JPH06240514A - 強撚用に適したポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

強撚用に適したポリエステル繊維の製造方法

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JPH06240514A
JPH06240514A JP5143593A JP5143593A JPH06240514A JP H06240514 A JPH06240514 A JP H06240514A JP 5143593 A JP5143593 A JP 5143593A JP 5143593 A JP5143593 A JP 5143593A JP H06240514 A JPH06240514 A JP H06240514A
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JP
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roller
yarn
heating
speed
winding
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JP5143593A
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English (en)
Inventor
Nobuaki Takagi
伸明 高木
Koji Nakatsuka
耕二 中塚
Haruhiko Kanda
晴彦 神田
Keizo Tsujimoto
啓三 辻本
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Nippon Ester Co Ltd
Original Assignee
Nippon Ester Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 直接紡糸延伸法によりシボ立ち性が良好で,
しかも高品位なシボ質を得ることが可能な強撚用に適し
たポリエステル繊維の製造方法を提供する。 【構成】 ポリエステルポリマーの溶融吐出糸条をガラ
ス転移温度以下に冷却・固化した後, 100℃以上の非接
触の加熱ゾーンを通過させながら加熱引取りローラ5で
引取って第1段の延伸を行い, 次いでローラ5と加熱延
伸ローラ6との間で第2段の延伸を施す紡糸直接延伸方
法で, 糸条速度を2500m/min 以下とし, さらにローラ6
と捲取機との間に非加熱の中間ローラ7を設けて, ロー
ラ6,7間の糸条張力YTを下式aの範囲に維持し, 下
記b〜dの条件を同時に満足する強撚用ポリエステル繊
維を得る。 a糸条張力 0.2≦YT≦1.2g/d b熱ピーク応力 ST≧0.20g/d c熱ピーク温度 TP≧110℃ d乾熱収縮率差 DS190 −DS100 ≧7 DS190 :190℃における乾熱収縮率% DS100 :100℃における乾熱収縮率%

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は, 強撚用に適したポリエ
ステル繊維の製造方法に係わり, さらに詳しくは, 直接
紡糸延伸法によりシボ立ち性が良好で, しかも高品位な
シボ質を得ることが可能な強撚用に適したポリエステル
繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】合成繊維, 特にポリエステル系の繊維を
用いた強撚編織物の製造方法は種々提案されているが,
天然繊維の絹に匹敵するような優雅で均斉なシボ質の強
撚編織物は未だ得られていないのが現状である。
【0003】強撚用原糸としては,特公昭51-23619号公
報や特公昭56-8140号公報に, 紡糸−延伸後に高温で熱
処理するか, あるいは延伸時に高温で熱処理することに
より,糸条の密度を従来の糸条よりも高くした糸条が提
案されている。しかしながら,このように糸条の密度が
高いものは, 撚止めセットがきき難い, そのために
整経−製織時での取扱いに従来糸条以上に注意が必要,
シボ立て時に編織物面にツノや地割れが発生しやす
い, 製品の寸法安定性が悪い, 等多くの欠点を有して
いる。
【0004】また,近年では,ポリエステル繊維の製造
に紡糸直接延伸法、いわゆるスピンドロー法を用いるこ
とが多くなってきた。しかも,高速捲取機の進歩により
捲取速度が5000m/min を超える高速紡糸直接延伸法が優
勢になりつつある。こうした製糸方法によれば, 従来の
延伸糸を代替するポリエステル繊維を極めて効率よく製
造することができるが,スピンドロー法で製糸した繊維
は, 強撚織物用に適用できないことが多かった。
【0005】すなわち, 5000m/min以上で捲き取る場
合,通常引取りローラの速度は3000m/min 以上となるの
で, 紡糸時に繊維中に結晶の核が生成する。このような
場合,捲き取った糸条は, 通常の延伸糸に比較して熱収
縮特性が均一性の高い繊維構造となるため, 強撚糸にし
た時の解撚トルクが弱く,デシン, ジョーゼット等の強
撚織物としては,シボ発生能力やシボ品位が悪いという
欠点があった。
【0006】また,特開昭59-71414号公報には,紡糸速
度4000m/min 以上で高速紡糸して得られた乾熱収縮応力
曲線におけるピーク温度が規定以上の高密度低配向繊維
を低温熱セットし,省エネルギー型の強撚原糸として用
いることが提案されているが,低温熱セットではセット
後の強撚糸の経時変化があり,製品の均一性が損なわれ
るとか,熱セット温度の僅かの違いにより,シボ立ち性
が変化する等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記の問題
を解決し,紡糸直接延伸法で製糸するにもかかわらず,
熱応力が高く,シボ立ち性が良好で,しかも高品位なシ
ボ質を得ることが可能な強撚用に適したポリエステル繊
維を製造する方法を提供することを技術的な課題とする
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記の問
題を解決し,シボ発現能力,シボ品位を向上させるため
種々の検討を行った結果,2500m/min以下の紡糸速度で紡
糸し, これを延伸熱処理する際, ある範囲の張力を維持
した緊張熱処理を行えば, 強撚・撚止めセットした後の
解撚トルクが大幅に増大することがわかった。しかしな
がら, このような方法ではポリマーの吐出量が低く, 最
新の高速製糸方法が採用できない時代遅れの生産方法と
なり, 生産性から考えても魅力の低い方法にすぎない。
本発明者らは, この問題に関し, 紡糸速度が2500m/min
以下であっても最終の捲取速度が高速で生産性の高いシ
ステムを開発すべく検討を重ねた結果, 引取りローラの
上流側に非接触の加熱ゾーンを設け, このゾーン中を糸
条を通過させる過程で, 空気抵抗と熱の効果により糸条
の延伸を実施し,次に一対の加熱ローラ間で再度延伸を
施すことにより,紡糸速度が2500m/min 以下で, しかも
高速捲き取りが可能な方法を見い出して本発明に到達し
た。
【0009】すなわち,本発明は,ポリエステルポリマ
ーを紡糸孔を通して溶融吐出し, 糸条をポリエステルの
ガラス転移温度以下に冷却・固化した後, 100℃以上の
非接触の加熱ゾーンを通過させながら加熱引取りローラ
で引取って第1段の延伸を行い, 次いで加熱引取りロー
ラと加熱延伸ローラとの間で第2段の延伸を施して捲き
取るに際し, 加熱ゾーン入口直前の糸条速度を2500m/mi
n 以下とし, さらに加熱延伸ローラと捲取機との間に非
加熱の中間ローラを設けて, 加熱延伸ローラと中間ロー
ラとの間の糸条張力(YT)を下式(a)の範囲に維持
し, 前記中間ローラを経て捲き取ることを特徴とする下
記(b)〜(d)の条件を同時に満足する強撚用に適し
たポリエステル繊維の製造方法を要旨とするものであ
る。 (a)糸条張力 0.2≦YT≦1.2 (g/d) (b)熱ピーク応力 ST≧0.20 (g/d) (c)熱ピーク温度 TP≧110 (℃) (d)乾熱収縮率差 DS(190) −DS(100) ≧7 DS(190) :190℃における乾熱収縮率(%) DS(100) :100℃における乾熱収縮率(%)
【0010】なお,本発明における物性値は次の方法で
測定するものである。 乾熱収縮率 JIS−L1013 B法に準拠して測定する。 熱応力 試料 100mmを輪とし, 一端を固定し他端に0.05g/d の荷
重を掛けた状態で熱応力測定器KE−2型(カネボウエ
ンジニアリング社製)にセットし,昇温速度150℃/minで
温度30〜 200℃の範囲で熱応力曲線を求める。応力曲線
の最高頂点をピーク応力, その時の温度をピーク温度と
する。 糸条張力 テンションチェッカーCB型(金井工機社製)を用い,
図1のA点とB点の糸条張力を測定し, この張力を目標
繊度で除して求める。
【0011】以下,本発明を図面により詳細に説明す
る。
【0012】図1は,本発明の一実施態様を示す概略工
程図であり,スピンブロック1を経て溶融吐出された糸
条2は冷却固化された後, 実質的に非接触の加熱装置3
を通過中に空気抵抗と熱の効果で第1段の延伸が施さ
れ,次いで,油剤付与装置4でオイリングされてから加
熱引取りローラ5に至る。そして,糸条2は加熱引取り
ローラ5と加熱延伸ローラ6との間で第2段の延伸が施
された後,非加熱の中間ローラ7を経て捲取機8により
捲き取られる。
【0013】その際,加熱装置3は, 糸条温度がTg以下
になった位置に設ける必要がある。糸条温度がTgを超え
ていると,糸条を構成するポリマーは固化していない状
態であり,このため加熱装置3内で糸条の延伸は起こら
ず,空気抵抗により生ずる張力でポリマー状態で細化
し,切断しやすくなる。加熱装置3を, 糸条温度がTg以
下になった位置に設置するためには,紡糸口金から加熱
装置3上端までの距離を, 単糸繊度等にもよるが通常10
00mm以上とすればよい。
【0014】また,加熱装置3の入口直前の糸条速度
(紡糸速度)は 2500m/min以下, 好ましくは2000m/min
以下とする必要がある。この理由は, 乾熱収縮率差が紡
糸速度に依存するため, 紡糸速度が上昇すればするほど
乾熱収縮率差が小さくなり,紡糸速度が2500m/min を超
えると, 7%以上を維持することができなくなるからで
ある。
【0015】次に,加熱装置3の前後で施される第1段
の延伸倍率は,紡糸速度,加熱温度,加熱部の長さ,紡
糸口金から加熱装置入口までの距離,糸条の単糸繊度や
総繊度等により変動するが,通常1.1〜2.0倍程度であ
る。加熱装置3は非接触タイプのものを使用する必要が
あるが,チューブタイプのものが最もよく,加熱方式は
遠赤外線ヒータを組み込んだものや,熱媒封入によるヒ
ータ加熱タイプがよい。冷却固化された糸条は,このチ
ューブ内を通過する過程で空気抵抗と加熱作用により延
伸されるため,空気抵抗を高めるために加熱装置の3上
流で集束せず,加熱装置3を出た後で集束するのが好ま
しい。本発明において,糸条を,加熱装置3を通過中に
空気抵抗と熱の効果で第1段の延伸を施すためには,加
熱装置3に非接触で延伸する必要があるが,加熱装置3
の入口で加熱装置内壁と糸条が糸揺れなどで局部的に接
触してもよい。
【0016】加熱装置3の温度は 100℃以上に設定する
必要がある。加熱温度が 100℃未満になると糸条をTg以
上に加熱するのが難しく, 糸条の延伸が起こり難くな
る。加熱装置3の温度は 150℃以上, 特に 200℃以上が
好ましいが, 作業性を考慮すると 250℃以下が好まし
い。加熱ゾーンの長さは1000〜3000mm程度が好ましい。
加熱ゾーンの長さが1000mm未満では, 糸条に加熱時間を
十分に与えることができないため延伸倍率が高くならな
い等の問題を生ずる場合がある。また,3000mmを超える
と,作業性が悪化したり, スペース的に据え付けができ
ない場合がある。
【0017】加熱装置3による第1段の延伸を終えた糸
条は, 給油装置4でオイリングされる。この給油装置4
は, ローラータイプ, ガイドタイプのいずれでもよい
が,ガイドタイプの給油装置4でオイリングと糸条の集
束を行うのが設備上シンプルとなり好ましい。
【0018】オイリングされた糸条2は,加熱引取りロ
ーラ5と加熱延伸ローラ6との間で第2段の延伸が施さ
れる。図1に示すとおり,加熱引取りローラ5と加熱延
伸ローラ6は各々セパレートローラ9,10を有し,糸条
2は加熱引取りローラ5とセパレートローラ9間及び加
熱延伸ローラ6とセパレートローラ10間で多重ラップさ
れており,加熱引取りローラ5と加熱延伸ローラ6との
周速度の差を利用して延伸される。この場合,加熱引取
りローラ5は80〜 120℃, 加熱延伸ローラ6は110〜 15
0℃程度に設定するのが好ましい。加熱延伸ローラ6の
加熱は, 延伸後の繊維の熱的安定性を確保するために行
うものであり,このため設定温度は加熱引取りローラ5
より高くするのがよい。延伸倍率は, 紡糸速度等にもよ
るが,通常1.2〜2.0倍程度が好ましい。
【0019】本発明で特に重要な点は,加熱延伸ローラ
6で延伸した糸条2を直接捲取機8で捲き取るのではな
く,非加熱の中間ローラ7を経由させて捲取機8で捲き
取ることである。しかも,加熱延伸ローラ6と中間ロー
ラ7との間の糸条2の張力を0.2〜1.2g/d に維持しな
ければならない。糸条2の張力をこの範囲に維持するに
は, 中間ローラ7の周速度を調節すればよい。
【0020】加熱延伸ローラ6で延伸した糸条2を直接
捲取機8で捲き取る方法では, 糸条の捲き形態や取扱性
を考慮して捲取張力を0.05〜0.15g/d 程度に調整してい
るが, このため, 加熱延伸ローラ上でラップされた糸条
の下流側ではローラの熱により収縮し, 糸条の熱応力が
減殺される。これに対し, 本発明では,加熱延伸ローラ
6と捲取機8との間に非加熱の中間ローラ7を設置し,
加熱延伸ローラ6と中間ローラ7との間の糸条張力を前
記範囲に維持するので,強撚用として好適な熱応力の繊
維を製造することができる。この張力が0.2g/d 未満で
は, 張力が低いので加熱延伸ローラ6上で糸条の収縮が
起こって熱応力値が低下し,熱ピーク応力を0.2g/d 以
上に維持することが不可能となる。また,張力が1.2g/
dを超えると,この張力により糸条の塑性変形が生じ,こ
のため繊維内部に蓄えられた力が解放されるので熱応力
値が減少する。このような理由から加熱延伸ローラ6と
中間ローラ7との間の糸条張力は前記した範囲を維持し
なければならない。
【0021】非加熱の中間ローラ7を経た糸条2は捲取
機8で捲き取るが,中間ローラ7と捲取機8間の糸条張
力,すなわち捲取張力は,捲き状態や取扱性を考慮して
決定する必要があり,0.05〜0.15g/d 程度が好ましい。
【0022】中間ローラ7を経て捲取機8で捲き取られ
る糸条は,熱応力曲線におけるピーク応力(ST)が0.
20g/d 以上,好ましくは0.22〜0.5g/d となる。ピーク
応力が0.20g/d 未満になると,後述する乾熱収縮率差が
式(d)を満足しても,収縮応力が不足するため撚糸,
撚止めセット後の繊維の残留トルクが低くなり,強撚を
施しても良好なシボを発生させることができない。ま
た,ピーク応力が0.5g/d を超えると,残留トルクが強
すぎるためシボの発現性はよいが,上品で高品位なシボ
質が得られず,最終製品として魅力ある製品とはならな
い場合がある。
【0023】次に,捲き取られる糸条の熱応力曲線にお
けるピーク温度(TP)は,110℃以上でなければならな
い。ピーク温度が 110℃未満の場合,強撚後の撚止めセ
ット温度を低くしなければならず,このため撚止めセッ
ト糸の経時変化があり,シボ発現処理時に発生斑を生じ
て布帛の品位を著しく損なう。
【0024】また,190℃の乾熱収縮率と 100℃の乾熱収
縮率との差である乾熱収縮率差は,簡易的に乾熱収縮曲
線の勾配を示したものであるが, 捲き取られる糸条のこ
の値は7%以上である必要がある。強撚工程で撚糸され
た糸条には撚止めセットが施されるが, この温度は85〜
100℃であり, この際の熱履歴によってこの温度領域の
収縮率はある程度減殺される。このため,乾熱収縮率差
が7%未満では,セット後の繊維の有する収縮率や収縮
応力がシボを発生させる能力を有しなくなり,良好なシ
ボ立ち性を得ることができない。乾熱収縮率差が7%以
上あれば, 減殺された残分の高温サイドでの熱収縮性能
が存在し,このため,残留トルクもシボを立たせるために
十分な量残存しており, 良好なシボ立ち性を有する糸条
となる。
【0025】捲き取られる糸条の沸水収縮率は特に限定
されるものではないが,5〜15%,特に5〜10%が好ま
しい。沸水収縮率が5%未満の場合、編織物の加工工程
で十分な収縮が生じず,良好なシボ立ち性が得られない
ことや風合がペーパーライクになる欠点を生じる場合が
ある。また,沸水収縮率が15%を超えると,収縮が大き
くなりすぎて布帛の風合が硬くなる場合がある。
【0026】また,捲き取られる糸条の強度は3.5g/d
以上, 伸度は50%以下,特に20〜40%が好ましい。強度
が3.5g/d 未満では,撚糸時や製織時に糸切れが発生す
る場合があり,このため収率や製品品位の低下を生じる
ことがある。また, 伸度が50%を超えると, 繊維が不安
定で伸びやすく, 撚糸, 製織工程で加工に対して十分耐
えられない場合がある。
【0027】本発明において,ポリエステルはポリエチ
レンテレフタレートが好ましいが,その特性を損なわな
い範囲で第3成分を共重合したポリエステルでもよい。
共重合成分としては, 例えばアジピン酸, セバシン酸,
アゼライン酸, イソフタル酸, 5−ナトリウムスルホイ
ソフタル酸, ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸類,
オキシ安息香酸等のオキシ酸類及びジエチレングリコー
ル, プロピレングリコール, 1,4-ブタンジオール, ネオ
ペンチルグリコール, ペンタエリスリトール等のグリコ
ール類のうちから1種又は2種以上のものを使用するこ
とができる。
【0028】本発明におけるポリエステル繊維の固有粘
度[η]は特に限定されるものではないが, 通常衣料用
途に使用される0.3〜0.9の範囲が好ましい。本発明で
得られる繊維の主な目的である強撚用途を考えると, 0.
5〜0.8の範囲が特に好ましい。
【0029】本発明において, ポリエステル繊維は, 単
糸繊度や断面形状を異にするフィラメントの集合体, す
なわち紡糸混繊糸であってもよく,さらに他のポリマー
との混繊糸又はコンジュゲート繊維であってもよい。
【0030】
【実施例】次に,本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお,評価に使用した物性値等は次の測定方法で実
施した。 固有粘度[η] フエノールとテトラクロルエタンとの等重量混合溶媒を
用い,温度20℃で測定した。 ガラス転移温度(Tg) 示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−2型)
を用いて, 昇温速度20℃/min で測定した。 糸条速度 加熱装置上端の糸条速度(YS) は,加熱装置上端より50
mm上流の糸条速度をHe−Neレーザー発生機を備えたLase
r Doppler Velositimeter(カノマックス社製)で測定し
た。引取り速度及び捲き取り速度は引取りローラと捲取
機の速度を用いた。 強度,伸度 定速伸長型引張試験機テンシロンUTM-III型(オリエ
ンテック社製)を用い,つかみ間隔 100mm, 引張速度 100
mm/minの条件下で破断時の強力と伸度を求め,強力を別
に測定した繊度で除して強度を算出した。 沸水収縮率 JIS−L1013 A法に準拠して測定した。 残留トルク 試料を施撚(S撚:2500T/M)し, その後85℃の湿熱
条件下で45分間撚止めセットした。この強撚糸 100mmの
中央部に2mg/dの荷重を加えた後、両端を合わせて発生
する2重撚数(T/50cm)を測定して評価した。
【0031】実施例1〜2,比較例1〜2 [η]が0.64, Tgが75℃, 艶消剤としてTiO2を0.4重量
%含有するポリエチレンテレフタレートを用い,図1に
示した工程に従い, 直径 0.3mmの紡糸孔を36孔有する紡
糸口金から吐出量46.8g/min で溶融吐出し, 温度25℃,
風速0.4m/secの横吹き冷却風により長さ800mm にわた
って冷却した。
【0032】引き続いて,冷却された糸条を, 紡糸口金
より1500mmの位置に設けた, 熱媒ヒータにより 190℃に
加熱されたチューブ(有効長1300mm, 内径35mm)中に通
して第1段目の延伸を行った後, ガイドタイプの給油装
置で糸条に油剤付着量として0.8重量%給油すると同時
に集束を行った。
【0033】次いで,加熱引取りローラと加熱延伸ロー
ラとの間で第2段目の延伸を施した後, 中間ローラを経
由して5700m/min の速度で捲き取った。この時の加熱延
伸ローラと中間ローラ間の糸条張力(YT)を0.35g/d
とし, その後捲取り張力を0.10g/d となるように捲取速
度を調整しながら捲き取って,75d/36fの延伸糸条を
得た。この際の加熱装置上端の糸条速度(YS), 引取
り速度, 第1及び第2段目の延伸倍率, 加熱引取りロー
ラと加熱延伸ローラの温度及び得られた繊維の物性等を
表1に示す。
【0034】また,得られた繊維をそれぞれS撚とZ撚
に2500T/mで強撚した後, 85℃で撚止めセットした。
得られたS撚糸とZ撚糸を1本交互に配置して経糸と
し,S撚糸を緯糸に用いて, 経糸密度78本/2.54cm、緯
糸密度71本/2.54cmで平織物を織成した。得られた強撚
織物をワツシャーシボ立て法にて,100℃×45分でシボ立
て処理を施した後,5%NaOH水溶液にて15重量%の減量
加工を施した。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】表1から明らかなように,実施例1,2で得
られた繊維は残留トルクが大きく,この繊維からの織物
は,シボ立ち性がよく,シボの品位も良好であった。
【0037】一方,加熱装置上端の糸条速度が2500m/min
を超える条件で製糸した比較例1,2で得られた繊維
は,熱応力特性は本発明を満足したものの,乾熱収縮率
差が小さく,このため,いずれもシボ立ち性やシボの品
位が実施例1,2のものより劣っていた。
【0038】実施例3〜4,比較例3〜4 加熱延伸ローラと中間ローラとの間の糸条張力を種々変
更した以外は実施例1と同じ条件で製糸し,次いで織物
を製造した。この時の条件及び得られた繊維の物性と織
物の評価結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】表2から明らかなように,実施例3,4で得
られた繊維は残留トルクが大きく,この繊維からの織物
は,シボ立ち性がよく,シボの品位も良好であった。
【0041】一方,A点における糸条張力を0.1g/d
(比較例3)とした繊維と,1.40g/d(比較例4)とし
た繊維は,いずれも熱ピーク応力が低く,このためシボ
立ち性やシボの品位が実施例3,4のものより劣ってい
た。
【0042】比較例5 加熱装置の温度を90℃とした以外は実施例1と同じ条件
で製糸した。この時の加熱装置上端の糸条速度はほぼ引
取り速度と同じであり, 第1段目の延伸ができなかっ
た。また,得られた繊維の乾熱収縮率差は3.8%と低
く, 強撚用の原糸として不適当なものであった。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば,紡糸直接延伸法を用い
て,乾熱収縮率差が大きく,しかも熱ピーク応力が高い
強撚用に適したポリエステル繊維を安価にしかも安定し
て製造することができ,ポリエステル繊維の利用分野を
大幅に拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1 スピンブロック 2 糸条 3 加熱装置 4 油剤付与装置 5 加熱引取りローラ 6 加熱延伸ローラ 7 中間ローラ 8 捲取機 9 セパレートローラ 10 セパレートローラ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D02G 3/30 D02J 1/22 K

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステルポリマーを紡糸孔を通して
    溶融吐出し, 糸条をポリエステルのガラス転移温度以下
    に冷却・固化した後, 100℃以上の非接触の加熱ゾーン
    を通過させながら加熱引取りローラで引取って第1段の
    延伸を行い,次いで加熱引取りローラと加熱延伸ローラ
    との間で第2段の延伸を施して捲き取るに際し, 加熱ゾ
    ーン入口直前の糸条速度を2500m/min 以下とし, さらに
    加熱延伸ローラと捲取機との間に非加熱の中間ローラを
    設けて, 加熱延伸ローラと中間ローラとの間の糸条張力
    (YT)を下式(a)の範囲に維持し, 前記中間ローラ
    を経て捲き取ることを特徴とする下記(b)〜(d)の
    条件を同時に満足する強撚用に適したポリエステル繊維
    の製造方法。 (a)糸条張力 0.2≦YT≦1.2 (g/d) (b)熱ピーク応力 ST≧0.20 (g/d) (c)熱ピーク温度 TP≧110 (℃) (d)乾熱収縮率差 DS(190) −DS(100) ≧7 DS(190) :190℃における乾熱収縮率(%) DS(100) :100℃における乾熱収縮率(%)
  2. 【請求項2】 捲取速度が5000m/min 以上である請求項
    1記載の強撚用に適したポリエステル繊維の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1037997A (ja) * 1996-07-23 1998-02-13 Dainichi Seikan Kk 異形合成樹脂線コイルおよびその製造方法

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