JP2898113B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、孔版印刷装置に関し、
さらに詳しくは、前記装置の版胴に装着される孔版原紙
の尾端からの印刷インクの漏れ(尻漏れ)防止に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】多孔性の支持円筒体とスクリーン層とか
ら構成されその外周面に孔版原稿が装着される円筒状の
版胴と、この版胴の内周面に印刷インキを提供するイン
キ供給部材部と、上記版胴の外周面を押圧するプレスロ
ーラーとからなり、供給された印刷インキが支持円筒
体、スクリーン層、孔版原稿を通りプレスローラーで押
圧されてにじみ出し、前記プレスローラーと版胴の間に
供給される用紙に印刷がなされる単胴式孔版印刷装置が
知られている。この装置において、供給される印刷イン
キはプレスローラーで押圧されて用紙に転移し順次消費
されているが、孔版原紙の印刷画面を外れた部位、即ち
無穿孔部位では版胴の外周面と孔版原紙の間に余剰イン
キとして蓄積される。この状態で印刷が何枚にもわたっ
て行われると余剰インキの量が次第に増え、プレスロー
ラーの押圧によるスクイズ作用も伴って孔版原紙の尾端
に押しやられ、その尾端よりはみ出し機器内部を汚して
しまう俗にいう尻漏れ現象が生じる。

【０００３】この防止策として一般的にはプレスローラ
ーの押圧を孔版原紙の手前で解除して余剰インキが溜っ
てもはみ出しにくくしたり、同原紙にインキを付着させ
て排版時に一緒に捨てて余剰インキの量を減少させてい
る。この他、特公昭６０−２８６７０号公報や実開昭６
３−１０１５６５号公報などに記載されている版胴の後
端部構造が知られている。

【０００４】この版胴の後端部構造は、特公昭６０−２
８６７０号の方では弾力性を有するインキ不通過性材料
による堰が版胴の一部である支持円筒体とスクリーン層
の間に配設されており、その堰に余剰インキを溜めてプ
レスローラーによる押圧で版胴内側に余剰インキを戻し
ている。一方、実開昭６３−１０１５６５号の方ではイ
ンキ戻し用開口を版胴に設け、同版胴の外側に間隙を持
たせて樋状案内部材が設けられており、この樋状案内部
材で余剰インキを間隙まで案内し、溜め、プレスローラ
ーで樋状案内部を押圧して余剰インクを版胴の内側に戻
している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、余剰インキ
を孔版原紙に付着させるものでは、原紙と一緒にそのイ
ンキを捨ててしまうのでインキが無駄になるばかりか、
その原紙に多量のインキが付着している場合には排版装
置に付着し動作不良を起こすことがある。また、上記各
公報に記載されていものでは、堰や樋状案内部材によっ
て溜められた余剰インキがプレスローラーの押圧により
押し出されているので、余剰インキが少ないときは良い
が、装置内温度上昇により余剰インキの量が多くなる
と、版胴の内側に戻しきれず、孔版原紙とスクリーン層
の間からインキがはみ出してしまうという問題点が生じ
てしまう。

【０００６】

【課題を解決するための手段】そこで、本考案では、多
孔性の支持円筒体とその周りに装着されるスクリーン層
とからなり、外周面に孔版原紙が装着される円筒状の版
胴と、上記版胴の内周面にインキを提供するインキ供給
部と、上記版胴の外周面に対向して配設されたプレスロ
ーラーとから構成される孔版印刷装置において、上記版
胴のインキ通過部の終端内周面に該版胴の内側に向かっ
て突起部を形成した。

【０００７】

【作用】版胴のインキ通過部の終端内周面に形成した突
起部により印刷時のインキ供給部と版胴の内周面との接
触が断たれ、インキ供給部から版胴の内周面への印刷イ
ンキの供給が中断されると共に、上記インキ供給部と版
胴の内周面との間に間隙が形成されるので、この間隙を
通って余剰インキが版胴内周面に戻される。

【０００８】

【実施例】所定の幅を有する円筒状の版胴１は、無数の
孔が穿設されたインク通過部２ａと孔が穿設されていな
いインキ不通過部２ｂとが形成された支持円筒体２と、
その外周面を円周方向において約２／３程覆い一端にレ
ザー部３ａを有するスクリーン層３により構成されてい
て、中心軸の周りを時計周りに電動機により回転駆動さ
れる。

【０００９】スクリーン層３に覆われていない支持円筒
体２の外周面には孔版原紙４を係止する原紙取付部５が
装着されていて、この取付部５に一端縁を係止された孔
版原紙４は印刷インクの粘性により孔版１の外周面に密
着保持されており、インキ通過部２ａはこの孔版原紙４
の後端４ａに対応する位置で終わっている。また、スク
リーン層３はインキ通過部２ａの終了部２ｃから原紙取
付部５までの間の支持円筒体２の外周面にレザー部３ａ
が位置するよう支持円筒体２外周面に取り付けられてい
る。

【００１０】版胴１の内部には、インキローラー６とド
クタローラー７とインキ供給パイプ８とから構成される
インキ供給部が配設されている。インキローラー６は図
示しない支持板に回動自在に支持され、軸線方向寸法が
版胴１のそれよりも幾分小さく、版胴１の内周面よりわ
ずかに離れて配設されており、図示しない駆動部により
版胴１と同一方向に回転駆動される。ドクタローラー７
はインキローラー６の上方にその外周面と一定の間隙を
持って支持されている。ドクタローラー７の上方には開
口部８ａを下方に向けたインキ供給パイプ８が配設され
ており、このインキ供給パイプ８は開口部８ａからイン
キローラー６に印刷インキを供給する。

【００１１】ドクタローラー７はインキ供給パイプ８か
らインキローラー６外周面に供給される印刷インキをイ
ンキローラー６外周面上に溜め、かつ、インキローラー
６との外周面間に形成された隙間に印刷インキを通すこ
とでインキローラー６の外周面に一様な厚さの印刷イン
キの層を形成する。

【００１２】一方、孔版原紙４の後端４ａで、かつ、イ
ンキ通過部２ａの終了端２ｃ付近に当たる版胴１の内周
面には、その内側に向かって金属性の突起部９が形成さ
れている。この突起部９は図２に示すように、版胴１の
進行側の一端９ａに図上右上がりの傾斜がつけられた薄
い台形状で、図３にに示すように版胴１の軸線方向にイ
ンキ通過用の孔２ｄを塞がないように断続的に並設され
ている。そして、この突起部９は印刷時にインキローラ
ー６外周面と接触して円筒状版胴１内周面とインキロー
ラー外周面との間に間隙１０を形成させる。

【００１３】図１に戻り、版胴１の下方には版胴１を挾
んで、版胴１の外周面に対面するプレスローラー１１
が、支軸１２によって揺動可能に設けられている腕部１
３の自由端に回転自在に支持されている。このプレスロ
ーラー１１は印刷時以外、つまり、インキ不通過部２ｂ
がインキローラー６とプレスローラー１１との接触領域
に位置しているときには、図示しない用紙検出部材と係
合しており、版胴１の外周面と離れた位置で保持されて
いるが、印刷時、つまり、版胴１のインキ通過部２ａが
インキローラー６とプレスローラー１１との接触領域に
位置しているときには、プレスローラー１１は用紙検出
部材との係合がとかれインキ通過部２ａに圧接される。

【００１４】上記構造により、印刷指令が出され版胴１
とインキローラー６が回転して図４に示すようにインキ
通過部２ａが版胴１とプレスローラー１１との接触領域
に来ると、図示しない給紙装置によりタイミンをとられ
用紙１３が版胴１とプレスローラー１１との間に搬送さ
れる。プレスローラー１１は待機状態である図示しない
用紙検出部材との係合が解かれてインキ通過部２ａを押
圧し、この押圧により版胴１の内周面がインキローラー
６外周面に圧接されて、版胴１を通過した印刷インクに
より用紙１３に印刷が行われる。この時、印刷に使用さ
れなかった余剰インキは図５に示すようにプレスローラ
ー１１の絞り作用により版胴１の進行方向後側へ押しや
られる。

【００１５】印刷が進んで円筒状版胴１の突起部９がイ
ンキローラー６にかかると、版胴１の内周面がインキロ
ーラー６から離され版胴１の内周面へのインキ供給が中
断される。この時、版胴１の内周面とインキローラー６
間には間隙１３が形成されので、押しやられてきた余剰
インキがインキ通過部２ａを版胴１の外周面から同内周
面向かって逆流し、間隙１０を通って版胴１の内周面に
戻され。

【００１６】版胴１がさらに回転し接触領域にインキ不
通過部２ｂが来るとプレスローラー１１は版胴１に対す
る押圧を止め待機状態となり、最初の用紙１３への印刷
は終了する。そして、新たに給紙されることによりこれ
らの動作は繰り返される。

【００１７】この実施例においては、突起部９に金属性
のものを用いたが、弾性体のもの、例えば樹脂やゴムな
どで形成することも可能であり、形状にしても限定され
るものではなく、図６に示すような薄い円柱部材９'で
も良い。また、突起部９の厚さはインキローラー６と版
胴１の内周面との接触に抵抗が少なく、かつ、間隔１０
を保持する高さが良く、具体的には０.１から０.５ｍｍ
位が適当である。

【００１８】

【発明の効果】本発明によれば、版胴に形成されるイン
キ通過部の後端に位置する該版胴の内周面に突起部を形
成し余剰インキを版胴に戻すので、余剰インキが版胴の
後端に溜ることがなく、原紙と一緒に捨てずに済みイン
キの節約につながる他、漏れたインキの付着による動作
不良を防止することができる。また、従来のインキ漏れ
防止機構よりも簡単な構造でインキの尻漏れを防止する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を用いた孔版印刷装置の概略
構成図である。

【図２】本発明の主要部の拡大斜視図である。

【図３】本発明の主要部の拡大斜視図である。

【図４】孔版印刷装置の動作図である

【図５】余剰インクの流れを示す側面図である。

【図６】本発明の主要部出ある突起部の変形例を示す斜
視図である。

【符号の説明】

１ 版胴 ２ 支持円筒体 ２ａ インキ通過部 ２ｃ 終端 ３ スクリーン部 ４ 孔版原紙 ６ インキローラー ７ ドクタローラー ８ インキ供給パイプ ６,７,８ インキ供給部 ９ 突起部

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】多孔性の支持円筒体とその周りに装着され
   るスクリーン層とからなり、外周面に孔版原紙が装着さ
   れる円筒状の版胴と、上記版胴の内周面にインキを提供
   するインキ供給部と、上記版胴の外周面に対向して配設
   されたプレスローラーとから構成される孔版印刷装置に
   おいて、上記版胴のインキ通過部の終端内周面に該版胴
   の内側に向かって突起部を形成したことを特徴とする孔
   版印刷装置。
2. 【請求項２】上記突起部が上記版胴の軸線方向に上記イ
   ンキ通過部を塞がないように断続的に並設した上記請求
   項１記載の孔版印刷装置。
3. 【請求項３】上記突起部の高さを０.１から０.５ｍｍと
   した上記請求項１または２記載の孔版印刷装置。