JP2000229472A - 孔版印刷装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 マスタの撓みや伸びによる製版位置のずれを
なくして全体の印刷時間が短く良好な印刷を行える孔版
印刷装置を提供する。 【解決手段】 マスタ９の先端部９Ｂを係止するマスタ
係止手段５０を有し駆動手段２２でマスタ巻き取り方向
に回転駆動される版胴１と、画像情報に応じてマスタ９
を製版する製版手段３０と、マスタ９を版胴１に向かっ
て搬送する搬送手段１０、１２とを備えた孔版印刷装置
において、搬送手段１０、１２によるマスタ９への搬送
力を解除する解除手段６５、７０と、マスタ９への製版
動作終了後に解除手段６５、７０を解除動作するととも
に駆動手段２２を駆動させる制御手段５９とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、感熱孔版可能なマスタ
を版胴上のマスタ係止手段まで搬送する印刷装置に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】孔版印刷装置では、駆動手段によって回
転駆動される版胴の外周面に穿孔画像を形成したマスタ
を巻装して、穿孔した部分よりインキを通過させ、この
インキを印刷用紙に転移させることで印刷画像が形成さ
れるようになっている。版胴の外周面には、マスタの先
端部を係止するマスタ係止手段が版胴の外周面に対して
開閉自在に設けられており、このマスタ係止手段をマス
タ係止位置で適時開閉動作することで、マスタ係止手段
よりもマスタ搬送方向の上流側に設けたプラテンローラ
や搬送ローラによって搬送されるマスタの先端部を係止
している。

【０００３】マスタには、厚さ２〜９μｍ程度の薄い熱
可塑性樹脂フィルムに多孔性支持体の和紙、合成繊維、
あるいは和紙・合成繊維の混抄したものを貼りあわせた
ラミネート構造のものや、多孔性支持体を薄くしたり多
孔性支持体を用いずに熱可塑性樹脂フィルム単体のもの
がある。

【０００４】このようなマスタをマスタ係止手段に搬送
する際には次の点が問題となる。第１に、マスタの厚さ
が薄いためマスタ係止手段に届くまでに静電気やカール
等によって、搬送力を与えられるプラテンローラや搬送
ローラに巻きついてしまう。

【０００５】第２に、各ローラに巻きつかずに搬送され
た場合でも、穿孔時の熱収縮やフィルムのくせ等により
僅かではあるが波打ち現象が発生してしまう。この波打
ち状態のままマスタをマスタ係止手段でクランプして版
胴の外周面に巻装すると、版胴上でマスタにシワが発生
し印刷不良となるおそれがある。このような状態は、多
孔性支持体を薄くしたものや、熱可塑性樹脂フィルム単
体からなるもののように、コシが弱いマスタを用いたと
きに顕著に現われる。

【０００６】第３に、マスタ係止手段までマスタの搬送
経路に案内板を設けてマスタを搬送することが考えられ
るが、版胴が回転駆動されるので、版胴やマスタ係止手
段等との接触を避けるのに、版胴に近接して案内板を設
けられない。また、案内板を設けた場合であっても、マ
スタが静電気で帯電していると、コシのないマスタの場
合搬送不良を生じてしまう。

【０００７】第４に、マスタの帯電を防止するのに帯電
防止剤をマスタの表面に塗布するが、コシのないマスタ
の場合には、この帯電防止剤を塗布する量がコシのある
マスタに比して多くなり、サーマルヘッドの腐食やマス
タ自体のコストアップを招いてしまう。

【０００８】このような第１から第４の問題点を解決す
るための技術は未だないが、例えば特開昭５９−１０４
９３７号公報や特開平６−３２０８５３号公報には、マ
スタの先端部を、切断手段の下流側に設けたマスタ挾持
手段で挾持されて版胴上のマスタ係止手段まで搬送する
技術が提案されている。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】一般にマスタの搬送時
においては、マスタと搬送手段との間でのスリップや、
版胴や搬送手段の駆動タイミングのずれ、あるいは搬送
抵抗等により搬送途中のマスタに撓みや伸びが発生する
ことがあり、これらによってマスタの製版位置がずれて
しまうという課題がある。

【００１０】また、製版位置がずれてしまうと、マスタ
巻装後の試し刷り時に、いわゆる天地位置調整をした
り、このずれを修正するのにマスタを移動させなければ
ならず、次の印刷動作をすぐに行うことができず、全体
の印刷時間が長くなってしまうという問題がある。特
に、特開昭５９−１０４９３７号公報や特開平６−３２
０８５３号公報に記載の発明のように、マスタの先端部
をマスタ挾持手段によって、切断手段の下流側で保持す
るものにおいては、マスタの先端部がマスタ挾持手段に
搬送されるまでに搬送ローラに巻き付いたり、切断手段
で詰まってしまったり、マスタ挾持手段のマスタの導入
側にひっかかってしまうおそれがある。このような状態
となると、切断された後に新たに搬送されるマスタが、
版胴上のマスタ係止手段まで安定して搬送することが難
しく、また、次の製版動作までの時間も要してしまい、
マスタの搬送性と印刷時間の点で課題がある。

【００１１】本発明は、マスタの撓みや伸びによる製版
位置のずれをなくして印刷時間が短く良好な印刷を行え
る孔版印刷装置を提供することを目的とする。本発明
は、製版手段から送り出されたマスタを版胴上のマスタ
係止手段まで安定して搬送し、マスタ係止手段に確実に
受け渡したり、搬送中のマスタに対するシワの発生を低
減して良好な印刷を行いながら、同時にマスタの撓みや
伸びによる製版位置のずれをなくして印刷時間が短く良
好な印刷を行える孔版印刷装置を提供することを、その
目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項１記載の発明は、マスタの先端部を係止する
マスタ係止手段を有し駆動手段でマスタ巻き取り方向に
回転駆動される版胴と、画像情報に応じてマスタを製版
する製版手段と、マスタを版胴に向かって搬送する搬送
手段とを備えた孔版印刷装置において、搬送手段による
マスタへの搬送力を解除する解除手段と、マスタへの製
版動作終了後に、解除手段を解除動作するとともに、駆
動手段を駆動させる制御手段とを有することを特徴とし
ている。

【００１３】請求項２記載の発明は、請求項１記載の孔
版印刷装置において、搬送手段が、製版手段と対向配置
されて搬送駆動手段で回転駆動されるとともに製版手段
との間でマスタを押圧するプラテンローラであり、解除
手段が、マスタへの押圧力を解除する方向へプラテンロ
ーラあるいは製版手段の何れか一方を離間する駆動部材
を有することを特徴としている。

【００１４】請求項３記載の発明は、請求項１記載の孔
版印刷装置において、搬送手段が、製版手段と版胴との
間で互いに対向配置されてマスタを押圧するローラ対で
あり、解除手段が、マスタへの押圧力を解除する方向へ
ローラ対の一方を離間する駆動部材を有することを特徴
としている。

【００１５】請求項４記載の発明は、請求項１、２、ま
たは3記載の孔版印刷装置において、製版手段で製版さ
れた製版済みマスタを一定の長さに切断する切断手段
と、版胴がマスタの先端部を係止するマスタ係止位置に
停止したときのマスタ係止手段の近傍に、切断手段より
もマスタ搬送方向の上流側に位置してマスタの先端部を
保持する第１の位置と、マスタ係止手段の係止部を通過
して同係止部でマスタの先端部を保持可能な第２の位置
との間で往復変位可能に設けられたマスタ保持搬送手段
とを有することを特徴としている。

【００１６】請求項５記載の発明は、マスタの先端部を
係止するマスタ係止手段を有し駆動手段でマスタ巻き取
り方向に回転駆動される版胴と、画像情報に応じて選択
的に発熱される発熱体でマスタを製版する製版手段と、
製版された製版済みマスタを一定の長さに切断する切断
手段と、マスタを版胴に向かって搬送する搬送手段とを
備えた孔版印刷装置において、版胴がマスタの先端部を
係止するマスタ係止位置に停止したときのマスタ係止手
段の近傍に、切断手段よりもマスタ搬送方向の上流側に
位置してマスタの先端部を保持する第１の位置と、マス
タ係止手段の係止部を通過して同係止部でマスタの先端
部を保持可能な第２の位置との間で往復変位可能なマス
タ保持搬送手段と、マスタ保持搬送手段が第１の位置で
マスタを保持する時の発熱体の位置が、製版手段による
製版開始位置と等しいか、あるいは製版開始位置よりも
マスタ搬送方向の下流側に配置されていることを特徴と
している。

【００１７】

【発明の実施の形態】図１に示す孔版印刷装置は、印刷
に用いられる感熱孔版可能なマスタ９（以下、単に「マ
スタ９」と記す）を巻いたマスタロール９Ｒと、マスタ
９を製版しながら搬送する製版手段３０と、版胴１の外
周面１ａの一部に設けたマスタ係止手段５０にマスタ９
を保持して搬送するマスタ保持手段の一例であるマスタ
挾持搬送手段４０と、製版手段３０で製版された製版済
みマスタ９Ａを一定の長さに切断する切断手段２０と、
マスタ係止手段５０に向かって移動するマスタ９Ａに張
力を与える張力付与手段１２とを備えている。マスタロ
ール９Ｒは、矢印Ｘで示すマスタ搬送方向（以下「マス
タ搬送方向Ｘ」と記す）の最上流に配置され、版胴１は
マスタ搬送方向Ｘの最下流に配置されている。マスタロ
ール９Ｒから版胴１までの間には、マスタ搬送経路が形
成され、このマスタ搬送経路に沿って各手段が、製版手
段３０、張力付与手段１２、マスタ挾持搬送手段４０、
切断手段２０の順で配置されている。

【００１８】マスタ９は、非常に薄い１〜４μｍ程度の
ポリエステル等の実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみか
ら成り、軸方向に長い芯管９Ｐの外周面に巻き付けられ
てマスタロール９Ｒを形成している。マスタロール９Ｒ
は、図示しないフレーム等の不動部材に回転可能に支持
されている。ここで示す実質的に熱可塑性樹脂フィルム
のみから成るマスタ９とは、マスタが熱可塑性樹脂フィ
ルムのみから成るものの他、熱可塑性樹脂フィルムに帯
電防止剤等の微量成分を含有して成るもの、さらには熱
可塑性樹脂フィルムの両主面、すなわち表面又は裏面の
うちの少なくとも一方に、オーバーコート層等の薄膜層
を１層または複数層形成して成るものを含む。

【００１９】製版手段３０は、マスタ９に対して、サー
マルヘッド１１と、これにマスタ９を介して当接する搬
送手段としてのプラテンローラ１０とにより画像情報に
応じた製版を行いながらマスタ搬送方向Ｘにマスタを搬
送している。プラテンローラ１０は、その軸１０ａと実
質一体的に取り付けられていて、軸方向に延在して設け
られている。プラテンローラ１０の軸１０ａは、図示し
ない孔版印刷装置の側板に回転自在に支持されており、
軸１０ａの一端に設けられたプーリとモータプーリとの
間に掛け渡された無端ベルト等からなる図示しない駆動
伝達手段及びモータプーリを回転駆動するプラテンロー
ラ１０の搬送駆動手段となるステップモータ２１により
図示矢印方向に回転駆動される。サーマルヘッド１１
は、プラテンローラ１０の下方に位置し、プラテンロー
ラ１０の軸１０ａと平行に延在して設けられている。サ
ーマルヘッド１１は、孔版印刷装置の原稿読取部に設け
られた図示しないＡ／Ｄ変換部及び製版制御部で処理さ
れて送出されるデジタルな画像情報に基づき、発熱体６
９が選択的に発熱することによりマスタ９の所定位置を
溶融して穿孔する周知の機能を有する。

【００２０】サーマルヘッド１１の発熱体６９は、図２
に両矢印Ｚで示すマスタ９の幅方向（以下、「マスタ幅
方向Ｚ」と記す）に列設されている。この発熱体６９
は、後述のマスタ挟持搬送手段４０により第１の位置で
マスタ９を保持した時、図１に符号Ｓで示す製版開始位
置（マスタへの穿孔製版開始位置）に等しいか、または
その前（マスタ搬送方向Xの下流側）になるように配置
されている。

【００２１】サーマルヘッド１１の図１で下側には、プ
ラテンローラ１０によるマスタ９への搬送力を解除する
解除手段としての押圧解除手段６５が配置されている。
押圧解除手段６５は、図示しない孔版印刷装置の本体に
支持された駆動部材としての電磁ソレノイド６６と、電
磁ソレノイド６６の可動片６７に巻装された圧縮バネ６
８から構成されている。サーマルヘッド１１は、通常、
圧縮バネ６８のバネ力によってサーマルヘッド１１をプ
ラテンローラ１０にマスタ９を介して押圧する図１に実
線で示す圧接位置を占め、電磁ソレノイド６６への通電
により押圧状態が解除されると、同図に２点鎖線で示す
解除位置を占めるように構成されている。すなわち、マ
スタ９への押圧力を解除する方向へこの例ではサーマル
ヘッド１１を電磁ソレノイド６６によって離間可能とし
ている。サーマルヘッド１１ではなく、プラテンローラ
１０をマスタ９への押圧力を解除する方向へ電磁ソレノ
イド６６によって離間可能としてもよい。

【００２２】版胴１は、多孔性円筒状の支持体と、その
外周面に巻き付けられたメッシュスクリーンとを有し、
その外周面１ａにマスタ９Ａを巻装するように構成され
ている。版胴１は、回転中心軸を兼ねたインキパイプ７
の周りに回転可能に支持されていて、版胴の駆動手段と
なる駆動モータ２２と図示しない動力伝達機構によって
マスタ巻き取り方向であり、印刷時の回転方向でもある
矢印方向に回転駆動される。版胴１の内側には、版胴１
の回転方向と同一方向に同期して回転して版胴１の内周
面１ｂにインキを供給するインキローラ４と、インキロ
ーラ４と僅かな間隙を設けて平行に配置され、インキロ
ーラ４との間に断面楔状のインキ溜り６を形成するドク
タローラ５と、インキ溜り６へインキを供給するインキ
パイプ７に設けた開孔部７ａとを有する。これらインキ
ローラ４、ドクタローラ５及びインキパイプ７は、イン
キ供給手段６０を構成する。インキローラ４と対向する
版胴１の外周面１ａの下方近傍には、図示しない接離機
構によって上下に揺動変位し、印刷用紙１９を版胴１へ
押し付ける押圧部材としてのプレスローラ８が配置され
ている。押圧部材としては、プレスローラ８に代えて周
知の圧胴を用いてもよい。

【００２３】版胴１の外周面１ａ上の所定位置となる非
開孔部１ｃには、マスタ９Ａの先端部９Ｂを係止するマ
スタ係止手段５０が配設されている。マスタ係止手段５
０は、版胴１の母線方向と平行に延在していて版胴１の
外周面１ａの一部分に実質一体的に設けられたステージ
２と、ステージ２に対してクランパ軸１３を介して図示
しない開閉装置により駆動力を伝達されて回動される開
閉自在なクランパ３と、クランパ３をステージ２へ磁着
するマグネット３ｂとを備えている。開閉装置は、クラ
ンパ駆動手段となるステップモータ２３と周知の動力伝
達機構から構成されている。

【００２４】クランパ３は、図２に示すように版胴１の
母線方向と平行に延在しており、その全幅Ｅは、マスタ
９の幅Ｗよりも幾分長く、且つ版胴１の幅Ｌよりも短く
形成されている。マグネット３ｂは、クランパ軸１３よ
りもマスタ搬送方向Ｘの上流側に位置するクランパ３の
開閉端３ａ側のステージ２との対向面に固定されてい
る。マグネット３ｂの後端３ｃとクランパ軸１３との間
に位置し、マスタ幅方向Ｚに位置するクランパ３の両側
縁３Ａ，３Ｂには、クランパ３の内方に凹んだ切欠き部
３Ｌ，３Ｒがそれぞれ形成されている。クランパ３は、
マグネット３ｂを設けた範囲を係止部Ｙとしている。切
欠き部３Ｌ，３Ｒは、マスタ挾持搬送手段４０に設けら
れるマスタ挾持部８０，８１と干渉しない大きさに形成
されている。各マスタ挾持部８０，８１については、後
述詳細に説明する。

【００２５】図１に示すように、張力付与手段１２は、
製版手段３０とマスタ挾持搬送手段４０との間に配置さ
れている。張力付与手段１２は、一対のローラ部材１２
ａ，１２ｂを備えている。ローラ部材１２ａ，１２ｂ
は、それぞれの外周面を互いに当接するように対向配置
されており、この例では、略水平に搬送されるマスタ９
Ａの向きを図１の下向きに略９０°方向転換する機能を
備えており、マスタ９Ａの移動によって互いに連れ回り
する構成となっている。一方のローラ部材１２ｂの一端
には、トルクリミッタ等のブレーキ装置１２ｃが装着さ
れていて、マスタ搬送方向Ｘに向かって移動するマスタ
９Ａに対して、その移動方向に撓みが発生しないように
張力を与える構成となっている。

【００２６】ローラ部材１２ａには、マスタ９Aへの搬
送力を解除する解除手段としての押圧解除手段７０が設
けられている。押圧解除手段７０は、アーム７３とプル
タイプの電磁ソレノイド７１と圧縮バネ７２等から主に
構成されている。ローラ部材１２ａは、その支軸７５の
両端をアーム７３の一端側に回動自在に支持されてい
る。アーム７３は図示しない孔版印刷装置の本体に設け
られた支持軸７４によって回動可能に支持されている。
アーム７３の他端には、電磁ソレノイド７１の可動片７
１ａがピン結合されている。圧縮バネ７２は、この可動
片７１ａに巻装されている。アーム７３は、通常圧縮バ
ネ７２によりローラ部材１２ａをローラ部材１２ｂに向
かって圧接している。このため、マスタ９Ａは、通常ロ
ーラ部材１２ａ,１２ｂによってその両面側から押圧さ
れた状態となっている。ローラ部材１２ａは、電磁ソレ
ノイド７１への通電が行われると、図１に実線で示す押
圧位置からマスタ９Ａへの押圧力を解除する方向へ移動
して２点鎖線で示す離間位置を占め、ローラ部材１２
ａ,１２ｂによるマスタ９Ａの押圧状態を解除するよう
になっている。本形態では押圧解除手段７０を設けてい
るが、ブレーキ装置１２ｃによるブレーキ力が小さい場
合には、押圧解除手段７０を設けなくてもよい。

【００２７】ローラ部材１２ａ，１２ｂは、何れか一方
のローラ部材を図示しない駆動モータで回転駆動するよ
うに構成してもよい。この場合、駆動されるローラ部材
の外周面の周速度を、版胴１の外周面１ａの周速度、あ
るいはマスタ挾持搬送手段４０の移動速度よりも遅く設
定すると、移動するマスタ９Ａに張力を積極的に与える
ことができるとともに、搬送手段としての機能を備える
ことになる。この場合にはブレーキ装置１２ｃは不要と
なる。

【００２８】マスタ挾持搬送手段４０は、張力付与手段
１２とマスタ係止手段５０との間で、切断手段２０より
もマスタ搬送方向Ｘの上流側に配置されている。マスタ
挾持搬送手段４０は、マスタ９Ａの先端部９Ｂを挾持し
ながらマスタ係止手段５０に搬送するものである。マス
タ挾持搬送手段４０は、図３に示すように、マスタ９Ａ
の先端部９Ｂのマスタ幅方向Ｚに位置する両側縁９ａ，
９ｂをその往動行程で保持するマスタ挾持部８０，８１
を備えた一対のマスタ保持部１４，１５と、このマスタ
挾持部８０，８１をマスタ幅方向Ｚに相対変位する変位
手段１６と、図４に示すように、実線で示す第１の位置
と２点鎖線で示す第２の位置との間でマスタ挾持部８
０，８１を往復移動する移動手段１７とを備えている。
マスタ挾持搬送手段４０には、詳細を後述する切断手段
２０がマスタ挾持部８０，８１よりもマスタ搬送方向Ｘ
の下流側に装着されている。

【００２９】ここでいう第１の位置とは、図４に実線で
示すように、マスタ挾持部８０，８１が切断手段２０よ
りもマスタ搬送方向Ｘの上流側に位置してマスタ９Ａの
先端部９Ｂを挾持する位置を指し、第２の位置とは、図
４に２点鎖線で示すように、マスタ９Ａの先端部９Ｂを
クランパ３の係止部Ｙを通過させ、かつ係止部Ｙで先端
部９Ｂを係止できる位置を指す。

【００３０】マスタ保持部１４，１５は、図５に示すよ
うに、先端両側縁９ａ，９ｂの両面９Ｃ，９Ｄ側から挾
持するように開閉自在に設けられたマスタ挾持部材とな
る上搬送クランパ２６Ａ，２６Ｂと下搬送クランパ２７
Ａ，２７Ｂ、上搬送クランパ２６Ａ，２６Ｂを開閉動作
して上搬送クランパ２６Ａ，２６Ｂを開放／保持動作す
る挾持部駆動手段となる電磁ソレノイド２８Ａ，２８
Ｂ、付勢手段としての圧縮コイルバネ２９Ａ，２９Ｂを
それぞれ備えている。

【００３１】下搬送クランパ２７Ａ，２７Ｂは、板状部
材からなり、マスタ挾持搬送手段４０のフレーム１４１
に、マスタ幅方向Ｚに摺動自在に支持されている。具体
的には、下搬送クランパ２７Ａ，２７Ｂに、マスタ幅方
向Ｚに延出する長孔３１Ａ，３１Ｂを形成し、この長孔
３１Ａ，３１Ｂに、フレーム１４１のマスタ幅方向Ｚに
並列に立設した段ねじ３２Ａ，３２Ｂと段ねじ３３Ａ，
３３Ｂとをそれぞれ遊嵌する。下搬送クランパ２７Ａ，
２７Ｂは、その一端側をマスタ幅方向Ｚと略直交する方
向（マスタ搬送方向Ｘ）に折り曲げ、その下端をマスタ
幅方向Ｚにおける内側に折り曲げて当接部２７Ｃ，２７
Ｄを形成している。この当接部２７Ｃ，２７Ｄは、マス
タ９Ａの裏面９Ｄに当接するように、互いに同一平面上
に配置されている。マスタ挾持部８０，８１は、上搬送
クランパ２６Ａ，２６Ｂと当接部２７Ｃ，２７Ｄとによ
って構成されている。

【００３２】上搬送クランパ２６Ａ，２６Ｂは、軸３４
ａ，３４ｂによって、それぞれ当接部２７Ｃ，２７Ｄに
開閉自在に支持されている。電磁ソレノイド２８Ａ，２
８Ｂは、上搬送クランパ２６Ａ，２６Ｂの上方に位置す
る下搬送クランパ２７Ａ，２７Ｂに装着されていて、そ
の可動片２８Ｃ，２８Ｄを上搬送クランパ２６Ａ，２６
Ｂにそれぞれピン結合されている。電磁ソレノイド２８
Ａ，２８Ｂには、駆動信号が入力されると可動片２８
Ｃ，２８Ｄを引く、プルタイプのものが採用されてい
る。圧縮コイルバネ２９Ａ，２９Ｂは、可動片２８Ｃ，
２８Ｄに巻装され、電磁ソレノイド２８Ａ，２８Ｂと上
搬送クランパ２６Ａ，２６Ｂとにその両端をそれぞれ係
止されており、上搬送クランパ２６Ａ，２６Ｂに閉方向
への回動習性を与えている。

【００３３】下搬送クランパ２７Ａ，２７Ｂの他端側に
は、マスタ挾持部８０，８１を、図２に符号Ａ，Ｂで示
すマスタ９Ａの先端両側縁９ａ，９ｂを挾持して保持で
きる保持位置となる挾持位置と、同図に符号Ｃ，Ｄで示
す先端両側縁９ａ，９ｂよりも外方に外れた離脱位置と
に変位移動する後述の変位手段駆動機構２５が構成され
ている。離脱位置とは、マスタ挾持部８０，８１がクラ
ンパ３の両側縁３Ａ，３Ｂよりも外方に位置する位置で
ある。

【００３４】変位手段駆動機構２５は、図３，図５に示
すように、その駆動部となる正逆回転可能な駆動モータ
３５と、駆動モータ３５の出力軸３５ａに装着されたピ
ニオンギア３６と、ラックギア３７，３８とから主に構
成されている。ラックギア３７，３８は、下搬送クラン
パ２７Ｂ，２７Ａにそれぞれ形成されていて、フレーム
１４１の略中央に配置されたピニオンギア３６に対して
上下方向からそれぞれ噛合している。変位手段駆動機構
２５は、駆動モータ３５が図３において時計回り方向
（正方向）に回転駆動すると、下搬送クランパ２７Ａ，
２７Ｂを実線矢印で示す方向に移動してマスタ挾持部８
０，８１を離脱位置へと変位し、駆動モータ３５が図３
において反時計回り方向（逆方向）に回転駆動すると、
下搬送クランパ２７Ａ，２７Ｂを破線矢印で示す方向に
移動してマスタ挾持部８０，８１を挾持位置へと変位す
るようになっている。

【００３５】長孔３１Ａの近傍には、挾持位置と離脱位
置とを検知する検知手段として挾持位置検知センサ４１
と離脱位置検知センサ４２が、下搬送クランパ２７Ａに
装着配置されている。挾持位置検知センサ４１と離脱位
置検知センサ４２には、それぞれマイクロスイッチが用
いられている。離脱位置検知センサ４２は図５に示すよ
うに、そのレバー４２ａを段ねじ３２Ｂによって押され
ると離脱位置検知信号を出力し、挾持位置検知センサ４
１はそのレバー４１ａを段ねじ３２Ａによって押される
と挾持位置検知信号を出力するようになっている。

【００３６】切断手段２０は、図３、図４、図５に示す
ように、切断部材となる円形刃部４３がマスタ搬送経路
に臨むように、フレーム１４１のマスタ搬送経路との対
向面１４１ｃに装着されている。切断手段２０は、対向
面１４１ｃにマスタ幅方向Ｚに延出したレール４４を固
定し、円形刃部４３を、このレール４４に摺動自在に支
持されたスライダー４５に回転自在に支持しており、後
述する切断手段２０の駆動源となる図８にのみ図示する
駆動モータ３９によってマスタ切断時にスライダー４５
を摺動して円形刃部４３をマスタ幅方向Ｚに移動するよ
うに構成されている。円形刃部４３は、当接部２７Ｃ，
２７Ｄよりも図５でやや下方に、その外周面が位置する
ようにスライダー４５に支持されている。駆動モータ３
９は、マスタ挾持搬送手段４０が第１の位置を占めてい
て、切断時期になると駆動される。このため、マスタ挾
持搬送手段４０は、切断手段２０による製版済みマスタ
９Ａの切断前にこのマスタ９Ａを保持することになる。
切断手段２０の切断位置は、マスタ挾持搬送手段４０が
第１の位置を占めたときの円形刃部４３の位置を指す。

【００３７】切断手段２０は、フレーム１４１に装着さ
れているので、マスタ挾持搬送手段４０が第１の位置と
第２の位置との間で往復移動する際に、これと一体とな
って移動する。このため、マスタ挾持搬送手段４０が、
その往復動作時において切断位置を通過可能となり、か
つ、円形刃部４３とマスタ挾持搬送手段４０との位置関
係が一定となる。

【００３８】移動手段１７は、図４に示すように、フレ
ーム１４１に支持された回動軸４７と、この回動軸４７
の一端に固定した歯車４８と、駆動源となる正逆回転可
能な駆動モータ４６とを備えている。駆動モータ４６は
フレーム１４１に装着されており、その出力軸４６ａに
は、駆動歯車４９が固定されている。歯車４８には、駆
動歯車４９とラック５１とが互いに歯車４８を介して対
向する位置からそれぞれ噛合している。回動軸４７は、
図３に示すように、マスタ幅方向Ｚに位置するフレーム
１４１の側面１４１ａ，１４１ｂに軸受５２，５２で回
転自在に支持されており、その両端を側面１４１ａ，１
４１ｂよりも外方に突出している。側面１４１ａ，１４
１ｂの下部には、一対のガイドピン５３，５３がマスタ
幅方向Ｚに突出して設けられている。

【００３９】回動軸４７の両端とガイドピン５３，５３
は、図４に示すように、図示しない装置のフレームに形
成した長孔５４，５５にそれぞれ遊嵌されている。長孔
５４，５５は、それぞれ張力付与手段１２から図１に示
すマスタ係止位置にあるマスタ係止手段５０に向かって
延出形成されていて、マスタ挾持搬送手段４０を張力付
与手段１２の直下流からマスタ係止手段５０の係止部Ｙ
の下流まで、すなわち第１の位置から第２の位置までマ
スタ挾持搬送手段４０を摺動自在に支持している。これ
により、マスタ挾持搬送手段４０は、マスタ係止手段５
０まで案内されるとともに、往復動作時に揺れないよう
になっている。ここでいうマスタ係止位置とは、マスタ
係止手段５０によってマスタ９Ａの先端部９Ｂを挾持す
る時に版胴１が停止する位置を指し、本形態では、クラ
ンパ３が図１において上方に向かって開閉する略水平状
態を占めた位置を指す。

【００４０】駆動モータ４６は、第１の位置から第２の
位置までマスタ挾持搬送手段４０を移動する往動時に図
４において時計回り方向（正方向）に回転駆動され、第
２の位置から第１の位置までマスタ挾持搬送手段４０を
移動する復動時に図４において反時計回り方向（逆方
向）に回転駆動される。

【００４１】マスタ挾持搬送手段４０の近傍には、マス
タ挾持搬送手段４０の第１の位置を検知する第１位置検
知センサ５６と、第２の位置を検知する第２位置検知セ
ンサ５７とが配置されている。第１位置検知センサ５６
は、マスタ挾持搬送手段４０が第１の位置を占めた時
に、フレーム１４１の一部で押されることで第１位置検
知信号を出力し、第２位置検知センサ５７はマスタ挾持
搬送手段４０が第２の位置を占めた時に、フレーム１４
１の一部で押されることで第２位置検知信号を出力する
リミットスイッチから構成されている。マスタ挾持搬送
手段４０は、第１の位置においてマスタ挾持部８０，８
１が挾持位置にあるときをホームポジションとしてい
る。

【００４２】本形態において、マスタ挾持搬送手段４０
は図１において略垂直方向となる上下方向に往復移動可
能となっている。ラック５１は、長孔５４と平行に配置
されて、図示しないフレームに固定されている。このた
め、マスタ挾持搬送手段４０は、駆動モータ４６が駆動
しない時に、駆動歯車４９と歯車４８とラック５１との
噛合により一定の位置に保持される。つまり、ラック５
１は、歯車４８と相まってマスタ挾持搬送手段４０の落
下防止（ストッパー）手段と位置決め手段を構成してい
る。

【００４３】孔版印刷装置は、図８に示すように制御手
段５９を備えている。制御手段５９は、ＲＯＭやＲＡＭ
を備えた周知のマイクロコンピュータからその要部を構
成されていて、各手段の駆動回路やコントローラとして
機能している。制御手段５９には、停止指令手段となる
ストップキー６１、製版指令手段となる製版スタートキ
ー６２、印刷指令手段となる印刷スタートキー６３と、
第１位置検知センサ５６、第２位置検知センサ５７、挾
持位置検知センサ４１、離脱位置検知センサ４２と、ス
テップモータ２１，２３、各種駆動モータ２２、３５、
３９、４６と、電磁ソレノイド２８Ａ，２８Ｂ,６６,７
１、および電源５８がそれぞれ電気的に接続されてい
る。

【００４４】制御手段５９は、製版スタートキー６２が
押下されて製版指令が出力されると、製版を行いながら
製版済みマスタ９Ａを、マスタ挾持搬送手段４０を用い
て版胴１上のクランパ３に搬送するとともに、この製版
済みマスタ９Ａを版胴１の外周面１ａに巻装する動作を
行う給版動作を行う機能と、印刷スタートキー６３が押
下されて印刷指令が出力されると、図示しないテンキー
で設定された印刷枚数の印刷を実行する周知の印刷動作
を行う機能と、ストップキー６１を押下すると製版動作
や印刷動作を停止させる機能と、駆動モータ３９を制御
する機能と、マスタ９への製版動作終了後に、電磁ソレ
ノイド６６、７１を解除動作するとともに、駆動モータ
２２を駆動動作する機能を備えている。

【００４５】以下、マスタ挾持搬送手段４０と押圧解除
手段６５、７０を中心に本形態の動作を説明する。図１
において、新品のマスタロール９Ｒを装置にセットする
場合、まず、図示しないマスタセットキーを押下する
と、制御手段５９はマスタ挾持搬送手段４０がホームポ
ジションにあるかを判断する。このとき第１位置検知セ
ンサ５６から第１位置検知信号の出力があると、マスタ
挾持搬送手段４０がホームポジションにあると判断され
るが、そうでなければ制御手段５９によりマスタ挾持搬
送手段４０はホームポジションに移動するように制御さ
れる。そして、マスタ挾持搬送手段４０がホームポジシ
ョンにあることが確認されると、制御手段５９は電磁ソ
レノイド２８Ａ，２８Ｂを駆動（オン）させて、上搬送
クランパ２６Ａ，２６Ｂが開状態とする。また、電磁ソ
レノイド６６を駆動(オン)させて、サーマルヘッド１１
をプラテンローラ１０との押圧状態を解除する解除位置
を占めるように移動すると共に、電磁ソレノイド７１を
駆動(オン)させてローラ部材１２ａをローラ部材１２ｂ
との押圧状態を解除する離間位置を占めるように移動す
る。

【００４６】オペレータはマスタロール９Ｒを巻き解
き、マスタ９の先端部９Ｂをプラテンローラ１０とサー
マルヘッド１１の間を通し、ローラ部材１２ａ，１２ｂ
間を介装してマスタ挾持搬送手段４０まで位置させる。
そして、再度マスタセットキーを押下すると、電磁ソレ
ノイド２８Ａ，２８Ｂがオフされ、マスタ９の先端両側
縁９ａ，９ｂが、図３に示すように、両主面（表裏面）
９Ｃ，９Ｄ側からマスタ挾持部８０，８１で挾持され
る。また、電磁ソレノイド６６をオフさせて、サーマル
ヘッド１１をプラテンローラ１０にマスタ９を介して押
圧する圧接位置を占めるように移動すると共に、電磁ソ
レノイド７１をオフさせてローラ部材１２ａとローラ部
材１２ｂとでマスタ９を押圧する押圧位置を占めるよう
にローラ部材１２ｂを移動する。

【００４７】次に、製版スタートキー６２が押下される
と、駆動モータ２２が所定量駆動され、周知の排版手段
によって印刷を終えた図示しない印刷済みのマスタが版
胴１の外周面１ａから排除され、版胴１がマスタ係止位
置で停止する。版胴１がマスタ係止位置を占めると、ス
テップモータ２３が駆動されてクランパ３がマスタ係止
位置において開状態となる。これにより、図６（ａ）、
図６（ｂ）に示すように、クランパ３は開状態におか
れ、マスタ９の先端両側縁９ａ，９ｂは、第１の位置に
おいてマスタ挾持部８０，８１で挾持される。

【００４８】ここで、ステップモータ２１が起動してプ
ラテンローラ１０が図１で時計回り方向に回転駆動され
てマスタ９が送り出され、同時にデジタル画像情報に応
じてサーマルヘッド１１の発熱体６９が選択的に発熱さ
れ、プラテンローラ１０によりサーマルヘッド１１に押
圧されるマスタ９の部分が選択的に溶融されて穿孔され
る。このように穿孔された製版済みマスタ９Ａは、プラ
テンローラ１０の送り作用によってマスタ搬送方向Ｘに
搬送される。

【００４９】一方、図４に示す駆動モータ４６が時計回
り方向に回転駆動され、同図においてマスタ挾持搬送手
段４０が第２の位置（下方）に向かって移動する。この
時のマスタ挾持搬送手段４０の移動速度は、プラテンロ
ーラ１０によるマスタ搬送速度と略同一の速度で搬送さ
れる。このように、マスタ挾持搬送手段４０が往動する
ことで、製版済みマスタ９Ａがクランパ３に向かってロ
ーラ部材１２ａ，１２ｂによって張力を与えられながら
搬送される。

【００５０】マスタ挾持搬送手段４０が、拡開している
ステージ２とクランパ３との間を通過して第２の位置を
占めると、第２位置検知センサ５７から第２位置検知信
号が出力され、駆動モータ４６が停止される。これによ
り図７（ａ），図７（ｂ）に示すように、マスタ挾持部
８０，８１が係止部Ｙを通過して切欠き部３Ｒ，３Ｌ内
に位置して停止する。そして、駆動モータ４６が停止す
ると、ステップモータ２３が閉方向に所定量回転駆動さ
れた後、電磁ソレノイド２８Ａ，２８Ｂが駆動（オン）
される。これにより、マスタ挾持部８０，８１で挾持し
て搬送された製版済みマスタ９Ａの先端部９Ｂは、ステ
ージ２とクランパ３のマグネット３ｂとによってクラン
プされた後、マスタ挾持部８０，８１による挾持が開放
される。このため、製版済みマスタ９Ａが静電気を帯び
ていたり、カールがあっても、ローラ部材１２ａ，１２
ｂに巻き付かなくなり、確実にクランパ３まで搬送する
ことができる。

【００５１】電磁ソレノイド２８Ａ，２８Ｂがオンされ
ると、駆動モータ３５が図５において時計回り方向に駆
動し、離脱位置検知センサ４２から離脱位置検知信号が
出力されるまで駆動される。これにより、歯車３６が時
計回り方向に回転駆動して、それと噛合するラック３
８，３７を有する下搬送クランパ２７Ａ，２７Ｂが２点
鎖線位置から実線位置に向かって相対移動する。

【００５２】段ねじ３２Ｂによって離脱位置検知センサ
４２のレバー４２ａが押されて離脱位置検知信号が出力
されると、駆動モータ３５の回転が停止する。これによ
り、第２の位置においてマスタ挾持部８０，８１が離脱
位置を占める。離脱位置検知センサ４２から離脱位置検
知信号が出力されると、図４に示す駆動モータ４６が反
時計回り方向に回転駆動され、この動作が、第１位置検
知センサ５６から第１位置検知信号の出力があるまで行
われる。この動作により、同図に２点鎖線で示す第２の
位置に置かれたマスタ挾持搬送手段４０が第１の位置へ
と復動される。つまり、図２において、符号Ｃに示す第
２の位置で離脱位置を占めたマスタ挾持部８０，８１
が、図２に符号Ｄで示す第１の位置における離脱位置ま
で搬送される。このようにマスタ挾持部８０，８１は、
マスタ挾持搬送手段４０の復動時において離脱位置を占
めた状態で移動されるため、その移動中に製版済みマス
タ９Ａの先端両側縁９ａ，９ｂやクランパ３の両側縁３
Ａ，３Ｂと干渉することがなくなる。

【００５３】ステップモータ２１は、マスタ挾持搬送手
段４０の移動動作中、すなわち、図２においてマスタ挾
持部８０，８１がＣ、Ｄで示す各位置を移動している間
も駆動されているので、プラテンローラ１０の製版搬送
は行われている。このため、プラテンローラ１０とロー
ラ部材１２ａ，１２ｂとの間に、製版済みマスタ９Ａの
過分送りを発生させる。

【００５４】第１位置検知センサ５６から第１位置検知
信号が出力されると、駆動モータ２２は、版胴１を図１
において矢印方向に回転駆動させるので、過分送りされ
た製版済みマスタ９Ａが版胴１の回転により、所定の過
分送りが維持されたままその外周面１ａに製版されつつ
巻きつけられる。

【００５５】ところで、マスタ９Ａの送り量は、ステッ
プモータ２１のステップ数で制御を行っているが、実際
にはマスタ９、９Ａの搬送時のスリップ等でマスタの搬
送量にバラツキが発生して、伸びや撓みが発生してしま
う。しかし、本形態では、制御手段５９は、ステップモ
ータ２１のステップ数より画像書き込み（穿孔製版）が
完了したとなると、ステップモータ２１を停止させ、電
磁ソレノイド６６への通電を行い、プラテンローラ１０
への押圧を解除する。このため、マスタ９Ａに対する搬
送抵抗が低減されるとともに、マスタ９Ａの搬送が版胴
１の回転のみで行われ、張力付与手段１２により張力を
与えられた状態で、プラテンローラ１０とローラ部材１
２ａ、１２ｂとの間に発生していたマスタ９Ａの過分送
りは勿論、マスタ搬送経路上での伸びや撓みが除去され
る。この過分送りは、プラテンローラ１０への押圧を解
除しない場合には実際に除去できないで結果的には、製
版位置ずれを起こしていまう。

【００５６】そして、版胴１が所定量回転駆動したら、
電磁ソレノイド７１への通電を行い、ローラ部材１２ａ
を離間位置へ移動させ、その状態でさらに版胴１を所定
量回転駆動させる。そして、マスタ９Ａが所定量搬送さ
れると、マスタ９Ａが版胴１の外周面１ａへ巻装された
ものとして駆動モータ２２を停止する。これにより、版
胴１へのマスタ９Ａ巻装の最後の方は、プラテンローラ
１０やローラ部材１２ａによる押圧状態が全く無くなる
ので、特にマスタ幅方向Ｚへのシワの発生を有効に抑え
ることができ、より一層マスタ９Ａのシワの発生を防止
することができる。ここで押圧解除手段７０の効果を望
まなければ、上述した電磁ソレノイド７１への通電を行
わないで、単に、張力付与手段１２としての機能のみで
マスタ９Ａを版胴1の回転力で引っ張りながら搬送して
もよい。

【００５７】その後、電磁ソレノイド６６,７１への通
電を停止し、サーマルヘッド１１及びローラ部材１２ａ
が押圧状態とされると、挾持位置検知センサ４１から挾
持位置検知信号が出力されるまで、駆動モータ３５が図
５において反時計回り方向に駆動される。これにより歯
車３６が反時計回り方向に回転駆動して、それと噛合す
るラック３８，３７を有する下搬送クランパ２７Ａ，２
７Ｂが破線矢印方向に相対移動して、マスタ挾持部８
０，８１が実線位置で示す離脱位置から２点鎖線で示す
挾持位置まで移動する。段ねじ３２Ａによって挾持位置
検知センサ４１のレバー４１ａが押されて挾持位置検知
信号が出力されると、駆動モータ３５の回転が停止す
る。これによりマスタ挾持部８０，８１は、第１の位置
において挾持位置に保たれる。

【００５８】なお、マスタ挾持搬送手段４０が、第２の
位置で離間位置を占めた時点で版胴１の回転を開始する
ように駆動モータ２２を制御するようにしてもよい。こ
の場合は、版胴１へマスタ９Ａが巻き付けられながら、
マスタ挾持搬送手段４０が復動することになる。

【００５９】このときには、次の版となる未製版マスタ
９の先端部９Ｂがマスタ挾持部８０，８１の近傍に位置
している。これに伴い制御手段５９では、電磁ソレノイ
ド２８Ａ，２８Ｂをオフして、上搬送クランパ２６Ａ，
２６Ｂを閉じてこの未製版のマスタ９の両側縁９ａ，９
ｂを挾持し、その状態を保持したまま切断手段２０の駆
動モータ３９を駆動する。これにより、図５に示すスラ
イダー４５が同図において右方から左方に摺動され、製
版済みマスタ９Ａの後端が円形刃部４３で切断される。
このため、マスタ９Ａは、その先端部９Ｂをクランパ３
に挾持され、この後端である切断位置のすぐ上流部をマ
スタ挾持部８０，８１に挾持された状態で、さらに上流
部がローラ部材１２ａおよびサーマルヘッド１１に押圧
された状態で切断されるので、マスタ９Ａを良好に切断
できるとともに、切断後に、次の版となる未製版のマス
タ９の先端部９Ｂをマスタ挾持部８０，８１まで搬送し
なくて済む。よって、マスタ９が帯電していたり、巻き
癖が残っていても、製版手段３０とマスタ挾持搬送手段
４０の間において詰まらなくなる。

【００６０】この後、制御手段５９は、駆動モータ２２
を駆動して版胴１を図１の矢印方向に回転駆動し、図示
しない給紙装置から１枚の印刷用紙１９を周知のレジス
トローラ１８（図１）に給紙する。この時、インキロー
ラ４も版胴１の回転方向に回転し、インキを版胴１の内
周面に供給する。レジストローラ１８では、版胴１の回
転と同期した所定のタイミングで版胴１とプレスローラ
８との間に印刷用紙１９を挿入する。すると、版胴１の
外周面１ａから離間したプレスローラ８が、図１におい
て実線で示す離間位置から２点鎖線で示す押圧位置まで
移動して、矢印方向に回転駆動する版胴１の外周面１ａ
に巻装された製版済みマスタ９Ａに印刷用紙１９を押圧
する。これにより、製版済みマスタ９Ａの穿孔部分から
インキが滲み出しつつ製版済みマスタ９Ａが外周面１ａ
に密着され、所謂版付けが完了し、各駆動モータやステ
ップモータが停止されて印刷待機状態となる。

【００６１】適宜に、所謂試し刷りが行われ、図示しな
いテンキーにより印刷枚数が設定されて、印刷スタート
キー６３が押下されると、版付け同様、版胴１やプレス
ローラ８とともに、レジストローラ１８が駆動され、設
定された枚数分の印刷が印刷用紙１９に行われる。

【００６２】このように本形態では、マスタ９Ａに対す
る搬送抵抗が低減されると共に、マスタ９Ａの搬送が版
胴１の回転のみで行われるので、図１に破線で示すよう
にプラテンローラ１０とローラ部材１２ａ、１２ｂとの
間に発生するマスタ９Ａの過分送りは勿論、マスタ搬送
経路上での伸びや撓みが確実に除去されるので、製版開
始位置Ｓのずれが極めて少なくなるので、所謂天地位置
調整や、このずれを修正するためのマスタ９の搬送動作
をしなくて済み、全体の印刷時間を短縮することができ
る。

【００６３】本形態では、マスタ９の先端部９Ａを保持
してマスタ係止手段５０まで搬送するマスタ挟持搬送手
段４０を備えているが、この手段がないものであって
も、上述した発熱体６９の配置や、押圧解除手段６５、
７０と駆動モータ２２の動作を制御することでマスタ９
に発生する伸びや撓みの発生を抑えられ、製版開始位置
の安定化を図ることができる。

【００６４】サーマルヘッド１１の発熱体６９の位置
が、製版開始位置Ｓ、すなわち、マスタ９への穿孔製版
開始位置に等しくなるように配置されているので、マス
タ９に対する製版位置を正確に保つことができる。

【００６５】発熱体６９の配置位置としては、製版開始
位置Ｓよりもマスタ搬送方向Ｘの下流側に配置するよう
にしてもよい。これは製版開始時にステップモータ２１
や駆動モータ２２の立ち上がり遅れが若干あるので、そ
の遅れ分に相当するだけマスタ搬送方向Ｘの下流側に発
熱体６９を配置すれば、各モータの作動送れによる製版
位置のずれを吸収することができる。また、仮に、マス
タ９に撓みが発生した場合でも、予め発熱体６９の位置
を製版開始位置Ｓよりもマスタ搬送方向Ｘの下流側に配
置しておけば、マスタ９を搬送している間になくなるの
でよい。

【００６６】上述の実施の形態では、クランパ３に対し
てマスタ９の先端部９Ｂを図１において上方から搬送す
る位置関係にマスタロール９Ｒと版胴１のマスタ係止位
置とが設定されているので、マスタ挾持搬送手段４０を
図１において上下方向に往復移動するように構成した
が、この構成に限定されるものではない。クランパ３に
対してマスタ９の先端部９Ｂを水平方向から搬送挿入す
る位置関係にマスタロール９Ｒと版胴１のマスタ係止位
置とを設定した場合には、マスタ挾持搬送手段４０を図
１において左右方向に往復移動させるべく、長孔５４，
５５を同図において左右方向に延出して設け、回動軸４
７を回転させて長孔５４内を自走するようにすればよ
い。この場合には、回動軸４７が駆動コロとして機能す
るのでラック５１を設けてなくともよい。

【００６７】実施の形態では、製版済みマスタ９Ａの先
端部９Ｂをマスタ挾持部８０，８１で挾持して、製版手
段３０で製版しながらクランパ３まで製版済みマスタ９
Ａを、マスタ挾持搬送手段４０を用いて搬送してクラン
パ３で係止するようにしているが、製版済みマスタ９Ａ
の先端部９Ｂをマスタ挾持部８０，８１で挾持して保持
し、製版する前にクランパ３までマスタ挾持搬送手段４
０を用いて搬送し、クランパ３による係止後に製版を行
ってもよい。但し、版胴１の外周面１ａに巻装される１
枚の製版済みマスタ９Ａの長さは、版胴１の円周長によ
ってその長さが制限されるため、製版済みマスタ９Ａの
製版領域が減少してしまうことがある。したがって、こ
の場合には、マスタ挾持搬送手段４０の往復動の移動範
囲を少なくし、かつ版胴１のマスタ係止位置をマスタ挾
持搬送手段４０の第１の位置寄りに設定することで、マ
スタ９における未製版の領域を減少させて製版領域を確
保すればよい。

【００６８】本形態では製版手段３０からマスタ係止手
段５０へのマスタ９の受け渡しを、マスタ挾持部８０，
８１によって挾持して保持した状態で行うので、従来の
ローラ部材の回転によるマスタの押し出し搬送と違い、
マスタ９、９Ａの静電気による貼り付きやカール等によ
る搬送不良が発生しない。さらに、未製版のマスタ９の
先端部９Ｂをマスタ挾持部８０，８１で挾持したまま次
の製版動作の待機状態となるので、印刷装置内の各部の
送風ファンによる空気の対流や装置内の振動内によっ
て、マスタ挾持部８０，８１からマスタ9、9Ａの先端部
９Ｂが外れることはないのは勿論、この状態で孔版印刷
装置の電源を切られてもマスタ挾持部８０，８１の上搬
送クランパ２６Ａ，２６Ｂは圧縮コイルバネ２９Ａ，２
９Ｂの付勢力でマスタ９を挾持して保持したままである
ので、次に電源が入った時にすぐに製版が開始されても
何ら不都合を生じることはない。また、マスタ搬送時
に、一対のローラ部材１２ａ，１２ｂとブレーキ装置１
２ｃによって張力を加えた状態で、マスタ９の先端部９
Ｂをクランパ３でクランプするので、このクランプ時の
製版済みマスタ９Ａのシワや撓みを防止できる。

【００６９】マスタ挾持搬送手段４０が、切断手段２０
よりもマスタ搬送方向Ｘの上流側に配置され、マスタ９
Ａの先端部９Ｂをマスタ挾持部８０，８１で挾持して保
持した状態で切断手段に用いる駆動モータ３９が駆動さ
れるので、製版済みマスタ９Ａを切断した後には、既に
未製版のマスタ９の先端部９Ｂが、下搬送クランパ２７
Ａ，２７Ｂの当接部２７Ｃ，２７Ｄに位置している。こ
のため、カット後のマスタ９を従来のようにマスタ挾持
搬送手段４０まで搬送する必要がなく、製版手段３０と
マスタ挾持搬送手段４０との間におけるマスタ９の詰ま
りや、それによるシワの発生がなくなる。

【００７０】マスタ挾持部８０，８１で先端部９Ｂを挾
持されたマスタ９Ａは、クランパ３の係止部Ｙよりもマ
スタ搬送方向Ｘの下流側まで搬送されるので、マスタ９
Ａの先端部９Ｂを確実にクランパ３で係止させることが
できる。

【００７１】

【発明の効果】請求項１、２、３記載の発明によれば、
マスタの伸びや撓みによる製版開始位置のずれを防止で
きるので良好な印刷を行えるとともに、全体の印刷時間
を短縮することができる。

【００７２】請求項４記載の発明によれば、請求項１乃
至３の何れか１つに記載の孔版印刷装置において、マス
タの先端部が、マスタ保持手段に保持された状態でマス
タ係止手段へ搬送されるので、製版手段から送り出され
たマスタを版胴上のマスタ係止手段まで安定して搬送
し、マスタ係止手段に確実に受け渡したり、搬送中のマ
スタに対するシワの発生を低減して良好な印刷を行いな
がら、同時にマスタの撓みや伸びによる製版位置のずれ
が防止されるので、面倒な画像位置調整やマスタの再搬
送の必要がなく、全体の印刷時間を短くしながら良好な
印刷を行うことができる。

【００７３】請求項５記載の発明によれば、マスタ保持
搬送手段が第１の位置でマスタを保持する時の、製版手
段の発熱体の位置が、製版手段による製版開始位置と等
しいか、あるいは製版開始位置よりもマスタ搬送方向の
下流側に配置されているので、マスタに撓みや伸びが発
生していても、マスタに対する製版開始位置を正確に保
つことができ、製版手段から送り出されたマスタを版胴
上のマスタ係止手段まで安定して搬送し、マスタ係止手
段に確実に受け渡したり、搬送中のマスタに対するシワ
の発生を低減して良好な印刷を行いながら、同時にマス
タの撓みや伸びによる製版位置のずれが防止されるの
で、面倒な画像位置調整やマスタの再搬送の必要がな
く、全体の印刷時間を短くしながら良好な印刷を行うこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一形態を示す孔版印刷装置の概略構成
図である。

【図２】本発明におけるマスタ保持手段の第１の位置と
第２の位置及び、一対のマスタ挾持部の保持位置と離脱
位置を示す拡大図である。

【図３】マスタ保持手段の一例であるマスタ挾持搬送手
段の構成を示す斜視図である。

【図４】マスタ挾持搬送手段に設けた移動手段の構成を
示す拡大図である。

【図５】マスタ挾持搬送手段に設けた一対のマスタ挾持
部と変位手段、及びその駆動機構と挾持部駆動部材の構
成と動作を示す図である。

【図６】（ａ）はマスタ挾持部の第１の位置における保
持位置を示す拡大図、（ｂ）は（ａ）の側面図である。

【図７】（ａ）はマスタ挾持部の第２の位置における保
持位置を示す拡大図、（ｂ）は（ａ）の側面図である。

【図８】本発明における制御手段の一構成例を示すブロ
ック図である。

【符号の説明】

１ 版胴 ９ マスタ ９Ａ 製版済みマスタ ９Ｂ 先端部 １０ 搬送手段(プラテンローラ) １２ 搬送手段(ローラ対) ２０ 切断手段 ２１ 搬送駆動手段 ２２ 駆動手段 ３０ 製版手段 ４０ マスタ保持搬送手段 ５０ マスタ係止手段 ５９ 制御手段 ６５、７０ 解除手段 ６６、７１ 駆動部材 ６９ 発熱体 Ｓ 製版開始位置 Ｘ マスタ搬送方向 Ｙ 係止部

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】マスタの先端部を係止するマスタ係止手段
   を有し駆動手段でマスタ巻き取り方向に回転駆動される
   版胴と、画像情報に応じて上記マスタを製版する製版手
   段と、上記マスタを上記版胴に向かって搬送する搬送手
   段とを備えた孔版印刷装置において、 上記搬送手段による上記マスタへの搬送力を解除する解
   除手段と、 上記マスタへの製版動作終了後に、上記解除手段を解除
   動作するとともに、上記駆動手段を駆動させる制御手段
   とを有することを特徴とする孔版印刷装置。
2. 【請求項２】請求項１記載の孔版印刷装置において、 上記搬送手段は、上記製版手段と対向配置されて搬送駆
   動手段で回転駆動されるとともに上記製版手段との間で
   上記マスタを押圧するプラテンローラであり、 上記解除手段は、上記マスタへの押圧力を解除する方向
   へ上記プラテンローラあるいは上記製版手段の何れか一
   方を離間する駆動部材を有することを特徴とする孔版印
   刷装置。
3. 【請求項３】請求項１記載の孔版印刷装置において、 上記搬送手段は、上記製版手段と上記版胴との間で互い
   に対向配置されて上記マスタを押圧するローラ対であ
   り、 上記解除手段は、上記マスタへの押圧力を解除する方向
   へ上記ローラ対の一方を離間する駆動部材を有すること
   を特徴とする孔版印刷装置。
4. 【請求項４】請求項１、２、または３記載の孔版印刷装
   置において、 上記製版手段で製版された製版済みマスタを一定の長さ
   に切断する切断手段と、 上記版胴が上記マスタの先端部を係止するマスタ係止位
   置に停止したときの上記マスタ係止手段の近傍に、上記
   切断手段よりもマスタ搬送方向の上流側に位置して上記
   マスタの先端部を保持する第１の位置と、上記マスタ係
   止手段の係止部を通過して同係止部で上記マスタの先端
   部を保持可能な第２の位置との間で往復変位可能に設け
   られたマスタ保持搬送手段とを有することを特徴とする
   孔版印刷装置。
5. 【請求項５】マスタの先端部を係止するマスタ係止手段
   を有し駆動手段でマスタ巻き取り方向に回転駆動される
   版胴と、画像情報に応じて選択的に発熱される発熱体で
   上記マスタを製版する製版手段と、製版された製版済み
   マスタを一定の長さに切断する切断手段と、上記マスタ
   を上記版胴に向かって搬送する搬送手段とを備えた孔版
   印刷装置において、 上記版胴が上記マスタの先端部を係止するマスタ係止位
   置に停止したときの上記マスタ係止手段の近傍に、上記
   切断手段よりもマスタ搬送方向の上流側に位置して上記
   マスタの先端部を保持する第１の位置と、上記マスタ係
   止手段の係止部を通過して同係止部で上記マスタの先端
   部を保持可能な第２の位置との間で往復変位可能なマス
   タ保持搬送手段と、 上記マスタ保持搬送手段が上記第１の位置で上記マスタ
   を保持する時の、上記発熱体の位置が、上記製版手段に
   よる製版開始位置と等しいか、あるいは上記製版開始位
   置よりもマスタ搬送方向の下流側に配置されたことを特
   徴とする孔版印刷装置。