JP2000166552A - 固定化酵素の調製方法 - Google Patents

固定化酵素の調製方法

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JP2000166552A JP10350920A JP35092098A JP2000166552A JP 2000166552 A JP2000166552 A JP 2000166552A JP 10350920 A JP10350920 A JP 10350920A JP 35092098 A JP35092098 A JP 35092098A JP 2000166552 A JP2000166552 A JP 2000166552A
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利照 小松
Masao Shimizu
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 活性発現を十分に発し、さらに酵素の脱離や
失活を抑え、油脂の分解時に使用する酵素量を低減する
こと可能な油脂加水分解用の固定化酵素を提供する。 【解決手段】 酵素を多孔性の陰イオン交換樹脂からな
る固定化用担体に吸着固定化した後、油脂を用いて処理
し、油脂加水分解用の固定化酵素とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油脂を加水分解し
て脂肪酸とグリセリンを生成する工程で触媒として用い
られる、酵素活性の損失が少なく、且つ高活性を示す固
定化酵素の調製法である。
【0002】
【従来の技術】油脂を油脂分解酵素を用いて加水分解す
る際に、酵素を効率的に使用するため、無機又は有機の
担体に油脂分解酵素を固定化した固定化酵素が用いられ
ている。担体への酵素の吸着率を高め、また酵素活性を
向上させるため、種々の研究がなされており、例えば特
開平9−257号公報では、特殊な官能基を持つシラン
カップリング剤で処理した無機担体にリパーゼを固定化
し、洗浄、乾燥した後、脂肪酸を含浸させた固定化酵素
担体の製造方法が開示されている。しかし、この方法に
よっても、酵素吸着量、酵素活性は未だ不十分である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上の状況において、
活性発現を十分に発し、さらに酵素の脱離や失活を抑え
た油脂分解用酵素を調製することで、油脂の分解時に使
用する酵素量を低減することが望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するに
は、吸着時により多くの油脂分解用酵素を高い活性発現
を示す様に吸着させ、さらに固定化酵素の周りに反応を
促進させる雰囲気を形成することが望ましい。本発明
は、酵素を多孔性の陰イオン交換樹脂からなる固定化用
担体に吸着固定化した後、油脂を用いて処理する油脂加
水分解用の固定化酵素の調製方法であり、これにより前
記課題を解決したものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明で使用する担体としては多
孔性の陰イオン交換樹脂が良い。樹脂の粒子径は400 〜
1000μmのものが望ましく、細孔径は100 〜1500Åのも
のが望ましい。樹脂の材質としては、フェノールホルム
アルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジ
ビニルベンゼン系等が挙げられる。特にフェノールホル
ムアルデヒド系樹脂(商品名Duolite A-568)が望まし
い。この細孔が酵素吸着に大きな表面積を与え、より大
きな吸着量を得ることができる。本発明では、高活性を
発現するような吸着状態にするため、固定化の前処理と
して、担体を脂溶性脂肪酸若しくは脂溶性脂肪酸誘導体
で処理することが好ましい。使用する脂溶性脂肪酸若し
くは脂溶性脂肪酸誘導体としては炭素数8〜18のものが
望ましい。例えば、該脂肪酸としては、カプリン酸、ラ
ウリン酸、ミリスチン酸等の直鎖飽和脂肪酸、オレイン
酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、リシノール酸等のヒ
ドロキシ脂肪酸、もしくはイソステアリン酸等の分岐脂
肪酸が挙げられる。脂肪酸誘導体としては、炭素数8〜
18の脂肪酸と水酸基を有する化合物とのエステルが挙げ
られ、1価アルコールエステル、多価アルコールエステ
ル、リン脂質、あるいはこれらのエステルに更にエチレ
ンオキサイドを付加した誘導体等が例示される。1価ア
ルコールエステルとしては、メチルエステル、エチルエ
ステル等が、多価アルコールエステルとしては、モノグ
リセライド、ジグリセライド、及びそれらの誘導体、あ
るいはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪
酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これ
らの脂肪酸及びその誘導体はいずれも常温で液状である
ことが工程上望ましい。またこれらは単一で用いても良
いが、組み合わせることで一層の効果が発揮される。こ
れらの脂溶性脂肪酸及びその誘導体と多孔性陰イオン交
換樹脂の接触法としては、水もしくは有機溶剤中にこれ
らをそのまま加えても良いが、分散性を良くするために
溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散・溶解さ
せた後、水に分散させた多孔性陰イオン交換樹脂に加え
ても良い。この時の有機溶剤としてはクロロホルム、ヘ
キサン、エタノール等が挙げられる。脂溶性脂肪酸及び
その誘導体と多孔性陰イオン交換樹脂の比率は、多孔性
陰イオン樹脂1重量部(乾燥重量)に対し、脂溶性脂肪
酸及びその誘導体0.01〜1重量部、特に0.05〜0.5 重量
部であることが好ましい。接触温度は0〜100 ℃、好ま
しくは20〜60℃が良い。接触時間は、5分〜5時間程度
で良い。本処理後濾過して樹脂を回収するが、この時乾
燥しても良い。乾燥温度は室温〜100 ℃が良く、減圧乾
燥を行っても良い。
【0006】本発明で使用する油脂分解酵素は、リゾプ
ス(Rizopus) 属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、ク
ロモバクテリウム(Chromobacterium) 属、ムコール(Muc
or)属、シュードモナス(Pseudomonas) 属、ジオトリケ
ム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium) 属、キ
ャンディダ(Candida) 属等の微生物起源のリパーゼ及び
膵臓リパーゼ等の動物リパーゼが挙げられる。高分解率
を得るためには位置特異性のない(ランダム型)のリパ
ーゼが良く、微生物起源ではシュードモナス(Pseudomon
as) 属、及びキャンディダ(Candida) 属等が良い。
【0007】固定化を行う温度は酵素の失活が起きない
0〜60℃、好ましくは5〜40℃が良いが、酵素の特性に
よって選ぶことができる。また酵素溶液のpHは、酵素
の変性が起きない範囲であれば良く、pH3〜9が望ま
しい。これも温度同様酵素の特性によって決めれば良
い。これらのpHを維持する緩衝液としては、特に限定
しないが、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝
液等がある。
【0008】本発明の固定化方法において、酵素溶液中
の酵素濃度は、固定化効率の点から酵素の溶解度以下で
且つ十分な濃度である事が望ましい。また必要に応じて
は不溶部を遠心分離で除去し、上澄を使用することも出
来る。また固定化担体と酵素の比率は固定化担体1重量
部に対して、酵素0.05〜10重量部、特に0.1 〜5重量部
であることが好ましい。
【0009】本発明で使用する固定化後に固定化酵素を
処理する油脂反応基質としては、菜種油、大豆油、コー
ン油、オリーブ油、牛脂、魚油等であり、特に限定され
るものではないが、実際に加水分解を行う油脂を使用す
るのが望ましい。
【0010】固定化後の反応基質と固定化酵素の接触に
関しては、固定化後に酵素溶液から濾過により固定化酵
素を回収し、余分な水分を切ったのち、乾燥することな
しに反応基質となる油脂に接触させる。このとき固定化
酵素中の水分は、用いる担体の種類によっても異なる
が、20重量%以上、好ましくは40〜60重量%の範囲にあ
る。このときカラム等の充填容器に封入して、ポンプ等
により油脂を循環しても良いし、油脂中に固定化酵素を
分散させても良い。接触させる温度は常温〜60℃が良
く、酵素の特性によって選ぶことができる。さらに接触
する時間は2時間〜24時間程度で良い。この接触が終わ
った所で濾過し、固定化酵素を回収する。この操作によ
り、固定化酵素の反応場が加水分解に適した状態になる
と考えられる。さらにこの処理を行った固定化酵素は、
保存安定性も良い。これは油脂によってリパーゼが安定
化されているためと考えられる。
【0011】
【実施例】実施例1 Duolite A-568 (ダイヤモンドシャムロック社製)10g
をN/10のNaOH溶液100cc 中で1時間撹拌した。濾
過した後100cc のイオン交換水で洗浄し500mMの酢酸緩
衝液(pH7)100cc でpHの平衡化を行った。その後
50mMの酢酸緩衝液(pH7)100cc で2時間ずつ2回p
Hの平衡化を行った。この後、濾過を行い担体を回収し
た後、エタノール50ccでエタノール置換を30分行った。
濾過した後、リシノール酸を10g含むエタノール50ccを
加え30分間、リシノール酸を担体に吸着させた。その
後、濾過し、担体を回収し、50mMの酢酸緩衝液(pH
7)50ccで30分ずつ4回洗浄し、エタノールを除去し、
濾過して担体を回収した。その後、市販のリパーゼ(リ
パーゼOF名糖産業(株)製)10gを50mMの酢酸緩衝液
(pH7)90ccに溶解した酵素液と5時間接触させ、固
定化を行った。濾過し、固定化酵素を回収して、50mMの
酢酸緩衝液(pH7)100cc で洗浄を行い、固定化して
いない酵素や蛋白を洗浄した。その後、実際に分解を行
う大豆油を40g加え12時間撹拌した。以上の操作はいず
れも20℃で行った。その後、濾過して油脂と分離し、固
定化酵素とした。固定化後の酵素液の残存活性と固定化
前の酵素液の活性の差より固定化率を求めたところ、82
%であった。これは従来の方法で行った固定化率に比べ
ると約20%多い。こうして得られた固定化酵素2.8 g
(乾燥状態1g)を50ccのネジ付きの三角フラスコに秤
量した。そこへ大豆油10gと蒸留水6gを添加し、40℃
下、200rpmで浸盪し反応を行った。反応開始30分後、83
%の分解率を得た。そして2時間で分解率97%に達し
た。分解率は酸価(AV)をケン価(SV)で除した値
をパーセント表示している。この分解速度は従来報告さ
れている方法で調製された固定化酵素に比べると最も速
い水準にある。
【0012】実施例2 実施例1で示した方法で反応を終了したのち、固定化酵
素を全量回収し、実施例1に示した仕込み組成で繰り返
し反応を行った。5回の反応を行い、反応開始2時間
で、97.0%、97.2%、96.5%、96.8%、96.5%の分解率
を得た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 将夫 茨城県鹿島郡神栖町東深芝20 花王株式会 社研究所内 (72)発明者 加瀬 実 茨城県鹿島郡神栖町東深芝20 花王株式会 社研究所内 Fターム(参考) 4B033 NA01 NA22 NB03 NB12 NB40 NC04 ND04 4H059 BA26 BA33 BB02 BB03 BB06 BC03 BC13 BC48 CA38 EA17

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酵素を多孔性の陰イオン交換樹脂からな
    る固定化用担体に吸着固定化した後、油脂を用いて処理
    する油脂加水分解用の固定化酵素の調製方法。
  2. 【請求項2】 固定化の前処理として、担体を脂溶性脂
    肪酸若しくは脂溶性脂肪酸誘導体で処理する請求項1記
    載の調製方法。
  3. 【請求項3】 酵素の吸着固定化後に処理する油脂とし
    て油脂反応基質を用いる請求項1又は2記載の調製方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006158389A (ja) * 2004-11-12 2006-06-22 Kao Corp 固定化酵素の製造方法
JP2010515450A (ja) * 2007-01-08 2010-05-13 トランス バイオディーゼル リミテッド 改善及び安定化された活性の固定化界面酵素
JP2019054738A (ja) * 2017-09-20 2019-04-11 花王株式会社 脂肪酸類の製造方法

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