JP2000117920A - 乳酸系ポリマ―積層体及び成形物 - Google Patents

乳酸系ポリマ―積層体及び成形物

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JP2000117920A
JP2000117920A JP11226362A JP22636299A JP2000117920A JP 2000117920 A JP2000117920 A JP 2000117920A JP 11226362 A JP11226362 A JP 11226362A JP 22636299 A JP22636299 A JP 22636299A JP 2000117920 A JP2000117920 A JP 2000117920A
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lactic acid
based polymer
acid
lactide
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Akio Toyoda
明男 豊田
Kosuke Arai
宏介 新居
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Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明が解決しようとする課題は、成形加工
工程や成形物の貯蔵中のラクタイドの漏出を抑制し、且
つ分解速度を増加せしめた乳酸系ポリマー積層体、及び
該積層体から成る成形物を提供することにある。 【解決手段】 ラクタイド及び/又は有機酸から成る分
解促進剤を0.3〜7重量%含む乳酸系ポリマー(A)
から成る基材層(I)の片面又は両面に、含有ラクタイ
ド量が0.1重量%以下である乳酸系ポリマー(B)か
ら成る分解促進剤の漏出遮断層(II)を、基材層の厚み
1に対して0.02〜1になるように積層した乳酸系ポ
リマー積層体、及び該積層体から成る成形物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は農業用、又は土木用
フィルム、シート及び各種の食品、飲料、薬品、雑貨等
の包装または収納に有用な、生分解性が促進、制御され
た乳酸系ポリマーからなる積層体、該積層体から成る成
形物、特に、フィルム又はシート、及びこれらを熱成形
してなる包装用袋、軽量容器、射出成形容器、ブロー成
形容器等の成形物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、熱可塑性プラスチックの成形物は
耐水性、透明性、強度、熱成形性、低コスト性に優れた
特徴を持っているため、多くの用途に膨大な量が使用さ
れている。これらの例を挙げれば、作物の育成時の保
温、保湿、或いは、風雨等の外界からの保護を目的とし
た農業用フィルム。土砂の流出を防止する土木用シー
ト。各種の食品、飲料、薬品、雑貨用等の包装材とし
てのフィルム及びシート。フィルム又はシートを熱成
形してなる包装袋または軽量容器。射出成形容器。
ブロー成形容器等である。
【0003】従来、一般に使用されている汎用樹脂と言
われる熱可塑性プラスチックは、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等である。こ
れらの使用済みプラスチックの廃棄物の処分方法とし
て、焼却、埋立が行われているが、これらの処分方法に
は問題があり、埋立地不足、景観阻害、海洋生物への脅
威及び環境汚染等の地球的環境問題を引き起こしてい
る。
【0004】特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
スチレン等の樹脂を焼却する場合は、それら樹脂の燃焼
カロリーが高いため、炉を痛め易く、炉の寿命を短くす
る。一方、ポリ塩化ビニルにおいては、燃焼カロリーは
低いが焼却時に有害なガスを発生する。埋立において
も、これらの汎用樹脂は、化学的安定性が高いため、分
解せず原形をとどめたまま半永久的に残ることが知られ
ており、埋立地不足が深刻化する原因の一つになってい
る。
【0005】また、これらが自然環境中に廃棄された場
合、その高い安定性のために美観を損ねたり、海洋生
物、鳥類等が誤って補食し、貴重な生物資源が減少する
など環境破壊の一因となっている。これらの社会的問題
を解決するため、最近、生分解性ポリマーの研究が盛ん
に行われている。
【0006】例えば、従来、農作物の成長を助ける為
に、保温、保湿を目的としたマルチフィルム、あるいは
過酷な外界環境から農作物を保護するハウス用シート等
の農業用フィルム・シートには、ポリ塩化ビニル、又は
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂
が使用されているが、その使用済み品は、上積みした土
を除いてから採集されて廃棄されている。
【0007】この作業には多くの労力を必要とし、更
に、その廃棄品の一部は処理設備で焼却処分されるが、
大半は野積み放置されるか、あるいは平地で焼却されて
おり、鳥類の捕食、大気中への塩化水素ガスの排出等の
環境汚染を助長している。これらのフィルム・シートを
生分解性ポリマーにより製造し、使用後に速やかに地中
で分解、消失させることができれば、除去作業の手間が
省け、廃棄による環境への負荷も低減することができ
る。
【0008】土木用シートに関しても同様である。現状
は主にポリ塩化ビニルのシートが使用されているが、工
事の間は使用に耐え、使用後は速やかに分解、消失すれ
ば現場からのシート除去の手間が省け、且つ環境負荷を
低減させることができる。また各種の食品、飲料、薬
品、雑貨用等の液状物、粉粒物、固形物の包装材等に関
しても同様で、従来のポリマーをその使用後、速やかに
分解する生分解性ポリマーに置換することにより環境へ
の負荷を低減できることが期待されている。
【0009】これらの生分解性ポリマーで注目されてい
る樹脂の1つに、乳酸系ポリマーと称するポリ乳酸及び
そのコポリマーがある。乳酸系ポリマーは熱可塑性樹脂
の一つであるが、耐水性、透明性、強度、熱成形性に関
して、汎用樹脂に類似した特性を有しており、加えて加
水分解反応と微生物介在による完全分解により、最終的
には水と二酸化炭素になるという汎用樹脂にない特徴を
有している。
【0010】また燃焼カロリーが低いため、焼却しても
炉を痛めることがなく、且つ有害なガスを発生しない。
さらには乳酸の発酵原料に植物資源を利用出来るため、
存在量が限られている石油資源への依存を低減できる等
の種々の優れた特徴を有している。
【0011】これら生分解性を有する乳酸系ポリマーの
成形物が流通し使用される間は、成形物の形状と物性は
維持される必要があり、一方、その使用後は、速やかに
分解されることが望ましい。従って、成形物の用途に応
じて、用いる乳酸系ポリマーの生分解速度を出来る限り
制御することが好ましい。特公表4−504731号公
報には、可塑剤として用いるポリ乳酸中のラクタイドや
オリゴマーにより、ポリ乳酸の劣化速度が速まることが
記載されている。
【0012】従って、ポリ乳酸の分解速度を高める為に
は、ポリ乳酸中に含有させるラクタイド量を増加させる
方法が考えられるが、乳酸系ポリマー中にラクタイドを
含有させると、ラクタイドは熱成形加工(押出成膜、押
出成形あるいは射出成形等)中に昇華し、冷却ロールあ
るいは冷却金型等の成形加工機に付着、あるいは堆積
し、ラクタイドの堆積物跡が成形物に転写してその品質
を著しく損なうと共に、成形加工自体を困難にする問題
や、成形物製品の貯蔵中にラクタイドが成形物から漏出
し、成形物製品、特にフィルム、シートに致命的な汚れ
を生じさせる等の問題点があった。汚れは成形物外観を
損ねるばかりでなく、ほこり等の付着を招き、成形物に
内包する商品等も汚すことになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、成形加工工程や成形物の貯蔵中のラクタイ
ドの漏出を抑制し、且つ分解速度を増加せしめた乳酸系
ポリマー積層体、及び該積層体から成る成形物を提供す
ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
した結果、ラクタイド及び/又は有機酸から成る分解促
進剤を含有した乳酸系ポリマー(A)から成る基材層
(I)と、成形時の分解促進剤の漏出を防止する為、基
材層(I)の片面又は両面に、ラクタイド量0.1重量
%以下の乳酸系ポリマー(B)から成る分解促進剤の漏
出遮断層(II)とを有した乳酸系ポリマー積層体を用い
ることにより、成形加工工程や成形物の貯蔵中にはラク
タイド等の分解促進剤の漏出を抑制でき、且つ分解速度
を増加せしめた乳酸系ポリマー積層体、及び該積層体か
ら成る成形物が得られることを見い出し本発明を完成す
るに至った。
【0015】即ち、本発明は、 (1)ラクタイド及び/又は有機酸から成る分解促進剤
を0.3〜7重量%含む乳酸系ポリマー(A)から成る
基材層(I)の片面又は両面に、含有ラクタイド量が
0.1重量%以下である乳酸系ポリマー(B)から成る
分解促進剤の漏出遮断層(II)を、基材層の厚み1に対
して0.02〜1になるように積層した乳酸系ポリマー
積層体、
【0016】(2)乳酸系ポリマー(A)及び/又は乳
酸系ポリマー(B)が、ジカルボン酸とジオールとを脱
水縮合したポリエステル構造単位、及び/又はジカルボ
ン酸とポリエーテルポリオールとを脱水縮合したポリエ
ーテル構造単位を3〜60重量%含む乳酸系ポリマーで
あることを特徴とする(1)に記載の乳酸系ポリマー積
層体と、
【0017】(3)乳酸系ポリマー(A)及び/又は
(B)がポリ乳酸であることを特徴とする(1)に記載
の乳酸系ポリマー積層体と、
【0018】(4)乳酸系ポリマー(B)が、該ポリマ
ー重合後に重合触媒の失活剤により重合触媒を失活させ
るか、及び/又は、脱揮処理、及び/又は再沈処理によ
り残留モノマーを低減させた乳酸系ポリマーから成るこ
とを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載の
乳酸系ポリマー積層体と、
【0019】(5)乳酸系ポリマー(A)が、乳酸系ポ
リマーの成形時にラクタイド及び/又は有機酸から成る
分解促進剤を添加したものであることを特徴とする
(1)〜(3)のいずれか一つに記載の乳酸系ポリマー
積層体と、
【0020】(6)上記の(1)〜(5)のいずれか1
つに記載の乳酸系ポリマー積層体から成る成形物と、
【0021】(7)成形物がフィルム、又はシートであ
ることを特徴とする請求項6に記載の成形物と、更に、
【0022】(8)成型物が射出成形法、又はブロー成
形法により成形された成型物であることを特徴とする
(6)に記載の成形物とを含むものである。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明はラクタイド等の分解促進
剤を0.3〜7重量%含む乳酸系ポリマー(A)から成
る基材層(I)の片面又は両面に、基材層(I)からの分
解促進剤の析出を防止する、ラクタイド量0.1重量%
以下の乳酸系ポリマー(B)から成る分解促進剤の漏出
遮断層(II)を積層した乳酸系ポリマー積層体、及び該
積層体から成る成形物、特に、フィルム又はシート、及
びこれらを熱成形してなる包装用袋、軽量容器、射出成
形容器、ブロー成形容器等の成形物である。
【0024】本発明の乳酸系ポリマー積層体を構成する
基材層(I)に使用する乳酸系ポリマー(A)は、乳酸
系ポリマー積層体の分解を促進し、制御するためのもの
であり、分解促進剤を0.3〜7重量%添加した乳酸系
ポリマーよりなる。乳酸系ポリマー(A)内の分解促進
剤成分が0.3重量%未満では十分な分解速度の促進が
果たせない。又、7重量%を越えると乳酸系ポリマーB
よりなる遮断層(II)との熱流動性の差が大きくなり熱
流動性を伴う熱成形時に乳酸系ポリマー積層体の外観を
著しく悪くする為、好ましくない。
【0025】乳酸系ポリマー(A)からなる基材層
(I)からの分解促進剤の漏出を防ぐ遮断層(II)に使
用する乳酸系ポリマー(B)は、乳酸系ポリマー積層体
の熱成形時に分解促進剤の漏出を防止する為、含有する
ラクタイド量は0.1重量%以下が好ましい。また、該
遮断層の厚みは乳酸系ポリマー(A)からなる基材層
(I)の厚み1に対して0.02から1の割合が好まし
いが、更に好ましくは0.03〜0.7である。
【0026】乳酸系ポリマー(A)及び/又は乳酸系ポ
リマー(B)はポリ乳酸、または乳酸を脱水縮合した構
造単位に、ジカルボン酸とジオールを脱水縮合したポリ
エステル構造単位及び/又はジカルボン酸とポリエーテ
ルポリオールを脱水縮合したポリエーテル構造単位を3
〜60重量%含むものである。また、重量平均分子量は
1万〜50万であることが好ましい。
【0027】本発明に用いられるポリマーはポリ乳酸及
び乳酸成分とジカルボン酸成分とジオール成分及び/ま
たはポリエーテルポリオール成分からなるポリエステル
を含む乳酸系ポリマーやその混合物である。乳酸成分と
しては、各光学異性体であるL,D,DL−乳酸、及び
それらを環状二量体化して作製するL−、D−、DL−
ラクタイドの3種がある。
【0028】これらは本発明にはいずれも使用できる
が、L/D−ラクタイドの重量比が100/0〜90/
10の混合体を使用することが、得られる乳酸系ポリマ
ーの結晶性から好ましく、更に好ましくはL/D−ラク
タイドの重量比が95/5〜99/1のものである。
【0029】ジカルボン酸成分としては、通常のポリエ
ステル成分として公知慣用の脂肪族及び/又は芳香族ジ
カルボン酸が使用できるが、好ましい例としては、メチ
レン鎖長が2〜10のもの、例えばアジピン酸、セバシ
ン酸、コハク酸等が挙げられる。ジオール成分として
は、通常のポリエステル成分として公知慣用の脂肪族及
び/又は芳香族ジオールが使用できるが、好ましい例と
しては、主鎖の炭素数が2〜6のもの、例えばエチレン
グリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコー
ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール
等が挙げられる。
【0030】ポリエーテルポリオールとしては、ポリエ
チレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブ
チレングリコール等が挙げられる。これらの内でも特に
ジカルボン酸成分としてはアジピン酸、セバシン酸、ダ
イマー酸、ジオール成分としてはプロピレングリコー
ル、ポリエーテルポリオールとしてはポリプロピレング
リコールを使用することが最も好ましい。
【0031】ポリ乳酸の製造法としては、乳酸から環状
二量体であるラクタイドを合成し、開環重合により高分
子量のポリ乳酸を得る方法が多く使用されているが、乳
酸から直接脱水縮合によりポリ乳酸を合成する方法も用
いられる。また、乳酸系ポリマーであるコポリマーは、
ポリ乳酸重合時もしくはポリ乳酸に脂肪族ポリエステ
ル、芳香族ポリエステル、カプロラクトン、酢酸ビニ
ル、エチレンテレフタレート重合体、エチレンビニルア
ルコール等の一種以上のコポリマー成分を加え共重合さ
せることにより得られる。
【0032】またこれら重合のどの段階でも良いが多価
カルボン酸及び/またはその酸化無水物、多価イソシア
ネート等の高分子量化剤を加えることにより、乳酸系ポ
リマーを更に高分子量化することができる。多価カルボ
ン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸、酸化無
水物としては無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水
ピロメリット酸等が好ましい。
【0033】多価イソシアネートとしては2,4−トリ
レンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ
ートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合体、ジ
フェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレン
ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素
化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソ
シアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニ
ルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート等が挙
げられる。高分子量化剤の添加量は、乳酸系ポリマーに
対し0.01〜5重量%程度加えればよく、これにより
通常30万程度の重量平均分子量を60万〜70万程度
にまで上げることができる。
【0034】更に、このポリマー重合終了後、もしくは
製造したポリマーに、ポリマー重合触媒の失活剤とし
て、キレート剤、及び酸性リン酸エステル類を添加する
ことにより、熱成形工程等での残存触媒による重合反応
の逆反応を防止し、ポリマーからのラクタイドやオリゴ
マーの生成を抑制することにより、ポリマーの熱安定
性、貯蔵安定性を向上させることが出来る。
【0035】酸性リン酸エステル類による安定性向上の
機構としては、ポリヒドロキシカルボン酸と、ジカルボ
ン酸成分とジオール成分からなるポリエステル及び高分
子量化剤から構成される組成物中に含まれている触媒中
の金属イオンと錯体を形成し、その活性を消失させるも
のである。
【0036】キレート剤としては、有機系キレート剤と
しては、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン
酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリ
ン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、配位原子として
N含有フェノール、配位原子としてN含有カルボン酸、
ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類などが挙げ
られる。
【0037】これらは触媒の金属イオンと錯体を形成し
て触媒活性を失わせるものである。無機系キレート剤
は、吸湿性が高く、吸湿すると効果がなくなるため取り
扱いに注意が必要である。具体的には、リン酸、亜リン
酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン酸類を挙げるこ
とができる。これら有機系キレート剤と無機系キレート
剤を混合して使用しても差し支えない。
【0038】酸性リン酸エステル類とは、酸性リン酸エ
ステル、ホスホン酸エステル、アルキルホスホン酸等及
びその混合物を指す。酸性リン酸エステル類では、とり
わけ酸性リン酸エステルが触媒失活に大きな効果を示
す。これらの触媒失活剤の添加量は、その種類、使用触
媒の種類、混練条件によって異なるが、乳酸系ポリマー
に対して、0.001重量部〜5重量部、あるいは、使
用重合触媒1重量部に対して、0.1〜100重量部を
添加することが好ましい。
【0039】本発明に用いる乳酸系ポリマーは重合当初
は残留モノマー量を2重量%以下、より好ましくは1重
量%以下、更に好ましくは、0.1%以下にすることが
好ましい。使用する乳酸系ポリマー中の残留モノマー、
特に残留ラクタイド量を少なく制御することにより、分
解促進剤の添加量を決定し、乳酸系ポリマー、並びに得
られる乳酸系ポリマー積層体の分解速度を制御すること
が可能になる。
【0040】また分解促進剤の漏出遮断層(II)を構成
する乳酸系ポリマー(B)は、ポリマー中の残留ラクタ
イド量を0.1重量%以下に抑える必要がある。これに
より分解促進剤を含む乳酸系ポリマー(A)から成る基
材層(I)からの分解促進剤の漏出を抑え、成形工程、
即ち、押出成膜、押出成形あるいは射出成形時の冷却ロ
ールあるいは冷却金型への分解促進剤の堆積を防止し、
ひいては堆積物跡の成形物への転写を防ぎ、成形物の外
観を良好に保つ。
【0041】触媒失活剤により重合触媒を失活させる他
に、残留モノマー及びオリゴマーを減少させる方法とし
て、乳酸系ポリマーを減圧下において加熱、脱揮する脱
揮法がある。具体的に脱揮は、1軸あるいは2軸の押出
機、薄膜蒸留機、ポット型減圧装置等を用いて行う。脱
揮条件としては、重合後に減圧下、加熱(多くは溶融)
しながら連続的に乳酸系ポリマーの取り出しができる方
法が好ましい。
【0042】乳酸系ポリマーの分子量を低下させない為
の脱揮条件は、温度は60〜200℃、脱揮時間が10
秒〜10分、温度が100〜230℃、減圧度が0.1
〜50Torr、より好ましくは0.1〜10Tor
r、更に好ましくは0.1〜5Torrである。また、
重合終了後に、乳酸系ポリマーをペレット化、又は粉砕
し、減圧下、加熱しながら取り出しを行う方法がある。
この場合も乳酸系ポリマーの分子量を低下させない目的
で、脱揮時間は2〜400分、温度は60〜200℃、
減圧度は0.1〜50Torr、より好ましくは0.1
〜10Torr、更に好ましくは0.1〜5Torrで
ある。
【0043】また重合終了後に乳酸系ポリマーを取り出
してから、1軸あるいは2軸の押出機等を用いてフィル
ム、シートへの熱成形等をする際に押出機にベント口等
を設置して脱揮をしても残留モノマー等を減少させる効
果が得られる。この場合も乳酸系ポリマーの分子量を低
下させない目的で、脱揮時間は3秒〜5分、温度は14
5〜230℃、減圧度は0.1〜50Torr、好まし
くは0.1〜10Torr、更に好ましくは0.1〜5
Torrである。
【0044】更に、重合反応終了後に、乳酸系ポリマー
を溶剤に溶解し、貧溶剤に加えることによって乳酸系ポ
リマーを得る再沈法がある。乳酸系ポリマーを溶解する
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、
キシレン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチ
ルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサ
ン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イ
ソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、
四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリ
クロロベンゼン、クロロナフタレン等が挙げられる。
【0045】これら溶剤は単独で使用しても良いが混合
して使用しても良い。貧溶剤としては水、メタノール、
エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタン、オ
クタン、ノナン、デカン、ジエシルエーテル等とこれら
の混合溶剤が挙げられる。再沈法は、室温または加温し
ながら溶剤に2〜20重量%の濃度で乳酸系ポリマーを
溶解後、攪拌しながら2〜15倍量の貧溶剤に除々に加
え、10〜180分間、静置し沈殿を生成させ取り出し
を行う。取り出した沈殿物は減圧下及び/又は加熱下で
残留溶剤を取り除く。
【0046】残留モノマー及びオリゴマーを減少させる
方法には、前述のように重合触媒の失活剤により残留モ
ノマー及びオリゴマーの発生を防止する方法や、脱揮法
や再沈法の如く、機械的に残留モノマー及びオリゴマー
を除去する方法があるが、これらのいずれ方法でも乳酸
系ポリマー内に残留するモノマー成分を減少させること
ができるが、これら方法を組合せて使用しても差し支え
ない。
【0047】本発明の積層体に使用する乳酸系ポリマー
には、必要に応じて、その特性を損なわない範囲で、第
二、三成分として他のポリマーや、公知慣用の可塑剤、
安定剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、着
色剤等の添加剤を含んでも良い。ポリマーには脂肪族ポ
リエステル、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシブ
チレート−ヒドロキシバリレート、スターチ系ポリマー
等を含んでも良い。
【0048】添加剤としては1,3−ブタンジオールと
アジピン酸等のポリエステル系可塑剤やフタル酸ジオク
チル、ポリエチレングリコールアジピン酸等の可塑剤、
エポキシ化大豆油、カルボジイミドの様な安定剤、2,
6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェノール(BH
T)、ブチル・ヒドロキシアニソール(BHA)の様な
酸化防止剤、シリカ、タルクの様なブロッキング防止
剤、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリ
ルの様な防曇剤、酸化チタン、カーボンブラック、群青
の様な着色剤等を含んでもかまわない。
【0049】乳酸系ポリマー積層体に使用する、ラクタ
イド及び/又は有機酸から成る分解促進剤としては、ラ
クタイドの他に、乳酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン
酸等のヒドロキシ酸類、ラウリン酸、ステアリン酸、オ
レイン酸等のモノカルボン酸類、コハク酸、アジピン
酸、セバシン酸等のジカルボン酸類、安息香酸、フタル
酸等の芳香族カルボン酸類等の有機酸が挙げられる。ラ
クタイドは開裂して乳酸となって、有機酸はそのままの
形で、乳酸系ポリマーの加水分解を促進し、本発明の乳
酸系ポリマー積層体の分解を促進させる。
【0050】即ち、乳酸系ポリマーの自然界における分
解機構は次の2段階が考えられている。第一段階は乳酸
系ポリマーの加水分解であり、この加水分解が進み、乳
酸系ポリマーの分子量が低下した段階で微生物の捕食に
よる分解が始まると考えられており、本発明で言う分解
促進剤は主に第一段階の加水分解を促進し、結果的に自
然界における分解を促進させるものである。
【0051】これらの有機酸の内でも、沸点もしくは昇
華点がラクタイド以上で、熱成形工程で乳酸系ポリマー
から漏出しにくいものが、乳酸系ポリマー積層体の製造
上、及び分解性を制御する上で好ましく用いられる。ま
た、常温で固体である方が取り扱い上好ましい。これら
の好ましい具体例を示すと表1の通りである。
【0052】
【表1】
【0053】これらはどの様に組み合わせて使用しても
差し支えない。本発明の乳酸系ポリマー積層体の乳酸系
ポリマー(A)から成る基材層(I)に用いる乳酸系ポ
リマーには、これらのラクタイド及び/又は有機酸から
成る分解促進剤を0.3〜7重量%、好ましくは0.5
〜5重量%添加する。
【0054】積層体の製造前に、これらの分解促進剤を
乳酸系ポリマー中に長期間に渡って含有させておくこと
は、原料として使用する乳酸系ポリマーの貯蔵安定性の
面から好ましくなく、乳酸系ポリマー積層体を作製する
際に、基材層(I)とする乳酸系ポリマー中に添加する
ことが好ましい。
【0055】本発明の乳酸系ポリマー積層体は汎用樹脂
の一般的成形方法である押出成膜法、押出成形法あるい
は射出成形法を用いて作製でき、基材層(I)と遮断層
(II)を積層した構成物を作製できる方法であれば特に
制限なく行うことが出来る。本発明の乳酸系ポリマー積
層体は、基材層(I)の厚み1に対して乳酸系ポリマー
(B)から成る遮断層(II)の厚みが0.02〜1であ
ることが好ましい。
【0056】遮断層(II)の厚みが0.02以下である
と、基材層(I)からの分解促進剤の漏出を遮断する効
果が十分でなく、熱成形加工時や貯蔵、流通時に問題を
生じる恐れがある。遮断層(II)の厚みに上限を設ける
必要は特にないが、遮断層(II)の厚みが1以上である
と、基材層(I)に含まれる分解促進剤による分解促進
作用が十分に発揮されず、積層体構造を構成し分解速度
を速める目的が十分に達成されない。
【0057】次にフィルムあるいはシートの押出成形に
関し、乳酸系ポリマー積層体の作製方法について述べ
る。一般にフィルムとは買い物袋等に加工されている比
較的厚みの薄い平面状のものであり、シートとは真空成
形機等で熱成形されて軽量容器として使用されるような
フィルムに比較すると厚みのある平面状のものである。
【0058】乳酸系ポリマーの積層方法は2台以上の押
出機による多層押出成膜法が好ましい。他に基材層
(I)になるフィルムあるいはシートの押出成膜時に予
め成膜したラクタイド遮断層(II)になるフィルムある
いはシートを、基材層(I)に溶融押出ラミネートする
方法あるいは予め成膜したラクタイド遮断層(II)及び
基材層(I)を接着剤を介してドライラミネートする方
法がある。
【0059】共押出成膜、溶融押出ラミネート、ドライ
ラミネートを実施する時、遮断層(II)には金属または
金属酸化物が蒸着されていても良いし、印刷が施されて
いても良いし、それらの処理が2種以上為されていても
良い。次に、乳酸系ポリマー積層体からなるフィルムあ
るいはシートの押出成膜方法及びその条件について述べ
る。乳酸系ポリマーは吸湿性が高く、加水分解性も強い
ため水分管理が必要であり、一般的な単軸押出機を用い
て押出成膜する場合には、成形前に該ポリマーを真空乾
燥器等により除湿乾燥する必要がある。
【0060】また、ベント式2軸押出機による成膜は脱
水効果が高く乾燥工程を省略できるため効率的な成膜が
可能である。乳酸系ポリマーをフィルムあるいはシート
へ成膜する際の溶融押出温度は、用いる乳酸系ポリマー
の融点及び軟化点により異なり、特に制限されないが、
通常150〜250℃の範囲である。溶融押出されたフ
ィルムあるいはシートは所定の厚みになるようにキャス
ティングされ、必要により冷却される。
【0061】その際、フィルムあるいはシートの厚みが
厚い場合はタッチロール、エアーナイフ、薄い場合には
静電ピンニングを使い分けることにより均一な成膜品と
する。溶融押出を行うリップの間隔は、0.2〜3.0
mmとするが、成膜性を考えるならば0.2〜1.5m
mが好ましい。
【0062】次に積層方法についての説明する。まず多
層押出成膜による乳酸系ポリマー積層体の作製方法とし
ては、基材層(I)と分解促進剤遮断層(II)とを別個
の押出機により溶融・混練しTダイ内あるいはそれ以前
のフィードブロック内等で積層し、Tダイを通してフィ
ルム化あるいはシート化の成膜を行う。押出成膜方法及
び条件は基本的には先に述べたところに従う。
【0063】この際に、分解促進剤の添加を行うが、ラ
クタイド等の吸湿性物質は吸湿により常温で粉体からシ
ャーベット状に急激に性状が変わる為、取り扱い上、絶
乾状態或いはそれに類似する窒素等をパージした環境下
で添加することが望ましい。乳酸系ポリマーへの分解促
進剤の添加は押出成膜前に予め乳酸系ポリマーとブレン
ド配合により行っても良いし、押出成膜しながら押出機
への樹脂の投入口であるホッパー内へ所望の配合比でオ
ートフィーダー等の連続的配合ができる機器を使用して
行っても良い。
【0064】溶融押出ラミネートは、繰り出し機で送ら
れた遮断層(II)と押出機からラミネーター用Tダイへ
導びかれた基材層(I)とをロールで圧着し積層化する
方法である。基材層(II)の押出成膜方法及び条件は基
本的には先に述べたところに従う。遮断層(II)と基材
層(I)との接着性が悪い場合は、遮断層(II)をラミ
ネーターへ送る前にコロナ放電処理、フレームプラズマ
処理、クロム酸処理等の化学エッチング処理、オゾン・
紫外線処理等の表面処理、サンドブラスト等の表面凹凸
処理により接着性の向上を行うか、もしくは適当なアン
カーコート剤を選択することにより接着性を向上させて
も良い。
【0065】ここで作製するシートあるいはフィルムの
乳酸系ポリマー積層体は強度の向上、あるいは生産効率
の向上を目的とした延伸処理を行うことができる。この
延伸処理方法は、特に制限されないが、乳酸系ポリマー
を溶融押出した直後、若しくは保存後のシ−トに圧延、
縦一軸延伸、横一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸
のいずれかにより行う。
【0066】本発明の乳酸系ポリマー積層体は必要に応
じて、金属又は金属酸化物が蒸着されても良いし、印刷
が施されていても良い。また帯電防止性、防曇性を付与
する為に界面活性剤が包含又は塗布されていても良い。
界面活性剤としてはカチオン系、ノニオン系、非イオン
系があるが、衛生面からは非イオン系を使用することが
好ましい。更に成形物の取扱いを良くする為に、シリコ
ンあるいはシリコンエマルジョン溶液が塗布されていて
も良い。
【0067】本発明の乳酸系ポリマー積層体から成るフ
ィルム、シートは、農作物の育成期間により要望される
分解時期の異なる農業用マルチフィルム或いはハウス用
シートや、また工事期間の異なる土木用シートに好まし
く用いることができる。
【0068】本発明の乳酸系ポリマー積層体を押出成膜
法で作製する場合、冷却ロールへのラクタイドの堆積が
なく、良好な外観のフィルムあるいはシートを作製でき
る。また、ここで作製した乳酸系ポリマー積層体は真空
成形、真空圧空成形、熱板圧空成形、深絞り真空成形等
の熱成形方法により食品、飲料、薬品、雑貨等の内容物
を剛性をもって包装する成型物、軽量容器等に成形する
ことができる。
【0069】ここで包装袋とは一般に用いられている袋
であり、合成樹脂フィルムを折り曲げまたは熱融着等の
方法によりシールしたもので平面的、場合によっては立
体的な包装材形態である。これを使用した包装の対象と
しては野菜、菓子、パン等の食品または雑貨あるいは
米、肥料等がある。
【0070】次に射出成形法に関し、乳酸系ポリマー積
層体の作製方法について説明する。射出成形法は複雑な
形状の高精度の製品を短いサイクルで連続的に作ること
ができる、一般に広く普及している成形方法である。そ
の成形品は自動車、電子、電気機器、事務機、建材、日
用品など広い分野で使用されている。射出成形において
は、成形しようとする樹脂が50〜200MPaの高圧
で密閉状態にある金型内に射出され賦形される。
【0071】このため金型表面へのラクタイド等の分解
促進剤の堆積を防止する為に、分解促進剤を含む乳酸系
ポリマー(A)からなる基材層(I)は乳酸系ポリマー
(B)からなる遮断層(II)に覆われていることが好ま
しい。成形方法としてはサンドイッチ成形法が適当であ
る。サンドイッチ成形法は、まずスキン層になる樹脂が
賦形しようとする金型内に射出され、その後、スキン層
樹脂とコア層樹脂が同時に射出され、最後にスキン層樹
脂を射出し樹脂の充填を終了する。
【0072】ここで乳酸系ポリマー(A)からなる基材
層(I)はサンドイッチ成形法のコア層であり、乳酸系
ポリマー(B)からなる遮断層(II)はスキン層にな
る。射出成形時の乳酸系ポリマーの溶融成形温度は、用
いる乳酸系ポリマーにより異なり、特に制限されない
が、通常150〜300℃の範囲である。サンドイッチ
成形法の他に複数の射出装置を使用して金型に順次樹脂
を射出する多色多材成形法と呼ばれる成形法がある。本
発明の乳酸系ポリマー積層体の射出成形方法は、いずれ
の公知慣用の成型方法でも良く、これらの成形方法に特
に限定されるものではない。
【0073】次にブロー成形法に関し、乳酸系ポリマー
積層体の作製方法について説明する。飲料、薬品、化粧
水等の液状物の容器としてはガラスビンや合成樹脂を加
工したボトルが用いられているが、特にブロー成形法で
作製される合成樹脂ボトル容器は軽量であり、透明性、
耐水性、強度、熱成形性、低コスト性等に優れた特徴を
有するため広く普及している。
【0074】ブロー成形法は熱可塑性の合成樹脂を押出
成形または射出成形によってチューブ状のパリソンと呼
ばれる予備成形物に成形し、これをブロー金型ではさん
でそのブロー金型内部でパリソンに空気を吹き込み、ふ
くらませて冷却固化して容器を作製する方法である。本
件で言う乳酸形ポリマー積層体からなるボトル容器を作
製するには多層延伸ブロー成形法が一般に広く普及して
おり応用性が高い。
【0075】該方法において乳酸系ポリマー積層体を作
製するに当たっては射出成形法でのサンドイッチ成形法
を応用した共射出と呼ばれる射出成形法で本件でいう乳
酸系ポリマー積層体からなるプリフォームを作製する。
ここでも乳酸系ポリマー(A)からなる基材層(I)は
コア層になり、乳酸系ポリマー(B)からなる分解促進
剤の漏出を防止する遮断層(II)はスキン層になる。
【0076】ここで作製したプリフォームはボトル容器
に賦型する金型内でふくらませて製品になるが、その際
の方法としてはパリソンを再加熱して金型内でふくらま
せるコールドパリソン法が良い。該方法は肉厚、重量、
容積の均一性が良いという特長をもつ。また、パリソン
成形とブロー成形が別工程にできることからパリソンの
連続成形が可能であり、射出成形機内の樹脂の滞留時間
を短くでき熱分解しやすい樹脂でも成形が可能になる。
【0077】射出成形時の乳酸系ポリマーのパリソンへ
の溶融成形温度は、特に制限されないが、通常150〜
300℃の範囲である。次いでパリソンを使用し、金型
内でブロー成形を行うが、必要に応じて賦形するブロー
金型温度の影響による熱収縮を抑えるためエアーサーキ
ュレーションによるブロー・エアーの入れ替えを行って
も良い。また、場合によっては、ブロー成形以前に加熱
によりパリソンの口部を結晶化し、熱安定性を向上さ
せ、口部よりブローするエアーの洩れがなく、確実にブ
ローさせるのも良い。
【0078】ブロー成形によりふくらませる倍率として
は実際にふくらむパリソン部分のA(縦×横)寸法とブ
ロー成形した容器のB(縦×横)寸法の倍率比(ブロー
比)B/Aで換算すると1.4〜16倍の範囲で容器外
観、形状が良好であるが2〜16倍の範囲が更に好まし
い。このブロー成形時のパリソン温度は最終的に容器の
形状と透明性を良好に保つ為、乳酸系ポリマーのガラス
転移温度から結晶化温度未満の温度範囲が好ましい。
【0079】パリソンの温度が、用いる乳酸系ポリマー
のガラス転移点以下であれば、ブロー成形時にパリソン
は均一にふくらまず、容器は良好な形状にならない。ま
た、パリソンが乳酸系ポリマーの結晶化温度以上であれ
ば容器は白濁し、加えてパリソンは均一にふくらまず良
好な形状にならない。
【0080】乳酸系ポリマーのブロー成形は、本発明の
乳酸系ポリマー積層体が作製できれば他の成形方法で作
製しても差し支えない。例えば、押出ブロー法はチュー
ブ状のパリソンを押出しそれを容器にふくらませる。射
出・押出ブロー法は容器ネック部分になるパリソンの一
部を射出成形し、これを冷却後、胴部を押出成形しふく
らませる。シートブロー法はスリットダイを使用してシ
ート状に押出して成形する。
【0081】ここで得られた乳酸系ポリマーから成る容
器は飲料、薬品、化粧品等各分野の液状物の容器として
応用できる。前述の射出成形あるいはブロー成形時の際
も乳酸系ポリマーは吸湿性が高く、加水分解性が強いた
め水分管理が必要である。一般的な単軸押出機を用いて
射出あるいは押出成形する場合には、成形前にこのポリ
マーを真空乾燥器あるいは除湿乾燥機等により除湿乾燥
することが好ましい。
【0082】尚、本発明で言うガラス転移温度、結晶化
温度、融点はそれぞれJIS−K−7121に規定され
るTig、Tpc、Tpmである。また、分解性試験方法とし
て、ATLAS社製の耐候性試験装置UVCONによる
環境負荷試験を行った。耐候性試験装置UVCONによ
る環境負荷試験結果を土中の埋設試験結果と比較する
と、土中の埋設試験結果は土中の条件により変わると考
えられるが、分解促進剤を添加しない、残留ラクタイド
が0%のポリ乳酸の分子量半減期は土中では3年程度で
あるが、UVCONによる環境負荷試験では23日であ
る。
【0083】またポリマーの分解の程度は、GPC法で
の分子量測定により分子量の低下を測定することで知る
ことができる。本発明では、乳酸系ポリマーの分子量が
環境負荷試験前の半分になる期間、つまり半減期を知る
ことで分解の速度を測る尺度とした。フィルムあるいは
シート、又はそれらを成形した包装袋あるいは軽量容器
等の成形品、更には射出成形容器、ブロー成形容器の短
期間使用され廃棄されるワン・ウェイと言われる成型品
には分子量の半減期が短いものが好ましい。
【0084】本発明で得られるシート、フィルムに関す
る乳酸系ポリマー積層体は、ラクタイド等の分解促進剤
を含有することにより、生分解速度が促進された、且
つ、熱加工性の良好な、農業用、土木用更には各種の食
品、飲料、薬品、雑貨等の包装または熱成形してなる成
型物、包装袋或いは軽量容器等に好適に使用できる。
【0085】
【実施例】本発明を実施例により詳細に説明するが、本
発明はこれらの範囲に限定されるものではない。初めに
本発明に用いた乳酸系ポリマーの作製例を示す。
【0086】(分解性試験方法)ATLAS社製の耐候
性試験装置UVCONでの暴露試験により実施例で得ら
れた成形物の重量平均分子量が暴露試験前の半分になる
半減期を確認した。分子量の測定は東ソー社製のGPC
を使用して行った。UNCONによる試験条件は紫外線
サイクル温度が60℃、湿潤サイクル温度が40℃。そ
れぞれのサイクルは4時間毎に繰り返す条件で行った。
【0087】(参考例1)乳酸系ポリマーP1の作製 脂肪族ポリエステル(重量平均分子量:2.4万(ポリ
スチレン換算)、セバシン酸50モル%、プロピレング
リコール50モル%)5重量部にラクタイド(L−ラク
タイド99モル%、D−ラクタイド1モル%)95重量
部とを加えて、不活性ガスで雰囲気を置換し、170℃
で1時間混合させ、エステル化触媒としてオクタン酸錫
を0.02部加えて8時間反応を行った。
【0088】重合反応終了後、失活剤として酸性リン酸
エステル0.04重量部を加え、更に1軸押出機で加
熱、減圧下で脱揮を行った。脱揮の条件は脱揮時間が1
20秒、温度は200℃、減圧度は5Torrであっ
た。得られた乳酸系ポリマーは無色透明な樹脂で、重量
平均分子量はGPCの測定結果から20.3万、ラクタ
イド等の残留モノマー分は0%であった。ガラス転移温
度(Tg)は55℃、結晶化温度(Tc)は108℃、
融点(Tm)は168℃であった。この乳酸系ポリマー
をP1と称する。
【0089】(参考例2)乳酸系ポリマーP2の作製 L−ラクタイドを不活性ガス雰囲気中、温度185℃の
条件下で1時間攪拌後、エステル化触媒としてオクタン
酸錫を0.02重量部加えて8時間反応を行った。この
後、失活剤として酸性リン酸エステル0.04重量部を
加え混練した。更に1軸押出機で加熱、減圧下で脱揮を
行った。脱揮の条件は脱揮時間が120秒、温度は20
0℃、減圧度は5Torrである。得られたポリ乳酸は
無色透明な樹脂で、GPCの測定結果から重量平均分子
量は25.2万、ラクタイド等の残留モノマー分は0%
であった。ガラス転移温度(Tg)は59℃、結晶化温
度(Tc)は110℃、融点(Tm)は176℃であっ
た。この乳酸系ポリマーをP2と称する。
【0090】(参考例3)乳酸系ポリマーP3の作製 脂肪族ポリエステル(重量平均分子量:3.5万(ポリ
スチレン換算)、セバシン酸50モル%、1,6ヘキサ
ンジオール50モル%)20重量部にラクタイド(L−
ラクタイド97モル%、D−ラクタイド3モル%)80
重量部とを加えて、不活性ガスで雰囲気を置換し、17
0℃で1時間混合させ、エステル化触媒としてオクタン
酸錫0.02重量部を加えて8時間反応を行った。この
後、失活剤として酸性リン酸エステル0.04重量部を
加え混練した。更に1軸押出機で加熱、減圧下で脱揮を
行った。脱揮の条件は脱揮時間が120秒、温度は20
0℃、減圧度は5Torrであった。得られた乳酸系ポ
リマーは無色透明な樹脂で、GPCの測定結果からラク
タイド等の残留モノマー分は0%であった。重量平均分
子量は11.3万、ガラス転移温度(Tg)は49℃、
結晶化温度(Tc)は93℃、融点(Tm)は162℃
であった。この乳酸系ポリマーをP3と称する。
【0091】(参考例4)乳酸系ポリマーP4の作製 脂肪族ポリエステル(重量平均分子量:3.4万(ポリ
スチレン換算)、セバシン酸50モル%、エチレングリ
コール25モル%、1,6ヘキサンジオール25モル
%)40重量部にラクタイド(L−ラクタイド97モル
%、D−ラクタイド3モル%)60重量部とを加えて、
不活性ガスで雰囲気を置換し、165℃で1時間混合さ
せ、エステル化触媒としてオクタン酸錫0.02重量部
を加えて8時間反応を行った。この後、失活剤として酸
性リン酸エステル0.04重量部を加え混練した。
【0092】更に反応終了後、溶剤にテトラヒドロフラ
ンを使用し、貧溶剤にメタノールを使用して再沈法を行
った。得られた乳酸系ポリマーは無色透明な樹脂で、G
PCの結果から重量平均分子量は10.2万、ラクタイ
ド等の残留分は0%(測定限界以下)であった。ガラス
転移温度(Tg)は51℃、結晶化温度(Tc)は73
℃、融点(Tm)は162℃であった。この乳酸系ポリ
マーをP4と称する。ガラス転移温度(Tg)、結晶化
温度(Tc)、融点(Tm)はJIS−K−7121に
規定されるTig、Tpc、Tpmであり昇温速度は10℃/
分で行った。
【0093】(実施例1〜10)表2及び表3に示す乳
酸系ポリマーと多層押出機(田辺プラスチック社製)を
使用し、乳酸系ポリマー(A)は押出成膜した際に表に
示す含有量になるように分解促進剤としてL−ラクタイ
ドを添加し、乳酸系ポリマー(B)は含有するラクタイ
ド量が押出成形した時に同表に示す値になるように厚み
100μmの2種3層の多層押出成膜を行い、ラクタイ
ドが冷却ロールに付着する様子と乳酸系ポリマー積層体
シート(成形物)の外観を観察した。
【0094】この時のラクタイド遮断層/基材層を表2
及び表3に示す。目視により、これら成膜品からの冷却
ロールへのラクタイドもしくは分解促進剤の付着を確認
した。表中の○印は付着がなく、成形加工が良好である
ことを、×印は付着又は堆積が生じ、成形加工が好まし
くないことを示す。成形物外観は成形物表面が平滑で特
に外観を損なっていないものは○。明らかに外観を損な
っているものを×とした。また、分解促進・制御に関す
る分子量半減期の測定結果を表2及び表3に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】(実施例11〜13)表4に示す乳酸系ポ
リマーを使用し、乳酸系ポリマー(A)は押出成膜した
時に同表に示す含有量になるように分解促進剤として実
施例11ではステアリン酸を実施例12ではアジピン酸
を実施例13ではテレフタル酸を添加し、乳酸系ポリマ
ー(B)は含有するラクタイド量が押出成形した時に同
表に示す値になるように厚み100μmの2種3層の多
層押出成膜を行い、各分解促進剤が冷却ロールに付着す
る様子と乳酸系ポリマー積層体シート(成形物)の外観
を観察した。この時の遮断層/基材層を表4に示す。こ
れら成膜品からの冷却ロールへの分解促進剤の付着はな
く、成形物の外観は良好であった。また分解促進・制御
に関する分子量半減期の測定結果を表4に示す。多層押
出機は田辺プラスチック社製。
【0098】
【表4】
【0099】(実施例14)表5に示す乳酸系ポリマー
を使用し、乳酸系ポリマー(A)には押出成膜した時に
同表に示す含有量になるように分解促進剤としてL−ラ
クタイドを添加し、乳酸系ポリマー(B)は含有ラクタ
イド量が押出成形した時に同表に示す値になるように厚
み100μmの2種2層の積層体の多層押出成膜を行
い、ラクタイドが冷却ロールに付着する様子と乳酸系ポ
リマー積層体シート(成形物)の外観を観察した。この
時、乳酸系ポリマー(B)からなる遮断層は賦形する冷
却ロール側になるようにした。ラクタイド遮断層/基材
層を表5に示す。この成膜品からの冷却ロールへのラク
タイドの付着はく、成形物の外観は良好であった。結果
を表5に示す。エアナイフ付きの多層押出機は田辺プラ
スチック社製。
【0100】(実施例15)(包装用袋の作成) 表5に示す乳酸系ポリマーを使用し、乳酸系ポリマー
(A)は押出成膜した時に同表に示す含有量になるよう
に分解促進剤としてL−ラクタイドを添加し、乳酸系ポ
リマー(B)はラクタイド等の残留モノマー量が押出成
形した時に表5に示す値になるように厚み35μmの2
種3層の積層体の多層押出成膜を行い、ラクタイドが冷
却ロールに付着する様子と乳酸系ポリマー積層体フィル
ム(成形物)の外観を観察した。この時のラクタイド遮断
層/基材層を表5に示す。これら成膜品からの冷却ロー
ルへのラクタイドの付着はなく、成形物の外観は良好で
あった。
【0101】得られた積層フィルムの一端を折り返し、
包装袋の底部分を形成した。次に折り返し部分の両側を
ヒートシーラー(テスター産業製)を用い、ヒートシー
ルした一方が開放した20cm四方の包装袋を作製し
た。作製した包装袋の外観は良好であり。シールした二
方のシール強度も良好であった。シール条件:シールバ
ー温度90℃、シール圧2kgf/cm2、シール時間1秒
(使用したシルバー寸法は10×300mm)。実施例
1〜10の方法と同様に厚み35μmの積層フィルムの
半減期を確認した。結果を表5に示す。多層押出機は田
辺プラスチック社製。
【0102】(実施例16)(真空成形品の作成) 表5に示す乳酸系ポリマーと多層押出機(田辺プラスチ
ック社製)を使用し、乳酸系ポリマー(A)は押出成膜
した時に同表に示す含有量になるように分解促進剤とし
てL−ラクタイドを添加し、乳酸系ポリマー(B)は含
有するラクタイド量が押出成形した時に表5に示す値に
なるように厚み200μmの2種3層の多層押出成膜を
行い、ラクタイドが冷却ロールに付着する様子と乳酸系
ポリマー積層体フィルム(成形物)の外観を観察した。こ
の時のラクタイド遮断層/基材層を表5に示す。この成
膜品からの冷却ロールへのラクタイドの付着はなく、成
形物の外観は良好であった。
【0103】実施例1〜10の方法と同様にして得られ
た200μmの積層シートの半減期を確認した。結果を
表5に示す。作製したシートは絞り比が0.2(雌型)
の金型にて真空成形を行い軽量容器に成形した。この
時、賦形する金型へのラクタイドの付着はなく、成形し
た容器の透明性と外観は良好であった。 真空成形条件:ヒーター温度400℃。加熱時間10
秒。金型温度80℃。成形時間30秒。
【0104】(実施例17)(射出成形品の作成) 表5に示す乳酸系ポリマーを使用し、射出成形後に乳酸
系ポリマー(B)からなる遮断層(スキン層)の含有す
るラクタイド量が表5に示す値になるように調整し、ま
た乳酸系ポリマー(A)からなる基材層(コア層)のL
−ラクタイ量が表5に示す値になるように30cm3容量
の箱型容器をサンドイッチ成形法により射出成形した。
遮断層/基材層の厚みの比は各部の平均で0.1。この
時、射出温度は250〜270℃。容器作製による金型
へのラクタイドの付着はなく容器外観は良好であった。
射出成形のフラット部分の一部を切除し、その部分を実
施例1〜10の方法と同様に半減期を確認した。結果を
表5に示す。
【0105】(実施例18)(ブロー延伸成形品の作
成) 表5に示す乳酸系ポリマーを使用し、射出成形後に乳酸
系ポリマー(B)からなるラクタイド遮断層(スキン
層)のラクタイド含有量が表5に示す値になるように、
乳酸系ポリマー(A)からなる基材層(コア層)のラク
タイド(分解促進剤)含有量が表5に示す含有量になる
ように500mlビン用パリソンを共射出成形法により射
出成形した。遮断層/基材層の厚みの比は各部の平均で
0.1。
【0106】この時、射出温度は250〜270℃。射
出成形後、パリソンを遠赤外線ヒーターで均一に加熱
し、延伸ブロー成形機にて一般にボトルと呼ばれる液状
用容器に成形した。その倍率(ブロー比)は6。ブロー
圧は10kg/cm2。ブロー成形時のパリソン温度は80
℃、金型温度は80℃、ブロー時間は30秒である。パ
リソン温度の測定はサーモグラフを使用した。ボトル作
製時の射出成形、延伸ブロー成形共に金型へのラクタイ
ドの付着はなく成形品の外観は良好であった。成形した
ボトルの一部を切除し、その部分を実施例1〜10の方
法と同様に半減期を確認した。結果を表5に示す。
【0107】
【表5】
【0108】(比較例1〜3)表6に示す乳酸系ポリマ
ーは押出機(田辺プラスチック社製)を使用して分解促
進剤としてL−ラクタイド含有量が表6に示す様な値に
なるように添加しながら押出成形を行い、ラクタイドが
冷却ロールに付着する様子を観察した。結果を表6に示
す。これら比較例1〜3は冷却ロールへのラクタイドの
付着が生じ、成形物の表面が曇り、外観を損ねた。ま
た、成形物表面にベタツキを生じた。
【0109】(比較例4及び5)表7に示す乳酸系ポリ
マーを使用し、乳酸系ポリマー(A)は押出成膜した時
に同表に示す含有量になるように分解促進剤としてL−
ラクタイドを添加し、乳酸系ポリマー(B)はラクタイ
ド等の残留モノマー量が押出成形した時に同表に示す値
になるように厚み100μmの2種3層の積層体の多層
押出成膜を行い、ラクタイドが冷却ロールに付着する様
子とを観察した。結果を表7に示す。また、遮断層/基
材層の厚み比を表7に示す。多層押出機は田辺プラスチ
ック社製。
【0110】実施例1〜10の方法と同様に得られた1
00μmの積層シートの半減期を確認した。結果を表7
に示す。比較例4は比較例6とあまり変わらない半減期
であった。比較例5は比較例6に比較して半減期が短く
なったが、多層押出機による遮断層と基材層の積層時
に、両者の熱流動特性差によるものと考えられる乳酸系
ポリマー積層体フィルム面に波状の不良現象が強く発生
し、フィルム外観を損なった。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】(比較例6)表7に示す乳酸系ポリマーを
用いて押出機(田辺プラスチック社製)にて厚み100
μmシートの押出成膜を行った。押出シート内の含有ラ
クタイド量を同表に示す。この時、ラクタイドが冷却ロ
ールに付着する様子を観察した。結果を表7に示す。分
解性に関しては実施例1〜10の方法と同様に得られた
100μmシートの半減期を確認した。結果を表7に示
す。
【0114】
【表8】
【0115】これらの結果から、本発明の積層体からな
るフィルム、又は成形物は、成形加工工程での機械への
付着、堆積等の問題がなく、且つ分解促進剤を含有しな
い乳酸系ポリマーのみから成るフィルムより短い半減期
を示し、更に基材層に添加する分解促進剤の量により異
なる半減期を示し、分解の促進・制御が可能であること
が判る。
【0116】
【発明の効果】本発明は、成形加工工程や成形物の貯蔵
中のラクタイドの漏出を抑制し、且つ分解速度を増加せ
しめた乳酸系ポリマー積層体、及び該積層体から成る成
形物を用いることにより、農業用、又は土木用フィル
ム、シート及び各種の食品、飲料、薬品、雑貨等の包装
または収納に有用な、生分解性が促進、制御された乳酸
系ポリマーからなる積層体、該積層体から成る成形物、
特に、フィルム又はシート、及びこれらを熱成形してな
る包装用袋、軽量容器、射出成形容器、ブロー成形容器
等の成形物を提供できる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラクタイド及び/又は有機酸から成る分
    解促進剤を0.3〜7重量%含む乳酸系ポリマー(A)
    から成る基材層(I)の片面又は両面に、含有ラクタイ
    ド量が0.1重量%以下である乳酸系ポリマー(B)か
    ら成る分解促進剤の漏出遮断層(II)を、基材層の厚み
    1に対して0.02〜1になるように積層した乳酸系ポ
    リマー積層体。
  2. 【請求項2】 乳酸系ポリマー(A)及び/又は乳酸系
    ポリマー(B)が、ジカルボン酸とジオールとを脱水縮
    合したポリエステル構造単位、及び/又はジカルボン酸
    とポリエーテルポリオールとを脱水縮合したポリエーテ
    ル構造単位を3〜60重量%含む乳酸系ポリマーである
    ことを特徴とする請求項1に記載の乳酸系ポリマー積層
    体。
  3. 【請求項3】 乳酸系ポリマー(A)及び/又は(B)
    がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の乳
    酸系ポリマー積層体。
  4. 【請求項4】 乳酸系ポリマー(B)が、該ポリマー重
    合後に重合触媒の失活剤により重合触媒を失活させる
    か、及び/又は、脱揮処理、及び/又は再沈処理により
    残留モノマーを低減させた乳酸系ポリマーから成ること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の乳酸
    系ポリマー積層体。
  5. 【請求項5】 乳酸系ポリマー(A)が、乳酸系ポリマ
    ーの成形時にラクタイド及び/又は有機酸から成る分解
    促進剤を添加したものであることを特徴とする請求項1
    〜3のいずれか一つに記載の乳酸系ポリマー積層体。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1つに記載の乳
    酸系ポリマー積層体から成る成形物。
  7. 【請求項7】 成形物がフィルム、又はシートであるこ
    とを特徴とする請求項6に記載の成形物。
  8. 【請求項8】 成型物が射出成形法、又はブロー成形法
    により成形された成型物であることを特徴とする請求項
    6に記載の成形物。
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