JP2000177226A - 孔版印刷装置 - Google Patents

孔版印刷装置

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JP2000177226A
JP2000177226A JP10357990A JP35799098A JP2000177226A JP 2000177226 A JP2000177226 A JP 2000177226A JP 10357990 A JP10357990 A JP 10357990A JP 35799098 A JP35799098 A JP 35799098A JP 2000177226 A JP2000177226 A JP 2000177226A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 放置後の印刷立ち上げにおける滲み画像の発
生による経済的及び時間的無駄を極力少なくする。 【解決手段】 版胴2内の印刷ニップ部から下流側へ僅
かに離れた位置に、版胴2の内周面に残った印刷直後の
インキを回収してインキローラ22へ戻すインキ回収手
段8を設ける。インキ回収手段8は、版胴2の内周面に
接触してインキを掻き取る掻取部材30と、この掻取部
材30によって掻き取られたインキをインキローラ22
へ還流させる戻し部材32を有している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外周面にマスタ
(感熱孔版原紙)が巻装された版胴に印刷用紙を押圧し
て印刷を行う孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】孔版印刷装置では、内部にインキ供給手
段を備えた版胴の外周面に製版済みのマスタを巻装し、
例えばプレスローラ等の押圧部材で印刷用紙を版胴に押
圧して印刷することが行われている。一般に、版胴内部
のプレスローラに対向する位置には、インキ供給手段の
構成要素の一つであるインキローラ(インキ供給部材)
が設けられており、インキローラから版胴内周面に供給
されたインキがプレスローラとの押圧力(印圧)により
版胴の開孔を通ってマスタの穿孔部から滲み出し、滲み
出たインキが印刷用紙に転移してインキ画像が形成され
るものである。
【0003】版胴は、一般に、版胴本体としての円筒状
の多孔性支持板と、この多孔性支持板の外周面に巻装さ
れたメッシュスクリーン等から構成されており、このメ
ッシュスクリーンの外周面に製版済みのマスタが巻装さ
れるようになっている。メッシュスクリーンは、多孔性
支持板の開孔から出たインキを拡散させてマスタに対す
るインキ供給を均一化するためのものであり、ポリエス
テル又はステンレスの細線等で織られて形成されてお
り、1〜3層程度巻装されている。
【0004】この種の孔版印刷装置では、十分な画像濃
度を確保するために、画像比率の大小に拘らずインキ供
給は定量的に行われている。極端な例を挙げれば、ベタ
部が多い画像の場合と、ドットが一つしか存在しない画
像の場合とにおいてインキ供給量には差がない。このた
め、インキ供給過多となり易く、いわゆる「裏移り」や
「ドットの過剰な太り」などの印刷品質の低下を招き易
い。また、インキローラによって版胴内周面に供給され
たインキはその都度全てが印刷のために消費される訳で
はなく、印刷に使用されなかったインキは版胴内周面に
付着したまま残存する。その量は、新たなインキの供給
がなくても印圧させえあればその後しばらくは印刷を継
続できる程度である。この残存インキの量は、画像比率
が少ない場合には当然に多くなる。
【0005】版胴内周面におけるインキの付着量が多く
なり過ぎると、インキが版胴外部に漏れて印刷用紙を汚
損するなどの問題が発生する。特開平8−142474
号公報や、特開平9−52427号公報には、版胴内周
面のインキの量を適正なものとすべく、版胴内周面のイ
ンキ層の厚みを規制部材で一定にする技術が開示されて
いる。規制位置は、いずれも版胴回転方向における印刷
ニップ部の上流側となっている。
【0006】一方、インキローラ自体へのインキの供給
は、図18に示すように、インキローラ200とドクタ
ーローラ202との間に楔状のインキ溜まり部204を
形成し、このインキ溜まり部204に溜まったインキを
ドクターローラ202で厚みを規制しながらインキロー
ラ200の表面に付着させることによってなされてい
る。印刷時、インキローラ200の外周面と版胴206
の内周面が接触してインキローラ200から版胴206
へインキが供給される。一般に、ドクターローラ202
は、インキローラ200と反対向きに回転されるように
なっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の孔
版印刷装置では、上述のように、画像比率の大小に拘ら
ずインキ供給を定量的に行っているため、印刷に使用さ
れなかったインキが版胴内周面に残存するが、この状態
で装置が使用されずに長時間、例えば2,3日放置され
た場合、インキの経時的状態変化による印刷物の品質低
下の問題が発生する。特に、インキがエマルションタイ
プの場合には、水分が蒸発して粘度が低下するため、放
置後、製版して新たな印刷を行う際、最初の数十枚から
最悪の場合には百枚以上にも亘って使用に耐えない滲み
画像が発生する。状態変化したインキが入れ替わらない
限り、印刷品質は安定しないのである。従来において
は、粘度の低下した残存インキの影響が無くなるまで最
初やれ紙で印刷したり、あるいは新しいマスタに染み込
ませて廃棄する等の手段を講じているが、多大な経済的
損失と時間の無駄となっている。
【0008】放置によるインキの経時的状態変化は、版
胴の内周面だけでなく、インキローラの外周面及びイン
キ溜まり部でも同時に進行する訳であるが、版胴の内周
面の場合には他の場合に比べて表面積が極端に大きいた
め、インキの水分の蒸発速度は速く、上記印刷物の品質
低下の原因の殆どを占めているといってよい。従って、
版胴内周面におけるインキの経時的状態変化による問題
を解消できれば、上記経済的損失と時間の無駄の問題を
解消することができることになる。上記特開平8−14
2474号公報や、特開平9−52427号公報に開示
された技術は、あくまでも版胴内周面における版胴外部
への漏れの原因となる余分なインキ、すなわち「十分な
画像濃度を得るに必要な量以上のインキ」を取り除くも
のであり、上記版胴内周面におけるインキの経時的状態
変化による問題の解決策とはならない。
【0009】すなわち、十分な画像濃度を得るための適
正なインキ供給量においても、印刷に使用されないイン
キが発生し、版胴内周面に付着して残存するからであ
る。むしろ、上記特開平8−142474号公報や、特
開平9−52427号公報に開示された技術では、印刷
ニップ部の下流側においては規制部材による規制を受け
ない厚みの大きいインキ層が存在するので、放置した場
合には水分が蒸発して粘度の低下したインキが版胴内周
面に大量に存在することになり、上記問題はさらに深刻
となる。
【0010】一方、図18で示した従来におけるインキ
ローラ200へのインキの供給構成では、インキ層に層
厚みの変動等による筋状のムラが発生し、インキ供給過
多の問題を解消すべくインキ供給量を抑えると、すなわ
ち、インキローラ200とドクターローラ202との間
のギャップを小さくすると、筋状のムラが印刷面に濃度
ムラとして表れるという問題があった。インキに対する
ドクターローラ202の規制が分離点Sで開放されてそ
れがインキローラ200上におけるインキの層厚みとな
る訳であるが、ドクターローラ202もインキ溜まり部
204に接触しているためドクターローラ202上にも
インキ層が形成されていることになる。従って、分離点
Sにおける分離は、インキローラ200に付着したイン
キと、ドクターローラ202自体の表面との間の分離で
はなく、インキローラ200に付着したインキと、ドク
ターローラ202に付着したインキとの間の分離とな
る。すなわち、インキ層間の分離となり、それ故に粘度
のバラツキ(分離力のバラツキ)等の原因により、筋状
のムラが発生するものと思われる。
【0011】そこで、本発明は、版胴内周面におけるイ
ンキの経時的状態変化による問題を解消でき、経済的及
び時間的無駄を回避できる孔版印刷装置の提供を、その
主な目的とする。また、本発明は、インキローラ上のイ
ンキ層における筋状のムラの発生を防止でき、印刷品質
の向上を図ることができる孔版印刷装置の提供を、その
主な目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、印刷に使用されなかったインキを印刷工
程終了直後に回収し、換言すれば、インキが再供給され
る前のなるべく早い段階に回収し、一枚の印刷用紙への
印刷が終了する毎に版胴内のインキ付着状態を初期状態
に戻すこととした。究極的には、版胴内周面におけるイ
ンキ量を常に1枚の印刷用紙に必要な適正量に保とうと
いうものである。また、本発明は、上記目的を達成する
ために、インキローラ上におけるインキ層表面を鏡面状
とすることとした。
【0013】具体的には、請求項1記載の発明では、多
数の開孔が形成された円筒状の多孔性支持板を備えた版
胴と、この版胴の内部に設けられ版胴内周面にインキを
供給するインキ供給部材とを有する孔版印刷装置におい
て、上記版胴内の、印刷ニップ部から下流側へ僅かに離
れた位置で且つ上記インキ供給部材の近傍に、上記版胴
の内周面に残った印刷直後のインキを回収して上記イン
キ供給部材へ戻すインキ回収手段を設けた、という構成
を採っている。
【0014】請求項2記載の発明では、請求項1記載の
構成において、上記インキ回収手段は、上記版胴内周面
に接触してインキを掻き取る掻取部材と、この掻取部材
によって掻き取られたインキを上記インキ供給部材に還
流させる戻し部材とを有している、という構成を採って
いる。
【0015】請求項3記載の発明では、請求項2記載の
構成において、上記掻取部材はその基端が上記インキ供
給部材の支持部材に支持されているとともに自由端が上
記版胴の内周面に接触する状態に設けられ、少なくとも
上記自由端側は弾性変形可能であり、上記戻し部材は上
記掻取部材の自由端近傍に一体に設けられている、とい
う構成を採っている。
【0016】請求項4記載の発明では、請求項3記載の
構成において、上記戻し部材が上記掻取部材の自由端側
を折り曲げて形成されている、という構成を採ってい
る。
【0017】請求項5記載の発明では、請求項2記載の
構成において、上記掻取部材はその基端が上記インキロ
ーラの支持部材に支持されているとともに自由端が上記
版胴の内周面に接触する状態に設けられ、少なくとも上
記自由端側は弾性変形可能であり、上記戻し部材は上記
掻取部材の自由端近傍に設けられた回転体である、とい
う構成を採っている。
【0018】請求項6記載の発明では、請求項1,2,
3,4又は5記載の構成において、上記多孔性支持板の
厚みが約0.13mm以下である、という構成を採って
いる。
【0019】請求項7記載の発明では、請求項6記載の
構成において、上記開孔のピッチが、視覚の空間分解能
の空間周波数に対応付けられ、且つ、距離30cmにお
いて人間の視覚の最大感度を与える空間周波数を超えて
感度がおおよそ1/2となる高周波数領域に設定されて
決定され、上記開孔の径は決定された上記開孔のピッチ
の50%以下に設定されている、という構成を採ってい
る。
【0020】請求項8記載の発明では、版胴と、この版
胴の内部に設けられ版胴内周面にインキを供給するイン
キローラと、このインキローラとの間に楔状のインキ溜
まり部を形成するように僅かな隙間をおいて設けられ上
記インキローラへ供給されるインキの層厚を規制するド
クターローラとを有する孔版印刷装置において、上記ド
クターローラが上記インキローラと同一方向に回転さ
れ、上記インキ溜まり部の上方には、上記ドクターロー
ラの外周面のインキを掻き取ってインキ溜まり部に戻す
スクレーパが設けられている、という構成を採ってい
る。
【0021】請求項9記載の発明では、請求項8記載の
構成において、上記スクレーパが、掻き取ったインキの
競り上がりを防止する制流板を有している、という構成
を採っている。
【0022】請求項10記載の発明では、請求項8又は
9記載の構成において、上記インキローラとドクターロ
ーラの間の隙間を清掃する清掃手段を有している、とい
う構成を採っている。
【0023】
【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明す
る。図1に示すように、本実施例における孔版印刷装置
は、版胴2と、版胴2の下方において版胴2に対して接
離自在に設けられた押圧部材としてのプレスローラ4
と、版胴2の内部に設けられたインキ供給手段6と、版
胴2の内部において印刷ニップ部Nから版胴2の回転方
向下流側へ僅かに離れた位置に設けられたインキ回収手
段8等から主に構成されている。版胴2は、図示しない
装置本体側板間に支持された中空状の支軸10に軸方向
に間隔をおいて回転可能に支持された一対のフランジ1
2,12と、両端部をこれらのフランジ12,12に支
持された円筒状で薄肉の多孔性支持板14と、多孔性支
持板14の外周面に設けられたメッシュスクリーン16
等から構成されており、メッシュスクリーン16の外周
面には製版済みのマスタ18が巻装されている。多孔性
支持板14は、ステンレス材の薄板で形成されている。
【0024】インキ供給手段6は、版胴2の外部から内
部へインキを導入するインキ供給パイプとしての支軸1
0と、この支軸10に接続されたインキ分配部材20
と、インキ供給部材としてのインキローラ22と、ドク
ターローラ24等から構成されている。インキローラ2
2とドクターローラ24は、支軸10に固定されて下方
に延びる支持部材としてのブラケット26,26に回転
自在に支持されており、版胴2の回転動作に対して位置
固定されている。
【0025】インキローラ22とドクターローラ24と
の間には、楔状のインキ溜まり部28が形成されてお
り、インキ分配部材20のインキ通路20aを通って滴
下したインキはインキ溜まり部28に溜まるようになっ
ている。インキ溜まり部28に溜まったインキは後述す
る印刷時におけるインキローラ22とドクターローラ2
4の回転により練られ、ドクターローラ24によって層
厚みを一定に規制されながらインキローラ22の外周面
に供給される。インキローラ22は、その外周面と多孔
性支持板14の内周面(版胴内周面)との間に僅かな隙
間が存在するように配置されており、図1に示すよう
に、印刷時、すなわち、プレスローラ4によって印刷用
紙25が版胴2に押圧されるとき、版胴2が変形してそ
の内周面にインキローラ22の外周面が接触するように
なっている。図示しないが、インキ溜まり部28にはイ
ンキの有無を検知するためのインキ検知手段がブラケッ
ト26に支持されて設けられており、このインキ検知手
段からの検知信号に基づいてインキ分配部材20からイ
ンキが適宜供給されるようになっている。
【0026】インキ回収手段8は、図1及び図2に示す
ように、版胴2の内周面に接触してインキを掻き取る掻
取部材30と、この掻取部材30によって掻き取られた
インキをインキローラ22へ還流させる戻し部材32を
有している。掻取部材30は、厚さが0.2mm程度の
燐青銅板で矩形のプレート状に形成されており、その基
端にはネジ挿通孔を有する固定片30aが一体に形成さ
れている。掻取部材30は固定片30aを介してブラケ
ット26の下方突縁26aに図示しないネジで固定され
ており、自由端30bが弾性力下で版胴2の内周面に圧
接するように片持ち梁態様で支持されている。自由端3
0bは、版胴2の内周面との接触抵抗を少なくするため
に、掻き取り性能が低下しないレベルで丸みを付けられ
ている。戻し部材32は可撓性を有するマイラーで、固
定片32aと、可動片32bとからなる側面ク字状に形
成されており、掻取部材30の自由端30b近傍に一体
に固定されている。掻取部材30はブラケット26に対
して間接的に固定してもよい。すなわち、本実施例にお
けるブラケット26は従来のものに比べて掻取部材30
を固定するための下方突縁26aを有するように形成し
たが、従来のブラケットにアーム部材を固定し、そのア
ーム部材に掻取部材30を固定するようにしてもよい。
【0027】図3に示すように、戻し部材32の可動片
32bは、その自由端がインキローラ22の外周面に近
接するように設定されており、その間隔は、約0.1m
m程度である。印刷時に使用されずに版胴2の内周面に
残ったインキは、印刷工程直後に掻取部材30によって
掻き取られる。掻き取られたインキは掻取部材30の自
由端30b側と戻し部材32とで区画される狭い空間内
に一旦溜められながら戻し部材32の作用によってイン
キローラ22の外周面に還流される。戻し部材32の可
動片32bは可撓性を有しているので、インキローラ2
2上のインキを堰き止めることはなく、圧力や粘度の変
動に対応して任意に変位し、溜められた回収インキをイ
ンキローラ22上に戻す。この可動片32bの変位は、
可動片32bの背後の空間34の存在によって可能とな
っている。戻し部材32が無くても掻き取られたインキ
は掻取部材30を競り上がって溜まるため、インキロー
ラ22への還流作用が生じるが、この場合にはインキ溜
まりの容積が大きくなるので回収されたインキの粘度変
化による問題が生じる。これに対し、本実施例では戻し
部材32を掻取部材30の自由端30b近傍に設けて回
収インキの貯留量が少なくなるようにしているので、粘
度変化の影響を極力小さくすることができる。
【0028】掻取部材30は片持ち梁方式で支持されて
いるので、全体として弾性変形が可能であり、これによ
って自由端30bは印刷時や芯振れによる版胴2の変形
に追随でき、版胴2の変形時に急激な接触抵抗の変動が
起こることが防止される。掻取部材30の寸法や版胴2
の内周面に対する接触角θの大きさ等は、摩擦や印刷圧
力変動等による振動でインキの回収むらが起こらないよ
うに、実験結果を踏まえてその適正値が決定されるもの
である。掻取部材30の材質としては、他に、厚みが
0.1mm程度のステンレス薄板(SUS420やSU
S304等)を採用できる。また、プラスチック等の弾
性材料で形成してもよく、かかる観点から厚みが1mm
程度のウレタンブレード等を採用することもできる。
【0029】このように、インキ回収手段8によって印
刷直後に版胴2の内周面に残ったインキを回収すること
により、インキ供給位置と回収位置が接近しているため
に、版胴2の内周面の残存インキを極力少なくすること
ができる。このため、粘度低下したインキの量を減らす
ことができ、放置後の立ち上がり特性、すなわち、放置
後における新たな製版・印刷後の印刷物に見られる滲み
の回復期間を短くすることができる。また、本実施例で
は多孔性支持板14の厚みを0.13mm以下としてお
り、従来の版胴を利用した場合に比べてさらに放置後の
立ち上がり特性を向上させることができる。その理由を
以下に説明する。
【0030】インキ回収手段8によって回収されるイン
キは版胴2の内周面に残ったものだけであり、多孔性支
持板14の開孔に入り込んだインキは回収されない。放
置された場合、開孔に入り込んだインキも内周面に残っ
たインキと同様に粘度低下を来すことになる。従来のよ
うに版胴2の厚みが大きい場合には、開孔に存在するイ
ンキの量も多くなるため、内周面のインキを回収するだ
けでは放置後の立ち上がり特性を十分に向上させること
ができない。そこで、印刷工程直後に版胴2自体に保持
される回収し得ないインキ量そのものを低下させること
とした。
【0031】図4は、本発明者らの実験による、版胴2
の厚み(厳密には多孔性支持板14の厚み)t(mm)
と、72時間放置後の印刷における滲み(細線幅)との
関係を示すグラフである。実験機としてリコー販売のV
T6000を使用し、印刷用紙25としてリコーT62
00を使用した。実験環境は常温常湿である。図4にお
けるVT6000は、市場機としての厚み、すなわち従
来の版胴厚みを意味する。実験の結果、従来の版胴厚み
の場合でもインキ回収手段8による滲み改善効果が表れ
ているが、版胴厚みを0.17mmにしたあたりからほ
ぼ実用上満足できる状態となることが判った。この結果
は、使用するインキの種類によっても当然影響される。
試しに、インキに含まれるカーボン量、インキに用いる
オイルの粘度特性等を振った実験(インキ粘度5Pa・
sec〜40Pa・sec、カーボン含有量重量比3%
〜20%)も行ったが、傾向は同じで、許容できる状態
になる版胴厚みの値が若干変動するのみであった。これ
らの実験の結果、版胴厚みを約0.13mm以下にして
おけば、広範囲に亘るインキ特性に対して放置後の立ち
上がり特性の改善が見られることが確認された。
【0032】版胴2の厚み(多孔性支持板14の厚み)
を0.13mm以下とし、版胴2の内周面に付着したイ
ンキを印刷工程直後にインキ回収手段8により回収して
しまうことで、放置後の立ち上がり時でもほとんど滲み
の感じられない印刷物を得ることができ、印刷立ち上が
り時の画質変動を抑制することができる。
【0033】また、本実施例では、図5に示すように、
多孔性支持板14の開孔14aのピッチPを0.3m
m、開孔14aの径dをその1/2以下の0.1mmと
して亀甲模様の開孔パターンとし、多孔性支持板14の
厚みtを0.1mmとした(図5では実際の寸法比には
表れていない。)。これらの寸法決定の理由を以下に述
べる。この種の孔版印刷装置では、放置後の立ち上がり
時の開孔パターンに対応する濃度ムラ、いわゆる孔目が
表れ易いという問題があるが、従来においては、開孔の
ピッチ及び開孔の径を、実際の印刷状態を見ながら試行
錯誤的に修正し、最終的に濃度ムラが目立たない寸法に
到達しているが、本実施例では、開孔ピッチを、人間の
視覚の空間分解能における空間周波数に対応付けて理論
的に決定することとした。
【0034】図6は、新聞などの印刷物を30cmの距
離から普通に見た場合の人間の視覚の空間分解能の特性
グラフである。空間周波数の単位は(lp/mm)であ
り、白黒同じ幅のラインを1ペアとして1mmの幅に何
組これが存在するかを表している。いわゆる線数であ
る。空間周波数の単位としては他に、lpm、l/m
m、Cy/mmと表示される場合もある。本実施例で
は、空間分解能を与えるVTF(Visual Tra
nsferFunction)の式として、公知の文献
中で良く用いられる以下のものを採用した。紙面での線
密度をL(lp/mm)、紙面までの距離をD(mm)
として、網膜上での空間周波数Uは、 U=(π/180
)×L×D 空間分解能Sは、 S=5.05×exp(-0.138 ×U)×(1-exp((-0.1×
U))
【0035】図6に示すように、従来の版胴に見られる
開孔ピッチ(例えば0.6mm)を空間周波数に対応さ
せると、人間の視覚に与える感度(相対感度)は最大感
度1に近い0.9近傍となる。本発明者らの実験によれ
ば、人間の視覚に最大感度を与える周波数を超えて相対
感度が1/2程度となる開孔ピッチ対応周波数よりも斜
線で表示した高周波数側に開孔ピッチを設定すると、孔
目に起因する周期的濃度ムラが目立たなくなることが判
明した。これを受けて、本実施例では、開孔ピッチPを
0.3mm以下とし、開孔径dは開孔ピッチPの1/2
以下、好ましくは1/3以下とすることとした。開孔径
を上記開孔ピッチの1/2以下にする理由は、インキが
その径以上に拡がること、インキの有無の繰り返し(ド
ットの点在)が開孔ピッチで規定されることなどから、
開孔ピッチの半分以下でないと、一つの開孔自体が持つ
空間周波数成分(開孔一つ一つのフーリエ変換成分から
規定される)の低域側が大きくなってムラが目につくよ
うになるためである。換言すれば、ドットの並びを密に
してもドットの径が大きいと一つ一つのドットが目につ
くようになるからである。
【0036】図6に斜線で表示した高周波数側に開孔ピ
ッチを設定すると、濃度ムラが目立たなくなるが、開孔
ピッチが小さくなるに従って開孔径も小さくなり、これ
に伴って多孔性支持板14の板厚も小さくなるので、版
胴2が構成部材として存在するための基本的剛性を損な
わない範囲内で、最適な開孔ピッチが選定されることに
なる。かかる観点から、本実施例では、開孔ピッチP=
0.3mm、開孔径d=0.1mm、板厚t=0.1m
mとし、エッチング加工により形成した。
【0037】実験の結果、放置後の立ち上がり時の開孔
パターンに対応する濃度ムラはほとんど感じられなかっ
た。一つには、粘度低下を起こしたインキが減ること、
もう一つは孔目のピッチが高周波数側へシフトし、イン
キの拡散効果で目立たなくなること、さらに人間の視覚
の分解能が低下する周波数領域にこのムラの成分が分布
するようになることなどがその理由である。
【0038】上述のように、孔目の問題を解消するため
には開孔径を小さくする必要があり、エッチング加工等
の関係から多孔性支持板14の厚みはそれと同程度とな
らざるを得ないため、強度不足の問題が生じる。このた
め、このような薄肉の版胴は従来においては使用できな
いとの認識が支配的であった。薄肉の版胴でも構成要素
として存在するための基本的剛性はフランジ12,12
による両端部支持によって確保されており、問題となる
のは印刷ニップ部での変形だけである。本実施例ではイ
ンキ回収手段8が印刷ニップ部の近傍において版胴内周
面を弾性力の下にバックアップしており、これにより上
記寸法レベルの薄肉の版胴2の使用が可能となってい
る。すなわち、インキ回収手段8は、版胴2の内周面に
残ったインキを回収するだけでなく、同時に、放置後の
立ち上がり特性の改善を十分に満足させるための版胴2
の薄肉化における補強部材としても機能しているのであ
る。
【0039】図7は、インキ回収手段8の変形例を示す
ものである。上記実施例では掻取部材30と戻し部材3
2を別部材で形成したが、本実施例では一つの材料で一
体に形成している。0.3mm程度の厚みのポリエステ
ルフィルムで掻取部材30が形成され、戻し部材32は
その先端部を折り曲げて形成している。掻取部材30の
固定態様及び戻し部材32のインキローラ22に対する
近接態様は上記実施例と同様である。本実施例において
も戻し部材32の背面に位置する空間34によって戻し
部材32の変位が確保され、インキローラ22上のイン
キを堰き止めることなく回収したインキをインキローラ
22へ還流させることができる。一つの素材を折り曲げ
るだけであるので、上記実施例に比べて製作が容易とな
る。
【0040】素材としてはポリエステルフィルムに限ら
ず、例えば金属バネ材を折り曲げて形成することもでき
る。また、単一の素材において、掻取部材30側を厚く
して剛性を確保し、戻し部材32側を薄くして可撓性を
確保するようにすることもできる。すなわち、機能別に
厚みを変えるようにしてもよい。このような可動構成を
有しない固定型のインキ回収手段8は構成が簡単でブラ
ケット26等に容易に取り付けることができるので、既
存の版胴にもほどんど設計変更なしに実施することがで
きる。すなわち、低コストで簡単な構成の付加で既存の
孔版印刷装置の放置後の立ち上がり特性を向上させるこ
とができる。
【0041】また、戻し部材32を回転体として回収し
たインキを強制的に且つ迅速にインキローラ22へ戻す
構成とすることもできる。図8はその一例を示してい
る。本実施例におけるインキ回収手段8は、最初の実施
例で示した掻取部材30と、戻し部材としてのローラ3
6(回転体)とを有している。ローラ36はブラケット
26に直接又は間接に回転自在に支持されており、図示
しないモータにより矢印方向に回転駆動されるようにな
っている。回収されたインキはローラ36によって直ち
に強制的にインキローラ22へ還流されるので、回収イ
ンキの貯留量を少なくすることができ、回収インキの粘
度変化による印刷品質の劣化を一層抑制することができ
る。
【0042】図9は、戻し部材32の他例を示してい
る。本実施例におけるインキ回収手段8は、最初の実施
例で示した掻取部材30と、戻し部材としての回転翼3
8(回転体)とを有している。回転翼38は可撓性を有
する材料で形成されており、図8で示した実施例と同様
に図示しないモータで回転駆動されるようになってい
る。本実施例においても回収されたインキは回転翼38
によって直ちに強制的にインキローラ22へ還流される
ので、回収インキの貯留量を少なくすることができ、回
収インキの粘度変化による印刷品質の劣化を一層抑制す
ることができる。
【0043】なお、版胴2における多孔性支持板14に
は重ね合わせによる継ぎ目が存在するが、印刷における
版胴2の回転時に掻取部材30の自由端30bが継ぎ目
の段差に突き当たらないように重ね合わせを設定し又は
版胴2の回転方向を設定する必要がある。図示しない
が、インキ回収手段8を固定せずに、版胴2の内周面に
対して接離可能とし、継ぎ目の通過時には内周面から離
れる構成とすることもできる。このようにすれば継ぎ目
が掻取部材30を通過する時の振動・衝撃を回避するこ
とができる。
【0044】次に、図10乃至図12に基づいて、他の
実施例を説明する。なお、上記実施例と同一部分は同一
符号で示し、構成上及び機能上の重複説明は適宜省略す
る。既述のように、従来では、裏移りやドットの過剰太
り等のインキ供給過多の問題に対処すべくインキローラ
22上のインキ層の厚みを小さくすると、層厚みの変動
等により筋状のムラが生じてこれが濃度ムラとして表れ
易い、という問題があった。本実施例は、上記インキ供
給過多の問題と濃度ムラの問題を同時に解消する一例で
ある。
【0045】図10に示すように、インキ溜まり部28
の上方には、ドクターローラ24の外周面のインキを掻
き取ってインキ溜まり部28に戻すスクレーパ40が設
けられている。また、本実施例におけるドクターローラ
24は、図示しない駆動手段によってインキローラ22
と同一回転方向に回転され、これによりインキローラ2
2とドクターローラ24の最接近部における回転方向は
互いに逆向きとなっている。すなわち、本実施例におけ
るドクターローラ24は、従来と異なり、インキローラ
22に対してリバースローラとして設定されている。
【0046】スクレーパ40は、図11に示すように、
矩形状のブレード42と、ブレード42が掻き取ったイ
ンキの競り上がりないし這い上がりを防止する制流板4
4を有している。ブレード42の両端には挿通孔を有す
る固定片42aが一体に形成されており、この固定片4
2aを介して図示しない止めネジによりブラケット26
間に、先端のエッジ42bがドクターローラ24の外周
面に接触した状態に固定されている。制流板44は、平
板状の固定部44aと、湾曲状の制流部44bとから構
成されており、固定部44aを介してブレード42の先
端部上面に固定されている。
【0047】ブレード42のエッジ42bによるスクレ
ープ作用によりドクターローラ24の外周面は軸方向全
体に亘って平坦に且つ一定に保たれ、この平坦面によっ
てインキローラ22上のインキ層厚みが規制されるの
で、従来におけるインキ層間の不安定分離と異なり、イ
ンキローラ22上のインキ層表面は鏡面状となる。図1
2は、上記スクレーパ40を有する構成におけるインキ
ローラ22上のインキ層厚みと、ドクターギャップ(イ
ンキローラ22とドクターローラ24間の隙間)との関
係を示す実験グラフである。このグラフから明らかなよ
うに、リバースローラ型とした場合、インキローラ22
上のインキ層の厚みの規制はほぼ直線的に安定に変化し
ており、これによりインキローラ22上のインキ層の厚
みを、ドクターギャップ以下にすることができる。
【0048】インキローラ22上のインキ層表面を鏡面
状とすることができることにより、筋状のムラの発生を
高精度に抑制でき、インキ層厚みを可能な限り薄くする
ことができる。これにより、インキローラ22による版
胴2内周面へのインキ供給量を必要最小限に抑えること
ができ、インキ供給量過多による問題を解消できるとと
もに、濃度ムラの問題も解消することができる。本実施
例では、インキ回収手段8と併用する構成としたので、
放置後の立ち上がり特性の改善を十分に行えるととも
に、インキ供給過多による問題を解消できることにな
る。なお、スクレーパ40を設けるだけの構成としても
よく、この場合であってもインキ供給過多の問題を解消
する観点から、従来に比べて印刷物の品質向上への貢献
度は大きいと言える。
【0049】なお、ドクターローラ24の回転速度は低
速でも上記機能は十分に得られるが、スクレーパ40に
よって平坦にされた規制面にゴミが付着するのを防止す
る観点から、回転速度は速いほうが望ましい。スクレー
パ40は、ブレード42と制流板44との組み合わせ構
成としたが、ブレード42のみの構成でも上記鏡面形成
機能は得ることができ、また、同一材料で一体成形して
もよい。構成を簡易化する観点から、ドクターローラ2
4に代えてドクターブレードを用いてもよいが、ゴミ詰
まり等に対する信頼性がドクターローラ方式に比べて劣
ることが実験により確認されている。
【0050】上記のように、スクレーパ40とリバース
ローラ型のドクターローラ24を用いた構成によってイ
ンキローラ22上のインキ層表面を鏡面状とすることが
でき、これによって筋状のムラの発生を抑制できるが、
ドクターギャップ部にゴミが詰まったりした場合には、
インキローラ22上のインキ層に筋状のムラが発生する
ことになる。図13は、その対策の一例を示すものであ
る。本実施例では、インキローラ22とドクターローラ
24との間に、ドクターギャップ部Gを清掃する清掃手
段46が設けられている。清掃手段46は、ブラケット
26(図示省略)間に支持された軸48と、この軸48
に摺動自在に嵌合されたブロック状の移動部材50と、
この移動部材50に基端を固定されるとともに自由端が
ドクターギャップ部Gに入り込むように設けられた糸状
又は帯状のクリーニング部材52等から構成されてい
る。
【0051】移動部材50は通常は非画像領域に退避さ
せられており、図示しない駆動手段により定期的に又は
筋状ムラが発生した時にマニュアル操作で入力される指
令によりインキローラ22の軸方向に移動させられる。
移動部材50の移動に伴うクリーニング部材52の移動
でドクターギャップ部Gに存在するゴミが掻き取られ、
掻き取られたゴミは印刷領域外に寄せられるようになっ
ている。移動部材50の駆動構成としては、プーリや搬
送ベルトを用いる方式や、送りねじ方式を採用すること
ができる。
【0052】図14は、清掃手段の変形例を示すもので
ある。本実施例における清掃手段54は、ブラケット2
6(図示省略)間に支持された軸56と、この軸56に
摺動自在に嵌合されたブロック状の移動部材58と、こ
の移動部材58に固定されたブラシ状のクリーニング部
材60等から構成されている。駆動構成、駆動方式及び
清掃タイミングは清掃手段46と同様である。
【0053】図15は、清掃手段の他の変形例を示すも
のである。本実施例における清掃手段62は、ドクター
ギャップ部Gを挟んで対向する位置をもってブラケット
26(図示省略)間に支持された軸48,48と、この
軸48,48に摺動自在に嵌合されたブロック状の移動
部材50,50と、この移動部材50間にドクターギャ
ップ部Gを貫通して固定された糸状又は帯状のクリーニ
ング部材64等から構成されている。駆動構成、駆動方
式及び清掃タイミングは清掃手段46と同様である。
【0054】図16は、清掃手段のさらに他の変形例を
示すもので、ドクターギャップ部Gの清掃ではなく、ド
クターローラ24の外周面を清掃するための一例であ
る。本実施例における清掃手段66は、ブラケット26
(図示省略)間に軸67を介して回転自在に支持された
二股状のアーム部材68と、このアーム部材68の一方
のアーム68aに固定されドクターローラ24の軸方向
に亘って延びるゴミ回収部材70と、ブラケット26
(図示省略)を介して固定された回収ホッパ72等から
構成されている。
【0055】アーム部材68の他方のアーム68bに
は、スクレーパ40が固定されており、アーム部材68
は、図示しない駆動手段により、ブレード42のエッジ
42bがドクターローラ24の外周面に接する位置と、
ゴミ回収部材70がドクターローラ24の外周面に接す
る位置とに選択的に制御されるようになっている。清掃
がなされる場合には、アーム部材68はゴミ回収部材7
0がドクターローラ24の外周面に接する位置に位置付
けられ、ドクターローラ24は逆向きに回転される。こ
の場合、スクレーパ40はドクターローラ24から離れ
る。ゴミ回収部材70にインキと共に溜まったゴミは流
動状態で滴下し、回収ホッパ72内に貯留される。
【0056】清掃が終わると、アーム部材68は、二点
鎖線で示すように、スクレーパ40のエッジ42bがド
クターローラ24の外周面に接する位置に位置付けら
れ、ドクターローラ24はインキローラ22と同一回転
方向に回転される。この場合、ゴミ回収部材70はドク
ターローラ24の外周面から離れる。ゴミ回収部材70
としては、スポンジやウレタンフォームを採用すること
ができる。
【0057】ゴミは筋状ムラの原因となるため、ゴミを
無くすことは印刷物の品質を向上させる上で非常に重要
であるが、ゴミは外部から版胴2内に入り込むものだけ
でなく、部材の磨耗によるものも存在する。特に、イン
キローラ22と版胴2の内周面との接触部位及びインキ
回収手段8と版胴2の内周面との接触部位では磨耗によ
るゴミの発生が多いと考えられる。これらの磨耗ゴミの
分散を抑えて効率的に捕獲する実施例を、図17に基づ
いて説明する。本実施例におけるインキ回収手段8は、
掻取部材74と、戻し部材76等を有しており、固定方
法及び材質は図1で示したものと同様である。掻取部材
74の先端側下方には、インキローラ22の軸方向に延
びる断面矩形状の挿通部78が形成されており、この挿
通部78には断面形状が同じで寸法が僅かに小さい柱状
ないし棒状の永久磁石80が挿入されている。磨耗によ
ってゴミとしての金属屑が発生しても、これらのゴミは
永久磁石80の磁力によって掻取部材74の磁石対応表
面に吸着され、集められる。
【0058】集められたゴミは磁力によって保持される
ので、戻し部材76の還流作用によってインキローラ2
2の表面に運ばれることはない。この磁力によるゴミ捕
獲作用を十分ならしめるためには、インキローラ22や
掻取部材74等の磨耗部材を全て意図的に強磁性材料で
形成すればよい。磁力によって集められたゴミは、例え
ば点検時等に挿通部78から永久磁石80を引き抜いた
後、除去される。また、版胴2の外部に位置する図示し
ないインキタンクの交換などによって、インキ供給経路
を伝わって外部からゴミが侵入する可能性があるが、イ
ンキタンクの取付口に、ドクターギャップよりも目の細
かい着脱可能なストレーナを設置することによりゴミの
侵入を未然に防止することができる。
【0059】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、印刷に使
用されずに版胴内周面に残ったインキを、インキの再供
給がなされる前に回収する構成としたので、粘度が低下
したインキによる滲み等の放置後の立ち上がりの悪さを
改善することができ、経済的及び時間的無駄を少なくす
ることができる。また、印刷用紙がまだ版胴から完全に
分離しない位置で版胴内周面からインキを掻き取ること
になるため、印刷用紙の分離時に版胴との間に作用する
インキを介しての密着力が低下し、印刷用紙の分離が容
易となる。これと同時に、印刷用紙の分離における版胴
の変形を少なくすることができる。
【0060】請求項2乃至5記載の発明によれば、イン
キ回収手段が版胴の変形を防止するように機能するの
で、版胴の厚みを薄くでき、版胴内に保持されるインキ
量が少なくなることによって放置後の立ち上がりの悪さ
の改善を向上させることができる。
【0061】請求項6記載の発明によれば、版胴の厚み
を極めて薄くしたので、版胴内に保持されるインキ量が
少なくなることによって放置後の立ち上がりの悪さの改
善を向上させることができる。
【0062】請求項7記載の発明によれば、版胴におけ
る開孔のピッチと開孔の径を人間の視覚の空間分解能の
観点から決定する構成としたので、放置後の立ち上がり
の悪さの改善を向上させることができるとともに、開孔
パターンに対応した濃度ムラの問題も同時に解消するこ
とができる。
【0063】請求項8記載の発明によれば、インキロー
ラ上のインキ層表面を鏡面状とすることができるので、
濃度ムラを解消できるとともにインキ供給過多による裏
移りや滲み等の問題を解消することができる。
【0064】請求項9記載の発明によれば、制流板によ
って掻き取られたインキの競り上がりを防止でき、スク
レーパの機能を良好に維持させることができる。
【0065】請求項10記載の発明によれば、インキロ
ーラとドクターローラ間の隙間におけるゴミによる筋状
ムラに起因した濃度ムラを防止でき、印刷物の品質の向
上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る孔版印刷装置の要部概
要正面図である。
【図2】インキ回収手段の斜視図である。
【図3】インキ回収手段によるインキ回収及び還流動作
を示す要部概要正面図である。
【図4】版胴の厚みと滲みとの関係を示す実験データグ
ラフである。
【図5】版胴の開孔パターンを示す図で、(a)は平面
図、(b)は縦断面図である。
【図6】人間の視覚の空間分解能の特性を示すグラフで
ある。
【図7】インキ回収手段の変形例を示す要部概要正面図
である。
【図8】インキ回収手段の変形例を示す要部概要正面図
である。
【図9】インキ回収手段の変形例を示す要部概要正面図
である。
【図10】スクレーパを有する実施例の要部概要正面図
である。
【図11】スクレーパの分解斜視図である。
【図12】図10で示した例におけるインキローラ上の
インキ層厚とドクターギャップとの関係を示すグラフで
ある。
【図13】清掃手段を有する例の要部概要正面図であ
る。
【図14】清掃手段の変形例を示す要部概要正面図であ
る。
【図15】清掃手段の変形例を示す要部概要正面図であ
る。
【図16】清掃手段の変形例を示す要部概要正面図であ
る。
【図17】磁力によってゴミを捕獲する例の要部概要正
面図である。
【図18】従来におけるインキローラへのインキ供給状
態を示す要部概要正面図である。
【符号の説明】
14 多孔性支持板 2 版胴 22 インキ供給部材としてのインキローラ 8 インキ回収手段 30 掻取部材 32 戻し部材 30b 自由端 26 支持部材としてのブラケット 36 回転体としてのローラ 38 回転体としての回転翼 P 開孔のピッチ d 開孔の径 24 ドクターローラ 28 インキ溜まり部 40 スクレーパ 44 制流板 46,54,62,66 清掃手段

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】多数の開孔が形成された円筒状の多孔性支
    持板を備えた版胴と、この版胴の内部に設けられ版胴内
    周面にインキを供給するインキ供給部材とを有する孔版
    印刷装置において、 上記版胴内の、印刷ニップ部から下流側へ僅かに離れた
    位置で且つ上記インキ供給部材の近傍に、上記版胴の内
    周面に残った印刷直後のインキを回収して上記インキ供
    給部材へ戻すインキ回収手段を設けたことを特徴とする
    孔版印刷装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の孔版印刷装置において、 上記インキ回収手段は、上記版胴内周面に接触してイン
    キを掻き取る掻取部材と、この掻取部材によって掻き取
    られたインキを上記インキ供給部材に還流させる戻し部
    材とを有していることを特徴とする孔版印刷装置。
  3. 【請求項3】請求項2記載の孔版印刷装置において、 上記掻取部材はその基端が上記インキ供給部材の支持部
    材に支持されているとともに自由端が上記版胴の内周面
    に接触する状態に設けられ、少なくとも上記自由端側は
    弾性変形可能であり、上記戻し部材は上記掻取部材の自
    由端近傍に一体に設けられていることを特徴とする孔版
    印刷装置。
  4. 【請求項4】請求項3記載の孔版印刷装置において、 上記戻し部材が上記掻取部材の自由端側を折り曲げて形
    成されていることを特徴とする孔版印刷装置。
  5. 【請求項5】請求項2記載の孔版印刷装置において、 上記掻取部材はその基端が上記インキ供給部材の支持部
    材に支持されているとともに自由端が上記版胴の内周面
    に接触する状態に設けられ、少なくとも上記自由端側は
    弾性変形可能であり、上記戻し部材は上記掻取部材の自
    由端近傍に設けられた回転体であることを特徴とする孔
    版印刷装置。
  6. 【請求項6】請求項1,2,3,4又は5記載の孔版印
    刷装置において、 上記多孔性支持板の厚みが約0.13mm以下であるこ
    とを特徴とする孔版印刷装置。
  7. 【請求項7】請求項6記載の孔版印刷装置において、 上記開孔のピッチが、視覚の空間分解能の空間周波数に
    対応付けられ、且つ、距離30cmにおいて人間の視覚
    の最大感度を与える空間周波数を超えて感度がおおよそ
    1/2となる高周波数領域に設定されて決定され、上記
    開孔の径は決定された上記開孔のピッチの50%以下に
    設定されていることを特徴とする孔版印刷装置。
  8. 【請求項8】版胴と、この版胴の内部に設けられ版胴内
    周面にインキを供給するインキローラと、このインキロ
    ーラとの間に楔状のインキ溜まり部を形成するように僅
    かな隙間をおいて設けられ上記インキローラへ供給され
    るインキの層厚を規制するドクターローラとを有する孔
    版印刷装置において、 上記ドクターローラが上記インキローラと同一回転方向
    に回転され、上記インキ溜まり部の上方には、上記ドク
    ターローラの外周面のインキを掻き取ってインキ溜まり
    部に戻すスクレーパが設けられていることを特徴とする
    孔版印刷装置。
  9. 【請求項9】請求項8記載の孔版印刷装置において、 上記スクレーパが、掻き取ったインキの競り上がりを防
    止する制流板を有していることを特徴とする孔版印刷装
    置。
  10. 【請求項10】請求項8又は9記載の孔版印刷装置にお
    いて、 上記インキローラとドクターローラの間の隙間を清掃す
    る清掃手段を有していることを特徴とする孔版印刷装
    置。
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