JP2005001950A - W型フェライトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異方性のW型6方晶フェライトを製造するさいに,スピネル化合物が共存しないW型フェライト化合物を製造する。
【解決手段】W型フェライトを製造するにあたり,M型フェライト化合物とスピネル型フェライト化合物とを,W型フェライト化合物に対応する組成となる量比で配合した混合粉を得,この混合粉を圧粉成形し,焼成し,さらに,所望により,粉砕することを特徴とするW型フェライトの製造方法である。W型フェライトは,A〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27(ただし,AはSrまたはBa,x=0〜0.5)の組成を有する化合物であることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】W型フェライトを製造するにあたり,M型フェライト化合物とスピネル型フェライト化合物とを,W型フェライト化合物に対応する組成となる量比で配合した混合粉を得,この混合粉を圧粉成形し,焼成し,さらに,所望により,粉砕することを特徴とするW型フェライトの製造方法である。W型フェライトは,A〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27(ただし,AはSrまたはBa,x=0〜0.5)の組成を有する化合物であることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,W型フェライトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
六方晶フェライト系磁石は、コストパフォーマンス、耐環境性等に優れているため電装用モータ等の各種磁性応用製品に多用されているが,昨今の磁性応用製品の小型化のニーズに伴い、フェライト系磁石の高性能化が求められている。
【0003】
六方晶フェライトは,周知のように,Fe2O3 ,BaO,MeOを三成分とすると〔但し,BaはCa,Sr,Pbなどで置換可能であり,Meは鉄属遷移族元素の2価イオンまたはZn,Mg,或いは1価と3価の組合せ(例えばLi+1とFe+3との組合せ)を表す〕,組成上に非常に似通った六方晶構造をもつ化合物群が存在し,それぞれの組成に応じてM,W,X,Y,Z型などと呼ばれている。このうち,M型フェライト化合物が製造性等の点で有利なことから多用されており,その高性能化への努力が続けられてきた結果、その磁気特性は次第にその上限に近づきつつある。
【0004】
このため,さらに高い磁気特性を得るためには、M型フェライトに代わる新たな化合物材料の開発が必要である。飽和磁化の大きな磁性材料としては、M型以外にもW型、X型、Y型などがあり,特にW型フェライトは,M型より10%程度高い飽和磁化を有し、かつM型とほぼ同等の異方性磁界を示すので,近年、新しい磁性材料として注目されている(例えば特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−306716号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
W型フェライトはM型フェライトに比べて不安定であり,このため焼成品を粉砕すると分解し易い。このため,W型フェライトは焼結磁石として得ることができても,W型フェライトの磁性粉末とすることは困難である。このため,ボンド磁石用のW型フェライトは未だ出現していない。また,通常の粉体原料を混合して焼成する方法では,低温で生成し易いスピネルが始めに形成し,これがW型フェライトの生成を抑制する現象が起こり,磁気特性に大きな影響を及ぼすことになる。
【0007】
本発明はこのような問題の解決を目的としたものであり,スピネルを含まないW型フェライト化合物を安定して製造することを課題としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために,本発明では,M型フェライト化合物とスピネル型フェライト化合物とを,W型フェライト化合物に対応する組成となる量比で秤量・混合し,この混合物を必要に応じて粉砕し,得られた混合粉を圧粉成形し,ついで焼成する。これによってスピネル化合物を実質的に含まないW型フェライト化合物主体の磁性材料を得ることができる。この焼成品は粉砕してもW型フェライト化合物の形態を維持する。したがって,スピネルを実質的に含まないW型フェライト化合物主体の磁性粉末が得られる。粉砕したあとは,粉砕による歪を除去するためにアニール処理することが好ましい。
【0009】
本発明のW型フェライトは,A〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27(ただし,AはSrまたはBa,x=0〜0.5)の化学組成を有する化合物であることができ,この場合には,配合に使用するスピネル型フェライト原料としては,2〔Zn(1−x)(LiFe)x〕O・Fe2O3(ただしx=0〜0.5)の組成を有する化合物を用い,配合に使用するM型フェライト原料としてはAO・6Fe2O3 (AはSrまたはBa)の組成を有する化合物を使用するのがよい。このようなBa−Zn−Li系W型フェライトを本発明に従って合成する場合には,その焼成品を平均粒径50μm以下に粉砕してもW型フェライトの形態を保持している。このため,スピネル化合物を実質的に含まないW型フェライト化合物主体の平均粒径が50μm以下の粒子からなり,飽和磁化が60emu/g 以上の強磁性粉末を得ることができる。この粉末はボンド磁石用に供することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは,W型フェライトを合成する場合に,その焼成過程でスピネル化合物が生成する挙動を種々の試験で調べてきたが,スピネルが生成するとその分,W型フェライトの磁気特性が低下することが明らかとなった。また,この場合には焼成品を微粉砕するとW型フェライトの結晶も崩れやすくなることがわかった。ところが,微細なスピネルを予め合成しておき,これをM型フェライトの粉体と混合したうえで焼成すると,スピネルは焼成の過程で消失しW型フェライトの生成に寄与することを知見した。すなわち,スピネル+M型フェライト→W型フェライトに変性するのである。得られる焼成品はこれを微粉砕してもW型フェライトの結晶構造を維持し,磁気特性の良好な磁性粉末を得ることができる。
【0011】
W型フェライトのうちでも,異方性Ba−Zn−Li系W型六方晶フェライトは磁気特性が優れることが知られている。本発明はこのBa−Zn−Li系W型フェライトを製造する場合にも適用可能である。すなわち,一般式がA〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27で表されるW型フェライト化合物(ただし,AはSrまたはBa,x=0〜0.5)を製造する場合に適用可能である。
【0012】
本発明のW型フェライトの製造法は,スピネル化合物とM型フェライト化合物の準備工程,両者の秤量・混合工程,圧粉成形工程,焼成工程,粉砕工程,アニール工程,解砕工程からなる。以下,前記のBa−Zn−Li系W型フェライトを製造する場合を例として,本発明の各工程を具体的に説明する。
【0013】
まず,出発原料としてスピネル化合物とM型フェライト化合物の準備するが,その準備のために,両化合物を製造することが必要な場合には,両者を別々に製造する。A〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27系W型フェライトの製造の場合は,2〔Zn(1−x)(LiFe)x〕O・Fe2O3(ただしx=0〜0.5)の組成を有するスピネル化合物を別途に製造し,さらにAO・6Fe2O3 (AはSrまたはBa)の組成を有するM型フェライト化合物を別途に製造するのがよい。それらの製法は,常法に従って,原料をその組成となるように秤量・粉砕し,圧粉成形してフェライトの合成温度で焼成すればよい。
【0014】
次いで,両者をW型フェライト組成となるような量比で秤量し,両原料を混合する。混合はボールミルを用いて行うことにより,両原料が粉砕と同時に混合されるので好ましい。
【0015】
得られたW型フェライトに相当する組成割合の混合粉は,プレス機で所望の形状に圧粉成形し,炉に装入して合成温度で焼成する。焼成雰囲気は大気中とし,焼成温度は1100〜1350℃で30〜180分間の保持のあと室温にまで冷却すればよい。この焼成により,配合したスピネル化合物は実質上全てが消失し,新たにW型フェライトが生成する。配合したM型フェライトが残留することもあるが,残留量はW型フェライトより多くなることはなく,W型フェライトが主成分の異方性六方晶フェライトが得られる。
【0016】
この焼成品のまま焼結磁石として磁性材料に供することもできる。その場合には,焼成品を所望の形状に切り出すことによって任意の形状の磁石製品とすることができる。
【0017】
本発明に従うW型フェライトを含む焼成品は,これを粉砕することによって,ボンド磁石に適した磁性粉末とすることができる。粉砕はボールミルを用いて行うことができるが,まず乾式粉砕で粗粉を製造し,次いで乾式粉砕もしくは湿式粉砕で微粉化するのがよい。粉砕は平均粒径が100μm以下,好ましくは50μm以下,さらに好ましくは10μm以下の微粉が得られるまで行うのが望ましい。いずれにしても,粉砕時には機械的な応力が加わるので,粒子には内部歪が残留し,これが磁気特性を劣化させることは否めない。
【0018】
この内部歪を除去するために,粉体をアニール処理するのがよい。アニール処理は歪除去の目的が達成できるに十分な温度に保持すればよく,通常は,700〜950℃の温度範囲に30〜120分間保持すればよい。雰囲気は大気中とすればよい。この歪取り焼鈍の後では粉体が部分的に凝集して塊状品となり易いが,この塊状品はボールミル等で解砕することによって,ほぼもとの粉体に戻すことができる。この解砕時に再び歪が発生することを防止するために,湿式解砕を行うのが好ましい。
【0019】
このようにして,本発明によると,W型フェライトが主体でスピネル化合物を含まない磁気特性の優れた磁性粉末,例えば飽和磁化が60emu/g 以上を示し,保磁力も1800Oe 以上を示す磁性粉末を得ることができる。このものは,ボンド磁石用の磁性粉末として好適であり,バイダー樹脂に充填するさいに磁場配向することによって,さらに優れた磁気特性を示すようになる。
【0020】
【実施例】
〔実施例1〕
(1) スピネル化合物の製造
α−Fe2O3 ,ZnOおよびLi2CO3を, ZnLiFe9O12のスピネル化合物の組成に対応する量比で秤取し, ボールミルで10分間乾式混合した。この混合粉を電気炉に装填し,900℃で1時間,大気中で焼成した。得られた焼成品の結晶構造をX線回折したところ,図1のX線回折パターンに示したとおり,スピネル単相であることが確認された。
【0021】
(2) スピネル化合物とM型フェライト化合物の混合
前記のスピネル化合物と,SrO・6Fe2O3 のM型フェライト化合物とを,SrZnLiFe18.5O27組成に対応する量比で秤取し,ボールミルを用いて4 時間混合・微粉砕を行い,混合粉を得た。
【0022】
(3) 混合粉の成形と焼結
前記の混合粉をプレス圧49MPaで、φ15mm×高さ15mmの円柱状の成形体に圧粉成形し、この成形体を電気炉に装入し,大気中,1300℃で2時間焼成した。
【0023】
(4) 焼成品の粉砕
得られた焼成品をロッドミルを用いて粒径1mm以下に粗粉砕したあと,さらにボールミルを用いて平均粒径10μm以下に乾式で微粉砕した。なお,この平均粒径は、レーザー回折法により測定した粒径の50%積算値として求められる数平均粒径である。
【0024】
(5) 粉砕品のアニール処理
焼成品を粉砕するさいに発生した内部歪を除去するために,得られた微粉砕品を電気炉に装入し,大気中,900℃で1時間のアニール処理を行った。このアニール処理で得られた塊状品をボールミルを用いて5分間湿式で解砕し,フェライト磁性粉を得た。
【0025】
焼成品を微粉砕した段階でその微粉をX線回折したところ,図2に示すX線回折パターンが得られた。図2に見られにように,この微粉はスピネル相を有しておらず,主成分がW型フェライトであることが確認された。他の成分はM型フェライトであり,W型フェライトとM型フェライトのX線回折の強度比は,ほぼ70:30であった。なお図3に,本例のX線回折パターンを,α−Fe2O3 およびZn−Li−Fe系スピネル化合物のX線回折パターンと対比して示した。
【0026】
アニール後に得られたフェライト磁性粉の磁気特性を測定したところ,表1に示す結果が得られた。
【0027】
【表1】
【0028】
〔比較例1〕
α−Fe2O3 ,ZnO,Li2CO3およびBaCO3を,一般式Ba〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27のW型フェライトにおけるX=0.3となる化合物の組成に対応する量比で秤取し, ボールミルで180分間湿式混合し,乾燥後,この混合粉をプレス圧49MPaで、φ36mm×高さ7mmの円板状の成形体に圧粉成形し、この成形体を電気炉に装入し,大気中,1250℃で1時間焼成した。得られた焼成品からサンプルを採取してX線回折を行ったところ,スピネル化合物とW型フェライト化合物のピークが観測され,その相対強度比から,スピネル化合物:W型フェライト化合物のX線回折の強度比はほぼ30:70であることが確認された。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によると,スピネル化合物が実質上共存しないW型フェライト化合物を得ることができる。W型フェライトはM型フェライトでは達成できない高い飽和磁化を有するので,M型フェライトでは得られなかった高性能の磁性材料が提供できる。またW型フェライトにスピネルが共存すると磁気特性が劣化するようになるが,本発明ではスピネルが共存しないので,この点でも優れた磁気特性の磁性材料を提供できる。加えて,本発明によれば,W型フェライトの磁性粉末を安定して得ることができるので,ボンド磁石用のW型フェライト磁性材料が得られる。そして,本発明の製造法は,複雑な雰囲気制御を必要としないので,製造性がよく安価に製造できる点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法に使用したスピネル化合物のX線回折パターンである。
【図2】本発明に従って製造したW型フェライト焼成品のX線回折パターンである。
【図3】図2のX線回折パターンを,図1のスピネル化合物およびα−Fe2O3 のX線回折パターン図を比較した図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は,W型フェライトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
六方晶フェライト系磁石は、コストパフォーマンス、耐環境性等に優れているため電装用モータ等の各種磁性応用製品に多用されているが,昨今の磁性応用製品の小型化のニーズに伴い、フェライト系磁石の高性能化が求められている。
【0003】
六方晶フェライトは,周知のように,Fe2O3 ,BaO,MeOを三成分とすると〔但し,BaはCa,Sr,Pbなどで置換可能であり,Meは鉄属遷移族元素の2価イオンまたはZn,Mg,或いは1価と3価の組合せ(例えばLi+1とFe+3との組合せ)を表す〕,組成上に非常に似通った六方晶構造をもつ化合物群が存在し,それぞれの組成に応じてM,W,X,Y,Z型などと呼ばれている。このうち,M型フェライト化合物が製造性等の点で有利なことから多用されており,その高性能化への努力が続けられてきた結果、その磁気特性は次第にその上限に近づきつつある。
【0004】
このため,さらに高い磁気特性を得るためには、M型フェライトに代わる新たな化合物材料の開発が必要である。飽和磁化の大きな磁性材料としては、M型以外にもW型、X型、Y型などがあり,特にW型フェライトは,M型より10%程度高い飽和磁化を有し、かつM型とほぼ同等の異方性磁界を示すので,近年、新しい磁性材料として注目されている(例えば特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−306716号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
W型フェライトはM型フェライトに比べて不安定であり,このため焼成品を粉砕すると分解し易い。このため,W型フェライトは焼結磁石として得ることができても,W型フェライトの磁性粉末とすることは困難である。このため,ボンド磁石用のW型フェライトは未だ出現していない。また,通常の粉体原料を混合して焼成する方法では,低温で生成し易いスピネルが始めに形成し,これがW型フェライトの生成を抑制する現象が起こり,磁気特性に大きな影響を及ぼすことになる。
【0007】
本発明はこのような問題の解決を目的としたものであり,スピネルを含まないW型フェライト化合物を安定して製造することを課題としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために,本発明では,M型フェライト化合物とスピネル型フェライト化合物とを,W型フェライト化合物に対応する組成となる量比で秤量・混合し,この混合物を必要に応じて粉砕し,得られた混合粉を圧粉成形し,ついで焼成する。これによってスピネル化合物を実質的に含まないW型フェライト化合物主体の磁性材料を得ることができる。この焼成品は粉砕してもW型フェライト化合物の形態を維持する。したがって,スピネルを実質的に含まないW型フェライト化合物主体の磁性粉末が得られる。粉砕したあとは,粉砕による歪を除去するためにアニール処理することが好ましい。
【0009】
本発明のW型フェライトは,A〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27(ただし,AはSrまたはBa,x=0〜0.5)の化学組成を有する化合物であることができ,この場合には,配合に使用するスピネル型フェライト原料としては,2〔Zn(1−x)(LiFe)x〕O・Fe2O3(ただしx=0〜0.5)の組成を有する化合物を用い,配合に使用するM型フェライト原料としてはAO・6Fe2O3 (AはSrまたはBa)の組成を有する化合物を使用するのがよい。このようなBa−Zn−Li系W型フェライトを本発明に従って合成する場合には,その焼成品を平均粒径50μm以下に粉砕してもW型フェライトの形態を保持している。このため,スピネル化合物を実質的に含まないW型フェライト化合物主体の平均粒径が50μm以下の粒子からなり,飽和磁化が60emu/g 以上の強磁性粉末を得ることができる。この粉末はボンド磁石用に供することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは,W型フェライトを合成する場合に,その焼成過程でスピネル化合物が生成する挙動を種々の試験で調べてきたが,スピネルが生成するとその分,W型フェライトの磁気特性が低下することが明らかとなった。また,この場合には焼成品を微粉砕するとW型フェライトの結晶も崩れやすくなることがわかった。ところが,微細なスピネルを予め合成しておき,これをM型フェライトの粉体と混合したうえで焼成すると,スピネルは焼成の過程で消失しW型フェライトの生成に寄与することを知見した。すなわち,スピネル+M型フェライト→W型フェライトに変性するのである。得られる焼成品はこれを微粉砕してもW型フェライトの結晶構造を維持し,磁気特性の良好な磁性粉末を得ることができる。
【0011】
W型フェライトのうちでも,異方性Ba−Zn−Li系W型六方晶フェライトは磁気特性が優れることが知られている。本発明はこのBa−Zn−Li系W型フェライトを製造する場合にも適用可能である。すなわち,一般式がA〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27で表されるW型フェライト化合物(ただし,AはSrまたはBa,x=0〜0.5)を製造する場合に適用可能である。
【0012】
本発明のW型フェライトの製造法は,スピネル化合物とM型フェライト化合物の準備工程,両者の秤量・混合工程,圧粉成形工程,焼成工程,粉砕工程,アニール工程,解砕工程からなる。以下,前記のBa−Zn−Li系W型フェライトを製造する場合を例として,本発明の各工程を具体的に説明する。
【0013】
まず,出発原料としてスピネル化合物とM型フェライト化合物の準備するが,その準備のために,両化合物を製造することが必要な場合には,両者を別々に製造する。A〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27系W型フェライトの製造の場合は,2〔Zn(1−x)(LiFe)x〕O・Fe2O3(ただしx=0〜0.5)の組成を有するスピネル化合物を別途に製造し,さらにAO・6Fe2O3 (AはSrまたはBa)の組成を有するM型フェライト化合物を別途に製造するのがよい。それらの製法は,常法に従って,原料をその組成となるように秤量・粉砕し,圧粉成形してフェライトの合成温度で焼成すればよい。
【0014】
次いで,両者をW型フェライト組成となるような量比で秤量し,両原料を混合する。混合はボールミルを用いて行うことにより,両原料が粉砕と同時に混合されるので好ましい。
【0015】
得られたW型フェライトに相当する組成割合の混合粉は,プレス機で所望の形状に圧粉成形し,炉に装入して合成温度で焼成する。焼成雰囲気は大気中とし,焼成温度は1100〜1350℃で30〜180分間の保持のあと室温にまで冷却すればよい。この焼成により,配合したスピネル化合物は実質上全てが消失し,新たにW型フェライトが生成する。配合したM型フェライトが残留することもあるが,残留量はW型フェライトより多くなることはなく,W型フェライトが主成分の異方性六方晶フェライトが得られる。
【0016】
この焼成品のまま焼結磁石として磁性材料に供することもできる。その場合には,焼成品を所望の形状に切り出すことによって任意の形状の磁石製品とすることができる。
【0017】
本発明に従うW型フェライトを含む焼成品は,これを粉砕することによって,ボンド磁石に適した磁性粉末とすることができる。粉砕はボールミルを用いて行うことができるが,まず乾式粉砕で粗粉を製造し,次いで乾式粉砕もしくは湿式粉砕で微粉化するのがよい。粉砕は平均粒径が100μm以下,好ましくは50μm以下,さらに好ましくは10μm以下の微粉が得られるまで行うのが望ましい。いずれにしても,粉砕時には機械的な応力が加わるので,粒子には内部歪が残留し,これが磁気特性を劣化させることは否めない。
【0018】
この内部歪を除去するために,粉体をアニール処理するのがよい。アニール処理は歪除去の目的が達成できるに十分な温度に保持すればよく,通常は,700〜950℃の温度範囲に30〜120分間保持すればよい。雰囲気は大気中とすればよい。この歪取り焼鈍の後では粉体が部分的に凝集して塊状品となり易いが,この塊状品はボールミル等で解砕することによって,ほぼもとの粉体に戻すことができる。この解砕時に再び歪が発生することを防止するために,湿式解砕を行うのが好ましい。
【0019】
このようにして,本発明によると,W型フェライトが主体でスピネル化合物を含まない磁気特性の優れた磁性粉末,例えば飽和磁化が60emu/g 以上を示し,保磁力も1800Oe 以上を示す磁性粉末を得ることができる。このものは,ボンド磁石用の磁性粉末として好適であり,バイダー樹脂に充填するさいに磁場配向することによって,さらに優れた磁気特性を示すようになる。
【0020】
【実施例】
〔実施例1〕
(1) スピネル化合物の製造
α−Fe2O3 ,ZnOおよびLi2CO3を, ZnLiFe9O12のスピネル化合物の組成に対応する量比で秤取し, ボールミルで10分間乾式混合した。この混合粉を電気炉に装填し,900℃で1時間,大気中で焼成した。得られた焼成品の結晶構造をX線回折したところ,図1のX線回折パターンに示したとおり,スピネル単相であることが確認された。
【0021】
(2) スピネル化合物とM型フェライト化合物の混合
前記のスピネル化合物と,SrO・6Fe2O3 のM型フェライト化合物とを,SrZnLiFe18.5O27組成に対応する量比で秤取し,ボールミルを用いて4 時間混合・微粉砕を行い,混合粉を得た。
【0022】
(3) 混合粉の成形と焼結
前記の混合粉をプレス圧49MPaで、φ15mm×高さ15mmの円柱状の成形体に圧粉成形し、この成形体を電気炉に装入し,大気中,1300℃で2時間焼成した。
【0023】
(4) 焼成品の粉砕
得られた焼成品をロッドミルを用いて粒径1mm以下に粗粉砕したあと,さらにボールミルを用いて平均粒径10μm以下に乾式で微粉砕した。なお,この平均粒径は、レーザー回折法により測定した粒径の50%積算値として求められる数平均粒径である。
【0024】
(5) 粉砕品のアニール処理
焼成品を粉砕するさいに発生した内部歪を除去するために,得られた微粉砕品を電気炉に装入し,大気中,900℃で1時間のアニール処理を行った。このアニール処理で得られた塊状品をボールミルを用いて5分間湿式で解砕し,フェライト磁性粉を得た。
【0025】
焼成品を微粉砕した段階でその微粉をX線回折したところ,図2に示すX線回折パターンが得られた。図2に見られにように,この微粉はスピネル相を有しておらず,主成分がW型フェライトであることが確認された。他の成分はM型フェライトであり,W型フェライトとM型フェライトのX線回折の強度比は,ほぼ70:30であった。なお図3に,本例のX線回折パターンを,α−Fe2O3 およびZn−Li−Fe系スピネル化合物のX線回折パターンと対比して示した。
【0026】
アニール後に得られたフェライト磁性粉の磁気特性を測定したところ,表1に示す結果が得られた。
【0027】
【表1】
【0028】
〔比較例1〕
α−Fe2O3 ,ZnO,Li2CO3およびBaCO3を,一般式Ba〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27のW型フェライトにおけるX=0.3となる化合物の組成に対応する量比で秤取し, ボールミルで180分間湿式混合し,乾燥後,この混合粉をプレス圧49MPaで、φ36mm×高さ7mmの円板状の成形体に圧粉成形し、この成形体を電気炉に装入し,大気中,1250℃で1時間焼成した。得られた焼成品からサンプルを採取してX線回折を行ったところ,スピネル化合物とW型フェライト化合物のピークが観測され,その相対強度比から,スピネル化合物:W型フェライト化合物のX線回折の強度比はほぼ30:70であることが確認された。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によると,スピネル化合物が実質上共存しないW型フェライト化合物を得ることができる。W型フェライトはM型フェライトでは達成できない高い飽和磁化を有するので,M型フェライトでは得られなかった高性能の磁性材料が提供できる。またW型フェライトにスピネルが共存すると磁気特性が劣化するようになるが,本発明ではスピネルが共存しないので,この点でも優れた磁気特性の磁性材料を提供できる。加えて,本発明によれば,W型フェライトの磁性粉末を安定して得ることができるので,ボンド磁石用のW型フェライト磁性材料が得られる。そして,本発明の製造法は,複雑な雰囲気制御を必要としないので,製造性がよく安価に製造できる点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法に使用したスピネル化合物のX線回折パターンである。
【図2】本発明に従って製造したW型フェライト焼成品のX線回折パターンである。
【図3】図2のX線回折パターンを,図1のスピネル化合物およびα−Fe2O3 のX線回折パターン図を比較した図である。
Claims (5)
- W型フェライトを製造するにあたり,M型フェライト化合物とスピネル型フェライト化合物とを,W型フェライト化合物に対応する組成となる量比で配合した混合粉を得,その混合粉を圧粉成形し,ついで焼成することを特徴とするW型フェライトの製造方法。
- W型フェライトを製造するにあたり,M型フェライト化合物とスピネル型フェライト化合物とを,W型フェライト化合物に対応する組成となる量比で配合した混合粉を得,この混合粉を圧粉成形し,焼成し,次いで粉砕することを特徴とするW型フェライトの製造方法。
- W型フェライトは,A〔Zn2(1−x)(LiFe)x〕Fe18O27(ただし,AはSrまたはBa,x=0〜0.5)の組成を有する化合物である請求項1または2に記載のW型フェライトの製造方法。
- スピネル型フェライトは2〔Zn(1−x)(LiFe)x〕O・Fe2O3(ただしx=0〜0.5)の組成を有する化合物であり,M型フェライトはAO・6Fe2O3 (AはSrまたはBa)の組成を有する化合物である請求項3に記載のW型フェライトの製造方法。
- スピネル化合物を実質的に含まないW型フェライト化合物の磁性粉末であって,平均粒径が50μm以下の粒子からなり,飽和磁化が60emu/g 以上である強磁性粉末。
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CN100371292C (zh) * | 2006-04-12 | 2008-02-27 | 浙江大学 | 以锰结核或富钴结壳为原料制备尖晶石型铁氧体的方法 |
WO2013021521A1 (en) | 2011-08-09 | 2013-02-14 | Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho | Ferrite particle and production method thereof |
-
2003
- 2003-06-13 JP JP2003168627A patent/JP2005001950A/ja not_active Withdrawn
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US9105383B2 (en) | 2011-08-09 | 2015-08-11 | Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho | Ferrite particle and production method thereof |
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