JP2000002315A - 高面圧用歯車およびその製造方法 - Google Patents

高面圧用歯車およびその製造方法

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JP2000002315A
JP2000002315A JP16734898A JP16734898A JP2000002315A JP 2000002315 A JP2000002315 A JP 2000002315A JP 16734898 A JP16734898 A JP 16734898A JP 16734898 A JP16734898 A JP 16734898A JP 2000002315 A JP2000002315 A JP 2000002315A
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JP
Japan
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gear
coating
tooth
base material
surface pressure
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Application number
JP16734898A
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English (en)
Inventor
Toshikazu Nanbu
部 俊 和 南
Yoshiteru Yasuda
田 芳 輝 保
Keizo Otani
谷 敬 造 尾
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Publication of JP2000002315A publication Critical patent/JP2000002315A/ja
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H57/00General details of gearing
    • F16H57/04Features relating to lubrication or cooling or heating
    • F16H57/041Coatings or solid lubricants, e.g. antiseize layers or pastes
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H55/00Elements with teeth or friction surfaces for conveying motion; Worms, pulleys or sheaves for gearing mechanisms
    • F16H55/02Toothed members; Worms
    • F16H55/17Toothed wheels

Abstract

(57)【要約】 【課題】 歯先および歯元のうち特に歯元側において発
生するピッチングを抑制し、ピッチング寿命をさらに向
上した高面圧用歯車を提供する。 【解決手段】 歯車母材の表面硬度がHv700以上H
v1100以下であり、作用線上の歯元から歯丈方向に
1:1〜1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ比が
1以上4以下となる硬質被膜12がコーティングされて
なり、場合によってはさらに、歯丈方向に1:1〜1:
3の比となる位置から歯先までに固体潤滑被膜13がコ
ーティングされてなる高面圧用歯車11。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の動力伝
達装置に使用され、その他各種機械・装置の構成要素
(歯車)として使用され、特に、面疲労強度に優れてい
ることが必要とされる用途に適した高面圧用歯車および
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、自動車に用いられる動力伝達装
置は、燃費の向上を目的に、益々小型軽量化される傾向
にあり、それに伴って動力伝達用歯車に対する負荷はさ
らに大きくなっているため、より一層優れた歯元強度お
よび歯面強度が要求されるようになってきている。
【0003】このうち、歯元強度は、ショットピーニン
グの採用により、圧縮の残留応力を付与することで、飛
躍的に向上し、近年では問題のないレベルにまで達して
きている。
【0004】一方、歯元強度に替わって、近年では、ピ
ッチングあるいはスコーリングのような歯面の疲労損傷
が問題となっている。
【0005】これまでのピッチングに関する知見を整理
すると次の通りである。
【0006】ピッチングが発生する原因は転がりすべり
接触に伴うせん断応力説と引張り応力説が提示されてい
るが、これらはいずれも定説になっていない。しかし、
これらの説に基づいて、歯車の圧力角を大きくする手法
や、クラウニングをつけることにより片あたりを緩和す
る手法や、界面潤滑による手法、等が提案されている
(例えば、内藤武志:浸炭焼入れの実際,p229〜2
33,日刊工業新聞社昭和54年8月30日発行)。
【0007】一方、ピッチング寿命を向上させるための
工業的な技術に関しては、特開昭62−88869号公
報にみられるように最終工程で低温浸硫処理を施して歯
面に潤滑層を形成させる方法や、特開平1−26472
7号公報にみられるように表面硬化処理およびショット
ピーニング後に立方晶窒化ホウ素ホイールで研削するこ
とにより最表面に圧縮残留応力を形成する方法などがあ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来、自動車用駆動系
歯車では、浸炭焼入れ処理を行うが、更なる歯元疲労強
度,歯面疲労強度の向上を目的として、浸炭焼入れ処理
に加えて、一般的には、ショットピーニング処理を付加
することが多くなっているが、ピッチングのような表面
を起点とする転動疲労に関してはショットピーニングの
効果が明確ではなく、十分とは言い難い。
【0009】これらの方法は、製造工程が煩雑でコスト
が嵩むわりには、効果が十分とは言い難く、必ずしも有
用とは言えない。例えば、ショットピーニング後に研削
をした場合には、研削痕が初期亀裂として働き、かえっ
てピッチング寿命を低下させる場合すらある。そして、
歯車のピッチングに関しては、高面圧化のための有効な
工業的技術が未だ見出されていない。
【0010】ところで、歯車のような転がりすべり運動
を伴うピッチング現象の特徴は、ピッチ点よりも歯元
側、すなわち、低速側で発生する場合が多いことであ
る。すなわち、荷重の移動する方向と接線力の作用する
向きが反対となる場所に発生することを意味する。
【0011】
【発明の目的】本発明は、上述した従来技術の課題にか
んがみてなされたものであって、自動車のトランスミッ
ション等の駆動伝達系などに使用される歯車において、
特に歯元側に発生するピッチングを抑制し、ピッチング
寿命を向上することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に関わ
る高面圧用歯車は、歯車母材の表面硬度がHv700以
上Hv1100以下であり、歯面上の歯元から歯丈方向
に(すなわち、歯先にかけて)被膜/母材の硬さ比が1
以上4以下となる硬質被膜がコーティングされてなるも
のとしたことを特徴としている。
【0013】本発明の請求項2に関わる高面圧用歯車
は、歯車母材の表面硬度がHv700以上Hv1100
以下であり、作用線上の歯元から歯丈方向に1:1〜
1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ比が1以上4
以下となる硬質被膜がコーティングされてなるものとし
たことを特徴としている。
【0014】本発明の請求項3に関わる高面圧用歯車
は、歯車母材の表面硬度がHv700以上Hv1100
以下であり、作用線上の歯元から歯丈方向に1:1〜
1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ比が1以上4
以下となる硬質被膜がコーティングされており、さら
に、歯丈方向に1:1〜1:3の比となる位置から歯先
までに固体潤滑被膜がコーティングされてなるものとし
たことを特徴としている。
【0015】本発明の請求項4に関わる高面圧用歯車
は、歯車母材の表面硬度がHv700以上Hv1100
以下であり、作用線上の歯元から歯丈方向に1:1〜
1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ比が1以上4
以下となる硬質被膜がコーティングされており、コーテ
ィング被膜の最表面層が、窒化チタン,炭化チタンおよ
びダイヤモンドライクカーボン(DLC)のうちから選
ばれる1種以上の材料で形成されているものとしたこと
を特徴としている。
【0016】本発明の請求項5に関わる高面圧用歯車
は、歯車母材の表面硬度がHv700以上Hv1100
以下であり、作用線上の歯元から歯丈方向に1:1〜
1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ比が1以上4
以下となる硬質被膜がコーティングされており、コーテ
ィング被膜の最表面層が、窒化チタン,炭化チタンおよ
びダイヤモンドライクカーボン(DLC)のうちから選
ばれる1種以上の材料で形成され、さらに、歯丈方向に
1:1〜1:3の比となる位置から歯先までに固体潤滑
被膜として二硫化モリブデン被膜が形成されているもの
としたことを特徴としている。
【0017】本発明の請求項6に関わる高面圧用歯車
は、硬質被膜の厚さを0.05μm以上5μm以下と
し、固体潤滑被膜の厚さを1μm以上20μm以下とし
たことを特徴としている。
【0018】本発明の請求項7に関わる高面圧用歯車の
製造方法は、歯車母材の表面硬度がHv700以上とな
るように浸炭あるいは浸炭窒化処理を行い、歯面にショ
ットピーニングを施したのち歯面に生成した粒界酸化層
をその表面粗さがRmaxで5μm以下となるように研
削除去して、請求項2に記載の硬質被膜(すなわち、歯
車母材の表面硬度がHv700以上Hv1100以下で
あり、作用線上の歯元から歯丈方向に1:1〜1:3の
比となる位置に被膜/母材の硬さ比が1以上4以下とな
る硬質被膜)を形成するようにしたことを特徴としてい
る。
【0019】本発明の請求項8に関わる高面圧用歯車の
製造方法は、歯車母材の表面硬度がHv700以上とな
るように浸炭あるいは浸炭窒化処理を行い、歯面にショ
ットピーニングを施したのち歯面に生成した粒界酸化層
をその表面粗さがRmaxで5μm以下となるように研
削除去し、歯車母材の表面硬度がHv700以上Hv1
100以下であり、作用線上の歯元から歯丈方向に1:
1〜1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ比が1以
上4以下となる硬質被膜を形成したのちに、歯丈方向に
1:1〜1:3の比となる位置から歯先までに固体潤滑
被膜を形成するようにしたことを特徴としている。
【0020】本発明の請求項9に関わる高面圧用歯車の
製造方法は、請求項7または8記載の高面圧用歯車の製
造方法において、硬質被膜の厚さを0.05μm以上5
μm以下とし、固体潤滑被膜の厚さを1μm以上20μ
m以下としたことを特徴としている。
【0021】
【発明の作用】本発明の請求項1に関わる高面圧用歯車
では、歯車母材の表面硬度がHv700以上Hv110
0以下であり、歯面上の歯元から歯丈方向に被膜/母材
の硬さ比が1以上4以下となる硬質被膜がコーティング
されてなるものとしたから、歯面の歯元側表面に母材表
面よりも硬度の高い硬質被膜をコーティングすることに
より、転がりすべり状況下における摩擦係数が減少し、
温度上昇が抑制され、その結果、微小亀裂の生成が遅延
されて、特に歯車の歯元側に発生するピッチングが抑制
され、ピッチング寿命が一段と向上した高面圧用歯車と
なる。
【0022】また、被膜の表面硬度が母材の表面硬度よ
りも大きいため、微小亀裂発生までの時間が長く、ピッ
チング寿命がさらに向上するものとなる。
【0023】ここで、歯車母材の表面硬度がHv700
以上Hv1100以下であるようにしたのは、歯車母材
の表面硬度がHv700よりも低いと現行の浸炭歯車に
比べ十分な寿命向上が見られず、Hv1100よりも高
いと耐衝撃性が低下し、また、加工性も大幅に低下する
ためである。また、被膜硬さ/母材硬さの比を1以上4
以下としたのは、この範囲の下限値未満では摩耗により
被膜が消失し、ピッチング寿命の向上が見られないこと
による。また、上限値超過では被膜/母材間においてせ
ん断型の剥離が発生して密着性に問題が生じることによ
る。
【0024】そして、請求項2に記載しているように、
作用線上の歯元から歯丈方向に1:1〜1:3の比とな
る位置に被膜/母材の硬さ比が1以上4以下となる硬質
被膜がコーティングされてなるものとすることによっ
て、歯面の歯元側表面に母材表面よりも硬度の高い硬質
被膜がコーティングされているものとなり、転がりすべ
り状況下における摩擦係数が減少し、温度上昇が抑制さ
れ、その結果、微小亀裂の生成が遅延されてピッチング
寿命が向上する。
【0025】ここで、歯元から歯丈方向に歯先まで歯面
全体に硬質被膜をコーティングした場合、すべり率が0
%となるピッチ点付近において最大接触応力が最大とな
るため、特に、高い面圧下では、被膜/母材の界面での
剥離が問題となる場合がある。そこで、請求項2のよう
にピッチングが発生する歯元付近のみ硬質被膜をコーテ
ィングすることにより被膜/母材の界面での剥離は著し
く改善され、問題とならないことがわかった。
【0026】そしてこのとき、コーティングの位置を作
用線上において歯元から歯丈方向に1:1〜1:3の比
となるようにしたのは、様々な歯車において最大接触応
力付近での被膜/母材の界面でのせん断型剥離を発生せ
ず、ピッチング寿命が向上する範囲が概ねこの比となる
ためである。図1に歯車1,2の噛み合いにおける作用
線の概念図を示す。
【0027】本発明の請求項3に関わる高面圧用歯車で
は、歯丈方向に1:1〜1:3の比となる位置から歯先
までに固体潤滑被膜がコーティングされてなるものとし
たから、請求項1および2記載に関わる高面圧用歯車の
作用に加えて、歯先や歯元の摩耗がより一層改善される
という作用がもたらされる。そして、この場合の歯先や
歯元の摩耗は、騒音および振動特性を悪化させるため好
ましくない。
【0028】歯車は回転することにより歯が弾性変形
し、歯の突っ込み現象が生じる。その結果、歯先や歯元
が摩耗する場合があるが、請求項2の歯車に比べて、請
求項3の歯車では、歯先側に二硫化モリブデン等の固体
潤滑被膜をコーティングすることによりなじみが促進さ
れ、表面あらさが改善される。
【0029】その結果、最小油膜厚さhminと2物体
の表面粗さ(2乗平均平方根粗さ(√(σ1,rms
+σ2,rms)の比である油膜パラメータが向上
し、金属接触が抑制されることにより温度上昇も減少し
て摩耗が改善される。
【0030】本発明による高面圧用歯車では、硬質被膜
の厚さを0.05μm以上5μm以下とし、固体潤滑被
膜の厚さを1μm以上20μm以下とするのが望ましい
としているが、硬質被膜の厚さは前記した範囲におい
て、母材と被膜との密着性が優れるものとなる。そし
て、硬質被膜の厚さの下限値はピッチング向上の作用が
現れる最低被膜厚さであり、これより薄い場合は十分な
作用が得られない。一方、硬質被膜の厚さの上限値は母
材/被膜間の密着性と歯車振動の双方による。すなわ
ち、被膜が厚くなれば振動起振源が大きくなり、振動特
性は悪化するという特性を持つ。また、上限値を超える
と母材/被膜間の密着性は著しく悪化する。さらにま
た、PVD法(物理気相蒸着法)などで硬質被膜を形成
する場合には成膜時間等の問題からも厚膜とすることは
非効率である。
【0031】
【発明の効果】本発明の請求項1に関わる高面圧用歯車
では、歯車母材の表面硬度がHv700以上Hv110
0以下であり、歯面上の歯元から歯丈方向に(すなわ
ち、歯先にかけて)被膜/母材の硬さ比が1以上4以下
となる硬質被膜がコーティングされてなるものとしたか
ら、歯面の歯元側表面に母材表面よりも硬度の高い硬質
被膜がコーティングされているものとすることにより、
転がりすべり状況下における摩擦係数が減少し、温度上
昇が抑制され、その結果、微小亀裂の生成が遅延され
て、ピッチング寿命が向上するという著しく優れた効果
がもたらされ、また、被膜の表面硬度が母材の表面硬度
よりも大きいため、微小亀裂発生までの時間が長く、ピ
ッチング寿命を向上できるという著しく優れた効果がも
たらされる。
【0032】本発明の請求項2に関わる高面圧用歯車で
は、歯車母材の表面硬度がHv700以上Hv1100
以下であり、作用線上の歯元から歯丈方向に1:1〜
1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ比が1以上4
以下となる硬質被膜がコーティングされてなるものとし
たから、歯面の歯元側表面に母材表面よりも硬度の高い
硬質被膜がコーティングされているものとすることによ
り、転がりすべり状況下における摩擦係数が減少し、温
度上昇が抑制され、その結果、微小亀裂の生成が遅延さ
れて、ピッチング寿命が向上するという著しく優れた効
果がもたらされる。
【0033】本発明の請求項3に関わる高面圧用歯車で
は、歯丈方向に1:1〜1:3の比となる位置から歯先
までに固体潤滑被膜がコーティングされてなるものとし
たから、請求項1および2記載に関わる高面圧用歯車の
効果に加えて、歯先や歯元の摩耗がより一層改善された
ものになるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0034】本発明の請求項4に関わる高面圧用歯車で
は、コーティング被膜の最表面層が、窒化チタン,炭化
チタンおよびダイヤモンドライクカーボン(DLC)の
うちから選ばれる1種以上の材料で形成されているもの
としたから、転がりすべり状況下における摩擦係数が減
少し、温度上昇が抑制され、その結果、微小亀裂の生成
が遅延されて、ピッチング寿命がさらに向上した高面圧
用歯車になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0035】本発明の請求項5に関わる高面圧用歯車で
は、請求項4に加えて固体潤滑被膜として二硫化モリブ
デン被膜が形成されているものとしたから、請求項4に
関わる高面圧用歯車で得られる効果に加えて、歯先や歯
元の摩耗がより一層改善されたものとなるという著しく
優れた効果がもたらされる。
【0036】本発明の請求項6に関わる高面圧用歯車で
は、硬質被膜の厚さを0.05μm以上5μm以下と
し、固体潤滑被膜の厚さを1μm以上20μm以下とし
たから、被膜の形成によるピッチング寿命の向上作用を
十分に得ることが可能であると共に、母材と被膜との間
の密着性を十分良好なものにすることが可能であるとい
う著しく優れた効果がもたらされる。
【0037】本発明の請求項7に関わる高面圧用歯車の
製造方法によれば、歯車母材の表面硬度がHv700以
上となるように浸炭あるいは浸炭窒化処理を行い、歯面
にショットピーニングを施したのち歯面に生成した粒界
酸化層をその表面粗さがRmaxで5μm以下となるよ
うに研削除去して、歯車母材の表面硬度がHv700以
上Hv1100以下であり、作用線上の歯元から歯丈方
向に1:1〜1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ
比が1以上4以下となる硬質被膜を形成するようにした
から、転がりすべり状況下における摩擦係数が減少し、
温度上昇が抑制され、その結果、微小亀裂の生成が遅延
されて、ピッチング寿命がより一層向上した高面圧用歯
車を製造することが可能であるという著しく優れた効果
がもたらされる。
【0038】本発明の請求項8に関わる高面圧用歯車の
製造方法では、硬質被膜を形成したのちに固体潤滑被膜
を形成するようにしたから、前記請求項7の効果に加え
て、歯先や歯元の摩耗がより一層改善された高面圧用歯
車を製造することが可能であるという著しく優れた効果
がもたらされる。
【0039】本発明の請求項9に関わる高面圧用歯車の
製造方法では、硬質被膜の厚さを0.05μm以上5μ
m以下とし、固体潤滑被膜の厚さを1μm以上20μm
以下としたから、被膜の形成によるピッチング寿命の向
上作用を十分に得ることが可能であると共に、母材と被
膜との間の密着性を十分良好なものにすることが可能で
あるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0040】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と共に説明す
るが、本発明はこのような実施例のみに限定されないこ
とはいうまでもない。
【0041】(実施例1〜3,比較例1)この実施例お
よび比較例では、被膜/母材の硬さ比と寿命との関係を
スラスト型転動疲労試験機を用いて評価した。
【0042】まず、直径60mm,厚さ:5mmのステ
ンレス鋼(JIS SUS440C)基板をRa:0.
02μmにラップ仕上げし、その上に、マグネトロンス
パッタリング法でTiN被膜を形成した。次いで、基板
をアルゴンプラズマで5分間エッチングし、1×10
−3torrの真空下において、バイアス電圧:−95
0V,雰囲気:アルゴン+窒素プラズマ中で純チタンを
スパッタリングして成膜を行った。このとき、基板温度
は260℃とし、成膜速度は60〜120nm/min
とした。そして、窒素分圧を変化させることにより硬さ
の違う硬質被膜を形成した。また、被膜厚さは3μmと
した。
【0043】スラスト型転動疲労試験条件は、回転数:
2000rpm,面圧:4GPa,潤滑油温:60℃,
潤滑油:無添加タービン油VG68中で行った。試験は
総回転数1×10でOKストップとして中断し、目視
および光学顕微鏡による剥離発生の有無を観察した。こ
の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】表1に示すように、被膜/母材の硬さ比が
4以下である実施例1〜3の場合には良好な密着性を示
したが、被膜/母材の硬さ比が4.2である比較例1の
場合には被膜/母材間でせん断型の剥離が発生したこと
から、被膜/母材の硬さ比は4以下が適当であることが
わかった。
【0046】(実施例4〜7,比較例2,3)重量%
で、C:0.18%,Si≦0.15%,Mn:0.7
%,P≦0.015%,S:0.015%,Cr:1.
1%,Mo:0.45%,Fe:実質的に残部からなる
クロムモリブデン鋼鍛造材を旋削後、ホブ切りし、次い
で、表面硬度:750Hv,表面炭素濃度:0.8wt
%,表面窒素濃度:0.4wt%となるように浸炭窒化
熱処理を施した。その後エアーノズル方式のショットピ
ーニング装置を用いて、アークハイト:0.82mm,
カバレージ:300%以上となるように歯面全体をショ
ットピーニング処理した。その後、歯面のあらさがRa
で0.05μmとなるように研削仕上げを行った。
【0047】このようにして作製した歯車素材に対し、
前記実施例と同様のマグネトロンスパッタリング法を用
いて、歯面の全体TiN被膜を2μmの厚さでコーティ
ングした歯車と、図2に示すように歯面上の歯元から歯
丈方向に1:2となる位置までTiN被膜(硬質被膜1
2)を2μmの厚さでコーティングした歯車と、図3に
示すように、さらにその位置から歯先までMoS(二
硫化モリブンデ)被膜(固体潤滑被膜13)を10μm
の厚さでコーティングした歯車を作製した。このとき、
被膜の生成温度は200℃とした。なお、この実施例で
は、TiN被膜についてのみ試験を行ったが、TiC
(炭化チタン)被膜やDLC(ダイヤモンドライクカー
ボン)被膜を用いても良いことが確認されている。ま
た、比較のためにコーティングを施さない歯車について
の試験をも行った。
【0048】寿命試験は、動力循環式のギヤピッチング
試験機を用い、回転トルク:34kgf−mおよび28
kgf−m,油温:120℃,油種:自動変速機油(A
TF),回転数:2000rpmで行った。そして、ピ
ッチング寿命は、小歯車の歯面に発生したピッチングに
よる剥離の面積を全歯車の有効かみ合い面積で除した値
が3%となった時の小歯車の累積回転数とした。この結
果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】表2に示す結果より明らかであるように、
実施例4では2×10回でもピッチングおよび被膜/
母材界面での剥離は発生せず、ピッチング寿命は著しく
改善された。また、歯先の摩耗が若干観察されたが、問
題となるレベルではなかった。
【0051】さらに、実施例5では2×10回でもピ
ッチングおよび被膜/母材界面での剥離は発生せず、ピ
ッチング寿命は著しく改善された。また、摩耗もほとん
ど観察されなかった。
【0052】さらにまた、実施例6では4×10回で
被膜/母材間での被膜剥離が発生した。また、摩耗は歯
先,歯元で若干観察されたが、問題となるレベルではな
かった。
【0053】実施例7では回転トルクを若干低い28k
gf−mとしたが、このようなトルク下では34kgf
−mの時にみられた被膜/母材間での被膜剥離は観察さ
れず、2×10回でもピッチングの発生はなく、ピッ
チング寿命は著しく改善された。また、摩耗は歯先,歯
元で若干観察されたが、問題となるレベルではなかっ
た。
【0054】これに対して比較例2では3.1×10
回でピッチングが発生した。また、摩耗量も多く、振動
特性が若干悪化した。
【0055】さらに、比較例3では6.4×10回で
ピッチングが発生した。また、摩耗量も多く、振動特性
が若干悪化した。
【図面の簡単な説明】
【図1】歯車の噛み合いにおける作用線の説明図であ
る。
【図2】実施例4での硬質被膜のコーティング状況を示
す斜面説明図である。
【図3】実施例5での硬質被膜および固体潤滑被膜のコ
ーティング状況を示す斜面説明図である。
【符号の説明】
11 高面圧用歯車 12 硬質被膜 13 固体潤滑被膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 尾 谷 敬 造 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内 Fターム(参考) 3J030 AC10 BA01 BC03 4K028 AA01 AA03 AB01 AB06 4K044 AA02 AB05 BA01 BA11 BB01 BC01 BC07 CA12 CA67

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 歯車母材の表面硬度がHv700以上H
    v1100以下であり、歯面上の歯元から歯丈方向に被
    膜/母材の硬さ比が1以上4以下となる硬質被膜がコー
    ティングされてなることを特徴とする高面圧用歯車。
  2. 【請求項2】 歯車母材の表面硬度がHv700以上H
    v1100以下であり、作用線上の歯元から歯丈方向に
    1:1〜1:3の比となる位置に被膜/母材の硬さ比が
    1以上4以下となる硬質被膜がコーティングされてなる
    ことを特徴とする高面圧用歯車。
  3. 【請求項3】 歯丈方向に1:1〜1:3の比となる位
    置から歯先までに固体潤滑被膜がコーティングされてな
    ることを特徴とする請求項2に高面圧用歯車。
  4. 【請求項4】 コーティング被膜の最表面層が、窒化チ
    タン,炭化チタンおよびダイヤモンドライクカーボンの
    うちから選ばれる1種以上の材料で形成されていること
    特徴とする請求項2に高面圧用歯車。
  5. 【請求項5】 コーティング被膜の最表面層が、窒化チ
    タン,炭化チタンおよびダイヤモンドライクカーボンの
    うちから選ばれる1種以上の材料で形成され、固体潤滑
    被膜として二硫化モリブデン被膜が形成されていること
    特徴とする請求項3に高面圧用歯車。
  6. 【請求項6】 硬質被膜の厚さを0.05μm以上5μ
    m以下とし、固体潤滑被膜の厚さを1μm以上20μm
    以下としたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれ
    かに高面圧用歯車。
  7. 【請求項7】 歯車母材の表面硬度がHv700以上と
    なるように浸炭あるいは浸炭窒化処理を行い、歯面にシ
    ョットピーニングを施したのち歯面に生成した粒界酸化
    層をその表面粗さがRmaxで5μm以下となるように
    研削除去して、請求項2に記載の硬質被膜を形成するこ
    とを特徴とする高面圧用歯車の製造方法。
  8. 【請求項8】 硬質被膜を形成したのちに固体潤滑被膜
    を形成することを特徴とする請求項7に高面圧用歯車の
    製造方法。
  9. 【請求項9】 硬質被膜の厚さを0.05μm以上5μ
    m以下とし、固体潤滑被膜の厚さを1μm以上20μm
    以下としたことを特徴とする請求項7または8に記載の
    高面圧用歯車の製造方法。
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