JP3682850B2 - 回転機 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有し、かつ従来に比べてLa及び/又はCoを不均一に分布させ、さらにはボイドを低減した健全なミクロ組織を形成したことにより従来に比べて高い残留磁束密度Br及び高い角形比Hk/iHcを有するセグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石を具備し、効率を向上した高性能の回転機に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライト磁石は、モータ、発電機等の回転機を含む種々の用途に使用されている。最近、自動車用回転機分野では小型・軽量化を目的とし、電気機器用回転機分野では高効率化を目的としてより高い磁気特性を有するフェライト磁石が求められている。
従来の高性能フェライト磁石は以下のように製造されていた。例えば、酸化鉄とSr又はBaの炭酸塩とを混合後、仮焼してフェライト化する。次に、仮焼物を粗粉砕し、次いで微粉砕する。微粉砕時に焼結性を制御する添加物としてSiO2,SrCO3及びCaCO3,さらに残留磁束密度Br及び固有保磁力iHcを制御する添加物としてAl2O3あるいはCr2O3等を所定量添加し、所望の平均粒径まで微粉砕する。次いで、前記微粉を用いて配向磁界を印加しつつ圧縮成形し、焼結する。その後所定寸法に加工してフェライト磁石製品とする。
【0003】
界磁用セグメントフェライト磁石の高性能化の手段は以下の5つに大きく分類される。
第1の手段は微粒化である。フェライト磁石の焼結体のc面(実用上最も高いBrの得られる磁気異方性付与方向に対し直角な面と定義する)の結晶粒径が、マグネトプランバイト型フェライト磁石の臨界単磁区粒子径(約0.9μm)に近いほどiHcは大きくなる。よって、焼結時の結晶粒成長を見込んで、微粉砕の平均粒径を例えば0.7μm以下に微粒化すればよい。しかし、この方法によると、微粒化するほど成形性及び湿式成形では脱水特性が悪くなり、工業生産効率が落ちるという問題を有する。
第2の手段は焼結体のc面の結晶粒径分布を約0.9μm近傍の狭い分布にすることである。0.9μmより大きな結晶粒も小さな結晶粒もiHcの低下を招くからである。このための具体的な手段は微粉砕粉の粒径分布を改善することであるが、工業生産上ボールミル又はアトライターなどの既存の粉砕機を用いざるを得ないので微粉砕粉の粒径分布の改善は自ずと制限される。次に、近年、化学的沈殿法により狭い粒径分布に調整したフェライト微粒子を用いて高性能フェライト磁石を作製する試みがなされているが、実用化には至っていない。
第3の手段は磁気異方性化度を左右するフェライト磁石の配向度を向上することであり、具体的には成形体の配向度の向上及び焼結による配向度の向上がある。界面活性剤を微粉砕スラリーに添加してスラリー中のフェライト微粒子の分散性を改善するか、あるいは配向磁界強度を増大して成形体の配向度を向上する方法が考えられる。あるいは仮焼時のフェライト化反応の促進及び/又は成形体の緻密な焼結に寄与する添加物(SiO2,CaCO3等)を所定量添加して焼結体の配向度を向上することが考えられる。
第4の手段は焼結体の密度を向上することである。Srフェライト磁石の理論密度は5.15Mg/m3(g/cm3)である。実用に供されているSrフェライト磁石の密度は約4.9〜5.0Mg/m3(g/cm3)であり、対理論密度比で95〜97%に相当する。高密度化すればBrが向上するが、前記密度範囲を超えてさらに高密度化するにはHIP等の特殊な高密度化手段が必要である。しかし、このような特殊なプロセスの導入は製造原価を増大させる。
第5の手段はマグネトプランバイト型フェライト磁石を構成する主相のフェライト化合物(マグネトプランバイト相)自体の飽和磁化σsあるいは結晶磁気異方性定数を向上することである。σsが向上すればBrが向上し、結晶磁気異方性定数が向上すれば保磁力Hc,iHcが向上することが期待される。近年、マグネトプランバイト型フェライト磁石より大きなσsを有するW型フェライト磁石の開発が行われているが、雰囲気制御の困難さのため実用化には至っていない。
次に、特開平9-115715号公報には、A1−xRx(Fe12−yMy)zO19、(AはSr,Ba,Ca及びPbの少なくとも1種であり、RはY及びBiを含む希土類元素の少なくとも1種であってLaを必ず含み、MはZn及び/又はCdであり、モル比で、0.04≦x≦0.45,0.04≦y≦0.45,0.7≦z≦1.2 で表される主要成分及び六方晶マグネトプランバイト型フェライトの主相を有するフェライト磁石が開示されている。しかし、本発明者らの検討によれば、このフェライト磁石では199.0kA/m(2.5kOe)超の高いiHcを実現困難なことがわかった。
次に、国際公開番号:WO98/38654には、Sr,Ba,Ca及びPbから選択される少なくとも1種であってSrを必ず含むものをAとし、Y及びBiを含む希土類元素の少なくとも1種であってLaを必ず含むものをRとし、CoであるかCo及びZnをMとしたとき、A,R,Fe及びMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:1〜13原子%、R:0.05〜10原子%、Fe:80〜95原子%、M:0.1〜5原子%である主要成分組成を有するフェライト磁石が開示されている。このフェライト磁石は従来に比べて高いBr及びiHcを有する高性能フェライト磁石であり、各種磁石応用製品分野へ採用されつつある。しかし、本発明者らの検討によれば、 WO98/38654に記載の製造条件に従い作製したフェライト磁石はLa置換量xが0.15超で角形比Hk/iHcが顕著に劣化し、高効率の要求される回転機等の要求仕様を十分満足できない場合を発生した。Hkは4πI(磁化の強さ)−H(磁界の強さ)曲線の第2象限において、4πI値が0.95Brになる位置のH値であり、減磁曲線の矩形性の尺度である。Hkを4πI−H曲線のiHcで除した値を角形比(Hk/iHc)と定義する。
次に、国際公開番号:WO99/16087には、A(AはSr,Ba又はCa),Co及びR[Rは希土類元素(Yを含む)及びBiから選択される少なくとも1種を表す]を含有する六方晶フェライトの主相を有する焼結磁石であって、少なくとも2つの異なるキュリー温度を有し、この2つのキュリー温度は400〜480℃の範囲に存在し、かつこれらの差の絶対値が5℃以上である焼結磁石を開示している。又この六方晶フェライトの主相を有する焼結磁石はその構成元素の一部又は全部を、少なくともSr,Ba又はCaを含有する六方晶フェライトを主相とする粒子に添加し、その後、成形し、本焼成を行うことにより製造され、角形比Hk/iHcを顕著に高めたことが記載されている。しかし、WO99/16087には高い角形比Hk/iHcを実現するための好適なミクロ組織を推測する記述があるのみであり、特に置換量x=0.2〜0.3において高いHk/iHc及び高いBrを得られるミクロ組織について何ら解明されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明が解決しようとする課題は、実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有し、かつ従来に比べてLa及び/又はCoを不均一に分布させ、さらにはボイドを低減した健全なミクロ組織を形成したことにより従来に比べて高いBr及び高いHk/iHcを有するセグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石を具備し、効率を向上した高性能の回転機を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の回転機はセグメントフェライト磁石を具備し、前記セグメントフェライト磁石は、
(A1−xRx)O・n[(Fe1−yCoy)2O3](原子比率)
(ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.0≦n≦6.4
0.01≦x≦0.4,及び
0.005≦y≦0.04
を満たす数字である。)により表される主要成分組成及び実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有するフェライト磁石であり、EPMAにより前記セグメントフェライト磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoLevelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+ Level,min)/2 よりもLa又はCoLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCoLevelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在していることを特徴とする。
前記セグメントフェライト磁石のボイドの発生率が6個/mm2以下のときに従来に比べて高効率の回転機を構成することができる。
又前記セグメントフェライト磁石の磁化M(単位emu/g )−温度T(単位℃)曲線は複数のキュリー点(Tc)及び微分値(dM/dT)の極小値を有する。
又前記セグメントフェライト磁石を用いて構成した回転機の界磁磁極数が2〜36極、より好ましくは4〜24極、特に好ましくは4〜16極の場合に高効率で実用性に富んだ回転機を構成することができる。
【0006】
又本発明の回転機はセグメントフェライト磁石を具備し、
前記セグメントフェライト磁石は、
(A1−xRx)O・n[(Fe1−yCoy)2O3](原子比率)
(ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.6≦n≦6.2,
0.15<x≦0.3,及び
1.0<x/2ny≦1.3
を満たす数字である。)により表される主要成分組成及びマグネトプランバイト型結晶構造を有し、CaO含有量が0.5〜1.5重量%であり、SiO2含有量が0.25〜0.55重量%であり、かつc軸に平行な断面組織におけるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペクト比(d/t)が2.5〜3.0のフェライト結晶粒から実質的になることを特徴とする。
高効率の回転機を構成するためにアスペクト比(d/t)は2.6〜2.9がより好ましく、2.65〜2.85が特に好ましい。又前記セグメントフェライト焼結磁石のボイドの発生率が6個/mm2以下という健全なミクロ組織を有するとき、従来に比べて高効率の回転機を構成することができる。
【0007】
又本発明の回転機はラジアル異方性又は極異方性を付与したリングフェライト磁石を具備し、前記リングフェライト磁石は、
(A1−xRx)O・n[(Fe1−yCoy)2O3](原子比率)
(ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.0≦n≦6.4
0.01≦x≦0.4,及び
0.005≦y≦0.04
を満たす数字である。)により表される主要成分組成及び実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有する焼結磁石であり、EPMAにより前記焼結磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoLevelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+ Level,min)/2 よりもLa又はCoLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCoLevelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在しているとともに、ボイドの発生率が6個/mm2以下であることを特徴とする。
又前記リングフェライト磁石が、
(A1−xRx)O・n[(Fe1−yCoy)2O3](原子比率)
(ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.6≦n≦6.2,
0.15<x≦0.3,及び
1.0<x/2ny≦1.3
を満たす数字である。)により表される主要成分組成及びマグネトプランバイト型結晶構造を有し、CaO含有量が0.5〜1.5重量%であり、SiO2含有量が0.25〜0.55重量%であり、かつc軸に平行な断面組織におけるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペクト比(d/t)が2.5〜3.0のフェライト結晶粒から実質的になる焼結磁石の場合に従来に比べて高効率の回転機を構成することができる。
高効率の回転機を構成するためにアスペクト比(d/t)は2.6〜2.9がより好ましく、2.65〜2.85が特に好ましい。又前記リングフェライト焼結磁石のボイドの発生率が6個/mm2以下という健全なミクロ組織を有するとき、従来に比べて高効率の回転機を構成することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるセグメントフェライト磁石及びリングフェライト磁石は後添加方式あるいは前/後添加方式により作製することができる。
まず、後添加方式について説明する。仮焼後にAO・nFe2O3(原子比率)(ただし、AはSr及び/又はBaであり、n=5.0〜6.4)で示される主要成分組成になるように配合した混合原料を作製する。次いで順次、仮焼、粗砕、粗粉砕及び微粉砕を行い、空気透過法による平均粒径で0.3〜0.8μmの微粉を得る。微粉砕の平均粒径が0.3μm未満では焼結時に異常結晶粒成長を生じて磁気特性が大きく低下し、かつ成形性及び湿式成形法を採用した場合では脱水特性が大きく悪化する。平均粒径が0.8μm超では粗大な結晶粒が相対的に多くなり、iHc等が低下する。次に、湿式又は乾式の磁界中成形(無磁界で成形してもよい)を行うが、仮焼後から成形前までの製造工程でLaを含むR元素及びCoを所定量添加し、上記セグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石の最終主要成分組成に調整する。次いで、成形し、焼結後、所定寸法に加工し、後添加方式によるセグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石を得られる。工業生産上、Laを含むR元素及びCoの添加をバッチ方式の湿式又は乾式粉砕装置を用いて微粉砕時に行うことにより、粉砕バッチ毎に多様な主要成分組成のフェライト磁石製品材質に対応できるので実用性が高い。
前/後添加方式とは、上記セグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石の全R含有量又は全Co含有量に対し、仮焼前にLaを含むR元素及び/又はCoを0原子%超で90原子%以下の割合で添加し、均一混合後、仮焼する。次いで仮焼後から成形前までの製造工程でLaを含むR元素及び/又はCoの残量を添加し、上記セグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石の主要成分組成(全R含有量及び/又は全Co含有量)に調整後、以降は順次成形、焼結及び加工する方式である。
なお、前添加方式とは、仮焼前の混合時において上記セグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石の主要成分組成に対応する混合物組成に調整し、仮焼し、次いで順次粗砕、粗粉砕、微粉砕、成形及び焼結する方式である。
前/後添加方式によるフェライト磁石は、前添加方式及び後添加方式のフェライト磁石のほぼ中間的なミクロ組織を呈する。前/後添加方式において、仮焼後の粉砕物(特に微粉砕時)に添加するR元素が全R含有量の10原子%以上でかつ100原子%未満のときにHk/iHc及びBrを高めることができる。又前/後添加方式において、仮焼後の粉砕物(特に微粉砕時)に添加するCoが全Co含有量の10原子%以上でかつ100原子%未満のときにHk/iHc及びBrを高めることができる。
後添加方式又は前/後添加方式の採用により、モル比nが5.0未満になることが懸念される。これは仮焼後から成形前までの製造工程で添加するR元素によりモル比nが顕著に低下するためである。モル比nを5.0〜6.4に調整するために、仮焼後から成形前までの製造工程で、上記フェライト磁石の全鉄含有量に対し0.1〜11重量%の鉄に相当する鉄化合物を添加することが好ましい。鉄の添加量が0.1重量%未満ではモル比nを増大することが困難であり、11原子%超では成形体の配向性が低下し、Hk/iHc及びBrが劣化する。前記鉄化合物として磁性鉄化合物が特に好ましい。
【0009】
後添加方式又は前/後添加方式によるセグメントフェライト磁石及びリングフェライト磁石は、焼結段階において、仮焼後から成形前までの製造工程で添加されたLaを含むR元素及び/又はCoがSr及び/又はBaフェライト結晶粒内に拡散し、置換していく。しかし、Sr及び/又はBaフェライト結晶粒内に十分に拡散し、均一に置換するまでには至らない。このためLaを含むR元素及び/又はCoの濃度分布が不均一なフェライト焼結磁石の組織を呈する。即ち、Sr及び/又はBaフェライト結晶粒において、相対的に、La濃度及び/又はCo濃度が高い部分と、La濃度及び/又はCo濃度が低い部分とを有することによりHk/iHc及びBrが高められる。Hk/iHc及びBrを高められるメカニズムは明らかではないが、La及びCoの置換が不十分かあるいは全く置換されないマグネトプランバイト型フェライト結晶粒部分によるiHcの低下分を、La及びCoにより十分に置換されたマグネトプランバイト型フェライト結晶粒部分が補い、総合的に前添加方式によるフェライト磁石と略同等のiHcを有し、かつHk/iHc及びBrが向上するものと判断される。
【0010】
本発明に用いるセグメントフェライト磁石及びリングフェライト磁石の飽和磁化を高めるために、Rに占めるLaの比率を、好ましくは50原子%以上、より好ましくは70原子%以上、特に好ましくは99原子%以上とすることがよい。理想的には不可避的不純物以外はRがLaからなるのがよい。従って、例えば、R元素供給原料として、Laを50原子%以上含み、残部がPr,Nd及びCeの少なくとも1種並びに不可避的不純物からなる安価なミッシュメタル(混合希土類金属)の酸化物が実用性が高い。その場合のRはLaとNd,Pr及びCeの少なくとも1種と不可避的不純物とから構成され、より好ましいのはRがLa,Pr及び不可避的不純物から構成される場合である。
【0011】
本発明に用いるセグメントフェライト磁石及びリングフェライト磁石のモル比nは5.0〜6.4とする必要があり、5.5〜6.3がより好ましく、5.7〜6.2が特に好ましい。nが6.4超ではマグネトプランバイト相以外の異相(α−Fe2O3等)の存在によりiHc等が大きく低下し、nが5.0未満ではBrが大きく低下する。
xは0.01〜0.4が好ましく、0.1〜0.3がより好ましく、0.15〜0.25が特に好ましい。xが0.01未満では添加効果が認められず、0.4超では逆に磁気特性が低下する。
yとxとの間には、電荷補償のために理想的には y=x/(2.0n) の関係が成立する必要があるが、yがx/(2.6n)以上、x/(1.6n)以下であれば高いBr及び高いHk/iHcを具備するフェライト磁石を作製可能である。なお、yがx/(2.0n)からずれた場合、Fe2+を含む場合があるが何ら支障はない。典型的な例では、yの好ましい範囲は0.04以下であり、特に0.005〜0.03である。
又、5.6≦n≦6.2,0.15<x≦0.3及び1.0<x/2ny≦1.3 というR過剰の主要成分組成を選択し、かつCaO含有量が0.5〜1.5重量%及びSiO2含有量が0.25〜0.55重量%のときに高いBr及び高いHk/iHcを有することができる。
【0012】
緻密なセグメント又はリングのフェライト焼結磁石を得るために焼結性を制御する添加物としてSiO2及びCaO(CaCO3)を所定量含有することが実用上重要である。
SiO2は焼結時の結晶粒成長を抑制する添加物であり、前記フェライト焼結磁石の総重量を100重量%としてSiO2含有量を0.05〜0.55重量%とすることが好ましく、0.25〜0.55重量がより好ましい。SiO2含有量が0.05重量%未満では焼結時に結晶粒成長が過度に進行し保磁力が大きく低下し、0.55重量%超では結晶粒成長が過度に抑制され結晶粒成長による配向度の改善が不十分となりBrが大きく低下する。
CaOは結晶粒成長を促進する添加物であり、前記フェライト焼結磁石の総重量を100重量%としてCaO含有量は0.35〜1.5重量%が好ましく、0.4〜1.5重量%がより好ましく、0.5〜1.5重量%が特に好ましい。CaO含有量が1.5重量%超では焼結時に結晶粒成長が過度に進行し、保磁力が大きく低下し、0.35重量%未満では結晶粒成長が過度に抑制され、結晶粒成長による配向度の改善が不十分となりBrが大きく低下する。
【0013】
本発明に用いるセグメント又はリングのフェライト焼結磁石のBrを高めるために、湿式微粉砕したスラリーを濃縮後あるいは乾燥し、解砕後、混練し、次いで順次湿式磁界中成形、焼結及び加工する製造工程を採用することが好ましい。あるいはフェライト微粉末がスラリー中で凝集しないように、微粉砕スラリーを乾燥後水を足すか又は濃縮して高濃度のスラリー状態にし、続いて分散剤を所定量添加し、混練することにより、凝集が解かれ、湿式磁界中成形した場合に成形体の配向性が顕著に向上する。分散剤は界面活性剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸石鹸又は高級脂肪酸エステルが好ましく、アニオン系界面活性剤の1種であるポリカルボン酸系分散剤がより好ましく、ポリカルボン酸アンモニウム塩が特に好ましい。分散剤の添加量は、フェライト微粉末の総重量に対し、0.2〜2重量%が好ましい。分散剤の添加量が0.2重量%未満ではBrが向上できず、2重量%超ではBrが逆に低下する。
混練時において上記フェライト磁石の主要成分組成になるようにLaを含むR元素及び/又はCoを所定量追添加し、次いで順次成形、焼結及び加工を行えば後添加方式又は前/後添加方式によるセグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石を作製することができる。
【0014】
本発明に用いるセグメントフェライト磁石及びリングフェライト磁石用原料となるR元素の化合物として、例えばLa2O3等の酸化物,La(OH)3(水酸化物),La2(CO3)3・8H2O(炭酸塩の水和物)、La(CH3CO2)3・1.5H2O及びLa2(C2O4)3・10H2O(有機酸塩)の少なくとも1種が挙げられる。又、La,Nd,Pr,Ce及び不可避的不純物からなる混合希土類の酸化物、水酸化物、炭酸塩及び有機酸塩の少なくとも1種が挙げられる。
又本発明に用いるセグメントフェライト磁石及びリングフェライト磁石用原料となるCo化合物として、例えばCo3O4又はCoO等の酸化物,Co(OH)2,Co3O4・m1H2O(m1は正の値)等の水酸化物,CoCO3等の炭酸塩及びm2CoCO3・m3Co(OH)2・ m4H2O(m2,m3及びm4は正の値) 等の塩基性炭酸コバルトの少なくとも1種が挙げられる。
又本発明に用いるセグメントフェライト磁石及びリングフェライト磁石用原料となる鉄化合物として、例えばFe3O4,α−Fe2O3,FeO又はγ−Fe2O3等の酸化物,Fe(OH)2,Fe(OH)3及びFeO(OH)等の水酸化物の少なくとも1種が挙げられ、特にFe3O4に代表される磁性鉄化合物が好ましい。
【0015】
本発明に用いるセグメントフェライト磁石はアーク形のものが実用性が高く、図2を例示して説明すると、図2中の矢印で示す異方性付与方向(ラジアル方向)の最大厚みtmが2.5〜20mm、アーク角度θが20〜180°のものが好ましい。tmが2.5mm未満では界磁用アークセグメントフェライト磁石とエアギャップを介して対向するアーマチュア(回転子)又は固定子からの減磁界を受けてアークセグメントフェライト磁石が減磁する問題を招く。tmが20mm超のものは昨今の薄肉化小型化、軽量化のニーズに適合しない。アーク角度θは内周面の磁極部の円弧が形成する中心角の平均値で定義する。θが20°未満では実用性に乏しく、θ=180°が理想的な2極の回転機を作製する上限値である。高効率の回転機を実現するために、アークセグメントフェライト磁石は、図2の略半径方向に異方性を付与したラジアル異方性、あるいは平行異方性、さらにはラジアル異方性と平行異方性との中間的なものが実用性に富んでいる。特にθ=170〜180°の広角度アークセグメントフェライト磁石を作製するための成形条件を図2により説明すると、成形体2’の磁界中圧縮成形は矢印のラジアル印加磁界方向と圧縮成形方向とがほぼ一致する縦磁場の湿式成形によるのが実用性に富んでいる。成形効率を高め、さらには成形体亀裂の発生を抑えるために成形体2’の両端部外周側に平面部2a,2aが設けてある。又前記縦磁場の湿式成形による成形体2’は相対的に中央部の密度が高くなり両端部の密度が低くなる傾向にあるので中央部の収縮率が小さくなり両端部の収縮率が大きくなる。収縮率は [(成形体寸法)−(焼結体寸法)]/(成形体寸法)×100(%) で定義される。この収縮率差を反映して焼結上がりの広角度アークセグメントは中央部の厚みが厚くなり、両端部の厚みが薄くなる。この焼結体の焼結肌がなくなるまで必要最小量の加工を施したとき、図2に示すように相対的に中央部の厚みが厚く、両端部の厚みが薄い広角度アークセグメントフェライト磁石2を得られる。広角度アークセグメントフェライト磁石は2極のブラシモータに有用である。
アークセグメントフェライト磁石の軸方向長さLmは10〜150mmが好ましく、50〜100mmがより好ましい。Lmが10mm未満では所定の回転機効率を得るために複数個のアークセグメントフェライト磁石を接着する作業が必要になり、Lmが150mm超のものは実用性に乏しい。又本発明に用いるアークセグメントフェライト磁石は断面が弓形のものに限定されず、かまぼこ形、凸部を有する不定形のものを包含する。即ち、エアギャップ側に凸部を有する断面形状のセグメントフェライト磁石をいう。
【0016】
本発明にはブロック形状のセグメントフェライト磁石を用いてもよい。ブロック形状の場合、異方性付与方向(縦方向)の長さが2.5〜20mm、横方向の長さが10〜50mm、縦及び横方向に直角な幅方向の長さが10〜150mmのものが昨今の回転機の小型化、軽量化及び高効率のニーズを満足し、好ましい。
【0017】
本発明に用いるラジアル異方性又は極異方性を有するリングフェライト磁石は内径(Di)が10〜100mmであり、かつ内径(Di)と外径(Do)との比率;(Di/Do)が0.75〜0.85 のものが好ましい。工業生産上、内径(Di)が10mm未満のものは成形時の印加磁界強度の顕著な低下により磁気特性が大きく低下し、内径(Di)が100mm超では昨今の磁石応用製品の小型化、軽量化のニーズに適合しない。(Di/Do)が0.75未満では内径側部分と外径側部分の配向度の差による収縮率差が大きくなり、焼結すると割れを発生するという問題がある。又(Di/Do)が0.85を超えると作製したラジアル異方性又は極異方性を有するリングフェライト磁石及びシャフト(回転軸)を射出成型用金型のキャビティに配置し、次いで溶融状態の熱可塑性樹脂(PBT等)をキャビティに射出充填後溶融樹脂を固化し、キャビティにインサートされている前記リングフェライト磁石及びシャフトを一体的に抱持固定し、回転子を構成する場合に、前記溶融樹脂の射出充填圧力により前記リングフェライト磁石が割れるという問題を生じる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
後添加方式によるセグメントフェライト磁石を界磁用磁石に用いた直流モータの実施例を以下に説明する
SrCO3粉末(不純物としてBa,Caを含む)及びα−Fe2O3粉末を用いて、
仮焼後に原子比率で SrO・6Fe2O3 になるように湿式混合後、大気中、1250℃で2時間仮焼した。次にローラーミルで粗粉砕し粗粉とした。次にアトライタにより湿式微粉砕を行い、平均粒径(空気透過法)0.7μmの微粉砕粉を含むスラリーを得た。微粉砕初期にLa2O3粉末,Co3O4粉末及びFe3O4(マグネタイト)粉末を微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてそれぞれ2.5重量%,1.2重量%及び8.0重量%添加した。又微粉砕初期に焼結助剤として、SrCO3粉末,CaCO3粉末及びSiO2粉末を微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてそれぞれ0.1重量%,1.0重量%及び0.3重量%添加した。この微粉砕スラリーにより、平行磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm2)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体を得た。成形体を1210℃で2時間焼結し、下記の主要成分組成を有する後添加方式によるアークセグメントフェライト焼結磁石素材を得た。X線回折によりこの焼結磁石素材はマグネトプランバイト型結晶構造を有することが確認された。
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.8、y=x/2n
次に、前記焼結磁石素材を加工し、得られたアークセグメント磁石8を用いて図1に示す2極の直流モータ10を作製した。モータ10において、1はヨークを兼ねた強磁性材料(SS400等)からなる略円筒状支持体であり、内周側にアークセグメント磁石8が接着されて固定子側が構成されている。回転子(電機子)3はエアギャップ7を介してアークセグメント磁石8の磁極と対向し、シャフト(回転軸)6がブラケットに設けた軸受4により軸支されている。5はブラシである。
図1のA−A線矢視断面図を図3に示す。図3において図1と同一数字部分は図1と同一の構成部分を示す。直流モータ10の外半径rm=37mmである。アークセグメント磁石8の外半径ro=33.3mm、内半径ri=28.1mm、紙面に垂直方向の長さLm=48mm、厚みtm=5.2mm、θ=120°とした。又エアギャップ7の間隔を約0.3mmとして、所定条件で直流モータ10を駆動し、最高効率を測定したところ、90%超の良好な最高効率が得られた。
(実施例2)
前/後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石を用いた直流モータの実施例を以下に説明する。
SrCO3粉末(不純物としてBa,Caを含む),α−Fe2O3粉末,La2O3粉末及びCo3O4粉末を用いて、仮焼後に原子比率で、
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.075、n=5.9、y=x/2n
で示される主要成分組成になるように均一混合後、大気中、1250℃で2時間仮焼した。仮焼粉を粗砕し、粗粉砕後、アトライタで湿式微粉砕し平均粒径0.7μmの微粉砕粉を得た。微粉砕初期に、x=0.15,n=5.8,y=x/2n の主要成分組成になるように所定量のLa2O3粉末,Co3O4粉末及びFe3O4粉末をそれぞれ添加した。又微粉砕初期に、焼結助剤として、SrCO3粉末,CaCO3粉末及びSiO2粉末を微粉砕に投入した粗粉重量対比でそれぞれ0.1重量%,1.0重量%及び0.3重量%添加した。以降は前記微粉砕スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして下記の主要成分組成を有する前/後添加方式によるアークセグメントフェライト焼結磁石素材を作製した。X線回折によりこの焼結磁石素材はマグネトプランバイト型結晶構造を有することが確認された。
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.8,y=x/2n
前記焼結磁石素材を実施例1のアークセグメント磁石8と同一寸法に加工し、実施例1のアークセグメント磁石8に替えて直流モータ10に組み込み、最高効率を測定した。最高効率は90%超であり良好であったが、実施例1に比べて0.2%低かった。
(比較例1)
前添加方式によるアークセグメントフェライト磁石を用いた直流モータの比較例を以下に説明する
SrCO3粉末(不純物としてBa,Caを含む),α−Fe2O3粉末,La2O3粉末及びCo3O4粉末を用いて、仮焼後に原子比率で、
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.9,y=x/2n
で示される主要成分組成になるように均一混合後、大気中、1250℃で2時間仮焼した。仮焼粉を粗砕し、粗粉砕後、アトライタで湿式微粉砕し平均粒径0.7μmの微粉砕粉を得た。以降は実施例1と同様にして前添加方式によるアークセグメントフェライト磁石を作製し、実施例1のアークセグメント磁石8に替えて直流モータ10に組み込み、最高効率を測定した。実施例1に比べて最高効率は0.8%低かった。
【0019】
実施例1,2の最高効率が比較例1の最高効率よりも高いのは、界磁用のアークセグメントフェライト磁石の減磁曲線を反映した結果である。
図11の実線は、実施例1の直流モータ10に組み込んだ後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石の20℃、−40℃における減磁曲線(20℃のBr=0.441T(4.41kG),HK/iHc=95.5%及びiHc=358.1kA/m(4.50kOe))を示す。又図11の点線は比較例1の直流モータ10に組み込んだ前添加方式によるアークセグメントフェライト磁石の20℃、−40℃における減磁曲線(20℃のBr=0.433T(4.33kG),Hk/iHc=90.0%,iHc=366.1kA/m(4.60kOe))を示す。実施例1のアークセグメントフェライト磁石は比較例1のものに比べてiHcはやや低いが、Hk/iHc及びBrが高い分直流モータ10の最高効率が向上している。
実施例2の直流モータ10に装着した前/後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石の20℃及び−40℃の減磁曲線は図11の実線と点線とで示す両減磁曲線のほぼ中間のものであった(図示省略)。
【0020】
実施例1の後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石から所定サイズの試料を切り出し、試料のc面が表面になるようにしてラップ研磨後、さらに鏡面研磨した。次いで、結晶粒界を露呈するために塩酸でエッチング後、水洗し、乾燥した。次いで前記試料を電子プローブマイクロアナライザ(JEOL:日本電子製のEPMA、JXA-8900R型)にセットし、c面の代表的な断面組織写真を撮影した。
実施例1のアークセグメントフェライト磁石の断面組織写真を図5に示す。又図5に対応する視野におけるLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布を測定するためにEPMAにより下記の条件で面分析を行った。分光結晶は、La及びCoの分析では高感度型ふっ化リチウム(LiF)を、Srの分析ではペンタエリスリトール(PET,C(CH2OH)4)を、Feの分析ではふっ化リチウム(LiF)を用いた。検出器はキセノン封入型を用いた。倍率5,000倍、加速電圧15kV,照射電流:0.3μA,プローブ径:約2μm,画素(面分析範囲の基本単位)サイズ:縦0.04μm×横0.04μmの矩形,1画素あたりの計数時間30msec,計測画素数:縦(X)方向及び横(Y)方向がともに400画素である。面分析結果を図6に示す。図6の右側に、各元素のLevel、各LevelのArea%を示す。EPMAにより実施例1のアークセグメントフェライト磁石のc面をLa,Co,Fe及びSrについて各々面分析したとき、各検出器からLa, Co,Fe及びSrの各計数値が出力される。この調整された出力の最大値(Level,max)及び最小値(Level,min)並びに(Level,max)と(Level,min)とを等間隔で16分割したものが各元素のLevelである。全画素に対する各Levelの画素の占める面積比率がArea%である。La,Co,Fe及びSrの各々において、Levelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:( Level,max+ Level,min)/2 よりもLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLevelの部分を低濃度領域と定義する。この定義により、図6において、Laの低濃度領域はLevelが36.5以下の部分であり、Coの低濃度領域はLevelが82.5以下の部分である。図6では直径0.5μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が複数箇所存在していた。
なお、図5の走査型電子顕微鏡(SEM)による断面写真には試料作製時に導入された脱落部が認められるが、本発明者らは脱落部の影響を考慮し面分析結果を解析した。
【0021】
比較例1の前添加方式によるアークセグメントフェライト磁石から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1のアークセグメントフェライト磁石の場合と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。断面組織写真を図7に示す。また、図7に対応する視野におけるLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布を図8に示す。
図8より、比較例1の前添加方式によるアークセグメントフェライト磁石はLa,Co,Fe及びSrがほぼ均一に分布していることがわかる。
【0022】
実施例2の前/後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1のアークセグメントフェライト磁石の場合と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った。その結果、図6とほぼ同様に、直径0.3μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が存在することがわかった。
【0023】
実施例1及び比較例1のアークセグメントフェライト磁石から各々3mm×3mm×3mm(磁化方向)の立方体形状の試料を切り出し、次いで振動試料型磁力計(東英工業(株)製、VSM−3型)に両試料を順次セットし、500℃まで加熱後、2〜5℃/分の降温速度で冷却しつつ磁化M(emu/g)−温度T(℃)曲線を描いた。
実施例1のアークセグメントフェライト磁石の磁化−温度曲線を図9の下側に示す。又図9の上側にはその(dM/dT)−温度T曲線をとっている。図9より、実施例1のアークセグメントフェライト磁石は磁化Mの温度Tに対する変化率(dM/dT)−T 曲線が2つの極小点及び1つの極大点を有することがわかる。図9に例示するように、極小点P,R及び極大点Qに対応する磁化−温度曲線の接点P’,Q’及びR’から磁化−温度曲線の接線L1,L2及びL3を引いたとき、接線L1とL2との交点S2の温度を第2キュリー点(Tc2)、接線L3と磁化=0の横軸(温度T軸)との交点S1を第1キュリー点(Tc1)と定義する。実施例1のアークセグメントフェライト磁石は2つのTcを有しており、Tc1=453℃,Tc2=441℃であった。
比較例1のアークセグメントフェライト磁石の磁化−温度曲線を図10の下側に、図10の上側にはその(dM/dT)−温度T曲線をとっている。図10より、比較例1のアークセグメントフェライト磁石の(dM/dT)−T 曲線が1つの極小点のみを有することがわかる。この極小点に対応する磁化−温度曲線の位置を接点として磁化−温度曲線に接線を引き、接線と温度T軸との交点を読取り、求めたTc=443℃であった。
【0024】
実施例2のアークセグメントフェライト磁石についても、実施例1のアークセグメントフェライト磁石の場合と同様にして磁化−温度曲線を描き評価した。その結果、実施例2のアークセグメントフェライト磁石は2つのキュリー点及び(dM/dT)−T曲線における2つの極小値及び1つの極大値を有することが確認された。
【0025】
(実施例3)
実施例1で作製した微粉砕スラリーを用いて、ラジアル配向磁界を印加しつつ磁界中圧縮成形し、アークセグメント形状の成形体を得た。成形体を1210℃で2時間焼結し、後添加方式によるラジアル異方性を付与したアークセグメントフェライト磁石素材を得た。このフェライト磁石素材はほぼ下記の主要成分組成を有し、又X線回折の結果マグネトプランバイト型結晶構造を有することが確認された。
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.8,y=x/2n
次に、前記磁石素材を加工し、得られたアークセグメント磁石18を用いて図4に示す6極の直流モータ20を作製した。モータ20において、11はヨークを兼ねた強磁性材料(SS41)からなる略円筒状支持体であり、内周側にアークセグメント磁石18が接着されて固定子側を構成している。回転子(電機子)13はエアギャップ17を介してアークセグメント磁石18の磁極と対向し、16はシャフト(回転軸)である。
直流モータ20の外半径rm=36.6mmとした。アークセグメント磁石18の外半径ro=34.5mm、内半径ri=27.6mm、紙面に垂直方向の長さLm=46mm、厚みtm=6.9mm及びθ=50°とした。又エアギャップ7の間隔を約0.3mmとして、所定条件で直流モータ20を駆動したところ、90%超の良好な最高効率が得られた。
(実施例4)
実施例2で作製した微粉砕スラリーを用いた以外は、実施例3と同様にして前/後添加方式によるラジアル異方性を付与したアークセグメントフェライト磁石素材を作製した。このフェライト磁石はほぼ下記の主要成分組成を有し、又X線回折の結果マグネトプランバイト型結晶構造を有することが確認された。
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.8,y=x/2n
この前/後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石素材を実施例3のラジアル異方性を有するアークセグメントフェライト磁石と同一寸法に加工し、以降は実施例3と同様にして直流モータ20に組み込み、最高効率を測定した結果、最高効率は90%超で良好であったが、実施例3に比べて最高効率は0.3%低かった。
(比較例2)
比較例1で作製した微粉砕スラリーを用いた以外は、実施例3と同様にして、前添加方式によるラジアル異方性を付与した、下記の主要成分組成を有するアークセグメントフェライト磁石素材を得た。
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.9,y=x/2n
この前添加方式によるアークセグメントフェライト磁石素材を実施例3のラジアル異方性のアークセグメントフェライト磁石と同一寸法に加工し、以降は実施例3と同様にして直流モータ20に組み込み、最高効率を測定した。最高効率は実施例3に比べて1.3%低かった。
【0026】
次に、後添加方式及び前/後添加方式によるセグメントフェライト磁石を用いたブラシレスモータの実施例を説明する。
(実施例5)
実施例1で作製した微粉砕スラリーにより、795.8kA/m(10kOe)の平行磁界を印加しつつ圧縮成形し、アークセグメント形状の成形体を得た。成形体を1210℃で2時間焼結し、下記の主要成分組成を有する後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石素材を得た。この磁石素材はマグネトプランバイト型結晶構造を有していた。
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.8,y=x/2n
次に、前記磁石素材を加工し、得られたアークセグメントフェライト磁石61を用いて図12に示すブラシレスDCモータ70を作製した。モータ70において、75は固定子,65は固定子磁極,63は固定子コア,69はエアギャップ,60は回転子,68はシャフト(回転軸),62は強磁性材料(SS400)からなる回転子コア及び61a,61bが前記アークセグメントフェライト磁石である。
ブラシレスDCモータ70の最高効率はエアギャップの平均間隔が0.3mmで測定した。最高効率は下記式で定義した。
最高効率=回転数1500r.p.m.以下で評価した、
{(出力)/(入力)×100(%)}の最大値
入力(W)=固定子巻線64に通電される、印加電流I(A)×印加電圧(V)
出力(W)=トルク(kgf・cm)×回転数(r.p.m.)×0.01027
作製したブラシレスDCモータ70の最高効率は90%超であり良好であった。
(実施例6)
実施例2で作製した微粉砕スラリーを用いた以外は、実施例5と同様にして前/後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石素材を得た。このフェライト磁石素材はほぼ下記の主要成分組成を有し、又マグネトプランバイト型結晶構造を有していた。
(Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.8,y=x/2n
次に、実施例5のアークセグメントフェライト磁石と同一寸法に加工し、以降は実施例5と同様にしてブラシレスDCモータ70に組み込み、最高効率を測定した。最高効率は90%超で良好であったが、実施例5に比べて最高効率は0.2%低かった。
(比較例3)
比較例1で作製した微粉砕スラリーを用いた以外は、実施例5と同様にして前添加方式によるアークセグメントフェライト磁石素材を得た。このフェライト磁石素材はほぼ下記の主要成分組成を有していた。
(Sr1-xLax)O・n(Fe1-yCoy)2O3]
x=0.15,n=5.9,y=x/2n
次に、実施例5のアークセグメントフェライト磁石と同一寸法に加工し、以降は実施例5と同様にしてブラシレスDCモータ70に組み込み、最高効率を測定した。最高効率は実施例5に比べて1.1%低かった。
【0027】
粉砕時に追添加する磁性酸化鉄原料(Fe3O4粉末)及び非磁性酸化鉄原料(α−Fe2O3粉末)の効果を比較した実施例を以下に説明する。
(実施例7)
SrCO3粉末(不純物としてBa,Caを含む)及びα−Fe2O3粉末を用いて、仮焼後に原子比率で SrO・5.85Fe2O3 になるように湿式混合後、大気中、1300℃で2時間仮焼した。次にローラーミルで粗粉砕し粗粉とした。次にアトライターにより湿式微粉砕を行った。微粉砕初期に微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてLa2O3粉末及びCo3O4粉末の所定量、並びにFe3O4粉末を20重量%追添加し、最終主要成分組成が原子比率で (Sr0.8La0.2)O・n[(Fe1−yCoy)2O3],x=0.2,n=5.84,x/2ny=1.07(R過剰組成) になるように調整した。又微粉砕初期に焼結助剤として、CaCO3粉末及びSiO2粉末を微粉砕に投入した粗粉重量を基準にしてそれぞれ1.60重量%及び0.40重量%添加した。さらに微粉砕終了直前に、微粉砕初期に投入した粗粉重量に対し0.5重量%の分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)を添加し、平均粒径0.6μmの微粉砕粉を含、スラリー濃度(=(微粉重量)/[(微粉重量)+(水の重量)]×100(%))70重量%のスラリー(1)を作製した。又スラリー(1)を加熱してスラリー濃度を85重量%まで濃縮し、冷却後、その濃縮スラリーを混練しつつポリカルボン酸アンモニウム塩を0.1重量%添加し、混練後水を加えてスラリー濃度を70重量%に調整したスラリー(2)を作製した。又さらに、ポリカルボン酸アンモニウム塩の混練時の添加量を0.2重量%とした以外はスラリー(2)と同様にしてスラリー(3)を作製した。これらスラリー(1)〜(3)を用い、磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm2)の条件で平行磁界中で圧縮成形しアークセグメント形状の成形体を得た。成形体を大型の焼結炉(設定温度:1220℃)で2時間焼結し、後添加方式によるアークセグメントフェライト焼結磁石素材を得た。次いで作製した各アークセグメントフェライト磁石素材の室温(20℃)の磁気特性を測定した結果を図13に示す。得られた各アークセグメントフェライト磁石素材の密度は5.05〜5.06Mg/m3(g/cm3)であり、X線回折した結果いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。前記各アークセグメントフェライト磁石素材から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った結果、直径0.3〜0.7μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察され、又2つのTcを有することが確認された。
作製した前記焼結磁石素材うち、Br=0.451T(4.51kG),iHc=356.5kA/m(4.48kOe),Hk/iHc=96.0%のものを実施例1のアークセグメントフェライト磁石と同一形状に加工し、以降は実施例1と同様にして最高効率を測定したところ実施例1に比べて最高効率が0.5%向上した。
(実施例8)
微粉砕初期に追添加する酸化鉄原料としてFe3O4粉末に替えてα−Fe2O3粉末を用いた以外は実施例7と同様にして後添加方式によるアークセグメントフェライト磁石素材を作製し、磁気特性を測定した結果を図14に示す。又密度は5.00〜5.01Mg/m3(g/cm3)であり、X線回折の結果いずれもマグネトプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。作製した前記各アークセグメントフェライト磁石から所定サイズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った結果、直径0.4〜0.7μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察され、又2つのTcを有することが確認された。
作製した前記焼結磁石素材のうち、Br=0.446(4.46kG),iHc=354.1kA/m(4.45kOe),Hk/iHc=93.5%のものを実施例1のアークセグメントフェライト磁石と同一形状に加工し、以降は実施例1と同様にして最高効率を測定したところ実施例とほぼ同等の最高効率が得られた.。
【0028】
実施例7,8の代表的なアークセグメントフェライト磁石のc面を鏡面研磨し、研磨面を光学顕微鏡で観察し、断面写真を撮影した。断面写真を図14に示す。図14より、実施例7のアークセグメントフェライト磁石(Fe3O4追添加)の研磨面では1mm2あたりのボイド数(直径10μmの円が入るボイドを1個とカウント)が0個であったのに対し、実施例8のフェライト磁石(Fe2O3追添加)の研磨面では1mm2あたりのボイド数は10個であった。さらに実施例7,8の研磨面の視野を変えてそれぞれ10視野ずつのボイドの発生状況を観察した結果、実施例7のアークセグメントフェライト磁石(Fe3O4追添加)の研磨面では1mm2あたりのボイド数は0〜3個であったのに対し、実施例8のアークセグメントフェライト磁石(Fe2O3追添加)の研磨面では1mm2あたりのボイド数は8〜18個であった。従って、 Fe3O4を追添加した場合にはボイドの発生が少なくボイドの発生を6個/ mm2以下にでき、かつ図13に示すようにBr及びHk/iHcを顕著に向上できる結果回転機の最高効率を高められることがわかった。
【0029】
実施例7のアークセグメントフェライト磁石(後添加,x=0.2,n=5.84,x/2ny=1.07, 追添加Fe3O4:20重量%,CaO:0.90重量%,SiO2:0.40重量%)及び比較例1の前添加方式によるフェライト磁石をサンプリングし、それぞれのc軸に平行な断面組織においてマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)を測定し、(d/t)で定義するアスペクト比を求めた。まず各フェライト磁石の断面組織写真の1視野(倍率10,000倍)において各フェライト結晶粒の(d,t)値を60個分測定し、それらを平均した値(d1),(t1)及び(d1/t1)を求めた。同様にして合計5視野分の(d1,d2,d3,d4,d5),(t1,t2,t3,t4,t5)及び(d1/t1,d2/t2,d3/t3,d4/t4,d5/t5)を求めた、それら平均値の範囲を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
(実施例9)
微粉砕時に追添加するLa2O3粉末,Co3O4粉末及びFe3O4粉末の量を変えて、最終主要成分組成が原子比率で (Sr0.8La0.2)O・6[(Fe1−yCoy)2O3],x=0.2,x/2ny=1.16,1.26(R過剰組成)になるように調整した以外は実施例8と同様にして後添加によるアークセグメントフェライト磁石素材を作製し、以降は実施例7と同様にして最高効率を測定した。その結果、x/2ny=1.16では実施例8より最高効率が0.1%高かった。又、x/2ny=1.26では実施例8より最高効率が0.2%低かった。
又、実施例7〜9に関連した検討から、n=5.6〜6.2,x=0.2〜0.3及び1.0<x/2ny≦1.3の主要成分組成を有し、かつCaO含有量が0.6〜1.2重量%であり、SiO2含有量が0.30〜0.50重量%のときに、c軸に平行な断面組織におけるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペクト比(d/t)が2.5〜3.0になり、比較例1に比べて高効率の回転機を構成できることが確認された。
【0032】
(実施例10)
実施例8のスラリーを用いて外径/内径比率を変化させるとともにラジアル異方性及び極異方性を付与した成形体をそれぞれ作製した。次いで成形体を焼結したが内径寸法が小さい側で焼結体素材に割れが顕著に発生した。そのため、割れを発生しなかった焼結体素材を焼結肌が無くなるまで加工し、外径(Do)=30mm及び内径(Di)であり、(Di/Do)=0.75〜0.87の極異方性リングフェライト焼結磁石及びラジアル異方性リングフェライト焼結磁石を作製した。次いで、作製した前記極異方性リングフェライト焼結磁石及びラジアル異方性リングフェライト焼結磁石を順次シャフト(回転軸)とともに所定の射出成型用金型のキャビティに配置し、次いで溶融状態の熱可塑性樹脂(PBT)をキャビティに射出充填後溶融樹脂を固化し、キャビティにインサートされている前記リングフェライト磁石及びシャフトを一体的に抱持固定し、インナロータ型の回転子を作製したところ、(Di/Do)=0.86,0.87のものは割れを発生した。しかし、(Di/Do)=0.75〜0.85のものでは割れが発生せず、回転機に組み込むことができた。この回転機の最高効率はいずれも良好であった。
(実施例11)
実施例2のスラリーを用いた以外は実施例10と同様にして(Di/Do)=0.75〜0.87の極異方性リングフェライト焼結磁石及びラジアル異方性リングフェライト焼結磁石を作製し、インナロータ型の回転子を作製したところ、(Di/Do)=0.75〜0.85のものでは割れが発生せず、回転機に組み込むことができた。この回転機の最高効率は実施例10に比べて0.9〜1.4%低かった。
(比較例4)
比較例1のスラリーを用いた以外は実施例10と同様にして(Di/Do)=0.75〜0.87の極異方性リングフェライト焼結磁石及びラジアル異方性リングフェライト焼結磁石を作製し、インナロータ型の回転子を作製したところ、(Di/Do)=0.75〜0.85のものでは割れが発生せず回転機に組み込むことができたが、この回転機の最高効率は実施例10に比べて2.1〜2.9%低かった。
【0033】
上記実施例ではA=Srの場合を記載したが、A=(Sr+Ba)又はA=Baの場合でも同様の効果を得られることが確認された。
【0034】
上記実施例ではインナーロータ型の直流モータ又は同期モータの場合を記載したが、アウターロータ型の直流モータ又は同期モータの場合でも同様の効果を得られることがわかった。
又上記実施例はモータの場合を記載したが、発電機においても同様の効果を得ることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上記述の通り、本発明によれば、La及び/又はCoが不均一に分布し、さらにはボイドの発生率を低減した健全なミクロ組織を有するマグネトプランバイト型フェライト磁石を具備することにより、従来に比べて最高効率を高めた高性能の回転機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転機の一例を示す要部断面図である。
【図2】本発明に有用な広角度アークセグメントフェライト磁石の一例を示す斜視図である。
【図3】図1の回転機の矢視断面図である。
【図4】本発明の他の回転機を示す要部断面図である。
【図5】本発明に用いるセラミック材料の断面組織の一例を示す図である。
【図6】図5に対応するLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布の一例を示す図である。
【図7】比較例のセラミック材料の断面組織を示す図である。
【図8】図7に対応するLa,Co,Fe及びSrの相対濃度分布の一例を示す図である。
【図9】本発明に用いるセグメントフェライト磁石の代表的な磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図10】比較例のセグメントフェライト磁石の磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図11】4πI−H減磁曲線を示す図である。
【図12】本発明の同期モータの一例を示す要部断面図である。
【図13】本発明に用いるアークセグメントフェライト磁石の磁気特性の一例を示す図である。
【図14】本発明に用いるアークセグメントフェライト磁石の光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1,11 ヨーク、2,8,18 セグメントフェライト磁石、
10,20,70 回転機。
Claims (9)
- セグメントフェライト磁石を具備する回転機であって、前記セグメントフェライト磁石は、
(A1−xRx)O・n[(Fe1−yCoy)2O3](原子比率)
(ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.0≦n≦6.4
0.01≦x≦0.4,及び
0.005≦y≦0.04
を満たす数字である。)により表される主要成分組成及び実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有するフェライト磁石であり、EPMAにより前記セグメントフェライト磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoLevelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+ Level,min)/2 よりもLa又はCoLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCoLevelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在していることを特徴とする回転機。 - 前記セグメントフェライト磁石のボイドの発生率が6個/mm2以下である請求項1に記載の回転機。
- 前記セグメントフェライト磁石の磁化M(単位emu/g )−温度T(単位℃)曲線が複数のキュリー点(Tc)及び微分値(dM/dT)の極小値を有する請求項1又は2に記載の回転機。
- 前記セグメントフェライト磁石を用いて構成した回転機の界磁磁極数が2〜36極である請求項1乃至3のいずれかに記載の回転機。
- セグメントフェライト磁石を具備する回転機であって、前記セグメントフェライト磁石は、
(A1−xRx)O・n[(Fe1−yCoy)2O3](原子比率)
(ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.6≦n≦6.2,
0.15<x≦0.3,及び
1.0<x/2ny≦1.3
を満たす数字である。)により表される主要成分組成及びマグネトプランバイト型結晶構造を有し、CaO含有量が0.5〜1.5重量%であり、SiO2含有量が0.25〜0.55重量%であり、かつc軸に平行な断面組織におけるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペクト比(d/t)が2.5〜3.0のフェライト結晶粒から実質的になる焼結磁石であることを特徴とする回転機。 - 前記セグメントフェライト磁石のボイドの発生率が6個/mm2以下である請求項5に記載の回転機。
- 前記セグメントフェライト磁石の磁化M(単位emu/g )−温度T(単位℃)曲線が複数のキュリー点(Tc)及び微分値(dM/dT)の極小値を有する請求項5又は6に記載の回転機。
- ラジアル異方性又は極異方性を付与したリングフェライト磁石を具備する回転機であって、
前記リングフェライト磁石は、
(A1−xRx)O・n[(Fe1−yCoy)2O3](原子比率)
(ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.0≦n≦6.4
0.01≦x≦0.4,及び
0.005≦y≦0.04
を満たす数字である。)により表される主要成分組成及び実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有する焼結磁石であり、EPMAにより前記焼結磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoLevelの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+ Level,min)/2よりもLa又はCoLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCoLevelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在しているとともに、ボイドの発生率が6個/mm2以下であることを特徴とする回転機。 - 前記リングフェライト磁石は、
(A1−xRx)O・n[(Fe1−yCoy)2O3](原子比率)
(ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件:
5.6≦n≦6.2,
0.15<x≦0.3,及び
1.0<x/2ny≦1.3
を満たす数字である。)により表される主要成分組成及びマグネトプランバイト型結晶構造を有し、CaO含有量が0.5〜1.5重量%であり、SiO2含有量が0.25〜0.55重量%であり、かつc軸に平行な断面組織におけるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペクト比(d/t)が2.5〜3.0のフェライト結晶粒から実質的になる焼結磁石である請求項8に記載の回転機。
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