JP3888164B2 - ポリエステルモノフィラメントおよびその製造方法 - Google Patents

ポリエステルモノフィラメントおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスクリーン印刷に用いられるメッシュ織物に好適なポリエステルモノフィラメント、さらに詳しくは、電子回路などの高度な精密性を要求されるハイメッシュのスクリーン紗を得るのに好適なポリエステルモノフィラメントに関するものであり、加えて、該モノフィラメントを用いてなる織物からなるスクリーン紗に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷用のスクリーン織物としてシルクなど天然繊維やステンレスなど無機繊維からなるメッシュ織物が広く使用されてきたが、シルクは強度、寸法安定性に問題があり、ステンレスは弾性回復に問題があった。また近年ではポリエステルやナイロンなどの有機繊維からなるメッシュ織物が一般に使用されるようになってきている。特にナイロンに比較して水分による寸法安定性への影響が小さく、耐熱性にも優れ、かつ低価格であるポリエステル繊維からなるスクリーン紗が広く使われている。
【0003】
しかしながら、最近の電子回路の印刷分野などにおいて印刷精度の向上に対する要求が益々強くなってきているためハイメッシュの細かいものが必要とされており、より糸径が細く、かつ製織時の張力に耐えうる、つまり高強度のモノフィラメントが要求されている。
【0004】
一般に繊維の強度を高めるためには原糸の製造過程において高倍率の延伸を施し、分子鎖を高度に配向、結晶化すれば良い。しかし、例えばポリエステル繊維の場合、延伸時の予熱によって結晶化が起きてしまうため、分子鎖の配向、結晶化による強度の向上に限界があるという問題があり、工業的要求に応えられずにいた。
【0005】
特開平2−289120号公報には、ポリエステルよりなる芯・鞘複合モノフィラメントにおいて、破断強度が6g/d(=5.3cN/dtex)以上、伸度10%時のモジュラスが3.5g/d(=3.1cN/dtex)以上、破断伸度が33%未満であり、鞘を構成するポリエステルのガラス転移点温度が芯のそれより低く、かつ、35〜73℃であり、芯:鞘の面積比が70:30〜95:5の範囲にあることを特徴とする高強度のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントが開示されている。該公報では高強度でかつフィブリル化などスカムの発生を抑制することを目的としており、モノフィラメントの表層部をソフトな共重合ポリエステルで覆うことにより製織時のスカムの発生を防いでいる。しかし、その実施例に示された繊維の到達強度は高々8.2g/d(7.2cN/dtex)であり、強度向上のために延伸倍率を高め過ぎたため、スカム評価では劣ったものとなっており、強度、スカム評価ともに要求されているレベルには及ばないといった欠点があった。
【0006】
また、特開平3−220340号公報には溶融異方性を示す芳香族ポリエステルを芯成分、鞘成分が溶融異方性を示さないポリマである芯鞘複合繊維よりなるスクリーン紗が開示されている。該公報では強度、弾性率を高いものとするために、剛直性高分子からなる全芳香族ポリエステルを芯成分として用い、さらにこれら剛直性高分子からなる繊維の欠点であるフィブリル化し易いという欠点を補うために鞘成分として溶融異方性を示さないポリマを用いて毛羽の発生、フィブリル化し難くしている。しかしながら、確かに得られた繊維の強度、弾性率は高いものの、伸度が実施例でも開示されているとおり2.5%〜3.0%と非常に低いものであり、スクリーン紗として製織する際に、従来のポリエステル系モノフィラメントに比べ衝撃による糸切れが発生するといった製造工程上の問題や、全芳香族ポリエステルが非常に高価であることから、目的とするモノフィラメントの製造コストが非常に高いものとなってしまうといった欠点があった。
【0007】
従来、熱可塑性合成繊維を紡糸する方法として吐出糸条を一旦冷却固化し、加熱帯に導入し、加熱帯中で再加熱、延伸、熱処理した後、巻き取る方法が知られており、例えば、特開平5−295617号公報が挙げられる。該公報には、直接紡糸延伸法によるポリエステルモノフィラメントの製造技術が開示されており、吐出糸条を一旦冷却固化し、張力付与ローラ、加熱供給ローラ、および加熱延伸ローラ、非加熱ローラからなる熱ローラによる延伸法が開示されている。また、特開昭63−262289号公報には未延伸糸を作製したあと、加熱ローラを用いた延伸を行う一般的な2工程法によるポリエステルモノフィラメントの製造法が開示されている。
【0008】
一方、走行する繊維を加熱延伸する際、赤外線を加熱源として用い走行糸条を均一加熱し、延伸する技術は公知である。
【0009】
特開昭53−45417号公報では40デニール以上の太繊度モノフィラメントに1.5μm以上の波長を有する遠赤外線を照射しながら延伸を行うことが記載されている。しかし該技術は加熱方法として伝導、対流の方法に比べ、遠赤外線の輻射法が熱の伝播に効率的であることから太繊度糸でも均一に延伸が可能であることを示しているに過ぎず、実施例においてもポリエステルモノフィラメントの強度は高々4.23g/d(=3.7cN/dtex)であった。
【0010】
赤外線の波長領域にあるレーザ光を延伸手段とした公知例としては、例えば特開昭48−45612号公報が挙げらる。該公報はマルチフィラメントに供給ロールと延伸ロールの間でレーザ光を照射することで延伸点を固定する技術に関するものである。その明細書中の記載によると、熱板の直前でレーザー光を照射することにより、従来の熱ピンを利用した場合の問題点であった摩擦による繊維の損傷をなくすことができることや、延伸点を固定することで強度や伸度の変動率は小さくなると述べられている。つまり得られる繊維の品位は向上するものの、レーザーを単なる熱源として利用しているに過ぎず、本願発明のごとく高強度化については目的としておらず、また何ら効果を見出してはいない。特開昭61−75811号公報では、レーザー光の照射条件を規定することで高配向低比重繊維を得る製造方法について開示されているが、その実施例にもあるとおり、高強度化はするものの、収縮率の大きな寸法安定性に大きく劣るものであった。また、特開昭60−94619号公報では繊維の複屈折率Δnが0.200以上、比重が1.4以上で、且つ繊維断面内における複屈折率の差が0.010以下を満足し、繊維軸方向の長周期構造が小角X線散乱で認められないか少なくとも220A(オングストローム)以上であることを特徴とするポリエステル繊維を製造する技術としてレーザ延伸を採用している。該公報ではマルチフィラメントをレーザー光照射による高々100m/分以下の極低速での多段延伸により高配向低結晶性繊維を造り、それを熱処理することで高強度化を達成している。これに対し、本願発明は延伸性に優れた芯鞘構造を持った繊維にレーザー光を照射し高倍率に延伸することで高強度化を達成しようとする生産性に優れた高強度モノフィラメントの製造法を提供しようとするものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
現在、スクリーン紗用モノフィラメントに適する熱可塑性合成繊維には更なる高強化が望まれており、このような繊維を安定して製造する方法が要望されている。本発明は、前記の熱可塑性合成繊維の製造方法における問題点を解消すべく鋭意研究した結果、本発明に到達したものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)芯・鞘複合モノフィラメントであり、芯を構成するポリマのIV(芯)が0.7以上であり、鞘を構成するポリマのIV(鞘)と芯を構成するポリマのIV比(IV(鞘)/IV(芯))が0.9以下であり、さらに芯と鞘の面積比率が60:40〜90:10の範囲にある単糸デニールが9dtex以下、破断強度が7.5cN/dtex以上、破断伸度が5〜15%であるポリエステルモノフィラメント、(2)引取速度800〜5000m/分で紡糸口金より吐出したポリエステル溶融体を一旦ガラス転移点以下に冷却固化して繊維を形成させ、これを連続または一旦巻き取った後、ポリエステル溶融体が芯・鞘複合モノフィラメントであり、芯を構成するポリマのIV(芯)が0.7以上であり、鞘を構成するポリマのIV(鞘)と芯を構成するポリマのIV比(IV(鞘)/IV(芯))が0.9以下であり、さらに芯と鞘の面積比率が60:40〜90:10であり、延伸するポリエステルモノフィラメントの製造方法において、これを120℃以下に予熱したあと繊維に赤外線を照射して延伸することを特徴とするポリエステルモノフィラメントの製造方法、(3)(1)記載のポリエステルモノフィラメントを用いてなる織物からなるスクリーン紗、に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のモノフィラメントはポリエステルから成るモノフィラメントに関するものである。ポリエステルとしてはエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸成分およびエチレングリコール成分以外の第3成分を少量(通常20モル%以下)共重合および、または混合させたポリエステルよりなるものでも良い。また酸成分として、弾性率の高いポリエチレン2,6ナフタレートなどを用いることもできる。耐熱性、コストなどの点から好ましくはポリエチレンテレフタレートである。ポリマ中には必要に応じて難燃剤、撥水剤、制電剤、除電剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含有されていても良い。
【0014】
印刷業界の要求は益々厳しくなり、より高い精密さが要求され、ハイメッシュな、すなわち折り密度の高いメッシュ織物が要求されている。したがって、ハイメッシュ織物を構成するモノフィラメントにはより細繊度化が要求され、製織時の織張力の関係からモノフィラメントの強力はある一定値以上のものが必要となることから、より破断強度の高いものが要求される。すなわち、現在主に使用されているものは10〜20dtex程度のものであり、よりハイメッシュな構成とするために、本発明に用いるモノフィラメントは9dtex以下、好ましくは7dtex以下、更に好ましくは6dtex以下である。したがって、繊度が小さくなるに伴い強度はより高いものが要求され、本発明に用いるモノフィラメントの強度は7.5cN/dtex以上、好ましくは8.0cN/dtex以上である。伸度は5〜15%、好ましくは7〜15%である。伸度が低いと、メッシュ織物を製織する際に、繊維のタフネスが小さくなるために衝撃等による糸切れが発生するなどして、長時間の安定製織ができなくなるといった欠点がある。
【0015】
本発明のポリエステルモノフィラメントは芯・鞘複合モノフィラメントであり、本発明で用いられる芯を構成するポリマIV(芯)は0.7以上で成り、得られた繊維の強度向上効果の点からより好ましくは0.9以上である。また、極限粘度の上限は溶融押し出し等の成形の容易さの点から2.0以下が好ましく、さらに製造コストや、工程途中の熱や剪断力によって起きる分子鎖切断による分子量低下の影響を考慮してさらに好ましくは1.5以下である。
【0016】
また、本願発明では高強度化を達成するために芯を構成するポリマのIV(芯)が0.7以上、鞘を構成するポリマのIV(鞘)と芯を構成するポリマのIV比(IV(鞘)/IV(芯))が0.9以下とし、芯と鞘の面積比率は60:40〜90:10の範囲とする。の理由は、一般に溶融したポリマが口金孔から吐出される際に、孔壁面とポリマとの間で生じる剪断力により、吐出された単糸の断面方向の分子鎖の配向状態に関する均一性が損なわれ、その後の延伸性が大きく低下すると考えられる。したがって、本発明の目的である高強度化のために高IVのポリマを芯成分とし、低粘度ポリマを鞘成分とすることで大きな剪断力を低粘度の鞘成分で吸収し、芯成分のポリマの分子鎖の絡まり状態を均一にするとともに、大きな歪みを受けた鞘成分のポリマも吐出後の素早い緩和により歪みを小さくし、その後の延伸性をさらに向上させようとするものである。したがって、芯成分の面積比率が60%未満で高強度のモノフィラメントを得られない場合があり、好ましくは65%以上である。また、面積比率が90%より大きくなると、均一な芯鞘構造を形成することが困難となること、さらに後述の剪断応力吸収による効果が充分に得られなくる場合がある。好ましくは85%以下である。同じく、鞘を構成するポリマのIV(鞘)と芯を構成するポリマのIV比(IV(鞘)/IV(芯))が0.9より大きくなると剪断応力の不均一分布が芯成分ポリマの領域まで形成されて、その後の延伸性が阻害される。また、この効果をより発揮させることを目的に好ましくは0.8以下である。
【0017】
該モノフィラメントは、複数の吐出孔を要する口金からマルチフィラメントとして溶融紡糸した後に、またはさらに延伸を行った後に分繊してモノフィラメントとしても、また最初からモノフィラメントとして溶融紡糸しても良い。
【0018】
本発明における紡糸工程は、常法によって溶融、計量されたポリマを紡糸口金より吐出し、この溶融体糸条をガラス転移点温度より低い温度に一旦冷却する。得られた糸条は引き続き、または一旦巻き上げられた後にあらためて、赤外線による加熱とともに延伸されて引き取られる。本発明における紡糸口金は特に限定するものではなく、製品の用途によって変更可能である。紡糸口金から吐出した糸条の冷却方法については紡糸口金直下で遅延冷却処理(例えば保温筒のようなものを設ける)を行い、引き続き冷却ゾーンを設け、強制的に冷却するのが好ましい。更に好ましくは糸条に保温筒、加湿器で糸温度を保ちながら紡糸張力をかけ、引き続き横方向もしくは周囲から気体を吹き付けることによって均一に冷却固化する方法である。強制冷却を行わない場合、糸条自体の熱により結晶化が促進されることがあり、高強度繊維に適した糸の製造には適さない場合がある。
【0019】
紡糸速度に関しては、ガラス転移点温度より低い温度に一旦冷却して得られた糸条が最初に速度規制されるローラ(ゴデットローラ)の速度、つまり引取速度は800〜5000m/分である。好ましくは800〜4000m/分である。また、ガラス転移点温度より低い温度に一旦冷却して得られた糸条を一旦巻き取った後に延伸を行う場合は、引取りは一対のゴデットローラ又は直接ワインダーによって800〜5000m/分の速度で引き取られ巻取られる。好ましくは800〜4000m/分である。引取速度が低速である場合、紡糸張力の低下から分子鎖の引き伸ばしが不十分となることや走行糸条の冷却が遅れることで、この後の赤外線の照射により溶断し易くなったり、また生産性に劣ったものとなってしまう。また、引取速度が高速の場合、特に一旦巻き取ることなく延伸を行う場合は空気抗力の影響から紡糸張力が紡糸線上流で急激に増加するため、赤外線照射前にネックが起こってしまい、赤外線のスポット径内にネック点が収まらない場合があるため、満足な強度を得ることができない。また、一旦巻き上げて次いで延伸を行う場合でも、紡糸線上で発生したネックによる結晶化が進行してしまい、延伸を十分に施すことができず満足な強度をえることができない。なお、本発明を実施するに当たり必要に応じてオイリングローラ等により適当な仕上げ剤(油剤)を付与することが好ましい。
【0020】
本発明における延伸処理では、走行糸条に赤外線が照射されて分子の運動性が向上し、変形のために必要なエネルギーが分子に蓄積すると分子鎖は更に引き揃えられ、繊維の結晶化速度よりも早く延伸処理が行われることで、繊維の結晶化に比べ分子鎖の配向を優先させることが可能になる。さらに赤外線スポット内で分子鎖の延伸変形に伴う自己発熱と赤外線からの加熱により熱結晶化が進行する。さらに生産性向上の観点からより高速での延伸処理を行うには繊維の分子鎖を引き揃えるきっかけとなるガラス転移点温度以上の温度領域へ昇温することが律速となることから、加熱昇温速度を速める目的で、延伸されようとする繊維を120℃以下にコントロールされた熱ロールや加熱雰囲気中で加熱することが有効であることを見出した。好ましくは、あまり高温で予熱を行うと延伸する前に熱結晶化が進行してしまい、その後の延伸性を阻害してしまう場合があることから110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。また、赤外線延伸後に熱結晶化の不足を補う目的で熱ロールや加熱雰囲気中を通過させることで熱処理を行うことは高強度化、または高弾性率化するのに好ましい。
【0021】
波長が1〜100μmの領域にある赤外線は、短時間で糸温度を上昇させることが可能であり、糸に対する透過率が高いため、単糸間での差がほとんどない延伸が可能である。
具体的には、ハロゲンランプをその光源とするもの、レーザー光を光源とするものなどがある。これらの中でも、波長がそろったレーザー光がエネルギーの強さの観点から熱延伸の加熱源として好ましい。このレーザ光は特に限定されないが、連続発振することや長時間の使用が可能なこと、大出力が得られること、比較的安価なことから、炭酸ガスレーザ光(波長10.6μm)を用いることが好ましい。レーザ光照射条件としては延伸速度等によっても異なるが、エネルギー密度が200W/mm2以上であれば十分に実施できる。エネルギー密度が約200W/mm2未満では、高速で実施する場合、走行糸条にエネルギーが十分に吸収されず、延伸点が不安定になるため、繊維長手方向や単糸間バラツキを引き起こし、得られる繊維の強度が低下する場合がある。また、エネルギー密度が2000W/mm2を越えると低速紡糸して得られた繊維など繊維構造が未発達なものでは、走行糸条が溶断してしまい、連続生産が困難になる場合があり好ましくない。具体的にはレーザ光のスポット径は0.1〜8.0mm程度が好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0mmである。尚、レーザ光照射は、鏡による反射、種々のレンズ(例えばシリドリカルレンズ)を組み合わせることによる集光、光ファイバ等によりレーザ発振機を糸条から離れた場所に設置することも可能である。また、レーザ光は片面照射であっても良く、多方面からの照射であるとがより好ましい。
【0022】
以上のように本発明の高強度モノフィラメントの製造方法は、溶融体糸条を紡糸口金直下で一旦ガラス転移点温度以下に冷却することで結晶化が起こる前に固化し、引き続きまたは一旦巻き上げた後にあらためて、赤外線照射よる延伸処理で分子鎖を均一に速やかに配向させ、必要に応じて熱処理を行うことによって高強度繊維を製造するものである。
【0023】
本発明において、さらに高強度化を目的とした高倍率延伸を可能とするために、繊維の構造として芯を構成するポリマのIV(芯)が0.7以上であり、鞘を構成するポリマのIV(鞘)と芯を構成するポリマのIV比(IV(鞘)/IV(芯))が0.8以下とし、芯と鞘の面積比率を60:40〜90:10の範囲とする。芯成分の面積比率が60%未満で高強度のモノフィラメントを得られない場合がある。好ましくは65%以上である。また、面積比率が90%より大きくなると、均一な芯鞘構造を形成することが困難となり、安定した紡糸が損なわれ場合がある。好ましくは85%以下である。この場合、複合モノフィラメントを得るための具体的な方法は、従来公知の芯鞘タイプの複合紡糸法を適応することができる。すなわち、芯および鞘成分を形成するポリマをすれぞれ独立に溶融計量し、口金背面で芯鞘構造となるように合流させ、同一吐出孔から吐出させることにより得られる。
【0024】
さらに、モノフィラメントの糸断面形状は円形であることが望ましい。つまり製織したスクリーン紗で感光性乳剤を硬化させる際に、変形断面を有するモノフィラメントの場合、ハレーションを起こすために印刷精度に悪影響を及ぼしたり、オープニングの均一性が損なわれるといった問題点も生じる場合があって好ましくない。
【0025】
【実施例】
以下実施例により、本発明を具体的かつより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の物性値は以下の方法によって測定した。
【0026】
A.固有粘度(IV)
オルソクロロフェノール中25℃で測定した。
【0027】
B.強度・伸度
オリエンテック社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長50mm、引張速度400mm/分、延伸糸の場合には初期試料長200mm、引張速度200mm/分で測定し求めた。
【0028】
C.ガラス転移点温度
使用繊維10mgを採取し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製:DSC−7型)を用いて、16℃/分で昇温しつつ、昇温過程で発現するガラス転移に伴うピークをパーキンエルマー社のデータ処理システムで処理してガラス転移点温度(℃)を求めた。
【0029】
D.製織性の評価
スルーザー型織機により織機の回転数350rpmとしてメッシュ織物を製織した。評価結果は、筬の汚れ具合(スカムの発生)、糸切れなどを観察しつつ、継続して製織を行うことが不能と判断された時に停機し、その時点での製織長さ(m)と目視による品位評価結果を総合して○、△、×で表した。
○:500m以上可能でスカムの発生少ない。
△:500m〜100m。
×:100m以下、またはスカムの発生多く糸切れ発生。
【0030】
実施例1〜5、比較例1〜2
固有粘度IV=1.0のポリエチレンテレフタレートを芯成分、固有粘度IV=0.7のポリエチレンテレフタレートを鞘成分として準備する。これらポリマのガラス転移点温度はそれぞれ83℃、80℃であった。従来公知の複合紡糸方法に従い、紡糸温度295℃で同心円型複合モノフィラメントを室温付近まで冷却固化させ引取速度1000m/分で紡糸し巻き取った。得られた未延伸糸を150m/分で70℃に加熱した第1ロールで予熱した後、炭酸ガスレーザをエネルギー密度407W/mm2、スポット径4.0mmで照射して延伸した後、140℃に加熱した第2ローラ、220℃とした第3ローラで熱処理して巻き取ることで延伸モノフィラメントを得た。この時の芯鞘の複合比の面積比、延伸条件、得られたモノフィラメントの物性を表1にまとめて示した。レーザ照射を行わなかったもの(比較例1)は到達延伸倍率が低く、エネルギー不足の延伸となったため得られた繊維の強度も低いものであった。一方、レーザ照射を行ったものは安定して高倍率延伸が可能で、得られた繊維の物性も目標とするハイメッシュ用モノフィラメントとして充分なものであった。実施例1〜5で得られたモノフィラメントを用いて製織、仕上げ加工を行い330メッシュのハイメッシュ紗とした。製織性は良好で、得られたスクリーン紗は線幅80ミクロンの高度な精密印刷を可能とした。しかし、芯成分と鞘成分との面積比率が95:5となるよう紡糸したもの(比較例2)は、芯鞘構造形成が不均一なため口金吐出後不安定で、得られたモノフィラメントの物性は長手方向で不均一なものであり、製織時もフィブリル化によるスカムの発生があり、品位の劣るものしか得られなかった。
【0032】
実施例6〜7
固有粘度IVの異なるPETの組み合わせで、芯成分と鞘成分の比率を変えて実施例1にある方法に準じて製糸し、延伸モノフィラメントを得た。固有粘度、芯成分と鞘成分のポリマブレンド比、紡糸速度、延伸・熱処理条件は表1に示したとおり。
【0033】
得られたモノフィラメントを製織し、仕上げ加工を行い330メッシュのハイメッシュ紗とした。製織性は良好で、得られたスクリーン紗は線幅80ミクロンの高度な精密印刷を可能とした。
【0034】
比較例3〜4
固有粘度IVの異なるPETの組み合わせで、芯成分と鞘成分の比率を変えて実施例1にある方法に準じて製糸し、延伸モノフィラメントを得た。固有粘度、芯成分と鞘成分のポリマブレンド比、紡糸速度、延伸・熱処理条件は表1に示したとおり。芯ポリマIVが低いもの(比較例3)、芯成分比率が低いもの(比較例4)いずれも到達強度が低いものであった。得られたモノフィラメントを製織し、仕上げ加工を行い330メッシュのハイメッシュ紗とした。得られたスクリーン紗は印刷精度の悪い紗であった。
【0035】
【表1】
Figure 0003888164
実施例8〜9
固有粘度IV=1.0のポリエチレンテレフタレートを芯成分、固有粘度IV=0.7のポリエチレンテレフタレートを鞘成分として準備する。これらポリマのガラス転移点温度はそれぞれ83℃、80℃であった。従来公知の複合紡糸方法に従い、紡糸温度295℃で同心円型複合モノフィラメントを油剤を付与し、引取速度1000m/分で紡糸した。引き続き90℃に加熱した第1ローラにて予熱後、炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)(実施例)をエネルギー密度1132W/mm2、スポット径4.0mmで、またはハロゲンランプ(実施例)を出力500Wで照射して延伸し、それぞれ140℃、230℃に加熱した第2ローラ、第3ローラで熱処理後、5000m/分で巻き取ることでモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントはいずれも細繊度で高強度のものであった。また、これらを製織し、仕上げ加工を行い330メッシュのハイメッシュ紗とした。製織性は良好で、得られたスクリーン紗は線幅80ミクロンの高度な精密印刷を可能とした。
【0036】
実施例10
固有粘度IV=1.0のポリエチレンテレフタレートを芯成分、固有粘度IV=0.7のポリエチレンテレフタレートを鞘成分として準備する。これらポリマのガラス転移点温度はそれぞれ83℃、80℃であった。従来公知の複合紡糸方法に従い、芯成分と鞘成分ポリマのブレンド比を80:20とし、紡糸温度295℃で同心円型複合モノフィラメントを油剤を付与し、引取速度3000m/分で紡糸した。引き続き室温の第1ローラを経て、炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)をエネルギー密度1132W/mm2、スポット径4.0mmで照射することで延伸し、それぞれ140℃、230℃に加熱した第2ローラ、第3ローラで熱処理後、7500m/分で巻き取ることで同心円型複合モノフィラメントを得た。
【0037】
得られたモノフィラメントの到達強度は低いものであった。
【0038】
実施例11、比較例5
固有粘度IV=1.0のポリエチレンテレフタレートを芯成分、固有粘度IV=0.7のポリエチレンテレフタレートを鞘成分として準備する。これらポリマのガラス転移点温度はそれぞれ83℃、80℃であった。従来公知の複合紡糸方法に従い、芯成分と鞘成分ポリマのブレンド比80:20で紡糸温度295℃で同心円型複合モノフィラメントを油剤を付与し、引取速度5000m/分(実施例11)、5500m/分(比較例5)で紡糸した。引き続き95℃に加熱した第1ローラにて予熱後、炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)をエネルギー密度1132W/mm2、スポット径4.0mmで照射することで延伸し、それぞれ140℃、230℃に加熱した第2ローラ、第3ローラで熱処理後、表2に示した速度で巻き取ることでモノフィラメントを得た。
【0039】
引取速度5500m/分で得られたものは強度が低いものであり、得られたスクリーン紗は印刷精度の悪い紗であった。一方、5000m/分で得られたものは細繊度で高強度のものであり、これを製織し、仕上げ加工を行い330メッシュのハイメッシュ紗とした。製織性は良好で、得られたスクリーン紗は線幅80ミクロンの高度な精密印刷を可能とした。
【0040】
【表2】
Figure 0003888164
【0041】
【発明の効果】
本発明はのポリエステルよりなる高性能なモノフィラメントによれば、スクリーン印刷に用いられるメッシュ織物に好適なポリエステルモノフィラメント、さらに詳しくは、電子回路などの高度な精密性を要求されるハイメッシュのスクリーン紗を得ることが可能となる。

Claims (3)

  1. 芯・鞘複合モノフィラメントであり、芯を構成するポリマのIV(芯)が0.7以上であり、鞘を構成するポリマのIV(鞘)と芯を構成するポリマのIV比(IV(鞘)/IV(芯))が0.9以下であり、さらに芯と鞘の面積比率が60:40〜90:10の範囲にある単糸デニールが9dtex以下、破断強度が7.5cN/dtex以上、破断伸度が5〜15%であるポリエステルモノフィラメント。
  2. 引取速度800〜5000m/分で紡糸口金より吐出したポリエステル溶融体を一旦ガラス転移点温度以下に冷却固化して繊維を形成させ、これを連続または一旦巻き取った後、延伸するポリエステルモノフィラメントの製造方法において、ポリエステル溶融体が芯・鞘複合モノフィラメントであり、芯を構成するポリマのIV(芯)が0.7以上であり、鞘を構成するポリマのIV(鞘)と芯を構成するポリマのIV比(IV(鞘)/IV(芯))が0.9以下であり、さらに芯と鞘の面積比率が60:40〜90:10であり、延伸前に120℃以下に予熱した後、繊維に赤外線を照射して延伸することを特徴とするポリエステルモノフィラメントの製造方法。
  3. 請求項1記載のポリエステルモノフィラメントを用いてなる織物からなるスクリーン紗。
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