JP2000064084A - 電子部品の放熱板用めっき材 - Google Patents

電子部品の放熱板用めっき材

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誠昭 磯野
Satoshi Maruo
聡 丸尾
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 銅合金基材の表面にNi又はNi合金めっき
を有する放熱板用めっき材において、樹脂との密着性に
優れためっき材を得る。 【解決手段】 Ni又はNi合金めっき表面をESCA
分析したとき、Ni2Pの酸化物及び水酸化物のピーク
のメタルのピークに対する強度比が0.1〜0.8の範
囲内にあり、かつ、めっきの光沢度が1.5以下である
Ni又はNi合金めっき材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置等の電
子部品の放熱板用めっき材に関する。特に樹脂密着性に
優れ、BGA(Ball Grid Alley)用の放熱板として好
適なNi又はNi合金めっき材に関し、さらに詳しく
は、エポキシ系樹脂又は接着剤により基板に接着される
放熱板用として好適なNi又はNi合金めっき材に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ICは高集積化、信号の高速化が進んで
いる。このため、半導体パッケージ、特に、MPU、A
SIC等の高集積半導体では、パッケージの放熱性が重
要な課題となっている。BGA(Ball Grid Alley)で
は、放熱板を装着したPBGA(プラスチック基板BG
A)やTBGA(テープ基板BGA)がある。これら
は、樹脂基板に放熱板を接着することによって製造され
る。
【0003】これらのパッケージは、通常、リフローは
んだ付けによって、一括して実装されるが、その際の熱
応力などによる放熱板と樹脂基板の剥離が問題となって
いる。この放熱板と樹脂基板の剥離は、樹脂基板が空気
中の水分を吸収することによって、より起こり易くな
る。このため、基板を作成してからLSIをボンデイン
グするなどのアッセンブリの間、また、パッケージとな
ってからも、実装されるまでの期間は低湿な保管条件に
保つ一方、これらの期間自体をより短くする必要があっ
た。また、ICチップと放熱板が剥離し、その間に隙間
ができると、放熱性が劣化し、部品の機能を失うことに
なる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の剥離の問題の改
善策として、放熱板と樹脂基板やICチップとの密着性
を強化する必要がある。放熱板には、通常、銅又は銅合
金やその他金属が使用され、その表面にはNiめっきが
広く行われている。基板やICチップが接着される面は
Niめっきが行われるため、このNiめっきと基板やI
Cチップとの接着の強度が重要である。従って、本発明
は、電子部品の放熱板として用いられ、樹脂接着剤との
密着性に優れたNi又はNi合金めっき材を得ることを
目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】Ni又はNi合金めっき
を行った放熱板と樹脂基板やICチップとの接着強度を
高くするには、樹脂接着剤とNiの化学的な結合力を高
める必要がある。例えば銅合金リードフレームとモール
ド樹脂の場合、両者の間に強固な接着力を得るために
は、銅合金リードフレームの表面に一定量以上の銅酸化
物が必要であることが知られている。しかし、本発明者
らは、Ni又はNi合金めっきの場合は逆に、めっき表
面のNi酸化物の厚さの増大とともに、めっきと樹脂の
間の密着力(接着強度)が減少することを見いだした。
【0006】そこで、プレス油等の汚れを除去した後の
Niめっき表面のESCA(Electron Spectroscopy fo
r Chemical Analysis:X線光電子分光法)分析による
2P軌道の電子状態分析を行った結果、Niの酸化物あ
るいは水酸化物に対応するピーク強度の未酸化のメタル
のNiを表すピークに対する強度比が0.8以下のと
き、めっきと樹脂の間に優れた密着力が得られることを
見いだした。一方、この値が0.1未満となると、逆に
また樹脂密着性が低下することも見いだした。このピー
ク強度比はNiめっき表面のNi酸化の状態を表すと考
えられる。そして、上記の結果は、Niめっきの表面の
酸化が進行し過ぎると、エポキシ樹脂との化学結合力が
弱くなって樹脂密着性が低下し、また、酸化の程度が余
りに少ない場合にも、メタルのNiに対するエポキシ樹
脂の化学的結合力は弱く、樹脂密着性が低下する、こと
を示すと考えられる。
【0007】本発明はこれらの知見に基づいてなされた
もので、放熱板用のNi又はNi合金めっき材におい
て、ESCA分析によるNi2Pの酸化物及び水酸化物
のピークのメタルのピークに対する強度比(以下、Ni
2P(oxide/metal)と略称)が、0.1〜0.8であ
ることを特徴とし、樹脂密着性に優れている。このめっ
き材では、Ni又はNi合金めっきの光沢度は1.5以
下が望ましい。
【0008】Ni又はNi合金めっきのNi2P(oxid
e/metal)は、めっき液の種類や、めっきの条件、すな
わち、陰極電流密度、めっき液温度により異なり、最適
なめっき条件を選ぶことで、上記の範囲内にコントロー
ルすることができる。また、めっき後の化学的処理(酸
化剤を含む酸による酸洗処理、水酸化ナトリウム等を含
むアルカリ液による処理)や加熱処理(加熱による酸
化)によってコントロールすることもできる。さらに、
このNi2P(oxide/metal)は、保管雰囲気や保管時
間などによっても変化する。このため、Ni又はNi合
金めっき表面に酸化防止皮膜を形成させることも考えら
れる。光沢度は、めっき液に添加する光沢剤の濃度でコ
ントロールできる。この光沢度は、Niめっきの微小表
面凹凸(基材の表面粗さを反映した凹凸ではなく、より
微小な凹凸)と相関があり、光沢度が低いほどめっき表
面の微小凹凸は大きくなると考えられる。つまり、光沢
度が低いめっきほど、表面の微小凹凸は大きくなり、樹
脂との接触面積が増加し樹脂密着性がよい。なお、この
光沢度はGRAPHIC ARTS MANUFACT
URING CO.のGAM MODEL RD−14
4で測定したGAM光沢度とする。
【0009】また、Ni又はNi合金めっきの条件によ
っては上記のNi2P(oxide/metal)及び光沢度が得
られないが、その場合でも、めっき表面層を0.05〜
2μm化学的にエッチングして除去することで、エッチ
ング後のめっき表面を上記の範囲内のNi2P(oxide/
metal)及び光沢度とすることができる。このときのエ
ッチング代は、0.05μm未満では効果が少なく、ま
た、2μmを越えると、十分な効果が得られるが経済的
に無駄となる。
【0010】ところで、放熱板用のNi又はNi合金め
っき材は、一方の面のめっきの表面粗さ(JIS B0
601に定義する最大高さRmax)を0.8μm〜1.
5μmとし、他方の面のめっきの表面粗さを0.8μm
未満とするのが望ましい。このめっき材が放熱板として
使用されるとき、一方の面が樹脂と接触する面となり、
他方の面が大気中に露出され、そこにユーザー名などが
印刷されるが、樹脂と接触する面の表面粗さを0.8〜
1.5μmとし、他方の面の表面粗さを0.8μm未満
とする。これは、樹脂と接触する面において、表面粗さ
が0.8μm未満ではアンカー効果(表面の凹凸に樹脂
が食い込む現象)が小さく樹脂密着性が劣り、一方、表
面粗さが1.5μmを超えると、エポキシ樹脂とNi又
はNi合金めっきとの濡れ性が低下し、十分な接合面積
が得られず樹脂密着性が低下するためである。また、他
方の面において表面粗さが0.8μm以上では、にじみ
のない印字が困難になるためである。
【0011】Ni又はNi合金めっきの表面粗さRmax
は、Ni又はNi合金めっきを行なう前の基材(銅合金
材等)の表面粗さRmaxを調整することでコントロール
できる。基材の表面粗さを調整する手段は、ブラシ研磨
等の機械的手段、エッチングなどの化学的手段などいず
れを用いてもかまわない。なお、このNi又はNi合金
めっき材の樹脂と接触する側の面のめっきは、前記のN
i2P(oxide/metal)と光沢度の値を満たすのが望ま
しい。
【0012】本発明の放熱板用のNi又はNi合金めっ
き材としては、銅又は銅合金材にNi又はNi合金めっ
きを行っためっき材はもちろん、アルミニウム、アルミ
ニウム合金やその他の金属、合金にNi又はNi合金め
っきを行なったものも含まれる。また、Ni合金めっき
としては、Ni−PめっきやNi−Feめっき等、Ni
の重量%が50%以上のものが含まれる。
【0013】
【実施例】(実施例1)Cu−0.1Fe−0.03P
合金板に、表1に示すめっき条件でNiめっきを4μm
行い、さらにアルカリ性の処理液(水酸化ナトリウム水
溶液)に浸漬し、Ni2P(oxide/metal)の異なるサ
ンプルを作製した。また、光沢度はNiめっき液に添加
する光沢剤の濃度を変えることでコントロールした。得
られた試験材について、Ni2P(oxide/metal)、光
沢度及び樹脂密着力を下記要領で測定し、その測定結果
を表2に示す。 Ni2P(oxide/metal);VG SCIENCE社製
のX線光電子分光装置ESCALAB−210D(商品
名)を用い、線源:Mg、加速電圧15kV、試料電流
20mAの条件で測定した。 光沢度;前記の方法で測定した。 樹脂密着力;得られた試験材にSiチップをエポキシ樹
脂で接着し、そのせん断強度を樹脂密着力として測定し
た。。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】表2に示すように、No.1〜6はESC
A分析によるNi2P(oxide/metal)が0.1〜0.
8、かつ光沢度が1.5以下であり、樹脂密着力が高
く、樹脂密着性に優れていた。なお、Siチップとの密
着力が大きいものは樹脂基板との密着力も大きいことを
確認した。一方、No.7、8はNi2P(oxide/meta
l)が0.1〜0.8の範囲内から外れ、樹脂密着力が
低かった。また、No.9はめっき光沢度が2.0と高
く、No.1〜6に比べると樹脂密着力が低かった。
【0017】(実施例2)Cu−0.1Fe−0.03
P合金板に、表1に示すめっき条件でNiめっきを4μ
m行なった。さらに、Niめっき剥離液(10%ニトロ
ベンゼンスルホン酸+15%HSO;60℃)に浸
漬して表面を種々の厚さエッチングした。得られた試験
材について、Ni2P(oxide/metal)、光沢度及び樹
脂密着力を前記要領で測定し、その測定結果を表3に示
す。なお、めっき剥離処理前のNi2P(oxide/meta
l)は0.4、めっき光沢度は2.0であった。
【0018】
【表3】
【0019】表3に示すように、No.10〜15は、
めっき層の表面をエッチングして除去したことにより、
めっき光沢度が1.5以下となり、樹脂密着力が高く、
樹脂密着性に優れていた。一方、No.17はエッチン
グ量が少なく、光沢度が1.5を越えるため、エッチン
グなしのNo.16と同程度の樹脂密着力であった。ま
た、No.18は、光沢度が低く樹脂密着力が高くなっ
ているが、エッチング量が多く経済的に無駄である。
【0020】(実施例3)表裏で粗さが異なるCu−
0.1Fe−0.03P合金板に、表1に示すめっき条
件でNiめっきを4μm行なった。得られた試験材につ
いて、両面のめっきの表面粗さRmaxを測定し、樹脂接
触側にSiチップをエポキシ樹脂で接着し、そのせん断
強度を樹脂密着力として測定した。また、反対面(印字
側)には、インクジェットプリンターで印字を行ない、
印字の状況を観察した。印字がにじまないものを
「○」、にじむものを「×」と評価した。その測定及び
評価結果を表4に示す。なお、めっきのNi2P(oxid
e/metal)は0.4〜0.7、光沢度は0.5〜1.2
の範囲内であった(いずれも樹脂接触側)。
【0021】
【表4】
【0022】表4に示すように、No.19〜24のめ
っき表面粗さRmaxは、樹脂接触側が0.8〜1.5μ
m、印字側が0.8μm未満の範囲内にあり、樹脂密着
性に優れ、印字性も良好であった。No.25、26
は、樹脂接触側の表面粗さRmaxが0.8〜1.5μm
から外れているため、樹脂密着性が低かった。また、N
o.27は樹脂密着性に優れていたが、印字側の表面粗
さRmaxが大きく、印字性が悪かった。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、樹脂密着性に優れた放
熱板用のNi又はNi合金めっき材を得ることができ、
これを例えばBGAなどのICの放熱板として用いるこ
とでICの信頼性を飛躍的に向上させることができる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ESCA分析によるNi2Pの酸化物及
    び水酸化物のピークのメタルのピークに対する強度比
    が、0.1〜0.8であることを特徴とする放熱板用の
    Ni又はNi合金めっき材。
  2. 【請求項2】 光沢度が1.5以下であることを特徴と
    する請求項1に記載された放熱板用のNi又はNi合金
    めっき材。
  3. 【請求項3】 めっき層の表面を0.05〜2μm化学
    的にエッチングしたことを特徴とする請求項1又は2に
    記載された放熱板用のNi又はNi合金めっき材。
  4. 【請求項4】 一方の面の表面粗さRmaxが0.8μm
    〜1.5μmで、他方の面の表面粗さRmaxが0.8μ
    m未満であることを特徴とする放熱板用のNi又はNi
    合金めっき材。
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