JP2000071380A - 樹脂部材付き透明窓体 - Google Patents

樹脂部材付き透明窓体

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JP2000071380A
JP2000071380A JP10250111A JP25011198A JP2000071380A JP 2000071380 A JP2000071380 A JP 2000071380A JP 10250111 A JP10250111 A JP 10250111A JP 25011198 A JP25011198 A JP 25011198A JP 2000071380 A JP2000071380 A JP 2000071380A
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Toshihiko Higuchi
俊彦 樋口
Satoshi Kondo
聡 近藤
Takashi Shibuya
崇 澁谷
Hirotsugu Yamamoto
博嗣 山本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ハードコート層が透明樹脂板の表面にあって
も、ハードコート層の上から一体化される樹脂部材との
充分な接着力がある樹脂部材付き窓体の提供。 【解決手段】紫外線硬化性被覆組成物から形成された硬
化物からなる内層とその内層に接したポリシラザンに由
来するシリカからなる最外層の2層で構成された透明硬
化物層2とが形成された透明樹脂板1の周縁部に、樹脂
部材3が一体化された樹脂部材付き透明窓体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明樹脂板を用い
た樹脂部材付き透明窓体に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車や建築物の窓開口に窓体を嵌め込
むにあたり、窓体と窓枠との間に介在される樹脂製の介
装部材(単に樹脂部材という)が窓体の周縁部に一体化
されることが多い。この場合、窓体にはガラス板(無機
ガラスをいう、以下同様)が用いられることが一般的で
ある。
【0003】ガラス板は重量が重いため、ガラスに代わ
る透明材料として透明プラスチック材料を用いた窓体が
提案されている。とりわけ芳香族ポリカーボネート樹脂
は耐破砕性、透明性、軽量性、易加工性などに優れ、そ
の特徴を生かして、外壁、アーケード等の大面積の透明
部材として各方面で使用されている。
【0004】こうした透明プラスチック材料をガラス板
の代替として使用するには表面の硬度が充分ではなく、
傷つきやすく磨耗しやすいことから透明性が損なわれや
すいという欠点を有している。そのため、透明プラスチ
ック材料からなる透明樹脂板の表面にハードコート層を
設けることにより、透明樹脂板の耐摩耗性向上が図られ
ている。こうしたハードコート層としては、アクリル系
のものやシリコーン系のものが例示できる。特に、耐摩
耗性向上の点では、シリコーン系のハードコート層はこ
れまで実際に用いられていたハードコート層として有効
だった。
【0005】ところで、前述のように窓体を窓枠に取り
付ける際には、窓体の周縁部に樹脂部材が設けられる。
この場合、窓体と樹脂部材との間に接着剤(多くはウレ
タン系接着剤)を介在させて、窓体と樹脂部材とを一体
化させている。ところが、接着窓体がシリコーン系のハ
ードコート層を有する透明樹脂板である場合、シリコー
ン系のハードコート層と接着剤との接着剤が充分に得ら
れないため、樹脂部材と透明樹脂板との一体化が困難で
あった。シリコーン系に比べて耐摩耗性に劣るアクリル
系のハードコート層の場合、若干接着力を上げることが
できるものの、それでも充分な接着力が得られないこと
があった。
【0006】そこで、特開平2−231223号公報
に、ハードコート層を有する透明樹脂板に樹脂部材を一
体化させる手段が提案されている。この公報に開示され
た手段によれば、透明樹脂板の周縁形状を異形形状と
し、樹脂部材との機械的係合力を付与することで、透明
樹脂板と樹脂部材との固定力を得ている。しかし、こう
した機械的係合力を得るためには、透明樹脂板の周縁形
状を異形形状にすることが不可欠であり、生産工程が煩
雑になるとともに、透明樹脂板の板厚を全体的に大きく
する必要があった。
【0007】一方で、上記のハードコート層が充分な耐
擦傷性や耐磨耗性を有するかという技術的課題もあっ
た。すなわち、基材たる透明樹脂板の耐擦傷性や耐磨耗
性を改良するために多くの試みがなされてきた。例え
ば、分子中にアクリロイル基等の重合性官能基を2個以
上有する重合硬化性化合物を基材に塗布し、熱または紫
外線等の活性エネルギー線により硬化させ、耐擦傷性に
優れた透明硬化物層を有する成形品を得る方法がある。
この方法は、被覆用の組成物も比較的安定で、特に紫外
線硬化が可能であるため生産性に優れ、成形品に曲げ加
工を施した場合でも硬化被膜にクラックが発生すること
がなく表面の耐擦傷性や耐磨耗性を改善できる。しか
し、硬化被膜が有機物のみからなることから表面の耐擦
傷性の発現レベルには限界がある。
【0008】一方、より高い表面硬度を基材に付与させ
るための方法として、金属アルコキシド化合物を基材に
塗布し熱により硬化させる方法がある。金属アルコキシ
ドとしてはケイ素系の化合物が広く用いられており、耐
磨耗性にきわめて優れた硬化被膜を形成できる。しか
し、硬化被膜と基材との密着性に乏しいため、硬化被膜
の剥離やクラックを生じやすい等の欠点があった。
【0009】これらの技術の欠点を改良する方法として
特開昭61−181809号公報に示されるようにアク
リロイル基を有する化合物とコロイド状シリカの混合物
を基材に塗布し、紫外線等の活性エネルギー線により硬
化させ、耐擦傷性に優れた透明硬化物層を形成する方法
がある。コロイド状シリカを重合硬化性化合物と併用す
ることにより、かなり高い表面硬度と生産性を両立させ
うる。しかし、まだその表面耐擦傷性の発現レベルにお
いて先の金属アルコキシド化合物を基材に塗布し熱によ
り硬化させる方法には劣っていた。
【0010】また、前記ケイ素系金属アルコキシド化合
物の代わりにポリシラザンを用いる、すなわち、ポリシ
ラザンを基材に塗布し熱等により硬化させる方法も知ら
れている(特開平8−143689)。ポリシラザンは
酸素の存在下で縮合反応や酸化反応が起こり、窒素原子
を含むこともあるシリカ(二酸化ケイ素)に変化すると
考えられており、最終的には実質的に窒素原子を含まな
いシリカの被膜が形成される。ポリシラザンに由来する
シリカの被膜は高い表面硬度を有する。しかし、この被
膜は金属アルコキシド化合物の場合と同様に被膜と基材
との密着性に乏しいため、被膜の剥離やクラックを生じ
やすい等の欠点がある。
【0011】さらに、特開平9−39161にはプラス
チックフィルム上に保護被膜を形成し、その表面にポリ
シラザン溶液を塗工してシリカの表面層を形成する方法
が記載されている。保護被膜はプラスチックフィルムが
ポリシラザン溶液の溶媒に侵されることを防ぐために設
けられている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ポリシラザン等から形
成されるシリカの層の表面は耐磨耗性を有することが知
られている。そして、表層がシリカの層であることか
ら、接着剤を介した樹脂部材の一体化において、シリカ
の層と樹脂部材との接着性も良好になると考えられる。
しかし、仮にシリカの層と樹脂部材との接着力が充分で
あっても、外力が樹脂部材付き透明樹脂板に加わった場
合の外力がシリカの層と透明樹脂板との界面により働く
ことになり、ハードコート層自身の劣化を招く。
【0013】また、本発明者はこのシリカ層の表面の耐
磨耗性や耐擦傷性などの表面特性はその下層の材質によ
り変化することを見いだした。この原因はシリカ層とそ
の下層との密着性やその下層のシリカ層に接する表面の
耐磨耗性に影響されることにあると考えられる。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者は、樹脂部材と
透明樹脂板との高い接着性およびより高い表面特性のシ
リカ層表面を与える下層の材質について検討した結果、
特定の材質と表面特性を有する下層の材料を見いだし
た。この下層の材料はシリカ層と高い密着性を有し、基
材とも充分な密着性を有するものである。すなわち、最
外層は無機物の被膜であるにもかかわらず、内層に対し
て、および結果的に基材に対して、充分密着し、ガラス
と同等ないしそれに近い表面耐磨耗性を有した透明硬化
物層を有する透明合成樹脂成形品と、少なくとももう一
つの透明基材とを、中間膜を介して、前記透明硬化物層
が外側表面に露出するように積層した積層体を見いだし
た。本発明はこの積層体にかかわる下記発明である。
【0015】透明樹脂板と該透明樹脂板の表面に設けら
れたハードコート層とを備えた窓体と、該窓体の周縁部
に一体化された樹脂部材とを有する樹脂部材付き透明窓
体において、前記ハードコート層が少なくとも2層の透
明硬化物層からなり、該少なくとも2層の透明硬化物層
のうち最外層に接する内層が活性エネルギー線硬化性の
重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)を
含む活性エネルギー線硬化性被覆組成物(A)の硬化物
である耐摩耗性の層であり、最外層が実質的に有機基を
含まないシリカを形成しうる硬化性被覆組成物(B)の
硬化物であるシリカ層であることを特徴とする樹脂部材
付き透明窓体。
【0016】透明樹脂板と該透明樹脂板の表面に設けら
れたハードコート層とを備えた窓体と、該窓体の周縁部
に一体化された樹脂部材とを有する樹脂部材付き透明窓
体において、前記ハードコート層が少なくとも2層の透
明硬化物層からなり、該少なくとも2層の透明硬化物層
のうち最外層がポリシラザンを含む被覆組成物の硬化物
であるシリカ層であり、最外層に接する内層が耐摩耗性
の層であることを特徴とする樹脂部材付き透明窓体。
【0017】本発明における透明硬化物層は少なくとも
2層の構成からなり、シリカの被膜である最外層が相対
的に柔らかい透明樹脂板に直接積層されているのではな
く、耐摩耗性の高い硬い透明硬化物内層上に積層されて
いる。このため透明被覆成型品に対して傷を付けようと
して加えられた外力による最外層の変位が小さくなるこ
とで、通常の無機質被膜が与える表面特性以上の表面特
性が得られると考えられる。そして、この最外層がシリ
カの被膜であることから、接着剤との相性の観点から窓
体の表面はガラス板に類似するものとなり、窓体に一体
化される樹脂部材との接着性を良好にできる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明をさら
に詳細に説明する。図1は、本発明の樹脂部材付き窓体
の一例を示す部分的断面図である。透明窓体4は、透明
樹脂板1と透明樹脂板1の両面に設けられた少なくとも
2層の透明硬化物層2からなる。そして、この透明窓体
4の周縁部に、窓枠に装着される際に窓枠と透明窓体4
との間に介在される樹脂部材3が一体化されて、樹脂部
材付き窓体10が構成されている。
【0019】こうした透明樹脂板の周縁部に樹脂部材を
一体化する方法としては、(1)透明樹脂板を樹脂成形
型内に配置し、射出成形により樹脂部材を一体化する方
法、(2)透明樹脂板の周縁部と樹脂押出成形装置とを
相対移動させながら樹脂材料を所定形状で押出して樹脂
部材を一体化する方法、(3)別途押出し成形した樹脂
部材を透明樹脂板の周縁部に嵌め込む方法、等があげら
れる。
【0020】上記(1)の方法の一例を示すのが、図2
である。すなわち、樹脂部材の断面形状が彫り込まれた
樹脂成形型20の内壁に透明窓体4の周縁部を配置し、
成形型20の内壁と透明樹脂板1の周縁部とでキャビテ
ィ空間21を形成する。このキャビティ空間21内に樹
脂材料を射出した後、成形型20から透明窓体4を取り
出すことにより、樹脂部材3が透明窓体4に一体化され
た樹脂部材付き窓体が得られる。
【0021】上記(2)の方法の一例を示すのが、図3
である。すなわち、樹脂部材の断面形状を有する開口3
1を有する押出ダイ30から樹脂材料が押出される。こ
こで、33は押出機である。押出された樹脂材料は、押
出ダイ30から所定距離離れた樹脂部材の断面形状に概
略一致した開口を有する圧着部材32に導入される。一
方、駆動ロボット34に支持された透明窓体4は、その
周縁部に圧着部材32が沿う相対移動をするように、所
定軌跡で移動される。こうして、透明窓体4の周縁部に
樹脂部材3が一体化された樹脂部材付き窓体が得られ
る。なお、押出ダイ30に直接透明窓体4を当接させ
て、樹脂部材を一体化することもできる。
【0022】本発明における透明樹脂板の材料としては
各種透明合成樹脂を使用しうる。例えば、芳香族ポリカ
ーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(アク
リル樹脂)、ポリスチレン樹脂などの透明合成樹脂を基
材の材料として使用しうる。特に芳香族ポリカーボネー
ト樹脂からなることが好ましい。この透明樹脂板は成形
されたものであり、例えば平板や波板などのシート状基
材、フィルム状基材、各種形状に成形された基材、少な
くとも表面層が各種透明合成樹脂からなる積層体等があ
る。本発明において、透明樹脂板としては特に芳香族ポ
リカーボネート樹脂からなる平板状のシートが好まし
い。このシートの厚さは1〜100mmであることが窓
材などの用途に好ましい。
【0023】以下、透明樹脂板が芳香族ポリカーボネー
ト樹脂板からなっている場合、「PC板」という。
【0024】本発明の樹脂部材付き窓体において、樹脂
部材は透明樹脂板の少なくとも一方の面に一体化される
ものである。そして、この樹脂部材が一体化される透明
樹脂板の面に、少なくとも本発明における透明硬化物層
が設けられる。透明窓体が透明樹脂板とガラス板(例え
ば通常の単板のガラス板、強化ガラス、合わせガラス、
金属網入りガラス、熱線吸収ガラス、さらには、熱線反
射ガラス、低反射率ガラスなどのように、内面に金属や
他の無機物を薄くコーティングしたガラス板等)との積
層体を基材とする場合、透明樹脂板のガラス板に対向す
る側の面には透明硬化物層を設けなくてもよい。
【0025】本発明における樹脂部材としては、上記の
窓枠に装着される際に窓枠と透明窓体との間に介在され
る、一般にはモールディングと呼ばれるもの、窓体を窓
枠に固定するために窓体に設けられるボルト等を保持す
るための樹脂台座等が例示される。これらのモールディ
ングや樹脂台座等のその用途に応じて、樹脂部材は窓体
の周縁部の所定箇所に一体化される。なお、所定箇所と
は、窓体の端面からある程度離れた位置の周縁部である
ことも端面に隣接する位置の周縁部であることもあり、
また周縁部全周であることも全周のうちの一部であるこ
ともある。樹脂部材を形成する材料としては、例えば塩
化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂等
の材料が例示できる。このように例示される各種樹脂材
料のうち、熱可塑性樹脂材料は、上記方法(1)、
(2)により容易かつ簡便に成形できるので、好まし
い。
【0026】本発明における透明硬化物層は、最外層に
直接接する透明硬化物層と最外層を形成する透明硬化物
層との少なくとも2層構成からなる。透明樹脂板(以下
単に基材ともいう)と透明硬化物層との間には他の合成
樹脂からなる第3の層が存在していてもよい。例えば、
熱可塑性アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂の層や接着剤
層が存在していてもよい。通常は透明硬化物層と最外層
の2層からなる。なお、透明硬化物層は種類の異なる2
層以上の透明硬化物からなっていてもよい。
【0027】透明硬化物層のうち最外層に接する内層で
ある、活性エネルギー線硬化性被覆組成物(A)の硬化
物の層は最外層と高い密着性を有する。また、基材とも
高い密着性を有する。この内層と基材との間に第3の層
が存在する場合、その層は両者に対し充分な密着性を有
することが好ましい。この内層はさらに充分な耐摩耗性
を有する。この内層はJIS−R3212における耐摩
耗性試験による試験回数100回後の曇価(摩耗試験後
の曇価と摩耗試験前の曇価との差)が15%以下の耐摩
耗性を有することが好ましい。耐摩耗性試験は、基材
(必ずしも基材であることを要しない)に被覆組成物
(A)の硬化物の層を形成した試験片を用いて行いう
る。本発明における透明窓体自体はこの硬化物の層の上
に最外層が形成されているので、この透明窓体自体を内
層の耐摩耗性試験に供することは困難である。内層のよ
り好ましい耐摩耗性は試験回数100回後の曇価が10
%以下、特に5%以下、のものである。
【0028】密着性と耐摩耗性の高い内層を得るため
に、活性エネルギー線硬化性の被覆組成物(A)として
多官能性化合物(a)を用いる。また、同様に高い耐摩
耗性の硬化物を形成するために、被覆組成物(A)に平
均粒径200nm以下のコロイド状シリカを配合してコ
ロイド状シリカを含む硬化物を形成することも好まし
い。なお、多官能性化合物(a)を活性エネルギー線
(特に紫外線)で効率よく硬化させるために、通常被覆
組成物(A)は光重合開始剤を含む。
【0029】被覆組成物(A)における活性エネルギー
線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合
物(a)は、1種類の多官能性化合物であってもよく、
また複数の種類の化合物を用いてもよい。複数の場合、
同一範疇の異なる化合物であってもよく、範疇の異なる
化合物であってもよい。例えば、それぞれがアクリルウ
レタンである異なる化合物の組み合わせであってもよ
く、一方がアクリルウレタン、他方がウレタン結合を有
しないアクリル酸エステル化合物である組み合わせであ
ってもよい。
【0030】活性エネルギー線硬化性の重合性官能基を
2個以上有する多官能性化合物における活性エネルギー
線硬化性の重合性官能基としては、(メタ)アクリロイ
ル基、ビニル基、アリル基などのα,β−不飽和基やそ
れを有する基であり、(メタ)アクリロイル基であるこ
とが好ましい。すなわち、多官能性化合物としては、
(メタ)アクリロイル基から選ばれる1種以上の重合性
官能基を2個以上有する化合物が好ましい。さらにその
うちでも紫外線によってより重合しやすいアクリロイル
基が好ましい。なお、この多官能性化合物は1分子中に
2種以上の重合性官能基を合計2個以上有する化合物で
あってもよく、また同じ重合性官能基を合計2個以上有
する化合物であってもよい。多官能性化合物1分子中に
おける重合性官能基の数は2個以上であり、その上限は
特に限定されない。通常は2〜50個が適当であり、特
に3〜30個が好ましい。
【0031】本明細書では、アクリロイル基およびメタ
クリロイル基を総称して(メタ)アクリロイル基とい
う。(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリル
酸、(メタ)アクリレート等も表現も同様とする。な
お、上記のようにこれらの基や化合物のうちでより好ま
しいものはアクリロイル基を有するもの、例えばアクリ
ロイルオキシ基、アクリル酸、アクリレート等である。
【0032】多官能性化合物(a)として好ましい化合
物は(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物で
ある。そのうちでも(メタ)アクリロイルオキシ基を2
個以上有する化合物、すなわち多価アルコールなどの2
個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸と
のポリエステル、が好ましい。
【0033】被覆組成物(A)において、多官能性化合
物(a)として2種以上の多官能性化合物が含まれてい
てもよい。また、多官能性化合物とともに、活性エネル
ギー線によって重合しうる重合性官能基を1個有する単
官能性化合物が含まれていてもよい。この単官能性化合
物としては(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好
ましく、特にアクリロイル基を有する化合物が好まし
い。
【0034】被覆組成物(A)においてこの単官能性化
合物を使用する場合、多官能性化合物(a)とこの単官
能性化合物との合計に対するこの単官能性化合物の割合
は、特に限定されないが0〜60重量%が適当である。
単官能性化合物の割合が多すぎると硬化塗膜の硬さが低
下し耐磨耗性が不充分となるおそれがある。多官能性化
合物(a)とこの単官能性化合物との合計に対する単官
能性化合物のより好ましい割合は組成物0〜30重量%
である。
【0035】多官能性化合物(a)としては、重合性官
能基以外に種々の官能基や結合を有する化合物であって
もよい。例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原
子、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合、チオ
エーテル結合、アミド結合、ジオルガノシロキサン結合
などを有していてもよい。特に、ウレタン結合を有する
(メタ)アクリロイル基含有化合物(いわゆるアクリル
ウレタン)とウレタン結合を有しない(メタ)アクリル
酸エステル化合物が好ましい。以下これら2種の多官能
性化合物について説明する。
【0036】ウレタン結合を有する(メタ)アクリロイ
ル基含有化合物(以下アクリルウレタンという)は、例
えば、(1)(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する
化合物(X1)と2個以上のイソシアネート基を有する
化合物(以下ポリイソシアネートという)との反応生成
物、(2)化合物(X1)と2個以上の水酸基を有する
化合物(X2)とポリイソシアネートとの反応生成物、
(3)(メタ)アクリロイル基とイソシアネートを有す
る化合物(X3)と化合物(X2)との反応生成物、な
どがある。これらの反応生成物においては、イソシアネ
ート基が存在しないことが好ましい。しかし、水酸基は
存在してもよい。したがって、これらの反応生成物の製
造においては、全反応原料の水酸基の合計モル数はイソ
シアネート基の合計モル数と等しいかそれより多いこと
が好ましい。
【0037】(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する
化合物(X1)としては、(メタ)アクリロイル基と水
酸基をそれぞれ1個ずつ有する化合物であってもよく、
(メタ)アクリロイル基2個以上と水酸基1個を有する
化合物、(メタ)アクリロイル基1個と水酸基2個以上
を有する化合物、(メタ)アクリロイル基と水酸基をそ
れぞれ2個以上有する化合物であってもよい。具体例と
して、上記順に、例えば、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)
アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレ
ートなどがある。これらは2個以上の水酸基を有する化
合物と(メタ)アクリル酸とのモノエステルまたは1個
以上の水酸基を残したポリエステルである。
【0038】さらに化合物(X1)としては、エポキシ
基を1個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸との開
環反応生成物であってもよい。エポキシ基と(メタ)ア
クリル酸との反応によりエポキシ基が開環してエステル
結合が生じるとともに水酸基が生じ、(メタ)アクリロ
イル基と水酸基を有する化合物となる。またエポキシ基
を1個以上有する化合物のエポキシ基を開環させて水酸
基含有化合物としそれを(メタ)アクリル酸エステルに
変換することもできる。
【0039】エポキシ基を1個以上有する化合物として
は、いわゆるエポキシ樹脂と呼ばれているポリエポキシ
ドが好ましい。ポリエポキシドとしては、例えば多価フ
ェノール類−ポリグリシジルエーテル(例えばビスフェ
ノールA−ジグリシジルエーテル)などのグリシジル基
を2個以上有する化合物や脂環族エポキシ化合物が好ま
しい。さらに、エポキシ基を有する(メタ)アクリレー
トと水酸基やカルボキシル基を有する化合物との反応生
成物も化合物(X1)として使用できる。エポキシ基を
有する(メタ)アクリレートとしては、例えばグリシジ
ル(メタ)アクリレートがある。
【0040】ポリイソシアネートとしては、通常の単量
体状のポリイソシアネートでもよく、ポリイソシアネー
トの多量体や変性体またはイソシアネート基含有ウレタ
ンプレポリマーなどのプレポリマー状の化合物であって
もよい。多量体としては3量体(イソシアヌレート変性
体)、2量体、カルボジイミド変性体などがあり、変性
体としてはトリメチロールプロパン等の多価アルコール
で変性して得られるウレタン変性体、ビュレット変性
体、アロハネート変性体、ウレア変性体などがある。プ
レポリマー状のものの例としては、後述ポリエーテルポ
リオールやポリエステルポリオールなどのポリオールと
ポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネ
ート基含有ウレタンプレポリマーなどがある。これらポ
リイソシアネートは2種以上併用して使用できる。
【0041】具体的な単量体状のポリイソシアネートと
しては、例えば、以下のポリイソシアネートがある
([ ]内は略称)。2,6−トリレンジイソシアネー
ト、2,4−トリレンジイソシアネート、メチレンビス
(4−フェニルイソシアネート)[MDI]、ヘキサメ
チレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネー
ト、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネー
ト、キシリレンジイソシアネート[XDI]、水添XD
I、水添MDI。
【0042】ポリイソシアネートとしては特に無黄変性
ポリイソシアネート(芳香核に直接結合したイソシアネ
ート基を有しないポリイソシアネート)が好ましい。具
体的にはヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族
ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなど
の脂環族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネ
ートなどの芳香族ポリイソシアネートがある。上記のよ
うにこれらポリイソシアネートの多量体や変性体等も好
ましい。
【0043】2個以上の水酸基を有する化合物(X2)
としては、多価アルコールや多価アルコールに比較して
高分子量のポリオールなどがある。多価アルコールとし
ては、2〜20個の水酸基を有する多価アルコールが好
ましく、特に2〜15個の水酸基を有する多価アルコー
ルが好ましい。多価アルコールは脂肪族の多価アルコー
ルであってもよく、脂環族多価アルコールや芳香核を有
する多価アルコールであってもよい。
【0044】芳香核を有する多価アルコールとしては例
えば多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物や多
価フェノール類−ポリグリシジルエーテルなどの芳香核
を有するポリエポキシドの開環物などがある。高分子量
のポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリエ
ステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、
ポリカーボネートポリオールなどがある。また、ポリオ
ールとして水酸基含有ビニルポリマーをも使用できる。
これら多価アルコールやポリオールは2種以上併用でき
る。
【0045】多価アルコールの具体例としては例えば以
下の多価アルコールがある。エチレングリコール、1,
2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジ
プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シク
ロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ト
リメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリト
ール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリト
ール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレー
ト、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレー
ト、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルの開環
物、ビニルシクロヘキセンジオキシドの開環物。
【0046】ポリオールの具体例としては例えば以下の
ポリオールがある。ポリエチレングリコール、ポリプロ
ピレングリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキ
シド付加物、ポリテトラメチレングリコール等のポリエ
ーテルポリオール。ポリε−カプロラクトンポリオール
等の環状エステルを開環重合して得られるポリエステル
ポリオール。アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、マレ
イン酸、フマル酸、アゼライン酸、グルタル酸等の多塩
基酸と上記多価アルコールとの反応で得られるポリエス
テルポリオール。1,6−ヘキサンジオールとホスゲン
の反応で得られるポリカーボネートジオール。
【0047】水酸基含有ビニルポリマーとしては例えば
アリルアルコール、ビニルアルコール、ヒドロキシアル
キルビニルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アク
リレートなどの水酸基含有単量体とオレフィンなどの水
酸基不含単量体との共重合体がある。(メタ)アクリロ
イル基とイソシアネートを有する化合物(X3)として
は、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、
メタクリロイルイソシアネート、3−または4−イソプ
ロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートな
どがある。
【0048】次に、ウレタン結合を有しない(メタ)ア
クリル酸エステル化合物について説明する。多官能性化
合物(a)として好ましいウレタン結合を有しない(メ
タ)アクリル酸エステル化合物としては、前記化合物
(X2)と同様の2個以上の水酸基を有する化合物と
(メタ)アクリル酸とのポリエステルが好ましい。2個
以上の水酸基を有する化合物としては前記多価アルコー
ルやポリオールが好ましい。さらに、2個以上のエポキ
シ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成
物である(メタ)アクリル酸エステル化合物も好まし
い。
【0049】2個以上のエポキシ基を有する化合物とし
てはエポキシ樹脂と呼ばれているポリエポキシドがあ
る。例えば、グリシジルエーテル型ポリエポキシド、脂
環型ポリエポキシドなどのエポキシ樹脂として市販され
ているものを使用できる。
【0050】ウレタン結合を含まない多官能性化合物の
具体例としては例えば以下のような化合物がある。以下
の脂肪族多価アルコールの(メタ)アクリレート。1,
4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペン
チルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキ
サンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メ
タ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレー
ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレー
ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ
ート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレー
ト、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレー
ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレー
ト。
【0051】以下の芳香核またはトリアジン環を有する
多価アルコールや多価フェノールの(メタ)アクリレー
ト。トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)
イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオ
キシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレー
ト、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピ
ル)イソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイ
ルオキシエチル)ビスフェノールA、ビス(2−(メ
タ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェノールS、ビ
ス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ビスフェ
ノールF、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエ
チル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジメタクリ
レート。
【0052】以下の水酸基含有化合物−アルキレンオキ
シド付加物の(メタ)アクリレート、水酸基含有化合物
−カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、ポリ
オキシアルキレンポリオールの(メタ)アクリレート。
ただし、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオ
キシドを表す。トリメチロールプロパン−EO付加物の
トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−
PO付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリ
スリトール−カプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)ア
クリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシア
ヌレート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリ
レート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ
ート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレー
ト。
【0053】多官能性化合物(a)としては、被覆組成
物(A)の硬化物が充分な耐摩耗性を発揮し得るため
に、少なくともその一部(好ましくは30重量%以上)
が3官能以上の多官能性化合物からなることが好まし
い。好ましくはその50重量%以上が3官能以上の多官
能性化合物からなる。また、具体的な好ましい多官能性
化合物(a)は下記のアクリルウレタンとウレタン結合
を有しない多官能性化合物である。
【0054】アクリルウレタンの場合、ペンタエリスリ
トールやその多量体であるポリペンタエリスリトールと
ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アク
リレート)の反応生成物であるアクリルウレタン、また
はペンタエリスリトールやポリペンタエリスリトールの
水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートとポリイソシアネ
ートとの反応生成物であるアクリルウレタンであって3
官能以上(好ましくは4〜20官能)の化合物が好まし
い。
【0055】ウレタン結合を有しない多官能性化合物と
しては、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレ
ートとイソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートが
好ましい。ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリ
レートとは、ペンタエリスリトールやポリペンタエリス
リトールと(メタ)アクリル酸とのポリエステル(好ま
しくは4〜20官能のもの)をいう。イソシアヌレート
系ポリ(メタ)アクリレートとは、トリス(ヒドロキシ
アルキル)イソシアヌレートまたはその1モルに1〜6
モルのカプロラクトンやアルキレンオキシドを付加して
得られる付加物と(メタ)アクリル酸とのポリエステル
(2〜3官能のもの)をいう。これら好ましい多官能性
化合物と他の2官能以上の多官能性化合物(特に多価ア
ルコールのポリ(メタ)アクリレート)とを併用するこ
とも好ましい。これら好ましい多官能性化合物は全多官
能性化合物(a)に対して30重量%以上、特に50重
量%以上が好ましい。
【0056】多官能性化合物(a)とともに使用できる
単官能性化合物としては、例えば分子中に1個の(メ
タ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。そのよ
うな単官能性化合物は、水酸基、エポキシ基などの官能
基を有していてもよい。好ましい単官能性化合物は(メ
タ)アクリル酸エステル、すなわち(メタ)アクリレー
トである。
【0057】具体的な単官能性化合物としては例えば以
下の化合物がある。メチル(メタ)アクリレート、エチ
ル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレー
ト、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メ
タ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリ
レート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシ
ル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート。
【0058】最外層に直接接する透明硬化物層の耐摩耗
性や硬度を高める意味で組成物(A)は有効量の平均粒
径200nm以下のコロイド状シリカを含むことができ
る。コロイド状シリカの平均粒径は1〜100nmであ
ることが好ましく、特に1〜50nmが好ましい。コロ
イド状シリカはまた下記表面修飾されたコロイド状シリ
カであることが、コロイド状シリカの分散安定性および
コロイド状シリカと多官能性化合物との密着性向上の面
で好ましい。
【0059】これらコロイド状シリカを使用する場合、
その使用する効果を充分発揮するためにはコロイド状シ
リカの量は、透明硬化物層の硬化性成分(多官能性化合
物と単多官能性化合物の合計)100重量部に対して5
重量部以上が適当であり、10重量部以上が好ましい。
この量が少ない場合には充分な耐摩耗性が得られ難い。
また多すぎると被膜に曇り(ヘーズ)が発生しやすくな
り、また得られた透明窓体を熱曲げ加工などの2次加工
を行う場合にはクラックが生じやすくなるなどの問題を
生じやすくなる。したがって、透明硬化物層におけるコ
ロイド状シリカ量の上限は硬化性成分100重量部に対
して300重量部であることが好ましい。より好ましい
コロイド状シリカの量は硬化性成分100重量部に対し
て50〜250重量部である。
【0060】コロイド状シリカとしては表面未修飾のコ
ロイド状シリカを使用できるが、好ましくは表面修飾さ
れたコロイド状シリカを使用する。表面修飾されたコロ
イド状シリカの使用は組成物中のコロイド状シリカの分
散安定性を向上させる。修飾によってコロイド状シリカ
微粒子の平均粒径は実質的に変化しないか多少大きくな
ると考えられるが、得られる修飾コロイド状シリカの平
均粒径は上記範囲のものであると考えられる。以下表面
修飾されたコロイド状シリカ(以下単に修飾コロイド状
シリカという)について説明する。
【0061】コロイド状シリカの分散媒としては種々の
分散媒が知られており、原料コロイド状シリカの分散媒
は特に限定されない。必要により分散媒を変えて修飾を
行うことができ、また修飾後に分散媒を変えることもで
きる。修飾コロイド状シリカの分散媒はそのまま基材に
直接接する透明硬化物層の硬化組成物の媒体(溶媒)と
することが好ましい。基材に直接接する透明硬化物層の
硬化組成物の媒体としては、乾燥性などの面から比較的
低沸点の溶媒、すなわち通常の塗料用溶媒、であること
が好ましい。製造の容易さなどの理由により、原料コロ
イド状シリカの分散媒、修飾コロイド状シリカの分散媒
および透明硬化物層の硬化組成物の媒体はすべて同一の
媒体(溶媒)であることが好ましい。このような媒体と
しては、塗料用溶媒として広く使用されているような有
機媒体が好ましい。
【0062】分散媒としては、例えば以下のような分散
媒を使用できる。水。メタノール、エタノール、イソプ
ロパノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノー
ル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エ
チレングリコールのような低級アルコール類。メチルセ
ロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセ
ロソルブ類。ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレ
ン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンな
ど。
【0063】前記のように特に分散媒としては有機分散
媒が好ましく、上記有機分散媒のうちではさらにアルコ
ール類およびセロソルブ類が好ましい。なお、コロイド
状シリカとそれを分散させている分散媒との一体物をコ
ロイド状シリカ分散液という。
【0064】コロイド状シリカの修飾は加水分解性ケイ
素基または水酸基が結合したケイ素基を有する化合物
(以下これらを修飾剤という)を用いて行うことが好ま
しい。加水分解性ケイ素基の加水分解によってシラノー
ル基が生じ、これらシラノール基がコロイド状シリカ表
面に存在すると考えられるシラノール基と反応して結合
し、修飾剤がコロイド状シリカ表面に結合すると考えら
れる。修飾剤は2種以上を併用してもよい。また後述の
ように互いに反応性の反応性官能基を有する修飾剤2種
をあらかじめ反応させて得られる反応生成物を修飾剤と
して用いることもできる。
【0065】修飾剤は2個以上の加水分解性ケイ素基や
シラノール基を有していてもよく、また加水分解性ケイ
素基を有する化合物の部分加水分解縮合物やシラノール
基を有する化合物の部分縮合物であってもよい。好まし
くは1個の加水分解性ケイ素基を有する化合物を修飾剤
として使用する(修飾処理過程で部分加水分解縮合物が
生じてもよい)。また、修飾剤はケイ素原子に結合した
有機基を有し、その有機基の1個以上は反応性官能基を
有する有機基であることが好ましい。
【0066】好ましい反応性官能基はアミノ基、メルカ
プト基、エポキシ基および(メタ)アクリロイルオキシ
基である。反応性官能基が結合する有機基としては、反
応性官能基を除いて炭素数8以下のアルキレン基やフェ
ニレン基が好ましく、特に炭素数2〜4のアルキレン基
(とりわけポリメチレン基)が好ましい。具体的な修飾
剤としては反応性官能基の種類によって分けると、例え
ば以下のような化合物がある。
【0067】(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン
類;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメト
キシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピル
トリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシ
プロピルメチルジメトキシシランなど。
【0068】アミノ基含有シラン類;γ−アミノプロピ
ルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキ
シシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラ
ン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルト
リメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−ア
ミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミ
ノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(N−
ビニルベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロ
ピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメ
トキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリ
メトキシシランなど。
【0069】メルカプト基含有シラン類;γ−メルカプ
トプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピ
ルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチル
ジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエ
トキシシランなど。エポキシ基含有シラン類;γ−グリ
シドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキ
シプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシ
プロピルトリエトキシシランなど。イソシアネート基含
有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシ
シラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラ
ン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラ
ン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラ
ンなど。
【0070】互いに反応性の反応性官能基を有する修飾
剤2種をあらかじめ反応させて得られる反応生成物とし
ては、例えば、アミノ基含有シラン類とエポキシ基含有
シラン類との反応生成物、アミノ基含有シラン類と(メ
タ)アクリロイルオキシ基含有シラン類との反応生成
物、エポキシ基含有シラン類とメルカプト基含有シラン
類との反応生成物、メルカプト基含有シラン類同士2分
子の反応生成物などがある。
【0071】コロイド状シリカの修飾は通常、加水分解
性基を有する修飾剤を触媒存在下にコロイド状シリカに
接触させて加水分解することにより行う。例えば、コロ
イド状シリカ分散液に修飾剤と触媒を添加し、コロイド
状シリカ分散液中で修飾剤を加水分解することによって
修飾できる。触媒としては、酸やアルカリがある。好ま
しくは無機酸および有機酸から選ばれる酸を使用する。
無機酸としては、例えば塩酸、フッ化水素酸、臭化水素
酸等のハロゲン化水素酸や硫酸、硝酸、リン酸等を使用
できる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、アク
リル酸、メタクリル酸等を使用できる。反応温度として
は室温から用いる溶媒の沸点までの間が好ましく、反応
時間は温度にもよるが0.5〜24時間の範囲が好まし
い。
【0072】コロイド状シリカの修飾において、修飾剤
の使用量は特に限定されないが、コロイド状シリカ(分
散液中の固形分)100重量部に対し、修飾剤1〜10
0重量部が適当である。修飾剤の量が1重量部未満では
表面修飾の効果が得られにくい。また、100重量部超
では未反応の修飾剤やコロイド状シリカ表面に担持され
ていない修飾剤の加水分解物〜縮合物が多量に生じ、透
明被覆層の硬化組成物の硬化の際それらが連鎖移動剤と
して働いたり、硬化後の被膜の可塑剤として働き、硬化
被膜の硬度を低下させるおそれが生じる。
【0073】前記のように多官能性化合物(a)を硬化
させるために通常被覆組成物(A)は光重合開始剤を含
む。光重合開始剤としては、公知〜周知のものを使用で
きる。特に入手容易な市販のものが好ましい。透明硬化
物層において複数の光重合開始剤を使用してもよい。光
重合開始剤としては、アリールケトン系光重合開始剤
(例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アル
キルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン
類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール
類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエス
テル類など)、含イオウ系光重合開始剤(例えば、スル
フィド類、チオキサントン類など)、アシルホスフィン
オキシド系光重合開始剤、その他の光重合開始剤があ
る。特に、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤の
使用が好ましい。また、光重合開始剤はアミン類などの
光増感剤と組み合わせて使用することもできる。具体的
な光重合開始剤としては、例えば以下のような化合物が
ある。
【0074】4−フェノキシジクロロアセトフェノン、
4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブ
チル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフ
ェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプ
ロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)
−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1
−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1
−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル
(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロ
キシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−
{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロ
パン−1−オン。
【0075】ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチル
エーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソ
プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベ
ンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル
安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベ
ンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化
ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベ
ンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−
ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,1
0−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベン
ゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−
ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステ
ル、メチルフェニルグリオキシレート。
【0076】4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニル
スルフィド、チオキサントン、2−クロルチオキサント
ン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオ
キサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジ
クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサント
ン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン。2,4,
6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシ
ド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6
−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−
トリメチルペンチルホスフィンオキシド。
【0077】被覆組成物(A)における光重合開始剤の
量は硬化性成分(多官能性化合物(a)と単官能性化合
物の合計)100重量部に対して0. 01〜20重量
部、特に0. 1〜10重量部が好ましい。
【0078】被覆組成物(A)は上記基本的成分以外に
溶剤や種々の配合剤を含むことができる。溶剤は通常必
須の成分であり、多官能性化合物が特に低粘度の液体で
ない限り溶剤が使用される。溶剤としては、多官能性化
合物(a)を硬化成分とする被覆用組成物に通常使用さ
れる溶剤を使用できる。また原料コロイド状シリカの分
散媒をそのまま溶剤としても使用できる。さらに基材の
種類により適切な溶剤を選択して用いることが好まし
い。
【0079】溶剤の量は必要とする組成物の粘度、目的
とする硬化被膜の厚さ、乾燥温度条件などにより適宜変
更できる。通常は組成物中の硬化性成分に対して100
倍以下、好ましくは0.1〜50倍用いる。溶剤として
は例えば前記コロイド状シリカの修飾するための加水分
解に用いる溶媒として挙げた、低級アルコール類、ケト
ン類、エーテル類、セロソルブ類などの溶剤がある。そ
のほか、酢酸n−ブチル、ジエチレングリコールモノア
セテートなどのエステル類、ハロゲン化炭化水素類、炭
化水素類などがある。耐溶剤性の低い芳香族ポリカーボ
ネート樹脂の被覆には低級アルコール類、セロソルブ
類、エステル類、それらの混合物などが適当である。
【0080】被覆組成物(A)には、必要に応じて紫外
線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤などの
安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、
顔料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤
類、酸、アルカリおよび塩類などから選ばれる硬化触媒
等を適宜配合して用いてもよい。
【0081】被覆組成物(A)には、特に、紫外線吸収
剤や光安定剤を配合することが好ましい。紫外線吸収剤
としては合成樹脂用紫外線吸収剤として通常使用されて
いるようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾ
フェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤な
どが好ましい。光安定剤としては同様に合成樹脂用光安
定剤として通常使用されているようなヒンダードアミン
系光安定剤(2,2,4,4−テトラアルキルピペリジ
ン誘導体など)が好ましい。
【0082】このような被覆組成物(A)を硬化させる
活性エネルギー線としては特に紫外線が好ましい。しか
し、紫外線に限定されず、電子線やその他の活性エネル
ギー線を使用できる。紫外線源としてはキセノンラン
プ、パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、
超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク
灯、タングステンランプ等が使用できる。
【0083】被覆組成物(A)を用いて形成される硬化
物の層の厚さは1〜50μmであることが好ましい。こ
の層厚が50μm超では、活性エネルギー線による硬化
が不充分になり基材との密着性が損なわれやすく好まし
くない。また、1μm未満では、この層の耐摩耗性が不
充分となるおそれがあり、またこの層の上の最外層の耐
摩耗性や耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。よ
り好ましい層厚は2〜30μmである。
【0084】次に最外層の実質的に有機基を含まないシ
リカの層を形成しうる硬化性被覆組成物(B)は、シリ
カを形成しうる可溶性化合物と通常は溶剤を含む。実質
的に有機基を含まないシリカを形成しうる可溶性化合物
としては、4官能性の加水分解性シラン化合物やその部
分加水分解縮合物、およびポリシラザンなどがある。4
官能性の加水分解性シラン化合物やその部分加水分解縮
合物としては、例えばテトラアルコキシシランやその部
分加水分解縮合物がある。しかし好ましくはポリシラザ
ンが用いられる。ポリシラザンはより緻密な構造のシリ
カを形成することより、より表面特性の優れた最外層が
得られる。
【0085】ポリシラザンとしては実質的に有機基を含
まないポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)、アル
コキシ基などの加水分解性基がケイ素原子に結合したポ
リシラザン、窒素原子にアルキル基などの有機基が結合
しているポリシラザンなどがある。このようなポリシラ
ザンはたとえ有機基を有していても硬化の際の加水分解
反応により実質的に有機基を含まないシリカは形成され
る。特にペルヒドロポリシラザンはその焼成温度の低さ
および焼成後の硬化被膜の緻密さの点で好ましい。な
お、ポリシラザンが充分に硬化した硬化物は窒素原子を
ほとんど含まないシリカとなる。
【0086】ポリシラザンとしては、鎖状、環状もしく
は架橋構造を有する重合体、または分子内にこれらの複
数の構造の混合物からなる。ポリシラザンの分子量とし
ては数平均分子量で200〜5万であるものが好まし
い。数平均分子量が200未満では焼成しても均一な硬
化被膜が得られにくい。また、数平均分子量が5万超で
は溶剤に溶解しがたくなり、また被覆組成物(B)が粘
調になるおそれがあることより、好ましくない。
【0087】ポリシラザンを溶解する溶剤としては脂肪
族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化
水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、
脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的に
は、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタ
ン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタ
ン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘ
キサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、
キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素、塩化メチレ
ン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エ
チレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラク
ロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、
イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチル
エーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒ
ドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類などが
ある。
【0088】これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザ
ンの溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために複数の種
類の溶剤を混合してもよい。溶剤の使用量は採用される
塗工方法およびポリシラザンの構造や平均分子量などに
よって異なるが、固形分濃度で0. 5〜80重量%の範
囲で調製することが好ましい。
【0089】ポリシラザンを硬化させてシリカとするた
めには通常焼成と呼ばれる加熱が必要である。しかし、
本発明においては基材が合成樹脂であることよりその焼
成温度は制限される。すなわち、基材の耐熱温度以上に
加熱して硬化させることは困難である。一般的に被覆組
成物(A)の硬化物の耐熱性は基材のそれよりも高い。
しかし場合によってはこの硬化物の耐熱性が基材の耐熱
性よりも低い場合があり、その場合はこの硬化物の耐熱
温度よりも低い温度でポリシラザンを硬化させる必要が
生じることもある。したがって、本発明においてポリシ
ラザンの焼成温度は芳香族ポリカーボネート樹脂などの
通常の合成樹脂を基材とする場合は180℃以下とする
ことが好ましい。
【0090】ポリシラザンの焼成温度を低下させるため
に通常は触媒が使用される。触媒の種類や量により低温
で焼成でき、場合によっては室温での硬化が可能とな
る。また、焼成を行う雰囲気としては空気中などの酸素
の存在する雰囲気であることが好ましい。ポリシラザン
の焼成によりその窒素原子が酸素原子に置換しシリカが
生成する。充分な酸素の存在する雰囲気中で焼成するこ
とにより緻密なシリカの層が形成される。また、水や水
蒸気による処理も低温での硬化に有用である(特開平7
−223867参照)。
【0091】触媒としては、より低温でポリシラザンを
硬化させうる触媒を用いることが好ましい。そのような
触媒としては、例えば、金、銀、パラジウム、白金、ニ
ッケルなどの金属の微粒子からなる金属触媒(特開平7
−196986参照)、アミン類や酸類(特開平9−3
1333参照)がある。アミン類としては、例えば、ア
ルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミ
ン、アリールアミン、ジアリールアミン、環状アミンな
どがある。酸類としては、例えば酢酸などの有機酸や塩
酸などの無機酸がある。
【0092】金属触媒の微粒子の粒径は0. 1μmより
小さいことが好ましく、さらに硬化物の透明性を確保す
るためには0. 05μmよりも小さいことが好ましい。
加えて、粒径が小さくなるに従い比表面積が増大し触媒
能が増大することより触媒性能向上の面でもより小さい
粒系の触媒を使用することが好ましい。アミン類や酸類
はポリシラザン溶液に配合することができ、またアミン
類や酸類の溶液(水溶液を含む)やそれらの蒸気(水溶
液からの蒸気を含む)をポリシラザンに接触させること
で硬化を促進させることができる。ポリシラザンに触媒
を配合して使用する場合、触媒の配合量としてはポリシ
ラザン100重量部に対して0. 01〜10重量部、よ
り好ましくは0. 05〜5重量部である。配合量が0.
01重量部未満では充分な触媒効果が期待できず、10
重量部超では触媒同士の凝集が起こりやすくなり、透明
性を損なうおそれがあるために好ましくない。
【0093】また、この被覆組成物(B)には必要に応
じて紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止
剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降
防止剤、顔料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面
活性剤類を適宜配合して用いてもよい。被覆組成物
(B)を用いて形成される硬化物の層の厚さは0.05
〜10μmであることが好ましい。この最外層の層厚が
10μm超では、耐擦傷性などの表面特性のそれ以上の
向上が期待できないうえ、層が脆くなり窓体のわずかな
変形によってもこの層にクラックなどが生じやすくな
る。また、0.05μm未満では、この最外層の耐摩耗
性や耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。より好
ましい層厚は0.1〜3μmである。
【0094】上記のような2種類の被覆組成物(A)、
(B)を用いて形成される2層の透明な硬化物の層を形
成する方法としては通常の被覆手法を採用できる。例え
ば、基材上にまず被覆組成物(A)を塗工して硬化さ
せ、次にその硬化物の表面に被覆組成物(B)を塗工し
て硬化させることにより目的とする透明窓体が得られ
る。
【0095】これら被覆組成物を塗工する手段としては
特に制限されず、公知〜周知の方法を採用できる。例え
ば、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バ
ーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレ
ードコート法、エアーナイフコート法、スピンコート
法、スリットコート法、マイクログラビアコート法等の
方法を採用できる。塗工後被覆組成物が溶剤を含んでい
る場合は乾燥して溶剤を除き、次いで、被覆組成物
(A)を用いた層の場合は紫外線等を照射して硬化さ
せ、被覆組成物(B)を用いた層の場合は加熱してまた
は室温に放置して硬化させる。アミン類や酸類の水溶液
や蒸気に接触させて硬化を促進することもできる。
【0096】被覆組成物(A)の硬化と被覆組成物
(B)の塗工〜硬化の組み合わせ(タイミング)として
は以下の4つ方法が挙げられる。 1)被覆組成物(A)を塗工した後に充分な量の活性エ
ネルギー線を照射して充分に硬化を終了させた後、組成
物(B)をその上に塗工する方法(前記した方法)。
【0097】2)被覆組成物(A)を塗工して被覆組成
物(A)の未硬化物の層を形成した後、その未硬化物層
の上に被覆組成物(B)塗工して被覆組成物(B)の未
硬化物の層を形成し、その後に充分な量の活性エネルギ
ー線を照射して被覆組成物(A)の未硬化物の硬化を終
了させる方法。この場合被覆組成物(B)の未硬化物は
被覆組成物(A)の未硬化物とほぼ同時に硬化するか、
被覆組成物(A)の未硬化物の硬化後加熱等により硬化
される。
【0098】3)被覆組成物(A)を塗工した後に指触
乾燥状態になる最低限の活性エネルギー線(通常約30
0mJ/cm2 までの照射量)を一旦照射して被覆組成
物(A)の部分硬化物の層を形成した後、その部分硬化
物層の上に被覆組成物(B)塗工して被覆組成物(B)
の未硬化物の層を形成し、その後に充分な量の活性エネ
ルギー線を照射して被覆組成物(A)の未硬化物の硬化
を終了させる方法。被覆組成物(B)の未硬化物の硬化
は上記2)の場合と同様である。
【0099】4)上記2)〜3)のように被覆組成物
(A)の未硬化物または部分硬化物の層と被覆組成物
(B)の未硬化物の層とを形成した後、被覆組成物
(B)の未硬化物を先に部分硬化ないし完全硬化させて
その後に被覆組成物(A)の未硬化物または部分硬化物
を完全硬化させる。この場合、被覆組成物(B)の未硬
化物を硬化させる時点では被覆組成物(A)は未硬化物
よりも部分硬化物であることが好ましい。
【0100】2つの硬化物層の層間密着力を上げるため
には、上記2)または3)の方法がより好ましい。ただ
し、2)の方法の場合は、被覆組成物(B)塗工する方
法としてディッピング法を用いると被覆組成物(A)の
未硬化物の成分が被覆組成物(B)のディッピング液を
汚染するおそれがあるため、このようなディッピング法
による塗工は適さないなどの制約がある。また、4)の
方法は、被覆組成物(A)を完全に硬化させる際に硬化
阻害要因となりやすい酸素の浸透に対して被覆組成物
(B)の部分硬化物〜完全硬化物の層がバリアー層とし
て作用し、被覆組成物(A)の硬化物が硬化不充分とな
るおそれを低減する。
【0101】さらに、本発明における透明窓体の特徴と
してその耐摩耗性や耐擦傷性などの表面特性がガラスと
ほぼ同等のレベルを有することから、従来ガラスが用い
られていた各種用途として使用できる。この用途のうち
には車両用窓材としての用途などがある。ただし、この
ような用途では曲げ加工した成形品が必要となる場合が
多い。こうした曲げ加工された本発明における透明窓体
を製造する場合、曲げ加工された基材を用いて本発明の
透明窓体となしうる。しかし、曲げ加工された基材を用
いる場合は塗工〜硬化による各層の形成が困難となるこ
とが少なくない。一方、本発明者らの従来からの検討に
よれば、被覆組成物(A)の硬化物の層が形成された基
材は熱曲げ加工等により曲げ加工ができる。しかし、被
覆組成物(B)の硬化物の層が形成された場合はその硬
化物が硬いことより曲げ加工は困難である。
【0102】本発明者は、被覆組成物(B)の未硬化物
や部分硬化物の層であれば、そのような層を有する基材
(被覆組成物(A)の硬化物の層を有する)を曲げ加工
できることを見いだした。また、前記2)や3)の方法
のように被覆組成物(A)の未硬化物や部分硬化物の層
の上に被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物の層を
形成した状態で曲げ加工することもできる。曲げ加工し
た後ないし曲げ加工とほぼ同時に被覆組成物(B)の未
硬化物や部分硬化物を硬化させることにより、目的とす
る曲げ加工された窓体が得られる。曲げ加工は通常加熱
状態で加工を行う。したがって、曲げ加工のための加熱
によって被覆組成物(B)の未硬化物や部分硬化物が硬
化するが、通常は曲げ加工に要する時間に比較して被覆
組成物(B)の未硬化物や部分硬化物の硬化に要する時
間が長いことより、被覆組成物(B)の硬化によって曲
げ加工が困難になるおそれは少ない。
【0103】したがって、本発明の曲げ加工された窓体
は、基材上に被覆組成物(A)の未硬化物、部分硬化物
ないし硬化物の層およびその層の表面に被覆組成物
(B)の未硬化物ないし部分硬化物の層を形成した後こ
れらの層を有する基材を曲げ加工し、次いで被覆組成物
(B)の未硬化物ないし部分硬化物を、および被覆組成
物(A)の未硬化物や部分硬化物が存在する場合はそれ
を、硬化させることにより、製造できる。
【0104】具体的には、例えば、被覆組成物(B)の
未硬化物や部分硬化物の層を形成した後、基材の熱軟化
温度に5分間程度加熱し、続いて曲げ加工を施す。その
後基材の熱軟化温度よりも低くかつ被覆組成物(B)の
未硬化物や部分硬化物が硬化しうる温度に保持して硬化
を行うことにより、本発明の曲げ加工された窓体が得ら
れる。このような方法により、被覆組成物(B)が充分
に硬化する前に基材が変形し、その後硬いシリカの層が
形成されるためにこのシリカ層にクラック等の不具合が
生じることがない。
【0105】一方で、本発明における透明窓体の作製方
法として、次のものも例示できる。まず、上記の各種方
法により、フィルム状の基材に透明硬化物層を形成す
る。この透明硬化物層が設けられたフィルムを、窓体の
形状を有するキャビティ空間が設けられた成形型内に保
持する。こうして、キャビティ空間内に透明樹脂板用の
樹脂材料を注入し、固化させることにより、型成形され
る透明樹脂板の表面にフィルムが一体化されることによ
り、このフィルムに設けられた透明硬化物層が透明樹脂
板に設けられる。こうした透明窓体の作製方法によれ
ば、単純な板状のものだけでなく、複雑な曲げ形状の透
明窓体が得られるとともに、煩雑な工程を経ることなく
多量の透明窓体を同じ形状に得ることができる。
【0106】こうした本発明の樹脂部材付き窓体は、自
動車などの車両用のウインドガラス、機械類の内部監視
用の覗き窓、建築用の窓ガラスとして、好適に使用でき
る。
【0107】
【実施例】以下、本発明を合成例、窓体例(例1〜7;
例1〜6は実施例、例7は比較例)、樹脂部材付き窓体
例(例8〜12;例8〜11は実施例、例12は比較
例)に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されな
い。例1〜7についての各種物性の測定および評価は以
下に示す方法で行い、その結果を表1に示した。なお、
表1には通常の建築用ガラスシートを使用した物性の測
定および評価の結果も示す。
【0108】[ア]初期曇価、耐磨耗性 JIS−R3212における耐磨耗試験法に準じ、2つ
のCS−10F磨耗輪にそれぞれ500gの重りを組み
合わせ500回転と1000回転させたときの曇価をヘ
ーズメータにて測定した。曇価(ヘーズ)の測定は磨耗
サイクル軌道の4カ所で行い、平均値を算出した。初期
曇価は耐磨耗試験前の曇価の値(%)を、耐磨耗性は
(磨耗試験後曇価)−(磨耗試験前曇価)の値(%)を
示す。
【0109】[イ]密着性 サンプルを剃刀の刃で1mm間隔で縦横それぞれ11本
の切れ目を付け、100個の碁盤目を作る。そして、市
販のセロハンテープをよく密着させた後、90度手前方
向に急激にはがした際の、被膜が剥離せずに残存した碁
盤目の数(m)をm/100で表す。なお、この密着性
の評価は、サンプル作製後の初期密着性と60℃・95
%の雰囲気温度・湿度下に7日間サンプルを保管した後
の密着性との評価により行った。
【0110】[合成例]エチルセロソルブ分散型コロイ
ド状シリカ(シリカ含量30重量%、平均粒径11n
m)100重量部に3−メルカプトプロピルトリメトキ
シシラン5重量部と0. 1N塩酸3. 0重量部を加え、
100℃にて6時間加熱撹拌した後12時間室温下で熟
成することにより、メルカプトシラン修飾コロイド状シ
リカ分散液を得た。
【0111】[例1]撹拌機および冷却管を装着した1
00mlの4つ口フラスコに、イソプロパノール15
g、酢酸ブチル15g、エチルセロソルブ7. 5g、
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィ
ンオキシド150mg、2−(3,5−ジ−t−ペンチ
ル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール10
00mg、およびビス(1−オクチルオキシ−2,2,
6,6,テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート
200mgを加え溶解させ、続いて水酸基を有するジペ
ンタエリスリトールポリアクリレートと部分ヌレート化
ヘキサメチレンジイソシアネートの反応生成物であるウ
レタンアクリレート(1分子あたり平均15個のアクリ
ロイル基を含有)10. 0gを加え常温で1時間撹拌し
て被覆用組成物を得た(塗工液1とする)。
【0112】そして、厚さ5mmの透明なPC板(58
0mm×300mm)にバーコータを用いてこの被覆用
組成物を塗工(ウエット厚み30μm)して、80℃の
熱風循環オーブン中で5分間保持した。これを空気雰囲
気中、高圧水銀灯を用いて3000mJ/cm2 (波長
300〜390nm領域の紫外線積算エネルギー量)の
紫外線を照射し、膜厚7μmの透明硬化物層を形成し
た。
【0113】そして、この上にさらに低温硬化性ペロヒ
ドロポリシラザンのキシレン溶液(固形分20%、東燃
株式会社製、商品名「L110」)(塗工液2とする)
をもう一度バーコータを用いて塗工(ウエット厚み3μ
m)して、80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持
して溶媒を除去した後、温度23℃、相対湿度50%の
環境下で24時間保持した。こうしてPC板上に総膜厚
7. 7μmの透明硬化物層を形成した。このサンプルを
用いて[ア]、[イ]に示した評価を行った。その結果
を表1に示した。
【0114】なお、塗工液1を充分硬化させた内層を形
成したPC板の別のサンプルについて、内層表面の耐摩
耗性を評価した結果、100回転後の耐摩耗性は2.8
%であった。
【0115】[例2]例1におけるサンプル調整方法を
以下のように変更した。
【0116】塗工液1を塗工後、80℃の熱風循環オー
ブン中で5分間保持し、これを空気雰囲気中、高圧水銀
灯を用いて200mJ/cm2 (波長300〜390n
m領域の紫外線積算エネルギー量)の紫外線を照射し、
膜厚7μmの部分硬化物層を形成した。そして、この上
にペロヒドロポリシラザン(東燃株式会社製、「V11
0」;数平均分子量Mn ≒100)のキシレン溶液(固
形分20%)をもう一度バーコータを用いて塗工(ウエ
ット厚み6μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で
10分間保持した後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯
を用いて3000mJ/cm2 (波長300〜390n
m領域の紫外線積算エネルギー量)の紫外線を照射し
た。最後に、温度23℃、相対湿度50%の環境下で2
4時間保持した。。こうしてPC板上に総膜厚7. 6μ
mの透明硬化物層を形成した。このサンプルを用いて
[ア]、[イ]に示した評価を行い、その結果を表1に
示した。
【0117】[例3]例2におけるサンプル調整方法を
以下のように変更した。
【0118】最後に紫外線を照射した後に、さらに25
℃に保たれた3%トリエチルアミン水溶液の浴の上に3
分間保持することで硬化させて、PC板上に総膜厚7.
6μmの透明硬化物層を形成した。このサンプルを用い
て[ア]、[イ]に示した評価を行い、その結果を表1
に示した。
【0119】[例4]例3におけるサンプル調整方法を
以下のように変更した。
【0120】塗工液1を塗工後、80℃の熱風循環オー
ブン中で5分間保持し、続いて、この上に塗工液2をも
う一度バーコータを用いて塗工(ウエット厚み3μm)
して、80℃の熱風循環オーブン中で10分間保持した
後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて3000
mJ/cm2 (波長300〜390nm領域の紫外線積
算エネルギー量)の紫外線を照射した。最後に、温度2
3℃、相対湿度50%の環境下で24時間保持した。こ
うしてPC板上に総膜厚7. 6μmの透明硬化物層を形
成した。このサンプルを用いて[ア]、[イ]に示した
評価を行い、その結果を表1に示した。
【0121】[例5]撹拌機および冷却管を装着した1
00mlの4つ口フラスコに、イソプロパノール15
g、酢酸ブチル15g、2,4,6−トリメチルベンゾ
イルジフェニルホスフィンオキシド150mg、2−
(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニ
ル)ベンゾトリアゾール300mg、およびビス(1−
オクチルオキシ−2,2,6,6,テトラメチル−4−
ピペリジニル)セバケート200mgを加え溶解させ、
続いてトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート
10.0gを加え常温で1時間撹拌した。続いて、合成
例で合成したメルカプトシラン修飾コロイド状シリカ分
散液を30. 3g加え更に室温で15分撹拌して被覆用
組成物を得た(塗工液3とする)。
【0122】そして、厚さ5mmの透明なPC板(58
0mm×300mm)にバーコータを用いてこの塗工液
3を塗工(ウエット厚み16μm)して、80℃の熱風
循環オーブン中で5分間保持した。これを空気雰囲気
中、高圧水銀灯を用いて200mJ/cm2 (波長30
0〜390nm領域の紫外線積算エネルギー量)の紫外
線を照射し、膜厚7μmの部分硬化物層を形成した。そ
して、この上に塗工液2をもう一度バーコータを用いて
塗工(ウエット厚み3μm)して、80℃の熱風循環オ
ーブン中で10分間保持した後、これを空気雰囲気中、
高圧水銀灯を用いて3000mJ/cm2 (波長300
〜390nm領域の紫外線積算エネルギー量)の紫外線
を照射した。最後に、温度23℃、相対湿度50%の環
境下で24時間保持した。。こうしてPC板上に総膜厚
7. 6μmの透明硬化物層を形成した。このサンプルを
用いて[ア]、[イ]に示した評価を行い、その結果を
表1に示した。
【0123】なお、塗工液3を充分硬化させた内層を形
成したPC板の別のサンプルについて、内層表面の耐摩
耗性を評価した結果、100回転後の耐摩耗性は0.9
%であった。
【0124】[例6]例5におけるサンプル調整方法を
以下のように変更した。
【0125】塗工液3を厚さ5mmの透明なPC板(5
80mm×300mm)にバーコータを用いて塗工(ウ
エット厚み16μm)して、80℃の熱風循環オーブン
中で5分間保持した。これを空気雰囲気中、高圧水銀灯
を用いて200mJ/cm2(波長300〜390nm
領域の紫外線積算エネルギー量)の紫外線を照射し、膜
厚3μmの部分硬化物層を形成した。そして、この上に
塗工液2をもう一度バーコータを用いて塗工(ウエット
厚み3μm)して、80℃の熱風循環オーブン中で5分
間保持した後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用い
て2000mJ/cm2 (波長300〜390nm領域
の紫外線積算エネルギー量)の紫外線を照射し、引き続
いて170℃の熱風循環オーブン中で5分間保持し、取
り出し直後に透明被覆層塗工面が凸側になるように、3
00mmRの曲率を持つ方に押しつけ、曲げ加工を施し
た。このサンプルを用いて[ア]、[イ]に示した評価
を行い、その結果を表1に示した。また、室温下で1日
養生した物の外観を観察した結果、被覆層にクラックや
しわのない、良好な外観であった。
【0126】[例7]厚さ5mmの透明なPC板(58
0mm×300mm)に、アクリルポリマーからなるプ
ライマを塗布した。次に、このプライマ層の上にシロキ
サン系コーティング剤(東芝シリコーン株式会社製、
「AS4000」)をバーコータを用いて塗工し、室温
で20分間保持して溶媒を除去した後、130℃の熱風
循環オーブン中で60分間保持した。こうしてPC板上
に総膜厚5μmの透明被覆層が形成されたサンプルが得
られた。このサンプルを用いて[ア]、[イ]に示した
評価を行い、その結果を表1に示した。
【0127】
【表1】
【0128】[例8]例5で得られたサンプル(透明窓
体)の周縁部に、図2に示す方法(方法(1))により
樹脂部材を一体化した。一体化にあたり、窓体の周縁部
表裏面および端面にエポキシ系シランを添加したポリウ
レタン系接着剤を塗布し、この窓体を成形型内に配置し
た。次いで、キャビティ空間内にポリ塩化ビニル系樹脂
材料を射出し、樹脂材料の固化後脱型して、樹脂部材付
き窓体が得られた。樹脂部材に外力が加えられた際の各
界面での接着力をみると、樹脂部材と透明硬化物層との
接着力が充分であり、かつ透明硬化物層のうちの内層と
最外層との接着力も充分であった。
【0129】[例9]例6で得られたサンプル(透明窓
体)の周縁部に、図2に示す方法(方法(1))により
樹脂部材を一体化した。一体化にあたり、窓体の周縁部
表裏面および端面にグリシドキシプロピルトリメトキシ
シランを添加したポリウレタン系接着剤を塗工し、この
窓体を成形型内に配置した。次いで、キャビティ空間内
にポリ塩化ビニル系樹脂材料を射出し、樹脂材料の固化
後脱型して、樹脂部材付き窓体が得られた。樹脂部材に
外力が加えられた際の各界面での接着力をみると、樹脂
部材と透明硬化物層との接着力が充分であり、かつ透明
硬化物層のうちの内層と最外層との接着力も充分であっ
た。
【0130】[例10]例3で得られたサンプル(透明
窓体)の周縁部に、図3に示す方法(方法(2))によ
り樹脂部材を一体化した。一体化にあたり、窓体の周縁
部表裏面および端面にアミノ系シランを添加したポリウ
レタン系接着剤を塗布し、この窓体を駆動ロボットに支
持させた。次いで、窓体の周縁部に圧着部材が沿うよう
に窓体を移動させるとともに、押出成形ダイから所定の
断面形状でポリ塩化ビニル系樹脂材料を押出し、圧着部
材により押出された樹脂材料を窓体に圧着・一体化させ
て、樹脂部材付き窓体が得られた。樹脂部材に外力が加
えられた際の各界面での接着力をみると、樹脂部材と透
明硬化物層との接着力が充分であり、かつ透明硬化物層
のうちの内層と最外層との接着力も充分であった。
【0131】[例11]例3で得られたサンプル(透明
窓体)の周縁部に、あらかじめ成形された樹脂部材を接
着剤を介して嵌め込み一体化した(方法(3))。一体
化にあたり、窓体の周縁部にアミノ系シランを添加した
ポリウレタン系接着剤を塗布した。樹脂部材に外力が加
えられた際の各界面での接着力をみると、樹脂部材と透
明硬化物層との接着力が充分であり、かつ透明硬化物層
のうちの内層と最外層との接着力も充分であった。な
お、樹脂部材の成形にあたっては、図2に示す方法にお
いて、窓体を直接成形型内に配置する代わりに窓体の周
縁形状に概略一致するダミー板を成形型内に配置した。
次いで、キャビティ空間内にポリ塩化ビニル系樹脂材料
を射出し、樹脂材料の固化後脱型して、ダミー板から樹
脂部材を取りはずして、樹脂部材を成形した。
【0132】[例12]例7で得られたサンプル(透明
窓体)の周縁部に、図2に示す方法(方法(1))によ
り樹脂部材を一体化した。一体化にあたり、窓体の周縁
部表裏面および端面にエポキシ系シランを添加したポリ
ウレタン系接着剤を塗工し、この窓体を成形型内に配置
した。次いで、キャビティ空間内にポリ塩化ビニル系樹
脂材料を射出し、樹脂材料の固化後脱型して、樹脂部材
付き窓体が得られた。こうして得られた樹脂部材付き窓
体は、樹脂部材とシロキサン系コート層との接着力はあ
る程度あったもの、樹脂部材に加えられた外力によりシ
ロキサン系コート層がPC板から剥離する不具合が見ら
れた。
【0133】
【発明の効果】本発明の透明積層体における透明窓体
は、ほぼ無機ガラスに匹敵する高い耐摩耗性、および耐
擦傷性を有する表面特性に優れた透明窓体であり、この
透明窓体の周縁部に樹脂部材を一体化するにあたり、透
明窓体の表面のハードコート層が樹脂部材との接着性に
富むものであるため、樹脂部材の固定強度の高い樹脂部
材付き透明窓体を提供できる。特に、ハードコート層が
少なくとも2層あり、ハードコート層と透明樹脂板との
密着性が高いことから、樹脂部材に加わる外力に対抗し
得るハードコート層付きの窓体として実用性に富む。
【0134】また、本発明の透明積層体における透明窓
体は、曲げ加工したものも提供可能であり、これを用い
て表面特性に優れた曲げ加工を施した窓体に樹脂部材を
一体化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂部材付き窓体の一例を示す部分的
断面図
【図2】本発明における窓体に樹脂部材を一体化させる
方法の一例を示す部分的断面図
【図3】本発明における窓体に樹脂部材を一体化させる
方法の一例を示す斜視図
【符号の説明】
1:透明樹脂板 2:2層構造の透明硬化物層 3:樹脂部材 4:透明窓体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 博嗣 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内 Fターム(参考) 2E016 AA04 AA07 BA06 BA07 CA01 CB02 CC03 DA02 DB03 DC01 DC05 DD04 DD10 DE03 4F100 AA20B AA20C AA20D AA20E AK01A AK25 AK45 AK51 AK52C AK52E AK79C AK79E AL05B AL05C AL05D AL05E AR00B AR00D BA05 BA06 BA10C BA10E BA25 EH46 GB07 GB32 JB12B JB12C JB12D JB12E JB14B JB14D JK09 JK09B JK09D JK12B JK12D JK14 JK14B JK14D JL02 JL03 JM01B JM01D JM02B JM02C JM02D JM02E JN01A JN01B JN01C JN01D JN01E YY00B YY00C YY00D YY00E

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明樹脂板と該透明樹脂板の表面に設けら
    れたハードコート層とを備えた窓体と、該窓体の周縁部
    に一体化された樹脂部材とを有する樹脂部材付き透明窓
    体において、前記ハードコート層が少なくとも2層の透
    明硬化物層からなり、該少なくとも2層の透明硬化物層
    のうち最外層に接する内層が活性エネルギー線硬化性の
    重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)を
    含む活性エネルギー線硬化性被覆組成物(A)の硬化物
    である耐摩耗性の層であり、最外層が実質的に有機基を
    含まないシリカを形成しうる硬化性被覆組成物(B)の
    硬化物であるシリカ層であることを特徴とする樹脂部材
    付き透明窓体。
  2. 【請求項2】被覆組成物(A)が、さらに平均粒径20
    0nm以下のコロイド状シリカを含む、請求項1記載の
    樹脂部材付き透明窓体。
  3. 【請求項3】被覆組成物(A)の硬化物の層の厚さが1
    〜50μmである、請求項1または2記載の樹脂部材付
    き透明窓体。
  4. 【請求項4】被覆組成物(A)の硬化物が、JIS−R
    3212に準じる耐摩耗性試験における供試体回転回数
    を100回とした場合の曇価が10%以下の耐摩耗性を
    有する硬化物である、請求項1、2または3記載の樹脂
    部材付き透明窓体。
  5. 【請求項5】被覆組成物(B)が、ポリシラザンを含む
    被覆組成物である、請求項1、2、3または4記載の樹
    脂部材付き透明窓体。
  6. 【請求項6】被覆組成物(B)の硬化物の層の厚さが
    0.05〜10μmである、請求項1、2、3、4また
    は5記載の樹脂部材付き透明窓体。
  7. 【請求項7】透明樹脂板と該透明樹脂板の表面に設けら
    れたハードコート層とを備えた窓体と、該窓体の周縁部
    に一体化された樹脂部材とを有する樹脂部材付き透明窓
    体において、前記ハードコート層が少なくとも2層の透
    明硬化物層からなり、該少なくとも2層の透明硬化物層
    のうち最外層がポリシラザンを含む被覆組成物の硬化物
    であるシリカ層であり、最外層に接する内層が耐摩耗性
    の層であることを特徴とする樹脂部材付き透明窓体。
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