JP2000107129A - 眼光学系のシミュレーション方法及び装置 - Google Patents
眼光学系のシミュレーション方法及び装置Info
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Abstract
合における揺れ、歪み、ボケ等を伴う見え方をもシミュ
レーション可能とする眼光学系のシミュレーション方法
及び装置を提供する。 【解決手段】 視野内の全ての物体点に対して眼球を回
旋させ、中心窩で捕らえた像を繋ぎ合わせた像として定
義される回旋網膜像を、特定の回旋中心点を持つ眼に入
る特定視野角の画像を原画像として作成し、この原画像
をレンズ系を通して見た場合の歪みを伴う歪み原画像を
光線追跡法を用いて作成し、レンズ系及び眼鏡モデルよ
りなる光学系において原画像の物体点からの光による眼
球モデルの網膜上のPSFを求め、求めた歪み原画像と
原画像の各画素のPSFとの畳み込み演算をすることに
よって求める。また、得られた回旋網膜像を編集して回
旋網膜像の動画像を求める。また、PSFは、物体点に
標本点を設定してPSFを求め、標本点以外のPSFを
スプライン補間法を含む近似法を用いる手法で求める。
Description
れたレンズ系を通して外界を観察したときの見え方をシ
ミュレーションする眼光学系のシミュレーション方法及
び装置に関する。
配置されたレンズ系を通して外界を観察したときの見え
方をシミュレーションする眼光学系のシミュレーション
方法及び装置を開示したものとしては、本願出願人の先
の出願にかかる特開平8ー266473号に記載の装置
がある。
用した状態で人眼が回旋することにより見渡すことので
きる範囲の情景画像を、PSF演算等を行なってシミュ
レーションするものである。これによって、眼鏡等の光
学レンズを装用した際の人眼の回旋を伴う広い角度の情
景をシミュレーションできるようになった。
多焦点レンズを装用した場合、遠近両用機能を果たす代
わりに、揺れ、歪み、ボケ等の不快感を感ずる場合があ
る。それゆえ、累進多焦点レンズの設計にあたっては、
遠近両用機能を実現しながら、不快感を可能な限り抑え
ることが求められている。このためには、設計されたレ
ンズがどの様な揺れ、歪み、ボケ等の不快感を伴うもの
であるかを予め設計者自身が知ることが最も望ましい。
上述の従来の眼光学系のシミュレーション方法は、眼鏡
等の光学レンズを装用した際の人眼の回旋を伴う広い角
度の情景をシミュレーションできるので、一定の目的に
対しては非常に有用である。しかしながら、装用者が感
ずるであろうところの歪み、ボケ等を人間の知覚作用ま
でも考慮にいれて実際に近い態様でシミュレーションを
するものではなかった。それゆえ、設計されたレンズを
装用者が装用した場合に、装用者が実際にどの様な歪
み、ボケ等を感ずるものであるかを予め設計者自身が知
るという目的に対しては必ずしも十分なものではなかっ
た。しかも、実際に装用した場合に最も問題になると思
われる揺れに関しては全く対応できないものであった。
界の像は、眼の網膜に光学の原理にしたがって結像され
た光学像そのものではないと考えられる。すなわち、網
膜上の受光体(錐体と杆体)の分布は中心窩付近の密度
が高く周辺が低い。したがって、もし、網膜に結像され
た光学像そのものが知覚されているものならば、その光
学像が理想的に結像されたものであったとしても、中心
付近だけが鮮明で周辺はぼけた像として知覚されるはず
である。しかるに、健常眼であれば、視野内のどこでも
はっきりと見えていると感じられる。これは、知覚とい
う作用は、網膜に投影された光学像をそのまま検知する
というような単純な作用ではなく、網膜以降の神経情報
処理系によって複雑な処理がされた結果に基づくもので
あると考えられるからである。
作用を直接シミュレーションすることはできないが、本
発明者等が見出だした一定の仮定に基づけば知覚作用の
結果を画像処理によって近似的に再現できることが解明
された。
のであり、累進多焦点レンズ等のレンズ系を装用した場
合における揺れ、歪み、ボケ等を伴う見え方をもシミュ
レーション可能とする眼光学系のシミュレーション方法
及び装置を提供することを目的とする。
めの手段として、第1の発明は、眼の前に配置されたレ
ンズ系を通して外界を観察したときの見え方をシミュレ
ーションする眼光学系のシミュレーション方法におい
て、前記レンズ系を通して眼によって知覚される像とし
て、眼の網膜面に投影される光学像ではなく、視野内の
全ての物体点に対して眼球を回旋させ、中心窩で捕らえ
た像を繋ぎ合わせた像として定義される回旋網膜像をコ
ンピュータシミュレーションによって作成して用いるこ
とを特徴とする眼光学系のシミュレーション方法。であ
る。
系を通して外界を観察したときの見え方をシミュレーシ
ョンする眼光学系のシミュレーション方法において、前
記レンズ系を通して眼によって知覚される像として、眼
の網膜面に投影される光学像ではなく、視野内の全ての
物体点に対して眼球を回旋させ、中心窩で捕らえた像を
繋ぎ合わせた像として定義される回旋網膜像を作成して
用いるようにし、この回旋網膜像を作成する工程とし
て、特定の回旋中心点を持つ眼に入る特定視野角の画像
を原画像として作成する原画像作成工程と、この原画像
をレンズ系を通して見た場合の歪みを伴う歪み原画像を
光線追跡法を用いて作成する歪み原画像作成工程と、レ
ンズ系及び眼鏡モデルよりなる光学系において原画像の
物体点からの光による眼球モデルの網膜上のPSFを求
めるPSF取得工程と、歪み原画像作成工程で求めた歪
み原画像と、PSF取得工程で求めた原画像の各画素の
PSFとの畳み込み演算をする畳み込み演算工程とを有
することを特徴とする眼光学系のシミュレーション方法
である。
系を通して外界を観察したときの見え方をシミュレーシ
ョンする眼光学系のシミュレーション方法において、仮
想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる仮
想物体を作成して配置し、この仮想物体が、特定の位置
に回旋中心点を置き且つ特定の中心視線方向を持つ眼に
入る特定視野角の画像を原画像として作成するととも
に、前記原画像の各画素の代表する物体点位置と眼の回
旋中心点との距離である物体点距離を求める原画像作成
工程と、前記眼の前に配置するレンズ系上に前記中心視
線通過点を設定し、視野中心物体点から出射して前記中
心視線通過点を通過し、前記回旋中心点に向かう光線を
光線追跡法で求め、この求めたレンズ系の出射光線方向
を中心視線とする視野をレンズ系通過後視野と定義した
とき、このレンズ系通過後視野における前記原画像の各
画素の対応する物体点への視線の方向及びレンズ系通過
点を光線追跡法で求め、前記レンズ系による歪みを含め
た画像を作成する歪み原画像作成工程と、前記眼の光学
系として調節対応眼球モデルを導入し、前記原画像の各
画素に対し、前記原画像作成工程で得られた物体点距離
と、前記歪み原画像作成工程で得られた物体点から出射
する主光線のレンズ系通過点における度数に合わせて前
記眼球モデルの調節状態を設定し、前記レンズ系とその
主光線方向に合わせて回旋した眼球モデルとの合成光学
系において、前記物体点から出射する光による前記調節
対応眼球モデルの網膜上の輝度分布を表すPSF(Po
int Spread Function:点広がり関
数)を求めるPSF取得工程と、前記歪み原画像作成工
程で作成したレンズ系による歪みを含めた画像と前記P
SF取得工程で得られた各画素のPSFとの畳み込み演
算(convolution)を行ない、前記仮想三次
元空間に配置した仮想物体を特定の位置及び視線方向の
眼で前記レンズ系の特定位置を通して見た場合の回旋網
膜像を作成する畳み込み工程とを有することを特徴とす
る眼光学系のシミュレーション方法。
系を通して外界を観察したときの見え方をシミュレーシ
ョンする眼光学系のシミュレーション方法において、仮
想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる仮
想物体を作成して配置し、前記眼の位置、中心視線方向
及びレンズ系通過点を時系列に変えて見るストーリーを
作成し、そのストーリーにしたがって各時点で第2の発
明にかかる眼光学系のシミュレーション法を用いて回旋
網膜像を作成し、該各網膜像を編集して回旋網膜像の動
画像を作成することを特徴とする眼光学系のシミュレー
ション方法である。
の発明にかかる眼光学系のシミュレーション方法におい
て、前記PSF取得工程は、各該当画素の代表する物体
点から出射し、前記眼球モデルの入射瞳を均等に分割し
て設定した各点を通る光線のデータを全て光線追跡法で
求め、PSFを前記眼球モデルの網膜上の光線スポット
分布密度として、又は波動光学に基づく回折積分として
求めることを特徴とする眼光学系のシミュレーション方
法である。
の発明にかかる眼光学系のシミュレーション方法におい
て、前記PSF取得工程は、予め三次元物体空間に有限
数の物体標本点を設定し、また、前記入射瞳面上に有限
数の通過標本点を選び、前記物体標本点及び通過点標本
点との全ての組み合わせによる光線データを光線追跡法
で求め、スプライン補間係数データを作成し、前記原画
像の各画素の代表する物体点から出射し、入射瞳を均等
に分割した各点を通る光線データを前記予め準備したス
プライン補間係数データを用いてスプライン補間法で求
め、PSFを網膜上光線のスポット分布密度として、又
は波動光学に基づく回折積分法として求めることを特徴
とする眼光学系シミュレーション方法である。
の発明にかかる眼光学系のシミュレーション方法におい
て、前記PSF取得工程は、PSFを一定の関数近似さ
せてそのパラメータで表し、予め三次元物体空間に有限
数の物体標本点を選び、全ての物体標本点におけるPS
Fとその近似関数パラメータを求め、スプライン補間係
数データを作成し、前記原画像の各画素に関するPSF
パラメータを前記予め準備したスプライン補間係数デー
タを用いてスプライン補間法で求めることを特徴とする
眼光学系のシミュレーション方法である。
の発明にかかる眼光学系のシミュレーション方法におい
て、前記回旋網膜像又は前記回旋網膜像の動画像を画像
表示手段によって表示するとともに、これらの画像が前
記レンズ系のどの位置を通しての画像であるかを前記画
像表示手段に表示することを特徴とする眼光学系のシミ
ュレーション方法である。
系を通して外界を観察したときの見え方をシミュレーシ
ョンする眼光学系のシミュレーション装置において、仮
想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる仮
想物体を作成して配置し、この仮想物体が、特定の位置
に回旋中心点を置き且つ特定の中心視線方向を持つ眼に
入る特定視野角の画像を原画像として作成するととも
に、前記原画像の各画素の代表する物体点位置と眼の回
旋中心点との距離である物体点距離を求める原画像作成
手段と、前記眼の前に配置するレンズ系上に前記中心視
線通過点を設定し、視野中心物体点から出射して前記中
心視線通過点を通過し、前記回旋中心点に向かう光線を
光線追跡法で求め、この求めたレンズ系の出射光線方向
を中心視線とする視野をレンズ系通過後視野と定義した
とき、このレンズ系通過後視野における前記原画像の各
画素の対応する物体点への視線の方向及び医レンズ系通
過点を光線追跡法で求め、前記レンズ系による歪みを含
めた画像を作成する歪み原画像作成手段と、前記眼の光
学系として調節対応眼球モデルを導入し、前記原画像の
各画素に対し、前記原画像作成工程で得られた物体点距
離と、前記歪み原画像作成工程で得られた物体点から出
射する主光線のレンズ系通過点における度数に合わせて
前記眼球モデルの調節状態を設定し、前記レンズ系とそ
の視線方向に合わせて回旋した眼球モデルとの合成光学
系において、前記物体点から出射する光による前記調節
対応眼球モデルの網膜上の輝度分布を表すPSF(Po
int SpreadFunction:点広がり関
数)を求めるPSF取得手段と、前記歪み原画像作成工
程で作成したレンズ系による歪みを含めた画像と前記P
SF取得工程で得られた各画素のPSFとの畳み込み演
算(convolution)を行ない、前記仮想三次
元空間に配置した仮想物体を特定の位置及び視線方向の
眼で前記レンズ系の特定位置を通して見た場合の回旋網
膜像を作成する畳み込み手段とを有することを特徴とす
る眼光学系のシミュレーション装置である。
ズ系を通して外界を観察したときの見え方をシミュレー
ションする眼光学系のシミュレーション装置において、
仮想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる
仮想物体を作成して配置し、前記眼の位置、中心視線方
向及びレンズ系通過点を時系列に変えて見るストーリー
を作成し、そのストーリーにしたがって各時点で請求項
8に記載の眼光学系のシミュレーション装置を用いて回
旋網膜像を作成し、該各網膜像を編集して回旋網膜像の
動画像を作成する手段を有することを特徴とする眼光学
系のシミュレーション装置である。
かかる眼光学系のシミュレーション装置において、前記
回旋網膜像又は前記回旋網膜像の動画像を表示するとと
もに、これらの画像が前記レンズ系のどの位置を通して
の画像であるかを表示する画像表示手段を有することを
特徴とする眼光学系のシミュレーション装置である。
例1にかかる眼光学系のシミュレーション方法における
回旋網膜像作成の流れを示す図、図2は回旋網膜像の座
標系を示す図、図3はレンズ系を装用した場合の回旋網
膜像の座標系を示す図、図4はNavarro模型眼の
光学パラメータ(非調節状態)を示す図、図5はNav
arro模型眼の水晶体レンズの調節力依存式を示す
図、図6はPSFの説明図、図7は光線追跡と入射瞳と
の関係を示す図、図8は入射瞳の分割法を示す図、図9
は網膜位置と入射角度を示す図である。以下、これらの
図面を参照にしながら本発明の実施例1にかかる眼光学
系のシミュレーション方法を説明する。
ション方法は、コンピュータグラフィックスによって作
成した三次元物体像をレンズを通して見たときの回旋網
膜像の静止画像を得る方法である。なお、回旋網膜像と
は、本発明者等が見出だした一定の仮定に基づき、上記
三次元物体像に光学作用を考慮した画像処理を施すこと
によって、眼で知覚される像を近似的に再現した像であ
る。すなわち、回旋網膜像とは、眼の網膜面に投影され
る光学像ではなく、視野内の全ての物体点に対して眼球
を回旋させ、中心窩で捕らえた像を繋ぎ合わせた像とし
て定義される。
ョン方法は、大きく分けて、(1)原画像作成工程、
(2)歪み原画像作成工程、(3)PSF取得工程、
(4)畳み込み工程、とからなる。
ックスによる仮想物体を作成して配置し、この仮想物体
が、特定の位置に回旋中心点を置き且つ特定の中心視線
方向を持つ眼に入る特定視野角の画像を原画像として作
成するとともに、前記原画像の各画素の代表する物体点
位置と眼の回旋中心点との距離である物体点距離を求め
る工程である。以下説明する。
て、仮想三次元空間に仮想三次元物体を作成して配置す
る。例えば、室内に机、椅子、家具等を配置し、あるい
は、野外に花壇、樹木、標識等を配置した像を作成す
る。
き且つ特定の中心視線方向を持つ眼に入る特定視野角の
画像を原画像として作成する。すなわち、図2に示され
るように、特定視野として、視野四角錐A1 A2 A3 A
4 を設定する。視野四角錐A1 A2 A3 A4 の中心Aが
視野の中心である。Aと回旋中心Oとを結ぶ線が中心視
線であり、これをx軸とし、Oを原点とする。そして、
視野四角錐内の任意の物体点である任意の一点P(x,
y,z)の回旋網膜座標をΨ=tanβ=y/x,ζ=
tanγ=z/xとする。ここで、βとγとはP(x,
y,z)の方位角である。視野内の各物体点をこの座標
系で表せば空間上の任意の直線が回旋網膜像上直線とし
て映る。この座標系で各物体点を表した画像を原画像と
する。また、P(x,y,z)の座標値から各物体点距
離を求める。
線通過点を設定し、視野中心物体点から出射して前記中
心視線通過点を通過し、回旋中心点に向かう光線を光線
追跡法で求め、この求めたレンズ系の出射光線方向を中
心視線とする視野をレンズ系通過後視野と定義したと
き、このレンズ系通過後視野における原画像の各画素の
対応する物体点への視線の方向及びレンズ系通過点を光
線追跡法で求め、レンズ系による歪みを含めた画像を作
成する工程である。
おける原点OとAの中間におけるOに近い位置にレンズ
Lを配置する。視野四角錐内の物体点から出射された光
線はレンズLによって屈折されてO点に到達する。した
がって、A点を注視するためには眼球をOB方向に向け
なければならない。視野を表す視野四角錐もB1 B2B
3 B4 (レンズ系通過後視野)となる。そのときの回旋
網膜像はx´軸を注視線(中心視線)とした座標系をと
らなければならない。これをレンズ上各点の度数を考慮
して光線追跡によって求め、こうして求めた物体点座標
による像を歪み原画像とする。
合、視野内の各点の回旋網膜像上の座標が裸眼の場合と
異なり、相対位置関係が変化してしまう。これが眼鏡レ
ンズの歪みが発生する原因である。OB方向はレンズ使
用位置により変化する。特に累進レンズの場合は変化が
激しい。視野内の他の光線も眼に入射する角度が変化
し、特に累進レンズの場合その変化が不均等なので、揺
れや歪みとして知覚される。
入し、原画像の各画素に対し、原画像作成工程で得られ
た物体点距離と、歪み原画像作成工程で得られた物体点
から出射する主光線のレンズ系通過点における度数に合
わせて眼球モデルの調節状態を設定し、レンズ系とその
主光線方向に合わせて回旋した眼球モデルとの合成光学
系において、物体点から出射する光線による調節対応眼
球モデルの網膜上の輝度分布を表すPSF(Point
Spread Function:点広がり関数)を
求める工程である。
回旋網膜像であるので、眼の光学系のモデルの導入が必
要である。この場合、眼には物体距離に合わせて調節作
用があるので、それも考慮しなければならない。この実
施例では、調節作用も考慮した眼球モデルであるR・N
avarroらによる調節依存性眼球モデルを用いた。
Navarroのモデルでは近軸値のみならず、球面収
差と色収差も眼の実測値に合わせるようになっている。
簡単な4面構成で、そのうち3面は二次曲線の非球面で
ある。水晶体は屈折率分布構造になっておらず、追跡計
算が簡単である。曲率半径、厚み、非球面度は調節パワ
ーの対数に比例して変化する。図4にNavarroの
調節依存性眼球モデルの無調節時の光学パラメータを示
した。また、図5に調節依存するパラメータの依存式を
示した。非球面はy2 +z2 +(1+Q)x2 −2Rx
=0で表される。Qは非球面度である。
nt SpreadFunction:点広がり関数)
を求め、これを実画像と畳み込み演算(convolu
tion)を行なうことで求められる。このPSFは、
図6に示したように、実物体の一点から放射された光線
が結像面に集光される点(スポット)の集合状態を表す
関数であり、単位面積あたりのスポット数で表すことが
できる。完全な光学系であればPSFは結像点にすべて
のスポットが集まり、その分布は垂直な直線となるが、
通常は広がったガウス分布に類似した形状となる。物体
は点から構成されていると考えられるので、物体の輝度
分布とPSFのコンボリューションでその像が得られ
る。
PSFを求めるための光学系において追跡光線と入射瞳
の関係を示す図である。物体点Pからの光線は、レンズ
表面Q点で屈折され、射出方向は変化し、回旋点Oに到
達する。眼には物体点Pが射出光線方向QOの延長線上
にあるように見える。このように、Pを見るときはまず
眼球の光軸をQO方向に回旋し、そしてPの距離および
Q点の屈折力に合わせて調節度を決め、調節を行う。こ
の時点で光学系が固まり、PSFを求めることができ
る。
れ、入射瞳を均等に分割した多数の領域の中心を通過し
た光線の、結像面上のスポットの密度である。入射瞳の
位置は、厳密にいうと瞳孔の物体側共役点である。しか
し、瞳孔位置は回旋によって変化し、調節状態によって
もその共役点の位置が異なる。一方、回旋中心の位置は
固定であるうえ、瞳孔の共役点との距離が物体距離に比
べて微小である。したがって、裸眼の場合入射瞳の位置
は回旋中心と考えても差し支えない。眼鏡を装用したと
き、光学系全体の入射瞳は回旋中心点の眼鏡レンズに対
する共役点だが、累進レンズの場合通過点によってパワ
ーが異なり、その位置が微妙に変化する。その変化量も
物体距離に比較して微小であるので、入射瞳の位置はP
Qの延長線上のO´点にあり、PO=PO´と仮定する
ことができる。
分布の多数の小領域に分割することが重要である。図8
のように、格子分割と輪帯分割の二種類の分割法があ
る。格子分割は良い均等性が得られるが、四隅の無駄な
部分があるため、予定光線の70%程度しか追跡できな
い。一方輪帯分割では個の輪帯で本の光線を追跡でき、
輪帯の位相角を調整してスポットの均等性を上げること
ができる。この実施例では輪帯分割法を採用した。
入射瞳の均等分割点を通過する多数の光線を追跡し、網
膜面上のスポットを数えることで得られる。ところが、
このPSFは網膜位置(ym ,zm )の関数であり、回
旋角の正接(Ψ,ζ)を座標とする回旋網膜像とは直接
コンボルーション演算することができない。したがっ
て、網膜位置に対応する入射光線の角度を求める必要が
ある。ほとんどの場合(ym ,zm )は光軸から近いの
で、近軸光学の式を適用できる。つまり、図9のよう
に、(ym ,zm )に対応する入射光線の光軸からの偏
角(βm ,γm )はtanβm =ym /f,tanγm
=zm /fである。ここで、fは眼球の焦点距離であ
る。厳密には物体距離と目の調節状態により入射角と網
膜位置の関係式は変わるが、目の場合、物体距離が焦点
距離に比べて非常に長いので、無限遠方と見なすことが
できる。
と、網膜位置(ym ,zm )に対応する注視線からの角
度は、Pの方向角度(β,γ)からさらに(βm ,
γm )偏角したものである。ここで注意したいのは、そ
の角度は一般に(β+βm ,γ+γm )とはならず、リ
スティング回旋の法則を用いて求める必要がある。この
ように、光線追跡で求めた網膜上のPSF(ym ,
zm )を入射光線角度座標上のPSF(Ψ,ζ)に変換
することができ、物体の輝度分布とのコンボルーション
が可能になった。図10に、以上説明したPSF取得の
概略手順を纏めてPSF取得方法一として示した。
よる歪みを含めた歪み原画像とPSF取得工程で得られ
た各画素のPSFとの畳み込み演算(convolut
ion)を行ない、仮想三次元空間に配置した仮想物体
を特定の位置及び視線方向の眼でレンズ系の特定位置を
通して見た場合の回旋網膜像を作成する工程である。畳
み込み演算は、例えば、以下のようにして行なう。像面
での理想像の光強度分布をf(μ,ν)、点(μ,ν)
におけるPSFをp(x,μ,u,v)とすると、網膜
上の点(μ,ν)における光強度は下記式で表される。
各点(u,v)から(u−μ,v−ν)離れた点におけ
るPSFの値である。また、aはPSFの広がり半径で
ある。この式を用い、網膜上の全ての点において光強度
を求めることにより、回旋網膜像の静止画像を得ること
ができる。図11は実施例1の方法によって得られた回
旋網膜像の静止画像の例を示す図である。この例は右目
遠用0.00D 加入2.00Dの眼鏡用累進レンズ
(HOYALUX GP;ホーヤ株式会社の商品名)の近用部分を
通して、卓面にある印刷物を333mm の距離で見た場合の
回旋網膜像である。視野は左右50°、上下38.5°であ
る。右上隅の円形は中心視線のレンズ通過点位置を示す
ための表示である。この通過点位置は、図では識別でき
ないが、円形内に赤色の点で示される。この円形はレン
ズの輪郭を表し、円形内の中心に付された点はレンズの
幾何中心を示し、幾何中心の上下の○印は遠用測定点
(上)及び近用測定点(下)を示す。R文字を裏にした
マークは右レンズであることを示す。図11の例は中心
視線のレンズ通過点が近用測定点(下の○)上にある場
合の例である。左右におけるボケと歪みが如実に再現さ
れていることがわかる。
のレンズ系を通して見たときに知覚されるボケや歪みを
近似的に再現した画像が得られる。すなわち、健常裸眼
であれば視野全体が鮮明に知覚されるが、老眼者が累進
多焦点レンズを装用した場合には、視野の一部のみが鮮
明に見え、他の部分はボケや歪みをともなって見える。
この実施例によれば、そのような老眼者が知覚するであ
ろう像を画像として再現できる。したがって、得られた
画像を表示装置に表示すれば、老眼でもない設計者自身
が自ら設計した累進多焦点レンズの見え味を装用者の立
場に立って確認することができるという、最も望ましい
評価が可能になる。
ける回旋網膜像の静止画像を、眼の位置と視線方向を変
えながら時系列に多数作成し、回旋網膜像の動画像を得
る例である。したがって、この実施例は、原画像を作成
する際に、眼の位置と視線方向とを時系列にどのように
変えるかのストーリーを作成する工程と、時系列に得ら
れた1枚1枚の静止画像を編集して動画像にする工程と
を付加する外は基本的に実施例1と同じであるので、図
11に全体の流れを示す図を掲げてその詳細説明は省略
する。なお、ストーリーには、レンズ通過点のストーリ
ーも必要であることは勿論である。また、ストーリー作
成の方法としては、全ての時刻での眼の位置、視線方向
及びレンズ通過点を定めるのではなく、スプライン補間
法をとれば、滑らかな視線移動が実現される。
等に最も時間を要する工程がPSF取得工程である。特
に、レンズ系が累進多焦点レンズである場合には、全て
の視線方向におけるPSFが異なるため、全ての画素に
対してPSFを求める必要がある。例えば、800 ×600
の画像で、PSFを求めるときに追跡する光線の本数を
400 (決して多くない)に設定すると、全体に 192,00
0,000回光線追跡計算を行うことになる。光学系の面の
複雑さや面数にもよるが、コンピュータの計算能力が秒
間3,000 本と仮定すると、64,000秒、つまり17時間46分
40秒になる。これは、まだ畳み込み演算などの必要時間
を考慮に入れていない場合の計算時間である。今回のシ
ミュレーションは動画を目標とするので、秒間30コマ
で、一分間の映像を作成するために1800枚の画像をシミ
ュレーションしなければならない。すると、光線追跡の
時間だけでも32,000時間=1333日、約3 年8 ヶ月かか
る。したがって、PSF を光線追跡だけに頼って求めるこ
とは、理論的には可能だが、計算量の膨大さから考える
ととても現実的ではない。
て光線追跡するのではなく、標本点だけに光線追跡を行
い、その他の点についてはスプライン補間で求める方法
である。空間上任意点Aは、直交座標(x,y,z)で
表現しても良いが、眼鏡の場合眼からの距離が重要なの
で、回旋点からの距離の逆数D1 と方位角の正接ψ,ζ
で表した方が適切である。つまり、
ち仮入射瞳平面上任意点(yp ,zp)を通過する光線
を追跡して得られる光線データ(網膜上の交点に対応す
る入射光線のtkm ,cfm 、光路長など)は、D1 ,
ψ,ζ,yp ,zp の関数である。すなわち、tkm =
Ft (D1 ,ψ,ζ,yp ,zp )、ckm =Fc (D
1 ,ψ,ζ,yp ,zp )、pkm =Fp (D1 ,ψ,
ζ,yp ,zp )で表現することができる。色収差を考
える場合は更に波長次元を追加するとよい。各変数
D1 ,ψ,ζ,yp ,zp それぞれの所定範囲内に適当
な数、位置に標本点を設け、その5 次元格子上のすべて
の標本点に対して、あらかじめ光線追跡を行って光線デ
ータを求めれば、所定範囲内(5 次元ボックス)任意点
についての光線データをスプライン補間によって求める
ことができる。
る。一次元スプライン補間は、
の係数、nは標本点数である。Ni (x)はi番節点に
対応する基底関数であり、階数Mの場合、i番節点とi
+M番節点との間の範囲でゼロでない値を持ち、隣接節
点間はm−1次多項式で表される(基底関数の局部
性)。言い換えると、xの定義域内の点任意aにおいて
は、多くてM個のゼロでないNi (x)しか存在しな
い。したがって、補間式は一見n項あるように見える
が、x=aにおいては実質M項であり、M回の掛け算と
M回の足し算でF(a)が得られる。五次元スプライン
補間は、
は各次元の節点番号であり、それぞれ標本点数だけ変化
する。つまり、項の数は各次元の標本点数の積になるわ
けである。しかし、上述の基底関数の局部性により、あ
る一点については、ゼロでない項の数は、各次元の階数
の積である。各次元のスプライン階数が4の場合、項の
数は45 =1024である。つまり一回の補間演算では、足
し算1024回、掛け算1024×5 =5120回行うことになる。
一般的には、nj次元のM階スプライン補間演算に必要
な掛け算の回数は、nj×Mnjであり、次元数が大きく
なるにつれて急激に計算負担が増える。ところが、上式
を、
これは、1次元の補間のネスト構造であり、次元の順番
は自由に変えることができる。掛け算と足し算はともに
4 +4×(4 +4 ×(4 +4 ×4 )))=1364回であ
り、ほぼ1/3の計算時間で済む。一般的には、nj次元
のM階スプライン補間演算に必要な掛け算の回数は、
まだ計算量が大きく、実用的でない。一般的に、多次元
スプライン補間の演算時間を上記の方法より更に短縮す
ることは困難であろう。しかし、PSFを求める場合
は、その特殊な事情ゆえに、もっと短縮する方法があ
る。物体上一点(D0 ,ψ0 ,ζ0 )のPSFを求める
ためには、入射瞳面(yp ,zp 平面)上多数(例えば
400 )の点と結ぶ光線データが必要である。400 回五次
元スプライン補間の三次元の変数は同じ値を入れること
になる。もし、その400 回の補間を二次元スプライン補
間で行えば、計算時間の大幅短縮が可能である。五次元
スプライン補間式を次のように書きかえる。
三次元の変数が確定した場合の二次元空間を求める方法
を表している。ここで、この二次元スプラインを点(D
0 ,ψ0 ,ζ0 )の縮退空間といい、cl,m は縮退スプ
ラインの係数である。もちろん縮退スプラインの節点、
基底関数はすべて五次元スプラインと同一である。c
l,m の数は標本点数の積で、yp ,zp 両次元それぞれ
9 点の標本点を設定する場合、81個である。各係数を求
めるには、式のように三次元スプライン補間を用いる。
そして、得られたcl,m を用いて、yp ーzp 面上任意
一点の光線データを二次元スプライン補間計算すること
ができる。したがって、81回の三次元補間と400 回の二
次元補間計算を行うだけで、点cにおけるPSfを得る
ことができる。掛け算の回数は、81×{4 /(4-1 )}
(4 3 -1 )+400 ×{4 /(4-1 )}(4 2 -1 )=1480
4 回であり、1 光線あたり約37回である。400 回の五次
元補間より、計算量の削減効果は顕著である。上記の方
法を活用すると、光線追跡の1 /10の時間で光線データ
が得られる。図12に、以上説明したPSF取得の概略
手順を纏めてPSF取得方法二として示した。
上述の通り、光線データを光線追跡の代わりにスプライ
ン補間法で計算することによって、10倍の計算速度を実
現した。それにしても、一分間の映像を作成するのに、
3 年8 ヶ月(44 ヶ月) の所用時間を、4.4 ヶ月に短縮し
たに過ぎない。1 コマ当たりの処理時間でいうと、6400
0 秒(17 時間46分40秒) が6400秒(1時間46分40秒) に短
縮しただけである。実用的には1 コマ当たりの処理時間
を数分にしたいのである。現状の方法では、PSFを取
得するための計算がもっとも時間がかかるので、それを
短縮するのが一番効果的である。
PSFを取得するには、多数の光線を追跡または補間
し、その光線密度を求めなければならない。しかも得ら
れたPSF は画素単位の離散関数であり、密度も画素当た
りの光線数の形になる。光線が集中している場合( 焦点
が合っている) は、少数の画素に多量の光線数が入り、
連続関数に近いが、広範囲に散らばる( 焦点が合わな
い) 場合、単位画素に入る光線数が少なく、誤差が大き
い。それをカバーするためにはますます多量の光線が必
要となる。そこで、PSFをあらかじめ連続関数に仮定
し、そのパラメータを光線追跡のデータを用いて当ては
めるようにすれば、上記のジレンマから脱出することが
できる。そして、すべての物体点においてのパラメータ
を求める必要がなく、標本点を定めて、スプライン補間
(三次元) で求めることができる。
のかの点について検討すると、ほとんどのPSFは山の
形になっているから、二次元正規分布が適切であろと考
えられる。つまり、
光線からの偏移量、σμ,σν,ρは正規分布のパラメ
ータである。これらのパラメータは下記の性質を持って
いる。 −1<ρ<1 σμ>0 σν>0 楕円
形の形σμ/σνとρによって形が決められ、半径数c
によって大きさが決められる。楕円の方程式を極座標に
書き換えると、c=1のときの楕円は、
の最大値と最小値、つまり楕円の長短軸の長さは、
ボケ方向や程度を評価するための重要な量である。
りの程度(σμ,σν)と非点ボケの程度(等確率楕円
長短軸比)、角度(長軸の角度)を表すことができる。
もちろんPSFの光学系の状態による無限に近い変化を
忠実に表すことはできないが、PSFを表現する簡略関
数として有効であろう。
ν,ρを、光線データから求める方法を考えると、
(μ,ν)平面に散布する多数の光線の交点(各交点が
入射瞳上の各分割点に対応)の統計値を求めて、σμ,
σν,ρにあてる方法を自然に浮かぶ。つまり、
座標である。σμ0 ,σν0 ,ρはあくまで分布の統計
量であり、近似正規分布のパラメータとしては、多くの
場合適当ではない。図14はその例を示している。左側
の山はその交点密度を示し、右側の山はσμ0 ,
σν0 ,ρをパラメータとした正規分布を示している。
接適用した正規分布を採用した場合、主軸方向および長
短軸比は実際の分布に即しているが、広がりの程度が実
際の分布とかなりかけ離れている。したがって、適当な
比例係数kを定め、σμ=kσμ0 、σν=kσν0 を
適用すれば、実際の分布にかなり近い近似が得られると
考えられる。問題は如何にkを決めるかということにな
るが、これについては、等確率楕円内部の確率P(c)
と半係数cの関係曲線にヒントを得ることができよう。
パラメータがσμ=kσμ0 ,σν=kσν0 ,ρに変
更した場合の正規分布のP(c)曲線はPk (c)=1
−exp(−c2 /2 k2 )である。それを実際分布の
Pr (c)曲線に近づけるようにkを決めればよい。
k (c),Pr (c)の曲線をプロットしたものであ
る。PSF分布の近似を求める場合、特に中心部分が重
要である。したがって、cが小さい時のPr (c)曲線
になるべく近いPk (c)が望ましい。統計値σμ0 ,
σν0 ,ρをそのまま適用した場合の曲線P(c)は、
実際の分布Pr (c)とは離れており、近似分布関数と
しては不適である。一方k=0.65のσμ=k
σμ0 ,σν=kσν0 ,ρを適用した正規分布の曲線
Pk(c)は中心付近にPr (c)曲線と一致する部分
が多く、実際の分布に近い近似であることが伺える。図
16はσμ=kσμ0 ,σν=kσν0 ,ρを正規分布
と実際の分布との比較である。
て、以下の方法を採っている。まず、Pr (c)曲線と
Pk (c)曲線の交わる点Aの確率P0 の値を決める。
中心付近重視ということで、ここではP0 =0.1 とす
る。P(c)曲線上P(c)=P0 の点では、
Cr /C0 となる。
k (c)との差を中心付近で最小にするなど)考えられ
るが、上記の方法がもっとも簡単である。このように、
物体空間上任意一点(D0 ,ψ0 ,ζ0 )のPSF分布
関数を、パラメータσμ,σν,ρをもつ二次元正規分
布関数で近似することができる。もちろんシミュレーシ
ョンの過程に遭遇するすべての物体点に対してσμ,σ
ν,ρを求める必要がなく、標本点でのσμ,σν,ρ
だけをあらかじめ求めておいて、それを用いて任意物体
点においてのσμ,σν,ρをスプライン補間で求める
ことができる。それによって、計算時間を大幅に節約で
きる。
よって、1 コマ当たりの処理時間を1 時間46分40秒から
2 〜10分程度に短縮することに成功した。処理時間に幅
があるのは、ボケの程度によって処理時間が変わるから
である。一分間の映像を作成するのに、およそ100 時
間、つまり一週間程度である。図17に、以上説明した
PSF取得の概略手順を纏めてPSF取得方法三として
示した。
ズ等のレンズ系を通して見たときに知覚されるボケや歪
みに加えて、眼の位置を変えたり視線を移動した場合の
揺れを再現した動画像が得られる。したがって、得られ
た動画像を表示装置に表示することにより、あたかも自
らが装用者になったような臨場感に溢れるれる評価が可
能になる。この回旋網膜像の動画像の表示顔面に視線が
レンズを通過する点を表示するようにすれば、視線のレ
ンズ上での移動を確認しながら、ボケ、歪み揺れを見る
ことができる。
ンを行なうための装置について簡単に説明する。図18
は実施例のシミュレーションを行なうための装置の概略
構成を示すブロック図である。図18に示したように、
この装置は、プロセッサ61、読取専用目盛(ROM)
62、メインメモリ63、グラフィック制御回路64、
表示装置65、マウス66、キーボード67、ハードデ
ィスク装置(HDD)68、フロッピーディスク装置
(FDD)69、プリンタ70、磁気テープ装置71等
から構成されている。これらの要素は、データバス72
によって結合されている。
御する。読取専用メモリ62には立ち上げ時に必要なプ
ログラムが格納される。メインメモリ63にはシミュレ
ーションを行なうためのシミュレーションプログラムが
格納される。グラフィック制御回路64はビデオメモリ
を含み、得られた画像データを表示信号に変換して表示
装置65に表示する。マウス66は表示装置上の各種の
アイコン、メニュー等を選択するポインティングデバイ
スである。ハードディスク装置68はシステムプログラ
ム、シミュレーションプログラム等が格納され、電源投
入後にメインメモリ63にローディングされる。また、
シミュレーションデータを一時的に格納する。
タ等の必要なデータをフロッピー69aを通じて入力し
たり、必要に応じてフロッピー69aにセービングす
る。プリンタ装置70は回旋網膜像等をプリントアウト
するのに用いられる。磁気テープ装置71は必要に応じ
てシミュレーションデータを磁気テープにセービングす
るのに使用する。なお、以上のべた基本構成を有する装
置としては、高性能のパーソナルコンピュータや一般の
汎用コンピュータを用いて構成することができる。
光学系のシミュレーション方法及び装置は、レンズ系を
通して眼によって知覚される像として、眼の網膜面に投
影される光学像ではなく、視野内の全ての物体点に対し
て眼球を回旋させ、中心窩で捕らえた像を繋ぎ合わせた
像として定義される回旋網膜像をコンピュータシミュレ
ーションによって作成して用いることを特徴とするもの
で、さらに、回旋網膜像の作成は、特定の回旋中心点を
持つ眼に入る特定視野角の画像を原画像として作成する
原画像作成工程と、この原画像をレンズ系を通して見た
場合の歪みを伴う歪み原画像を光線追跡法を用いて作成
する歪み原画像作成工程と、レンズ系及び眼鏡モデルよ
りなる光学系において原画像の物体点からの光による眼
球モデルの網膜上のPSFを求めるPSF取得工程と、
歪み原画像作成工程で求めた歪み原画像と、PSF取得
工程で求めた原画像の各画素のPSFとの畳み込み演算
をすることによって行なうことを特徴とし、さらに、得
られた回旋網膜像を編集して回旋網膜像の動画像を求め
ることを特徴とし、さらに、PSF作成工程は、物体点
に標本点を設定してPSFを求め、標本点以外のPSF
をスプライン補間法を含む近似法を用いて求めることを
特徴とする。これにより、累進多焦点レンズ等のレンズ
系を装用した場合における揺れ、歪み、ボケ等を伴う見
え方をもシミュレーション可能とする眼光学系のシミュ
レーション方法及び装置を得ることを可能としたもので
ある。
を示す図である。
節状態)を示す図である。
依存式を示す図である。
る。
近似正規分布を示す図である。
す図である。
よる近似正規分布を示す図である。
方法を実施するための装置の構成を示すブロック図であ
る。
2)
ズ系を通して外界を観察したときの見え方をシミュレー
ションする眼光学系のシミュレーション装置において、
仮想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる
仮想物体を作成して配置し、前記眼の位置、中心視線方
向及びレンズ系通過点を時系列に変えて見るストーリー
を作成し、そのストーリーにしたがって各時点で第9の
発明にかかる眼光学系のシミュレーション装置を用いて
回旋網膜像を作成し,該各網膜像を編集して回旋網膜像
の動画像を作成する手段を有することを特徴とする眼光
学系のシミュレーション装置である。
ける回旋網膜像の静止画像を、眼の位置と視線方向を変
えながら時系列に多数作成し、回旋網膜像の動画像を得
る例である。したがって、この実施例は、原画像を作成
する際に、眼の位置と視線方向とを時系列にどのように
変えるかのストーリーを作成する工程と、時系列に得ら
れた1枚1枚の静止画像を編集して動画像にする工程と
を付加する外は基本的に実施例1と同じであるので、図
12に全体の流れを示す図を掲げてその詳細説明は省略
する。なお、ストーリーには、レンズ通過点のストーリ
ーも必要であることは勿論である。また、ストーリー作
成の方法としては全ての時刻での眼の位置、視線方向及
びレンズ通過点を定めるのではなく、スプライン補間法
をとれば、滑らかな視線移動が実現される。
三次元の変数が確定した場合の二次元空間を求める方法
を表している。ここで、この二次元スプラインを点(D
O,ψO,ζO)の縮退空間といい、Cl,m は縮退スプラ
インの係数である。もちろん縮退スプラインの節点、基
底関数はすべて五次元スプラインと同一である。c l,m
の数は標本点数の積で、yp,zp両次元それぞれ9点の
標本点を設定する場合、81個である。各係数を求めるに
は、式のように三次元スプライン補間を用いる。そし
て、得られたcl,mを用いて、yp−zp面上任意一点の
光線データを二次元スプライン補間計算することができ
る。したがって、81回の三次元補間と400回の二次元補
間計算を行うだけで、点cにおけるPSfを得ることが
できる。掛け算の回数は、81×{4/(4−1)}(43−
1)+400×{4/(4−1)}(42−1)=14804回であ
り、1光線あたり約37回である。400回の五次元補間よ
り、計算量の削減効果は顕著である。上記の方法を活用
すると、光線追跡の1/10の時間で光線データが得られ
る。図13に、以上説明したPSF取得の概略手順を纏
めてPSF取得方法二として示した。
形の形σμ/σνとρによって形が決められ、半径数c
によって大きさが決められる。楕円の方程式を極座標に
書き換えると、c=1のときの楕円は、
最大値と最小値、つまり楕円の長短軸の長さは
ボケ方向や程度を評価するための重要な量である。
適用した正規分布を採用した場合、主軸方向および長短
軸比は実際の分布に即しているが、広がりの程度が実際
の分布とかなりかけ離れている。したがって、適当な比
例係数kを定め、σμ=kσμ0,σν=kσν0を適用
すれば、実際の分布にかなり近い近似が得られると考え
られる。問題は如何にkを決めるかということになる
が、これについては、等確率楕円内部の確率P(c)と
半係数cの関係曲線にヒントを得ることができよう。パ
ラメータがσμ=kσμ0,σν=kσν0,ρに変更し
た場合の正規分布のP(c)曲線はPk(c)=1−ex
p(−c2/2k2)である。それを実際分布のPγ
(c)曲線に近づけるようにkを決めればよい。
k(c),Pγ(c)の曲線をプロットしたものであ
る。PSF分布の近似を求める場合、特に中心部分が重
要である。したがって、cが小さい時のPγ(c)曲線
になるべく近いPk(c)が望ましい。統計値σμ0,σ
ν0,ρをそのまま適用した場合のP(c)曲線は、実
際の分布Pγ(c)とは離れており、近似分布関数とし
ては不適である。一方k=0.65のσμ=kσμ0,
σν=kσν0,ρを適用した正規分布の曲線Pk(c)
は中心付近にPγ(c)曲線と一致する部分が多く、実
際の分布に近い近似であることが伺える。図17はσμ
=kσμ0,σν=kσν0,ρを正規分布と実際の分布
との比較である。
よって、1コマ当たりの処理時間を1時間46分40秒から2
〜10分程度に短縮することに成功した。処理時間に幅が
あるのは、ボケの程度によって処理時間が変わるからで
ある。一分間の映像を作成するのに、およそ100時間、
つまり一週間程度である。図18に、以上説明したPS
F取得の概略手順を纏めてPSF取得方法三として示し
た。
ンを行なうための装置について簡単に説明する。図19
は実施例のシミュレーションを行なうための装置の概略
構成を示すブロック図である。図19に示したように、
この装置は、プロセッサ61、読取専用メモリ(RO
M)62、メインメモリ63、グラフィック制御回路6
4、表示装置65、マウス66、キーボード67、ハー
ドディスク装置(HDD)68、フロッピーディスク装
置(FDD)69、プリンタ70、磁気テープ装置71
等から構成されている。これらの要素は、データバス7
2によって結合されている。
Claims (11)
- 【請求項1】 眼の前に配置されたレンズ系を通して外
界を観察したときの見え方をシミュレーションする眼光
学系のシミュレーション方法において、 前記レンズ系を通して眼によって知覚される像として、
眼の網膜面に投影される光学像ではなく、視野内の全て
の物体点に対して眼球を回旋させ、中心窩で捕らえた像
を繋ぎ合わせた像として定義される回旋網膜像をコンピ
ュータシミュレーションによって作成して用いることを
特徴とする眼光学系のシミュレーション方法。 - 【請求項2】 眼の前に配置されたレンズ系を通して外
界を観察したときの見え方をシミュレーションする眼光
学系のシミュレーション方法において、 前記レンズ系を通して眼によって知覚される像として、
眼の網膜面に投影される光学像ではなく、視野内の全て
の物体点に対して眼球を回旋させ、中心窩で捕らえた像
を繋ぎ合わせた像として定義される回旋網膜像を作成し
て用いるようにし、この回旋網膜像を作成する工程とし
て、 特定の回旋中心点を持つ眼に入る特定視野角の画像を原
画像として作成する原画像作成工程と、 この原画像をレンズ系を通して見た場合の歪みを伴う歪
み原画像を光線追跡法を用いて作成する歪み原画像作成
工程と、 レンズ系及び眼鏡モデルよりなる光学系において原画像
の物体点からの光による眼球モデルの網膜上のPSFを
求めるPSF取得工程と、 歪み原画像作成工程で求めた歪み原画像と、PSF取得
工程で求めた原画像の各画素のPSFとの畳み込み演算
をする畳み込み演算工程とを有することを特徴とする眼
光学系のシミュレーション方法。 - 【請求項3】 眼の前に配置されたレンズ系を通して外
界を観察したときの見え方をシミュレーションする眼光
学系のシミュレーション方法において、 仮想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる
仮想物体を作成して配置し、この仮想物体が、特定の位
置に回旋中心点を置き且つ特定の中心視線方向を持つ眼
に入る特定視野角の画像を原画像として作成するととも
に、前記原画像の各画素の代表する物体点位置と眼の回
旋中心点との距離である物体点距離を求める原画像作成
工程と、 前記眼の前に配置するレンズ系上に前記中心視線通過点
を設定し、視野中心物体点から出射して前記中心視線通
過点を通過し、前記回旋中心点に向かう光線を光線追跡
法で求め、この求めたレンズ系の出射光線方向を中心視
線とする視野をレンズ系通過後視野と定義したとき、こ
のレンズ系通過後視野における前記原画像の各画素の対
応する物体点への視線の方向及びレンズ系通過点を光線
追跡法で求め、前記レンズ系による歪みを含めた画像を
作成する歪み原画像作成工程と、 前記眼の光学系として調節対応眼球モデルを導入し、前
記原画像の各画素に対し、前記原画像作成工程で得られ
た物体点距離と、前記歪み原画像作成工程で得られた物
体点から出射する主光線のレンズ系通過点における度数
に合わせて前記眼球モデルの調節状態を設定し、前記レ
ンズ系とその主光線方向に合わせて回旋した眼球モデル
との合成光学系において、前記物体点から出射する光に
よる前記調節対応眼球モデルの網膜上の輝度分布を表す
PSF(Point Spread Functio
n:点広がり関数)を求めるPSF取得工程と、 前記歪み原画像作成工程で作成したレンズ系による歪み
を含めた画像と前記PSF取得工程で得られた各画素の
PSFとの畳み込み演算(convolution)を
行ない、前記仮想三次元空間に配置した仮想物体を特定
の位置及び視線方向の眼で前記レンズ系の特定位置を通
して見た場合の回旋網膜像を作成する畳み込み工程とを
有することを特徴とする眼光学系のシミュレーション方
法。 - 【請求項4】 眼の前に配置されたレンズ系を通して外
界を観察したときの見え方をシミュレーションする眼光
学系のシミュレーション方法において、 仮想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる
仮想物体を作成して配置し、前記眼の位置、中心視線方
向及びレンズ系通過点を時系列に変えて見るストーリー
を作成し、そのストーリーにしたがって各時点で請求項
2又は3に記載の眼光学系のシミュレーション法を用い
て回旋網膜像を作成し、該各網膜像を編集して回旋網膜
像の動画像を作成することを特徴とする眼光学系のシミ
ュレーション方法。 - 【請求項5】 請求項2ないし4のいずれかに記載の眼
光学系のシミュレーション方法において、 前記PSF取得工程は、各該当画素の代表する物体点か
ら出射し、前記眼球モデルの入射瞳を均等に分割して設
定した各点を通る光線のデータを全て光線追跡法で求
め、PSFを前記眼球モデルの網膜上の光線スポット分
布密度として、又は波動光学に基づく回折積分として求
めることを特徴とする眼光学系のシミュレーション方
法。 - 【請求項6】 請求項2ないし4のいずれかに記載の眼
光学系のシミュレーション方法において、 前記PSF取得工程は、予め三次元物体空間に有限数の
物体標本点を設定し、また、前記入射瞳面上に有限数の
通過標本点を選び、前記物体標本点及び通過点標本点と
の全ての組み合わせによる光線データを光線追跡法で求
め、スプライン補間係数データを作成し、 前記原画像の各画素の代表する物体点から出射し、入射
瞳を均等に分割した各点を通る光線データを前記予め準
備したスプライン補間係数データを用いてスプライン補
間法で求め、PSFを網膜上光線のスポット分布密度と
して、又は波動光学に基づく回折積分法として求めるこ
とを特徴とする眼光学系シミュレーション方法。 - 【請求項7】 請求項2ないし4のいずれかに記載の眼
光学系のシミュレーション方法において、 前記PSF取得工程は、PSFを一定の関数近似させて
そのパラメータで表し、予め三次元物体空間に有限数の
物体標本点を選び、全ての物体標本点におけるPSFと
その近似関数パラメータを求め、スプライン補間係数デ
ータを作成し、 前記原画像の各画素に関するPSFパラメータを前記予
め準備したスプライン補間係数データを用いてスプライ
ン補間法で求めることを特徴とする眼光学系のシミュレ
ーション方法。 - 【請求項8】 請求項2ないし7のいずれかに記載の眼
光学系のシミュレーション方法において、 前記回旋網膜像又は前記回旋網膜像の動画像を画像表示
手段によって表示するとともに、これらの画像が前記レ
ンズ系のどの位置を通しての画像であるかを前記画像表
示手段に表示することを特徴とする眼光学系のシミュレ
ーション方法。 - 【請求項9】 眼の前に配置されたレンズ系を通して外
界を観察したときの見え方をシミュレーションする眼光
学系のシミュレーション装置において、 仮想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる
仮想物体を作成して配置し、この仮想物体が、特定の位
置に回旋中心点を置き且つ特定の中心視線方向を持つ眼
に入る特定視野角の画像を原画像として作成するととも
に、前記原画像の各画素の代表する物体点位置と眼の回
旋中心点との距離である物体点距離を求める原画像作成
手段と、 前記眼の前に配置するレンズ系上に前記中心視線通過点
を設定し、視野中心物体点から出射して前記中心視線通
過点を通過し、前記回旋中心点に向かう光線を光線追跡
法で求め、この求めたレンズ系の出射光線方向を中心視
線とする視野をレンズ系通過後視野と定義したとき、こ
のレンズ系通過後視野における前記原画像の各画素の対
応する物体点への視線の方向及びレンズ系通過点を光線
追跡法で求め、前記レンズ系による歪みを含めた画像を
作成する歪み原画像作成手段と、 前記眼の光学系として調節対応眼球モデルを導入し、前
記原画像の各画素に対し、前記原画像作成工程で得られ
た物体点距離と、前記歪み原画像作成工程で得られた物
体点から出射する主光線のレンズ系通過点における度数
に合わせて前記眼球モデルの調節状態を設定し、前記レ
ンズ系とその光線方向に合わせて回旋した眼球モデルと
の合成光学系において、前記物体点から出射する光線に
よる前記調節対応眼球モデルの網膜上の輝度分布を表す
PSF(Point Spread Functio
n:点広がり関数)を求めるPSF取得手段と、 前記歪み原画像作成工程で作成したレンズ系による歪み
を含めた画像と前記PSF取得工程で得られた各画素の
PSFとの畳み込み演算(convolution)を
行ない、前記仮想三次元空間に配置した仮想物体を特定
の位置及び視線方向の眼で前記レンズ系の特定位置を通
して見た場合の回旋網膜像を作成する畳み込み手段とを
有することを特徴とする眼光学系のシミュレーション装
置。 - 【請求項10】 眼の前に配置されたレンズ系を通して
外界を観察したときの見え方をシミュレーションする眼
光学系のシミュレーション装置において、 仮想三次元空間内にコンピュータグラフィックスによる
仮想物体を作成して配置し、前記眼の位置、中心視線方
向及びレンズ系通過点を時系列に変えて見るストーリー
を作成し、そのストーリーにしたがって各時点で請求項
8に記載の眼光学系のシミュレーション装置を用いて回
旋網膜像を作成し、該各網膜像を編集して回旋網膜像の
動画像を作成する手段を有することを特徴とする眼光学
系のシミュレーション装置。 - 【請求項11】 請求項9又は10に記載の眼光学系の
シミュレーション装置において、 前記回旋網膜像又は前記回旋網膜像の動画像を表示する
とともに、これらの画像が前記レンズ系のどの位置を通
しての画像であるかを表示する画像表示手段を有するこ
とを特徴とする眼光学系のシミュレーション装置。
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