JPH0544059A - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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JPH0544059A
JPH0544059A JP20076191A JP20076191A JPH0544059A JP H0544059 A JPH0544059 A JP H0544059A JP 20076191 A JP20076191 A JP 20076191A JP 20076191 A JP20076191 A JP 20076191A JP H0544059 A JPH0544059 A JP H0544059A
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seizure
wear
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present
resistance
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JP20076191A
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English (en)
Inventor
Shinji Kato
慎治 加藤
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 耐焼付性、耐摩耗性に優れ、摩擦係数が低く
相手攻撃性に優れた摺動部材の提供。 【構成】 基材の摺動部表面にTixAlyNz(x+
y:z=1:0.5〜1.2、x+y(0.3〜0.
7)=1)の組成の皮膜を2〜40μmの厚さに形成し
た。 【効果】 従来材の代表格であるTiNの焼付荷重が2
50kgであるのに対し、本摺動部材の焼付荷重は32
5〜450kgと優れている。摩擦係数はTiNのμ=
0.100に対し、本摺動部材はμ=0.04〜0.0
8と低摩擦であって、耐摩耗性に優れると共に、相手攻
撃性にも優れている。そのため、本摺動部材を差動装置
に適用する場合は、ピニオンシャフトとピニオンギヤの
クリアランスを小さくできると共に、デフ充填オイル量
を低減できるので、伝達効率が著しく向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はピニオンシャフトとピニ
オンギヤ、あるいはピストンリング等の摺動部材に関す
る。
【0002】
【従来の技術】車両の差動装置のピニオンギヤは、リン
グギヤに固定されたデフケース内で、ピニオンシャフト
に軸支され、トルクを両側のサイドギヤに伝達している
が、車両が旋回するときは、ピニオンギヤが自転するこ
とにより、左右輪の回転数差を調整する。そのため、ピ
ニオンギヤとピニオンシャフトとは摺動面を有する。
【0003】従来、この摺動部材であるピニオンシャフ
トには、基材として機械構造用低合金鋼であるSCr1
5またはSCM20を用い、基材がSCr15である場
合は、摺動面に浸炭窒化処理をし、焼入焼もどしした後
研磨し、SCM20の場合は、浸炭窒化焼入焼もどしし
て研磨した後、さらにタフトライド処理を施すか、ある
いは膜厚10μm前後の無電解Ni−Pめっきを施し、
330℃で1時間の時効処理を施していた。
【0004】ピニオンシャフトと摺動する相手材である
ピニオンギヤには、基材としてSCr15が用いられ、
摺動面に浸炭窒化処理をし、焼入焼もどしした後マンガ
ン系リン酸塩皮膜処理を施していた。また、同じ差動装
置の摺動部材であるスラストワッシャは、冷間もしくは
熱間圧延鋼板から打ち抜かれるが、表面にタフトライド
処理を施している。
【0005】ピストンリングはピストンヘッドに嵌着さ
れピストン壁と摺動して上下動する。ピストンリングに
は鋳鉄もしくはばね鋼がそのまま使用されるか、表面に
Crめっきまたは複合めっきを施して使用している。さ
らに、耐摩耗性に優れたものとしては、13Crマルテ
ンサイトステンレス鋼(SUS 420J2等)を基材
として摺動面をガス窒化処理するか、前記ガス窒化層の
上にTiNもしくは複合めっきを施している。例えば、
特開平3−33944号公報の内燃機関用ピストンリン
グは摺動面外周面に軟窒化処理を施し、さらにこの軟窒
化層の上にイオンプレーティングにより窒化チタン皮膜
を形成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記差
動装置において、比較的大きなトルクを伝達しつつ大き
な差動を生ずる車両の運転状態(凍結路面、雪道等にお
いて片輪をスリップさせながら急発進する場合、緊急用
タイヤを装着し高速道路を100km/hr以上の高速
で走行する場合等)では、ピニオンギヤとピニオンシャ
フトとの摺動面で焼付きが発生し、時として破損に到
る。
【0007】これは、ピニオンギヤとピニオンシャフト
の摺動では、潤滑が悪く、駆動トルクの負荷時は高面圧
となるため、前記の場合のようにすべり速度が大きくな
れば、現行材料では焼付くからである。また、このよう
な焼付きが発生すると、摺動面の摩耗が増大し、ピニオ
ンギヤとピニオンシャフトのクリアランスが大きくなる
ため、トルクの伝達効率が低下する。
【0008】また、従来の表面硬化処理のうち、無電解
Ni−Pめっきのごとく、330℃で1時間の時効処理
を行うものにあっては、低温脆性が生じ、衝撃強度が低
下するため、障害物に衝突する等の原因により、タイヤ
から異常に大きい衝撃が伝達されると、時としてピニオ
ンシャフトが折れることがある。
【0009】さらに、Crめっきにおいては、めっき後
に研磨することが必要であるし、TiNまたはTiCN
皮膜の形成は、皮膜自体の耐摩耗性は無電解Ni−Pめ
っきの時効処理後と同程度で、優れておらず、相手攻撃
性もあまり良くない。また、Mo溶射は処理温度が高く
基材の強度が低下するし、密着力が低く溶射膜が剥離す
るおそれがある。
【0010】本発明は従来の摺動部材の表面硬化処理で
は焼付き荷重が低く、衝撃に対しても弱いという前記の
ごとき問題点を解決するためになされたものであって、
焼付き荷重が大きく、耐摩耗性に優れると共に、摩擦係
数が小さく相手攻撃性に優れた摺動部材を提供すること
を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者は前記の問題点を
解決するため、摺動面に形成する被膜物質および被膜形
成方法について、鋭意研究を重ねた。その結果、Tiと
Alの複合窒化物であるTiAlNが、極めて硬さの高
い材料で、摩擦係数が少なく、相手材の摩耗が小さいと
いう優れた特性を有することを見出した。
【0012】しかしながら、TixAlyNzは、x、
y、zの組成によって被膜の物性が変化するため、摩擦
摩耗特性も変化する。そこで、TixAlyNzのx、
y、zの組成についてさらに研究を重ね、焼付き荷重が
大きく、耐摩耗性に優れると共に、摩擦係数が小さく相
手攻撃性に優れる最適の組成範囲を見出すとことにより
本発明を完成した。
【0013】本発明の摺動部材は、基材の摺動部表面に
TixAlyNz(x+y:z=1:0.5〜1.2、
x+y(0.3〜0.7)=1)の組成の被膜を2〜4
0μmの厚さに形成したことを要旨とする。また、前記
被膜を基材との接合面から被膜の最表面に近づくに従っ
てNの全体に占める割合が減少する多層または傾斜層と
したことを要旨とする。
【0014】TixAlyNz被膜の形成は、PVD
法、レーザPVD法、電子ビーム蒸着法、イオンプレー
ティング法、イオンスパッタリング法プラズマCVD法
等により、低温脆性を避けるため、出来る限り低温で処
理することが望ましい。
【0015】PVD法としては、例えばマグネトロンス
パッタ法も行うことができる。この装置の概略は図10
に示す通りであって、ターゲット10を取り付けた2つ
の対向するマグネトロンカソード12にバイアス電源1
4によりバイアス電圧をかけ、ブラズマ16を発生し、
ターゲット10からスパッタリングで叩き出された膜材
がプラズマ16中でイオン化し、運動エネルギと共に高
効率のイオンプレーティングが行われる。
【0016】処理品18にもバイアス電源20により負
のバイアス電圧をかけているので、処理品は均一なプラ
ズマ16に囲まれるため、処理品18自体を自転させな
くとも均一な成膜ができる。低温での処理を可能にする
には、図11に示すように、装置内での処理品を公転さ
せることによって、プラズマゾーンとその外のプラズマ
のないゾーンを交互に通過させることにより達成でき
る。
【0017】また、図12は従来から公知のスパッタリ
ング装置の一例であるが、この装置を使って本発明の被
膜を形成した例を以下に示す。 ターゲット :TiAl 雰囲気 :N2ガス封入、10-3〜10-4Torr バイアス電圧:−60V 成膜時間 :120分(膜厚3〜4μm) 基板温度 :200℃弱
【0018】また、被膜を形成する基材は、被膜の剥離
を防止し充分な耐摩耗性を発揮させるために、浸炭焼入
焼もどし、浸炭浸窒焼入れ、窒化もしくは軟窒化処理等
を施すことが好ましい。
【0019】本発明をデフピニオンシャフトに応用した
場合の例を以下に示すと、基材がSCM20である場
合、浸炭焼入れした後高温焼もどしし(520℃×1時
間)、続いて膜厚2〜10μのTiAlN被膜を、PV
D法により比較的低温で形成する。高温焼もどし段階
で、基材の表面硬さはHv600以上、内部硬さHv3
00〜340を確保すると共に、PVD法による被膜生
成は、この条件を満足する範囲の低温で処理する。
【0020】表面硬さがHv600以上ないと、応力が
作用した時の接触面圧に基材が耐えられなくなり、基材
が塑性変形することになるので、TiAl被膜のクラッ
ク発生、剥離が発生し、優れた耐焼付性、耐摩耗性が得
られなくなる。表面硬さと基材の疲労強度とは相関関係
があり、Hv600より低くなると、必要な疲労強度が
得られなくなる。
【0021】また、基材がSCM40である場合、浸炭
窒化焼入れ後タフトライド処理し、表面酸化層および白
層を除去してから、膜厚2〜10μのTiAlN被膜
を、PVD法により比較的低温で形成する。タフトライ
ド処理により、表面硬さおよび内部硬さは満足できる
が、タフトライド処理で最表面に形成される酸化層およ
び白層は脆く、摺動により脱落し易いので、仮にこの表
面にTiAlN被膜を形成させても、摺動により基材の
脆い層とともにTiAlN膜が摩耗することになり、優
れた耐焼付性、耐摩耗性が得られなくなる。なお、図4
はデフピニオンシャフトの側面図、図5は図4のA−A
線に於ける断面であるが、耐焼付性および耐摩耗性に優
れた表面処理が特に必要な範囲をaで示した。
【0022】ピストンリングについては、基材が13C
rステンレス鋼、17Crステンレス鋼、21Crステ
ンレス鋼の場合、Hv350前後の焼入れ焼もどし材
を、窒化もしくは軟窒化処理し、表面硬さHv1000
以上、窒化深さ〔Hv800〕90μmとし、表面酸化
層および白層を除去した後、膜厚2〜5μmのTiAl
N被膜を、PVD法により比較的低温で形成する。
【0023】なお、図6はピストンリングの平面図、図
7はピストンリングのB−B線における拡大断面図を示
すが、被膜は摺動外周面bにのみ選択的に形成しても良
いが、摺動面外周面bと併せてその他の面にも被膜を形
成しても良い。
【0024】また、図8の平面図、図9のC−C断面図
に示すデフピニオンスラストワッシャの場合、圧延鋼板
あるいは熱間圧延鋼板の焼入れ焼もどし材に、膜厚2〜
5μmのTiAlN被膜を全面に、PVD法により比較
的低温で形成する。
【0025】
【作用】本発明の摺動部材は、基材の摺動部表面にTi
xAlyNz(x+y:z=1:0.5〜1.2、x+
y(0.3〜0.7)=1)の組成の皮膜を2〜40μ
mの厚さに形成したので、TixAlyNzがTiNと
同様な硬さであるが、その内部構造はTiNとAlNの
混在したものとなっており、混在するが故にTiN、A
lN単独では得られない優れた特性を示す。
【0026】すなわち、焼付荷重の大きさが耐焼付性を
示しているが、従来材の代表格であるTiNの焼付荷重
が250kgであるのに対し、本発明材の焼付荷重は3
25〜450kgと優れている。摩擦係数はTiNのμ
=0.100に対し、本発明材はμ=0.04〜0.0
8と組成による差は大きいものの、Ti0.5Al0.5
0.5、Ti0.5Al0.50.75等は特に低摩擦である。
【0027】また、摩擦摩耗試験における摩耗深さが小
さくなるほど、耐摩耗性に優れることを示すが、荷重1
80kgの値で比較すると、従来材の優れているTiN
の摩耗深さの2.5μmに対して、本発明材の摩耗深さ
は0.1〜1.0μmと断然優れている。さらに、相手
材の摩耗が小さいものほど、相手攻撃性が小さく優れて
いることを示している。一般的には、TiNに代表され
るように、硬さの高い材料は相手材の摩耗が8.5mg
と大きくなることが問題となるが、本発明材における相
手材の摩耗は0.2〜0.5mgと小さく、相手攻撃性
にも優れている。
【0028】本発明の摺動部材に形成された被膜を、基
材との接合面から被膜の最表面に近づくに従ってNの全
体に占める割合が減少する多層または傾斜層とすること
により、摺動初期における相手材とのなじみが良くな
り、内部では硬度が高く、表面では耐焼付性に優れた構
造となるため、摩耗深さはやや多くなるものの、耐焼付
性がさらに改善される。
【0029】ピニオンギヤとピニオンシャフトのクリア
ランスは、小さくなるほど焼付発生時のリングギヤトル
クは小さくなるが、本発明材は耐焼付性に優れているの
で、同じクリアランスでの焼付発生リングギヤトルクが
大幅に向上する。これにより、伝達効率の向上、騒音振
動ショックの低減が得られる。また、本発明材は耐焼付
性に優れているので、デフ充填オイル量を低下させて
も、必要なリングギヤトルクを確保でき、そのためオイ
ル攪拌抵抗の低減により、伝達効率を向上させることが
できる。
【0030】本発明のTixAlyNz組成において、
x+y:z=1:0.5〜1.2としたのは、N量が
0.5より小さくなると耐摩耗性に劣るからであり、
1.2より大きくなると、耐焼付性に劣るとともに、相
手攻撃性が大きくなるからである。また、x+y(0.
3〜0.7)=1としたのは、yが0.3未満では耐焼
付性に劣るとともに、相手攻撃性が大きくなるからであ
り、xが0.3未満では耐焼付性に劣るとともに、耐摩
耗性も劣るからである。
【0031】また、本発明において摺動部に形成される
被膜の厚さを2〜40μmとしたのは、被膜の厚さが2
μm未満である場合は、相手材との摩擦で早期に磨滅し
耐久性に劣るからであり、40μmを越えると、基材と
の界面で割れが発生したり、被膜が剥離するからであ
る。
【0032】
【実施例】本発明の実施例を比較例および従来例と比較
して説明し、本発明の効果を明らかにする。 (実施例1)基材としてSCM20を用い試験片を調製
し、浸炭焼入れした後520℃×1時間の高温焼もどし
を行い、試験片の表面に表1に示す組成の膜厚6μmの
TiAlN被膜をPVD法により形成した。表1におい
て、番号1〜6は本発明の実施例であるが、番号7〜9
は比較例であって、番号7はAl含有量の低いもの、番
号8はNの含有量の低いもの、番号9はTiの含有量の
低いものである。
【0033】また,番号10〜13は従来例であって、
番号10は基材としてSCr15を用い浸炭焼入れした
もの、番号11はPVD法によりTiN被膜を形成した
もの、番号12は無電解Ni−Pめっき後350℃で1
時間時効処理したもの、番号13はMo溶射を施したも
のである。
【0034】これら実施例、比較例および従来例の試験
片について、表面硬さを測定した後、焼付荷重、摩擦係
数、摩耗深さおよび相手攻撃性について測定した。焼付
荷重および摩擦係数は、機械試験所型摩擦摩耗試験機を
用い、上側円筒試験片はSCr20浸炭焼入れしたもの
とし、下側平板試験片は表1の各材料とし、供試油AT
F滴下潤滑、すべり速度1.2m/secで、2分毎に
25kg(p=25kg/cm2)づつ増大させていっ
た時の摩擦係数μ=0.15になった時の焼付荷重(n
=2以上の平均値)および荷重150kgでの摩擦係数
(n=2以上の平均値)を測定したものである。
【0035】摩耗深さ(μm)および相手材の摩耗(m
g)は、LFW−1摩耗試験機を用い、下側リング試験
片をSUJ2焼入れ焼もどしHv720一定とし、上側
ブロック試験片は表1の各材料とし、下側リング試験片
をすべり速度0.3m/secで、供試油AFTに油浴
した状態で回転させ、これに上側ブロック試験片を荷重
60kgおよび180kgにて60分押し付けた時に、
ブロック試験片に形成される円弧状摩耗痕の深さ(μ
m)およびリング試験片の摩耗重量(mg)を測定した
ものである。得られた結果は表1にまとめて示した。
【0036】
【表1】
【0037】表1の結果より、従来例の焼付荷重はSC
r15を浸炭焼入れしたものが最も低く150kgであ
り、従来材の代表格であるTiN被膜の焼付荷重が25
0kgで、最も高かったのは、番号13のMo溶射の2
75kgであった。また、従来例の摩擦係数は0.08
0〜0.105と高かった。
【0038】比較例については、焼付荷重は225〜2
50kgであって、従来材の代表格であるTiN被膜の
焼付荷重と同等かそれ以下であって、それに従って摩擦
係数も0.090〜0.100であって、従来材と殆ど
変わりなかった。
【0039】これに対して、本発明の実施例では、焼付
荷重が325〜450kgであって、これに伴って摩擦
係数も0.040〜0.080であり、優れた耐焼付性
と低摩擦係数をを有することが確認された。
【0040】次に、従来例の荷重60kgにおける摩耗
深さは、TiN被膜の0.5μm以外は全て深く、3.
0〜11.0μmであった。また荷重180kgにおけ
る摩耗深さは、2.0〜20.0であって、いずれも耐
摩耗性に劣る。比較例の摩耗深さは荷重60kgにおい
て、0.5〜3.0μm、荷重180kgにおいて、
2.5〜5.0μmであって、特にN含有量の少なかっ
た番号8の摩耗深さが深く、従来例と比較して、大した
耐摩耗性の改善が見られなかった。
【0041】これに対して、本発明の実施例は荷重60
kgにおける摩耗深さが0.15〜0.6μmであり、
荷重180kgにおける摩耗深さは0.1〜1.0μm
であって、従来例および比較例と比較して、耐摩耗性に
優れていることが確認された。
【0042】また、相手攻撃性については、相手材の摩
耗量によって評価されるが、従来材ではTiN被膜が
0.5mgであった以外は、いずれも相手材の摩耗量が
多く、2.0〜8.7mgであった。また、比較例では
N含有量の少なかった番号8の相手材摩耗量が0.1m
gと少なかったものの、Al含有量の少なかった番号7
の相手材の摩耗量が8.4mgと極めて相手攻撃性に劣
っていた。これに対して本発明例は、相手材の摩耗量が
0.2〜0.5mgであって、相手攻撃性においても、
極めて優れた特性を発揮することが判明した。
【0043】(実施例2)表2に示す基材を図4に示す
デフピニオンシャフトに加工し、表2に示す浸炭焼入
れ、タフトライド処理を施し、表2に示す組成のTiA
lN被膜を表2に示す膜厚でPVD法により形成した。
【0044】
【表2】
【0045 】この被膜を形成したデフピニオンシャフト
について、台上耐久試験を行い、摩耗深さを測定し、得
られた結果を図1に示した。図1から明らかなように、
被膜の厚さが2μm以下であった記号Aは、相手材の突
起により基材から早期に摩滅し、被膜被覆の効果は全く
認められなかった。これに対して被膜の厚さが3μmで
あった記号Bは、相手材の突起によって早期に摩滅する
ことがなく、その間に相手材の突起が摩滅し充分なじん
だ状態になるので、基材の露出面積が広くなっても、焼
付の発生もなく充分な耐久性を示した。
【0046】被膜の厚さが6μm以上であった記号Cお
よびDでは、摩耗は被膜の層内で止まったため、摩耗量
はさらに小さくなった。以上の結果より被膜の膜厚を2
μ以上とすることにより、耐摩耗性の優れた摺動部材の
得られることが判明した。また、前記結果より、摩耗は
表面硬さが高いほど小さくなるため、膜厚が厚くなるほ
ど、基材の硬さが高いほど、表面硬さが高くなり、摩耗
量が小さくなることが判明した。
【0047】(実施例3)基材としてSCM20を用
い、図4に示すデフピニオンシャフトに加工し、浸炭焼
入れした。次いで、表3に示す組成のTiAlN被膜を
表3に示す膜厚でPVD法により形成した。なお、表3
において番号1〜5は本発明の実施例で、番号2および
番号3は、接合面から皮膜の最表面に近づくに従ってN
の全体に占める割合が減少する多層構造としたものであ
る。番号6および番号7は従来例であって、番号6はN
i−P無電解めっき330℃1時間時効処理を施したも
の、番号7は従来例で浸炭焼入れのままのものである。
【0048】
【表3】
【0049】これらデフピニオンシャフトについて、実
機耐久試験後の摩耗深さ(μm)と、ピオンギヤとピニ
オンシャフトとのクリアランスを40μmとした場合の
焼付発生時のリングギヤトルク(kgf−m)を測定
し、得られた結果を表3にまとめて示した。なお、焼付
発生時のリングギヤトルクは、実車試験(2000cc
級ターボ付ガソリン車)で1000rpm程度の差動を
与えた走行条件において、リングギヤトルクを5kgf
−mづつ増大させていった時の焼付発生時のリングギヤ
トルクを測定したものである。
【0050】表3より明らかなように、従来例である番
号6は摩耗深さが20μm、焼付発生時のリングギヤト
ルクが50kgf−mであり、番号7では摩耗深さが3
0μm、焼付発生時のリングギヤトルクが40kgf−
mであった。
【0051】これに対して、本発明の実施例である番号
1〜5は、摩耗深さが1.8〜8μmであって、優れた
耐摩耗性を示し、焼付発生時のリングギヤトルクは10
0〜135kgf−mであって、優れた耐焼付性を示し
た。特に、表面層のN含有量を低減した多層構造の番号
2および3では、摺動初期における相手材とのなじみが
良かったので、焼付発生時のリングギヤトルクは120
〜135kgf−mであって、他の実施例よりも優れた
耐焼付性を有することが確認された。
【0052】(実施例4)実施例3で調製した番号5の
本発明例のデフピニオンシャフトと、番号6の従来例の
デフピニオンシャフトを、2000ccターボ付きガソ
リンエンジン搭載車両の差動装置に、ピニオンギヤとピ
ニオンシャフトとのクリアランスを変化させて組付け、
1000rpm程度の差動を与えた走行条件において、
リングギヤトルクを5kgf−mづつ増大させていった
時の焼付発生時のリングギヤトルクを測定した。また、
ピニオンギヤとピニオンシャフトとのクリアランスを一
定とし、デフ充填オイル量を変化させて、同様の条件で
焼付発生時のリングギヤトルクを測定した。得られた焼
付発生時のリングギヤトルクは、図2にクリアランスと
の関係を、図3にデフ充填オイルとの関係を示した。
【0053】ピニオンギヤとピニオンシャフトとのクリ
アランスは小さくなるほど、摺動面に入る潤滑油量が少
なくなるので、冷却効果が小さくなるため、摩擦熱によ
る温度上昇で油膜粘土が低下し、より低いリングギヤト
ルクで焼付きが発生する。図2のピニオンギヤとピニオ
ンシャフトとのクリアランスと焼付発生時のリングギヤ
トルクとの関係図から明らかなように、クリアランスが
小さくなるほど、焼付発生時のリングギヤトルクは小さ
くなるが、本発明材は耐焼付性に優れているので、図2
に示したように、従来材と比較して、同じクリアランス
での焼付発生リングギヤトルクが大幅に向上した。
【0054】そのため、本発明材の適用により、クリア
ランスを小さくしても、必要なリングギアトルクを確保
できる。次に、本発明材と従来材との適用例を表4に示
す。
【0055】
【表4】
【0056】クリアランスを小さくするほど、ピニオン
とサイドギヤとの噛み合い率が向上し、伝達効率が向上
し、騒音・振動・リングギヤトルクのON−OFF時の
ショックが低下する。表4に示したように、従来材のク
リアランスが70μmであるのに対して、本発明材のク
リアランスは、焼付発生リングギヤトルクが大幅に向上
したので、20〜30μmと小さくできる。そのため、
伝達効率も従来材の83%に対して、90%と向上して
いる。
【0057】デフ充填オイル量を少なくするほど、ピニ
オンギヤとピニオンシャフトとの摺動面に供給される油
量が少なくなるために、焼付発生リングギヤトルクは小
さくなる。一方、デフ摩擦損失に占めるオイル攪拌抵抗
は、40〜80%と大きくこれはデフ充填オイル量を少
なくするほど小さくなる。
【0058】図3のデフ充填オイル量と焼付発生時のリ
ングギヤトルクとの関係図から明らかなように、本発明
材は従来材に比較して耐焼付性が向上したので、デフ充
填オイル量を2リットルから0.5リットルに低下させ
ても、必要なリングギヤトルクを確保できる。そのた
め、本発明材を適用すると、デフ充填オイル量低減によ
るオイル攪拌抵抗の低減により、伝達効率を向上させる
ことが確認された。
【0059】
【発明の効果】本発明の摺動部材は以上詳述したよう
に、基材の摺動部表面にTixAlyNz(x+y:z
=1:0.5〜1.2、x+y(0.3〜0.7)=
1)の組成の皮膜を2〜40μmの厚さに形成したこと
を特徴とするものであって、従来材の代表格であるTi
Nの焼付荷重が250kgであるのに対し、本発明材の
焼付荷重は325〜450kgと優れている。摩擦係数
はTiNのμ=0.100に対し、本発明材はμ=0.
04〜0.08と低摩擦であって、耐摩耗性に優れると
共に、相手攻撃性にも優れている。そのため、本発明を
差動装置に適用する場合は、ピニオンシャフトとピニオ
ンギヤのクリアランスを小さくできると共に、デフ充填
オイル量を低減できるので、伝達効率が著しく向上す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明例と比較例のピニオンシャフトの耐久試
験における摩耗深さを示す線図である。
【図2】本発明例と従来例のピニオンギヤとピニオンシ
ャフトとのクリアランスと焼付発生時のリングギヤトル
クとの関係を示す線図である。
【図3】本発明例と従来例のデフ充填オイル量と焼付発
生時のリングギヤトルクとの関係を示す線図である。
【図4】本発明が適用されるピニオンシャフトの側面図
である。
【図5】図4のA−A線における断面図である。
【図6】本発明が適用されるピストンリングの平面図で
ある。
【図7】図6のB−B線における断面図である。
【図8】本発明が適用されるデフピニオンワッシャの平
面図である。
【図9】図8のC−C線における断面図である。
【図10】本発明で用いられるマグネトロンスパッタリ
ング装置の概略側面図である。
【図11】本発明で用いられるマグネトロンスパッタリ
ング装置の概略平面図である。
【図12】本発明で用いられるスパッタリング装置の概
略側面図である。
【符号の説明】
10 ターゲット 12 マグネトロ
ンカソード 16 プラズマ 18 処理品

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材の摺動部表面にTixAlyNz
    (x+y:z=1:0.5〜1.2、x+y(0.3〜
    0.7)=1)の組成の被膜を2〜40μmの厚さに形
    成したことを特徴とする摺動部材。
  2. 【請求項2】 前記被膜が基材との接合面から被膜の最
    表面に近づくに従ってNの全体に占める割合が減少する
    多層または傾斜層であることを特徴とする請求項1に記
    載の摺動部材。
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