JP4736684B2 - 組合せ摺動部材 - Google Patents

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本発明は、少なくとも一方の表面に非晶質炭素膜を形成した部材を組合せた組合せ摺動部材に係り、特に、耐摩耗性を向上させ、低摩擦係数を維持することができる組合せ摺動部材に関する。
従来から、自動車において、エンジン、トランスミッション、クラッチなど様々な機器に摺動部材が用いられており、この摺動部材の摺動特性を向上させることにより、機器の動作不良を防止し、信頼性を高めるための様々な開発がなされている。
例えば、自動車には、エンジン20とトランスミッション30間に、変速時や停止時における動力を切断し、かつ、車両の発進及び加減速時においてエンジンに大きな負担をかけずに確実にその動力を伝達するために、図2に示すようなクラッチ10が設けられている。このようなクラッチ10は、運転者がクラッチペダル11を踏むと、クラッチペダル11とリンク機構により接続されたレリーズフォーク12がサポート12aを回転中心として回動し、その他端がフライングホイール13内に配設されたクラッチシャフト14を介してレリーズレバー15を揺動させる。この結果、レリーズレバー15がエンジン20側にプレッシャプレート16を移動させてクラッチスプリング18によるクラッチディスク19への押圧を解除し、エンジン20からトランスミッション30への動力が切断される。このように、運転者50がクラッチ10を操作したときに、レリーズフォーク12はサポート12aに高面圧を付与しながら摺動するので、長期間の使用によりフォーク摺動部分が摩耗し、クラッチ10の作動不良の原因となる虞があった。このような問題を鑑みて、クラッチフォークの摺動面に低摩擦材料を形成した自動車用乾式クラッチが提案されている(特許文献1参照)。
一方、近年では、摩擦係数の低減化、耐摩耗性の向上を図るべく、自動車機器の摺動部材の表面のコーティング技術として、摺動部材の摺動面に非晶質炭素膜(DLC膜)を被覆する技術が注目されている。たとえば、エンジンのピストン機構に適用した一例として、ピストンリングの摺動面に面粗度がRz1ミクロン以下の非晶質硬質炭素膜(DLC膜)が被覆され、該ピストンリングと摺動するシリンダーライナの摺動面に面粗度がRz1ミクロン以下の鉄系材料を用いたエンジンのピストン機構が提案されている(特許文献2参照)。
実開平2−93528号公報 特開2004−176848号公報
ところで、上述したようなDLC膜を被覆した摺動部材は、このDLC膜を被覆する基材として、表面硬さが相手摺動部材の表面硬さよりも高い材料(例えば、JIS規格:SUS440,SCM420浸炭焼入れなど)が用いられ、この場合、基材の表面粗さを小さくしてからDLC膜を被覆されることが一般的である。
これは、基材の表面粗さを小さくすることによってDLC膜の摺動面の表面粗さを小さくし、摺動時に相手摺動部材の摺動面を硬質のDLC膜が形成された摺動面に馴染ませて、DLC膜が相手摺動部材を削るようなアブレシブ摩耗を抑制し、膜表面のグラファイト化を発現させることを目的としたものである。さらに、このような摺動面に対して潤滑油を供給すると摺動面に油膜が形成されて境界潤滑に近づくので、更なる摺動性の向上を図ることができる。
しかし、図2に示すようなクラッチのレリーズフォークの摺動面にこのようなDLC膜をコーティングするような技術を適用する場合には、レリーズフォークの形状は複雑であるために、サポートと摺動するレリーズフォークの摺動面の表面粗さを小さくすることは難しい。さらに、DLC膜を被覆前のレリーズフォークの表面硬さを向上させるために窒化などの表面処理がなされた場合には、この焼入れによりレリーズフォークの摺動面の表面がさらに粗くなる虞もあり、このような摺動面を研磨することはさらに難しくなってしまう。この結果、たとえこのような摺動面に対して潤滑油を供給したとしても、表面粗さが大きいため、接触面圧が高い場合には境界潤滑となってしまい、安定した油膜は形成さず、DLC膜により相手摺動部材の摺動面が削られてしまう。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、たとえ複雑な形状により、非晶質炭素膜を被覆する摺動面の表面粗さを小さくすることができない摺動部材であっても、摺動時において相手摺動部材の摺動表面と馴染み性を向上させて、アブレシブ摩耗を抑制し、膜表面のグラファイト化を効率よく発現し、その結果として、相手攻撃性を含めた耐摩耗性を向上させ、低摩擦係数を維持することができる組合せ摺動部材を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、これまでのように非晶質炭素膜を用いて摺動特性を向上させるには、この硬質膜が被覆された部材に対して相手摺動部材を馴染ませるように双方の材料を選定し表面粗さを設定していたが、この膜を被覆する基材の表面粗さを小さくすることができないような場合、すなわち被覆した非晶質炭素膜の表面粗さを小さくすることができないような場合には、逆に相手摺動部材に対してこの被膜を形成した摺動部材の摺動面を馴染ませることにより、この組合せ摺動部材の摺動特性を向上させることができると考えた。
そこで、発明者らはこの考察に基づいて多くの実験と研究を行うことにより、高負荷における摺動時においても弾性変形可能な領域を被膜側の部材に確保させること、すなわち、被膜を形成する部材を相手摺動部材よりも表面硬さが低い材料を選定することで非晶質炭素膜が相手摺動部材の摺動面に馴染み、さらに、相手摺動部材の表面硬さも絶対的に高くなるので、この組合せ摺動部材の耐摩耗性が向上し、低摩擦特性を維持することができるとの知見を得た。
本発明は、本発明者らが得た上記の新たな知見に基づくものであり、本発明の組合せ摺動部材は、基材表面に非晶質炭素膜を被覆して摺動面とした第一摺動部材と、該第一摺動部材の摺動面に摺動する面に鉄系材料を有した第二摺動部材と、を備えた組合せ摺動部材であって、第一摺動部材の基材の表面硬さが、第二摺動部材の摺動面の表面硬さよりも低いことを特徴としている。
本発明の如き組合せ摺動部材は、このような表面硬さの関係を満たすように、第一摺動部材と第二摺動部材の材質を選定したので、摺動時において第二摺動部材に対する第一摺動部材の摺動表面の馴染み性が向上するので、アブレシブ摩耗を抑制し、膜表面のグラファイト化を効率よく発現させることができる。この結果、摺動部材の耐摩耗性を向上させると共に、摺動面に生成されたグラファイトが固体潤滑剤として作用して、摺動部材の低摩擦係数を維持することができる。
さらに、この第一摺動部材の基材の表面硬さは、第二摺動部材の摺動面の表面硬さよりもHv300〜500低いことが好ましい。この程度の表面硬さの差を設けることにより、非晶質炭素膜が形成された第一摺動部材の摺動面をより、第二摺動部材の摺動面に馴染ませることができる。このように、表面硬さ差がHv300よりも小さい場合には、第一摺動部材の摺動面が第二摺動部材の摺動面に対して馴染みにくくなり、第二摺動部材の摩耗が促進されてしまい、また、表面硬さ差がHv500よりも大きい場合には、第一摺動部材の摺動面の基材硬さが低すぎることになり、摺動時の面圧が高い場合には、摺動面に被覆された非晶質炭素膜が剥離する虞がある。
さらにこの関係を満たす、ある態様としては、第一摺動部材の基材の表面硬さはHv100〜200、非晶質炭素膜の表面硬さはHv1000〜1500であり、第二摺動部材の摺動面の表面硬さはHv500〜600であることが好ましい。この関係において、第一摺動部材の表面硬さがHv100よりも低い、または第二摺動部材の表面硬さがHv600よりも高い場合には、第一摺動部材と第二摺動部材の表面硬さの差が大きくなり過ぎて、相対的に第一摺動部材の基材の表面硬さ低くなり、摺動時の面圧が高い場合には、摺動面に被覆された非晶質炭素膜が剥離する虞がある。一方、第一摺動部材の表面硬さがHv200よりも高い、または第二摺動部材の表面硬さがHv500よりも低い場合には、第一摺動部材と第二摺動部材の表面硬さの差が小さくなりすぎて、第一摺動部材に被覆した非晶質炭素膜が、第二摺動部材の表面に馴染みに難くなる。その結果、非晶質炭素膜が第二摺動部材の表面を攻撃してしまい(相手攻撃性が高まり)、第二摺動部材の摺動面の摩耗が促進されてしまう。さらに、非晶質炭素膜の表面硬さがHv1000よりも低い場合には、非晶質炭素膜そのもの摩耗が促進されてしまい、さらにHv1500よりも高い場合には、この膜が第二摺動部材の表面に馴染み難くなってしまい、第二摺動部材の摺動面の摩耗が促進されてしまう。
また、このような表面硬さを維持できるのであれば、非晶質炭素膜中に、Si、Ti、Cr、Mo、Fe、W、Bなどの添加元素を添加してもよく、このような元素を添加することにより、被膜の表面硬さを調整することもできる。
非晶質炭素膜を成膜する方法としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどを利用した物理気相成長法(PVD)により成膜してもよく、プラズマ処理などを利用した化学気相成長法(CVD)により成膜してもよい。
第二摺動部材は、上記表面硬さを得るために表面硬化処理を行ってもよく、この表面硬化処理としては、火炎焼入れ、高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の表面焼入れ、浸炭、窒化、浸硫窒化等の拡散浸透処理、ショットピーニングなどの加工硬化処理などが挙げられる。
表面硬さがHv100〜200を有する第一摺動部材の基材となる材料としては、コスト性及び汎用性の観点から鋼系の材料、アルミニウム合金材料が好ましく、例えば、鋼系の材料としては、一般構造用圧延鋼材(例えばJIS規格:SS400),機械構造用炭素鋼(例えばJIS規格:S25C),熱間圧延鋼板(例えばJIS規格:SPH270)などの軟鋼材料やオーステナイト系ステンレス鋼(例えばJIS規格:SUS304,SUS316系ステンレス鋼)が挙げられ、アルミニウム合金材料としては、Al−Cu(−Mg)系合金(JIS規格:2000系合金)の展伸用アルミニウム合金材料、Al−Cu系合金(例えばJIS規格:AC1B系合金)の鋳物用アルミニウム合金材料などが挙げられる。
さらに、この組合せ摺動部材の第一摺動部材の非晶質炭素膜の厚みは、0.1μm以上であることが好ましい。この厚みが0.1μmよりも小さい場合には、摺動時にこの膜はすぐに摩滅してしまう。
さらに上述したような組合せ摺動部材をクラッチに適用した場合には、当該クラッチを構成するレリーズフォークの摺動面には組合せ摺動部材の第一摺動部材が用いられ、該レリーズフォークを支持するサポートの摺動面には組合せ摺動部材の第二摺動部材が用いられていることが好ましい。
形状が複雑であるレリーズフォークの摺動表面は、表面粗さを低くするような研磨を行うことが難しいが、たとえこのような研磨を行わなくても、レリーズフォーク及びそのサポートの耐摩耗性を向上させ、摺動抵抗を低減することができるので、クラッチの作動不良等を回避し、装置の信頼性を向上させることができる。
本発明によれば、たとえ非晶質炭素膜が形成された第一摺動部材の表面粗さが大きくとも、第一摺動部材の非晶質炭素膜が形成された摺動面を第二摺動部材の摺動面に対して、効果的に馴染ませることができるので、この硬質の被膜による第二摺動部材のアブレシブ摩耗を抑制し、膜表面のグラファイト化を効率よく発現することが可能となる。その結果として、相手攻撃性を含めた組合せ摺動部材の耐摩耗性を向上させ、低摩擦係数を維持することができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
本発明に係る組合せ摺動部材の第一摺動部材としてサイコロ試験片を製作し、第二摺動部材として円筒試験片を製作した。
サイコロ試験片(第一摺動部材):非晶質炭素膜を被覆する基材として、表面硬さHv100,表面粗さを十点平均粗さRz6.3μmにした16×6×10mmの熱間圧延鋼板(JIS規格:SPH270C)を製作し、この基材の16×6mmの表面にスパッタリング装置(神戸製鋼所製)を用いて、硬質炭素膜を基材表面に被覆した。この成膜条件としては、炭素材料からなるターゲット(グラファイトターゲット)を装置内に配置し、ターゲットと基材との間に、アルゴン(Ar)ガス(不活性ガス)と、メタン(CH)ガス(炭化水素系ガス)とからなる処理ガスを、処理ガス中のメタンガスの体積率が5%となるよう調整して流した。そして、この処理ガスを流した状態で、成膜温度(具体的には基材の温度)を100℃に保持して、ターゲットと基材との間に100Vに調整したバイアス電圧をかけながら、プラズマを発生させて、基板の表面にこれらターゲットのスパッタ粒子をスパッタリングすることにより、膜厚(層厚)が1.5μm、表面粗さが十点平均粗さRz6.3μm、膜の表面硬さHv1500となるように非晶質炭素膜(DLC膜)を成膜した。
円筒試験片(第二摺動部材):寸法が外径35mm、内径30mm、幅10mm、表面粗さが十点平均粗さRz9.0μmとなるように機械構造用炭素鋼(JIS規格:S45C)を用いて円筒試験片を製作し、さらにこの試験片を高周波焼入れし、外周面の表面硬さをHv500にした。
摩耗試験:サイコロ試験片の非晶質炭素膜を形成した16×6mmの面と、円筒試験片の外周面とを接触させて、その接触面(摺動面)に、潤滑油(SAE粘度グレード5W−30の市販エンジン油)を供給しながら荷重30kgf、回転数160rpmの条件で円筒試験片を30分間回転させた。そして、試験終了後のサイコロ試験片の摩耗痕深さ、円筒試験片の摩耗重量(試験前後の重量差)を測定し、これらを摩耗量とした。その結果を図1及び表1に示す。
(実施例2)
実施例1と同様のサイコロ試験片及び円筒試験片を製作した。実施例2の試験片が実施例1の試験片と異なる点は、サイコロ試験片に被覆するDLC膜の成膜時に、バイアス電圧、メタンガス濃度等を調整して、DLC膜の表面硬さをHv1500とした点である。そして、これらのサイコロ試験片と円筒試験片とを用いて実施例1と同じ条件で摩耗試験を行った。その結果を図1および表1に示す。
(実施例3,4)
実施例1と同様のサイコロ試験片及び円筒試験片を製作した。実施例3,実施例4の試験片が実施例1の試験片と異なる点は、DLC膜を被覆するサイコロ試験片の基材の表面硬さをHv200にした点であり、それに加えて、実施例4の試験片は実施例2と同じ条件でDCL膜を成膜し膜の表面硬さをHv1500にした点が更に異なる。そして、これらのサイコロ試験片と円筒試験片とを用いて実施例1と同じ条件で摩耗試験を行った。その結果を図1および表1に示す。
(実施例5,6)
実施例1と同様のサイコロ試験片及び円筒試験片を製作した。実施例5,実施例6の試験片が実施例1の試験片と異なる点は、DLC膜を被覆するサイコロ試験片の基材の表面硬さをHv400にした点であり、それに加えて、実施例5の試験片は実施例2と同じ条件でDCL膜を成膜し膜の表面硬さをHv1500にした点が更に異なる。そして、これらのサイコロ試験片と円筒試験片とを用いて実施例1と同じ条件で摩耗試験を行った。その結果を図1および表1に示す。
(比較例1〜6)
実施例1と同様のサイコロ試験片及び円筒試験片を製作した。比較例1の試験片が実施例1の試験片と異なる点は、サイコロ試験片の表面に、非晶質炭素膜を形成しなかった点である。比較例2が実施例1と異なる点は、サイコロ試験片に被覆するDLC膜の成膜時に、バイアス電圧、メタンガス濃度等を調整して、DLC膜の表面硬さをHv2000とした点である。そして、これらのサイコロ試験片と円筒試験片とを用いて実施例1と同じ条件で摩耗試験を行った。その結果を図1および表1に示す。
(比較例3,4)
実施例3と同様のサイコロ試験片及び円筒試験片を製作した。実施例3の試験片と異なる点は、比較例3は、サイコロ試験片の表面にDLC膜を被覆しなかった点、比較例4は、比較例2と同じ条件でDCL膜を成膜し膜の表面硬さをHv2000にした点である。そして、これらのサイコロ試験片と円筒試験片とを用いて実施例1と同じ条件で摩耗試験を行った。その結果を図1および表1に示す。
(比較例5,6)
実施例5と同様のサイコロ試験片及び円筒試験片を製作した。実施例5の試験片と異なる点は、比較例5は、サイコロ試験片の表面にDLC膜を被覆しなかった点、比較例6は、比較例2と同じ条件でDCL膜を成膜し膜の表面硬さをHv2000にした点である。そして、これらのサイコロ試験片と円筒試験片とを用いて実施例1と同じ条件で摩耗試験を行った。その結果を図1および表1に示す。
Figure 0004736684
(結果1)
実施例1〜6のサイコロ試験片の摩耗量及び円筒試験片の摩耗量は、第一摺動部材の表面の硬さを低くするに伴って少なくなり、実施例1〜4のサイコロ試験片の摩耗量及び円筒試験片の摩耗量は、サイコロ試験片の摩耗量は1μm程度、円筒試験片の摩耗量は0.055g以下であり、双方の摩耗量は少なかった。
(結果2)
実施例1〜6のサイコロ試験片の摩耗量又は円筒試験片の摩耗量のいずれか一方の摩耗量は、比較例1〜6のものよりも少なかった。比較例1,3,5のサイコロ試験片は、他のものに比べて摩耗量が多く、比較例2,4,6の円筒試験片は、他のものに比べて摩耗量が多かった。
(評価1)
結果1から、実施例1〜6の如く、摺動面に非晶質炭素膜を被覆したサイコロ試験片と、このサイコロ試験片の摺動面に摺動する面に鉄系材料を有した円筒試験片と、摺動させた場合、サイコロ試験片のDLC膜を被覆した基材の表面硬さを円筒試験片の摺動面の表面硬さよりも低くするに伴い双方の試験片の耐摩耗性を向上したのは、摺動時において円筒試験片に対するサイコロ試験片の摺動表面の馴染み性が向上し、その結果、アブレシブ摩耗を抑制され、膜表面のグラファイト化を効率よく発現したものであると考えられる。また、円筒試験片の摺動面の表面硬さも、基材の表面硬さに比べて硬くしたので円筒試験片の耐摩耗性が向上したものと考えられる。
さらに結果1から、円筒試験片の表面硬さはHv500であるが、上記に示した関係を満たしていればよく、本実施例において使用した円筒試験片の材質(S45C)を高周波焼入れした場合の一般的な表面硬さの範囲Hv500〜600であっても、同様の効果が得られ、この結果から、実施例1〜4の結果を考慮すると、サイコロ試験片の基材の表面硬さは、円筒試験片の摺動面の表面硬さよりもHv300〜500低いことがより好ましいと考えられる。
(評価2)
結果2より、DLC膜を摺動面に被覆していないサイコロ試験片(比較例1,3,5)は、低い表面硬さの摺動面となるので、このサイコロ試験片は、円筒試験片の相対的に硬い摺動面によって削られ、サイコロ試験片の摩耗量は多くなったものと考えられる。
また、結果2より、DLC膜の表面硬さをHv2000とした場合には、(1)DLC膜の表面硬さが高いのでDLC膜により相対的に表面硬さの低い円筒試験片が削られ易くなったこと(2)表面硬さが高すぎるため、サイコロ試験片の基材表面の表面硬さを低くしても、DLC膜が円筒試験片の摺動表面に馴染みにくくなったことにより、この円筒試験片は、他のものに比べて摩耗量が多くなったものであると考えられる。
以上より、評価1の表面硬さの条件に加え、サイコロ試験片の摺動面にはDLC膜を被覆する必要があると考えられる。また、このようなDLC膜を被覆する場合には、相手摺動部材である円筒試験片の表面に馴染む表面硬さが好ましい。
(評価3)
評価1,2より、実施例1〜4の如く、サイコロ試験片(第一摺動部材)の基材の表面硬さはHv100〜200、非晶質炭素膜の表面硬さはHv1000〜1500であり、円筒試験片(第二摺動部材)の摺動面の表面硬さはHv500〜Hv600である場合には、より耐摩耗性が向上すると考えられる。この関係において、サイコロ試験片の表面硬さがHv100よりも低い、または円筒試験片の表面硬さがHv600よりも高い場合には、サイコロ試験片と円筒試験片の表面硬さの差が大きくなり過ぎて、相対的にサイコロ試験片の基材の表面硬さが低くなり、摺動時の面圧が高い場合には、摺動面に被覆されたDLC膜が剥離する虞がある。一方、サイコロ試験片の表面硬さがHv200よりも高い、または円筒試験片の表面硬さがHv500よりも低いである場合には、サイコロ試験片と円筒試験片の表面硬さの差が小さくなりすぎて、サイコロ試験片に被覆したDLC膜が、円筒試験片の表面に馴染みに難くなる。その結果、DLC膜が円筒試験片の摺動面を攻撃してしまい(相手攻撃性が高まり)、円筒試験片の摺動面の摩耗が促進されてしまうと考えられる。さらに、DLC膜の表面硬さがHv1000よりも低い場合には、非晶質炭素膜そのもの摩耗が促進されてしまい、さらにHv1500よりも高い場合には、この膜が円筒試験片の表面に馴染み難くなってしまい、円筒試験片の摺動面の摩耗が促進されてしまうと考えられる。
以上、本発明に係る組合せ摺動部材のいくつかの実施例について詳述したが、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
たとえば、本実施例では、第一摺動部材(サイコロ試験片)の基材の表面硬さはHv100〜200、非晶質炭素膜の表面硬さはHv1000〜1500であり、第二摺動部材(円筒試験片)の摺動面の表面硬さはHv500〜600である場合には、耐摩耗性を向上させて、低摩擦係数を維持することができたが、このような条件に限定されるものではなく、原則的には、第一摺動部材の基材表面を第二摺動部材の摺動面の表面硬さよりも低くし、第一摺動部材に被覆する非晶質炭素膜が第二摺動部材に馴染むように非晶質炭素膜の表面硬さ及び膜厚をすれば良いといえる。
また、本実施形態では、表面粗さを大きい基材表面に非晶質炭素膜を被覆したが、基材表面の粗さが小さい場合であっても、基材表面にうねりがある場合であっても、同様の効果は期待できる。
また、実施例では、第一摺動部材の基材として熱間圧延鋼板を用いたが、第一摺動部材の基材は非晶質炭素膜が被膜されるので所定の表面硬さを有していればこの材料に限定さるものではなく、第一摺動部材の馴染み性を確保できるのであれば、例えば鋳鉄、アルミニウム合金材料等であってもよい。また、一方、第二摺動部材として機械構造用炭素鋼を用いたが、第二摺動部材は所定の表面硬さを有する鉄系材料であるならば、ステンレス鋼、鋳鉄等であってもよい。
本発明に係る組合せ摺動部材は、表面を研磨し難い複雑な形状の部材を高面圧条件下で摺動させるような場合には好適であり、例えば、自動車のクラッチのレリーズフォークとそのフォークを支承するサポートには特に好適である。
実施例1〜4の組合せ摺動部材と比較例1〜6の組合せ摺動部材の摩耗試験結果を示した図。 従来のクラッチの全体構成図。

Claims (5)

  1. 基材表面に非晶質炭素膜を被覆して摺動面とした第一摺動部材と、該第一摺動部材の摺動面に摺動する面に鉄系材料を有した第二摺動部材と、を備えた組合せ摺動部材であって、
    第一摺動部材の基材の表面硬さが、第二摺動部材の摺動面の表面硬さよりも低く、前記第一摺動部材の基材の表面硬さはHv100〜200、非晶質炭素膜の表面硬さはHv1000〜1500であり、前記第二摺動部材の摺動面の表面硬さはHv500〜600であること特徴とする組合せ摺動部材。
  2. 第一摺動部材の基材の表面硬さは、第二摺動部材の摺動面の表面硬さよりもHv300〜500低いことを特徴とする請求項1に記載の組合せ摺動部材。
  3. 第一摺動部材の基材の被覆される表面は、少なくとも熱間圧延鋼板からなる軟鋼材料またはAl−Cu系のアルミニウム合金材料を有することを特徴とする請求項1または2に記載の組合せ摺動部材。
  4. 前記第一摺動部材の非晶質炭素膜の厚みは、0.1μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組合せ摺動部材。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の組合せ摺動部材を用いたクラッチであって、当該クラッチを構成するレリーズフォークの摺動面には組合せ摺動部材の第一摺動部材が用いられ、該レリーズフォークを支承するサポートの摺動面には組合せ摺動部材の第二摺動部材が用いられていることを特徴とするクラッチ。
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