JP2000107505A - 金属抽出剤及び抽出方法 - Google Patents

金属抽出剤及び抽出方法

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JP2000107505A
JP2000107505A JP11062375A JP6237599A JP2000107505A JP 2000107505 A JP2000107505 A JP 2000107505A JP 11062375 A JP11062375 A JP 11062375A JP 6237599 A JP6237599 A JP 6237599A JP 2000107505 A JP2000107505 A JP 2000107505A
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alkali
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English (en)
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Sotaro Miyano
壮太郎 宮野
Nobuhiko Iki
伸彦 壹岐
Naoya Morohashi
直弥 諸橋
Atsushi Sugawara
淳 菅原
Setsuko Miyanari
節子 宮成
Hitoshi Kumagai
仁志 熊谷
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Cosmo Oil Co Ltd
Cosmo Research Institute
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Cosmo Oil Co Ltd
Cosmo Research Institute
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 優れた抽出性能を有し、また、安定性が高
く、容易に製造できるアルカリ金属、アルカリ土類金属
及び第3B族の金属抽出剤及びそれを用いたアルカリ金
属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属の抽出方法及
び複数の金属の中からアルカリ金属、アルカリ土類金
属、第3B族の金属または遷移金属をそれぞれ選択的に
抽出する方法を提供する。 【解決手段】 一般式(1) (式(1)中、Xは水素原子、炭化水素基、アシル基、
カルボキシアルキル基またはカルバモイルアルキル基で
あり、Yは炭化水素基であり、Zはスルフィニル基また
はスルホニル基であり、nは4〜8の整数である。)で
表される環状フェノール硫化物を含有するアルカリ金
属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤にす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、新規なアルカリ金
属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤に関
し、またアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族
の金属抽出方法に関する。さらに、本発明は、複数の金
属が併存する系からアルカリ金属、アルカリ土類金属ま
たは第3B族の金属あるいは遷移金属をそれぞれ選択的
に抽出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】溶媒抽出法は、基本的に簡便な操作で迅
速に試料の分離や濃縮を行うことが可能であり、また、
省エネルギー、資源の有効利用、環境保全型の高度分離
精製操作であるため、分析化学をはじめとして、有機化
合物の分離精製、金属イオンなどの無機物の分離、回収
及び除去、あるいはファインケミカルズやバイオなどの
先端分野において、広範囲に利用されている技術であ
る。特に金属抽出においては、貴金属や重金属などの資
源回収や工業廃水などに含まれる微量金属の処理など、
工業的にも重要な技術となっている。
【0003】溶媒抽出法における抽出剤としては、従
来、溶液組成に応じて酸性抽出剤、塩基性抽出剤、及び
中性抽出剤などに分類され、例えば、ジ−(2−エチル
ヘキシル)リン酸、E−2−ヒドロキシ−5−ノニルベ
ンゾフェノンオキシム、8−ヒドロキシ−7−(1−ノ
ニル−2−プロペニル)キノリン、トリアルキルメチル
アンモニウム塩、トリブチルフォスフェートなどが用い
られ、D2EHPA(花王、大八化学)、LIX65N
(General Mills)、Kelex120(AshlandChemic
al)、Aliquat336(Ashland Chemical)など
の商品名で市販されている。一方、アルカリ金属やアル
カリ土類金属の捕捉については、従来、このようなキレ
ート系抽出剤では抽出が困難であったが、Pedersenらは
初めてクラウンエーテルを合成し、これらがアルカリ金
属をその空孔内に取り込むことを報告した。それ以来、
各種イオンの分離、分析、濃縮、輸送などにおいて活発
に研究開発がなされるようになったが、現在もなお、抽
出剤として、より抽出容量が大きく、より抽出速度が速
く、より選択性が高く、また、安定性に優れ、無害でよ
り安価なものが求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、従来のアルカリ金属、アルカリ土類金属及
び第3B族の金属抽出剤にはない全く新しい構造を有
し、優れた抽出性能を有し、また、安定性が高く、容易
に製造できるアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3
B族の金属抽出剤及びそれを用いたアルカリ金属、アル
カリ土類金属及び第3B族の金属の抽出方法を提供する
ことにある。さらに、本発明が解決しようとする課題
は、複数の金属の中からアルカリ金属、アルカリ土類金
属、第3B族の金属または遷移金属をそれぞれ選択的に
抽出する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、先に、基
本骨格にフェノール骨格を3以上含む環状フェノール硫
化物群を見い出し(特開平9−227553)、これら
の環状フェノール硫化物群が分子分離材料、ケミカルセ
ンサー、高分子材料、酸化触媒、人工酵素、あるいはそ
の他のイオンや分子認識を利用した機能性分子の中間体
などとして有用であることを見いだした。さらに、遷移
金属や希土類金属などについては、これらが抽出剤とし
て有用であることを見いだした(特願平9−36603
7)。本発明者らは、該環状フェノール硫化物のスルフ
ィド結合等をさらに化学修飾することにより、環状フェ
ノール硫化物がアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第
3B族の金属に対しも優れた抽出性能を示す可能性があ
るものと考え、鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)
【0006】
【化3】
【0007】(式(1)中、Xは水素原子、炭化水素
基、アシル基、カルボキシアルキル基またはカルバモイ
ルアルキル基であり、Yは炭化水素基であり、Zはスル
フィニル基またはスルホニル基であり、nは4〜8の整
数である。)で表される環状フェノール硫化物が、アル
カリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属に対し
高い抽出能を有することを見出し、本発明を完成するに
至った。すなわち、本発明は、一般式(1)(式中、X
は水素原子、炭化水素基、アシル基、カルボキシアルキ
ルまたはカルバモイルアルキル基であり、Yは炭化水素
基であり、Zはスルフィニル基またはスルホニル基であ
り、nは4〜8の整数である。)で表される環状フェノ
ール硫化物を含有することを特徴とするアルカリ金属、
アルカリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤を提供する
ものである。
【0008】また、本発明は、上記のアルカリ金属、ア
ルカリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤により、アル
カリ金属、アルカリ土類金属または第3B族の金属を抽
出することを特徴とするアルカリ金属、アルカリ土類金
属及び第3B族の金属抽出方法を提供するものである。
また、本発明は、上記のアルカリ金属、アルカリ土類金
属及び第3B族の金属抽出剤により、アルカリ金属、ア
ルカリ土類金属及び第3B族の金属の金属群から選ばれ
る少なくとも1種並びに前記金属群以外の金属が併存す
る系からアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族
の金属の少なくとも1種を選択的に抽出することを特徴
とするアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の
金属抽出方法を提供するものである。また、本発明は、
上記のアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の
金属抽出剤と遷移金属抽出剤とを組み合わせて用いるこ
とにより、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B
族の金属の金属群から選ばれる少なくとも1種並びに遷
移金属が併存する系からアルカリ金属、アルカリ土類金
属及び第3B族の金属の少なくとも1種及び遷移金属を
それぞれ選択的に抽出することを特徴とする金属抽出方
法を提供するものである。さらに、本発明は、一般式
(2)
【0009】
【化4】
【0010】(式(2)中、Xは水素原子、炭化水素
基、アシル基、カルボキシアルキル基またはカルバモイ
ルアルキル基であり、Yは炭化水素基であり、Zはスル
フィド基、スルフィニル基またはスルホニル基であり、
nは4〜8の整数である。)において、Zがスルフィニ
ル基またはスルホニル基であるアルカリ金属、アルカリ
土類金属及び第3B族の金属抽出剤と、Zがスルフィド
基である遷移金属抽出剤とのいずれかを用いることによ
り、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金
属の金属群から選ばれる少なくとも1種並びに遷移金属
が併存する系から、アルカリ金属、アルカリ土類金属及
び第3B族の金属の少なくとも1種または遷移金属、を
選択的に抽出することを特徴とする金属の抽出方法を提
供するものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明におけるアルカリ金属、ア
ルカリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤は、上記一般
式(1)の環状フェノール硫化物からなる。一般式
(1)中のXは水素原子、炭化水素基、アシル基、カル
ボキシアルキル基またはカルバモイルアルキル基であ
る。炭化水素基の炭素数は、1以上であれば特に制限さ
れないが、好ましくは1〜6である。炭化水素基の適当
な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプ
ロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、ビ
ニル、アリル、シクロヘキシル、フェニルなどが挙げら
れる。アシル基の炭素数は、1以上であれば特に制限さ
れないが、好ましくは1〜7でる。アシル基の適当な例
としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリ
ル、バレリル、オキサリル、マロニル、サクシニル、ベ
ンゾイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトニル
などが挙げられる。
【0012】カルボキシアルキル基の炭素数は、2以上
であれば特に制限されないが、好ましくは2〜13であ
る。カルボキシアルキル基の適当な例としては、−CH
COOH、−CHCHCOOH、−CH(C
)COOH、−CHCHCHCOOH、−C
(CHCOOHなどが挙げられる。カルバモイル
アルキル基の炭素数は、2以上であれば特に制限はない
が、好ましくは2〜13である。カルバモイルアルキル
基の適当な例としては、−CHCONH、−CH
CHCONH、−CH(CH)CONH、−C
(CHCONH、−CHCONH(C
)、−CHCONHCH(CH)Phなどでが
挙げられる。なお、Xの炭化水素基、アシル基またはカ
ルボキシアルキル基の炭素数が増加すると一般に抽出能
が低下する。一般式(1)において、Xは1分子中に4
〜8個存在するが、それらのXはそれぞれ同一であって
もよいし、異なってもよい。
【0013】また、一般式(1)中のYは炭化水素基で
ある。炭化水素基の炭素数は、1以上であれば特に制限
されないが、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜
18である。これらの炭化水素基としては、飽和脂肪族
炭化水素基、不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂
環式−脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族−
脂肪族炭化水素基等が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素
基の適当な具体例としては、例えばメチル、エチル、n
−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、
tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−
ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチル、n−ノ
ニル、イソノニル、n−ドデシル、及びエチレンやプロ
ピレン、ブチレンの重合物あるいはそれらの共重合物か
らなる基などが挙げられる。不飽和脂肪族炭化水素基の
適当な具体例としては、例えばビニル、アリル、イソプ
ロペニル、2−ブテニル、及びアセチレンやブタジエ
ン、イソプレンの重合物あるいはそれらの共重合物から
なる基などが挙げられる。
【0014】脂環式炭化水素基の適当な具体例として
は、例えばシクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、エ
チルシクロヘキシルなどが挙げられる。脂環式−脂肪族
炭化水素基の適当な具体例としては、例えばシクロヘキ
シルメチル、シクロヘキシルエチルなどが挙げられる。
芳香族炭化水素基の適当な具体例としては、例えばフェ
ニル、ナフチルなどのアリール基、メチルフェニル、ジ
メチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニ
ル、ブチルフェニルなどのアルキルアリール基などが挙
げられる。芳香族−脂肪族炭化水素基の適当な具体例と
しては、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプ
ロピル、フェニルブチル、メチルフェニルエチルなどが
挙げられる。一般式(1)において、Yは1分子中に4
〜8個存在するが、それらのYはそれぞれ同一であって
もよいし、異なってもよい。また、一般式(1)におい
てZはスルフィニル基またはスルホニル基である。一般
式(1)において、Zは1分子中に4〜8個存在する
が、それらのZはそれぞれ同一であってもよいし、異な
ってもよい。一般式(1)において、nは4〜8であ
る。
【0015】次に、この一般式(1)で表される環状フ
ェノール硫化物の製造方法について説明する。一般式
(1)の環状フェノール硫化物の製造例は、特開平9−
227553号及びWO98/09959号明細書に記
載されている。適当な製造例としては、先ず一般式
(3)
【0016】
【化5】
【0017】(式中、Rは炭化水素基である。)で表さ
れる4位に炭化水素基を有するアルキルフェノール類
と、適当量の単体硫黄を、適当量のアルカリ金属試薬及
びアルカリ土類金属試薬から選ばれる少なくとも1種の
金属試薬の存在下反応させる方法によりスルフィド結合
を有する環状フェノール硫化物中間体を製造し、このス
ルフィド結合をスルフィニル基あるいはスルホニル基に
変換する方法である。アルキルフェノール類と単体硫黄
の原料仕込比は、アルキルフェノール類1グラム当量に
対し、単体硫黄が0.1グラム当量以上であり、好まし
くは0.35グラム当量以上である。単体硫黄の原料仕
込比の上限は特に限定されないが、アルキルフェノール
類1グラム当量に対し、20グラム当量以下が好まし
く、特に10グラム当量以下が好ましい。アルカリ金属
試薬としては、例えばアルカリ金属単体、水素化アルカ
リ金属、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属、アル
カリ金属アルコキシド、ハロゲン化アルカリ金属などが
挙げられる。また、アルカリ土類金属試薬としては、例
えばアルカリ土類金属単体、水素化アルカリ土類金属、
水酸化アルカリ土類金属、酸化アルカリ土類金属、炭酸
アルカリ土類金属、アルカリ土類金属アルコキシド、ハ
ロゲン化アルカリ土類金属などが挙げられる。アルカリ
金属試薬またはアルカリ土類金属試薬の使用量は、アル
キルフェノール類1グラム当量に対し、0.005グラ
ム当量以上であり、好ましくは0.01グラム当量以上
である。アルカリ金属試薬またはアルカリ土類金属試薬
の使用量の上限は特に制限はないが、好ましくは10グ
ラム当量以下であり、特に好ましくは5グラム当量以下
である。
【0018】また、生成した環状フェノール硫化物中間
体のフェノール性水酸基の水素原子は、必要により、一
般式(1)の水素原子以外のXに転換できる。この転換
方法例は、特開平9−227553号明細書に記載され
ている。適当な製造例としては、環状フェノール硫化物
中間体のフェノール性水酸基の水素原子を、アセチルク
ロリドなどのアシル化剤によりアシル化する方法が挙げ
られる。また、環状フェノール硫化物中間体のフェノー
ル性水酸基の水素原子をアルカリ金属に置換し、これを
ハロゲン化炭化水素と反応させることにより、炭化水素
基に転換する方法が挙げられる。カルボキシアルキル基
への転換方法の例としては、例えば、特開平10−17
5971号公報に記載されている方法により、すなわ
ち、環状フェノール硫化物中間体のフェノール性水酸基
の水素原子をアルカリ金属に置換し、これをアルコキシ
カルボニルアルキルハロゲンと反応させた後、さらに、
これを公知の方法、例えば加水分解することにより、カ
ルボキシアルキル基に転換する方法が挙げられる。カル
バモイルアルキル基への適当な転換方法の例としては、
上記カルボキシアルキル基を公知の方法、例えば酸クロ
リドに変換した後、これにアミンを反応させる方法が挙
げられる。
【0019】このようにして生成した環状フェノール硫
化物中間体のスルフィド基を、スルフィニル基あるいは
スルホニル基へ転換することにより、一般式(1)で表
される環状フェノール硫化物を製造することができる。
この転換方法例は、WO98/09959号明細書に記
載されている。適当な製造例としては、スルフィド基を
過酸化水素や過ホウ酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて
酸化することにより、スルフィニル基あるいはスルホニ
ル基に転換する方法が挙げられる。スルフィド基をスル
フィニル基あるいはスルホニル基に転換することによ
り、アルカリ金属、アルカリ土類金属または第3B族の
金属に対する選択性を持たせることができる。
【0020】一般式(1)で表される環状フェノール硫
化物を溶解させた溶液に、アルカリ金属、アルカリ土類
金属または第3B族の金属が溶解した溶液を接触させる
ことにより、アルカリ金属、アルカリ土類金属または第
3B族の金属が環状フェノール硫化物溶液に移行し、ア
ルカリ金属、アルカリ土類金属または第3B族の金属が
抽出される。環状フェノール硫化物溶液に使用する溶媒
とアルカリ金属、アルカリ土類金属または第3B族の金
属溶液に使用する溶媒は、お互い溶けにくい溶媒が使用
される。これらの溶媒の好適な組合せとしては、環状フ
ェノール硫化物溶液の溶媒が非水溶性の溶媒であり、ア
ルカリ金属、アルカリ土類金属または第3B族の金属溶
液の溶媒が水である組合せである。この組合せによる
と、環状フェノール硫化物を非水溶性の溶媒に溶解させ
た溶液を、アルカリ金属、アルカリ土類金属または第3
B族の金属が溶解した水溶液に接触させ、水溶液中のア
ルカリ金属、アルカリ土類金属または第3B族の金属を
抽出することができる。
【0021】非水溶性の溶媒の適当な具体例としては、
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、
クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロ
ゲン化炭化水素、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化
水素、及び灯油、軽油などの鉱油が挙げられる。溶媒
は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用
いてもよい。溶媒に対する一般式(1)で表される環状
フェノール硫化物の濃度は、該環状フェノール硫化物の
それぞれの溶媒への溶解度によって上限が限定される以
外は、特に制限はなく、通常、1×10−6〜1Mであ
る。
【0022】アルカリ金属としては、リチウム(L
i)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウ
ム(Rb)、セシウム(Cs)などが、アルカリ土類金
属としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(C
a)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)など
が、また、第3B族の金属としては、アルミニウム(A
l)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウ
ム(Tl)など挙げられる。また、アルカリ金属、アル
カリ土類金属及び第3B族の金属の2種以上が併存して
もよい。アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族
の金属の2種以上が併存する場合は、それらを一緒に抽
出することができ、また、後述するように特定のアルカ
リ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属を選択的
に抽出することができる。被抽出溶液中に溶解している
アルカリ金属、アルカリ土類金属または第3B族の金属
の濃度は、特に制限なく、1.0×10−5M程度でも
十分に抽出できる。アルカリ金属、アルカリ土類金属及
び第3B族の金属水溶液のpHは、特に制限はないが、
好ましくはpHが2〜11である。pHが下がってゆく
と、抽出率は低下する傾向にあり、抽出時間を長時間必
要とするようになる。
【0023】抽出温度は、使用する溶媒の沸点以下であ
れば、特に制限はない。通常、室温付近で行えばよい。
抽出操作は、該環状フェノール硫化物を溶解させた溶液
とアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属
が溶解した溶液を、振とう、撹拌などにより、互いに接
触させることにより行われる。振とう、撹拌の条件は特
に制限ないが、激しく振とう、撹拌を行った方が効率的
である。振とうは、通常毎分100〜400回程度行え
ばよい。被抽出金属溶液中に、アルカリ金属、アルカリ
土類金属及び第3B族の金属の金属群から選ばれる少な
くとも1種並びに前記金属群以外の金属が併存する複数
の金属が溶解している場合も、本発明の一般式(1)で
表される環状フェノール硫化物を含有するアルカリ金
属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤を用い
ることにより、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第
3B族の金属の少なくとも1種を選択的に抽出すること
ができる。アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B
族の金属の金属群以外の金属としては、特に制限なく、
遷移金属、遷移金属以外の金属などの種々の金属を挙げ
ることができ、1種以上を組み合わせることができる。
【0024】溶媒に対する一般式(1)で表される環状
フェノール硫化物の濃度には特に制限はないが、被抽出
溶液中に存在する前記複数の金属の濃度の総和に対して
過剰であることが好ましい。一般式(1)で表される環
状フェノール硫化物が金属に対して過剰に存在しない
と、各金属の抽出速度の差に起因する選択性の変化があ
る場合がある。被抽出溶液のpH、抽出に用いる溶媒、
抽出温度あるいは抽出操作等は、上記でそれぞれ説明し
たものと同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0025】また、前記複数の金属の中から、特定のア
ルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属を選
択的に抽出することができる。この選択性の因子として
は、一般式(1)で表される環状フェノール硫化物の分
子構造、該環状フェノール硫化物の被抽出溶液中の金属
に対する濃度、被抽出溶液中の金属種、被抽出溶液のp
H、抽出温度等が挙げられるが、特に環状フェノール硫
化物の分子構造と被抽出溶液のpHの影響が大きい。環
状フェノール硫化物の分子構造の影響としては、例え
ば、第3B族のアルミニウム、ガリウム、インジウム等
は一般式(1)においてZがスルフィニル基である環状
フェノール硫化物との親和性が特に高い。また、pHの
影響としては、一般式(1)においてZがスルホニル基
である環状フェノール硫化物によりアルカリ土類金属を
抽出する場合、pHが約8.5以下ではカルシウムが選
択的に抽出できる。
【0026】さらに、本発明の一般式(1)で表される
環状フェノール硫化物を含有するアルカリ金属、アルカ
リ土類金属及び第3B族の金属抽出剤と、遷移金属抽出
剤とを組み合わせて用いることにより、前記複数の金属
の中から、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B
族の金属の少なくとも1種または遷移金属をそれぞれ選
択的に抽出することができる。組み合わせて用いる遷移
金属抽出剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属
及び第3B族の金属以外の金属を抽出するものであれば
特に制限はないが、好適な例としては、本発明者らが先
に見出した遷移金属抽出剤(特願平9−366037)
が挙げられる。
【0027】一般式(1)で表される環状フェノール硫
化物を含有するアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第
3B族の金属抽出剤と上記の遷移金属抽出剤とを組み合
わせて用いる方法としては、公知の方法、例えば前記複
数の金属を含む被抽出溶液に一般式(1)で表される環
状フェノール硫化物を含有するアルカリ金属、アルカリ
土類金属及び第3B族の金属抽出剤溶液を接触し、さら
に、この金属抽出剤溶液とは接触させず遷移金属抽出剤
溶液を前記複数の金属を含む被抽出溶液に接触する方
法、具体的には、U字型の抽出装置に前記複数の金属を
含む被抽出溶液を入れ、U字管の片方に一般式(1)で
表される環状フェノール硫化物を含有するアルカリ金
属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤溶液
を、もう一方に遷移金属抽出剤溶液を入れる方法などが
挙げられる。この方法によれば、例えば一般式(1)で
Zがスルホニル基である環状フェノール硫化物を用い
て、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチ
ウムなどのアルカリ土類金属と鉄、マンガン、コバル
ト、ニッケル、銅、亜鉛、パラジウム、銀、カドミウ
ム、金、水銀などの遷移金属とを含む水溶液から、片方
のアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属
抽出剤溶液にはアルカリ土類金属を、また、一方の遷移
金属抽出剤溶液には遷移金属を、それぞれ選択的に抽出
することができる。また、前記複数の金属の中から、特
定のアルカリ金属、アルカリ土類金属、第3B族の金属
または遷移金属を選択的に抽出することができる。
【0028】被抽出溶液のpH、抽出に用いる溶媒、抽
出温度あるいは抽出操作等は、上記でそれぞれ説明した
ものと同様であり、好ましい範囲も同様である。ただ
し、溶媒に対する一般式(1)で表される環状フェノー
ル硫化物の濃度には特に制限はないが、被抽出溶液中に
存在する前記複数の金属の濃度の総和に対して過剰であ
ることが好ましい。また、本発明においては、一般式
(2)においてZがスルフィド基である遷移金属抽出剤
を用いることにより、アルカリ金属、アルカリ土類金属
及び第3B族の金属の金属群から選ばれる少なくとも1
種並びに遷移金属が併存する系から、遷移金属を選択的
に抽出することができる。一般式(2)におけるX、
Y、nは、一般式(1)と同様である。被抽出溶液のp
H、抽出に用いる溶媒、抽出温度あるいは抽出操作等
は、上記でそれぞれ説明したものと同様であり、好まし
い範囲も同様である。
【0029】ただし、溶媒に対する一般式(2)におい
てZがスルフィド基である環状フェノール硫化物の濃度
には特に制限はないが、被抽出溶液中に存在する前記複
数の金属の濃度の総和に対して過剰であることが好まし
い。前記複数の金属が併存する系におけるそれぞれの金
属の濃度は、特に制限なく、具体的には、アルカリ金
属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属についてはそ
れぞれ前記と同様の濃度が挙げられ、また、それ以外の
金属については1.0×10−5M程度でも十分に抽出
できる。本発明の抽出方法においては、アルカリ金属、
アルカリ土類金属及び第3B族の金属とそれ以外の金属
の比率が、0.1〜0.9:0.9〜0.1のように両
者とも高濃度に含有していても、また0.1未満又は
0.9超:0.9超又は0.1未満のようにどちらか一
方の金属を高濃度に含有していても、いずれかの金属を
選択的に抽出できる特徴がある。
【0030】
【実施例】次に、本発明を実施例により、さらに詳細に
説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何ら限
定されるものではない。 (製造例1) 5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−2
5,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,1
4,20−テトラスルフィニル[19.3.1.1
3,79,1315,19]オクタコサ-1(2
5),3,5,7(28),9,11,13(27),15,1
7,19(26),21,23-ドデカエン(II)の合成 4-tert-ブチルフェノール45.2gに、単体硫黄
14.4gおよび水酸化ナトリウム3.0gを加え、窒素
気流中、撹拌しながら、4時間かけて徐々に230℃に
加熱し、さらに2時間撹拌を続けた。この間、反応で生
成する水および硫化水素を除去した。反応中に留出した
水は約0.8gであり、反応により生成した硫化水素は
約6gであった。この反応混合物を室温まで冷却し、エ
ーテル500mlを加え溶解させた後、1規定の硫酸水溶
液で加水分解した。分液したエーテル層からエーテルを
留去して得られた反応混合物を、さらにシリカゲルクロ
マトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)により分割
し、粗生成物を得、これをクロロホルム/アセトンから
再結晶させたところ、無色透明の結晶である環状フェノ
ール硫化物中間体の5,11,17,23-テトラ-ter
t-ブチル-25,26,27,28-テトラヒドロキシ-2,
8,14,20-テトラチア[19.3.1. 1 ,7
9,1315,19]オクタコサ-1(25),3,5,
7(28),9,11,13(27),15,17,19(2
6),21,23-ドデカエン(I)4.32gが得られ
た。
【0031】次に、この環状フェノール硫化物中間体
(I)1.8gをクロロホルム30mlに溶解し、さらに
このクロロホルム溶液に、30%過酸化水素5.7gを
あらかじめ100mlの氷酢酸に溶解させた溶液を30分
かけて室温で滴下し、さらに24時間室温で攪拌した。
得られた反応溶液に水150mlを加え、クロロホルム
(50ml×3)で抽出し、クロロホルム相を水洗した。
無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後溶媒を留去し、得
られた白色粉末522mgをメタノールで充分洗浄するこ
とにより、生成物(II)を485mg得た。この生成物
(II)は、一般式(1)においてX=H、Y=t−ブチ
ル基、n=4であり、Zはスルフィニル基である環状フ
ェノール硫化物である。 融点:210℃(分解点)、H-NMR:(δ,ppm,
ClCDCDCl)9.20(s,4H,OH),7.61
(s,8H,ArH),1.26(s,36H,C(C
)、13C-NMR:(δ,ppm,ClCDCDC
l)152.7,142.4,130.2,128.0,
124.2,122.8(Ar),34.8((C
),31.4(C()、FT−I
R:(cm−1,KBr):3074(br,OH),2
960(s、CH),1051,998(s,S
O)、MS(m/z):785(M+1)、元素分析
値 % 理論値 for C4048:C,6
1.20;H,6.16;S,16.34、測定値:C,
61.1;H,6.3;S,15.9.
【0032】(製造例2) 5,11,17,23−テトラ−tert−オクチル−
25,26,27,28−テトラヒドロキシ−2,8,
14,20−テトラスルホニル[19.3.1.1
3,79,1315,19]オクタコサ-1(2
5),3,5,7(28),9,11,13(27),15,1
7,19(26),21,23-ドデカエン(III)の合成 4−tert−オクチルフェノール47.7g(純度9
5%)に単体硫黄10.6g及び水酸化ナトリウム4.4
gを加え、窒素気流中、攪拌しながら130℃に保ち、
2時間反応させた。この時、反応混合物の色は濃い赤
(5R 2.5/9)であった。さらに、170℃に昇
温し2時間、またさらに250℃に昇温し3時間30分
反応させた。この間、反応により生成する水及び硫化水
素を除去した。反応中留出した水は約1.5gであり、
反応で生成した硫化水素は約5gであった。反応混合物
の色相はごく暗い赤色(5R 2/2.5)であった。
この反応混合物を室温まで冷却し、エーテルを加え溶解
させた後、1規定の硫酸水溶液で加水分解した。分液し
たエーテル層からエーテルを留去して得られた反応混合
物を、さらにシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン
/クロロホルム)により分割し、粗生成物を得、これを
クロロホルム/アセトンから再結晶させたところ、環状
フェノール硫化物中間体の5,11,17,23-テトラ-
tert-オクチル-25,26,27,28-テトラヒドロ
キシ-2,8,14,20-テトラチア[19.3.1. 1
3,79,1315,19]オクタコサ-1(2
5),3,5,7(28),9,11,13(27),15,1
7,19(26),21,23-ドデカエン2.98gが得
られた。
【0033】次に、この環状フェノール硫化物中間体
2.0gをクロロホルム40mlに溶解し、さらにこのク
ロロホルム溶液に、トリフルオロ酢酸10mlと30%過
酸化水素20mlを加え、80℃で54時間攪拌した。得
られた反応溶液を冷却した後、クロロホルムで抽出(3
0ml×3)、6MHCl水溶液で充分に洗浄した。クロ
ロホルムを留去し、得られた粉末をヘキサンでよく洗浄
し、黄色の不純物を除去した。これをクロロホルムに再
度溶解させ、12MHCl水溶液で洗浄し、クロロホル
ムを留去すると、生成物(III)1.80gが得られた。
この生成物(III)は、一般式(1)においてX=H、
Y=t−オクチル基、n=4であり、Zはスルホニル基
である環状フェノール硫化物である。 融点:336℃(分解点)H-NMR:(δ,ppm,CD
Cl)8.10(s,8H,ArH),1.73(s,8
H,C(CH C(CH),1.32
(s,24H,C(C CHC(C
),0.680(s,36H,C(CH
CHC(C )、13C-NMR:(δ,ppm,
CDCl)143.9,133.7,126.9(Ar),
56.5,38.7,32.3,31.8,31.1(C
(CHCHC(CH)、IR:(c
m−1,KBr):3390(OH),2956(C
H),1307(SO)、FAB MS(m/z):
1074(M)、元素分析値 % 理論値 forC
568012:C,62.65;H,7.51;
S,11.95、測定値:C,62.53;H,7.3
4;S,11.76.
【0034】(実施例1)製造例1で得られた環状フェ
ノール硫化物(II)(一般式(1)においてX=H、Y
=t−ブチル基、n=4であり、Zはスルフィニル基で
ある)及び製造例2で得られた環状フェノール硫化物
(III)(一般式(1)においてX=H、Y=t−オク
チル基、n=4であり、Zはスルホニル基である)によ
るアルカリ土類金属の抽出を行った。抽出実験は、上記
の環状フェノール硫化物(II)及び(III)をそれぞれ
クロロホルムに溶解させ5.0×10−4Mとした有機
相10mlと、アルカリ土類金属の塩化物1.0×10
−4Mを含む水相10mlとを30mlのスクリュウバイア
ルに入れ、24時間振とうさせることにより行った。な
お、アルカリ土類金属を含む水溶液は、イオン強度調整
塩としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.1M
を添加し、NH-HClによりpH=10.0に調整し
た。振とう後の水相中の残存金属イオン濃度を原子吸光
光度計により測定し、抽出率次式により算出した。
【0035】
【数1】
【0036】ただし、[M]totalは金属イオンの初
期濃度を示し、[M]wは抽出実験後の水相中の金属
イオン測定値を表す。なお、遷移金属に対するアルカリ
土類金属の選択性を見るため、製造例1における環状フ
ェノール硫化物中間体(I)を含め、遷移金属の抽出を
行った。遷移金属の抽出実験は、上記のアルカリ土類金
属の抽出実験と同様の手順で行ったが、遷移金属を含む
水溶液は、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメ
タン)−HClによりpH=8.0に調整した。抽出率
もアルカリ土類金属の場合と同様に算出した。抽出結果
を表1に示す。
【0037】
【表1】 この結果から、スルフィニル基あるいはスルホニル基を
有する環状フェノール硫化物(II)および(III)はア
ルカリ土類金属を高い抽出率で抽出できた。
【0038】(実施例2)製造例1で得られた環状フェ
ノール硫化物(II)(一般式(1)においてX=H、Y
=t−ブチル基、n=4であり、Zはスルフィニル基で
ある)及び環状フェノール硫化物(IV)(一般式(1)
においてX=H、Y=t−ブチル基、n=4であり、Z
はスルホニル基である)によるカリウム(K)の抽出を
行った。環状フェノール硫化物(II)16.0mg及び
環状フェノール硫化物(IV)17.2mgをそれぞれク
ロロホルム40ml中に溶解した。これと、Kイオンを
20ppm含む水溶液40mlを200ml用分液ロー
トに入れ、室温で5時間振とうした。比較のために、上
記環状フェノール硫化物(II)及び環状フェノール硫化
物(IV)を含まないクロロホルム40mlとKイオンを
20ppm含む水溶液40mlについても、同様にして
5時間振とうした。それぞれの試料を静置した後、水溶
液中のイオン濃度をICP−AES法(Inducti
velyCoupled Plasma−Atomic
Emission Spectrometry)で測
定した。その結果、それぞれの環状フェノール硫化物を
含まない場合の実験後の水溶液中のKイオン濃度に対し
て、環状フェノール硫化物(II)を用いた場合の実験後
の水溶液中のKイオン濃度は減少し、その減少率は80
%であり、また、環状フェノール硫化物(IV)を用いた
場合の実験後の水溶液中のKイオン濃度も減少し、その
減少率は67%であった。
【0039】(実施例3)環状フェノール硫化物(V)
(一般式(1)においてX=H、Y=t−オクチル基、
n=4であり、Zはスルフィニル基である)によるアル
ミニウム(Al)の抽出を行った。抽出実験は、上記の
環状フェノール硫化物(V)をクロロホルムに溶解させ
5.0×10−4Mとした有機相10mlと、塩化アルミ
ニウム1.0×10−4Mを含む水相10mlとを30ml
のスクリュウバイアルに入れ、24時間振とうさせるこ
とにより行った。なお、アルミニウムを含む水溶液は、
グリシン-HNOによりpH=2.5〜3.5に調整し
た。振とう後の水相中の残存金属イオン濃度を原子吸光
光度計により測定し、抽出率を実施例1で示した計算式
により算出した。抽出率は、pH=2.6において10
%であったが、pH=3.0では58%、pH=3.5で
は99%以上であり、高い抽出率が得られた。
【0040】(実施例4)環状フェノール硫化物(II
I)(一般式(1)においてX=H、Y=t−オクチル
基、n=4であり、Zはスルホニル基である)を用い、
ニッケル(Ni)共存下において、カルシウム(Ca)
の抽出を行った。抽出実験は、上記の環状フェノール硫
化物(III)をクロロホルムに溶解させ5.0×10−4
Mとした有機相10mlと、カルシウムとニッケルの塩化
物をそれぞれ1.0×10−4M含む水相10mlとを3
0mlのスクリュウバイアルに入れ、24時間振とうさせ
ることにより行った。なお、2つの金属を含む水溶液
は、イオン強度調整塩としてテトラメチルアンモニウム
クロライド0.1Mを添加し、NH-HClによりpH
=10.0に調整した。振とう後の水相中の残存金属イ
オン濃度を原子吸光光度計により測定し、抽出率を実施
例1で示した計算式により算出した。カルシウムの抽出
率は99%以上であり、この結果から、他の金属が共存
する溶液からも高い抽出率で抽出できることを確認し
た。
【0041】(実施例5)環状フェノール硫化物中間体
(I)を用い、マグネシウム(Mg)共存下において、
亜鉛(Zn)の抽出を行った。抽出実験は、上記の環状
フェノール硫化物中間体(I)をクロロホルムに溶解さ
せ5.0×10−4Mとした有機相10mlと、マグネシ
ウムと亜鉛の塩化物をそれぞれ1.0×10−4M含む
水相10mlとを30mlのスクリュウバイアルに入れ、2
4時間振とうさせることにより行った。なお、2つの金
属を含む水溶液は、Tris-HClによりpH=8.0
に調整した。振とう後の水相中の残存金属イオン濃度を
原子吸光光度計により測定し、抽出率を実施例1で示し
た計算式により算出した。亜鉛の抽出率は99%以上で
あり、この結果から、他の金属が共存する溶液からも高
い抽出率で抽出できることを確認した。
【0042】(実施例6)カルシウム(Ca)及びニッ
ケル(Ni)が併存する水溶液から、環状フェノール硫
化物(III)(一般式(1)においてX=H、Y=t-オ
クチル基、n=4であり、Zはスルホニル基である)及
び環状フェノール硫化物中間体(I)(一般式(2)に
おいてX=H、Y=t-ブチル基、n=4であり、Zはス
ルフィド基である)を用いてそれぞれの金属の抽出を行
った。抽出実験は、150mlのガラス製U字管にカル
シウムとニッケルの塩化物をそれぞれ2.0×10-5
含む水相50mlを入れた後、U字管の片方に環状フェ
ノール硫化物(III)をベンゼンに溶解させ1.0×1
−4Mとした有機相30mlを、もう一方には環状フ
ェノール硫化物中間体(I)をトルエンに溶解させ1.
0×10−4Mとした有機相30mlをそれぞれ入れ、
お互いの有機相がU字管の底部で混ざり合わないように
24時間撹拌させることにより行った。なお、水相は、
イオン強度調整塩としてテトラメチルアンモニウムクロ
ライド0.1Mを添加し、NH-HClによりpH=1
0.0に調整した。抽出率は、撹拌後の2つの有機相を
取り出し、それぞれ硝酸水溶液により逆抽出し、水相中
の金属イオン濃度を原子吸光光度計により測定し求め
た。その結果、環状フェノール硫化物(III)を含むベ
ンゼン溶液にはカルシウム(抽出率99%以上)が、環
状フェノール硫化物中間体(I)を含むトルエン溶液に
はニッケル(抽出率95%以上)がそれぞれ選択的に抽
出されたことがわかった。
【0043】
【発明の効果】本発明の金属抽出剤は、効率良くアルカ
リ金属、アルカリ土類金属及び第3B族金属の少なくと
も1種を抽出することができる。また、本発明の金属抽
出方法によると、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び
第3B族金属などの金属のみを含む系またはこれらの金
属とそれ以外の金属を含む複数の金属を含む系から、効
率良く選択的にアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第
3B族金属の少なくとも1種またはそれ以外の金属ある
いは両者を抽出することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 諸橋 直弥 宮城県仙台市泉区松稜2−15−5 (72)発明者 菅原 淳 宮城県仙台市泉区将監12−14−15 (72)発明者 宮成 節子 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内 (72)発明者 熊谷 仁志 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内 Fターム(参考) 4D056 AB03 AB06 AB07 AB08 AC05 AC13 AC17 BA08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(1) 【化1】 (式(1)中、Xは水素原子、炭化水素基、アシル基、
    カルボキシアルキル基またはカルバモイルアルキル基で
    あり、Yは炭化水素基であり、Zはスルフィニル基また
    はスルホニル基であり、nは4〜8の整数である。)で
    表される環状フェノール硫化物を含有することを特徴と
    するアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金
    属抽出剤。
  2. 【請求項2】請求項1に記載されたアルカリ金属、アル
    カリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤により、アルカ
    リ金属、アルカリ土類金属または第3B族の金属を抽出
    することを特徴とするアルカリ金属、アルカリ土類金属
    及び第3B族の金属抽出方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載されたアルカリ金属、アル
    カリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤により、アルカ
    リ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属の金属群
    から選ばれる少なくとも1種並びに前記金属群以外の金
    属が併存する系からアルカリ金属、アルカリ土類金属及
    び第3B族の金属の少なくとも1種を選択的に抽出する
    ことを特徴とするアルカリ金属、アルカリ土類金属及び
    第3B族の金属抽出方法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載されたアルカリ金属、アル
    カリ土類金属及び第3B族の金属抽出剤及び遷移金属抽
    出剤により、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3
    B族の金属の金属群から選ばれる少なくとも1種並びに
    遷移金属が併存する系からアルカリ金属、アルカリ土類
    金属及び第3B族の金属の少なくとも1種及び遷移金属
    をそれぞれ選択的に抽出することを特徴とする金属抽出
    方法。
  5. 【請求項5】一般式(2) 【化2】 (式(2)中、Xは水素原子、炭化水素基、アシル基、
    カルボキシアルキル基またはカルバモイルアルキル基で
    あり、Yは炭化水素基であり、Zはスルフィド基、スル
    フィニル基またはスルホニル基であり、nは4〜8の整
    数である。)において、Zがスルフィニル基またはスル
    ホニル基であるアルカリ金属、アルカリ土類金属及び第
    3B族の金属抽出剤と、Zがスルフィド基である遷移金
    属抽出剤とのいずれかを用いることにより、アルカリ金
    属、アルカリ土類金属及び第3B族の金属の金属群から
    選ばれる少なくとも1種並びに遷移金属が併存する系か
    ら、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び第3B族の金
    属の少なくとも1種または遷移金属、を選択的に抽出す
    ることを特徴とする金属の抽出方法。
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