライト焼結磁石を10mm×10mm×20mmの形状に加工し、B−Hトレーサーにより20℃で磁気特性を測定した結果を図17に示す。又密度は5.05〜5.06Mg/m(g/cm)であった。図17及び表1の参考例1(x=0.20=2ny,n=5.6,CaO=0.45重量%,SiO=0.45重量%,α−Feを微粉砕時に12.0重量%追添加)に比べて、Hk/iHc及びBrが向上していることがわかる。又作製した各フェライト焼結磁石をX線回折した結果、いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
次に、前記焼結体から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った結果、直径0.3μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察された。
参考例2
微粉砕初期に追添加する酸化鉄原料としてFe粉末に替えてα−Fe粉末を用いた以外は実施例7と同様にして後添加方式によるフェライト焼結磁石を作製し、磁気特性を測定した結果を図17に示す。又密度は5.00〜5.01Mg/m(g/cm)であった
【0037】
図17中、Fe粉末を追添加し作製した実施例7のフェライト焼結磁石の(●,▲,■,▼)プロットが、α−Fe粉末を追添加し作製した参考例2のフェライト焼結磁石の(○,△,□,▽)プロットよりもほぼ同一のモル比n及びiHc値で比較したとき、Brが高く、かつ高いHk/iHcになっていることがわかる。
【0038】
実施例8
実施例7の微粉砕スラリーのうち最終主要成分組成が原子比率で (Sr0.8La0.2)O・n[(Fe1−yCo],x=0.2,n=5.84,x/2ny=1.07(R過剰組成) になるように調整したものの微粉砕終了直前に、さらに微粉砕初期に投入した粗粉重量に対し0.5重量%の分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)を添加し、平均粒径0.6μmの微粉砕粉を含むスラリー濃度70重量%のスラリー(1)を作製した。又さらに、スラリー(1)を加熱してスラリー濃度を85重量%まで濃縮し、冷却後、その濃縮スラリーを混練しつつポリカルボン酸アンモニウム塩を0.1重量%添加し、混練後水を加えてスラリー濃度を70重量%に調整したスラリー(2)を作製した。又さらに、ポリカルボン酸アンモニウム塩の混練時の添加量を0.2重量%とした以外はスラリー(2)と同様にしてスラリー(3)を作製した。これらスラリー(1)〜(3)を用い、以降は実施例7と同様にして成形、焼結及び加工を行い、磁気特性を測定した結果を図18に示す。
実施例9
参考例2の微粉砕スラリーのうち最終主要成分組成が原子比率で (Sr0.8La0.2)O・n[(Fe1−yCo)],x=0.2,n=5.84,x/2ny=1.07(R過剰組成) になるように調整したものの微粉砕終了直前に、さらに微粉砕初期に投入した粗粉重量に対し0.5重量%の分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)を添加し、平均粒径0.6μmの微粉砕粉を含むスラリー濃度70重量%のスラリー(4)を作製した。又さらに、スラリー(4)を加熱してスラリー濃度を85重量%まで濃縮し、冷却後、その濃縮スラリーを混練しつつポリカルボン酸アンモニウム塩を0.1重量%添加し、混練後水を加えてスラリー濃度を70重量%に調整したスラリー(5)を作製した。又さらに、ポリカルボン酸アンモニウム塩の混練時の添加量を0.2重量%とした以外はスラリー(5)と同様にしてスラリー(6)を作製した。これらスラリー(4)〜(6)を用い、以降は参考例2と同様にして成形、焼結及び加工を行い、磁気特性を測定した結果を図18に示す。
【0039】
図18から、分散剤を微粉砕時又は微粉砕時及び混練時に所定量添加することにより、表1の参考例1に比べて高いBr及び高いHk/iHcを得られることがわかる。特にα−Feに比較してFeを追添加した場合のBr及びHk/iHcの改善効果が顕著であることがわかる。
【0040】
実施例7、参考例2の代表的なフェライト焼結磁石のc面を鏡面研磨し、研磨面を光学顕微鏡で観察し、断面写真を撮影した。断面写真を図19に示す。図19より、実施例7のフェライト焼結磁石(Fe追添加)の研磨面では1mmあたりのボイド数(直径10μmの円が入るボイドを1個とカウント)が0個であったのに対し、参考例2のフェライト焼結磁石(Fe追添加)の研磨面では1mmあたりのボイド数は10個であった。さらに実施例7、参考例2の研磨面の視野を変えてそれぞれ10視野ずつのボイドの発生状況を観察した結果、実施例7のフェライト焼結磁石(Fe追添加)の研磨面では1mmあたりのボイド数は0〜3個であったのに対し、参考例2のフェライト焼結磁石(Fe追添加)の研磨面では1mmあたりのボイド数は8〜18個であった。従って、Feを追添加した場合にはボイドの発生が少なく、かつ図17,18に示すようにBr及びHk/iHcを顕著に向上できることがわかった。
【0041】
実施例7のフェライト焼結磁石(後添加,x=0.20,n=5.92,x/2ny=1.07, 追添加Fe:22重量%,CaO:0.90重量%,SiO:0.40重量%)及び比較例2のフェライト焼結磁石(前添加,焼結温度1220℃,x=0.20=2ny,n=5.9,CaO:0.45重量%,SiO:0.45重量%)をサンプリングし、それぞれのc軸に平行な断面組織においてマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)を測定し、(d/t)で定義するアスペクト比を求めた。まず各フェライト焼結磁石の断面組織写真の1視野(倍率10,000倍)において各フェライト結晶粒の(d,t)値を60個分測定し、それらを平均した値(d),(t)及び(d/t)を求めた。同様にして合計5視野分の(d,d,d,d,d),(t,t,t,t,t)及び(d/t,d/t,d/t,d/t,d/t)を求めた、それら平均値の範囲を表3に示す。
【0042】
【表3】
Figure 0003835729
【0043】
又、実施例7のn=5.77,5.84及び6.12のものについて表3と同様にして求めたアスペクト比(d/t)は2.5〜3.0の範囲にあり、比較例2に比べて大きいことがわかった。又、実施例7のフェライト焼結磁石の結晶粒界のR濃度がフェライト結晶粒内のR濃度より高い傾向が認められた。
【0044】
実施例10
微粉砕時に追添加するLa粉末,Co粉末及びFe粉末の量を変えて、最終主要成分組成が原子比率で (Sr0.8La0.2)O・5.92[(Fe1−yCo],x=0.2,x/2ny=1.16,1.26(R過剰組成) になるように調整した以外は実施例7と同様にして後添加によるフェライト焼結磁石を作製し、磁気特性を測定した。その結果、x/2ny=1.16では図17中の(■)プロットと同等のBr及びHk/iHcが得られ、x/2ny=1.26では同一のiHcで比較したとき図17中の(□)プロットより高いBr及びHk/iHcが得られた。
又、実施例7〜10、参考例2に関連した検討から、n=5.7〜6.2,x=0.2〜0.3及び1.0<x/2ny≦1.3 の主要成分組成を有し、かつCaO含有量が0.6〜1.2重量%であり、SiO含有量が0.30〜0.50重量%のときに、c軸に平行な断面組織におけるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペクト比(d/t)が2.5〜3.0になり、図17とほぼ同等の高いBr及び高いHk/iHcを得られることがわかった。
【0045】
上記実施例ではA=Srの場合を記載したが、A=(Sr+Ba)の場合でも同様の効果を得られることが確認された。
【0046】
本発明のフェライト焼結磁石は、各種磁石応用品分野、例えば各種の回転機、静電現像方式のプリンタあるいは複写機等に用いるマグネットロール、音響用スピーカ、ブザー、吸着用磁石又は磁界発生用磁石等の小型化、高性能化に貢献できる極めて有用なものである。
【0047】
【発明の効果】
以上記述の通り、本発明によれば、従来に比べて、Br及びHk/iHcが高く、さらにボイドの少ない高性能フェライト焼結磁石及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の後添加方式によるフェライト焼結磁石(x=0.15)の断面組織写真の一例を示す図である。
【図2】 図1に対応するLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布の一例を示す図である。
【図3】 参考例のフェライト焼結磁石(x=0.20)の断面組織写真示す図である。
【図4】 図3に対応するLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布示す図である。
【図5】 比較例のフェライト焼結磁石(x=0.15)の断面組織写真示す図である。
【図6】 図5に対応するLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布示す図である。
【図7】 比較例のフェライト焼結磁石(x=0.20)の断面組織写真示す図である。
【図8】 図7に対応するLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布示す図である。
【図9】 本発明のフェライト焼結磁石(x=0.15)の代表的な磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図10】 参考例のフェライト焼結磁石(x=0.20)磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図11】 本発明他のフェライト焼結磁石(x=0.20)の代表的な磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図12】 比較例のフェライト焼結磁石の磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図13】 Alを含有する本発明のフェライト焼結磁石(x=0.15)の代表的な磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図14】 M=Co+Znである本発明のフェライト焼結磁石(x=0.15)の代表的な磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図15】 M=Co+Znである比較例のフェライト焼結磁石(x=0.15)の磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図16】 本発明のフェライト焼結磁石の2つのキュリー点とxとの相関の一例を示す図である。
【図17】 本発明及び参考例のフェライト焼結磁石の追添加酸化鉄鉄原料とiHc,Br及びHk/iHcの関係の一例を示す図である。
【図18】 本発明のフェライト焼結磁石の追添加酸化鉄原料及び分散剤と、iHc,Br及びHk/iHcの関係の一例を示す図である。
【図19】 本発明に係るフェライト焼結磁石のボイドの発生状況を示す光学顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. (A1−x)O・n[(Fe1−y](原子比率)
    (ただし、AはSr又はSr及びBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、MはCo又はCoとZnであり、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
    5.0≦n≦6.4
    0.01≦x≦0.4,及び
    0.005≦y≦0.04
    を満たす数字である。)により表される主要成分組成、及びマグネトプランバイト型結晶構造を有するフェライト焼結磁石であって、
    EPMAにより前記フェライト焼結磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoのLevelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+Level,min)/2 よりもLa又はCoのLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCoのLevelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在し、
    前記フェライト焼結磁石のc面を研磨して観察したとき、前記研磨面において1mmあたりのボイド数が3個以下(ただし、直径10μmの円が入るボイドを1個とカウントする。)であり、
    前記フェライト焼結磁石は、前記主要成分組成に調整された粉砕粉末を分散したスラリーを磁界中成形し、得られた成形体を焼結したものであり、前記粉砕粉末は、少なくともA元素及びFe元素を含む仮焼体粉末と、前記仮焼体粉末の重量を基準にして3〜26重量%に相当するFe を含むことを特徴とするフェライト焼結磁石。
  2. 請求項1に記載のフェライト焼結磁石において、前記粉砕粉末は、前記仮焼体粉末の重量を基準にして18〜26重量%に相当するFe を含むことを特徴とするフェライト焼結磁石。
  3. (A1−x)O・n[(Fe1−y](原子比率)
    (ただし、AはSr又はSr及びBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、MはCo又はCoとZnであり、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
    5.0≦n≦6.4
    0.01≦x≦0.4,及び
    0.005≦y≦0.04
    を満たす数字である。)により表される主要成分組成、及びマグネトプランバイト型結晶構造を有するフェライト焼結磁石であって、EPMAにより前記フェライト焼結磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoのLevelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+Level,min)/2 よりもLa又はCoのLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCoのLevelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在するフェライト焼結磁石を製造する方法であって、
    前記主要成分組成に調整された粉砕粉末を分散したスラリーに対し、前記粉砕粉末の総重量の0.2〜2重量%に相当する分散剤を添加して混練する工程混練後のスラリーを磁界中成形する工程、及び得られた成形体を焼結する工程を有し、前記粉砕粉末は、少なくともA元素及びFe元素を含む仮焼体粉末と、前記仮焼体粉末の重量を基準にして18〜26重量%に相当する磁性酸化鉄を含むことを特徴とするフェライト焼結磁石の製造方法。
  4. 請求項3に記載のフェライト焼結磁石の製造方法において、前記磁性酸化鉄はFe であることを特徴とするフェライト焼結磁石の製造方法。
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