JP2000290823A - 直接紡糸延伸装置および糸条の製造方法 - Google Patents

直接紡糸延伸装置および糸条の製造方法

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JP2000290823A
JP2000290823A JP11099876A JP9987699A JP2000290823A JP 2000290823 A JP2000290823 A JP 2000290823A JP 11099876 A JP11099876 A JP 11099876A JP 9987699 A JP9987699 A JP 9987699A JP 2000290823 A JP2000290823 A JP 2000290823A
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heating
roller
heating roller
stretching
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JP11099876A
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Seiji Kiryu
誠司 桐生
Haruhiko Tsuji
治彦 辻
Hiroshi Otani
洋 大谷
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】織物や編物用途の実用に供し得る、延伸斑や染
め斑などの品質欠点の少ない合成繊維を高速かつ多糸条
同時に低コストで製糸し得る装置および方法を提供す
る。 【解決手段】紡糸口金と、加熱ローラ、および、紡出糸
条の走行方向に関して加熱ローラよりも下流側に設け
た、加熱ローラよりも高速度で回転する延伸ローラを含
む延伸手段とを備え、かつ、紡糸口金と加熱ローラとの
間に赤外線による加熱手段を設けた直接紡糸延伸装置を
用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、織物や編物用途の
実用に供し得る良好な特性を有する合成繊維を低コスト
で製造する装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】織物や編物に適したポリエステル繊維な
どの合成繊維を製造する方法については、例えば、特開
昭54−18918号公報に開示されるような紡糸工程
と延伸工程とを連続した方式が提案されている。この方
法は、加熱ローラとセパレートローラとで構成される一
対のローラに複数糸条を数周回巻き付けて延伸に必要な
温度にまで加熱した後に、より高速で回転する加熱ロー
ラとセパレートローラとで構成される別の一対のローラ
に数周回巻き付け両ローラ群の間で延伸した後、熱処理
するという、いわゆる、ネルソンローラ方式であり、延
伸斑や染め斑などの品質欠点の少ない繊維を得ることが
できるため工業的に実用化されている。
【0003】しかしながら、この方法では複数糸条を同
時に数周回にわたってー対の加熱ローラとセパレートロ
ーラとに巻き付ける作業、すなわち糸掛け作業時間が長
くなり、また、糸掛け作業時に通常用いる糸条吸引装置
(サクションガン)の取り扱いに負担を要するなど作業性
も悪い。特に、近年は6糸条や8糸条を同時に製糸する
多糸条化が進んでいるが、作業者は糸条数が増えるほど
より慎重に糸掛け作業を行わなければならず相当の負担
を強いられる。このような作業時間の延長や作業性の悪
化は糸掛け時の糸切れ頻度の増加につながるため操業性
や生産能力が低下し、結果として繊維製造コストが高く
なるという短所がある。
【0004】そこで、生産能力向上をねらいとして、従
来と同一の長さのローラを使用しつつも製糸数を増やす
こともできるが、この場合には巻き付け糸条の間隔を小
さくしなければならず、ローラ上の糸条同士の接触によ
る糸切れを誘発させ、操業性を悪化させる。一方、糸条
の間隔を小さくしないようローラ長を延長する方法もあ
るが、この方法では、ローラの製造コストのアップやロ
ーラの延長化にともなう糸掛け作業性の悪化、糸切れ頻
度の増加を招き、さらには、たとえば8糸条以上の多糸
条化に対する高速ローラの長さにも制約が生じる。
【0005】以上のように、いずれの方法にしても必ず
しも生産能力の向上による低コスト化につながるものと
はいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、延伸
斑や染め斑などの品質欠点の少ない合成繊維を高速かつ
多糸条同時に低コストで製糸し得る装置および方法を提
供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
の本発明は、紡糸口金と延伸手段とを有し、延伸手段
は、加熱ローラと、紡出糸条の走行方向に関して加熱ロ
ーラよりも下流側に設けた、加熱ローラよりも高速度で
回転する延伸ローラとを含み、かつ、紡糸口金と加熱ロ
ーラとの間に赤外線による加熱手段を設けた直接紡糸延
伸装置を特徴とするものである。
【0008】ここで、加熱手段を、紡出糸条を加熱ロー
ラと共働して加熱できるように配置したことや、加熱手
段がセラミックからなる赤外線放射体を備えていること
が好ましい。そして、紡糸口金と加熱手段との間に、紡
出糸条の冷却手段、油剤付与手段および交絡付与手段の
少なくとも一つを設けたことも好ましい。
【0009】また、上記課題を達成するための本発明
は、溶融紡糸した複数本の糸条を引き取り、延伸する直
接紡糸延伸による糸条の製造方法において、加熱ローラ
と延伸ローラとを用い、糸条を加熱ローラと延伸ローラ
に順次片掛けして延伸するとともに、加熱ローラの上流
側で赤外線を用いて加熱する糸条の製造方法を特徴とす
るものである。
【0010】このとき、紡出糸条をガラス転移点以下の
温度に冷却して固化した後、赤外線によりガラス転移点
未満の温度に加熱するとともに、加熱ローラによりガラ
ス転移点以上の温度に加熱することやが好ましい。そし
て、加熱ローラを1,500〜4,000m/分の範囲の
周速度で駆動するとともに、延伸ローラを加熱ローラの
周速度よりも早い周速度で駆動すること、赤外線による
加熱前の糸条に油剤を付与すること、赤外線による加熱
前の糸条に交絡を付与すること、さらには、5個/m以
下の交絡を付与することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】図1に示す本発明の直接紡糸延伸
装置は、底部にはポリエステル繊維などの糸条を溶融紡
出するための複数の吐出孔を有する紡糸口金2を設けた
溶融紡糸部1と、溶融紡糸部1によって紡出された糸条
をガラス転移点以下の温度にまで冷却して固化するため
の、冷却風を吹き出す冷却手段3と、冷却固化された糸
条への油剤付与手段4および交絡付与手段5と、赤外線
を用いて糸条をガラス転移点未満の範囲で予備加熱する
赤外線加熱手段6と、赤外線加熱手段6に引き続いて糸
条をガラス転移点以上の温度にまで連続的に加熱する加
熱ローラ7、加熱ローラ7周囲の雰囲気を保温して糸条
の加熱を効率的に行うための保温ボックス14および加
熱ローラ7よりも高速度で回転する延伸ローラ8とを含
む延伸手段とを順次設けている。そして、糸条の走行方
向に関して延伸手段よりも下流側には、糸条を熱処理す
る加圧スチーム処理手段9と、非加熱のローラ10、1
2の間に設けた交絡付与手段11と、複数本の糸条を同
時に巻き取るワインダー13とを有している。なお、本
発明において、糸条の走行方向に関して延伸ローラ8の
下流側が図2に示す構成であってもよい。
【0012】ここで、溶融紡糸部1には、同時に製糸す
る糸条の数と同数の紡糸口金が設けられており、また、
各紡糸口金2には、各糸条を構成する単糸の数と同数の
吐出口が設けられている。
【0013】冷却手段3は、糸条をガラス転移点以下の
温度にまで均一に冷却して固化するため、冷却風の整流
化手段などを有するものが好ましい。油剤付与手段4
は、ガイド給油装置やロール給油装置など糸条に均一に
給油できるものであれば何でもよく、また、交絡付与手
段5は、圧空の噴射孔を設けた交絡ノズル装置など糸条
に交絡をかけるものであれば何でもよい。
【0014】赤外線加熱手段6には、糸条を非接触で加
熱するために、図3に示すように、筺体20の中に赤外
線放射体21が対向するように配置してスリット形状の
加熱処理室22が形成されている。そして、赤外線放射
体21の周囲には保温のための断熱材23が、加熱処理
室22の開口部にはふた24が設けられている。
【0015】赤外線放射体21は、糸条の吸収する波長
に応じて選択することができる。糸条は、吸収した赤外
線エネルギーが繊維内部で分子の振動エネルギーに変換
され、分子の振動が活発化することで温度が上昇する。
したがって、ポリエステル繊維の場合、赤外線吸収波長
がおよそ2〜15μの範囲にあるので、赤外線放射体2
1の材質は、2〜15μの波長の範囲で糸条を効率的に
加熱できるものであれば何でも良い。しかし、糸条の加
熱効率の観点から、熱放射率が0.8〜0.9以上のセ
ラミック材料あるいは金属表面にセラミックを溶射した
材料を用いることが好ましい。
【0016】また、加熱処理室22の幅、すなわち、対
向する赤外線放射体21の距離は、糸条の雰囲気温度を
比較的高温に保つため、また、赤外線加熱手段6の幅方
向の長さを極力短くして加熱ローラとの距離を小さくす
るために、5〜20mmの範囲にすることが好ましい。
そして、糸条を加熱処理するための加熱処理室22の糸
条走行方向の長さは、対象とする糸条の繊度や速度によ
り異なるが、糸条の走行速度が1,500〜4,000m
/分の範囲の場合には加熱処理時間がおよそ0.01秒
〜0.02秒の範囲なるような長さにすることが好まし
い。加熱時間が短すぎると糸条を十分に加熱することが
できず次の工程で十分に延伸することができない。一
方、加熱時間が長すぎる場合には、糸条がガラス転移点
以上の温度に到達して延伸が起こり、繊維の配向結晶化
が進行する。そのため、後に所定の伸度になるように延
伸を行っても複屈折率が低い繊維となってしまう。
【0017】次に、加熱ローラ7は、1,500〜4,0
00m/分の範囲の周速度で回転するように、たとえ
ば、変速機付きモータ、インバータモータ等の公知の可
変速手段に直結されており、非接触式の赤外線加熱手段
6によって加熱された糸条をさらに加熱する。そして、
加熱ローラ7は、赤外線加熱手段6からの受け渡しの際
に糸条が冷却するのを防ぎ連続的に糸条を加熱できるよ
うに、赤外線放射加熱手段6の下流側直後に設けるこ
と、具体的には、赤外線加熱手段6との距離が300m
m以内になるように配置することがこのましい。そのた
めに、赤外線加熱手段6を図4に示すような形状にする
ことも好ましい。また、加熱ローラ7は、糸条の接触時
間が少なくとも0.005秒以上になるような直径を有
することが好ましく、さらに、糸条をしっかりと把持し
て引き取れるよう接糸表面に鏡面仕上げを施すことが好
ましい。
【0018】また、延伸ローラ8は、加熱ローラ7より
も早い周速度で回転するように、加熱ローラ7と同様に
たとえば変速機付きモータやインバータモータ等の公知
の可変速手段に直結されており、非接触式の赤外線加熱
手段6ならびに接触式の加熱ローラ7によりガラス転移
点以上に加熱された糸条を所定の延伸倍率で延伸する。
そして、また、延伸する糸条をしっかりと把持するよう
表面を鏡面仕上げにすることが好ましい。なお、延伸ロ
ーラ8は、所望する熱収縮特性に応じて、非加熱ロー
ル、加熱ロールのいずれかを選択すればよい。
【0019】そして、延伸ローラ8の下流側に設けられ
た加圧スチーム処理手段9は、延伸した糸条の熱収縮特
性を実用レベルにするためのものであって、目標とする
糸条の熱収縮特性が得られるように、ポリエステル繊維
の場合は105℃以上の加圧スチームを噴射できるもの
であることが好ましい。さらに、糸挿入を容易にするた
めに、赤外線加熱手段6の加熱処理室の形状と同様のス
リット形状の加熱処理室を設けることが好ましい。
【0020】非加熱のローラ10、12は、たとえば、
変速機付きモータ、インバータモータ等の公知の可変速
手段に直結されており、少なくとも延伸ローラ8と同程
度の周速度で回転できることが好ましい。そして、ロー
ラ10は、延伸ローラ8との相対速度に応じて、加圧ス
チーム処理手段9により熱処理される糸条の張力を制御
し、また、ローラ12は、ローラ10との相対速度に応
じて、交絡付与手段11により交絡処理される糸条の張
力を制御する。
【0021】また、延伸ローラ8の下流側に設けられた
交絡付与手段11は、交絡付与手段5と同様に、圧空の
噴射孔を設けた交絡ノズル装置など糸条に交絡をかける
ものであれば何でもよい。
【0022】ワインダー13は、少なくともローラ12
と同程度の速度で回転し複数本の糸条を同時に巻き取る
ものが好ましい。
【0023】上記のような装置を用いてたとえばポリエ
ステル糸条を製造する場合は、まず、溶融紡糸部1の底
部に装着した複数の吐出孔を有する紡糸口金2から溶融
樹脂を吐出し、冷却手段3の冷風によってガラス転移点
以下の温度にまで冷却して固化し、複数のポリエステル
単糸を得る。そして、この単糸で構成された紡糸口金2
の数に相当する各糸条に油剤付与手段4により油剤を、
交絡付与手段5により交絡を付与する。このとき、各糸
条を構成する各単糸群は油剤付与手段4もしくは交絡付
与手段5までの間に集束し、各々の糸条を形成する。引
き続き、各糸条を赤外線加熱手段6により非接触で予備
加熱するとともに、加熱ローラ7に片掛け接触させて延
伸に必要な温度にまで連続的に加熱する。延伸に必要な
温度にまで加熱した糸条を、加熱ローラ7よりも高速度
で回転する延伸ローラ8にも片掛けし、加熱ローラ7と
延伸ローラ8との間で所定の延伸倍率にまで延伸する。
そして、延伸した糸条には、加圧スチーム処理手段9に
より所定の熱収縮特性になるよう熱処理を施すととも
に、非加熱のローラ10、12間で交絡付与手段11に
より所定の交絡を付与した後に、ワインダー13で巻き
取る。なお、本発明における「片掛け」とは、ローラに
1周回未満の範囲で掛けることをいう。
【0024】ここで、赤外線加熱手段6による糸条の予
備加熱は、たとえば、セラミック材料あるいは金属表面
にセラミックを溶射した材料から構成される赤外線放射
加熱体21の輻射熱によってガラス転移点未満の温度範
囲で行われる。ガラス転移点以上の温度になり延伸が起
こると繊維の配向結晶化が進行し、その後に所定の伸度
になるように延伸を行っても複屈折率が低い繊維しか得
られない。なお、赤外線加熱手段6内での延伸の有無
は、赤外線加熱手段の入口直前20mmおよび出口直後
20mmの位置で測定される糸条の走行速度から判断で
き、繊維の弾性変形(伸び)領域、糸張力などから、入口
の速度低下が出口の速度に対してたとえば5%以下であ
れば延伸は起こっていないとみなす。従って、ガラス転
移点未満の温度範囲の中でもたとえば3〜5%程度の速
度低下になるよう糸条を加熱するのが好ましく、この場
合、赤外線放射体21の表面温度および加熱処理室22
内温度を300℃〜600℃の範囲に、また、加熱処理
時間をおよそ0.01秒〜0.02秒の範囲なるように
することが好ましい。
【0025】また、糸条を接触加熱する加熱ローラ7
は、糸条がガラス転移点以上の温度になるように、表面
温度を95℃以上、さらには105℃以上にすることが
好ましい。95℃未満では糸条を延伸するのに必要な温
度にまで十分に加熱することができない。また、加熱ロ
ーラ7は、表面温度が140℃以上となると得られる糸
条の強伸度が低下するとともに染めむらが生じて品位が
低下するため好ましくない。さらに、加熱ローラ7の径
は、糸条の加熱の均一化のために接触加熱時間が少なく
とも0.005秒以上になるような径にすることが好ま
しい。
【0026】ここで、ポリエステルは、主として、テレ
フタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸
等のジカルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピ
レングリコールおよびブチレングリコールなどのジオー
ル成分からなるが、実用に供し得る強度、伸度等の機械
的特性を有し、かつ、延伸斑や染め斑などの品質欠点の
少ないポリエステル繊維を得るために、ジカルボン酸成
分としてはテレフタル酸を用いることが好ましく、ま
た、ジオール成分としてはエチレングリコールを用いる
ことが好ましい。また、ポリエステルには、各種の添加
剤、たとえば、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸
収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、螢光増白剤などを必要
に応じて共重合または混合させてもよい。
【0027】次に、本発明の糸条の製造方法について説
明する。本発明の直接紡糸延伸による糸条の製造方法に
おいては、口金から紡出された糸条を一旦ガラス転移点
以下の温度に冷却した固化した後、赤外線放射によりガ
ラス転移点未満の温度の範囲で予備加熱するとともに、
引き続いて1,500〜4,000m/分の範囲の周速度
で駆動される加熱ローラに接触させることによりガラス
転移点以上の温度に加熱する。
【0028】このとき、溶融紡糸した複数本の糸条を加
熱ローラと延伸ローラとに順次片掛けして延伸するとと
もに、加熱ローラの上流側で糸条を赤外線を用いて加熱
するため、糸道構成を簡素化できる。また、上記構成に
よって、従来のような複数の糸条をセパレートローラに
同時に数周回巻き付ける作業が不要になるため、糸掛け
作業時間を大幅に短縮できるとともに、糸掛け時の糸切
れ頻度の減少による操業性や生産能力の向上により繊維
製造コストを低くすることが可能となる。さらに、従来
のネルソンロール方式では困難であった8糸条を超える
多糸条の同時製糸、たとえば、12糸条、16糸条の同
時製糸にも容易に対応することができ、生産能力の向上
による低コスト化が可能となる。
【0029】また、ポリエステル繊維などの場合、非加
熱、すなわちガラス転移温度未満である室温付近の温度
で延伸すると糸条の長手方向に太さ斑などの変動が生
じ、また、力学的特性として強伸度の劣ったものとなる
が、本発明においては、糸条を、赤外線によりガラス転
移点未満の温度の範囲で予備加熱するとともに加熱ロー
ラに接触させてガラス転移点以上の温度に加熱するの
で、ネルソンローラを用いない片掛け方式であっても、
糸条を適切に加熱することができる。
【0030】そして、本発明においては、加熱ローラを
1,500〜4,000m/分の範囲の周速度で駆動する
とともに、延伸ローラを加熱ローラの周速度よりも早い
周速度で駆動することが好ましい。加熱ローラの周速度
を1,500m/分未満とする場合には、目標とする物
性の繊維を得るために必要な延伸倍率から計算される延
伸後の糸速を高速にすることができず、生産能力が低下
してしまう。また、加熱ローラの周速度が4,000m
/分以上を超える場合、加熱ローラ7に到達する前に慣
性力、空気抵抗により糸条は延伸されてしまい結晶相の
多い構造が形成されてしまうため、その後に所定の伸度
になるよう延伸しても、複屈折率が低くなるなど良好な
力学的特性を有する繊維が得られない。さらに、付け加
えるならば、延伸後の糸速度を4,000m/分以上に
する延伸倍率を設定することが均一延伸に対して有利と
なる。なお、高速化に伴う紡糸糸切れによる製糸性悪化
のデメリットおよび生産性向上のメリットを考慮した場
合、延伸後の糸条速度は7,000m/分程度までが好
ましい。
【0031】また、本発明においては、赤外線による加
熱前の糸条に油剤を付与することが好ましい。ここで、
油剤は、濃度が15%以下のものを、繊維重量に対して
1%以上付与することが好ましい。
【0032】さらに、本発明においては、糸条の加熱ロ
ーラとの接触、離反による毛羽発生や、延伸ローラ上で
の単糸の逆巻きなどを防ぐために、赤外線による加熱前
の糸条に交絡を付与することが好ましい。交絡数として
は、上記効果を得るためには0.5個/m以上とするこ
とが好ましいが、一方、赤外線放射加熱装置6および第
1加熱ローラ7とによる糸条加熱の際の単糸間の加熱斑
を防ぐためには、5個/m以下が好ましい。
【0033】また、本発明では、延伸した糸条に所望の
熱収縮特性を付与するために熱処理を施すことが好まし
い。熱処理の方法としては、赤外線による乾熱式や加圧
スチームなどの非接触式の熱処理や、加熱ローラ等によ
る接触式の熱処理が挙げられる。
【0034】
【実施例】実施例中の各特性値は次の方法にしたがって
求めた。 A.交絡度 たとえば、ROTHSCHILD社製Needle-Pull-Tester R-2060
を用い、糸条の走行速度を5m/分、N数を30、Trip
張力を0.25×(糸条繊度)/(単糸数)(g)とし
て、Trip張力に達するまでの平均走行距離(m)を求め、
その逆数を測定値とした。 B.加熱ローラ表面温度 接触式の表面温度計(たとえば、アンリツ計器(株)製Di
gital Surface Thermometer HL-200)により測定
した。 C.赤外線放射加熱手段の熱処理室内温度 K熱電対で測定した。 D.糸速度 たとえばTSI社製レーザースピード(TM)システム
LS50Mにより測定した。 E.製糸安定性 製糸の際に生じた1糸条1日当たりの糸切れ回数で示し
た。 F.染め斑 経糸に30デニール、6フィラメントのポリエステル延
伸糸、緯糸に実施例によって得られた糸条を用い、75
本/inchの織密度で製織して400cm2 の試料織物を
得た。そして、その試料織物を、テラシールネイビーブ
ルーを95℃、10リットルの沸騰水中に2g加えた染
料に15分間浸漬し、撹拌しつつ染色した。その後、そ
の試料織物を水洗、乾燥し、濃染スポットを観察した。
その濃染スポットの個数を染め斑として表示した。 実施例1〜4 図1の装置を用い、加熱ローラ7、延伸ローラ8、ロー
ラ10、12それぞれに糸条を片掛けして直接紡糸延伸
を行い、8本の50デニール/24フィラメントのポリ
エステル繊維を得た。具体的には、まず、ポリエチレン
テレフタレートを290℃で溶融して吐出孔数を24個
設けた8個の紡糸口金2から紡出した。そして、20℃
の空気を25m/分、糸条に対して垂直に送風する冷却
手段3により、紡出した8糸条を1.0mにわたって冷
却した後、口金下2.0mに設置した油剤付与手段4に
より濃度10%の水エマルジョン油剤を付与して単糸を
集束させるとともに、交絡付与手段5で0.5個/mの
交絡を付与した。引き続き、赤外線加熱手段6で糸条を
0.6mにわたって予備加熱するとともに、直径0.3
5mの加熱ローラ7により延伸に必要な温度にまで連続
的に加熱した。そして、加熱ローラ7の周速度を2,5
00m/分とするとともに非加熱の延伸ローラ8の周速
度を5,000m/分とし、両者の周速度の比に従って
糸条を延伸した。さらに、延伸ローラ8を通過した糸条
を、加熱処理室内圧力が2.0kg/cm2に維持され
ている加熱処理長0.5mの加圧スチーム処理手段9に
より熱処理し、非加熱のローラー10、12間の交絡付
与手段11により交絡を付与して、ワインダー13で巻
き取った。
【0035】表1に、加熱ローラ7の表面温度、赤外線
加熱手段6内の加熱処理室内の温度、赤外線加熱手段6
の入口および出口における糸条速度、その糸条速度から
判断した赤外線加熱手段6内糸条の延伸の有無、製糸安
定性、得られた糸条の染め斑を示す。 比較例1 赤外線加熱手段6を使用しない以外は実施例2と同様に
して、8本の50デニール/24フィラメントのポリエ
ステル繊維を得た。表1に、製糸安定性、得られた糸条
の染め斑を示す。 比較例2 加熱ローラ7を加熱しない以外は実施例2と同様にし
て、8本の50デニール/24フィラメントのポリエス
テル繊維を得た。表1に、製糸安定性、得られた糸条の
染め斑を示す。
【0036】
【表1】
【0037】これらの結果、本発明による赤外線加熱手
段と加熱ローラと延伸ローラとを用いた直接紡糸延伸に
より、延伸斑や染め斑などの品質欠点の少ない合成繊維
を高速かつ多糸条同時に製糸し得ることが分かる。
【0038】
【発明の効果】本発明は、直接紡糸延伸による多糸条同
時製糸において、紡糸口金と加熱ローラとの間に赤外線
による加熱手段を設け糸条を予備加熱するので、糸条を
加熱ローラに片掛けするだけで延伸に必要な温度にまで
十分に加熱することができ、延伸斑や染め斑などの品質
欠点の少ない糸条を低コストで製造することが可能とな
る。また、糸条を加熱ローラに片掛けするだけでネルソ
ンローラに数周回も巻き付ける必要がないので、同等の
大きさの装置であってもさらに多くの同時製糸が可能に
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示す直接紡糸延伸装置の
概略図である。
【図2】本発明の他の実施態様を示す直接紡糸延伸装置
の概略図である。
【図3】赤外線加熱手段の概略横断面図である。
【図4】赤外線加熱手段の外観形状を示す概略図であ
る。
【符号の説明】
1:溶融紡糸部 2:紡糸口金 3:冷却手段 4:油剤付与手段 5:交絡付与手段 6:赤外線加熱手段 7:加熱ローラ 8:延伸ローラ 9:加圧スチーム処理手段 10:第3ローラ 11:交絡付与手段 12:第4ローラ 13:ワインダー 14:保温ボックス 20:筺体 21:赤外線放射加熱体 22:加熱処理室 23:断熱材 24:ふた Y:ポリエステル繊維糸条
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L036 AA01 PA01 PA03 PA12 PA18 PA26 PA42 UA25 4L045 AA05 BA03 CA25 CB13 DA09 DA10 DA14 DA15 DA23 DA42 DA52 DA53 DA60 DB07

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】紡糸口金と延伸手段とを有し、延伸手段
    は、加熱ローラと、紡出糸条の走行方向に関して加熱ロ
    ーラよりも下流側に設けた、加熱ローラよりも高速度で
    回転する延伸ローラとを含み、かつ、紡糸口金と加熱ロ
    ーラとの間に赤外線による加熱手段を設けたことを特徴
    とする直接紡糸延伸装置。
  2. 【請求項2】加熱手段を、紡出糸条を加熱ローラと共働
    して加熱できるように配置した、請求項1に記載の直接
    紡糸延伸装置。
  3. 【請求項3】加熱手段がセラミックからなる赤外線放射
    体を備えている、請求項1または2に記載の直接紡糸延
    伸装置。
  4. 【請求項4】紡糸口金と加熱手段との間に、紡出糸条の
    冷却手段、油剤付与手段および交絡付与手段の少なくと
    も一つを設けた、請求項1〜3のいずれかに記載の直接
    紡糸延伸装置。
  5. 【請求項5】溶融紡糸した複数本の糸条を引き取り、延
    伸する直接紡糸延伸による糸条の製造方法において、加
    熱ローラと延伸ローラとを用い、糸条を加熱ローラと延
    伸ローラに順次片掛けして延伸するとともに、加熱ロー
    ラの上流側で赤外線を用いて加熱することを特徴とする
    糸条の製造方法。
  6. 【請求項6】紡出糸条をガラス転移点以下の温度に冷却
    して固化した後、赤外線によりガラス転移点未満の温度
    に加熱するとともに、加熱ローラによりガラス転移点以
    上の温度に加熱する、請求項5に記載の糸条の製造方
    法。
  7. 【請求項7】加熱ローラを1,500〜4,000m/分
    の範囲の周速度で駆動するとともに、延伸ローラを加熱
    ローラの周速度よりも早い周速度で駆動する、請求項5
    または6に記載の糸条の製造方法。
  8. 【請求項8】赤外線による加熱前の糸条に油剤を付与す
    る、請求5〜7のいずれかに記載の糸条の製造方法。
  9. 【請求項9】赤外線による加熱前の糸条に交絡を付与す
    る、請求項5〜8のいずれかに記載の糸条の製造方法。
  10. 【請求項10】5個/m以下の交絡を付与する、請求項
    9に記載の糸条の製造方法。
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