JP2000128527A - 水酸化物の混合組成物及び複合酸化物粉末の製造方法 - Google Patents

水酸化物の混合組成物及び複合酸化物粉末の製造方法

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JP2000128527A JP10301891A JP30189198A JP2000128527A JP 2000128527 A JP2000128527 A JP 2000128527A JP 10301891 A JP10301891 A JP 10301891A JP 30189198 A JP30189198 A JP 30189198A JP 2000128527 A JP2000128527 A JP 2000128527A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的低い温度(1100℃以下)での加熱処理に
より、比表面積が大きく、かつ複合酸化物への転化率が
高い「水酸化物の混合組成物」の提供及びそれを使用し
た「複合酸化物粉末の製造方法」を提供すること。 【解決手段】 平均粒径17μmの水酸化アルミニウム粉
末と平均粒径19μmの水酸化マグネシウム粉末とをAl
対Mg比が2対1になるように混合し、この混合粉末10
0gを2リットルの水に入れ、プロペラ攪拌器で5分間
攪拌して分散させ、ダイノーミルを用い、攪拌翼回転数
4200rpmで20時間粉砕を行い、水酸化アルミニウムの大
部分と水酸化マグネシウムの大部分とを複合水酸化物の
結晶形態に転化させた(図1は、得られた混合組成物の
X線回折図を示す)。その後、150℃で10時間乾燥して
水分を除去し、複合酸化物粉末を得た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、「水酸化物の混合
組成物」及びそれを使用した「複合酸化物粉末の製造方
法」に関し、特に、複合酸化物粉末を製造するのに好適
な「水酸化物の混合組成物」及びそれを使用した「複合
酸化物粉末の製造方法」に関する。
【0002】
【従来の技術】複合酸化物を製造するための水酸化物の
混合物としては、スピネル粉末を製造するためのマグネ
シウムの水酸化物とアルミニウムの水酸化物とからなる
水酸化物の混合物、マンガン酸リチウム粉末を製造する
ためのリチウムの水酸化物とマンガンの水酸化物とから
なる水酸化物の混合物などが知られている。
【0003】以下においては、上記従来公知の水酸化物
の混合物及びそれを使用した複合酸化物粉末の製造方法
のうち、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムの混
合物及びそれを使用したスピネル粉末の製造方法を例と
して挙げて説明することとする。
【0004】従来、スピネルの製造技術としては、 (1) 平均粒径が0.6〜1.5μmのAl(OH)3粒子と凝集粒径
が20μm以下のMg(OH)2粉末との混合物を出発原料と
し、その混合物を1100〜1500℃で仮焼することで両者を
反応させ、スピネルを合成するという方法。 (2) 水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムの平
均粒径が15μm以上の混合物を出発原料とし、その混合
物を1700℃以上の温度で焼成してスピネルクリンカーを
合成するという方法。 などが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術(1)で
は、Mg(OH)2粉末とAl(OH)3粉末の粒子径が大きく、混合
状態が悪いため、スピネルを合成するためには1100℃以
上の高温が必要となっている。(しかし、一般に、1300
℃より低い温度では、未反応物が多く残留するため、実
質的には1300℃以上の焼成温度が必要である。) このような高温焼成では、生成したスピネルの比表面積
が小さくなりすぎてしまうという問題点を有している。
【0006】また、生成するスピネルの粒子径を大きく
しないように焼成温度を低くすると、Mg(OH)2粉末とAl
(OH)3粉末との反応が不十分となるため、多量のAl2O3
よび/またはMgOがスピネルと共存した状態になってし
まうという問題がある。(この熱処理の過程でMg(OH)2
とAl(OH)3との複合水酸化物が生成すれば、Al2O3または
MgOの混在を減らすことができるが、両者は反応する前
にそれぞれAl2O3またはMgOに転化してしまうので、複合
水酸化物は得られない。)
【0007】前記従来技術(2)では、多孔質なスピネル
クリンカーを得るため、従来技術(1)より更に大きな粒
子径の原料粉末を用いている。このため、スピネルを生
成させるためには1700℃以上の焼成温度が必要とされ
る。これでは、得られたスピネルの比表面積は極めて小
さく、貴金属担持触媒用の触媒担体などには用いること
が出来ないという問題がある。
【0008】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたも
のであって、その目的とするところは、比表面積が大き
い複合酸化物を得ることができ、かつ、比較的低い温度
(1100℃以下)での加熱処理により複合酸化物への転化率
が高い「水酸化物の混合組成物」の提供及びそれを使用
した「複合酸化物粉末の製造方法」を提供することであ
る。
【0009】本発明者らは、比表面積が大きい複合酸化
物を製造する技術について鋭意研究を重ねた結果、水酸
化物の混合物に特定の粉砕手段を適用することによって
複合水酸化物を含む“水酸化物の混合組成物”を得、そ
れを原料として複合酸化物粉末を製造した場合に上記の
目的を達成できることを見いだし、本発明を完成したも
のである。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明に係る“水
酸化物の混合組成物”は、「複合酸化物粉末製造用の
“水酸化物の混合組成物”として、2種類以上の水酸化
物を機械的に混合・粉砕して複合水酸化物に転化させて
得られた、80重量%以上の粒子の粒子径が500nm以下
の水酸化物と複合水酸化物とを含むことを特徴とする
“水酸化物 の混合組成物”。」(請求項1)を要旨(発
明を特定する事項)とし、特に、 ・前記混合・粉砕後の80重量%以上の粒子の粒子径が10
0nm以下であること(請求項2)、 ・前記2種類以上の水酸化物が、水酸化マグネシウムと
水酸化アルミニウム、または、水酸化リチウムと水酸化
マンガン、からなること(請求項3)、 ・前記機械的に混合・粉砕する手段として、媒体攪拌型
ミルを用いること(請求項4)、 ・80重量%以上の粒子の粒子径が500nm以下のマグネ
シウムの水酸化物および/または80重量%以上の粒子の
粒子径が500nm以下のアルミニウムの水酸化物 と、マ
グネシウムとアルミニウムとの複合水酸化物と、を含む
こと(請求項5)、 ・前記マグネシウムとアルミニウムとの複合水酸化物の
80重量%以上の粒子の粒子径が 500nm以下であること
(請求項6)、 ・前記マグネシウムとアルミニウムとの複合水酸化物
が、含水塩であること(請求項7)、 ・前記マグネシウムとアルミニウムとの複合水酸化物の
Mg/Al比が、1/2, 2/1または3/1である
こと(請求項8)、 ・前記マグネシウムとアルミニウムとの複合水酸化物
が、 「MgA12(OH)8,Mg4Al2(OH)14・3H2O,Mg2Al(OH)10・XH2
O」 の1〜3種を含んでいること(請求項9)、を特徴とする
ものである。
【0011】また、本発明に係る“複合酸化物粉末の製
造方法”は、「2種類以上の水酸化物の混合物を機械的
に混合・粉砕して複合水酸化物に転化させ、得られた水
酸化物と複合水酸化物とを含む水酸化物の混合組成物
を、さらに加熱処理して複合酸化物に転化させることを
特徴とする複合酸化物粉末の製造方法。」(請求項10)
を要旨(発明を特定する事項)とし、 ・前記機械的に混合・粉砕する手段として、媒体攪拌型
ミルを用いること(請求項11)、 ・前記2種類以上の水酸化物が、水酸化マグネシウムと
水酸化アルミニウム、または、水酸化リチウムと水酸化
マンガン、からなること(請求項12)、を特徴とするも
のである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係る“水酸化物の混合組
成物”は、2種類以上の水酸化物の混合物を機械的に混
合・粉砕して複合水酸化物に転化させることによって得
られるものであることを特徴とする。また、本発明に係
る複合酸化物粉末の製造方法は、2種類以上の水酸化物
の混合物を機械的に混合・粉砕して複合水酸化物に転化
させることによって得られる“水酸化物の混合組成物”
を使用することを特徴とするものである。
【0013】本発明に係る“水酸化物の混合組成物”
は、 ・マグネシウムの水酸化物および/またはアルミニウム
の水酸化物と、マグネシウムとアルミニウムとの複合水
酸化物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・リチウムの水酸化物および/またはマンガンの水酸化
物と、リチウムとマンガンとの複合水酸化物と、からな
る水酸化物の混合組成物、 ・ジルコニウムの水酸化物および/またはチタニウムの
水酸化物および/または鉛の水酸化物と、ジルコニウム
とチタニウムと鉛との複合水酸化物と、からなる水酸化
物の混合組成物、 ・セリウムの水酸化物および/またはジルコニウムの水
酸化物と、セリウムとジルコニウムとの複合水酸化物
と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・セリウムの水酸化物および/またはジルコニウムの水
酸化物および/またはセリウム以外の希土類元素の少な
くとも1つと、セリウムとジルコニウムとセリウム以外
の希土類元素の少なくとも1つとの複合水酸化物と、か
らなる水酸化物の混合組成物、 ・セリウムの水酸化物および/またはジルコニウムの水
酸化物および/またはアルカリ土類元素の少なくとも1
つと、セリウムとジルコニウムとアルカリ土類元素の少
なくとも1つとの複合水酸化物と、からなる水酸化物の
混合組成物、 ・水酸化アルミニウムおよび/または水酸化ランタン
と、水酸化アルミニウムと水酸化ランタンとの複合水酸
化物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・リチウムの水酸化物および/またはニッケルの水酸化
物と、リチウムとニッケルとの複合水酸化物と、からな
る水酸化物の混合組成物、 ・バリウムの水酸化物および/またはチタニウムの水酸
化物と、バリウムとチタニウムとの複合水酸化物と、か
らなる水酸化物の混合組成物、 ・ストロンチウムの水酸化物および/またはチタニウム
の水酸化物と、ストロンチウムとチタニウムとの複合水
酸化物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・バリウムの水酸化物および/またはストロンチウムの
水酸化物および/またはチタニウムの水酸化物と、バリ
ウムとストロンチウムとチタニウムとの複合水酸化物
と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・バリウムの水酸化物および/またはチタニウムの水酸
化物および/またはすずの水酸化物と、バリウムとチタ
ニウムとすずとの複合水酸化物と、からなる水酸化物の
混合組成物、 ・ストロンチウムの水酸化物および/またはカルシウム
の水酸化物および/またはチタニウムの水酸化物と、ス
トロンチウムとカルシウムとチタニウムとの複合水酸化
物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・鉛の水酸化物および/またはランタンの水酸化物およ
び/またはジルコニウムの水酸化物および/またはチタ
ニウムの水酸化物と、鉛とランタンとジルコニウムとチ
タニウムとの複合水酸化物と、からなる水酸化物の混合
組成物、 ・リチウムの水酸化物および/またはニオブの水酸化物
と、リチウムとニオブの複合水酸化物と、からなる水酸
化物の混合組成物、 ・鉛の水酸化物および/またはビスマスの水酸化物およ
び/またはニオブの水酸化物と、鉛とビスマスとニオブ
との複合水酸化物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・ビスマスの水酸化物および/またはニオブと、ビスマ
スとニオブとの複合水酸化物と、からなる水酸化物の混
合組成物、 ・鉛の水酸化物および/またはニオブの水酸化物と、鉛
とニオブとの複合水酸化物と、からなる水酸化物の混合
組成物、 ・すずの水酸化物および/または亜鉛の水酸化物と、す
ずと亜鉛との複合水酸化物と、からなる水酸化物の混合
組成物、 ・亜鉛の水酸化物および/またはチタニウムの水酸化物
と、亜鉛とチタニウムとの複合水酸化物と、からなる水
酸化物の混合組成物、 ・チタニウムの水酸化物および/またはジルコニウムの
水酸化物と、チタニウムとジルコニウムとの複合水酸化
物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・チタニウムの水酸化物および/またはアルミニウムの
水酸化物と、チタニウムとアルミニウムとの複合水酸化
物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・ジルコニウムの水酸化物および/またはアルミニウム
の水酸化物と、ジルコニウムとアルミニウムとの複合水
酸化物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・鉄の水酸化物および/または亜鉛の水酸化物と、鉄と
亜鉛との複合水酸化物と、からなる水酸化物の混合組成
物、 ・チタニウムの水酸化物および/またはタングステンの
水酸化物と、チタニウムとタングステンとの複合水酸化
物と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・チタニウムの水酸化物および/またはモリブデンの水
酸化物と、チタニウムとモリブデンとの複合水酸化物
と、からなる水酸化物の混合組成物、 ・チタニウムの水酸化物および/または鉄の水酸化物
と、チタニウムと鉄との複合水酸化物と、からなる水酸
化物の混合組成物、 ・チタニウムの水酸化物および/またはニッケルの水酸
化物と、チタニウムとニッケルとの複合水酸化物と、か
らなる水酸化物の混合組成物、などのように、「2種以
上の金属の複合水酸化物と、該2種以上の金属の内の少
なくとも1種以上の金属の水酸化物と、からなる“水酸
化物の混合組成物”」である。
【0014】本発明に係る“水酸化物の混合組成物”
は、2種以上の金属の水酸化物を混合し、混合物を機械
的に粉砕処理し、混合物に機械的に十分なエネルギーを
与えて複合水酸化物に転化せしめることにより得ること
ができる。例えば、2種以上の金属の水酸化物を水等の
液体中に均一に分散混合し、得られた混合物をボール、
ローラ、ロータ等がぶつかり合いまたは擦れあうタイプ
の粉砕装置を用いて、粉砕媒体にかかる加速度が、重力
加速度の1.5倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましく
は20倍以上、さらに好ましくは200倍以上の粉砕条件で
粉砕を行うことにより、2種以上の金属の水酸化物を反
応させ、複合水酸化物に転化させることによって得るこ
とができる。
【0015】粉砕に用いる装置としては、媒体攪拌型ミ
ルが適しているが、特にこれに限定されるものではな
い。複合水酸化物に転化させるのに十分な粉砕効率を持
っている装置ならば任意に使用することができる。媒体
撹拌型ミル以外にも、例えば、振動ボールミルや遊星ボ
ールミルのように粉砕容器の外部から強いエネルギーを
与え、容器内のボールを攪拌するタイプの装置や、粉砕
容器が内筒と外筒から構成され、それらが逆方向に回転
することによって内部のボールを攪拌するタイプの装置
でも十分なエネルギーと時間を与えることによって、2
種以上の金属の水酸化物粉末を反応させて複合水酸化物
に転化させることができる。また、ボールを入れたポッ
トを回転させるタイプの通常のボールミルでは、水酸化
物粉末が所定の寸法以下になるように十分に長い時間粉
砕を行う必要がある。好ましくは、25時間以上、より好
ましくは、100時間以上の粉砕を行なう。
【0016】上述の粉砕装置を用いた粉砕の過程では、
水酸化物粒子が微細になるだけではなく、粉砕媒体の衝
撃によって水酸化物粒子の表面粗さの増加や結晶構造に
歪みが与えられ、より反応性が高まること、そして、両
者が十分に混ざり合うことの作用が生じる。
【0017】一方、粉砕媒体の材料が混入することは避
けられないため、粉砕媒体の材質としては、“水酸化物
の混合組成物”の組成,該混合組成物を用いて得られる
“複合酸化物”の用途などを考慮して選ぶ必要がある。
【0018】上記のようにして得られた“水酸化物の混
合組成物”は、2種以上の金属の複合水酸化物と未反応
の1種以上の金属の水酸化物とを均一に混合された状態
で含んでいる。そして、未反応の1種以上の金属の水酸
化物は、80重量%以上の粒子の粒径が500nm以下、好
ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下とな
って2種以上の金属の複合水酸化物と混合された状態に
なっている。2種以上の金属の水酸化物を出来るだけ均
一に混合し、得られた混合物に機械的エネルギーを十分
に与えることにより、未反応の金属の水酸化物の量を少
なくすることができる。
【0019】次いで、上記のようにして得た“水酸化物
の混合組成物”を加熱処理(1100℃以下の加熱処理)する
ことにより、均一な“複合酸化物”、即ち未反応水酸化
物からの酸化物が偏析していることが少ない“複合酸化
物”を得ることができ、また、比表面積の大きな複合酸
化物を得ることができる。
【0020】以下に、2種以上の金属の水酸化物とし
て、アルミニウムの水酸化物とマグネシウムの水酸化物
とを使用した場合を具体例として挙げ、本発明について
更に詳細に説明する。
【0021】A.[媒体攪拌型ミル粉砕] 水酸化アルミニウム粉末と水酸化マグネシウム粉末とを
共に水に分散したスラリーとし、粉砕装置として媒体攪
拌型ミルを用い、粉砕媒体にかかる加速度が重力加速度
の200倍以上の粉砕条件で粉砕(即ち、独立した粒子とし
ての粒子径は、その80重量%以上の粒子の粒子径が100
nm以下まで細かくなるように粉砕)を行うことによ
り、水酸化アルミニウム粉末と水酸化マグネシウム粉末
とを反応させて、複合水酸化物に転化させる。次に、転
化した複合水酸化物を含む“水酸化物の混合組成物”か
ら水を除去するため乾燥し、続いて、1100℃以下の温度
で加熱処理してMgAl2O4スピネルを生成する。なお、媒
体攪拌型ミル粉砕においては、粉砕は、例えば、粉砕媒
体にかかる加速度が、重力加速度の5倍以上、好ましく
は、20倍以上で、更に好ましくは、200倍以上で行い、
粉砕後の粒径は、その80%以上が、500nm以下、好ま
しくは、100nm以下となるように行われる。
【0022】原料の水酸化アルミニウムとしては、Al(O
H)3が一般的であるが、AlOOHや含水塩も用いることがで
きる。水酸化マグネシウムも同様に、結晶構造や結晶水
の有無に無関係に使用することができる。複合水酸化物
としては、Mg/Al比が“0.5〜3の範囲”にある無水
塩、含水塩のどれに転化しても良いが、転化した複合水
酸化物結晶中のMg/Al比が原料の仕込み時のMg/
Al比より大きい場合は、共存するAl(OH)3は、80重量
%以上の粒子の粒子径が 100nm以下の状態で、より好
ましくは、各粒子の内部で複合水酸化物、または、Mg(O
H)2と共存する状態で存在していることが必要である。
また、逆に生成した複合水酸化物結晶中のMg/Al比
が原料の仕込み時のその比より小さい場合は、共存する
Mg(OH)2は、80重量%以上の粒子の粒子径が100nm以下
の状態で、より好ましくは、各粒子の内部で複合水酸化
物、またはAl(OH)3と共存する状態で存在している必要
がある。
【0023】スピネルを製造するために使用される“水
酸化物の混合組成物”では、複合水酸化物と共存するAl
(OH)3またはMg(OH)2は、粉砕工程で80重量%以上の粒子
の粒子径が100nm以下の粒径まで微細に粉砕されて混
合されている。一方、粉砕媒体の材料が混入することは
避けられないため、粉砕媒体の材質としては、“水酸化
物の混合組成物”の組成と得られる“複合酸化物”の用
途を考慮して選ぶ必要があるが、ここでは、3%Y2O3-Zr
O2製の粉砕媒体を用いたため、3%Y2O3-ZrO2粉末が共存
している。
【0024】図1は、本発明の製造方法によってMgAl2O
4スピネルを製造する際に、粉砕過程で生成したMgAl2(O
H)8、Mg4Al2(OH)14・3H2OまたはMg2Al(OH)10・XH2Oから
なるMgとAlの複合水酸化物とAl(OH)3とが、100nm
以下の粒子径で互いに混合された混合組成物のX線回折
図を示しており、また、図2は、その混合組成物を更に
1000℃で5時間焼成して得たMgAl2O4のX線回折図を示
している。
【0025】図1より、本発明の水酸化物の混合組成物
は、複数の水酸化物と複合水酸化物との混合組成物であ
ることがわかる。また、図2より、本発明の水酸化物の
混合組成物を熱処理することにより、アルミニウムとマ
グネシウムの過不足がない化学量論組成のアルミニウム
・マグネシウム・スピネルを得ることができることが明
かである。
【0026】上記の混合組成物は、1100℃以下の温度で
加熱処理することによって、容易にMgAl2O4スピネルが
生成するため、Al2O3、MgOまたはAl2O3とMgOの両者の混
入が少なく、AlとMgの固溶が均一で、比表面積が大
きなMgAl2O4スピネルを得ることができる。この機構に
ついては、以下のように考えられる。即ち、均一なMgAl
2O4スピネル(AlとMgの比が仕込み組成と同一の値
になっているMgAl2O4スピネル)が生成するためには、
Al成分とMg成分とが如何に均一に混合されているか
が重要なポイントである。本発明では、MgとAlの両
者を含んだ複合水酸化物を含む“水酸化物の混合組成
物”を出発原料として用いているため、MgOの偏析を防
止することが出来る。
【0027】上記複合水酸化物は、Mg対Alの比が2
対1であるので、MgAl2O4スピネルを得るためには更に
Al成分を追加する必要がある。Al源としては、反応
性の高いAl(0H)3を用いるが、場合によってはAlOOHを用
いても良い。本発明の“水酸化物の混合組成物”は、Al
(OH)3とMg(OH)2との混合物を機械的に粉砕することによ
って得ることが出来る。機械的に十分なエネルギーを与
えることにより、MgとAlの複合水酸化物が生成する
と共に、Al(OH)3とMgとAlの複合水酸化物とが微細な状
態で混合される。該“水酸化物の混合組成物”は、MgAl
2(OH)8、Mg4Al2(OH)14・3H2OまたはMg2Al(OH)10・xH2O
からなる複合水酸化物とAl(OH)3とが、80重量%以上の
粒子の粒子径が100nm以下となった微細な混合状態に
なっているために両者の反応性が高く、Al2O3の偏析も
防止することが出来る。
【0028】B.[ボールミル粉砕] 水酸化アルミニウム粉末と水酸化マグネシウム粉末とを
共に水に分散したスラリーとし、粉砕容器中でスラリー
をボールとともに回転させて、ボールによってスラリー
中の粉末を粉砕する形式の粉砕器を用いて、粉砕媒体に
かかる加速度が重力加速度からその2倍程度の粉砕条件
で長時間の粉砕、即ち、独立した粒子としての粒子径
は、その80重量%以上の粒子の粒子径が500nm以下ま
で細かくなるように粉砕を行うことにより水酸化アルミ
ニウム粉末と水酸化マグネシウム粉末とを反応させて、
複合水酸化物に転化させる。次に、転化した複合水酸化
物を含む“水酸化物の混合組成物”から水を取り除くた
め乾燥し、さらに1100℃以下の温度で焼成を行うことに
よりMgAl2O4スピネルを合成する。
【0029】この粉砕容器を用いた粉砕の過程では、媒
体撹拌型ミルによる場合ほど十分な効果は得られない
が、水酸化物粒子が微細になるだけではなく、ボールの
衝撃によって水酸化物粒子の表面粗さの増加や結晶構造
に歪みが与えられ、より反応性が高まること、そして両
者が十分に混ざり合い、かつ、各粒子が部分的または全
体的に融合しあい、複合水酸化物に変化していくことに
なる。その結果、出発原料中のMgとAlとの比が1:
2の場合、前記の[媒体攪拌型ミル粉砕]の例ほどの低
温からではないが、MgAl2O4スピネルの生成が容易とな
り、800℃で約90%以上(粉末X線回折法による定量分
析結果、以下、「XRD」と記載する)の粒子が、1000
℃では約99%以上(XRDによる)の粒子が、MgAl2O4
スピネルとなり、スピネル以外に同定される結晶はMgO
のみである複合酸化物粉末が得られる。なお、ボールミ
ル粉砕においては、粉砕は、例えば、粉砕媒体にかかる
加速度が、重力加速度の1.5倍以上、好ましくは、5倍以
上で、更に好ましくは、20倍以上で行い、粉砕後の粒径
は、その80%以上が、500nm以下、好ましくは、200n
m以下となるように行われる。
【0030】図3は、熱処理温度とMgAl2O4スピネル粉
末の比表面積との関係を示すグラフである。図3より、
水中で、粉砕エネルギーを与えずに、単に攪拌機によっ
て攪拌し、混合する従来法(比較例1)の場合、本発明
の“水酸化物の混合組成物”及びそれを使用した複合酸
化物粉末の製造方法(実施例1〜3)の場合、のいずれ
の場合も、1000℃程度の加熱で、比表面積が42〜57m2/
g程度の高比表面積が得られることがわかる。しかしな
がら、従来法の場合、MgAl2O4スピネルの生成割合が低
く、MgAl2O4スピネル含有率の高い粉末を得るために120
0〜1400℃で加熱処理すると2〜7m2/gとなってしま
う。これに対して、本発明の方法では、1000℃程度の加
熱で、十分にMgAl2O4スピネル含有率の高い粉末を得る
ことができる。このように、本発明の方法は、高比表面
積でかつMgAl2O4スピネル含有率の高い粉末を得るのに
適した方法であることがわかる。
【0031】なお、従来法にしたがって、水酸化アルミ
ニウムと水酸化マグネシウムを混合し、熱処理温度を11
00℃以下とした場合は、MgAl2O4スピネルの生成割合が
本発明よりも低く、また、Al2O3とMgOの両者がMgAl2O4
スピネルに混在した状態となり、好ましくない。
【0032】本発明の製造方法によって製造されたMgAl
2O4 スピネルは、例えばNOx吸蔵還元型触媒用の触媒担
体として適している。
【0033】
【実施例】次に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、
本発明を具体的に説明する。
【0034】<実施例1>平均粒径17μmの水酸化アル
ミニウム粉末と平均粒径19μmの水酸化マグネシウム粉
末とをAl対Mg比が2対1になるように混合し、この
混合粉末100gを2リットルの水に入れ、プロペラ攪拌
器で5分間攪拌して分散させた。次に、ZrO2製粉砕メデ
ィアからなる媒体攪拌ミル(ダイノーミル)を用い、攪拌
翼回転数4200rpmで20時間粉砕を行い(この場合、粉砕媒
体にかかる加速度が重力加速度の760倍)、水酸化アルミ
ニウムの大部分と水酸化マグネシウムの大部分とを複合
水酸化物の結晶形態に転化させた。その後、150℃で10
時間乾燥して水分を除去し、粉末を得た。(攪拌翼直径
2R=7.7cm、回転数=4200rpm、円周速度V=π×7.7
×4200/60=1693.3cm/s、円運動加速度α=V2/R=7
44760.35cm/s/s、重力加速度g=980.6cm/s/s、よっ
て、α/g=759.49)
【0035】X線回折によると、この粉末の結晶相は、 ・MgAl2(OH)8,Mg2Al(OH)10・XH2O,Mg4Al2(OH)14・3H2
O の3種類の複合水酸化物と、少量のMg(OH)2および未同
定相の混合物からなっていることがわかった。(なお、
ZrO2製粉砕メディアから混入したZrO2のピークは検出さ
れなかった。) また、動的光散乱法による粒度分析の結果、この粉末
は、90重量%以上の粒子の粒子径が100nm以下である
ことがわかった。
【0036】この複合水酸化物を主成分とする粉末50g
をアルミナ坩堝に入れ、1000℃で5時間加熱処理を行っ
て、スピネル粉末を得た。得られたスピネル粉末は、比
表面積が57m2/gで、MgとAlとの比が1対2のMgAl2
O4スピネルであった。なお、この粉末には、粉砕媒体の
摩耗によって混入したと考えられる約10vol%(XRD
による)のZrO2粉末が共存していた。
【0037】<実施例2>平均粒径17μmの水酸化アル
ミニウム粉末と平均粒径19μmの水酸化マグネシウム粉
末とをAl対Mg比が2対1になるように混合し、この
混合粉末100gを2リットルの水に入れ、プロペラ攪拌
器で5分間攪拌して分散させた。次に、ZrO2製粉砕メデ
ィアからなる媒体攪拌ミル(ダイノーミル)を用い、攪拌
翼回転数2000rpmで20時間粉砕を行い(この場合、粉砕媒
体にかかる加速度が重力加速度の172.1倍)、水酸化アル
ミニウムの大部分と水酸化マグネシウムの大部分とを複
合水酸化物の結晶形態に転化させた。その後、150℃で1
0時間乾燥して水分を除去し、粉末を得た。(攪拌翼直
径2R=7.7cm、回転数=2000rpm、円周速度V=π×7.
7×2000/60=806.1cm/s、円運動加速度α=V2/R=1
68762.42cm/s/s、重力加速度g=980.6cm/s/s、よっ
て、α/g=172.10)
【0038】X線回折によると、この粉末の結晶相は、 ・MgAl2(OH)8,Mg2Al(OH)10・XH2O,Mg4Al2(OH)14・3H2
O の3種類の複合水酸化物と、少量のMg(OH)2および未同
定相の混合物からなっていることがわかった。Mg(OH)2
および未同定相の量は、実施例1よりも多かった。(な
お、ZrO2製粉砕メディアから混入したZrO2のピークは検
出されなかった。) また、動的光散乱法による粒度分析の結果、この粉末
は、その80重量%以上が粒子径200nm以下であること
がわかった。
【0039】この複合水酸化物を主成分とする粉末50g
をアルミナ坩堝に入れ、1000℃で5時間加熱処理を行っ
て、スピネル粉末を得た。得られたスピネル粉末は、比
表面積が42m2/gで、MgとAlとの比が1対2のMgAl2
O4スピネルであった。なお、この粉末には、粉砕媒体の
摩耗によって混入したと考えられる約1vol%(XRDに
よる)のZrO2粉末が共存していた。
【0040】<実施例3>平均粒径17μmの水酸化アル
ミニウム粉末と平均粒径19μmの水酸化マグネシウム粉
末とをAl対Mg比が2対1になるように混合し、この
混合粉末100gを2リットルの水に入れ、プロペラ攪拌
器で5分間攪拌して分散させた。次に、この分散液0.8
リットルを、5mmのZrO2製ボールを内容積の1/2の嵩
だけ充填した。内容積4リットルのZrO2製ポットに入
れ、回転数120rpmで100時間粉砕を行い、水酸化アル
ミニウムの一部分と水酸化マグネシウムの一部分とを複
合水酸化物の結晶形態に変化させた。この場合、粉砕媒
体にかかる加速度は、重力加速度の約1.6倍であった。
その後150℃で10時間乾燥して水分を除去し、粉末を得
た。 ポット径は20cm、回転数120rpm、次式によ
り、加速度は重力加速度の1.6倍。ここで、重力加速度
の1.61倍という値は、ポットの回転によって発生した加
速度のみを考慮したものである。回転軸が横方向のた
め、実際はポットの上部では0.61倍、ポットの下部では
2.61倍となり、平均値が1.61となる。 周速V=π×20×120/60=125.66(cm/s)、加速
度a=(125.66)2/10=1579、よってa/g=1579/98
0.6=1.61
【0041】X線回折によると、この粉末の結晶相は、
主に水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムであり、
さらに、 ・MgAl2(OH)8,Mg2Al(OH)10・XH2O,Mg4Al2(OH)14・3H2
O の3種類の複合水酸化物と、少量の未同定相の混合物か
らなっていることがわかった。(なお、ZrO2製粉砕メデ
ィアから混入したZrO2のピークは検出されなかった。) また、動的光散乱法による粒度分析の結果、この粉末
は、その80重量%以上の粒子の粒子径が500nm以下で
あることがわかった。
【0042】この複合水酸化物を主成分とする粉末50g
をアルミナ坩堝に入れ、1000℃で5時間加熱処理を行っ
て、スピネル粉末を得た。得られたスピネル粉末は、比
表面積が46m2/gで、MgとAlとの比が1対2のMgAl2
O4スピネルであった。なお、この粉末には、粉砕媒体の
摩耗によるZrO2粉末は共存していなかった。
【0043】<実施例4>平均粒径17μmの水酸化アル
ミニウム粉末と平均粒径19μmの水酸化マグネシウム粉
末とをAl対Mg比が2対1になるように混合し、この
混合粉末100gを2リットルの水に入れ、プロペラ攪拌
器で5分間攪拌して分散させた。次に、この分散液 250
mlを、3mmのZrO2製ボールを内容積の1/3の嵩だけ
充填した、内容積 500mlのZrO2製ポットに入れ、遊星
ボールミルの目盛10で5時間粉砕を行い、水酸化アルミ
ニウムの一部分と水酸化マグネシウムの一部分とを複合
水酸化物の結晶形態に変化させた。粉砕時の発熱のため
1時間毎にミルの回転を止め、ポットに空気を吹き付け
て冷却し、試料の加熱を防いだ。この場合、粉砕媒体に
かかる加速度は、重力加速度の38.2倍であった。その後
150℃で10時間乾燥して水分を除去し、粉末を得た。加
速度の計算は、次の様である。ポット内径(2R)=12
cm、ポット自転の周速V(cm/s)=π×12(c
m)×450(rpm)/60=282.7、よって自転の加速度
1=V2/R=(282.7)2/6=13323(cm/s/s) 回転板の内径34cm、ポット公転の周速V’(cm/
s)=π×34×360/60=640.87、よって公転の加速度
2=(640.87)2/17=24159(cm/s/s)、重力加
速度g=980.6(cm/s/s) よって、自転と公転の加速度の和は、次式より重力加速
度の38.2倍。 (a1+a2)/g=(13323+24159)/980.6=38.2 X線回折によると、この粉末の結晶相は、主に水酸化ア
ルミニウムと水酸化マグネシウムであり、さらに、 ・MgAl2(OH)8,Mg2Al(OH)10・XH2O,Mg4Al2(OH)14・3H2
O の3種類の複合水酸化物と、少量の未同定相の混合物か
らなっていることがわかった。(なお、ZrO2製粉砕メデ
ィアから混入したZrO2のピークは検出されなかった。) また、動的光散乱法による粒度分析の結果、この粉末
は、その80重量%以上の粒子の粒子径が350nm以下で
あることがわかった。
【0044】この複合水酸化物を主成分とする粉末50g
をアルミナ坩堝に入れ、1000℃で5時間加熱処理を行っ
て、スピネル粉末を得た。得られたスピネル粉末は、比
表面積が47m2/gで、MgとAlとの比が1対2のMgAl2
O4スピネルであった。なお、この粉末には、粉砕媒体の
摩耗によるZrO2粉末は共存していなかった。
【0045】<実施例5>平均粒径17μmの水酸化アル
ミニウム粉末と平均粒径19μmの水酸化マグネシウム粉
末とをAl対Mg比が2対1になるように混合し、この
混合粉末200gを4リットルの水に入れ、プロペラ攪拌器
で5分間攪拌して分散させた。次に、この分散液1.4リ
ットルを、10mmのZrO2 製ボールを内容積の4/5の嵩
だけ充填した、内容積4リットルのZrO2 製ポットに入
れ、振動ボールミルで10時間粉砕を行い、水酸化アルミ
ニウムの一部分と水酸化マグネシウムの一部分とを複合
水酸化物の結晶形態に変化させた。粉砕時の発熱のため
1時間毎にミルを止め、ポットに空気を吹き付けて冷却
し、試料の加熱を防いだ。この場合、粉砕媒体にかかる
加速度は、重力加速度の約10倍であった。その後150℃
で10時間乾燥して水分を除去し、粉末を得た。X線回折
によると、この粉末の結晶相は、主に水酸化アルミニウ
ムと水酸化マグネシウムであり、さらに、 ・MgAl2(OH)8,Mg2Al(OH)10・XH2O,Mg4Al2(OH)14・3H2
O の3種類の複合水酸化物と、少量の未同定相の混合物か
らなっていることがわかった。(なお、ZrO2製粉砕メデ
ィアから混入したZrO2のピークは検出されなかった。) また、動的光散乱法による粒度分析の結果、この粉末
は、その80重量%以上の粒子の粒子径が500nm以下で
あることがわかった。
【0046】この複合水酸化物を主成分とする粉末50g
をアルミナ坩堝に入れ、1000℃で5時間加熱処理を行っ
て、スピネル粉末を得た。得られたスピネル粉末は、比
表面積が44m2/gで、MgとAlとの比が1対2のMgAl2
O4スピネルであった。なお、この粉末には、粉砕媒体の
摩耗によるZrO2粉末は共存していなかった。
【0047】<比較例1>平均粒径17μmの水酸化アル
ミニウム粉末と平均粒径19μmの水酸化マグネシウム粉
末とをAl対Mgの比が2対1になるように混合し、こ
の混合粉末100gを2リットルの水に入れ、プロペラ攪
拌器で5分間攪拌して分散させた。その後、150℃で10
時間乾燥して水分を除去し、粉末を得た。この混合粉末
50gをアルミナ坩堝に入れ、1000℃で5時間加熱処理を
行った。得られた粉末は、大部分がMgOとγ-Al2O3とか
らなっており、MgAl2O4の含有率は5%以下(XRDに
よる)であった。
【0048】<比較例2>前記比較例1で得られた混合
粉末50gをアルミナ坩堝に入れ、1700℃で5時間加熱処
理を行った。得られた粉末は、主成分がMgAl2O4から成
り、MgOとα-Al2O3が共存していた。また、この粉末の
比表面積は0.5m2/gであった。
【0049】前記実施例1と比較例1,2との対比から
明らかなように、機械的に混合・粉砕して複合水酸化物
に転化させて得られた、粒子径が100nm以下の水酸化
物と複合水酸化物とからなる粉末を使用する場合は(→
実施例1)、1000℃という低温(1100以下の温度)で加熱
処理することにより、容易にMgAl2O4 スピネルを生成す
ることができる。また、得られたスピネル粉末は、Al2O
3及び/又はMgOの混入が少なく、AlとMgの固溶が均
一であり、しかも、比表面積の大きなMgAl2O4 スピネル
を得ることができる。
【0050】これに対して、実施例1のような“機械的
な混合・粉砕を行わない”場合は、実施例1と同様に10
00℃で加熱処理しても(→比較例1)、得られた粉末は、
大部分がMgOとγ-Al2O3とからなり、MgAl2O4の含有率は
5%以下(XRDによる)のものが得られるにすぎな
い。また、機械的な混合・粉砕を行わない混合粉末を17
00℃で熱処理しても(→比較例2)、主成分がMgAl2O4
ら成るスピネル粉末が得られるものの、該粉末中にMgO
とα-Al2O3が共存しており、しかも、その比表面積は0.
5m2/gのものであった。
【0051】<実施例6>平均粒径50μmの水酸化リチ
ウムと平均粒径の30μmの水酸化マンガンとを、Liと
Mnとの比が1対2となるように混合した。この混合粉
末100gを2リットルのエタノールに入れ、プロペラ攪
拌器で5分間攪拌して分散させた。次に、前記実施例1
と同様、媒体攪拌ミル(ダイノーミル)を用い、攪拌翼回
転数4200rpmで20時間粉砕を行い(この場合、粉砕媒体に
かかる加速度が重力加速度の760倍)、90重量%以上の粒
子の粒子径が100nm以下の粉末を得た。この粉末を800
℃で5時間熱処理した後のX線回折の結果、この粉末
(熱処理後の粉末)の主成分は、マンガン酸リチウムであ
ることがわかった。
【0052】以上、本発明の実施例として、スピネル粉
末およびマンガン酸リチウム粉末の場合を挙げたが、こ
れら以外の、上記例示の“水酸化物の混合組成物”及び
“複合酸化物粉末の製造方法”にも適用でき、前記実施
例1,2と同様の作用効果が生じるものである。
【0053】
【発明の効果】以上詳記したとおり、本発明に係る“水
酸化物の混合組成物”は、2種類以上の水酸化物を機械
的に混合・粉砕して複合水酸化物に転化させて得られ
た、80重量%以上の粒子の粒子径が500nm以下、好ま
しくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の水酸
化物と複合水酸化物とを含有することを特徴とし、この
混合組成物は、低温(1100℃以下)で加熱処理することに
より、容易に複合酸化物を生成することができる効果が
生じる。また、上記加熱処理により得られる粉末は、複
合酸化物を主成分とし、原料酸化物の生成が少なく、固
溶が均一であり、しかも比表面積の大きな複合酸化物を
得ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の“水酸化物の混合組成物”のX線回折
図である。
【図2】本発明の複合酸化物のX線回折図である。
【図3】本発明の“水酸化物の混合組成物”と従来の
“水酸化物の混合物”の熱処理温度と比表面積との関係
を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉浦 正洽 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 Fターム(参考) 4G048 AA02 AA04 AB05 AD04 AD06 AE05 4G076 AA02 AA10 AB06 BA38 BC08 CA04 CA26 CA30

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複合酸化物粉末製造用の水酸化物の混合
    組成物として、2種類以上の水酸化物を機械的に混合・
    粉砕して複合水酸化物に転化させて得られた、80重量%
    以上の粒子の粒子径が500nm以下の水酸化物と、複合
    水酸化物とを含むことを特徴とする水酸化物の混合組成
    物。
  2. 【請求項2】 前記混合・粉砕後の水酸化物の80重量%
    以上の粒子の粒子径が100nm以下であることを特徴と
    する請求項1に記載の水酸化物の混合組成物。
  3. 【請求項3】 前記機械的に混合・粉砕する手段とし
    て、媒体攪拌型ミルを用いることを特徴とする請求項1
    または請求項2に記載の水酸化物の混合組成物。
  4. 【請求項4】 前記2種類以上の水酸化物が、水酸化マ
    グネシウムと水酸化アルミニウム、または、水酸化リチ
    ウムと水酸化マンガン、からなることを特徴とする請求
    項1〜請求項3のいずれかに記載の水酸化物の混合組成
    物。
  5. 【請求項5】 80重量%以上の粒子の粒子径が500nm
    以下のマグネシウムの水酸化物および/または80重量%
    以上の粒子の粒子径が500nm以下のアルミニウムの水
    酸化物と、マグネシウムとアルミニウムとの複合水酸化
    物と、を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のい
    ずれかに記載の水酸化物の混合組成物。
  6. 【請求項6】 前記マグネシウムとアルミニウムとの複
    合水酸化物の80重量%以上の粒子の粒子径が、500nm
    以下である請求項5に記載の水酸化物の混合組成物。
  7. 【請求項7】 前記マグネシウムとアルミニウムとの複
    合水酸化物が、含水塩である請求項5または請求項6の
    いずれかに記載の水酸化物の混合組成物。
  8. 【請求項8】 前記マグネシウムとアルミニウムとの複
    合水酸化物のMg/Al比が、1/2,2/1または3
    /1である請求項5〜請求項7のいずれかに記載の水酸
    化物の混合組成物。
  9. 【請求項9】 前記マグネシウムとアルミニウムとの複
    合水酸化物が、MgA1 2(OH)8,Mg4Al2(OH)14・3H2O,Mg2A
    l(OH)10・XH2Oの1〜3種を含んでいる請求項5〜請求
    項8のいずれかに記載の水酸化物の混合組成物。
  10. 【請求項10】 2種類以上の水酸化物の混合物を機械
    的に混合・粉砕して複合水酸化物に転化させ、得られた
    水酸化物と複合水酸化物とを含む水酸化物の混合組成物
    を、さらに加熱処理して複合酸化物に転化させることを
    特徴とする複合酸化物粉末の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記機械的に混合・粉砕する手段とし
    て、媒体攪拌型ミルを用いることを特徴とする請求項1
    0に記載の複合酸化物粉末の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記2種類以上の水酸化物が、水酸化
    マグネシウムと水酸化アルミニウム、または、水酸化リ
    チウムと水酸化マンガン、からなることを特徴とする請
    求項10または請求項11に記載の複合酸化物粉末の製
    造方法。
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