JP2001069728A - 回転機 - Google Patents

回転機

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JP2001069728A JP2000190009A JP2000190009A JP2001069728A JP 2001069728 A JP2001069728 A JP 2001069728A JP 2000190009 A JP2000190009 A JP 2000190009A JP 2000190009 A JP2000190009 A JP 2000190009A JP 2001069728 A JP2001069728 A JP 2001069728A
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伸之 平井
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安伸 緒方
Yutaka Kubota
裕 久保田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来に比べてLa及び/又はCoを不均一に
分布させ、従来に比べて高いBr及び高いHk/iHcを有する
セグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石を
具備し、効率を向上した高性能の回転機を提供する。 【解決手段】 セグメントフェライト磁石を具備する回
転機であって、前記セグメントフェライト磁石は、(A
1−x)O・n[(Fe1−yCo )](原
子比率)(ただし、AはSr及び/又はBaであり、R
はYを含む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必
ず含み、x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.0≦n
≦6.4,0.01≦x≦0.4,及び0.005≦y≦0.04を満たす
数字である。)により表される主要成分組成及び実質的
にマグネトプランバイト型結晶構造を有し、かつLa又
はCoの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入
る範囲で存在していることを特徴とする回転機。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は実質的にマグネトプ
ランバイト型結晶構造を有し、かつ従来に比べてLa及
び/又はCoを不均一に分布させ、さらにはボイドを低
減した健全なミクロ組織を形成したことにより従来に比
べて高い残留磁束密度Br及び高い角形比Hk/iHcを有する
セグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石を
具備し、効率を向上した高性能の回転機に関する。
【0002】
【従来の技術】フェライト磁石は、モータ、発電機等の
回転機を含む種々の用途に使用されている。最近、自動
車用回転機分野では小型・軽量化を目的とし、電気機器
用回転機分野では高効率化を目的としてより高い磁気特
性を有するフェライト磁石が求められている。従来の高
性能フェライト磁石は以下のように製造されていた。例
えば、酸化鉄とSr又はBaの炭酸塩とを混合後、仮焼
してフェライト化する。次に、仮焼物を粗粉砕し、次い
で微粉砕する。微粉砕時に焼結性を制御する添加物とし
てSiO ,SrCO及びCaCO,さらに残留磁束密度Br及
び固有保磁力iHcを制御する添加物としてAlOあるい
はCrO等を所定量添加し、所望の平均粒径まで微粉
砕する。次いで、前記微粉を用いて配向磁界を印加しつ
つ圧縮成形し、焼結する。その後所定寸法に加工してフ
ェライト磁石製品とする。
【0003】界磁用セグメントフェライト磁石の高性能
化の手段は以下の5つに大きく分類される。第1の手段
は微粒化である。フェライト磁石の焼結体のc面(実用
上最も高いBrの得られる磁気異方性付与方向に対し直角
な面と定義する)の結晶粒径が、マグネトプランバイト
型フェライト磁石の臨界単磁区粒子径(約0.9μm)に
近いほどiHcは大きくなる。よって、焼結時の結晶粒成
長を見込んで、微粉砕の平均粒径を例えば0.7μm以下
に微粒化すればよい。しかし、この方法によると、微粒
化するほど成形性及び湿式成形では脱水特性が悪くな
り、工業生産効率が落ちるという問題を有する。第2の
手段は焼結体のc面の結晶粒径分布を約0.9μm近傍の
狭い分布にすることである。0.9μmより大きな結晶粒
も小さな結晶粒もiHcの低下を招くからである。このた
めの具体的な手段は微粉砕粉の粒径分布を改善すること
であるが、工業生産上ボールミル又はアトライターなど
の既存の粉砕機を用いざるを得ないので微粉砕粉の粒径
分布の改善は自ずと制限される。次に、近年、化学的沈
殿法により狭い粒径分布に調整したフェライト微粒子を
用いて高性能フェライト磁石を作製する試みがなされて
いるが、実用化には至っていない。第3の手段は磁気異
方性化度を左右するフェライト磁石の配向度を向上する
ことであり、具体的には成形体の配向度の向上及び焼結
による配向度の向上がある。界面活性剤を微粉砕スラリ
ーに添加してスラリー中のフェライト微粒子の分散性を
改善するか、あるいは配向磁界強度を増大して成形体の
配向度を向上する方法が考えられる。あるいは仮焼時の
フェライト化反応の促進及び/又は成形体の緻密な焼結
に寄与する添加物(SiO,CaCO等)を所定量添加し
て焼結体の配向度を向上することが考えられる。第4の
手段は焼結体の密度を向上することである。Srフェラ
イト磁石の理論密度は5.15Mg/m(g/cm)である。実
用に供されているSrフェライト磁石の密度は約4.9〜
5.0Mg/m(g/cm)であり、対理論密度比で95〜97%
に相当する。高密度化すればBrが向上するが、前記密度
範囲を超えてさらに高密度化するにはHIP等の特殊な高
密度化手段が必要である。しかし、このような特殊なプ
ロセスの導入は製造原価を増大させる。第5の手段はマ
グネトプランバイト型フェライト磁石を構成する主相の
フェライト化合物(マグネトプランバイト相)自体の飽
和磁化σsあるいは結晶磁気異方性定数を向上すること
である。σsが向上すればBrが向上し、結晶磁気異方性
定数が向上すれば保磁力Hc,iHcが向上することが期待さ
れる。近年、マグネトプランバイト型フェライト磁石よ
り大きなσsを有するW型フェライト磁石の開発が行わ
れているが、雰囲気制御の困難さのため実用化には至っ
ていない。次に、特開平9-115715号公報には、A1−xR
(Fe12−yM)O19、(AはSr,Ba,Ca及
びPbの少なくとも1種であり、RはY及びBiを含む
希土類元素の少なくとも1種であってLaを必ず含み、
MはZn及び/又はCdであり、モル比で、0.04≦x≦
0.45,0.04≦y≦0.45,0.7≦z≦1.2 で表される主要
成分及び六方晶マグネトプランバイト型フェライトの主
相を有するフェライト磁石が開示されている。しかし、
本発明者らの検討によれば、このフェライト磁石では19
9.0kA/m(2.5kOe)超の高いiHcを実現困難なことがわかっ
た。次に、国際公開番号:WO98/38654には、Sr,B
a,Ca及びPbから選択される少なくとも1種であっ
てSrを必ず含むものをAとし、Y及びBiを含む希土
類元素の少なくとも1種であってLaを必ず含むものを
Rとし、CoであるかCo及びZnをMとしたとき、
A,R,Fe及びMそれぞれの金属元素の総計の構成比
率が、全金属元素量に対し、A:1〜13原子%、R:0.
05〜10原子%、Fe:80〜95原子%、M:0.1〜5原子
%である主要成分組成を有するフェライト磁石が開示さ
れている。このフェライト磁石は従来に比べて高いBr及
びiHcを有する高性能フェライト磁石であり、各種磁石応
用製品分野へ採用されつつある。しかし、本発明者らの
検討によれば、 WO98/38654に記載の製造条件に従い
作製したフェライト磁石はLa置換量xが0.15超で角形
比Hk/iHcが顕著に劣化し、高効率の要求される回転機等
の要求仕様を十分満足できない場合を発生した。Hkは4
πI(磁化の強さ)−H(磁界の強さ)曲線の第2象限
において、4πI値が0.95Brになる位置のH値であり、
減磁曲線の矩形性の尺度である。Hkを4πI−H曲線の
iHcで除した値を角形比(Hk/iHc)と定義する。次に、国
際公開番号:WO99/16087には、A(AはSr,Ba又は
Ca),Co及びR[Rは希土類元素(Yを含む)及び
Biから選択される少なくとも1種を表す]を含有する
六方晶フェライトの主相を有する焼結磁石であって、少
なくとも2つの異なるキュリー温度を有し、この2つの
キュリー温度は400〜480℃の範囲に存在し、かつこれら
の差の絶対値が5℃以上である焼結磁石を開示してい
る。又この六方晶フェライトの主相を有する焼結磁石は
その構成元素の一部又は全部を、少なくともSr,Ba
又はCaを含有する六方晶フェライトを主相とする粒子
に添加し、その後、成形し、本焼成を行うことにより製
造され、角形比Hk/iHcを顕著に高めたことが記載されて
いる。しかし、WO99/16087には高い角形比Hk/iHcを実現
するための好適なミクロ組織を推測する記述があるのみ
であり、特に置換量x=0.2〜0.3において高いHk/iHc及
び高いBrを得られるミクロ組織について何ら解明されて
いなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明が解決
しようとする課題は、実質的にマグネトプランバイト型
結晶構造を有し、かつ従来に比べてLa及び/又はCo
を不均一に分布させ、さらにはボイドを低減した健全な
ミクロ組織を形成したことにより従来に比べて高いBr及
び高いHk/iHcを有するセグメントフェライト磁石又はリ
ングフェライト磁石を具備し、効率を向上した高性能の
回転機を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明の回転機はセグメントフェライト磁石を具備し、前記
セグメントフェライト磁石は、 (A1−x)O・n[(Fe1−yCo)
(原子比率) (ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含
む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、
x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.0≦n≦6.4 0.01≦x≦0.4,及び 0.005≦y≦0.04 を満たす数字である。)により表される主要成分組成及
び実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有するフ
ェライト磁石であり、EPMAにより前記セグメントフェラ
イト磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数
されたLa又はCoLevelの最大値(Level,max)と最小
値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+ L
evel,min)/2 よりもLa又はCoLevelの高い部分
を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCo
Levelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はC
oの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範
囲で存在していることを特徴とする。前記セグメントフ
ェライト磁石のボイドの発生率が6個/mm以下のとき
に従来に比べて高効率の回転機を構成することができ
る。又前記セグメントフェライト磁石の磁化M(単位emu
/g )−温度T(単位℃)曲線は複数のキュリー点(Tc)
及び微分値(dM/dT)の極小値を有する。又前記セグメ
ントフェライト磁石を用いて構成した回転機の界磁磁極
数が2〜36極、より好ましくは4〜24極、特に好ましく
は4〜16極の場合に高効率で実用性に富んだ回転機を構
成することができる。
【0006】又本発明の回転機はセグメントフェライト
磁石を具備し、前記セグメントフェライト磁石は、 (A1−x)O・n[(Fe1−yCo)
(原子比率) (ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含
む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、
x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.6≦n≦6.2, 0.15<x≦0.3,及び 1.0<x/2ny≦1.3 を満たす数字である。)により表される主要成分組成及
びマグネトプランバイト型結晶構造を有し、CaO含有量
が0.5〜1.5重量%であり、SiO含有量が0.25〜0.55重
量%であり、かつc軸に平行な断面組織におけるマグネ
トプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径
(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペ
クト比(d/t)が2.5〜3.0のフェライト結晶粒から実
質的になることを特徴とする。高効率の回転機を構成す
るためにアスペクト比(d/t)は2.6〜2.9がより好ま
しく、2.65〜2.85が特に好ましい。又前記セグメントフ
ェライト焼結磁石のボイドの発生率が6個/mm以下と
いう健全なミクロ組織を有するとき、従来に比べて高効
率の回転機を構成することができる。
【0007】又本発明の回転機はラジアル異方性又は極
異方性を付与したリングフェライト磁石を具備し、前記
リングフェライト磁石は、 (A1−x)O・n[(Fe1−yCo)
(原子比率) (ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含
む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、
x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.0≦n≦6.4 0.01≦x≦0.4,及び 0.005≦y≦0.04 を満たす数字である。)により表される主要成分組成及
び実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有する焼
結磁石であり、EPMAにより前記焼結磁石のc面をLa又
はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoLeve
lの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから
求めた中間値:(Level,max+ Level,min)/2 より
もLa又はCoLevelの高い部分を高濃度領域とし、か
つ前記中間値以下のLa又はCoLevelの部分を低濃度
領域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少な
くとも直径0.2μmの円が入る範囲で存在しているとと
もに、ボイドの発生率が6個/mm以下であることを特
徴とする。又前記リングフェライト磁石が、 (A1−x)O・n[(Fe1−yCo)
(原子比率) (ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含
む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、
x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.6≦n≦6.2, 0.15<x≦0.3,及び 1.0<x/2ny≦1.3 を満たす数字である。)により表される主要成分組成及
びマグネトプランバイト型結晶構造を有し、CaO含有量
が0.5〜1.5重量%であり、SiO含有量が0.25〜0.55重
量%であり、かつc軸に平行な断面組織におけるマグネ
トプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径
(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペ
クト比(d/t)が2.5〜3.0のフェライト結晶粒から実
質的になる焼結磁石の場合に従来に比べて高効率の回転
機を構成することができる。高効率の回転機を構成する
ためにアスペクト比(d/t)は2.6〜2.9がより好まし
く、2.65〜2.85が特に好ましい。又前記リングフェライ
ト焼結磁石のボイドの発生率が6個/mm以下という健
全なミクロ組織を有するとき、従来に比べて高効率の回
転機を構成することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に用いるセグメントフェラ
イト磁石及びリングフェライト磁石は後添加方式あるい
は前/後添加方式により作製することができる。まず、
後添加方式について説明する。仮焼後にAO・nFeO
(原子比率)(ただし、AはSr及び/又はBaであ
り、n=5.0〜6.4)で示される主要成分組成になるよう
に配合した混合原料を作製する。次いで順次、仮焼、粗
砕、粗粉砕及び微粉砕を行い、空気透過法による平均粒
径で0.3〜0.8μmの微粉を得る。微粉砕の平均粒径が0.
3μm未満では焼結時に異常結晶粒成長を生じて磁気特
性が大きく低下し、かつ成形性及び湿式成形法を採用し
た場合では脱水特性が大きく悪化する。平均粒径が0.8
μm超では粗大な結晶粒が相対的に多くなり、iHc等が
低下する。次に、湿式又は乾式の磁界中成形(無磁界で
成形してもよい)を行うが、仮焼後から成形前までの製
造工程でLaを含むR元素及びCoを所定量添加し、上
記セグメントフェライト磁石又はリングフェライト磁石
の最終主要成分組成に調整する。次いで、成形し、焼結
後、所定寸法に加工し、後添加方式によるセグメントフ
ェライト磁石又はリングフェライト磁石を得られる。工
業生産上、Laを含むR元素及びCoの添加をバッチ方
式の湿式又は乾式粉砕装置を用いて微粉砕時に行うこと
により、粉砕バッチ毎に多様な主要成分組成のフェライ
ト磁石製品材質に対応できるので実用性が高い。前/後
添加方式とは、上記セグメントフェライト磁石又はリン
グフェライト磁石の全R含有量又は全Co含有量に対
し、仮焼前にLaを含むR元素及び/又はCoを0原子
%超で90原子%以下の割合で添加し、均一混合後、仮焼
する。次いで仮焼後から成形前までの製造工程でLaを
含むR元素及び/又はCoの残量を添加し、上記セグメ
ントフェライト磁石又はリングフェライト磁石の主要成
分組成(全R含有量及び/又は全Co含有量)に調整
後、以降は順次成形、焼結及び加工する方式である。な
お、前添加方式とは、仮焼前の混合時において上記セグ
メントフェライト磁石又はリングフェライト磁石の主要
成分組成に対応する混合物組成に調整し、仮焼し、次い
で順次粗砕、粗粉砕、微粉砕、成形及び焼結する方式で
ある。前/後添加方式によるフェライト磁石は、前添加
方式及び後添加方式のフェライト磁石のほぼ中間的なミ
クロ組織を呈する。前/後添加方式において、仮焼後の
粉砕物(特に微粉砕時)に添加するR元素が全R含有量
の10原子%以上でかつ100原子%未満のときにHk/iHc及
びBrを高めることができる。又前/後添加方式におい
て、仮焼後の粉砕物(特に微粉砕時)に添加するCoが
全Co含有量の10原子%以上でかつ100原子%未満のと
きにHk/iHc及びBrを高めることができる。後添加方式又
は前/後添加方式の採用により、モル比nが5.0未満に
なることが懸念される。これは仮焼後から成形前までの
製造工程で添加するR元素によりモル比nが顕著に低下
するためである。モル比nを5.0〜6.4に調整するため
に、仮焼後から成形前までの製造工程で、上記フェライ
ト磁石の全鉄含有量に対し0.1〜11重量%の鉄に相当す
る鉄化合物を添加することが好ましい。鉄の添加量が0.
1重量%未満ではモル比nを増大することが困難であ
り、11原子%超では成形体の配向性が低下し、Hk/iHc及
びBrが劣化する。前記鉄化合物として磁性鉄化合物が特
に好ましい。
【0009】後添加方式又は前/後添加方式によるセグ
メントフェライト磁石及びリングフェライト磁石は、焼
結段階において、仮焼後から成形前までの製造工程で添
加されたLaを含むR元素及び/又はCoがSr及び/
又はBaフェライト結晶粒内に拡散し、置換していく。
しかし、Sr及び/又はBaフェライト結晶粒内に十分
に拡散し、均一に置換するまでには至らない。このため
Laを含むR元素及び/又はCoの濃度分布が不均一な
フェライト焼結磁石の組織を呈する。即ち、Sr及び/
又はBaフェライト結晶粒において、相対的に、La濃
度及び/又はCo濃度が高い部分と、La濃度及び/又
はCo濃度が低い部分とを有することによりHk/iHc及び
Brが高められる。Hk/iHc及びBrを高められるメカニズム
は明らかではないが、La及びCoの置換が不十分かあ
るいは全く置換されないマグネトプランバイト型フェラ
イト結晶粒部分によるiHcの低下分を、La及びCoに
より十分に置換されたマグネトプランバイト型フェライ
ト結晶粒部分が補い、総合的に前添加方式によるフェラ
イト磁石と略同等のiHcを有し、かつHk/iHc及びBrが向
上するものと判断される。
【0010】本発明に用いるセグメントフェライト磁石
及びリングフェライト磁石の飽和磁化を高めるために、
Rに占めるLaの比率を、好ましくは50原子%以上、よ
り好ましくは70原子%以上、特に好ましくは99原子%以
上とすることがよい。理想的には不可避的不純物以外は
RがLaからなるのがよい。従って、例えば、R元素供
給原料として、Laを50原子%以上含み、残部がPr,
Nd及びCeの少なくとも1種並びに不可避的不純物か
らなる安価なミッシュメタル(混合希土類金属)の酸化
物が実用性が高い。その場合のRはLaとNd,Pr及
びCeの少なくとも1種と不可避的不純物とから構成さ
れ、より好ましいのはRがLa,Pr及び不可避的不純
物から構成される場合である。
【0011】本発明に用いるセグメントフェライト磁石
及びリングフェライト磁石のモル比nは5.0〜6.4とする
必要があり、5.5〜6.3がより好ましく、5.7〜6.2が特に
好ましい。nが6.4超ではマグネトプランバイト相以外
の異相(α−FeO等)の存在によりiHc等が大きく低下
し、nが5.0未満ではBrが大きく低下する。xは0.01〜
0.4が好ましく、0.1〜0.3がより好ましく、0.15〜0.25
が特に好ましい。xが0.01未満では添加効果が認められ
ず、0.4超では逆に磁気特性が低下する。yとxとの間
には、電荷補償のために理想的には y=x/(2.0n)
の関係が成立する必要があるが、yがx/(2.6n)以
上、x/(1.6n)以下であれば高いBr及び高いHk/iHc
を具備するフェライト磁石を作製可能である。なお、y
がx/(2.0n)からずれた場合、Fe2+を含む場合が
あるが何ら支障はない。典型的な例では、yの好ましい
範囲は0.04以下であり、特に0.005〜0.03である。又、
5.6≦n≦6.2,0.15<x≦0.3及び1.0<x/2ny≦1.3
というR過剰の主要成分組成を選択し、かつCaO含有量
が0.5〜1.5重量%及びSiO含有量が0.25〜0.55重量%
のときに高いBr及び高いHk/iHcを有することができる。
【0012】緻密なセグメント又はリングのフェライト
焼結磁石を得るために焼結性を制御する添加物としてSi
O及びCaO(CaCO)を所定量含有することが実用上重要
である。SiOは焼結時の結晶粒成長を抑制する添加物
であり、前記フェライト焼結磁石の総重量を100重量%
としてSiO含有量を0.05〜0.55重量%とすることが好
ましく、0.25〜0.55重量がより好ましい。SiO含有量
が0.05重量%未満では焼結時に結晶粒成長が過度に進行
し保磁力が大きく低下し、0.55重量%超では結晶粒成長
が過度に抑制され結晶粒成長による配向度の改善が不十
分となりBrが大きく低下する。CaOは結晶粒成長を促進
する添加物であり、前記フェライト焼結磁石の総重量を
100重量%としてCaO含有量は0.35〜1.5重量%が好まし
く、0.4〜1.5重量%がより好ましく、0.5〜1.5重量%が
特に好ましい。CaO含有量が1.5重量%超では焼結時に結
晶粒成長が過度に進行し、保磁力が大きく低下し、0.35
重量%未満では結晶粒成長が過度に抑制され、結晶粒成
長による配向度の改善が不十分となりBrが大きく低下す
る。
【0013】本発明に用いるセグメント又はリングのフ
ェライト焼結磁石のBrを高めるために、湿式微粉砕した
スラリーを濃縮後あるいは乾燥し、解砕後、混練し、次
いで順次湿式磁界中成形、焼結及び加工する製造工程を
採用することが好ましい。あるいはフェライト微粉末が
スラリー中で凝集しないように、微粉砕スラリーを乾燥
後水を足すか又は濃縮して高濃度のスラリー状態にし、
続いて分散剤を所定量添加し、混練することにより、凝
集が解かれ、湿式磁界中成形した場合に成形体の配向性
が顕著に向上する。分散剤は界面活性剤、高級脂肪酸、
高級脂肪酸石鹸又は高級脂肪酸エステルが好ましく、ア
ニオン系界面活性剤の1種であるポリカルボン酸系分散
剤がより好ましく、ポリカルボン酸アンモニウム塩が特
に好ましい。分散剤の添加量は、フェライト微粉末の総
重量に対し、0.2〜2重量%が好ましい。分散剤の添加
量が0.2重量%未満ではBrが向上できず、2重量%超で
はBrが逆に低下する。混練時において上記フェライト磁
石の主要成分組成になるようにLaを含むR元素及び/
又はCoを所定量追添加し、次いで順次成形、焼結及び
加工を行えば後添加方式又は前/後添加方式によるセグ
メントフェライト磁石又はリングフェライト磁石を作製
することができる。
【0014】本発明に用いるセグメントフェライト磁石
及びリングフェライト磁石用原料となるR元素の化合物
として、例えばLaO等の酸化物,La(OH)(水酸化
物),La(CO)・8HO(炭酸塩の水和物)、La(CH
CO)・1.5HO及びLa(CO)・10HO(有機酸
塩)の少なくとも1種が挙げられる。又、La,Nd,
Pr,Ce及び不可避的不純物からなる混合希土類の酸
化物、水酸化物、炭酸塩及び有機酸塩の少なくとも1種
が挙げられる。又本発明に用いるセグメントフェライト
磁石及びリングフェライト磁石用原料となるCo化合物
として、例えばCoO又はCoO等の酸化物,Co(OH)
CoO ・mHO(mは正の値)等の水酸化物,CoCO
等の炭酸塩及びmCoCO・mCo(OH)・ mHO(m
,m及びmは正の値) 等の塩基性炭酸コバルトの少
なくとも1種が挙げられる。又本発明に用いるセグメン
トフェライト磁石及びリングフェライト磁石用原料とな
る鉄化合物として、例えばFeO,α−FeO,FeO
又はγ−FeO等の酸化物,Fe(OH),Fe(OH)
及びFeO(OH)等の水酸化物の少なくとも1種が挙げら
れ、特にFeOに代表される磁性鉄化合物が好まし
い。
【0015】本発明に用いるセグメントフェライト磁石
はアーク形のものが実用性が高く、図2を例示して説明
すると、図2中の矢印で示す異方性付与方向(ラジアル
方向)の最大厚みtmが2.5〜20mm、アーク角度θが20〜1
80°のものが好ましい。tmが2.5mm未満では界磁用アー
クセグメントフェライト磁石とエアギャップを介して対
向するアーマチュア(回転子)又は固定子からの減磁界
を受けてアークセグメントフェライト磁石が減磁する問
題を招く。tmが20mm超のものは昨今の薄肉化小型化、軽
量化のニーズに適合しない。アーク角度θは内周面の磁
極部の円弧が形成する中心角の平均値で定義する。θが
20°未満では実用性に乏しく、θ=180°が理想的な2
極の回転機を作製する上限値である。高効率の回転機を
実現するために、アークセグメントフェライト磁石は、
図2の略半径方向に異方性を付与したラジアル異方性、
あるいは平行異方性、さらにはラジアル異方性と平行異
方性との中間的なものが実用性に富んでいる。特にθ=
170〜180°の広角度アークセグメントフェライト磁石を
作製するための成形条件を図2により説明すると、成形
体2’の磁界中圧縮成形は矢印のラジアル印加磁界方向
と圧縮成形方向とがほぼ一致する縦磁場の湿式成形によ
るのが実用性に富んでいる。成形効率を高め、さらには
成形体亀裂の発生を抑えるために成形体2’の両端部外
周側に平面部2a,2aが設けてある。又前記縦磁場の湿式
成形による成形体2’は相対的に中央部の密度が高くな
り両端部の密度が低くなる傾向にあるので中央部の収縮
率が小さくなり両端部の収縮率が大きくなる。収縮率は
[(成形体寸法)−(焼結体寸法)]/(成形体寸
法)×100(%) で定義される。この収縮率差を反映
して焼結上がりの広角度アークセグメントは中央部の厚
みが厚くなり、両端部の厚みが薄くなる。この焼結体の
焼結肌がなくなるまで必要最小量の加工を施したとき、
図2に示すように相対的に中央部の厚みが厚く、両端部
の厚みが薄い広角度アークセグメントフェライト磁石2
を得られる。広角度アークセグメントフェライト磁石は
2極のブラシモータに有用である。アークセグメントフ
ェライト磁石の軸方向長さLmは10〜150mmが好ましく、5
0〜100mmがより好ましい。Lmが10mm未満では所定の回転
機効率を得るために複数個のアークセグメントフェライ
ト磁石を接着する作業が必要になり、Lmが150mm超のも
のは実用性に乏しい。又本発明に用いるアークセグメン
トフェライト磁石は断面が弓形のものに限定されず、か
まぼこ形、凸部を有する不定形のものを包含する。即
ち、エアギャップ側に凸部を有する断面形状のセグメン
トフェライト磁石をいう。
【0016】本発明にはブロック形状のセグメントフェ
ライト磁石を用いてもよい。ブロック形状の場合、異方
性付与方向(縦方向)の長さが2.5〜20mm、横方向の長
さが10〜50mm、縦及び横方向に直角な幅方向の長さが10
〜150mmのものが昨今の回転機の小型化、軽量化及び高
効率のニーズを満足し、好ましい。
【0017】本発明に用いるラジアル異方性又は極異方
性を有するリングフェライト磁石は内径(Di)が10〜10
0mmであり、かつ内径(Di)と外径(Do)との比率;(D
i/Do)が0.75〜0.85 のものが好ましい。工業生産上、
内径(Di)が10mm未満のものは成形時の印加磁界強度の
顕著な低下により磁気特性が大きく低下し、内径(Di)
が100mm超では昨今の磁石応用製品の小型化、軽量化の
ニーズに適合しない。(Di/Do)が0.75未満では内径側部
分と外径側部分の配向度の差による収縮率差が大きくな
り、焼結すると割れを発生するという問題がある。又
(Di/Do)が0.85を超えると作製したラジアル異方性又
は極異方性を有するリングフェライト磁石及びシャフト
(回転軸)を射出成型用金型のキャビティに配置し、次
いで溶融状態の熱可塑性樹脂(PBT等)をキャビティに
射出充填後溶融樹脂を固化し、キャビティにインサート
されている前記リングフェライト磁石及びシャフトを一
体的に抱持固定し、回転子を構成する場合に、前記溶融
樹脂の射出充填圧力により前記リングフェライト磁石が
割れるという問題を生じる。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はそれら実施例に限定されるものではない。 (実施例1)後添加方式によるセグメントフェライト磁
石を界磁用磁石に用いた直流モータの実施例を以下に説
明するSrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む)及
びα−FeO粉末を用いて、仮焼後に原子比率で SrO
・6FeOになるように湿式混合後、大気中、1250
℃で2時間仮焼した。次にローラーミルで粗粉砕し粗粉
とした。次にアトライタにより湿式微粉砕を行い、平均
粒径(空気透過法)0.7μmの微粉砕粉を含むスラリー
を得た。微粉砕初期にLaO粉末,CoO粉末及びFe
O(マグネタイト)粉末を微粉砕に投入した粗粉重
量を基準にしてそれぞれ2.5重量%,1.2重量%及び8.0
重量%添加した。又微粉砕初期に焼結助剤として、SrCO
粉末,CaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した
粗粉重量を基準にしてそれぞれ0.1重量%,1.0重量%及
び0.3重量%添加した。この微粉砕スラリーにより、平
行磁界強度:795.8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa
(0.4ton/cm)の条件で磁界中圧縮成形を行い成形体
を得た。成形体を1210℃で2時間焼結し、下記の主要成
分組成を有する後添加方式によるアークセグメントフェ
ライト焼結磁石素材を得た。X線回折によりこの焼結磁
石素材はマグネトプランバイト型結晶構造を有すること
が確認された。 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.8、y=x/2n 次に、前記焼結磁石素材を加工し、得られたアークセグ
メント磁石8を用いて図1に示す2極の直流モータ10を
作製した。モータ10において、1はヨークを兼ねた強磁
性材料(SS400等)からなる略円筒状支持体であり、内
周側にアークセグメント磁石8が接着されて固定子側が
構成されている。回転子(電機子)3はエアギャップ7
を介してアークセグメント磁石8の磁極と対向し、シャ
フト(回転軸)6がブラケットに設けた軸受4により軸
支されている。5はブラシである。図1のA−A線矢視
断面図を図3に示す。図3において図1と同一数字部分
は図1と同一の構成部分を示す。直流モータ10の外半径
rm=37mmである。アークセグメント磁石8の外半径ro=
33.3mm、内半径ri=28.1mm、紙面に垂直方向の長さLm=
48mm、厚みtm=5.2mm、θ=120°とした。又エアギャッ
プ7の間隔を約0.3mmとして、所定条件で直流モータ10
を駆動し、最高効率を測定したところ、90%超の良好な
最高効率が得られた。 (実施例2)前/後添加方式によるアークセグメントフ
ェライト磁石を用いた直流モータの実施例を以下に説明
する。SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む),
α−FeO粉末,LaO粉末及びCoO粉末を用い
て、仮焼後に原子比率で、 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.075、n=5.9、y=x/2n で示される主要成分組成になるように均一混合後、大気
中、1250℃で2時間仮焼した。仮焼粉を粗砕し、粗粉砕
後、アトライタで湿式微粉砕し平均粒径0.7μmの微粉
砕粉を得た。微粉砕初期に、x=0.15,n=5.8,y=
x/2n の主要成分組成になるように所定量のLaO
粉末,CoO粉末及びFeO粉末をそれぞれ添加し
た。又微粉砕初期に、焼結助剤として、SrCO粉末,Ca
CO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した粗粉重量対
比でそれぞれ0.1重量%,1.0重量%及び0.3重量%添加
した。以降は前記微粉砕スラリーを用いた以外は実施例
1と同様にして下記の主要成分組成を有する前/後添加
方式によるアークセグメントフェライト焼結磁石素材を
作製した。X線回折によりこの焼結磁石素材はマグネト
プランバイト型結晶構造を有することが確認された。 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.8,y=x/2n 前記焼結磁石素材を実施例1のアークセグメント磁石8
と同一寸法に加工し、実施例1のアークセグメント磁石
8に替えて直流モータ10に組み込み、最高効率を測定し
た。最高効率は90%超であり良好であったが、実施例1
に比べて0.2%低かった。 (比較例1)前添加方式によるアークセグメントフェラ
イト磁石を用いた直流モータの比較例を以下に説明する
SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含む),α−Fe
O粉末,LaO粉末及びCoO粉末を用いて、仮
焼後に原子比率で、 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.9,y=x/2n で示される主要成分組成になるように均一混合後、大気
中、1250℃で2時間仮焼した。仮焼粉を粗砕し、粗粉砕
後、アトライタで湿式微粉砕し平均粒径0.7μmの微粉
砕粉を得た。以降は実施例1と同様にして前添加方式に
よるアークセグメントフェライト磁石を作製し、実施例
1のアークセグメント磁石8に替えて直流モータ10に組
み込み、最高効率を測定した。実施例1に比べて最高効
率は0.8%低かった。
【0019】実施例1,2の最高効率が比較例1の最高
効率よりも高いのは、界磁用のアークセグメントフェラ
イト磁石の減磁曲線を反映した結果である。図11の実
線は、実施例1の直流モータ10に組み込んだ後添加方式
によるアークセグメントフェライト磁石の20℃、−40℃
における減磁曲線(20℃のBr=0.441T(4.41kG),HK/i
Hc=95.5%及びiHc=358.1kA/m(4.50kOe))を示す。又図
11の点線は比較例1の直流モータ10に組み込んだ前添
加方式によるアークセグメントフェライト磁石の20℃、
−40℃における減磁曲線(20℃のBr=0.433T(4.33k
G),Hk/iHc=90.0%,iHc=366.1kA/m(4.60kOe))を示
す。実施例1のアークセグメントフェライト磁石は比較
例1のものに比べてiHcはやや低いが、Hk/iHc及びBrが
高い分直流モータ10の最高効率が向上している。実施例
2の直流モータ10に装着した前/後添加方式によるアー
クセグメントフェライト磁石の20℃及び−40℃の減磁曲
線は図11の実線と点線とで示す両減磁曲線のほぼ中間
のものであった(図示省略)。
【0020】実施例1の後添加方式によるアークセグメ
ントフェライト磁石から所定サイズの試料を切り出し、
試料のc面が表面になるようにしてラップ研磨後、さら
に鏡面研磨した。次いで、結晶粒界を露呈するために塩
酸でエッチング後、水洗し、乾燥した。次いで前記試料
を電子プローブマイクロアナライザ(JEOL:日本電子製
のEPMA、JXA-8900R型)にセットし、c面の代表的な断面
組織写真を撮影した。実施例1のアークセグメントフェ
ライト磁石の断面組織写真を図5に示す。又図5に対応
する視野におけるLa,Co,Fe及びSrの相対濃度
分布を測定するためにEPMAにより下記の条件で面分析を
行った。分光結晶は、La及びCoの分析では高感度型
ふっ化リチウム(LiF)を、Srの分析ではペンタエリ
スリトール(PET,C(CHOH))を、Feの分析では
ふっ化リチウム(LiF)を用いた。検出器はキセノン封
入型を用いた。倍率5,000倍、加速電圧15kV,照射電
流:0.3μA,プローブ径:約2μm,画素(面分析範
囲の基本単位)サイズ:縦0.04μm×横0.04μmの矩
形,1画素あたりの計数時間30msec,計測画素数:縦
(X)方向及び横(Y)方向がともに400画素である。
面分析結果を図6に示す。図6の右側に、各元素のLeve
l、各LevelのArea%を示す。EPMAにより実施例1のアー
クセグメントフェライト磁石のc面をLa,Co,Fe
及びSrについて各々面分析したとき、各検出器からL
a, Co,Fe及びSrの各計数値が出力される。こ
の調整された出力の最大値(Level,max)及び最小値(Leve
l,min)並びに(Level,max)と(Level,min)とを等間隔で16
分割したものが各元素のLevelである。全画素に対する
各Levelの画素の占める面積比率がArea%である。L
a,Co,Fe及びSrの各々において、Levelの最大
値(Level,max)と最小値(Level,min)とから求めた中
間値:( Level,max+ Level,min)/2 よりもLevel
の高い部分を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLe
velの部分を低濃度領域と定義する。この定義により、
図6において、Laの低濃度領域はLevelが36.5以下の
部分であり、Coの低濃度領域はLevelが82.5以下の部
分である。図6では直径0.5μmの円が入るLa及びC
oの低濃度領域が複数箇所存在していた。なお、図5の
走査型電子顕微鏡(SEM)による断面写真には試料作製時
に導入された脱落部が認められるが、本発明者らは脱落
部の影響を考慮し面分析結果を解析した。
【0021】比較例1の前添加方式によるアークセグメ
ントフェライト磁石から所定サイズの試料を切り出し、
以降は実施例1のアークセグメントフェライト磁石の場
合と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分析を
行った。断面組織写真を図7に示す。また、図7に対応
する視野におけるLa,Co,Fe及びSrの相対濃度
分布を図8に示す。図8より、比較例1の前添加方式に
よるアークセグメントフェライト磁石はLa,Co,F
e及びSrがほぼ均一に分布していることがわかる。
【0022】実施例2の前/後添加方式によるアークセ
グメントフェライト磁石から所定サイズの試料を切り出
し、以降は実施例1のアークセグメントフェライト磁石
の場合と同様にしてc面の断面組織写真の撮影及び面分
析を行った。その結果、図6とほぼ同様に、直径0.3μ
mの円が入るLa及びCoの低濃度領域が存在すること
がわかった。
【0023】実施例1及び比較例1のアークセグメント
フェライト磁石から各々3mm×3mm×3mm(磁化方向)
の立方体形状の試料を切り出し、次いで振動試料型磁力
計(東英工業(株)製、VSM−3型)に両試料を順次セッ
トし、500℃まで加熱後、2〜5℃/分の降温速度で冷
却しつつ磁化M(emu/g)−温度T(℃)曲線を描いた。
実施例1のアークセグメントフェライト磁石の磁化−温
度曲線を図9の下側に示す。又図9の上側にはその(dM
/dT)−温度T曲線をとっている。図9より、実施例1の
アークセグメントフェライト磁石は磁化Mの温度Tに対す
る変化率(dM/dT)−T 曲線が2つの極小点及び1つの
極大点を有することがわかる。図9に例示するように、
極小点P,R及び極大点Qに対応する磁化−温度曲線の
接点P’,Q’及びR’から磁化−温度曲線の接線
,L及びLを引いたとき、接線LとLとの
交点Sの温度を第2キュリー点(Tc2)、接線L
磁化=0の横軸(温度T軸)との交点Sを第1キュリ
ー点(Tc1)と定義する。実施例1のアークセグメント
フェライト磁石は2つのTcを有しており、Tc1=453℃,
Tc2=441℃であった。比較例1のアークセグメントフェ
ライト磁石の磁化−温度曲線を図10の下側に、図10
の上側にはその(dM/dT)−温度T曲線をとっている。図
10より、比較例1のアークセグメントフェライト磁石
の(dM/dT)−T 曲線が1つの極小点のみを有すること
がわかる。この極小点に対応する磁化−温度曲線の位置
を接点として磁化−温度曲線に接線を引き、接線と温度
T軸との交点を読取り、求めたTc=443℃であった。
【0024】実施例2のアークセグメントフェライト磁
石についても、実施例1のアークセグメントフェライト
磁石の場合と同様にして磁化−温度曲線を描き評価し
た。その結果、実施例2のアークセグメントフェライト
磁石は2つのキュリー点及び(dM/dT)−T曲線における
2つの極小値及び1つの極大値を有することが確認され
た。
【0025】(実施例3)実施例1で作製した微粉砕ス
ラリーを用いて、ラジアル配向磁界を印加しつつ磁界中
圧縮成形し、アークセグメント形状の成形体を得た。成
形体を1210℃で2時間焼結し、後添加方式によるラジア
ル異方性を付与したアークセグメントフェライト磁石素
材を得た。このフェライト磁石素材はほぼ下記の主要成
分組成を有し、又X線回折の結果マグネトプランバイト
型結晶構造を有することが確認された。 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.8,y=x/2n 次に、前記磁石素材を加工し、得られたアークセグメン
ト磁石18を用いて図4に示す6極の直流モータ20を作製
した。モータ20において、11はヨークを兼ねた強磁性材
料(SS41)からなる略円筒状支持体であり、内周側にア
ークセグメント磁石18が接着されて固定子側を構成して
いる。回転子(電機子)13はエアギャップ17を介してア
ークセグメント磁石18の磁極と対向し、16はシャフト
(回転軸)である。直流モータ20の外半径rm=36.6mmと
した。アークセグメント磁石18の外半径ro=34.5mm、内
半径ri=27.6mm、紙面に垂直方向の長さLm=46mm、厚み
tm=6.9mm及びθ=50°とした。又エアギャップ7の間
隔を約0.3mmとして、所定条件で直流モータ20を駆動し
たところ、90%超の良好な最高効率が得られた。 (実施例4)実施例2で作製した微粉砕スラリーを用い
た以外は、実施例3と同様にして前/後添加方式による
ラジアル異方性を付与したアークセグメントフェライト
磁石素材を作製した。このフェライト磁石はほぼ下記の
主要成分組成を有し、又X線回折の結果マグネトプラン
バイト型結晶構造を有することが確認された。 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.8,y=x/2n この前/後添加方式によるアークセグメントフェライト
磁石素材を実施例3のラジアル異方性を有するアークセ
グメントフェライト磁石と同一寸法に加工し、以降は実
施例3と同様にして直流モータ20に組み込み、最高効率
を測定した結果、最高効率は90%超で良好であったが、
実施例3に比べて最高効率は0.3%低かった。 (比較例2)比較例1で作製した微粉砕スラリーを用い
た以外は、実施例3と同様にして、前添加方式によるラ
ジアル異方性を付与した、下記の主要成分組成を有する
アークセグメントフェライト磁石素材を得た。 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.9,y=x/2n この前添加方式によるアークセグメントフェライト磁石
素材を実施例3のラジアル異方性のアークセグメントフ
ェライト磁石と同一寸法に加工し、以降は実施例3と同
様にして直流モータ20に組み込み、最高効率を測定し
た。最高効率は実施例3に比べて1.3%低かった。
【0026】次に、後添加方式及び前/後添加方式によ
るセグメントフェライト磁石を用いたブラシレスモータ
の実施例を説明する。 (実施例5)実施例1で作製した微粉砕スラリーによ
り、795.8kA/m(10kOe)の平行磁界を印加しつつ圧縮成形
し、アークセグメント形状の成形体を得た。成形体を12
10℃で2時間焼結し、下記の主要成分組成を有する後添
加方式によるアークセグメントフェライト磁石素材を得
た。この磁石素材はマグネトプランバイト型結晶構造を
有していた。 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.8,y=x/2n 次に、前記磁石素材を加工し、得られたアークセグメン
トフェライト磁石61を用いて図12に示すブラシレスD
Cモータ70を作製した。モータ70において、75は固定
子,65は固定子磁極,63は固定子コア,69はエアギャッ
プ,60は回転子,68はシャフト(回転軸),62は強磁性
材料(SS400)からなる回転子コア及び61a,61bが前
記アークセグメントフェライト磁石である。ブラシレス
DCモータ70の最高効率はエアギャップの平均間隔が0.
3mmで測定した。最高効率は下記式で定義した。最高効
率=回転数1500r.p.m.以下で評価した、 {(出力)/(入力)×100(%)}の最大値 入力(W)=固定子巻線64に通電される、印加電流I
(A)×印加電圧(V) 出力(W)=トルク(kgf・cm)×回転数(r.p.m.)×
0.01027 作製したブラシレスDCモータ70の最高効率は90%超で
あり良好であった。 (実施例6)実施例2で作製した微粉砕スラリーを用い
た以外は、実施例5と同様にして前/後添加方式による
アークセグメントフェライト磁石素材を得た。このフェ
ライト磁石素材はほぼ下記の主要成分組成を有し、又マ
グネトプランバイト型結晶構造を有していた。 (Sr1-xLax)O・n[(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.8,y=x/2n 次に、実施例5のアークセグメントフェライト磁石と同
一寸法に加工し、以降は実施例5と同様にしてブラシレ
スDCモータ70に組み込み、最高効率を測定した。最高
効率は90%超で良好であったが、実施例5に比べて最高
効率は0.2%低かった。 (比較例3)比較例1で作製した微粉砕スラリーを用い
た以外は、実施例5と同様にして前添加方式によるアー
クセグメントフェライト磁石素材を得た。このフェライ
ト磁石素材はほぼ下記の主要成分組成を有していた。 (Sr1-xLax)O・n(Fe1-yCoy2O3] x=0.15,n=5.9,y=x/2n 次に、実施例5のアークセグメントフェライト磁石と同
一寸法に加工し、以降は実施例5と同様にしてブラシレ
スDCモータ70に組み込み、最高効率を測定した。最高
効率は実施例5に比べて1.1%低かった。
【0027】粉砕時に追添加する磁性酸化鉄原料(Fe
O粉末)及び非磁性酸化鉄原料(α−FeO粉末)の
効果を比較した実施例を以下に説明する。 (実施例7)SrCO粉末(不純物としてBa,Caを含
む)及びα−FeO粉末を用いて、仮焼後に原子比率
で SrO・5.85FeOになるように湿式混合後、大気
中、1300℃で2時間仮焼した。次にローラーミルで粗粉
砕し粗粉とした。次にアトライターにより湿式微粉砕を
行った。微粉砕初期に微粉砕に投入した粗粉重量を基準
にしてLaO粉末及びCoO粉末の所定量、並びにFe
O粉末を20重量%追添加し、最終主要成分組成が原
子比率で (Sr0.8La0.2)O・n[(Fe1−yCo)O
],x=0.2,n=5.84,x/2ny=1.07(R過剰組
成) になるように調整した。又微粉砕初期に焼結助剤
として、CaCO粉末及びSiO粉末を微粉砕に投入した
粗粉重量を基準にしてそれぞれ1.60重量%及び0.40重量
%添加した。さらに微粉砕終了直前に、微粉砕初期に投
入した粗粉重量に対し0.5重量%の分散剤(ポリカルボ
ン酸アンモニウム塩)を添加し、平均粒径0.6μmの微
粉砕粉を含、スラリー濃度(=(微粉重量)/[(微粉
重量)+(水の重量)]×100(%))70重量%のスラ
リー(1)を作製した。又スラリー(1)を加熱してスラリー
濃度を85重量%まで濃縮し、冷却後、その濃縮スラリー
を混練しつつポリカルボン酸アンモニウム塩を0.1重量
%添加し、混練後水を加えてスラリー濃度を70重量%に
調整したスラリー(2)を作製した。又さらに、ポリカル
ボン酸アンモニウム塩の混練時の添加量を0.2重量%と
した以外はスラリー(2)と同様にしてスラリー(3)を作製
した。これらスラリー(1)〜(3)を用い、磁界強度:795.
8kA/m(10kOe)、成形圧力:39.2MPa(0.4ton/cm)の
条件で平行磁界中で圧縮成形しアークセグメント形状の
成形体を得た。成形体を大型の焼結炉(設定温度:1220
℃)で2時間焼結し、後添加方式によるアークセグメン
トフェライト焼結磁石素材を得た。次いで作製した各ア
ークセグメントフェライト磁石素材の室温(20℃)の磁
気特性を測定した結果を図13に示す。得られた各アー
クセグメントフェライト磁石素材の密度は5.05〜5.06Mg
/m(g/cm)であり、X線回折した結果いずれもマグネ
トプランバイト相のX線回折ピークのみが観察された。
前記各アークセグメントフェライト磁石素材から所定サ
イズの試料を切り出し、以降は実施例1と同様にしてc
面の断面組織写真の撮影及び面分析を行った結果、直径
0.3〜0.7μmの円が入るLa及びCoの低濃度領域が観
察され、又2つのTcを有することが確認された。作製し
た前記焼結磁石素材うち、Br=0.451T(4.51kG),iHc
=356.5kA/m(4.48kOe),Hk/iHc=96.0%のものを実施例
1のアークセグメントフェライト磁石と同一形状に加工
し、以降は実施例1と同様にして最高効率を測定したと
ころ実施例1に比べて最高効率が0.5%向上した。 (実施例8)微粉砕初期に追添加する酸化鉄原料として
FeO粉末に替えてα−FeO粉末を用いた以外は実
施例7と同様にして後添加方式によるアークセグメント
フェライト磁石素材を作製し、磁気特性を測定した結果
を図14に示す。又密度は5.00〜5.01Mg/m(g/cm)で
あり、X線回折の結果いずれもマグネトプランバイト相
のX線回折ピークのみが観察された。作製した前記各ア
ークセグメントフェライト磁石から所定サイズの試料を
切り出し、以降は実施例1と同様にしてc面の断面組織
写真の撮影及び面分析を行った結果、直径0.4〜0.7μm
の円が入るLa及びCoの低濃度領域が観察され、又2
つのTcを有することが確認された。作製した前記焼結磁
石素材のうち、Br=0.446(4.46kG),iHc=354.1kA/m
(4.45kOe),Hk/iHc=93.5%のものを実施例1のアーク
セグメントフェライト磁石と同一形状に加工し、以降は
実施例1と同様にして最高効率を測定したところ実施例
とほぼ同等の最高効率が得られた.。
【0028】実施例7,8の代表的なアークセグメント
フェライト磁石のc面を鏡面研磨し、研磨面を光学顕微
鏡で観察し、断面写真を撮影した。断面写真を図14に
示す。図14より、実施例7のアークセグメントフェラ
イト磁石(FeO追添加)の研磨面では1mmあたりの
ボイド数(直径10μmの円が入るボイドを1個とカウン
ト)が0個であったのに対し、実施例8のフェライト磁
石(FeO追添加)の研磨面では1mmあたりのボイド
数は10個であった。さらに実施例7,8の研磨面の視野
を変えてそれぞれ10視野ずつのボイドの発生状況を観察
した結果、実施例7のアークセグメントフェライト磁石
(FeO追添加)の研磨面では1mm あたりのボイド数
は0〜3個であったのに対し、実施例8のアークセグメ
ントフェライト磁石(FeO追添加)の研磨面では1mm
あたりのボイド数は8〜18個であった。従って、 Fe
Oを追添加した場合にはボイドの発生が少なくボイ
ドの発生を6個/ mm以下にでき、かつ図13に示すよ
うにBr及びHk/iHcを顕著に向上できる結果回転機の最高
効率を高められることがわかった。
【0029】実施例7のアークセグメントフェライト磁
石(後添加,x=0.2,n=5.84,x/2ny=1.07, 追添
加FeO:20重量%,CaO:0.90重量%,SiO:0.40
重量%)及び比較例1の前添加方式によるフェライト磁
石をサンプリングし、それぞれのc軸に平行な断面組織
においてマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa
軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)を
測定し、(d/t)で定義するアスペクト比を求めた。
まず各フェライト磁石の断面組織写真の1視野(倍率1
0,000倍)において各フェライト結晶粒の(d,t)値
を60個分測定し、それらを平均した値(d),(t)及
び(d/t)を求めた。同様にして合計5視野分の(d
,d,d,d,d),(t,t,t,t
,t)及び(d/t,d/t,d/t,d
/t,d/t)を求めた、それら平均値の範囲を
表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】(実施例9)微粉砕時に追添加するLaO
粉末,CoO粉末及びFeO粉末の量を変えて、最
終主要成分組成が原子比率で (Sr0.8La0.2)O・
6[(Fe1−yCo) O],x=0.2,x/2ny=1.1
6,1.26(R過剰組成)になるように調整した以外は実
施例8と同様にして後添加によるアークセグメントフェ
ライト磁石素材を作製し、以降は実施例7と同様にして
最高効率を測定した。その結果、x/2ny=1.16では
実施例8より最高効率が0.1%高かった。又、x/2ny
=1.26では実施例8より最高効率が0.2%低かった。
又、実施例7〜9に関連した検討から、n=5.6〜6.2,
x=0.2〜0.3及び1.0<x/2ny≦1.3の主要成分組成を有
し、かつCaO含有量が0.6〜1.2重量%であり、SiO含有
量が0.30〜0.50重量%のときに、c軸に平行な断面組織
におけるマグネトプランバイト型フェライト結晶粒のa
軸方向の最大径(d)及びc軸方向の最大厚み(t)で
定義するアスペクト比(d/t)が2.5〜3.0になり、比
較例1に比べて高効率の回転機を構成できることが確認
された。
【0032】(実施例10)実施例8のスラリーを用い
て外径/内径比率を変化させるとともにラジアル異方性
及び極異方性を付与した成形体をそれぞれ作製した。次
いで成形体を焼結したが内径寸法が小さい側で焼結体素
材に割れが顕著に発生した。そのため、割れを発生しな
かった焼結体素材を焼結肌が無くなるまで加工し、外径
(Do)=30mm及び内径(Di)であり、(Di/Do)=0.75〜0.87
の極異方性リングフェライト焼結磁石及びラジアル異方
性リングフェライト焼結磁石を作製した。次いで、作製
した前記極異方性リングフェライト焼結磁石及びラジア
ル異方性リングフェライト焼結磁石を順次シャフト(回
転軸)とともに所定の射出成型用金型のキャビティに配
置し、次いで溶融状態の熱可塑性樹脂(PBT)をキャビ
ティに射出充填後溶融樹脂を固化し、キャビティにイン
サートされている前記リングフェライト磁石及びシャフ
トを一体的に抱持固定し、インナロータ型の回転子を作
製したところ、(Di/Do)=0.86,0.87のものは割れを発
生した。しかし、(Di/Do)=0.75〜0.85のものでは割れ
が発生せず、回転機に組み込むことができた。この回転
機の最高効率はいずれも良好であった。 (実施例11)実施例2のスラリーを用いた以外は実施
例10と同様にして(Di/Do)=0.75〜0.87の極異方性リ
ングフェライト焼結磁石及びラジアル異方性リングフェ
ライト焼結磁石を作製し、インナロータ型の回転子を作
製したところ、(Di/Do)=0.75〜0.85のものでは割れが
発生せず、回転機に組み込むことができた。この回転機
の最高効率は実施例10に比べて0.9〜1.4%低かった。 (比較例4)比較例1のスラリーを用いた以外は実施例
10と同様にして(Di/Do)=0.75〜0.87の極異方性リン
グフェライト焼結磁石及びラジアル異方性リングフェラ
イト焼結磁石を作製し、インナロータ型の回転子を作製
したところ、(Di/Do)=0.75〜0.85のものでは割れが発
生せず回転機に組み込むことができたが、この回転機の
最高効率は実施例10に比べて2.1〜2.9%低かった。
【0033】上記実施例ではA=Srの場合を記載した
が、A=(Sr+Ba)又はA=Baの場合でも同様の
効果を得られることが確認された。
【0034】上記実施例ではインナーロータ型の直流モ
ータ又は同期モータの場合を記載したが、アウターロー
タ型の直流モータ又は同期モータの場合でも同様の効果
を得られることがわかった。又上記実施例はモータの場
合を記載したが、発電機においても同様の効果を得るこ
とができる。
【0035】
【発明の効果】以上記述の通り、本発明によれば、La
及び/又はCoが不均一に分布し、さらにはボイドの発
生率を低減した健全なミクロ組織を有するマグネトプラ
ンバイト型フェライト磁石を具備することにより、従来
に比べて最高効率を高めた高性能の回転機を提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転機の一例を示す要部断面図であ
る。
【図2】本発明に有用な広角度アークセグメントフェラ
イト磁石の一例を示す斜視図である。
【図3】図1の回転機の矢視断面図である。
【図4】本発明の他の回転機を示す要部断面図である。
【図5】本発明に用いるセラミック材料の断面組織の一
例を示す図である。
【図6】図5に対応するLa,Co,Fe及びSrの相
対濃度分布の一例を示す図である。
【図7】比較例のセラミック材料の断面組織を示す図で
ある。
【図8】図7に対応するLa,Co,Fe及びSrの相
対濃度分布の一例を示す図である。
【図9】本発明に用いるセグメントフェライト磁石の代
表的な磁化−温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す
図である。
【図10】比較例のセグメントフェライト磁石の磁化−
温度曲線及び(dM/dT)−温度曲線を示す図である。
【図11】4πI−H減磁曲線を示す図である。
【図12】本発明の同期モータの一例を示す要部断面図
である。
【図13】本発明に用いるアークセグメントフェライト
磁石の磁気特性の一例を示す図である。
【図14】本発明に用いるアークセグメントフェライト
磁石の光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1,11 ヨーク、2,8,18 セグメントフェライト磁
石、10,20,70 回転機。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H02K 23/04 H02K 23/04 (72)発明者 緒方 安伸 埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地日立金属株式 会社磁性材料研究所内 (72)発明者 久保田 裕 埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地日立金属株式 会社磁性材料研究所内 (72)発明者 高見 崇 埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地日立金属株式 会社磁性材料研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セグメントフェライト磁石を具備する回
    転機であって、前記セグメントフェライト磁石は、 (A1−x)O・n[(Fe1−yCo)
    (原子比率) (ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含
    む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、
    x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.0≦n≦6.4 0.01≦x≦0.4,及び 0.005≦y≦0.04 を満たす数字である。)により表される主要成分組成及
    び実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有するフ
    ェライト磁石であり、EPMAにより前記セグメントフェラ
    イト磁石のc面をLa又はCoについて面分析し、計数
    されたLa又はCoLevelの最大値(Level,max)と最小
    値(Level,min)とから求めた中間値:(Level,max+ L
    evel,min)/2 よりもLa又はCoLevelの高い部分
    を高濃度領域とし、かつ前記中間値以下のLa又はCo
    Levelの部分を低濃度領域と定義したとき、La又はC
    oの低濃度領域が少なくとも直径0.2μmの円が入る範
    囲で存在していることを特徴とする回転機。
  2. 【請求項2】 前記セグメントフェライト磁石のボイド
    の発生率が6個/mm 以下である請求項1に記載の回転
    機。
  3. 【請求項3】 前記セグメントフェライト磁石の磁化M
    (単位emu/g )−温度T(単位℃)曲線が複数のキュリ
    ー点(Tc)及び微分値(dM/dT)の極小値を有する請求
    項1又は2に記載の回転機。
  4. 【請求項4】 前記セグメントフェライト磁石を用いて
    構成した回転機の界磁磁極数が2〜36極である請求項1
    乃至3のいずれかに記載の回転機。
  5. 【請求項5】 セグメントフェライト磁石を具備する回
    転機であって、前記セグメントフェライト磁石は、 (A1−x)O・n[(Fe1−yCo)
    (原子比率) (ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含
    む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、
    x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.6≦n≦6.2, 0.15<x≦0.3,及び 1.0<x/2ny≦1.3 を満たす数字である。)により表される主要成分組成及
    びマグネトプランバイト型結晶構造を有し、CaO含有量
    が0.5〜1.5重量%であり、SiO含有量が0.25〜0.55重
    量%であり、かつc軸に平行な断面組織におけるマグネ
    トプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径
    (d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペ
    クト比(d/t)が2.5〜3.0のフェライト結晶粒から実
    質的になる焼結磁石であることを特徴とする回転機。
  6. 【請求項6】 前記セグメントフェライト磁石のボイド
    の発生率が6個/mm 以下である請求項5に記載の回転
    機。
  7. 【請求項7】 前記セグメントフェライト磁石の磁化M
    (単位emu/g )−温度T(単位℃)曲線が複数のキュリ
    ー点(Tc)及び微分値(dM/dT)の極小値を有する請求
    項5又は6に記載の回転機。
  8. 【請求項8】 ラジアル異方性又は極異方性を付与した
    リングフェライト磁石を具備する回転機であって、 前記リングフェライト磁石は、 (A1−x)O・n[(Fe1−yCo)
    (原子比率) (ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含
    む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、
    x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.0≦n≦6.4 0.01≦x≦0.4,及び 0.005≦y≦0.04 を満たす数字である。)により表される主要成分組成及
    び実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有する焼
    結磁石であり、EPMAにより前記焼結磁石のc面をLa又
    はCoについて面分析し、計数されたLa又はCoLeve
    lの最大値(Level,max)と最小値(Level,min)とから
    求めた中間値:(Level,max+ Level,min)/2よりも
    La又はCoLevelの高い部分を高濃度領域とし、かつ
    前記中間値以下のLa又はCoLevelの部分を低濃度領
    域と定義したとき、La又はCoの低濃度領域が少なく
    とも直径0.2μmの円が入る範囲で存在しているととも
    に、ボイドの発生率が6個/mm以下であることを特徴
    とする回転機。
  9. 【請求項9】 前記リングフェライト磁石は、 (A1−x)O・n[(Fe1−yCo)
    (原子比率) (ただし、AはSr及び/又はBaであり、RはYを含
    む希土類元素の少なくとも1種でありLaを必ず含み、
    x,y及びnはそれぞれ下記条件: 5.6≦n≦6.2, 0.15<x≦0.3,及び 1.0<x/2ny≦1.3 を満たす数字である。)により表される主要成分組成及
    びマグネトプランバイト型結晶構造を有し、CaO含有量
    が0.5〜1.5重量%であり、SiO含有量が0.25〜0.55重
    量%であり、かつc軸に平行な断面組織におけるマグネ
    トプランバイト型フェライト結晶粒のa軸方向の最大径
    (d)及びc軸方向の最大厚み(t)で定義するアスペ
    クト比(d/t)が2.5〜3.0のフェライト結晶粒から実
    質的になる焼結磁石である請求項8に記載の回転機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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