JP2019054738A - 脂肪酸類の製造方法 - Google Patents

脂肪酸類の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019054738A
JP2019054738A JP2017179739A JP2017179739A JP2019054738A JP 2019054738 A JP2019054738 A JP 2019054738A JP 2017179739 A JP2017179739 A JP 2017179739A JP 2017179739 A JP2017179739 A JP 2017179739A JP 2019054738 A JP2019054738 A JP 2019054738A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
immobilized enzyme
water
mass
fats
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017179739A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6990076B2 (ja
Inventor
真平 福原
Shinpei Fukuhara
真平 福原
加瀬 実
Minoru Kase
実 加瀬
亮 菊川
Akira Kikukawa
亮 菊川
勇樹 松井
Yuuki Matsui
勇樹 松井
佑亮 杉浦
Yusuke Sugiura
佑亮 杉浦
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2017179739A priority Critical patent/JP6990076B2/ja
Publication of JP2019054738A publication Critical patent/JP2019054738A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6990076B2 publication Critical patent/JP6990076B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Fats And Perfumes (AREA)

Abstract

【課題】固定化酵素を再使用して間隔を空けて油脂の加水分解反応を行っても、反応休止期間中の酵素の加水分解活性の低下を抑え、脂肪酸類を生産性良く製造できる方法の提供。【解決手段】次の工程(A)及び(B):(A)含水率が10質量%以上である油水混合物を固定化酵素と接触させて油脂を加水分解し、脂肪酸類を得る工程、(B)油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素を油脂と接触させて、当該固定化酵素の水分活性を0.75以下に低下させる工程を含む、脂肪酸類の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、酵素分解法による脂肪酸類の製造方法に関する。
脂肪酸類は、食品の中間原料やその他各種の工業製品の添加剤、中間原料として広く利用されている。かかる脂肪酸類は、一般に、菜種油、大豆油等の植物油や牛脂等の動物油を加水分解することにより製造される。
油脂を加水分解する方法としては、高温高圧分解法と酵素分解法がある(例えば、特許文献1、2)。酵素分解法は、リパーゼ等の油脂加水分解酵素を触媒として用い、油脂に水を加えて比較的低温の条件で反応を行うもので、トランス不飽和脂肪酸を生成しないという利点を有する。
工業的に油脂を酵素分解法で加水分解する場合、酵素を効率的に使用するため、無機又は有機の固定化担体に酵素を固定化した固定化酵素が用いられ、これは繰り返し加水分解反応に使用される。
特開2000−160188号公報 特開2007−99959号公報
しかしながら、固定化酵素を再使用しながら間欠的に、特に長い時間間隔で油脂の加水分解反応を行うと、酵素の加水分解活性が反応休止期間中に低下してしまい脂肪酸類の生産性が悪くなることが判明した。
従って、本発明は、固定化酵素を再使用して間隔を空けて油脂の加水分解反応を行っても、反応休止期間中の酵素の加水分解活性の低下を抑え、脂肪酸類を生産性良く製造できる方法を提供しようとするものである。
本発明者は、反応休止期間中に酵素の加水分解活性が低下してしまう原因について種々検討したところ、加水分解反応後、固定化酵素に水が付着して残っていることに原因があることを見出した。すなわち、油脂の加水分解反応においては加水分解の方へ平衡反応を進行させるために反応系内へ水が多く供給されるので加水分解反応後に固定化酵素に水が多く付着した状態となる。そしてこの状態が長く、また付着した水が多い程、酵素の加水分解活性が低下していたのである。
そこで更に検討したところ、加水分解反応に使用した固定化酵素と油脂を接触させる処理を行い、固定化酵素に付着して残っている水を消費させて固定化酵素の水分活性を所定値以下に低下させれば、反応休止期間中の酵素の加水分解活性の低下が抑えられることを見出した。
すなわち、本発明は、次の工程(A)及び(B):
(A)含水率が10質量%以上である油水混合物を固定化酵素と接触させて油脂を加水分解し、脂肪酸類を得る工程、
(B)油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素を油脂と接触させて、当該固定化酵素の水分活性を0.75以下に低下させる工程
を含む、脂肪酸類の製造方法。
本発明によれば、反応休止期間中の酵素の加水分解活性の低下を抑えられるため、固定化酵素を再使用して間隔を空けて油脂の加水分解反応を行っても脂肪酸類を生産性良く得ることができる。
本発明の脂肪酸類の製造方法は、(A)含水率が10質量%以上である油水混合物を固定化酵素と接触させて油脂を加水分解し、脂肪酸類を得る工程、及び(B)油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素を油脂と接触させて、当該固定化酵素の水分活性を0.75以下に低下させる工程を有する。
本明細書において「脂肪酸類」は、脂肪酸の他、油脂を含んでいてもよい。
「油脂」は、「油」と同義であり、油脂(油)を構成する物質にはトリグリセリド(TAG)のみならずモノグリセリド(MAG)やジグリセリド(DAG)も含まれる。すなわち、油脂(油)は、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドのいずれか1種以上を含むものである。
〔工程(A)〕
本工程は、含水率が10質量%以上である油水混合物を固定化酵素と接触させて油脂を加水分解し、脂肪酸類を得る工程である。本明細書において「油水混合物」は、加水分解の対象となる油脂と水の混合物であるが、分相していても、乳化状態となっていてもよい。
加水分解の対象となる油脂は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよい。例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂;あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油又は分別油等の油脂類を挙げることができる。これらの油脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
加水分解の対象となる油脂を構成する脂肪酸は特に限定されず、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、油脂を構成する脂肪酸のうち60〜100質量%が不飽和脂肪酸であることが好ましく、より好ましくは70〜99質量%、更に75〜97質量%、更に80〜95質量%が不飽和脂肪酸であるのが外観、油脂の工業的生産性の点で好ましい。不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるのが生理効果の点から好ましい。なお、本明細書における脂肪酸量は遊離脂肪酸換算量である。
また、加水分解の対象となる油脂を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は、低温での結晶析出抑制の点で、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下、更に15質量%以下、更に10質量%以下であるのがより好ましい。また、油脂の工業的生産性の点で、0.5質量%以上であることが好ましい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、更に16〜22のものが好ましい。
油脂は、それぞれの原料となる植物、又は動物から搾油後、油分以外の固形分をろ過や遠心分離等により除去するのが好ましい。次いで、水、場合によっては更に酸を添加混合した後、遠心分離等によってガム分を分離することにより脱ガムすることが好ましい。また、油脂は、アルカリを添加混合した後、水洗し脱水することにより脱酸を行うことが好ましい。更に、油脂は、活性白土等の吸着剤と接触させた後、吸着剤をろ過等により分離することにより脱色を行うことが好ましい。更に、脱臭は、不快な臭いや呈味物質を除去し、風味・色相・保存安定性の良好な精製油を得る工程であり、高温・減圧条件下で水蒸気を吹き込みながら有臭成分を除去する水蒸気脱臭を行うことが好ましい。これらの処理は、以上の順序で行うことが好ましいが、順序を変更しても良い。また、この他に、油脂は、ろう分の除去のために、低温で固形分を分離するウインタリングを行っても良い。
水は、蒸留水、イオン交換水、脱気水、水道水、井戸水等いずれのものでもよい。グリセリン等その他の水溶性成分が混合されていても良い。必要に応じて、酵素の安定性が維持できるようにpH3〜9の緩衝液を用いてもよい。
油水混合物の含水率は10質量%以上であるが、工業的な生産性の点から、10〜85質量%、更に15〜75質量%、更に20〜65質量%が好ましい。なお、本発明において、油水混合物中の水は、反応系内へ添加する水の他に、反応系内へ添加する油脂に含まれる水を含める。
油水混合物の含水率をコントロールする方法としては、(1)あらかじめ、反応成分の水分量をカールフィッシャー法等により測定しておき、合計の水分量をコントロールする方法、(2)反応成分を完全に脱水して、後で所定量の水を加える方法等がある。
固定化酵素は、油脂加水分解酵素を担体に固定化した固定化油脂加水分解酵素である。
油脂加水分解酵素としては、リパーゼが好ましい。リパーゼは、特に制限されず、動物由来、植物由来、又は微生物由来のリパーゼを用いることができる。例えば、リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等の起源のリパーゼが挙げられる。
なかでも、加水分解効率の点から、位置・鎖長選択性のない、所謂非選択性リパーゼを用いるのが好ましく、更にキャンディダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)によって生産される非選択性リパーゼを用いるのが好ましい。
固定化担体としては、セライト、ケイソウ土、カオリナイト、シリカゲル、モレキュラーシーブス、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシウム、セラミックス等の無機担体、セラミックスパウダー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、キトサン、イオン交換樹脂、疎水吸着樹脂、キレート樹脂、合成吸着樹脂等の有機高分子等が挙げられる。なかでも、保水力が高い点からイオン交換樹脂が好ましい。また、イオン交換樹脂の中でも、大きな表面積を有することにより酵素の吸着量を高くできるという点から、多孔質であることが好ましい。
固定化担体として用いる樹脂の粒子径は50〜2000μmが好ましく、更に100〜1000μmが好ましい。細孔径は10〜150nmが好ましく、更に10〜100nmが好ましい。材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられ、更にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(例えば、Rohm and Haas社製Duolite A−568)が酵素吸着性向上の点から好ましい。
このとき、用いる油脂加水分解酵素量は、担体質量に対して0.1〜300質量%、更に0.5〜200質量%、更に1〜150質量%が工業的生産性の点から好ましい。固定化の際、酵素を溶液状態にするが、緩衝剤を用いてpH3〜7に調整して用いることが好ましい。固定化時の温度は0〜60℃、更に3〜40℃が好ましい。
固定化酵素の活性を高めるために、油脂加水分解酵素の固定化前に予め脂溶性脂肪酸又はその誘導体を担体に吸着させる処理を施しても良い。処理を施す方法としては、例えば、クロロホルム、ヘキサン、エタノール等の有機溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散、溶解させた後、水に分散させた担体に加える方法が挙げられる。
使用する脂溶性脂肪酸としては、炭素数8〜18の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の、水酸基が置換していても良い脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、リシノール酸等が挙げられる。またその誘導体としては、これらの脂肪酸と一価又は多価アルコールとのエステル、リン脂質、及びこれらのエステルにエチレンオキサイドを付加した誘導体が挙げられる。具体的には、上記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、それらのエチレンオキサイド付加体、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル等が挙げられる。これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体は2種以上を併用しても良い。
油脂加水分解酵素の加水分解活性は、後述する方法により測定した力価が20U/g(乾燥質量)以上、更に100〜10000U/g(乾燥質量)、更に500〜5000U/g(乾燥質量)の範囲であることが好ましい。
固定化酵素の使用量(乾燥質量)は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、油脂に対して、1〜20質量%、更に2〜15質量%使用するのが工業的生産性の点から好ましい。
含水率が10質量%以上である油水混合物と固定化酵素とを接触させる手段としては、浸漬、攪拌、該固定化酵素を充填したカラムにポンプ等で通液すること等が挙げられる。攪拌する場合には、反応槽径によって異なるが、固定化酵素が沈降せず、破砕を抑制し、効率的に加水分解反応を進行させる点から、10〜1000r/minが好ましく、更には20〜700r/min、更には30〜500r/minが好ましい。
本発明において、油脂の加水分解は、回分式、連続式、又は半連続式の加水分解反応装置で行うことができる。油脂と水の加水分解反応装置内への供給は、並流式、向流式どちらでもよい。加水分解反応装置に供給される油脂及び水は、必要により予め脱気又は脱酸素した油脂及び水を用いてもよい。
加水分解の反応温度は、酵素の特性によって決定することができるが、反応速度を向上する点、酵素の失活を抑制する点から、0〜80℃、更に10〜70℃、更に20〜60℃が好ましい。
加水分解反応は、得られる加水分解油中の遊離脂肪酸濃度によって管理し、所定の脂肪酸濃度に到達した時点で終了することができる。本発明において、油脂の加水分解反応は、遊離脂肪酸濃度・収率を高くできる点から、遊離脂肪酸濃度が85質量%以上、更に86〜98質量%、更に91〜97質量%の範囲で行うのが好ましい。
遊離脂肪酸濃度は、油相の酸価及び脂肪酸組成から以下の式で示される。
遊離脂肪酸濃度(質量%)=x×y/56.11/10
(x=油相の酸価[mgKOH/g]、y=脂肪酸組成から求めた平均分子量)
なお、油相の酸価は、日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「酸価(2.3.1−1996)」により測定できる。
加水分解の反応時間は、固定化酵素の使用量や酵素活性を考慮して適宜決定することができるが、工業的生産性の点から、1〜24時間、更に2〜12時間、更に2.5〜6時間、更に3〜4.5時間が好ましい。
加水分解反応は、空気との接触が出来るだけ回避されるように、窒素等の不活性ガス存在下で行うことが好ましい。
加水分解反応後、反応液から油相として脂肪酸類を得るには、固定化酵素と水相を静置分離や遠心分離等で油相と分離すればよい。
油相は脂肪酸類としてこのまま使用しても良く、クロマトグラフィー、分子蒸留、液液分配、結晶分別、脱酸法等の分別手段により遊離脂肪酸画分を分取してもよい。
加水分解反応に使用した固定化酵素は、分離、回収後、再び含水率が10質量%以上である油水混合物に作用させて油脂の加水分解に再利用する。
〔工程(B)〕
本工程は、油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素を油脂と接触させて、当該固定化酵素の水分活性を0.75以下に低下させる工程である。
油脂の加水分解反応後、濾過や不活性ガスブローによって油水を分離し、回収した固定化酵素の水分量は、通常、15質量%以上であり、また、水分活性は、通常、0.9以上である。
このように油脂の加水分解反応後の固定化酵素は水が多く付着した状態にあるところ、当該固定化酵素を油脂と接触させることにより、油脂の加水分解に当該固定化酵素に付着して残っている水を消費させて固定化酵素の水分活性を0.75以下に低下させることができる。そのため、反応休止期間中の酵素の加水分解活性の低下が抑えられる。
油脂と接触させた後の固定化酵素の水分活性は0.75以下であるが、酵素の加水分解活性の低下抑制の点から、0.1〜0.75、更に0.2〜0.65、更に0.3〜0.6が好ましい。固定化酵素の水分活性は、後述の〔分析方法〕(iii)に記載した方法に従って求めた値をいう。
本工程において、油脂は、特に限定されず、前述の植物性油脂、動物性油脂等のいずれでもよい。
油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素に接触させる油脂の使用量は当該固定化酵素の水分活性を0.75以下に低下させることができればよい。水分活性低減効率の点、工業的生産性の点から、油脂の使用量は、反応系内の初期水分量に対して1000質量%以上、更に1250〜5000質量%、更に1500〜4000質量%、更に1750〜3000質量%であるのが好ましい。ここで、反応系内の初期水分は、工程(B)前、油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素に付着して残っている水の他に、反応系内へ添加する油脂に含まれる水を含める。また、油脂の加水分解を固定化酵素を充填した酵素塔(反応塔)と油脂及び水を酵素塔へ供給する基質供給塔を備えた加水分解反応装置にて行う場合は、加水分解反応後、基質供給塔内や基質供給塔と酵素塔の間の供給路にも水が残っているため、反応系内の初期水分は、工程(B)前に当該加水分解反応装置内に残っている水も含む。あらかじめ、工程(B)前に、油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素の残存水分量等の反応系内の残存水分量を見積もり、それに応じた油脂を供給して当該固定化酵素に接触させることで、当該固定化酵素の水分活性を0.75以下に低下させることができる。
油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素と油脂とを接触させる手段としては、前述と同じ手段、例えば、浸漬、攪拌、該固定化酵素を充填したカラムにポンプ等で通液すること等が挙げられる。
当該固定化酵素と油脂との接触温度は、反応系内の残存水分が消費されて固定化酵素の水分活性が低下し、また、酵素の失活が起こらず、酵素特性に合わせればよく、前述の油脂の加水分解反応温度の範囲が好ましい。
当該固定化酵素と油脂との接触は、得られる部分分解油中の遊離脂肪酸濃度が平衡状態に到達した時点で終了することができる。例えば、遊離脂肪酸濃度が70質量%以下、更に5〜60質量%、更に10〜50質量%、更に15〜40質量%の範囲で終了する。得られる部分分解油は、以降の加水分解反応原料として利用することができる。
加水分解反応後、固定化酵素に水が多く付着した状態が長く続く程、酵素の加水分解活性が低下し易いことから、油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素と油脂との接触は、加水分解反応終了から好ましくは120時間以内に行うことが好ましい。
本発明では、油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素と油脂とを接触させる前に、あらかじめ固定化酵素に対して窒素等の不活性ガスを供給する不活性ガスブローを行い、できるだけ固定化酵素における水の付着量を減らすのが好ましい。
工程(B)を行った後の固定化酵素は、以降の加水分解反応に再使用できる。
本発明では、加水分解反応終了から、間隔を空けて、例えば24時間以上後、更に72時間以上後、更に120時間以上後に、固定化酵素を再使用して油脂の加水分解反応を開始する場合に、本発明の効果がより有効に発揮される。
固定化酵素を再使用して油脂の加水分解反応を開始する際の固定化酵素の残存活性率は、脂肪酸類の生産性の点から高いのが好ましく、80%以上がより好ましく、更に85〜99%、更に90〜98%が好ましい。固定化酵素の残存活性率は、後述の〔分析方法〕(vi)に記載した方法に従って求めた値をいう。
固定化酵素を再使用する回数は、酵素活性によって相違するものの、酵素を効率的に使用する点から、1回以上、更に2回以上、更に5回以上、更に10回以上であるのが好ましい。
〔分析方法〕
(i)酸価(AV)の測定
日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「酸価(2.3.1−1996)」に従って測定した。
(ii)遊離脂肪酸濃度の算出
以下の式(1)で、油脂を加水分解して得られる脂肪酸の遊離脂肪酸濃度を求めた。アマニ油の脂肪酸平均分子量は280とした。
遊離脂肪酸濃度[質量%]=加水分解油の酸価(AV)/アマニ油の脂肪酸平均分子量/56.11/10・・・・(1)
(iii)水分活性の測定
固定化酵素の水分活性は水分活性精密測定装置LabMaster−awを用いて測定した。
(iv)固定化酵素の乾燥質量比率の測定
油分及び水分の付着した固定化酵素a質量部に対し10質量倍のヘキサン及びアセトンで交互に各3回ずつ洗浄後、70℃で15時間放置することにより脱溶剤し、固定化酵素のみの質量を秤量した(b質量部)。以下の式(2)で、固定化酵素の乾燥質量比率を求めた。
固定化酵素の乾燥質量比率=b/a×100[質量%]・・・・(2)
(a:油分及び水分の付着した固定化酵素質量、b:固定化酵素質量)
(v)加水分解活性(発現活性)の測定
100mLの三つ口フラスコに固定化酵素5g及び菜種油50gを加え、三日月羽根(幅50mm×高さ20mm)で430r/minで撹拌しながら、ウォーターバスにて40℃に加温した。これに蒸留水30gを加え反応を開始した。継時でサンプリングを行い、遠心分離(3000r/min、1分)により油水分離した後、油相の酸価の測定を行った。酸価が175mgKOH/gに到達する時間を求め、以下の式(3)から加水分解活性を求めた。
加水分解活性[U/g(乾燥質量)]
=(酸価175到達時間[hr]/523.12)^(−1/1.0919)
×菜種油[g]/(固定化酵素[g]×乾燥質量比[-])・・・・(3)
(vi)残存活性率の算出
以下の式(4)で、固定化酵素の残存活性率を求めた。
残存活性率[%]=保存後の加水分解活性[U/g(乾燥質量)]/工程(B)後の加水分解活性[U/g(乾燥質量)]×100・・・・(4)
〔固定化酵素の調製〕
アニオン交換樹脂Duolite A−568(Rohm and Haas社製、粒径分布150〜850μmの粒子が96質量%)を粉砕して分級し、粒度150〜425μmの粒子が97質量%である樹脂1質量部をN/10のNaOH溶液10質量部中で1時間攪拌した。ろ過した後10質量部のイオン交換水で洗浄し、500mMのリン酸緩衝液(pH7)10質量部でpHの平衡化を行った。ろ過後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)10質量部で2時間ずつ2回pHの平衡化を行った。この後ろ過を行い、担体を回収した後エタノール4質量部でエタノール置換を30分行った。ろ過した後、菜種脂肪酸を0.58質量部含むエタノール4.22質量部を加え30分間、大豆脂肪酸を担体に吸着させた。ろ過によって担体を回収した後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)5質量部で30分ずつ4回洗浄し、ろ過して担体を回収した。
次いで、市販のCandida cylindracea属由来のリパーゼAY「アマノ」400SD−K(天野エンザイム製)0.029質量部を50mMのリン酸緩衝液(pH7)18質量部に溶解した酵素液と2時間接触させ、固定化を行った。ろ過し、固定化酵素を回収して50mMのリン酸緩衝液(pH7)5質量部で洗浄を行うことにより、固定化していない酵素やタンパクを除去した。以上の操作はいずれも20℃で行った。その後菜種油を4質量部加え40℃で2時間攪拌した。ろ過後、菜種油を4質量部加え40℃で減圧しながら撹拌し、真空度が750Pa-absに到達したところで常圧に戻し、その後ろ過して油脂と分離し、固定化酵素とした。
固定化酵素の加水分解活性は3621U/g(乾燥質量)であった。
〔工程(A)〕
固定化酵素を乾燥重量で87.8g計量し、5L容の四つ口フラスコに仕込んだ。そこへアマニ油を2000gと蒸留水を1200g添加した。当該油水混合物の含水率は37.5質量%であった。窒素気流下で攪拌しながら40℃で加水分解反応を行った。遊離脂肪酸濃度が93質量%に到達したところで遠心分離により油水分離し、油相として脂肪酸類を得、また、ろ過して固定化酵素を回収した。
回収した固定化酵素の水分量は16.5質量%、水分活性0.94、加水分解活性は3585U/g(乾燥質量)であった。
〔比較例1〕
工程(A)で回収した固定化酵素を50℃、136時間保存した後、加水分解活性を測定した。加水分解活性は2549U/g(乾燥質量)、残存活性率は71.1%となった。
〔実施例1〕
〔工程(B)〕
500mL容の四つ口フラスコに、工程(A)で回収した固定化酵素を乾燥重量で20g計量し、アマニ油279gを添加した。アマニ油の使用量は、反応系内の初期水分量の2892質量%であった。40℃で撹拌し、固定化酵素とアマニ油を遊離脂肪酸濃度が平衡になるまで接触させた後、ろ過し、固定化酵素を回収した。
回収した固定化酵素は水分活性0.46、加水分解活性は3641U/g(乾燥質量)であった。
工程(B)で回収した固定化酵素を50℃、136時間保存した後、加水分解活性を測定した。加水分解活性は3383U/g(乾燥質量)、残存活性率は92.9%となった。
〔実施例2〕
〔工程(B)〕
500mL容の四つ口フラスコに、工程(A)で回収した固定化酵素を乾燥重量で20g計量し、アマニ油172gを添加した。アマニ油の使用量は、反応系内の初期水分量の1786質量%であった。40℃で撹拌し、固定化酵素とアマニ油を遊離脂肪酸濃度が平衡になるまで接触させた後、ろ過し、固定化酵素を回収した。回収した固定化酵素は水分活性0.62、加水分解活性は3550U/g(乾燥質量)であった。
工程(B)で回収した固定化酵素を50℃、136時間保存した後、加水分解活性を測定した。加水分解活性は3096U/g(乾燥質量)、残存活性率は87.2%となった。
〔実施例3〕
〔工程(B)〕
500mL容の四つ口フラスコに、工程(A)で回収した固定化酵素を乾燥重量で20g計量し、アマニ油118gを添加した。アマニ油の使用量は、反応系内の初期水分量の1225質量%であった。40℃で撹拌し、固定化酵素とアマニ油を遊離脂肪酸濃度が平衡になるまで接触させた後、ろ過し、固定化酵素を回収した。回収した固定化酵素は水分活性0.71、加水分解活性は3564U/g(乾燥質量)であった。
工程(B)で回収した固定化酵素を50℃、136時間保存した後、加水分解活性を測定した。加水分解活性は2984U/g(乾燥質量)、残存活性率は83.7%となった。
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
Figure 2019054738
表1より明らかなように、反応休止期間中に酵素の加水分解活性が低下するところ(比較例1)、実施例1〜3のように使用後の固定化酵素と油脂とを接触させて固定化酵素の水分活性を所定値以下に低下させることにより、酵素の加水分解活性の低下を抑えられた。これにより、固定化酵素を再使用する油脂の加水分解反応において、次の反応まで間隔が空いても脂肪酸類を生産性よく得られる。

Claims (4)

  1. 次の工程(A)及び(B):
    (A)含水率が10質量%以上である油水混合物を固定化酵素と接触させて油脂を加水分解し、脂肪酸類を得る工程、
    (B)油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素を油脂と接触させて、当該固定化酵素の水分活性を0.75以下に低下させる工程
    を含む、脂肪酸類の製造方法。
  2. 工程(B)で用いる油脂の使用量が反応系内の初期水分量に対して1000質量%以上である請求項1記載の脂肪酸類の製造方法。
  3. 工程(B)の前に、油脂の加水分解反応に使用した固定化酵素に対して不活性ガスブローを行う工程を更に含む請求項1又は2記載の脂肪酸類の製造方法。
  4. 工程(B)において、油脂の加水分解反応終了から120時間以内に固定化酵素に対して油脂を接触させる請求項1〜3のいずれか1項記載の脂肪酸類の製造方法。
JP2017179739A 2017-09-20 2017-09-20 脂肪酸類の製造方法 Active JP6990076B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017179739A JP6990076B2 (ja) 2017-09-20 2017-09-20 脂肪酸類の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017179739A JP6990076B2 (ja) 2017-09-20 2017-09-20 脂肪酸類の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019054738A true JP2019054738A (ja) 2019-04-11
JP6990076B2 JP6990076B2 (ja) 2022-02-03

Family

ID=66105829

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017179739A Active JP6990076B2 (ja) 2017-09-20 2017-09-20 脂肪酸類の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6990076B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021167338A3 (ko) * 2020-02-21 2021-10-14 에스케이에코프라임 주식회사 저점도 다이머산의 제조 방법

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0984590A (ja) * 1995-09-21 1997-03-31 Itouen:Kk α−リノレン酸の製造法
JP2000160188A (ja) * 1998-11-26 2000-06-13 Kao Corp 油脂の加水分解方法
JP2000166552A (ja) * 1998-12-10 2000-06-20 Kao Corp 固定化酵素の調製方法
JP2004041188A (ja) * 2002-05-23 2004-02-12 Kao Corp ドコサヘキサエン酸高含有油脂の製法
JP2004081200A (ja) * 2002-07-02 2004-03-18 Kao Corp 固定化酵素の製造方法
WO2007132775A1 (ja) * 2006-05-11 2007-11-22 The Nisshin Oillio Group, Ltd. リパーゼ活性の回復方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0984590A (ja) * 1995-09-21 1997-03-31 Itouen:Kk α−リノレン酸の製造法
JP2000160188A (ja) * 1998-11-26 2000-06-13 Kao Corp 油脂の加水分解方法
JP2000166552A (ja) * 1998-12-10 2000-06-20 Kao Corp 固定化酵素の調製方法
JP2004041188A (ja) * 2002-05-23 2004-02-12 Kao Corp ドコサヘキサエン酸高含有油脂の製法
JP2004081200A (ja) * 2002-07-02 2004-03-18 Kao Corp 固定化酵素の製造方法
WO2007132775A1 (ja) * 2006-05-11 2007-11-22 The Nisshin Oillio Group, Ltd. リパーゼ活性の回復方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021167338A3 (ko) * 2020-02-21 2021-10-14 에스케이에코프라임 주식회사 저점도 다이머산의 제조 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP6990076B2 (ja) 2022-02-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5101206B2 (ja) ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法
JP2010090383A (ja) ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法
US8415124B2 (en) Method for producing an immobilized enzyme for hydrolyzing fats and oils
JP4694939B2 (ja) 脂肪酸類の製造方法
JP5242230B2 (ja) 固定化酵素の製造方法
JP6715586B2 (ja) 高度不飽和脂肪酸の製造方法
JP6990076B2 (ja) 脂肪酸類の製造方法
JP6645804B2 (ja) 構造油脂の製造方法
US8323934B2 (en) Process for producing fatty acids
JP7365202B2 (ja) ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法
JP4694938B2 (ja) 脂肪酸類の製造方法
JP4849967B2 (ja) 脂肪酸類の製造方法
JP6990019B2 (ja) 脂肪酸類の製造方法
JP2012034622A (ja) ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法
JP3893107B2 (ja) 脂肪酸の製造方法
JP4012117B2 (ja) 固定化酵素の製造方法
JP6859212B2 (ja) ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法
JP5527983B2 (ja) ドコサヘキサエン酸高含有油脂の製造方法
JP2019094445A (ja) アマニ油の製造方法
JP2008253196A (ja) 脂肪酸類の製造方法
JP4616755B2 (ja) 固定化酵素の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200612

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210209

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20210407

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210604

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211130

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211203

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6990076

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151