JP2000109736A - 水性インク組成物およびその製造方法 - Google Patents

水性インク組成物およびその製造方法

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JP2000109736A
JP2000109736A JP10300390A JP30039098A JP2000109736A JP 2000109736 A JP2000109736 A JP 2000109736A JP 10300390 A JP10300390 A JP 10300390A JP 30039098 A JP30039098 A JP 30039098A JP 2000109736 A JP2000109736 A JP 2000109736A
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aqueous ink
dye
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Yoshihiro Inaba
義弘 稲葉
Tadayoshi Ozaki
忠義 尾崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い着色力を有し、耐水性が高く、貯蔵安定
性が良好で、滲みを生じない水性インク組成物を提供す
る。 【解決手段】 染色された樹脂粒子が水性媒体中に分散
してなる水性インクにおいて、前記樹脂粒子が、カチオ
ン性モノマーと非極性ビニルモノマーとを共重合体成分
として含み、アニオン染料で染色されており、染色後の
前記樹脂粒子の前記水性媒体に対する比重の比が1±
0.05以内である。また、染色された樹脂粒子が水性
媒体中に分散してなる水性インクにおいて、前記樹脂粒
子が、カチオン性モノマーと非極性ビニルモノマーとを
共重合体成分として含み、分子内にアニオン性基を二つ
以上有する染料で染色する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印刷インクに好適
な水性インク組成物およびその製造方法に関する。さら
に詳しく言うと、本発明は、微小なインク液滴を吐出
し、紙などの記録媒体に付着させるインクジェット記録
方式に好適な水性インク組成物およびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、インクジェット用インクは、水性
染料を水に溶解したインクが使用されている。しかし、
このタイプのインクは用紙内部へのインクの滲み(フェ
ザリング)、インクの裏抜けが生じやすいという欠点を
有しており、同欠点を解消するために、着色粒子を分散
させたインクを用いる方法が提案されている。
【0003】たとえば、特開昭55−139471号公
報および特開平3−250069号公報には、染料とし
て、分散染料あるいは油溶性染料を含浸させた水不溶性
ビニルポリマーラテックスからなるインクジェット記録
用インク組成物が開示されている。しかしながら、油溶
性染料や分散染料は、元来、アセテート繊維、ポリエス
テル繊維、ナイロン繊維用の染料であり、スチレン系樹
脂や、アクリル酸エステル系樹脂に対しては染色性が不
十分で、十分な着色量を得ようとすると、染色温度を樹
脂粒子のガラス転移点よりも高くしなければならない。
ところが、染色温度を樹脂粒子のガラス転移点よりも高
くすると、樹脂粒子が相互に融着して凝集物を形成し、
粒子の粒度分布を崩してしまうという欠点があった。さ
らに、油溶性染料や分散染料は、染浴に分散させて使用
するため、分散装置を必要とし、製造工程が煩雑である
という欠点があった。また、使用した分散剤が粒子に残
存して、性能を劣化させるという欠点もあった。また、
分散染料は、色彩が暗く、鮮明な色調に欠けるという問
題があった。
【0004】また、特開平4−7367号公報には、メ
タクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリ
ロニトリル、アクリル酸の乳化共重合体を染料で染色し
てなるインク組成物が開示されている。このインク組成
物においては、メタクリル酸グリシジルとメタクリロニ
トリルが被染色成分として働き、十分な着色量をもった
粒子が得られているが、メタクリロニトリルは、劇物に
指定されている化学物質であり、毒性が極めて高く、安
全性に問題がある。
【0005】また、特開昭59−30873号公報に
は、特定の染料カップリング成分を有する重合性単量体
を他の単量体とともに共重合させて得られたラテックス
に、p−フェニレンジアミン系化合物をカップリング反
応させ、色素化させた粒子からなるインクジェット記録
用インク組成物が開示されている。しかしながら、この
インク組成物の製造は、染料カップリング成分を有する
重合性単量体を合成するために多段の化学反応を必要と
し、さらに、単量体を重合した後、p−フェニレンジア
ミン系化合物をカップリング反応させ色素化させなけれ
ばならないので、製造工程が煩雑となり、コスト的に高
いものになり、実用的ではない。
【0006】また、特開平7−258591号公報、特
開平7−268254号公報、特開平7−268257
号公報および特開平7−268260号公報には、特定
のポリエステル樹脂に、特定の油溶性染料を含有させ、
水中に分散させてなるインクジェット記録用インク組成
物が開示されている。ポリエステル樹脂は油溶性染料に
より十分な着色濃度を得ることが可能であるが、一般に
高比重であり、貯蔵安定性が悪いという欠点を有する。
また、この着色樹脂粒子分散物は、別途合成したポリエ
ステル樹脂に染料を混合し染色した後、水中に分散させ
て作製するため、得られた樹脂粒子の粒度分布が広いと
いう欠点も有している。さらに、水への分散性は、樹脂
の化学構造と含有された染料の化学構造に依存してお
り、樹脂物性あるいはインク物性を変化させずに、分散
性を維持したままで粒径をコントロールすることは容易
ではなかった。
【0007】また、特開平9−53038号公報には、
比重の低い特定のポリエステル樹脂に油溶性染料を含有
させ、水中に分散させてなるインクジェット記録用イン
ク組成物が開示されている。ポリエステル樹脂の十分な
着色濃度を維持しつつ、低比重化を図って、貯蔵安定性
を改良したものであるが、別途合成したポリエステル樹
脂に染料を混合した後、水中に分散させて作製するた
め、前記したように、得られる樹脂粒子の粒度分布が広
いという欠点や、粒径をコントロールすることが困難で
あるという欠点を有していた。
【0008】さらに、特開平5−255567号公報に
は、共役ジエン系単量体を乳化重合してなる種粒子に、
シアノ基、カルボキシル基、グリシジル基を有するエチ
レン性不飽和単量体を加えて乳化重合してなる乳化重合
体粒子を染料で着色した着色樹脂の水分散体が開示され
ている。これは、共役ジエン系単量体を使用することで
粒子比重を低下させて貯蔵安定性を向上させたものであ
るが、共役ジエン系単量体は染色性に乏しく、十分な染
色量を得るために共重合させるシアノ基を有するエチレ
ン性不飽和単量体は、劇物に指定されている化学物質
で、毒性が極めて高く、安全性に問題がある。さらに、
二段階の重合を必要とするので、製造工程が煩雑とな
り、コスト的に不利であった。
【0009】一方、特開昭60−18559号公報に
は、粒子表面にアニオン性基を持つポリマーエマルジョ
ンをカチオン染料を用いて着色する方法が開示されてい
る。しかしながら、粒子表面のアニオン性基はカチオン
染料と結合する染色部位であると同時に、粒子の分散安
定性に寄与するものである。カチオン性染料は分子内に
カチオン性基を一つしか持たないものがほとんどであ
り、染色によってラテックス表面のアニオン性基が消失
するため分散安定性は低下する。そのため、アニオン性
エマルジョンをカチオン染料で染色する場合、着色粒子
が安定に分散するためには着色濃度を高くすることがで
きないという問題があった。カチオン性基を複数持つ染
料を利用することによって分散安定性を確保することも
できるが、染料の種類が少なく、色数が制限されるとい
う問題がある。さらに、同公報には、染色において10
0℃程度の加熱を1時間行う旨記載されているが、ポリ
マーのガラス転移点以上の加熱によって粒子の融着が発
生するという問題があった。また、染色工程において、
酸を添加する旨記載されているが、そのままでは皮膚接
触時の危険性や紙等の受像媒体への損傷等の問題があ
る。中和によって危険性を無くすこともできるが、工程
を増やすことになり、コスト的に高いものになるという
問題もあった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、上記従来技術の課題を解決し、高い着色力を有し、
耐水性が高く、貯蔵安定性が良好で、滲みや裏抜けを生
じない水性インク組成物を提供することにある。本発明
の他の目的は、劇物に指定されていないモノマーを使用
し、かつ十分な着色量を有する染色樹脂粒子を分散させ
た水性インク組成物を製造する方法を提供することにあ
る。本発明の他の目的は、特殊な装置を必要とせず、工
程も単純であって、しかも染色樹脂粒子の粒径分布を容
易に制御できる低コストのインク製造方法を提供するこ
とにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
を重ねた結果、染色された樹脂粒子が水性媒体中に分散
してなる水性インク組成物において、カチオン性モノマ
ーと非極性ビニルポリマーとを共重合して得られる樹脂
粒子を、アニオン染料で染色し、染色後の樹脂粒子の水
性媒体中に対する比重の比を1±0.05以内とするこ
とにより、上記課題を解決することができることを見出
し、本発明を完成させた。また、本発明者らは、カチオ
ン性モノマーと非極性ビニルモノマーとを乳化重合する
ことにより得られるカチオン性ラテックスポリマーを、
分子内にアニオン性基を2つ以上有するアニオン染料で
染色することによって、上記課題を解決することができ
ることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】すなわち、本発明は、染色された樹脂粒子
が水性媒体中に分散してなる水性インクにおいて、前記
樹脂粒子が、カチオン性モノマーと非極性ビニルモノマ
ーとを共重合体成分として含む樹脂粒子であって、アニ
オン染料で染色されており、染色後の前記樹脂粒子の前
記水性媒体に対する比重の比が、1±0.05以内であ
ることを特徴とする水性インク組成物、カチオン性モノ
マーと非極性ビニルモノマーとをソープフリーで乳化重
合せしめ、得られた樹脂粒子をアニオン染料で染色する
ことを特徴とする前記水性インク組成物の製造方法、カ
チオン性モノマーと非極性ビニルモノマーとを、無機塩
の存在下に重合せしめ、得られた樹脂粒子をアニオン染
料で染色することを特徴とする請求項1記載の水性イン
ク組成物の製造方法、樹脂粒子をアニオン染料で染色す
る際に、ノニオン性界面活性剤を共存させることを特徴
とする前記水性インク組成物の製造方法。染色された樹
脂粒子が水性媒体中に分散してなる水性インクにおい
て、前記樹脂粒子が、カチオン性モノマーと非極性ビニ
ルモノマーとを共重合体成分として含む樹脂粒子であっ
て、分子内にアニオン性基を二つ以上有する染料で染色
されていることを特徴とする水性インク組成物、カチオ
ン性モノマーが、下記構造式
【0013】
【化3】
【0014】(式中、R1は、水素原子またはメチル基
を示し、R2、R3 4は、炭素数1〜10のアルキル基
またはアラルキル基を示し、R2およびR3は、末端同士
が結合して一つの環を形成していてもよく、nは、1〜
6の整数を示し、X-はハロゲンイオンまたは構造中に
−COO-基、または−SO3 -基を有するアニオンを示
し、Yは−COO−基または−CONR5−基(式中、
5は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示
す)を示す)で示される4級化アンモニウム塩基含有化
合物であることを特徴とする前記水性インク組成物、カ
チオン性ビニルモノマーと非極性ビニルモノマーとを、
下式構造式
【0015】
【化4】
【0016】(式中、R1、R2は、水素、メチル基また
はメチロール基を示す。)で示されるノニオン性の水溶
性重合開始剤を用いて共重合せしめ、得られたカチオン
性ラテックスポリマーを、ノニオン性界面活性剤の存在
下で、アニオン性基を二つ以上有するアニオン染料を用
いて染色することを特徴とする前記水性インク組成物の
製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】(第1の発明)以下、本発明の第
1の発明について説明する。本発明の水性インク組成物
は、染料によって着色された樹脂粒子が水性媒体中に分
散している水性インクにおいて、前記樹脂粒子が、カチ
オン性モノマーとアルキルスチレン単量体とを少なくと
も共重合体成分として含む樹脂粒子であって、アニオン
染料で染色され、染色後の前記樹脂粒子の前記水性媒体
に対する比重の比が1±5%以内であることを特徴とす
るものである。本発明において使用することができるカ
チオン性モノマーは、下記構造式
【0018】
【化5】
【0019】(式中、R1は、水素原子またはメチル基
を示し、R2、R3 4は、炭素数1〜10のアルキル基
またはアラルキル基を示し、R2およびR3は、末端同士
が結合して一つの環を形成していてもよく、nは、1〜
6の整数を示し、X-はハロゲンイオンまたは構造中に
−COO-基,または−SO3 -基を有するアニオンを示
し、Yは−COO−基または−CONR5−基(式中、
5は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示
す)を示す)で示される4級化アンモニウム塩基含有化
合物であることが好ましい。
【0020】上記式中、特に、R1は、水素原子または
メチル基が好ましく、R2、R3、R4は、メチル基、ブ
チル基またはベンジル基が好ましく、nは、2〜8が好
ましく、X-は、塩素イオン、臭素イオン、スルホン酸
イオンまたはアルキル硫酸イオンが好ましく、Yは−C
OO−または−CONH−が好ましい。
【0021】上記の4級化アンモニウム塩基含有化合物
としては、(メタ)アクリル酸エステルの四級アンモニウ
ム塩が好ましく、具体的には、ジメチルアミノエチルア
クリレート、ジメチルアミノメタクリレート、ジエチル
アミノエチルアクリレート、ジエチルアミノメタクリレ
ート等をメチルクロライド、エチルクロライド、ベンジ
ルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、
ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、クロル酢酸メチル等の四
級化剤で四級化反応して得られる化合物である。
【0022】これらのカチオン性モノマーは、1種を単
独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。ま
た、全モノマー中のカチオン性モノマーの割合は、1〜
70モル%とすることが好ましく、5〜60モル%がよ
り好ましい。1モル%より少ないと分散安定性と十分な
染色性が得られず、70モル%を超えると単分散の粒子
を得ることができない。
【0023】また、本発明において共重合成分として用
いられる非極性ビニルモノマーとしては、エチレン性不
飽和モノマーであることが好ましい。エチレン性不飽和
モノマーとしては、アクリル酸エステル類、メタクリル
酸エステル類、スチレン類等が挙げられる。
【0024】アクリル酸エステルとしては、例えば、メ
チルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピル
アクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル
アクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルア
クリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレー
ト、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリ
レート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−クロ
ロエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロ
ヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリ
レート、フェニルアクリレート、2−メトキシエチルア
クリレート、2−エトキシエチルアクリレート等を挙げ
ることができる。
【0025】メタクリル酸エステルとしては、例えば、
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロ
ピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-
ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、se
c-ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキ
シルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、
ベンジルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタ
クリレート、クロロベンジルメタクリレート、オクチル
メタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒ
ドロブチルアクリレート、フェニルメタクリレート、ジ
エチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0026】スチレン類としては、アルキルスチレンが
好ましく、例えば、メチルスチレン、エチルスチレン、
プロピルスチレン、p-t-ブチルスチレンを挙げることが
できる。
【0027】これらの非極性モノマーの中でも、重合後
の水性媒体との比重の比が1±0.05以内となるもの
であることが望ましく、この条件を満足させる非極性モ
ノマーを使用することによって、安定な染色性樹脂粒子
を得ることができる。非極性モノマーは1種を単独で使
用してもよいが、2種以上を混合して使用してもよい。
単独で使用する場合は、それから得られる重合体の水性
媒体との比重の比が1±0.05以下となるp−t−ブ
チルスチレンが好ましい。また、メチルスチレン、エチ
ルスチレンまたはプロピルスチレンを用いる場合は、p
−t−ブチルスチレンまたはブタジエンのように、それ
から得られるポリマーの水性媒体との比重の比が1±
0.05より小さくなるようなポリマーと適宜共重合さ
せて使用することもできる。
【0028】全モノマー中の非極性ビニルモノマーの割
合は、30〜99モル%とすることが好ましく、40〜
95モル%とすることがより好ましい。非極性ビニルモ
ノマーの割合が、30モル%より少ないと、粒子形成が
困難になり、99モル%を超えると、粒子の着色性・分
散安定性が低下する。
【0029】本発明において、カチオン性モノマーと非
極性モノマーから樹脂粒子を製造する方法としては、乳
化重合によって得る方法、乳化重合によって作製した樹
脂ラテックスを適当な粒径になるように凝集させて得る
方法、シード重合または分散重合によって得る方法、別
途合成した重合体を乾式粉砕して得る方法、前記重合体
を溶解しない液体中で粉砕するかまたはその液体中に乳
化して得る方法、均一に溶解させた重合体溶液に貧溶媒
を加えて析出させる方法等、公知の任意の方法を利用す
ることができる。
【0030】これらの中でも、乳化重合を利用する方法
は工程が簡単で、特殊な装置を必要としないので好まし
い。乳化重合を利用して染料定着性樹脂粒子を調製する
場合は、界面活性剤を使用せず、開始剤とカチオン性モ
ノマーによる乳化安定化作用を利用して重合する、いわ
ゆるソープフリー乳化重合により調製することもでき、
界面活性剤を添加して行う通常の乳化重合により調製す
ることもできる。
【0031】界面活性剤を添加する場合には、分散安定
性の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。ノニ
オン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレ
ンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイ
ルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンソ
ルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタ
ンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン
エステル類、ポリエチレングルコールモノラウレート、
ポリエチレングルコールモノステアレート、ポリエチレ
ングルコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂
肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブ
ロックコポリマー、フッ素系のノニオン性界面活性剤、
シリコーン系のノニオン性界面活性剤等を使用すること
ができる。なお、界面活性剤の使用量は、水性溶媒に対
して、0.01重量%〜5.0重量%が好ましく、0.1
重量%〜1.0重量%がより好ましい。また、樹脂粒子
の粒径をコントロールするためには、塩化ナトリウム、
塩化カルシウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩を添加
して重合することが好ましい。
【0032】なお、少なくともソープフリー乳化重合で
本発明の樹脂粒子を調製する場合には、得られる粒子
が、4級アンモニウム塩構造を有するポリマーをシェル
とし、ポリアルキルスチレンをコアとするコアシェル構
造を有していることが我々の研究により判明した。した
がって、ソープフリー乳化重合によれば、このコアシェ
ル構造によって、コアが高Tgのポリマーであってもシ
ェルの4級アンモニウム塩含有ポリマーが互いに融着す
ることによって、高い定着性が実現できるというメリッ
トがある。
【0033】乳化重合において使用される開始剤は、特
に限定されず、従来の水溶性開始剤を利用することがで
きる。例えば、過酸化物系水溶性開始剤およびアゾ系水
溶性開始剤のいずれも用いることができる。過酸化物系
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カ
リウム、過酸化水素等を例示することができ、アゾ系水
溶性剤としては、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒド
ロキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]二
塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)
二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリ
ン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビ
ス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、
4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等を例示する
ことができる。
【0034】これらの中でも、ソープフリー乳化重合で
樹脂粒子を調製する場合は、分散安定性の観点から、
2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキ
シエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス
{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチ
ル)−2−ヒドロキシエチル]−プロピオンアミド}の
ようなアゾアミド化合物を用いることが好ましい。これ
らの開始剤は、そのままで、あるいは水または水性溶媒
に溶解させて、反応系に投入して用いることができる。
このような開始剤の使用量は、全モノマーに対して、
0.1重量%〜10重量%が好ましく、0.5重量%〜
5.0重量%がより好ましい。
【0035】なお、樹脂粒子をアニオン染料で染色する
際には、上記のノニオン性界面活性剤を共存させると染
色速度が速くなるので好ましい。この場合の添加量は、
染色浴全量に対し0.01重量%〜10重量%とするこ
とが好ましく、0.1重量%〜1.0重量%とすることが
より好ましい。
【0036】染色に使用するアニオン染料は分子中に、
スルホン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、などの
酸性基を有し、主にスルホン酸またはカルボン酸のアル
カリ塩構造を有する水溶性の染料である。このようなア
ニオン染料の例としては、アマランス、ボルドーS、ニ
ューコクシン、サンセットイエロー等のモノアゾ系アニ
オン染料、ダイレクトファストイエロー、ナフトールブ
ラッック、スプラノールレッド、ポーラーブリリアント
レッド、ポーラーイエロー等のジスアゾ系アニオン染
料、ブリリアントブルー、ファストグリーン等のトリフ
ェニルメタン系アニオン染料、アリザリンダイレクトバ
イオレット、アリザリンシアニングリーン、アリザリン
ライトグレイ等のアントラキノン系アニオン染料、エリ
スロシン、フロキシン、酸性ローダミンなどのキサンテ
ン系アニオン染料、インジゴカルミンなどのインジゴ系
アニオン染料等が挙げられる。また、インクジェットイ
ンクに通常用いられているアニオン染料も使用すること
ができる。
【0037】アニオン染料による染色は、共重合反応が
終了した後、室温において染料水溶液を添加することに
より行なうことができるが、必要に応じて、ガラス転移
点以下の温度で加熱することも可能である。本発明によ
れば、染色に必要な時間は1分〜2時間で完了すること
ができる。染料の添加量は、カチオン性ラテックスの表
面に存在するカチオン性基と当量以上加えることによっ
て、粒子表面の一つのカチオン性基を一つ以上のアニオ
ン性基に変換することができる。これによって、着色粒
子の分散安定性を保持または向上させることができる。
しかしながら、アニオン染料を過剰に添加しすぎると、
水系分散媒に遊離する染料が生じるため好ましくない。
遊離の染料が存在する場合には、透析、限外ろ過等の従
来公知の分離法によって遊離の染料を除去することもで
きる。また、染料水溶液の濃度はカチオン性基との反応
から、比較的高濃度で行うのが好ましく、1〜50重量
%、さらに好ましくは5〜20重量%の範囲で添加すれ
ばよい。染料水溶液の濃度が1重量%未満となると、染
色速度が遅く、50重量%を超えると、遊離の染料が存
在することが多くなる。
【0038】本発明の水性インク組成物には、ノズルの
耐目詰まり性、保湿性および分散安定性等の効果を付与
するために、親水性高沸点低揮発性溶媒を添加すること
もできる。本発明において用いることができる親水性高
沸点低揮発性溶媒としては、グリセリン、エチレングリ
コール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、
ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ
プロピレングリコール等の高沸点低揮発性の多価アルコ
ール類や、それらのモノエーテル化物、ジエーテル化
物、エステル化物、例えばエチレングリコールモノメチ
ルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、
エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレング
リコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモ
ノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ
ーテル等が挙げられる。
【0039】また、本発明の水性インク組成物には、N
−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾ
リジノン、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエ
タノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、
ジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミ
ン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミ
ン等の含窒素有機溶剤等の水溶性有機溶剤を添加するこ
ともできる。
【0040】また、本発明の水性インク組成物における
水性媒体は、水を主媒体とするものであるが、さらに、
乾燥性や浸透性の向上のために、エタノール、1−プロ
パノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブ
タノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、等の
高揮発性の一価のアルコールを添加することもできる。
【0041】さらに、本発明のインク組成物の水性溶媒
には、定着性向上剤として水溶性高分子を溶解させて用
いることもできる。水溶性高分子の例としては、例え
ば、ポリエチレンオキサイド等のポリアルキルオキサイ
ド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポ
リビニルブチラール、アルカリ可溶型のアクリル酸系樹
脂、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、アラビ
アゴム、アルギン酸、メチルセルロース、カルボキシル
メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ
ビニルエーテル、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチ
レングリコール、αーシクロデキストリン、グルコー
ス、キシロース、スクロース、マルトース、アラビノー
ス、マルチトール、デンプン等の単糖類、二糖類、多糖
類、配糖体等が挙げられる。
【0042】本発明の水性インク組成物の製造方法は、
得られた樹脂粒子の染色に水溶性の染料を使用するの
で、染料を分散させるための特別の装置や工程を必要と
せず、製造工程が単純であるという特徴がある。さら
に、本発明の製造方法は、染色性官能基を有するモノマ
ーとして、毒性の高いメタクリロニトリルを使用せず、
カチオン性モノマー、例えば4級アンモニウム塩を有す
る(メタ)アクリル酸エステルモノマー等を使用するの
で、安全性が高いものである。さらに、無機塩の添加に
よって粒径をコントロールすることも可能である。
【0043】本発明の水性インク組成物の樹脂粒子は、
乳化重合、シード重合あるいは分散重合によって調製さ
れるので、粒度分布がきわめて狭い。さらに、あらかじ
め樹脂に導入した染色部位のカチオン部と、アニオン染
料のアニオン部がイオン結合で染色するので、樹脂自体
の染色性が高く、染色後の粒子は十分な着色量を有する
という特徴がある。さらに、染色性官能基を有するカチ
オン性モノマー、特にメタアクリル酸エステルモノマー
またはアクリル酸エステルモノマーと、非極性モノマ
ー、特にアルキルスチレンモノマーとを共重合体成分と
して含むので、比重が低く、各成分比を調節したり、特
に第3のモノマーを用いて共重合させることで、水性媒
体の比重と一致させることが可能である。
【0044】(本発明の第2の発明)以下、本発明の第
2の発明について説明する。本発明の水性インク組成物
は、染色された樹脂粒子が水性媒体中に分散してなる水
性インクにおいて、前記樹脂粒子が、カチオン性モノマ
ーと非極性ビニルモノマーとを共重合体成分として含む
樹脂粒子であって、分子内にアニオン性基を二つ以上有
する染料で染色されていることを特徴とするものであ
る。
【0045】第2の発明におけるカチオン性モノマーお
よび非極性モノマーとは、上記第1の発明において使用
するものと同じものを、同じ使用量で用いることができ
る。また、水性媒体およびその添加物等も第1の発明と
同様のものとすることが好ましい。
【0046】第2の発明における樹脂粒子は、カチオン
性モノマーと非極性モノマーとを、乳化重合して得られ
るが、その乳化重合の際に用いられる開始剤は、従来よ
り使用されている公知の水溶性開始剤を利用することが
できる、例えば、過酸化物系水溶性開始剤またはアゾ系
水溶性開始剤のいずれでもよいが、例えば、過酸化物系
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カ
リウム、過酸化水素等を例示することができ、アゾ系水
溶性剤としては、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒド
ロキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]二
塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)
二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリ
ン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビ
ス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、
4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等を例示する
ことができる。また、乳化重合はソープフリーで行なう
こともできるが、その場合は、分散安定性の観点から、
下記構造式
【0047】
【化6】
【0048】(式中、R1、R2は、水素、メチル基また
はメチロール基を示す。)で示されるアゾアミド化合物
を使用することが好ましい。このアゾアミド化合物の具
体例としては、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−
(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,
2’−アゾビス{2−メチル−N−[1、1−ビス(ヒ
ドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]−プロピオ
ンアミド}等が挙げられる。
【0049】また、第2の発明で使用する染料は、分散
安定性と染色性の観点から、スルホン基、ヒドロキシル
基、カルボキシル基等のアニオン性基を二つ以上持つア
ニオン性染料である。この条件を満たすものであれば、
「カラーインデックス」に記載されている水溶性の酸性
染料、直接染料、反応性染料、食用染料の中から任意の
染料を1または2以上選択して使用することができる。
【0050】分子内に一つしかアニオン性基を持たない
染料を用いる場合には、カチオン性基と結合することに
よってカチオン性基が減少するため、分散安定性が低下
し、粒子の凝集、沈降が発生する。これに対して、分子
内に二つ以上のアニオン性基を有する染料を用いた場合
には、一つのアニオン性基がカチオン性基と結合しても
残りのアニオン性基が存在するため、粒子の電荷は反転
し、カチオン性粒子がアニオン性着色粒子となって、分
散安定性が維持されるものと考えられる。特に、アニオ
ン性基が三つ以上持つ染料を用いた場合には、カチオン
性基と結合することによって、イオン性基の数が増大す
るため、かえって分散安定性が向上するという特徴を有
している。
【0051】なお、本発明の第2の発明におけるアニオ
ン染料による樹脂粒子の染色は、上記した第1の発明と
同様の方法により行なうことができる。
【0052】また、本発明において、分子内にカルボン
酸等の弱酸の官能基を有する染料による染色の場合は、
界面活性剤を使用することが好ましい。この場合、使用
することができる界面活性剤としては、ノニオン性界面
活性剤であれば何でもよく、例えば、ポリオキシエチレ
ンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンア
ルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステ
ル類、ポリオキシエチレンアルキルソルビタンエステル
類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、グリセリン
脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロ
ピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレ
ングリコール脂肪酸エステル類等などから任意に選ぶこ
とができる。
【0053】界面活性剤の添加量は、若干量でも効果が
あり、ラテックスポリマーに対して0〜10重量%が好
ましく、0〜5重量%がより好ましい。界面活性剤は、
重合後の染色時に添加しても、重合時に添加して、乳化
重合に用いる界面活性剤として用いることもできる。
【0054】本発明の第2の発明によるインク組成物に
は、第1の発明と同様に、親水性高沸点低揮発性溶媒、
水溶性有機溶剤、高揮発性の一価のアルコール、水溶性
高分子等を添加することができる。
【0055】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説
明する。 [本発明の第1の発明] (実施例1) ・樹脂粒子の合成例1 温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入管を備えた
500ml容の四つ口フラスコ中に、p-t-ブチルスチ
レン(以下、「TBS」と略記する。)52.5gおよび
塩化メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウム(以
下、「METMAC」と略記する)17gを入れ、イオ
ン交換水を加えて188gにした。このときの両モノマ
ーのモル比はTBS/ METMAC=80/20であ
る。次いで、フラスコの内容物を激しく攪拌しつつ、フ
ラスコ内を窒素置換した後、80℃まで加熱し、その温
度を保ちながら2,2’-アゾビス[2-メチル−N−
(2−ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド](VA−
086:和光純薬工業株式会社製)2%水溶液60gを
添加し、3時間共重合を行った。その後、反応液中の水
溶性不純物を限外濾過で除去し、本発明の樹脂粒子を得
た。得られた樹脂粒子の粒径を粒度分布計(LA−92
0:堀場製作所社製)を用いて測定したところ、0.1
5μmであった。
【0056】・樹脂粒子の染色例1 上記樹脂粒子の合成例1で得た染色性樹脂粒子にイオン
交換水を加え、20重量%濃度になるように調製した。
ここに、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを
0.1重量%濃度になるように加えた。この染色性樹脂
粒子分散液100g(固形分10%)に、ローズベンガ
ル0.8gを加えて撹拌した。染料は全て樹脂粒子に結合
し、濾液は透明であった。このようにして本発明の水性
インク組成物(M)を得た。得られた水性インク組成物
(M)の水性媒体に対する比重の比は、1であった。
【0057】(実施例2) ・樹脂粒子の合成例2 温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入管を備えた
500ml容の四つ口フラスコに、TBS52.5g、
METMAC17gおよび塩化ナトリウム20gを入
れ、イオン交換水を加えて188gにした。このときの
両モノマーのモル比はTBS/ METMAC=80/
20である。次いで、フラスコの内容物を激しく攪拌し
つつ、フラスコ内を窒素置換した後、80℃まで加熱
し、その温度を保ちながら2,2’-アゾビス[2-メチ
ル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミ
ド](VA−086:和光純薬工業株式会社製)2%水
溶液60gを添加し、3時間共重合を行った。その後、
反応液中の水溶性不純物を限外濾過で除去し、本発明の
樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の粒径を粒度分布計
(LA−920:堀場製作所社製)を用いて測定したと
ころ、0.5μmであった。
【0058】・樹脂粒子の染色例2 樹脂粒子の合成例1で得た樹脂粒子の代わりに合成例2
で得た染色性樹脂粒子を用い、ローズベンガルの代わり
にインジゴカルミン0.8gを用いたこと以外は、実施
例1と同様にして、本発明の水性インク組成物(C)を
得た。染料は全て樹脂粒子に結合し、濾液は透明であっ
た。得られた水性インク組成物(C)の水性媒体に対す
る比重の比は、1であった。
【0059】(比較例1)METMAC17gの代わり
にメタクリル酸エチル(以下、「EMA」と略記する)
17gを用いたこと以外は実施例2と同様にして樹脂粒
子を得て、次いで、実施例2と同様に染色を行い、水性
インク組成物を得た。得られた水性インク組成物の水性
媒体に対する比重の比は、1.1であった。
【0060】(比較例2)樹脂粒子を加えないこと以外
は、実施例1の染色例1と同様にして、水性インク組成
物(比較例2)を得た。得られた水性インク組成物の水
性媒体に対する比重の比は、1.1であった。
【0061】(比較例3)樹脂粒子を加えないこと以外
は、実施例2の染色例2同様にして、水性インク組成物
(比較例3)を得た。得られた水性インク組成物の水性
媒体に対する比重の比は、1.1であった。
【0062】(試験例1)実施例1、2および比較例1
〜3において得られた4種類のインクを用い、20℃、
60%RHの標準環境下において、インクジェットプリ
ンタ(MJ−800C:セイコ−エプソン社製)を用い
て、再生紙(R紙:富士ゼロックス社製)テスト印字を
行った。テスト印字部を25倍のルーペで観察し、ドッ
トの再現性と滲みを目視判定し、下記の評価基準に基づ
きそれぞれ画質を評価した。 ・評価基準 A:滲みがなく、ドット形状が良好なレベル。 B:滲みが少し認められるが、実用上問題はないレベ
ル。 C:滲みが目立ち、ドット形状が不良で実用上問題があ
るレベル。 また、印字部の裏抜け状態を目視判定し評価した。 さらに、インクを容器に密閉したまま、1ヶ月静置さ
せ、沈降状態を観察し保存性を評価した。これらの結果
を表1に示す。
【0063】
【表1】 表1 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 画質 裏抜け 保存性 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実施例1 B なし 沈殿物なし 実施例2 A なし 沈殿物なし 比較例1 C あり 80%が沈殿 比較例2 C あり 沈殿物なし 比較例3 C あり 沈殿物なし −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0064】表1に示される結果から明らかなように、
本発明の水性インク組成物(実施例1、2)を用いた場
合は、得られる画像に滲みがなく、画質が優れており、
印字部の裏抜けもなく、また保存性も優れていた。一
方、比較例1〜3の水性インク組成物は、インクの滲み
が目立ち、印字部の裏抜けがあり、さらに、比較例1の
インク組成物は、保存性にも劣るものであった。
【0065】[本発明の第2の発明] (実施例3) ・ラテックス樹脂粒子の合成例1 温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入管を備えた
500ml容の四つ口フラスコ中に、EMA35gおよ
びMETMAC16gを入れ、イオン交換水を加えて1
90gとした。このときのモノマーのモル比は、EMA
/ METMAC=80/20である。ついで、フラス
コの内容物を激しく攪拌しつつ、フラスコ内を窒素置換
した後、80℃まで加熱し、その温度を保ちながら、
2,2’-アゾビス[2-メチル−N−(2−ヒドロキシ
エチル)−プロピオンアミド](VA−086:和光純
薬工業株式会社製)2%水溶液60gを添加し、3時間
重合を行い、乳白色のラテックスを得た。ガスクロマト
グラフィーにより求めたラテックスポリマーの重合率は
99%だった。また、ラテックスポリマーの粒径を粒度
分布計(LA−920:堀場製作所社製)を用いて測定
したところ、0.16μmであった。このラテックス
(1)(固形物濃度20重量%)の限外ろ過を行い、水溶
性ホモポリマーを除去した。次いで、このラテックスを
一部取り出し、120℃で乾燥した後、赤外分光光度計
でラテックスポリマーの共重合比を求めるたところ、8
2/18であった。
【0066】・ラテックス樹脂粒子の染色例1 得られたラテックス(1)250gに、ノニオン性界面活
性剤(エマルゲン920:花王(株)製)25mgを加
えて十分に攪拌し、分散させた。次いで、分子内にアニ
オン性基を二つ有するローズベンガルの5%水溶液20
0gを加えて攪拌し、本発明の水性インク組成物を得
た。染色性を確認するために、5分後に限外ろ過を行っ
たところ、ろ液は無色透明で染料が完全に粒子表面に結
合していることが分かった。また、得られたインクを一
週間静置させておいたが、凝集物は発生しなかった。
【0067】(実施例4) ・ラテックス樹脂粒子の合成例2 EMA16gの代わりにアクリル酸ブチル37gを用
い、METMAC16gの代わりにMETMAC14g
(モノマー比80/20)を用いたこと以外は、実施例3
のラテックス粒子の合成例1と同様にして、粒径0.1
0μmのラテックス(2)を得た。また、実施例3と同
様の処理を行ない、乾燥した後、赤外分光法で共重合比
を求めるたところ、81/19であった。
【0068】・ラテックス粒子の染色例2 得られたラテックス(2)250gに対して、分子内に
アニオン性基を三つ有するアマランスの5%水溶液20
0gを加え、攪拌し本発明の水性インク組成物を得た。
実施例3と同様に5分後に限外ろ過を行ったところ、ろ
液は無色透明で、染料は粒子表面に完全に結合してい
た。また、得られたインクを一週間静置させたが、凝集
物は発生しなかった。
【0069】(実施例5)実施例4のラテックス樹脂粒
子の合成例2で得たラテックス(2)250gに対して、
分子内にアニオン性基を二つ有するダイレクトイエロー
144の5%水溶液200gを加え、攪拌し本発明の水
性インク組成物を得た。実施例3と同様に5分後に限外
ろ過を行ったところ、ろ液は無色透明で染料は粒子表面
に完全に結合していた。また、得られたインクを一週間
静置させたが、凝集物は発生しなかった。
【0070】(実施例6)実施例3のラッテクス樹脂粒
子の合成例1で得られたラテックス(1)250gに対し
て、分子内にアニオン性基を二つ有するインジゴカルミ
ンの5%水溶液200gを加え、攪拌し、本発明の水性
インク組成物を得た。実施例3と同様に5分後に限外ろ
過を行ったところ、ろ液は無色透明で染料は粒子表面に
完全に結合していた。また、得られたインクを一週間静
置させたが、凝集物は発生しなかった。
【0071】(比較例5)実施例3のラテックス樹脂粒
子の合成例1で得られたラテックス(1)250gに対
して、分子内にアニオン性基を一つ有するアシッドレッ
ド88の5%水溶液200gを加え、攪拌し、水性イン
ク組成物を得た。1時間後に限外ろ過を行なったとこ
ろ、ろ液は無色透明で染料は粒子表面に完全に結合して
いることが分かった。得られたインクを一晩放置する
と、凝集体が発生していた。
【0072】(比較例6)実施例4のラッテクス樹脂粒
子の合成例2で得られたラテックス(2)250gに対し
て、ノニオン性界面活性剤(エマルゲン909:花王
(株)製)25mgを加え、十分に攪拌した。次いで、
分子内にアニオン性基を一つ有するアシッドイエロー3
4の5%水溶液200gを加えて、水性インク組成物を
得た。1時間攪拌した後に限外ろ過を行ったところ、濃
赤色に着色したろ液が得られた。染料は粒子にほとんど
結合していないことが分かった。
【0073】(比較例7)ローズベンガル10gをイオ
ン交換水190gに入れ、完全に溶解させて5%水溶液
とした。このようにして染料溶解型の水性インク組成物
を調製した。
【0074】(試験例2)得られた実施例3〜6、比較
例5〜7の水性インク組成物を用い、20℃、60%R
Hの標準環境下において、インクジェットプリンタ(M
J−800C:セイコ−エプソン社製)を用い、再生紙
(R紙:富士ゼロックス社製)テスト印字を行った。テ
スト印字部を25倍のルーペで観察し、ドットの再現性
と滲みを目視判定し、下記の評価基準に基づきそれぞれ
画質を評価した。 ・評価基準 A:滲みがなく、ドット形状が良好なレベル。 B:滲みが少し認められるが、実用上問題がないレベ
ル。 C:滲みが目立ち、ドット形状が不良で実用上問題があ
るレベル。 また、印字部の裏抜け状態を目視判定し評価した。さら
に、分散安定性を評価する目的でインクを1週間静置さ
せた時の沈澱物生成の有無を調べた。沈澱物が発生しな
いものを○、発生するものを×とした。これらの結果を
表2に示す。
【0075】
【表2】 表2 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 画質 裏抜け 保存性 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実施例3 A なし ○ 実施例4 A なし ○ 実施例5 A なし ○ 実施例6 A なし ○ 比較例5 B なし × 比較例6 B なし × 比較例7 C あり ○ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0076】表2に示される結果から明らかなように、
本発明の水性インク組成物(実施例3〜6)では、滲み
等のない良好な画質が得られ、印字部の裏抜けもなく、
分散安定性にも優れていた。これに対して、比較例5〜
7の水性インク組成物では、画質が劣ったものとなり、
裏抜け、分散安定性の全ての要件を満たしたものが得ら
れなかった。
【0077】
【発明の効果】本発明の水性インク組成物は、高い着色
力を有しており、耐水性が高く、滲みのない極めて良好
な画像を得ることができ、保存安定性にも優れている。
また、本発明によれば、単純な工程で、特殊な装置を必
要とせずに、劇物を使用せず安全に、低コストで水性イ
ンク組成物を製造することができる。また、本発明の第
2の発明によれば、カチオン性基をアニオン性染料で完
全に被覆することができるため、高濃度の樹脂粒子を得
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2C056 EA13 4J039 AD03 AD10 AD12 AD17 AF02 AF07 BA10 BA18 BA30 BC07 BC36 BC40 BE02 BE22 BE26 CA06 EA38 EA44 EA47 GA24

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 染色された樹脂粒子が水性媒体中に分散
    してなる水性インクにおいて、前記樹脂粒子が、カチオ
    ン性モノマーと非極性ビニルモノマーとを共重合体成分
    として含む樹脂粒子であって、アニオン染料で染色され
    ており、染色後の前記樹脂粒子の前記水性媒体に対する
    比重の比が、1±0.05以内であることを特徴とする
    水性インク組成物。
  2. 【請求項2】 カチオン性モノマーと非極性ビニルモノ
    マーとを、ソープフリーで乳化重合せしめ、得られた樹
    脂粒子をアニオン染料で染色することを特徴とする請求
    項1記載の水性インク組成物の製造方法。
  3. 【請求項3】 カチオン性モノマーと非極性ビニルモノ
    マーとを、無機塩の存在下に重合せしめ、得られた樹脂
    粒子をアニオン染料で染色することを特徴とする請求項
    1記載の水性インク組成物の製造方法。
  4. 【請求項4】 樹脂粒子をアニオン染料で染色する際
    に、ノニオン性界面活性剤を共存させることを特徴とす
    る請求項2または3記載の水性インク組成物の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 染色された樹脂粒子が水性媒体中に分散
    してなる水性インクにおいて、前記樹脂粒子が、カチオ
    ン性モノマーと非極性ビニルモノマーとを共重合体成分
    として含む樹脂粒子であって、分子内にアニオン性基を
    二つ以上有する染料で染色されていることを特徴とする
    水性インク組成物。
  6. 【請求項6】 カチオン性モノマーが、下記構造式 【化1】 (式中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2
    3 4は、炭素数1〜10のアルキル基またはアラル
    キル基を示し、R2およびR3は、末端同士が結合して一
    つの環を形成していてもよく、nは、1〜6の整数を示
    し、X-はハロゲンイオンまたは構造中に−COO-基、
    または−SO3 -基を有するアニオンを示し、Yは−CO
    O−基または−CONR5−基(式中、R5は、水素原子
    または炭素数1〜3のアルキル基を示す)を示す)で示
    される4級化アンモニウム塩基含有化合物であることを
    特徴とする請求項1または5記載の水性インク組成物。
  7. 【請求項7】 カチオン性ビニルモノマーと非極性ビニ
    ルモノマーとを、下式構造式 【化2】 (式中、R1、R2は、水素、メチル基またはメチロール
    基を示す。)で示されるノニオン性の水溶性重合開始剤
    を用いて共重合せしめ、得られたカチオン性ラテックス
    ポリマーを、ノニオン性界面活性剤の存在下で、アニオ
    ン性基を二つ以上有するアニオン染料を用いて染色する
    ことを特徴とする請求項5記載の水性インク組成物の製
    造方法。
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