JP2000212419A - ポリエステル組成物およびそれを用いた成形物 - Google Patents

ポリエステル組成物およびそれを用いた成形物

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JP2000212419A
JP2000212419A JP11020331A JP2033199A JP2000212419A JP 2000212419 A JP2000212419 A JP 2000212419A JP 11020331 A JP11020331 A JP 11020331A JP 2033199 A JP2033199 A JP 2033199A JP 2000212419 A JP2000212419 A JP 2000212419A
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polyester
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Hideto Ohashi
英人 大橋
Juji Konagaya
重次 小長谷
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Toyobo Co Ltd
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Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗菌性(特に、抗菌耐久性)と難燃性を両立
し、耐熱性に優れ、安全性にも配慮されたポリエステル
組成物を提供する。 【解決手段】 ジカルボン酸およびそのエステル形成性
誘導体からなる群より選択される少なくとも1種、ジオ
ールおよびそのエステル形成性誘導体からなる群より選
択される少なくとも1種、および、ジカルボン酸および
そのエステル形成性誘導体に対して0.01〜10モル
%である特定のホスホニウム塩基を有する化合物を構成
成分とするポリエステル、ならびに、アルミニウム、ケ
イ素、アンチモン、ハロゲンおよびリンからなる群より
選択される少なくとも1種の元素を有する難燃性物質を
含有することを特徴とするポリエステル組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた耐炎性、難
燃性、抗菌性を有し、安全性にも配慮された、繊維、フ
ィルム等の成形物を形成することのできるポリエステル
組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコ
ールを主たる構成成分とする線状飽和ポリエステル(例
えば、ポリエチレンテレフタレート)は、その優れた物
理的性質および化学的性質により、幅広い用途に用いら
れている。
【0003】しかしながら、この線状飽和ポリエステル
は着火時に燃焼し易いという欠点があり、そのために、
特に難燃性、防炎性が要求される用途での使用は避けら
れてきた。そこで、この欠点を改善するため、従来から
種々の検討がなされてきた。耐炎性を付与するために、
例えば、ポリマー製造時に耐炎性付与物質を付加して共
重合またはブレンドさせる方法、成形品の製造工程でポ
リエステルに耐炎性付与物質を練り込む方法、またはポ
リエステルからの成形品を後加工することにより耐炎性
を付与する方法等が提案されている。
【0004】これらの方法の中では、一番容易であり且
つ得られる成形品の諸性質を損なわないという点で、ポ
リマー製造時に難燃性付与物質を添加して共重合する方
法が有利であり、従来から、ハロゲン化合物、リン化合
物、アンチモン化合物等の種々の難燃性付与物質が用い
られている。しかしながら、ハロゲン化合物は燃焼時に
ダイオキシン類の有毒物質が発生するおそれがあるこ
と、また、アンチモン化合物は環境ホルモン物質の疑い
があること等から、昨今では、これらの化合物の一部ま
たは全部をリン化合物に置き換えようとする動きがあ
る。リン化合物をポリエステル製造時に添加する場合に
は、従来、リン酸トリフェニルのようなリン酸エステル
類やベンゼンホスホン酸誘導体のようなホスホン酸類等
が用いられていた。しかしながら、このような化合物を
用いる場合には、ポリエステルの製造時に触媒の失活現
象が起こったり、エーテル結合が生成して得られるポリ
マーの融点が低下したり、ポリマーのゲル化の原因にな
ったりするだけでなく、ポリエステル製造糸からのリン
化合物の飛散が大きいために難燃性の優れたポリマーを
得るのが困難であり、さらに飛散したリン化合物により
環境が汚染される等の種々の問題がある。
【0005】一方で、病院その他、サニタリー分野での
病原菌の感染防止を目的としたカーペット、マット、シ
ーツ、カーテン、布団類への抗菌性付与、または、靴
下、タイツ類への防臭効果を目的とした抗菌性付与の検
討が進められている。しかしながら、一般的に、その抗
菌性は持続性に乏しく、加工直後は優れた効果を発揮す
るが、洗濯等を繰り返すことにより抗菌性効果が失われ
る欠点を有している。
【0006】現在、主に検討されている抗菌処理方法と
しては、第4級アンモニウム塩等の有機系抗菌剤をポリ
エステル等の高分子樹脂に練り込む方法、また、後加工
によりポリエステル繊維等の高分子素材表面に付着させ
る方法等がある。しかしながら、有機系抗菌剤を高分子
樹脂に練り込んだものは抗菌剤が揮発、溶出し易く、抗
菌性の低下や安全性の面で問題を抱えている。また、後
加工により抗菌性を付与したものは洗濯等により抗菌性
が失われてしまうという問題がある。
【0007】最近では、キトサン、ヒノキチオール、茶
抽出ポリフェノール等に代表される天然系抗菌剤、およ
び、銀に代表される無機系抗菌剤が、毒性の面で安全で
あるとして注目を集めている。しかしながら、無機系抗
菌剤の主流である銀イオンを無機化合物担体に担持した
ものは、銀イオンが溶出して抗菌性が低下するものが多
く、特に、水にさらされる場所では比較的短時間で抗菌
性が消失してしまうという問題があり、また、樹脂に混
合すると、これを着色または変色するものが多く、製品
の意匠を著しく損なうものである。
【0008】有機系抗菌剤の抗菌性の低下や安全性の問
題点を補うために、最近では不溶性で毒性を示さない固
定化抗菌剤の開発の試みがなされているが、いまだに十
分なものは見出されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、抗菌
性(特に、抗菌耐久性)と難燃性を両立し、耐熱性に優
れ、安全性にも配慮されたポリエステル組成物を提供す
ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記に示すと
おりのポリエステル組成物および該組成物から得られる
成形物を提供するものである。
【0011】1. ジカルボン酸およびそのエステル形
成性誘導体からなる群より選択される少なくとも1種、
ジオールおよびそのエステル形成性誘導体からなる群よ
り選択される少なくとも1種、および、ジカルボン酸お
よびそのエステル形成性誘導体に対して0.01〜10
モル%である下記一般式(1)で表されるホスホニウム
塩基を有する化合物を構成成分とするポリエステル、な
らびに、アルミニウム、ケイ素、アンチモン、ハロゲン
およびリンからなる群より選択される少なくとも1種の
元素を有する難燃性物質を含有することを特徴とするポ
リエステル組成物。
【0012】
【化5】−P+1234 (1) (式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なっ
て、アルキル基またはアリール基を示し、R1、R2、R
3およびR4の少なくとも1個は、炭素数10〜20のア
ルキル基を示す。) 2. 難燃性物質として、下記一般式(2)で表される
リン化合物をリン原子の含有量として500〜5000
0ppm含有していることを特徴とする上記項1に記載
のポリエステル組成物。
【0013】
【化6】
【0014】(式中、R5、R6およびR7は、同一また
は異なって、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、
アリーロキシ基またはエステル形成性官能基を示す。た
だし、R5、R6およびR7のうちの少なくとも1個はエ
ステル形成性官能基以外の基である。また、R5、R6
よびR7のうちの2個は互いに結合して環を形成しても
よい。) 3. ホスホニウム塩基を有する化合物が、下記一般式
(3)で表される化合物であることを特徴とする上記項
1または2に記載のポリエステル組成物。
【0015】
【化7】
【0016】(式中、Aは芳香族基を示す。X1および
2は、同一または異なって、エステル形成性官能基を
示す。R1、R2、R3およびR4は、同一または異なっ
て、アルキル基またはアリール基を示し、R1、R2、R
3およびR4の少なくとも1個は、炭素数10〜20のア
ルキル基を示す。) 4. リン化合物が、下記一般式(4)で表される化合
物であることを特徴とする上記項2または3に記載のポ
リエステル組成物。
【0017】
【化8】
【0018】(式中、R8は1価のエステル形成性官能
基を示す。R9およびR10は、同一または異なって、ハ
ロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または1価
のエステル形成性官能基を示す。Eは2価または3価の
有機残基を示す。mは1または2を示す。n、qはそれ
ぞれ0〜4の整数を示す。) 5. 上記項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステ
ル組成物を成形することにより得ることができる成形
物。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】[ジカルボン酸成分]本発明で用いるジカ
ルボン酸およびそのエステル形成性誘導体(以下、ジカ
ルボン酸成分ともいう)の例としては、芳香族ジカルボ
ン酸、脂環式ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、複素
環式ジカルボン酸およびそれらの誘導体等が挙げられ
る。芳香族ジカルボン酸およびその誘導体としては、テ
レフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタ
レンジカルボン酸、4,4−ジカルボキシルベンゾフェ
ノン、ビス(4−カルボキシルフェニル)エタンおよび
それらの誘導体等が挙げられる。脂環式ジカルボン酸お
よびその誘導体としては、シクロヘキサン−1,4−ジ
カルボン酸およびその誘導体等が挙げられる。脂肪族ジ
カルボン酸およびその誘導体としては、アジピン酸、セ
バシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ダ
イマー酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。複素環
式ジカルボン酸およびその誘導体としては、ピリジンカ
ルボン酸およびその誘導体等が挙げられる。このような
ジカルボン酸成分以外に、p−オキシ安息香酸などのオ
キシカルボン酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸等
の多官能酸およびそれらの誘導体等を含むことも可能で
ある。
【0021】[ジオール成分]本発明で用いるジオール
およびそのエステル形成性誘導体(以下、ジオール成分
ともいう)の例としては、エチレングリコール、1,2
−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、
1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、
ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,
4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAの
エチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、
ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコ
ールおよびそれらの誘導体等が挙げられる。このような
ジオール成分以外に、少量のアミド結合、ウレタン結
合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合
物を含んでいてもよい。
【0022】本発明におけるポリエステルの重合は、公
知の重合方法で実施することができる。例えば、ジカル
ボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応させるい
わゆる直接重合法、またはジカルボン酸のアルキルエス
テルとジオールとをエステル交換反応させるいわゆるエ
ステル交換法等の任意の方法を用いることができる。
【0023】[ホスホニウム塩基を有する化合物]本発
明におけるポリエステルは、抗菌性を付与する目的でホ
スホニウム塩基を有する化合物を構成成分として含有す
る。すなわち、ホスホニウム塩基を有する化合物も、ジ
カルボン酸成分およびジオール成分と反応してポリエス
テルを構成する。ホスホニウム塩基を有する化合物と
は、下記一般式(1)で表されるホスホニウム塩基を分
子内に有する化合物である。
【0024】
【化9】−P+1234 (1) (式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なっ
て、アルキル基またはアリール基を示し、R1、R2、R
3およびR4の少なくとも1個は、炭素数10〜20のア
ルキル基を示す。) 本発明で用いるホスホニウム塩基を有する化合物の好ま
しいものは、分子内に1個または2個以上の反応性基を
有するもので、さらに好ましい例としては、下記一般式
(3)で示されるスルホン酸基含有芳香族化合物のホス
ホニウム塩が挙げられる。
【0025】
【化10】
【0026】(式中、Aは芳香族基を示す。X1および
2は、同一または異なって、エステル形成性官能基を
示す。R1、R2、R3およびR4は、同一または異なっ
て、アルキル基またはアリール基を示し、R1、R2、R
3およびR4の少なくとも1個は、炭素数10〜20のア
ルキル基を示す。) 上記のスルホン酸基含有芳香族化合物のホスホニウム塩
におけるR1、R2、R3、R4の例としては、メチル基、
エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシ
ル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、ペンタデ
シル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の炭素数1
〜20のアルキル基が典型的なものであり、フェニル
基、ベンジル基等の炭素数6〜20のアリール基も挙げ
られる。R1、R2、R3、R4のうち少なくとも一つは炭
素数10〜20のアルキル基であることが、抗菌性効果
を最大に発現する点で好ましい。X1、X2の好ましい例
としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸
基等の酸性基、それらのC14アルキルエステルまたは
塩等の誘導体の他に、ヒドロキシル基、アルコキシル
基、アミノ基、エポキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ
素等のハロゲンイオンが挙げられる。
【0027】上記のスルホン酸基含有芳香族化合物のホ
スホニウム塩の具体例としては、スルホイソフタル酸ト
リ−n−ブチルデシルホスホニウム塩、スルホイソフタ
ル酸トリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウム塩、ス
ルホイソフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホ
ニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−ブチルテトラ
デシルホスホニウム塩、スルホイソフタル酸トリ−n−
ブチルドデシルホスホニウム塩、スルホテレフタル酸ト
リ−n−ブチルデシルホスホニウム塩、スルホテレフタ
ル酸トリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウム塩、ス
ルホテレフタル酸トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホ
ニウム塩、スルホテレフタル酸トリ−n−ブチルテトラ
デシルホスホニウム塩、スルホテレフタル酸トリ−n−
ブチルドデシルホスホニウム塩、4−スルホナフタレン
−2,7−ジカルボン酸トリ−n−ブチルデシルホスホ
ニウム塩、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン
酸トリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウム塩、4−
スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸トリ−n−ブ
チルヘキサデシルホスホニウム塩、4−スルホナフタレ
ン−2,7−ジカルボン酸トリ−n−ブチルテトラデシ
ルホスホニウム塩、4−スルホナフタレン−2,7−ジ
カルボン酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩、
およびこれらのジC14アルキルエステル等が挙げられ
る。抗菌活性の点では、スルホイソフタル酸トリ−n−
ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、スルホイソフタル
酸トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、スル
ホイソフタル酸トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム
塩およびこれらのジC14アルキルエステルが特に好ま
しい。
【0028】上記芳香族ジカルボン酸ホスホニウム塩
は、スルホ芳香族ジカルボン酸もしくはスルホ芳香族ジ
カルボン酸エステルまたはそれらのナトリウム塩、カリ
ウム塩、アンモニウム塩等に、トリ−n−ブチルヘキサ
デシルホスホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルテト
ラデシルホスホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルド
デシルホスホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルヘキ
サデシルホスホニウムクロライド、トリ−n−ブチルテ
トラデシルホスホニウムクロライド、トリ−n−ブチル
ドデシルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩を
反応させることにより得られる。反応溶媒は特に限定し
ないが、水が最も好ましい。
【0029】本発明におけるポリエステルにおいては、
上記のホスホニウム塩基を有する化合物を、全ジカルボ
ン酸成分に対して0.01〜10モル%含有し、好まし
くは0.1〜10モル%含有する。
【0030】本発明におけるポリエステルの重量平均分
子量は10000〜100000が好ましく、1000
0〜50000がより好ましい。
【0031】[難燃性物質]本発明のポリエステル組成
物には、難燃性を付与する目的で、アルミニウム、ケイ
素、アンチモン、ハロゲン、リンより選ばれる少なくと
も1種の元素を有する難燃性物質を含有する。
【0032】本発明のポリエステル組成物に添加するこ
とのできる難燃性物質の例としては、水酸化アルミニウ
ム、ケイ素化合物、酸化アンチモン、有機ハロゲン化合
物、リン化合物が挙げられる。
【0033】[水酸化アルミニウム]本発明のポリエス
テル組成物に添加することのできる難燃性物質である水
酸化アルミニウムは、その形態には特に制限はないが、
本発明のポリエステル組成物を用いて繊維、フィルム等
の成形物を製造する場合に、粗大な粒子が存在すること
により操業上、品質上の問題が発生することがないよう
に、粒径0.1〜5μm程度のものが好ましい。水酸化
アルミニウムの含有量は、ポリエステル組成物に対して
0.1〜50重量%が好ましく、1〜10重量%がより
好ましい。
【0034】[ケイ素化合物]本発明のポリエステル組
成物に添加することのできるケイ素化合物の例として
は、シリカ、ゼオライト、雲母、カオリン等の天然、合
成鉱物、オクチルトリエトキシシラン、ジフェニルジメ
トキシシラン等のシラン化合物、シリコン等が挙げられ
る。ケイ素化合物の含有量は、ポリエステル組成物に対
して0.1〜50重量%が好ましく、1〜10重量%が
より好ましい。
【0035】[アンチモン化合物]本発明のポリエステ
ル組成物に添加することのできるアンチモン化合物の例
としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸
化アンチモンまたはそれらのアルカリ金属酸化物、アル
カリ土類金属酸化物、ハロゲン化アンチモン等が挙げら
れる。好ましくは、三酸化アンチモン、五酸化アンチモ
ン等が挙げられる。アンチモン化合物の含有量は、ポリ
エステル組成物に対して0.1〜20重量%が好まし
く、1〜10重量%がより好ましい。
【0036】[有機ハロゲン化合物]本発明のポリエス
テル組成物に添加することのできる有機ハロゲン化合物
としては、分子内に少なくとも1個のエステル形成性官
能基を有している脂肪族または芳香族炭化水素の水素原
子の1個または2個以上がハロゲン原子で置換された化
合物であれば何でもよい。例えば、ジブロモテレフタル
酸、テトラクロロテレフタル酸、1,5−ジブロモナフ
タレン−2,6−ジカルボン酸やそれらのエステル形成
性誘導体、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒド
ロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジ
ブロモ−4−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、
2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシエト
キシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジクロロ−4
−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のジオール
やそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0037】これらの有機ハロゲン化合物は、前記ジカ
ルボン酸成分およびジオール成分と反応してポリエステ
ルを構成することもできる。また、製造されたポリエス
テルと混合しても良い。
【0038】有機ハロゲン化合物の含有量は、ポリエス
テルに対して0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜3
重量%がより好ましい。
【0039】[リン化合物]本発明のポリエステル組成
物に添加することのできる難燃性物質のリン化合物の例
としては、下記一般式(2)で表されるリン化合物があ
る。
【0040】
【化11】
【0041】(式中、R5、R6およびR7は、同一また
は異なって、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、
アリーロキシ基またはエステル形成性官能基を示す。た
だし、R5、R6およびR7のうちの少なくとも1個はエ
ステル形成性官能基以外の基である。また、R5、R6
よびR7のうちの2個は互いに結合して環を形成しても
よい。) このリン化合物におけるR5、R6、R7のアルキル基と
しては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等
の炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、アルコキシ
基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜1
0のアルコキシ基が好ましく、アリール基としては、フ
ェニル基、ベンジル基等の炭素数6〜10のアリール基
が好ましく、アリーロキシ基としては、フェノキシ基等
の炭素数6〜10のアリーロキシ基が好ましい。エステ
ル形成性官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシ
ル基およびそれらのエステル形成性誘導体等が好まし
い。
【0042】このリン化合物において、R5、R6および
7のうちの2個が互いに結合して形成することのある
環としては、3〜8員の酸素含有環、好ましくは5員ま
たは6員の酸素含有環が挙げられる。
【0043】本発明のポリエステル組成物が含有するリ
ン化合物の好ましい具体例としては、以下に示すリン化
合物が挙げられる。すなわち、トリフェニルホスフェー
ト(b)等のリン酸エステル類、
【0044】
【化12】
【0045】フェニルホスホン酸環状エチレンエステル
(c)、フェニルホスホン酸環状−o−フェニレンエス
テル等の環状ホスホン酸化合物、
【0046】
【化13】
【0047】2−エトキシカルボニルエチルホスホン酸
ジエチル(d)、2−メトキシカルボニルメチルホスホ
ン酸ジメチル等の二官能性のカルボキシホスホン酸、
【0048】
【化14】
【0049】(2−エトキシカルボニルエチル)−フェ
ニルホスフィン酸エチル(e)、(2−メトキシカルボ
ニルエチル)−メチルホスフィン酸メチル等の二官能性
のカルボキシホスフィン酸、
【0050】
【化15】
【0051】ジヒドロキシアルキルホスフィンオキシ
ド、ジカルボキシアルキルホスフィンオキシド(f)等
のホスフィンオキシド類が挙げられる。
【0052】
【化16】
【0053】上記のリン化合物のうち、エステル形成性
官能基を有するリン化合物(d)、(e)、(f)等
は、前記ジカルボン酸成分およびジオール成分と反応し
てポリエステルを構成することもできる。また、製造さ
れたポリエステルと混合しても良い。
【0054】本発明のポリエステル組成物が含有するリ
ン化合物の好ましい例としては、さらに下記一般式
(4)で表されるリン化合物(環状ホスフィン酸化合
物)が挙げられる。
【0055】
【化17】
【0056】(式中、R8は1価のエステル形成性官能
基を示す。R9およびR10は、同一または異なって、ハ
ロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または1価
のエステル形成性官能基を示す。Eは2価または3価の
有機残基を示す。mは1または2を示す。n、qはそれ
ぞれ0〜4の整数を示す。) 上記の一般式(4)で表されるリン化合物としては、具
体的には、式中のR8が、カルボキシル基、カルボキシ
ル基の炭素原子数1〜6のアルキルエステル基、カルボ
キシル基の炭素原子数5〜10のシクロアルキルエステ
ル基、カルボキシル基の炭素原子数6〜10のアリール
エステル基、ヒドロキシル基、炭素原子数2〜7のヒド
ロキシアルコキシカルボニル基または
【0057】
【化18】
【0058】で示される基等である化合物が挙げられ
る。
【0059】また、式中のR9、R10が、塩素原子、臭
素原子等のハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル
基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子
数6〜10のアリール基または上記したR8の1価の基
等であるリン化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0060】また、式中のEが、メチレン基、エチレン
基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基等の
低級アルキレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フ
ェニレン基等のアリーレン基、1,3−キシリレン基、
【0061】
【化19】
【0062】等の2価の基、
【0063】
【化20】
【0064】(式中、R11は水素原子またはメチル基、
エチル基等の低級アルキル基を示す。rは0または1を
示す。)で示される3価の基等であるリン化合物が好ま
しいものとして挙げられる。なお、上記の炭化水素基
は、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されて
もよい。
【0065】前記一般式(4)で表されるリン化合物の
具体的な例としては、次に示すものが挙げられる。
【0066】
【化21】
【0067】
【化22】
【0068】
【化23】
【0069】上記のリン化合物は、次のようにして合成
することができる。すなわち、例えば式(g)で表され
るリン化合物は、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−
オキサホスファン−2−オキシドをアクリル酸メチルに
付加させることにより合成することができる(ドクレデ
イ・アカデミイ・ナウク・エスエスエスアール(Dokl.A
kad.Nauk SSSR)85,349(1952)参照)。他
のリン化合物も、同様にして、3,4,5,6−ジベン
ゾ−1,2−オキサホスファン−2−オキシドまたはそ
の誘導体を、対応するビニル基またはビニリデン基を有
する化合物と反応させることにより合成することができ
る。
【0070】上記のエステル形成性官能基を有するリン
化合物は、前記ジカルボン酸成分およびジオール成分と
反応してポリエステルを構成することもできる。また、
製造されたポリエステルと混合しても良い。
【0071】本発明において、リン化合物は、ポリエス
テル組成物中にリン原子として500〜50000pp
m含有するように使用するのが好ましく、2000〜1
0000ppm含有するように使用するのがより好まし
い。
【0072】リン化合物の使用量が上記の範囲より小さ
くなれば、所望の難燃性を有するポリエステル組成物を
得るのが困難になり、一方、使用量が上記の範囲より大
きくなれば、得られるポリエステル組成物の物理的性質
が低下するだけでなく、ポリエステル組成物を製造する
際の操業性が低下するので好ましくない。
【0073】本発明において、上記ホスホニウム塩基を
有する化合物および上記リン化合物を、ポリエステル組
成物に含有させる方法については、特に限定しない。例
えば、エステル交換反応またはエステル化反応の際に、
上記ホスホニウム塩基を有する化合物および上記リン化
合物を添加してもよいし、エステル化反応またはエステ
ル交換反応の終了後から重縮合反応の前、または重縮合
反応の初期の段階で、上記ホスホニウム塩基を有する化
合物および上記リン化合物を添加してもよい。ただし、
上記リン化合物(d)、(e)、(g)のようなエステ
ル形成性官能基を1個のみ有するリン化合物をポリエス
テル製造反応系へ添加する際には、ポリエステルの重縮
合中期以降に添加することが好ましい。ポリエステル反
応初期に添加すると末端封止剤として働き、ポリエステ
ルの重合が阻害されるので、好ましくない。
【0074】本発明のポリエステル組成物には、着色お
よびゲル発生等がないように耐熱性の改善の目的で、酢
酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム
塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム
塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のマンガン塩を、各
々金属イオンとして20〜300ppm、リン酸または
リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル
等のリン酸エステル誘導体を、リン(P)原子として2
0〜200ppm添加することも可能である。前記金属
イオンが300ppmを超えるとポリマーの着色が顕著
になる。また、20ppm未満ではポリマーの耐熱性の
向上が見られない。
【0075】また、抗菌性繊維の耐熱性等の点で、前記
リン(P)と前記金属イオンとのモル比(式1)は、
0.4〜1.0であることが好ましい。
【0076】(式1) 添加物のモル比=(リン酸、リン酸アルキルエステル、
またはその誘導体の総モル数)/(Mgイオン、Caイ
オン、Mnイオンの総モル数) 本発明のポリエステル組成物には、それを用いたフィル
ム、繊維等の滑り性、耐摩耗性、耐ブロッキング性、隠
蔽性等の物理的特性の向上を目的として、炭酸カルシウ
ム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)、フッ化
カルシウム(CaF2)、タルク、カオリン、酸化ケイ
素(SiO2)、アルミナ(Al23)、二酸化チタ
ン、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化鉄(Fe
23)、アルミナ/シリカ複合酸化物等の無機粒子、架
橋ポリスチレン、架橋ポリメタクリル酸エステル、架橋
ポリアクリル酸エステル等の有機粒子等を添加すること
も可能である。
【0077】上記の粒子についてさらに詳細に述べる。
【0078】炭酸カルシウム粒子は、その結晶構造によ
り、三方または六方晶系に分類されるカルサイト、斜方
晶系に分類されるアラゴナイト、六方または擬六方晶系
に分類されるバテライトの3つの結晶型に分類される
が、いかなる結晶型でもよく、その形状も、連球状、立
方体状、紡錘状、柱状、針状、球状、卵状等から任意に
選択できる。
【0079】上記カオリン粒子は、天然カオリン、合成
カオリン、焼成、未焼成を問わずいかなるタイプでもよ
く、またその形状も、柱状、板状、球状、紡錘状、卵状
等から任意に選択できる。
【0080】上記アルミナとしては、ジブサイト、バイ
ヤライト、ノルトストランダイト、ベーマイト、ダイア
スポア、トーダイトなどの結晶性アルミナ水和物、無定
形ゲル、ベーマイトゲル、バイヤライトゲルなどの非晶
性アルミナ水和物、およびρ、γ、κ、δ、θ型等の中
間活性アルミナまたはα型アルミナが挙げられる。
【0081】これらの平均粒径は、目的に応じて変更す
る必要があるので、特に限定はしないが、一般的には平
均粒径が0.01〜10μmであるのが好ましく、その
添加量は50重量%以下が好ましい。
【0082】上記の粒子をポリエステル組成物に含有さ
せる方法の例としては、本発明のポリエステル組成物重
合工程のエステル化反応、または、エステル交換反応の
初期から、重縮合反応の実質的に終了するまでの任意の
段階で、上記の粒子を添加することができる。この場
合、粒子を、水、またはアルコール等の有機溶剤、また
はそれらの混合溶媒中に分散させて、ポリマー重合系に
添加することが好ましい。
【0083】また、本発明のポリエステル組成物に上記
の粒子を含有させる方法の他の例としては、本発明のポ
リエステル組成物と上記の粒子を溶融状態で混練りする
方法、本発明のポリエステル組成物を溶媒中に溶解また
は分散させた状態で、上記粒子を混合する方法等があ
る。
【0084】本発明のポリエステル組成物には、意匠性
を付与するために、無機および/または有機の染色剤、
顔料を含有させることができる。
【0085】このように、本発明のポリエステル組成物
は、適量の難燃性物質の添加により、耐炎、難燃性に優
れ、さらにホスホニウム塩基の効果により抗菌性に優れ
ているので、繊維、織物、不織布、フィルム、シート、
成形品等の用途に用いてその効果を発揮することができ
る。
【0086】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明
する。
【0087】実施例で示される各特性の評価方法を、以
下に示す。
【0088】[抗菌性]密閉容器の底部に予め滅菌した
サンプル0.2gを置き、このサンプル上に予め培養し
た1/50ブロースで希釈した大腸菌の菌液0.2ml
を蒔き、37℃のインキュベーター内に18時間静置し
た後、20mlのSCDLP培地を添加して十分に振と
うして菌を洗い落とす。これを普通寒天培地に蒔き、2
4時間後に菌数を計測し、同時に実施した無加工試料布
による菌数値と比較して抗菌性を判断した。
【0089】増減値差L=logB/A−logC/A A:無加工試料に接種した直後の菌数 B:無加工試料にて18時間培養した後の菌数 C:加工試料にて18時間培養した後の菌数。
【0090】[洗濯耐久性]市販の洗濯洗剤(ニッサン
ノニオンNS−210、日本油脂製)を用いて家庭用洗
濯機で15分間洗濯、3分間脱水し、乾燥する。これを
10回繰り返した後の特性を調べた。 [難燃性]ポリエステル組成物を紡糸延伸した糸をメリ
ヤス編みとして、その1gを長さ10cmにまるめて径
10mmの針金コイル中に挿入して45度の角に保持
し、下端から点火し、火源を遠ざけて消火した場合は再
び点火を繰り返し、全試料を燃焼しつくすのに要する点
火回数を求めた。添加回数が3回以上であれば、難燃性
ありと判断した。
【0091】製造例1 撹拌機、還流用コンデンサー、温度計および滴下ロート
を備えた四つ口フラスコに、3,4,5,6−ジベンゾ
−1,2−オキサホスファン−2−オキシド(以下、D
BOPと略称する)503g、アクリル酸メチル200
gおよびメチルアルコール440gを仕込み、35℃に
保った水浴上で撹拌しながら、滴下ロートより1規定の
ナトリウムメトキシドのメチルアルコール溶液を滴下し
た。反応系内の温度が65℃を超えないように注意しな
がら、上記のメチルアルコール溶液36gを10分かけ
て滴下した。得られた溶液はわずかな褐色を呈してお
り、ヨード法による分析からDBOPの反応率は99.
3%、ガスクロマトグラフによる分析からアクリル酸メ
チルの反応率は98.9%であることが確認された。
【0092】次に、この溶液を100℃、1mmHg以
下の減圧下で2時間かけてメタノール等の揮発分を留去
した後の残分は、室温で粘りけのある微褐色の液体Aで
あり、屈折率は1.6071であった。さらに、液体A
の1部を蒸留することにより、222℃/0.2mmH
gで主留分を得た。この主留分の屈折率は1.6068
であり、赤外吸収スペクトルおよび核磁気共鳴スペクト
ルの解析から、下記式(g)の構造を有するものである
ことがわかった。また、この主留分の元素分析値は、P
=10.25%、C=63.62%、H=5.01%で
あり、理論値P=10.25%、C=63.57%、H
=5.00%とよく一致した。
【0093】
【化24】
【0094】製造例2 製造例1で用いたのと同様な四つ口フラスコに、DBO
P508g、イタコン酸ジメチル372gおよびメチル
アルコール309gを仕込み、製造例1と同様にして1
0分間かけて1規定のナトリウムメトキシドのメチルア
ルコール溶液33gを滴下することによって反応を進行
させた。得られた溶液は、微かな褐色を呈しており、ヨ
ード法による分析からイタコン酸ジメチルの反応率は9
8.8%であることが確認された。次に、この溶液を1
00℃、1mmHg以下の減圧下で2時間かけて揮発分
を留去した後の残分は、室温でガラス状の半固体Bであ
り、その残留分率は66.7%であった。半固体Bをエ
タノール溶液で1/10規定のナトリウムエトキシドで
滴定したときの酸価は0meq/kgであり、元素分析
によるP含有率は8.24%であった。また、半固体B
をエチレングリコールで再結晶することにより、融点8
8.1℃の白色固体を得た。この固体は、赤外吸収スペ
クトルおよび核磁気共鳴スペクトルの解析から、下記式
(h)の構造を有するものであることがわかった。ま
た、このものの元素分析値は、P=8.25%、C=6
1.01%、H=5.11%であり、理論値P=8.2
7%、C=60.96%、H=5.12%とよく一致し
た。
【0095】
【化25】
【0096】製造例3 撹拌機、還流コンデンサー、温度計および窒素吹込口を
備えた四つ口フラスコに、DBOP497gおよびイタ
コン酸ジメチル400gを仕込み、150℃に保った油
浴上で攪拌しながら、窒素雰囲気下に4時間反応させ
た。次いで、窒素吹込口を閉じ、還流コンデンサーを取
り外し、留出缶を取り付けて、150℃、1mmHg以
下の減圧下で2時間かけて未反応のイタコン酸ジメチル
を留去した。得られたものは、無色透明の室温でガラス
状の半固体Cであり、ヨード法による分析から未反応の
DBOPの残存率は0.5%であり、元素分析によるP
含有率は8.26%であり、酸価は4meq/kgであ
ることが確認された。
【0097】さらに、半固体Cをエチレングリコールで
再結晶することにより、融点88.2℃の白色固体を得
た。この固体は、赤外吸収スペクトルおよび核磁気共鳴
スペクトルの解析から、下記式(h)の構造を有する化
合物であり、元素分析によるP含有率は8.29%であ
り、理論値8.27%とよく一致していることが確認さ
れた。
【0098】
【化26】
【0099】製造例4 製造例3で用いたのと同様な四つ口フラスコに、DBO
P540gおよびイタコン酸316gを仕込み、製造例
3と同様にして反応を行い、次いで、揮発分を留去させ
た。得られたものは、融点86℃の無色透明の固体Dで
あり、ヨード法による分析から未反応のDBOPの残存
率は0.7%であり、元素分析によるP含有率は8.9
3%であることが確認された。
【0100】さらに、固体Dをジオキサンで再結晶する
ことにより、融点189.4℃の白色固体を得た。この
固体は、赤外吸収スペクトルおよび核磁気共鳴スペクト
ルの解析から、下記式(i)の構造を有する化合物であ
り、元素分析値はP=8.95%、C=58.88%、
H=4.39%であり、理論値P=8.94%、C=5
8.96%、H=4.37%とよく一致していることが
確認された。
【0101】
【化27】
【0102】製造例5 5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム50gを水
2000mlに溶解し、そこにトリ−n−ブチルドデシ
ルホスホニウムクロライド69gを水2000mlに溶
解した水溶液を室温で滴下し、1時間反応させた。反応
終了後、ジエチルエーテル2000mlを加え、生成物
を抽出した。溶媒を留去し、乾燥することにより、スル
ホイソフタル酸ジメチルのトリ−n−ブチルドデシルホ
スホニウム塩98gを得た。
【0103】実施例1 376部(重量部、以下同様)のジメチルテレフタレー
ト、248部のエチレングリコール、38部(ジメチル
テレフタレートに対して3モル%)のスルホイソフタル
酸ジメチルのトリ−n−ブチルドデシルホスホニウム
塩、ジメチルテレフタレートに対して0.09重量%の
酢酸亜鉛、およびジメチルテレフタレートに対して0.
03重量%の三酸化アンチモンからなる混合物を、15
0〜230℃で120分間加熱し、エステル交換反応を
行った。次いで、系の温度を30分間で275℃にし、
系の圧力を徐々に減じて45分後に0.2mmHgと
し、この条件下で80分間反応を続けた。ここで、9.
4部のリン化合物(g)(製造例1で得られた液体A)
を添加し、常圧で30分間反応を続けた。得られたポリ
マーは、固有粘度0.65、融点246℃であった。
【0104】得られたポリマーを、2軸押出により溶融
押出して丸穴ノズルより吐出し、紡糸した。この紡糸原
糸をローラープレート法により通常の条件で延伸し、1
2デニール6フィラメントの延伸糸を得た。この延伸糸
を縦糸および横糸に用いて常法により織物を作成し、常
法によりリラックス、ヒートセット、染色を施した後、
各特性を調べた。表1にその結果を示す。
【0105】実施例2 376部のジメチルテレフタレート、248部のエチレ
ングリコール、14.6部のリン化合物(h)、38部
(ジメチルテレフタレートに対して3モル%)のスルホ
イソフタル酸ジメチルのトリ−n−ブチルドデシルホス
ホニウム塩、ジメチルテレフタレートに対して0.07
重量%の酢酸亜鉛、ジメチルテレフタレートに対して
0.02重量%のシュウ酸チタニルカリウム、およびジ
メチルテレフタレートに対して0.01重量%の三酸化
アンチモンからなる混合物を、150〜230℃で12
0分間加熱し、エステル交換反応を行った。次いで、系
の温度を30分間で275℃にし、系の圧力を徐々に減
じて45分後に0.2mmHgとし、この条件下でさら
に80分間反応を続けた。得られたポリマーは、固有粘
度0.69、融点245℃であった。
【0106】得られたポリマーを、2軸押出により溶融
押出して丸穴ノズルより吐出し、紡糸した。この紡糸原
糸をローラープレート法により通常の条件で延伸し、1
2デニール6フィラメントの延伸糸を得た。この延伸糸
を縦糸および横糸に用いて常法により織物を作成し、常
法によりリラックス、ヒートセット、染色を施した後、
各特性を調べた。表1にその結果を示す。
【0107】実施例3 322部のテレフタル酸、248部のエチレングリコー
ル、0.2部の三酸化アンチモンおよび1.0部のトリ
エチルアミンからなる混合物を、230℃、2.5kg
/cm2下で加熱して60分間反応させ、この時点で1
0.3部のリン化合物(i)と38部(テレフタル酸に
対して3モル%)のスルホイソフタル酸ジメチルのトリ
−n−ブチルドデシルホスホニウム塩を添加し、さらに
230℃、2.5kg/cm2の条件下で60分間反応
させた。次いで、系の温度を40分間で275℃にし、
系の圧力を徐々に減じて最終的に0.3mmHgとし、
この条件下でさらに100分間反応を続けた。得られた
ポリマーは、固有粘度0.65、融点245℃であっ
た。
【0108】得られたポリマーを、2軸押出により溶融
押出して丸穴ノズルより吐出し、紡糸した。この紡糸原
糸をローラープレート法により通常の条件で延伸し、1
2デニール6フィラメントの延伸糸を得た。この延伸糸
を縦糸および横糸に用いて常法により織物を作成し、常
法によりリラックス、ヒートセット、染色を施した後、
各特性を調べた。表1にその結果を示す。
【0109】比較例1 実施例1においてリン化合物およびホスホニウム塩を入
れない以外は実施例1と同様な方法で反応を行い、ポリ
マーを得た。得られたポリマーは、固有粘度0.65、
融点256℃であった。得られたポリマーを、2軸押出
により溶融押出して丸穴ノズルより吐出し、紡糸した。
この紡糸原糸をローラープレート法により通常の条件で
延伸し、12デニール6フィラメントの延伸糸を得た。
この延伸糸を縦糸および横糸に用いて常法により織物を
作成し、常法によりリラックス、ヒートセット、染色を
施した後、各特性を調べた。表1にその結果を示す。
【0110】実施例4 376部のジメチルテレフタレート、248部のエチレ
ングリコール、38部(ジメチルテレフタレートに対し
て3モル%)のスルホイソフタル酸ジメチルのトリ−n
−ブチルドデシルホスホニウム塩、ジメチルテレフタレ
ートに対して0.09重量%の酢酸亜鉛、およびジメチ
ルテレフタレートに対して0.03重量%の三酸化アン
チモンからなる混合物を、150〜230℃で120分
間加熱し、エステル交換反応を行った。ここで水酸化ア
ルミニウムの粒子をエチレングリコールに分散したスラ
リーを、アルミニウム原子として20部添加した後、系
の温度を30分間で275℃にし、系の圧力を徐々に減
じて45分後に0.2mmHgとし、この条件下でさら
に100分間反応を続けた。得られたポリマーは、固有
粘度0.65、融点246℃であった。
【0111】得られたポリマーを、2軸押出により溶融
押出して丸穴ノズルより吐出し、紡糸した。この紡糸原
糸をローラープレート法により通常の条件で延伸し、1
2デニール6フィラメントの延伸糸を得た。この延伸糸
を縦糸および横糸に用いて常法により織物を作成し、常
法によりリラックス、ヒートセット、染色を施した後、
各特性を調べた。表1にその結果を示す。
【0112】実施例5 376部のジメチルテレフタレート、248部のエチレ
ングリコール、20部のビス(3,5−ジブロモ−4−
ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、38部(ジメ
チルテレフタレートに対して3モル%)のスルホイソフ
タル酸ジメチルのトリ−n−ブチルドデシルホスホニウ
ム塩、ジメチルテレフタレートに対して0.09重量%
の酢酸亜鉛、およびジメチルテレフタレートに対して
0.03重量%の三酸化アンチモンからなる混合物を、
150〜230℃で120分間加熱し、エステル交換反
応を行った。次いで、系の温度を30分間で275℃に
し、系の圧力を徐々に減じて45分後に0.2mmHg
とし、この条件下でさらに100分間反応を続けた。得
られたポリマーは、固有粘度0.65、融点246℃で
あった。
【0113】得られたポリマーを、2軸押出により溶融
押出して丸穴ノズルより吐出し、紡糸した。この紡糸原
糸をローラープレート法により通常の条件で延伸し、1
2デニール6フィラメントの延伸糸を得た。この延伸糸
を縦糸および横糸に用いて常法により織物を作成し、常
法によりリラックス、ヒートセット、染色を施した後、
各特性を調べた。表1にその結果を示す。
【0114】
【表1】 抗菌性(洗濯前) 抗菌性(洗濯後) 難燃性 実施例1 4.7 4.5 5.2 実施例2 4.5 4.5 5.1 実施例3 4.7 4.7 5.2 実施例4 4.3 4.7 4.8 実施例5 4.7 4.7 4.6 比較例1 0.3 0.1 2.0
【0115】
【発明の効果】本発明のポリエステル組成物は、抗菌性
(特に、抗菌耐久性)と難燃性を両立し、耐熱性に優
れ、安全性にも配慮されたものである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/527 C08K 5/527 // C08G 63/692 C08G 63/692 Fターム(参考) 4J002 CF03W CF04W CF05W CF06W CF07W CF08W CF09W CF10W CF13W CF15X CP033 DD026 DE126 DE146 DE186 DJ006 DJ016 DJ036 DJ056 EC046 EF116 EV216 EW046 EW126 EW136 EW146 EX036 FD133 FD136 4J029 AA03 AB01 AC02 AD01 AE06 BA02 BA03 BA04 BA05 BA08 BA10 BD07A BF09 BF13 BF25 CA02 CA06 CA09 CB03B CB04A CB05A CB06A CC06A CD03 DC08 JA063 JA093 JA293 JA303 JB063 JC553 JF223 JF473

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジカルボン酸およびそのエステル形成性
    誘導体からなる群より選択される少なくとも1種、ジオ
    ールおよびそのエステル形成性誘導体からなる群より選
    択される少なくとも1種、および、ジカルボン酸および
    そのエステル形成性誘導体に対して0.01〜10モル
    %である下記一般式(1)で表されるホスホニウム塩基
    を有する化合物を構成成分とするポリエステル、ならび
    に、アルミニウム、ケイ素、アンチモン、ハロゲンおよ
    びリンからなる群より選択される少なくとも1種の元素
    を有する難燃性物質を含有することを特徴とするポリエ
    ステル組成物。 【化1】−P+1234 (1) (式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なっ
    て、アルキル基またはアリール基を示し、R1、R2、R
    3およびR4の少なくとも1個は、炭素数10〜20のア
    ルキル基を示す。)
  2. 【請求項2】 難燃性物質として、下記一般式(2)で
    表されるリン化合物をリン原子の含有量として500〜
    50000ppm含有していることを特徴とする請求項
    1に記載のポリエステル組成物。 【化2】 (式中、R5、R6およびR7は、同一または異なって、
    アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ
    基またはエステル形成性官能基を示す。ただし、R5
    6およびR7のうちの少なくとも1個はエステル形成性
    官能基以外の基である。また、R5、R6およびR7のう
    ちの2個は互いに結合して環を形成してもよい。)
  3. 【請求項3】 ホスホニウム塩基を有する化合物が、下
    記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とす
    る請求項1または2に記載のポリエステル組成物。 【化3】 (式中、Aは芳香族基を示す。X1およびX2は、同一ま
    たは異なって、エステル形成性官能基を示す。R1
    2、R3およびR4は、同一または異なって、アルキル
    基またはアリール基を示し、R1、R2、R3およびR4
    少なくとも1個は、炭素数10〜20のアルキル基を示
    す。)
  4. 【請求項4】 リン化合物が、下記一般式(4)で表さ
    れる化合物であることを特徴とする請求項2または3に
    記載のポリエステル組成物。 【化4】 (式中、R8は1価のエステル形成性官能基を示す。R9
    およびR10は、同一または異なって、ハロゲン原子、炭
    素数1〜10の炭化水素基、または1価のエステル形成
    性官能基を示す。Eは2価または3価の有機残基を示
    す。mは1または2を示す。n、qはそれぞれ0〜4の
    整数を示す。)
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポ
    リエステル組成物を成形することにより得ることができ
    る成形物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002155211A (ja) * 2000-09-06 2002-05-28 Toyobo Co Ltd 難燃性樹脂組成物及びこれを塗布又は積層した難燃性積層体
JP2006524264A (ja) * 2003-01-06 2006-10-26 トーレイ プラスティクス(アメリカ),インコーポレイティド 難燃性ポリエステル樹脂組成物及びそれから形成された物品
US7223880B2 (en) 2002-12-10 2007-05-29 Nippon Unicar Company Limited Phosphorus-containing organosilicon compound, a method for producing the same, and a resin composition or a coating composition containing the same

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