JP4732701B2 - プーリ及び湿式ベルト式無段変速機 - Google Patents

プーリ及び湿式ベルト式無段変速機 Download PDF

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Description

本発明は、自動車や産業機械等の動力伝達装置に適用されるプーリ、ブロック、伝動ベルト、およびこれらを備えた湿式ベルト式無段変速機に関する。
湿式ベルト式無段変速機(以下、単に「CVT」ということがある)とは、有効径が可変な1対のプーリに巻き掛けられた伝動ベルトを介して動力を伝達する装置であり、自動車や産業機械等の動力伝達装置として使用されている。このCVTに使用されるプーリは、例えば、回転軸に対して固定された円盤状の固定回転体とその固定回転体に対して軸心方向の移動可能に設けられた可動回転体とから構成され、固定回転体と可動回転体との間の距離、すなわちV溝幅を変化させることにより、有効径を自在に設定することができる。
ベルト式のCVTは、プーリシーブ面(円錐状摺動面であり、伝動ベルトのブロックとの接触面)と伝動ベルトを構成するブロック端面との間の摩擦力によって、駆動トルクを伝達する構造となっている。潤滑油が用いられる湿式のCVTの摩擦状態では、すべり速度の増加に伴い、プーリと伝動ベルトとの間の油膜厚さが増大し、μ値(摩擦係数)が低下する。そのため、湿式のCVTでは、回転数の増大もしくは伝達トルクの増大に伴い、接触面のすべり速度が増大して、伝達トルク容量が低下することが課題となっている。
運転条件によらない安定した伝達トルク特性を得るため、プーリと伝動ベルトとの間のμ特性には、すべり速度(v)依存性が少ない特性(高すべり速度域におけるμ値低下の抑制)が求められている。さらに、長期の使用に渡って安定したμ特性を得るためには、プーリおよびブロックの両者とも、高い耐摩耗性を確保することが必須となる。
また、プーリとブロックと間の摩擦力が駆動トルクに比べて小さいと、両者に大きなすべりが生じ、伝達効率の低下または伝達不能につながる。従って、エンジン出力の向上などによって、CVTユニットが伝達可能なトルクの限界値(すなわち、伝達トルク容量)を更に向上させることが求められている。
湿式CVT用のプーリおよびブロック(または伝動ベルト)に関する従来技術として、以下のようなものが知られている。
まず、ブロック端面および/またはプーリシーブ面に、ダイヤモンドを中心とするIV族またはIII〜V族化合物のような共有結合性絶縁体、または、III〜Va族の炭化
物、ホウ化物、窒化物などの共有性金属化合物(アルミナ、窒化チタン、炭化チタン、炭化クロム、炭化タングステン等の金属の炭化物、窒化物、酸化物、ホウ化物を指す)を、被覆したことを特徴とするCVTが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、当該CVTでは、ブロック端面やプーリシーブ面の形状からの最適化がなされておらず、相手材攻撃性が増大するという問題がある。また、μ特性からの処理材料の最適化もなされておらず、必ずしも所望の安定したμ特性および高いμ特性が得られない。
ブロック端面およびプーリシーブ面にショットブラスト処理を施して、十点平均粗さ20μm以上の微細凹凸を形成し、その凸部にラッピング加工を施して、平坦面面積率を20〜50%としたCVTが知られている。かかるCVTでは、良好な耐摩耗性および高い摩擦係数を実現できるとされている(例えば、特許文献2参照)。
また、プリシーブ面の表面硬さをマイクロビッカース硬さで850Hv以上とし、表面粗さ(算術平均粗さRa)を0.1μm〜0.5μmとした耐摩耗性に優れたプーリとし、さらに、この表面粗さを最大高さRy(=現行のRzに相当)で0.6〜2.5μmとしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)
さらに、Low側変速比で用いられる領域に摩擦係数および耐摩耗性が他の領域よりも高くなるように表面処理が施されたプーリを用いたCVTが知られている。この表面処理には、ショットピーニング、WPC処理、ウォータジェットピーニング、メッキ、コーティング、研磨加工、熱処理のうちの少なくとも1つが使用される(例えば、特許文献4参照)。
その他にも、ブロック端面にショットピーニング処理を施し、表面粗さ(Rz JIS)を3〜10μmとすることによって、良好な耐摩耗性および高いμ特性を有するベルトを用いたCVTが知られている(例えば、特許文献5参照)。
これらのCVT等(特許文献2〜5)では、プーリシーブ面あるいはブロック端面へのショットピーニング処理、ショットブラスト処理により最表面に凹凸を形成し、油膜を切り易くすることによって、高いμ特性を得ている。
しかしながら、加工による凹凸形状は、摩耗によってその形状が維持できなくなり、長期の使用に渡って高いμ特性を維持することができない。また、ショットピーニング処理もしくはショットブラスト処理を用いる場合には、被処理部材にセラミックなどの硬質材を用いることは困難となるため、材質によるμ特性の最適化が図れない。
以上から、既述のような従来技術では、μ−v特性の観点からの最適化が十分になされているとはいえない。従って、従来技術以上の運転条件に依存しない安定した高いμ特性、ならびに優れた耐摩耗性を有するプーリ等は、未だ実現されているとはいえず、当該プーリ等の開発が、解決すべき大きな課題となっている。
特開昭61−171946号公報 特開平5−10405号公報 特開2000−130527号公報 特開2001−65651号公報 特開平5−157146号公報
以上から、本発明は、上記従来の課題を解決することを目的とする。すわなち、本発明は、プーリとベルト(ブロック)との間の接触部において、すべり速度(v)依存性の少ないμ特性(平坦なμ−v特性)を有し、運転条件に依存せずにCVTユニットの伝達トルク特性を安定化できると共に、高すべり速度域においても高いμ特性を有するプーリ、湿式ベルト式無段変速機を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明のプーリ、湿式ベルト式無段変速機により当該目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明のプーリは、円錐状摺動面が互いに対向するように配設されてなる1対の円盤状回転体からなり、該1対の円盤状回転体の間に形成されるV溝に伝動ベルトが巻き掛けられる、湿式ベルト式無段変速機に用いられるプーリであって、
少なくとも、前記V溝において前記伝動ベルトが接触する前記円錐状摺動面に、Cr23およびTiO2から選択される1以上の酸化物系セラミック材料を、90質量%以上含有する溶射膜が被覆されてなり、
前記溶射膜表面が気孔を有し、
前記気孔の前記溶射膜表面における面積率(気孔の投影面積の合計/溶射膜表面の面積)が、1〜12%であり、
前記溶射膜表面側のマイクロビッカース硬さが、Hv400以上であることを特徴とする。
本発明のプーリでは、溶射膜表面の気孔、すなわち凹部が油膜を切るため、高すべり速度条件においても固体接触を良好に維持することができる。その結果、μ値低下を抑制することが可能となる。これによって、すべり速度依存性の少ない安定したμ特性が得られるとともに、高すべり速度条件において、高いμ値を確保することができる。
また、本発明では、上記油膜を効率よく切ることを考慮し、当該気孔の溶射膜表面における面積率を1〜12%とする。
さらに、本発明では、溶射膜表面側のマイクロビッカース硬さをHv400以上とし、耐焼付き性および耐摩耗性を十分に確保している。
本発明のプーリは、前記溶射膜の表面粗さが、プラトー部の突出山部高さ(Rpk値)で、0.3μm以下であることが好ましく、本発明では0.14μm以下とする
Rpk値を0.3μm以下とすることで、相手材への過度な掘り起こしが生じないようにし、相手部材への攻撃性を低減させることができる。その結果、伝達トルク特性の安定化をより良好に実現させることができる。
本発明のプーリは、前記溶射膜が、Cr23 及びTiO 2 らなる群から選択される1以上の酸化物系セラミック材料を90質量%以上含有する
溶射膜として上記所定量の酸化物系セラミック材料を含有させることで、より高いμ特性を実現することができる。
また、本発明の湿式ベルト式無段変速機は、少なくとも、既述の本発明のプーリを具備することを特徴とする。
当該湿式ベルト式無段変速機は、本発明のプーリを使用しているので、すべり速度(v)依存性の少ないμ特性(平坦なμ−v特性)を有し、運転条件に依存しない安定した伝達トルク特性を実現できる。さらに、高いμ特性を有しており、より大きな出力トルクを伝達することができる。
本発明のプーリ、湿式ベルト式無段変速機によれば、プーリとベルト(ブロック)との間の接触部において、すべり速度(v)依存性の少ないμ特性(平坦なμ−v特性)を発揮し、運転条件に依存せずにCVTユニットの伝達トルク特性を安定化させることができる。さらに、伝達可能な最大トルク値を向上できる。
以下、本発明のプーリ、ブロック、伝動ベルト、湿式ベルト式無段変速機について、詳細に説明する。
〔プーリ〕
本発明のプーリは、円錐状摺動面が互いに対向するように配設されてなる1対の円盤状回転体からなり、湿式のベルト式無段変速機に用いられる。その1対の円盤状回転体は、その一方が軸方向に移動可能となっているため、対抗する円錐状摺動面によってV溝が形成される。このV溝には、伝動ベルトが巻き掛けられ、湿式ベルト式無段変速機に供される。
本発明では、V溝の伝動ベルトが接触する円錐状摺動面に溶射膜が被覆されている。当該溶射膜の表面には、細かい気孔が多数形成されている。
一般的に潤滑油が存在する湿式条件で用いられるCVTのプーリ−ベルト間の摩擦状態では、すべり速度(v)の増加に伴い、油膜厚さが増大し、μ値が低下する。しかしながら、円錐状摺動面に気孔が存在する場合には、この気孔による凹部形状が油膜を切る方向に作用し、高すべり速度条件においても固体接触を維持でき、μ低下を抑制できる。これによって、すべり速度依存性の少ない安定したμ特性が得られるとともに、高すべり速度条件において、高いμ値を確保することができる。溶射材では膜内部にも気孔が存在するため、その凹部形状は、機械加工等によって形成した溝形状とは異なり、摩耗によって変化しにくい。
溶射膜の平均膜厚は、摩滅の防止および耐剥離性確保の観点から、10〜1500μmとすることが好ましく、50〜600μmとすることがより好ましい。当該平均膜厚は、切断し、断面の光学顕微鏡により測定することができる。
気孔の溶射膜表面における面積率(気孔の投影面積の合計/溶射膜表面の面積)は、1〜12%となっている。
面積率を1〜12%とすることで、この気孔による凹部形状が油膜を切る方向に作用し、油膜が厚くなりやすい高すべり速度条件においても、固体接触がより一層維持し易くなると考えられる。その結果、高すべり速度条件における高いμ値の維持および、すべり速度依存性の少ないμ特性を発揮することができる。
一方で、面積率が1%より少ない場合には、油膜を切る効果が十分には得られず、高すべり速度条件における高いμ値を維持できない。面積率が40%より高いと、高面圧条件に耐えるための材料強度が確保できず、本発明における面積率は、1〜12%とする。当該面積率は、触針式、光学式、電子線式等の測定器により測定することができる。
また、溶射膜表面側、すなわち、当該溶射膜表面のマイクロビッカース硬さはHv400以上である。
ベルト式CVTの伝動ベルトとプーリとの接触面は、数百MPa以上の高面圧条件となる。溶射膜に硬さHv400以上を有する材料を選定することによって、耐焼付き性および耐摩耗性を確保することができる。
当該マイクロビッカース硬さは、Hv400以上であることが好ましく、Hv700以上であることがより好ましい。
溶射膜の成分としては、上記マイクロビッカース硬さをHv400以上とすることができれば、特に限定されず、酸化物系セラミックまたは炭化物系セラミックが挙げられる。
酸化物系セラミック溶射膜としては、Cr23、Al23、3Al23・2SiO2(ムライト)、TiO2、ZrO2と部分安定化剤(Y23、CaO、MgO、CeO2等)との混合物や、SiO2、MgO、CaO、CeO2等、少なくとも1種が挙げられる。炭化物系セラミックとしては、CrC系材(Cr23およびCrCの少なくとも1種)や、WC系材(WCおよびW2Cの少なくとも1種)、TiC等が挙げられる。
酸化物系セラミックの中でも、Cr23、Al23、3Al23・2SiO2(ムライト)、TiO2、ZrO2と部分安定化剤(Y23、CaO、MgO、CeO2等)との混合物、のうち少なくとも1種以上、あるいは、炭化物系セラミックの中でも、CrC系材(Cr23およびCrCの少なくとも1種)を選択することで、より高いμ特性を実現し、伝達トルク容量を増大させることができる。特に、Cr23溶射材において、最も高いμ値が得られている。
また、酸化物系セラミックや炭化物系セラミックが有効である理由としては、従来ベルト式CVTに用いられている鉄系材に比べて潤滑油添加剤との吸着性・反応性が少なく、μ値を低下させる境界膜(添加剤吸着膜,無機反応皮膜)が形成されにくいこと、材料自身が物性的に高い境界摩擦係数を有すること、などが考えられる。
酸化物系セラミック溶射膜中については、Cr23成分が90質量%以上の割合となることが特に好ましい。また、溶射膜が上記例示した酸化物系セラミック成分は、溶射膜中に90質量%以上となることが好ましい。
また、炭化物系セラミックを含有する溶射膜については、溶射膜中に上記例示した炭化物セラミック成分が50質量%以上の割合となることが好ましく、70質量%以上の割合で含有していることがより好ましい。
例示した酸化物系セラミックまたは炭化物系セラミック以外に溶射膜中に含有できる成分としては、Ni−Cr系(ニッケルクロム系)、Al−Si系(アルミニウムシリコン系)、Ni−Al(ニッケルアルミニウム系)、Co系(コバルト系)、Cu系(銅系)、Fe系(鉄系)等の金属が挙げられる。
酸化物系セラミックの溶射材料に関しては、例えば、市販の粉末で以下のものを使用することができる。
Cr23系溶射膜では、スルザーメテコ社のCr23粉末(AMDRY6417、AMDRY6420)、Cr23・2TiO2粉末(Metco106)、Cr23・5SiO2・3TiO2(Metco136F)等が挙げられる。
Al23系溶射膜ではスルザーメテコ社のAl23紛未(Metco105NS)、Al23・3TiO2粉末(Metc0101SF)、Cr23・13TiO2etC0180)、Cr23・40TiO2(Metco131VF)等が挙げられる。
3Al23・2SiO2(ムライト)系溶射膜では、日本ユテク社の3Al23・2SiO2粉末(#25081)等が挙げられる。
TiO2系溶射膜ではスルザーメテコ社のTiO2粉末(Metco102)、TiO2・45Cr23粉末(Metco111)等が挙げられる。
ZrO2系溶射膜ではスルザーメテコ社のZrO2・8Y23粉末(Metco204B−NS)、ZrO2・20Y23粉末(Metco202−NS)、ZrO2・18TiO2・8Y23粉末(Metco143)等が挙げられる。
CrC系溶射膜では、スルザーメテコ社のCr32・7(Ni−20Cr)紛末(Diamalloy 3005)、Cr32・20(Ni−20Cr)粉末(Diamalloy 3007)、Cr32・25(Ni−20Cr)粉末(Diamalloy 3004)、CrC・39Ni・7C(Sulzer Metco 5241)等が挙げられる。
酸化物系セラミックの溶射方法としては、プラズマ溶射を適用することが好ましい。上記プラズマ溶射処理を施す際には、基材との密着性を確保するために、Ni−20Cr等の金属系溶射膜を中間層として形成することが好ましい。
プラズマ溶射の処理に際しては、十分に粉末を溶融させるため、用いる溶射装置によって、溶射距離および装置出力等の条件を最適化することが重要となる。
炭化物系セラミックであるCrC系材の溶射方法としては、超高速フレーム(HVOF)溶射が好ましい。HVOF溶射では、基材との密着性が確保しやすいため、中間層は特に必要とはならない。
HVOF溶射処理に際しては、十分に溶射粉末を溶融できるよう、用いる装置によって、溶射距離等の条件を最適化することが重要である。
本発明では、溶射膜の表面粗さは、プラトー部の突出山部高さ(Rpk値:「JIS B 0671」)で、0.6μm以下であることが好ましい。突出山部高さRpk値によって表される表面凸部の粗さを0.6μm以下とすることによって、硬質な酸化物系セラミックおよび炭化物系セラミックを主体としているにもかかわらず、相手材への攻撃性を抑制することができる。一方、気孔凹部が相手材とは接することは少なく、凹部形状の相手材攻撃性に及ぼす影響は少ない。したがって、気孔が多く存在する材料については、相手材攻撃性を少なくするために、凹凸全般の形状を表す一般的な表面粗さ(例えば、算術平均粗さRa、十点平均粗さRzJIS、最大高さ粗さRzなど)を小さくする必要はない。
Rpk値は0.1μm以下とすることがより好ましい。
なお、プーリの材質としては、鉄系、アルミ系、チタン系、マグネシウム系等の金属を用いることができ、重量およびコストを考慮すると鉄系およびアルミ系が特に好ましい。なお、後述するブロックの材質としても、上記材料から適宜選択することができるが、強度確保およびコストを考慮すると、鉄系が特に好ましい。
また、中間層や溶射膜を形成する前に、下地処理としてショットブラスト処理等の粗面化加工を施してもよい。
〔ブロック、伝動ベルト〕
本発明のブロックは、プーリのV溝に巻き掛けられる伝動ベルトに供される。そして、プーリのV溝と接触する表面に、本発明のプーリに設けられている溶射膜が形成されている点で共通する。従って、本発明のプーリと同様の作用効果を奏することができる。
さらに、本発明の伝動ベルトは、少なくとも、ブロックと該ブロックを支持する無端状のフープとを具備する伝動ベルトであって、当該ブロックとして、既述の本発明のブロックを使用している。
本発明のブロックおよび伝動ベルトについて、具体的に説明する。
図2(A)および(B)に詳しく示すように、伝動ベルト124は、突起134を備えて互いに重ねられた状態で長手方向に連ねられた鋼製のベルトブロック135と、それら伝動ブロック135を支持するためにベルトブロック135の切欠135a内に位置させられた無端状の2本のフープ136とから構成されている。
ベルトブロック135の側面には、溶射膜138が設けられている。当該溶射膜138には、本発明のプーリに設けられた溶射膜と同様に、その表面に気孔が形成されている。従って、従来から使用されているプーリのV溝に巻き掛けられて使用されても、すべり速度(v)依存性の少ないμ特性(平坦なμ−v特性)を有し、運転条件に依存せずにCVTユニットの伝達トルク特性を安定化できる。
なお、溶射膜138について、その膜厚や気孔の面積率等の条件は、プーリの場合と同様である。
〔湿式ベルト式無段変速機〕
本発明の湿式ベルト式無段変速機は、既述の本発明のプーリまたは本発明の伝動ベルトを具備し、その他の構成については、従来公知の構成を採用することができる。以下、具体的に説明する。
図1に、本発明の一態様として、車両用の湿式ベルト式無段変速機のプーリ部の概略を示す。このCVTは、図示しない原動機にトルクコンバータなどを介して連結された状態で軸受を介してハウジングにより回転可能に支持された入力軸14と、その入力軸14に対して平行をなし、図示しない駆動輪と減速機や差動歯車装置などを介して作動的に連結された状態で軸受を介してハウジングにより回転可能に支持された出力軸18と、それら入力軸14および出力軸18に設けられた有効径が可変な入力側可変プーリ20および出力側可変プーリ22と、動力を伝達するためにそれら入力側可変プーリ20および出力側可変プーリ22に巻き掛けられた伝動ベルト24とを備えている。
入力側可変プーリ20は、入力軸14に固定された円盤状の固定回転体(固定シーブ)26と、この固定回転体26に対向した状態で入力軸14に軸心まわりの相対回転不能かつ軸心方向の移動可能に設けられた円盤状の可動回転体(可動シーブ)28と、その可動回転体28に推力を付与するために入力軸14に設けられた油圧アクチュエータ(不図示)とを備えている。
同様に、出力側可変プーリ22は、出力軸18に固定された固定回転体32と、この固定回転体32に対向した状態で出力軸18に軸心まわりの相対回転不能かつ軸心方向の移動可能に設けられた可動回転体34と、その可動回転体34に推力を付与するために出力軸18に設けられた油圧アクチュエータ(不図示)とを備えている。
上記入力側可変プーリ20の固定回転体26と可動回転体28との間には、それら固定回転体26と可動回転体28との対向面である摺動面40が円錐状とされて、伝動ベルト24が巻き掛けられるためにV字状を成すV溝42が形成されている。
入力側の油圧アクチュエータは、可動回転体28の背面に固定された円筒状の可動部材と、その内周側に油密に摺動可能に嵌合された状態で入力軸14に固定された円盤状の固定部材と、それら可動部材と固定部材との間に形成された容積が可変の油室とからなり、入力軸14を縦通し且つ可動回転体28を径方向に嵌通した油路50を介して作動油が流入あるいは流出させられることにより、入力側可変プーリ20の有効径すなわちCVTの変速比γ(=入力軸回転速度/出力軸回転速度)が変化させられるようになっている。上記固定部材および可動部材は、油圧アクチュエータの構成部材に対応している。
同様に、上記出力側可変プーリ22の固定回転体32と可動回転体34との間には、それら固定回転体32と可動回転体34の対向面である摺動面52が円錐状とされることにより、前記伝動ベルト24が巻き掛けられるためにV字状を成すV溝54が形成されている。その他の構成も入力側可変プーリ20の場合と同様である。
ここで、本発明のプーリを湿式ベルト式無段変速機に適用する場合は、図1に示すように、それぞれの摺動面(円錐状摺動面)40,52に、本発明に係る溶射膜60が形成されてなる。
なお、伝動ベルトのブロックに既述の本発明のブロックを使用する場合は、上記摺動面40,52に溶射膜を形成する必要はない。但し、伝動ベルトのブロックとプーリ側の両方に溶射をしてもかまわない。
以上のような本発明の湿式ベルト式無段変速機は、本発明のプーリまたは本発明の伝動ベルトを使用しているので、すべり速度(v)依存性の少ないμ特性(平坦なμ−v特性)を有し、運転条件に依存せずにCVTユニットの伝達トルク特性を安定化できる。
以下、実験例および実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実験例〕
(ラボスケール試験による各種溶射材の摩擦特性評価)
(1)供試溶射材の作製および評価:
ASTM D2714に記載されているLFW−1型摩擦試験機用の標準試験片であるFALEX社製S−10リング試験片(材質:SAE4620スティール浸炭処理材、形状:外径φ35mm、幅8.8mm)の表面に、下記表1に示す各種の溶射膜を被覆した(実験例1、5及び比較実験例3〜8および比較実験例1,2)。溶射膜(中間層を除く)の厚さは150μmとした。溶射条件は、溶射距離100mmで一定とした。
実験例1、5及び比較実験例3〜6では、基材との密着性を確保するために、下地処理としてショットブラスト処理を施した後に、中間層としてNi−20Cr(以後、Ni−Crと略記)の溶射膜をプラズマ溶射によって厚さ50μm被覆し、その後、下記表1に示す各種の溶射膜を被覆した。
比較実験例7および比較実験例8は、超高速フレーム(High Ve1ocity Oxgen Fuel:以後、HVOFと略記)溶射によって炭化物系溶射膜を被覆したものである。このHVOF溶射材については、下地処理ならびに中間層の被覆を施していない。
比較実験例1は、前述した実験例1、5及び比較実験例3〜6の中間層と同一材であるNi−Cr溶射膜を、プラズマ溶射によって被覆したものである。
比較実験例2は、自動車用ベルト式CVTのプーリに広く用いられている浸炭処理が施された標準リング試験片であり、溶射処理は施していない。
実験例1、5及び比較実験例3〜8および比較実験例1の溶射材については、溶射膜表面を#150のダイヤ砥石で研磨した後、GC砥石による仕上げ研磨を行った。
下記表1中には、硬さ、気孔の面積率および表面粗さを付記した。硬さは、マイクロビッカース硬度計を用いて、荷重50g、時間15秒の条件で測定した。面積率としては、表面の凹形状部分を気孔とみなし、光学式の3次元粗さ形状測定機(サイゴ社製NewView5022)を用いて、表面から0.2μm以上窪んだ部位を気孔と見なし、その投影面積の合計を求め、表面全体に占める面積の割合を求めた。表面粗さ(Rpk,Ra)は、JIS B 0601規格に準じ、触針式の表面粗さ計を用いて測定した。結果を下記表1に示す。
前述した各種の溶射処理を施したリング試験片と、相手材として自動車用ベルト式のCVTの金属ベルトに用いられているブロック(材質:スティール)から切出したブロック試験片とを用いたブロック・オン・リング型の摩擦試験を実施した。試験の概略を図3に示す。試験条件を下記表2に示す。
図3を参考に具体的な試験方法を説明する。図3において、すべり速度を500mm/sで一定とし荷重条件を変えた17分間のなじみ運転の後、荷重を334N一定で付加(矢印A方向)して、各すべり速度条件におけるμ値を測定した。
相手ブロック試験片2(CVT用金属ベルトエレメント:接触幅6.3mm)に用いたCVT用金属ベルトのブロックには、プーリ(リング試験片4:φ35mm)と接する端面部分に、深さ約20μmの溝が設けられている。摩擦試験に伴う溝高さの減少量を測定することによって、各種溶射処理のリング試験片4の相手材攻撃性についても評価した。なお、潤滑油6として、ベルト式CVT用フルードのトヨタ自動車キャッスルオートフルードTCを100ml用い、その温度を100℃とした。
(2)μ−v特性の比較:
実験例1、5及び比較実験例3〜8の各種溶射処理および比較実験例2の浸炭処理を施したリング試験片を用いた場合のμ値とすべり速度(v)との関係(μ−v特性)を、図4〜図6に示す。
なお、溶射材の中でHv230と硬さの低い比較実験例1のNi−Cr溶射材については、なじみ運転中に焼付きが発生したため、μ測定を中止した。
図4〜図6に示したように、実験例1、5及び比較実験例3〜8の溶射材はいずれも、比較実験例2の浸炭材に比べて、すべり速度の増加に伴うμ値の低下傾向、すなわちμ−v特性の負勾配傾向が少なく、望ましい方向にあることがわかる。
μ−v特性に関して、すべり速度500mm/s条件でのμ値(μ500と略記)と75mm/sでのμ値(μ75と略記)との比率で定量化して、図7にまとめて示す。このμ500/μ75の比率が1.0に近いものほど、μ値のすべり速度依存性が少なく、優れたμ−v特性を有するといえる。一方、1.0より小さくなるほど、μ−v特性の負勾配傾向が強くなることを意味し、ベルト式CVTにおいては自励振動に起因して生じるスクラッチノイズを生じ易くなることが問題となる。
実験例の溶射材はいずれも、比較実験例2の浸炭材での値0.87に比べて、1.0に近い値を示しており、μ値のすべり速度依存性が少なく、優れたμ−v特性を有していることが分かる。
実験例1のCr23溶射材および比較実験例2の浸炭材について、表面の電子顕微写真をそれぞれ図8および図9に、表面3次元形状の測定結果をそれぞれ図10および図11に示す。図8および図10に示した実験例1のCr23溶射材の表面には、気孔(凹部)が多く存在している。その他の溶射材の実験例5及び比較実験例3〜8についても、実験例1のCr23溶射材と同様に、気孔が多く存在していた。各種材料の気孔の面積率は、表1に記載したように、材料によって大きく異なり、2〜38%であった。一方、図9および図11に示した比較実験例2の浸炭材には、気孔は存在していなかった。
前述した溶射材がすべり速度依存性の少ないμ特性を有するのは、油膜が厚くなり易い高すべり速度条件において、これらの気孔が油膜を切る方向に作用することによって、固体接触を維持できることに起因すると推察される。
(3)μレベルの比較:
先にμ特性を示した図4〜図6において、μレベルの観点から、実験例の各種溶射材と比較実験例2の浸炭材とを比較する。高すべり速度条件である500mm/sにおけるμ値に着目すると、比較実験例2の浸炭材に比べて、図4に示した実験例1のCr23溶射材、比較実験例のAl23溶射材、比較実験例の3Al23・2SiO2溶射材、図5に示した比較実験例のZrO2溶射材、実験例5のTiO2溶射材、ならびに図6に示した比較実験例7のCrC−25NiCr溶射材が、高いμ値を示すことが分かる。これらの溶射材の中でも、実験例1のCr23溶射材において最も高いμ値が得られており、比較実験例2の浸炭材に比べて17%高いμ値を示していた。
〔実施例1〜3および比較例1〕
(1)溶射処理プーリ試験片:
テーパ角11°を有するφ127mmのプーリに、実験例のブロック・オン・リング型摩擦試験において最も高いμ値を示し、かつ相手材攻撃性が浸炭材と同程度と少ない特性を示した実験例1のCr23溶射膜を被覆(厚さ:150μm、溶射膜の形成範囲は、プーリのテーパ部(円錐状摺動面))した試験片を製作した。溶射プーリ試験片(円盤状回転体)の外観を図12に示す。このプーリは、最外径のφ127mmからφ95mmの範囲がCVT用金属ベルト端面形状に合せた11°のテーパ面となっている。プーリ試験片の溶射膜表面は、研削加工ならびにダイヤモンドペーストを用いた研磨によって仕上げた。
供試プーリ試験片を下記表3に示す。実施例1は被処理プーリ基材に炭素鋼を用いたものであり、実施例2は実施例1の基材をアルミダイキャストに変えたものである。これら実施例1および実施例2のCr23溶射プーリは、表面粗さをプラトー部の突出山部高さRpk値(JIS規格B0671−2)で0.07μmに仕上げしたものである。
実施例3のCr23溶射炭素鋼粗面プーリは、実施例1を基に研磨仕上げ工程を省略して、研削加工のみ実施したものであり、表面プラトー部の粗さがRpk値で0.67μmとなっている。
比較例1は、自動車用ベルト式CVTのプーリ処理として一般的な浸炭処理を施されたものであり、溶射処理は施していない。この浸炭処理品についても、実施例1および実施例2と同様に、表面の研削加工ならびにダイヤモンドペーストを用いた研磨仕上げによって、Rpk値0.06μmに仕上げた。
Cr23溶射プーリにおいて、表面粗さの異なる実施例1および実施例3の表面粗さ形状を図13,図14に示す。図13,図14のそれぞれの表面形状を比較すると、粗さ頂部と谷部との最大高さは同程度であるが、プラトー面の粗さは研磨仕上げを施した実施例1の方が実施例3に比べて小さくなっている様子が見て取れる。
(2)評価:
各種のプーリ試験片(実施例1〜3および比較例1)と自動車用CVTの金属ベルト(伝動ベルト)とを用いたベルト・プーリ型摩擦試験機によって、伝達トルク容量を測定した。
入力回転数および入出力軸間荷重(=プーリの推力と比例)を一定として、プーリに負荷する入力トルクを段階的に上げていきながら、各トルク条件での入力側プーリと出力側プーリとの回転数差、すなわちすべり率を測定した。入力トルクをある値まで増大させると、すべり率の急激な増大もしくはベルトと出カプーリとが完全にすべる現象、すなわちマクロスリップの発生が認められた。このマクロスリップが発生する直前の入力トルク値を伝達トルク容量とみなした。
ベルトの掛り径(プーリの軸心からベルトのロッキングエッジ部までの距離)は、入力側および出力側のいずれも59mmで一定とした。試験条件を表4に示す。
60分間のなじみ運転後に、入力回転数1000rpm、2000rpm、3000rpmの3つの条件において測定を実施した。この測定を3回繰返し、値の安定した2回目と3回目の平均値によって、伝達トルク特性を整理した。各供試プーリ材の試験毎に、新品の金属ベルトを用いた。潤滑油には、ベルト式CVT用フルードのトヨタ自動車キャッスルオートフルードTCを供した。
また、ブロック・オン・リング型試験の場合と同様に、一連の試験に伴うCVTベルト端面(プーリと接する部分)の溝深さ減少量を測定することによって、供試表面処理プーリの相手ベルトへの攻撃性を評価した。
(3)伝達トルク容量の比較:
実施例1および実施例2のCr23溶射プーリ試験片および比較例1の浸炭プーリ試験片を用いた場合において、ベルト・プーリ型摩擦試験における入力回転数1000rpmおよび3000rpm条件での伝達トルク特性を図15に示す。
なお、表面粗さの大きい実施例3のCr23溶射炭素鋼粗面プーリを用いた場合には、60分間のなじみ運転において、相手金属ベルト端面(プーリと接する部分)の溝が無くなるほどの過大な摩耗が生じたため、試験を中止した。
同一の入力回転数条件において伝達トルク容量を比較すると、比較例1の浸炭プーリを用いた場合に比べて、実施例1および実施例2のCr23の溶射膜を有するプーリでは、マクロスリップが発生する入力トルク値が大きくなっており、伝達トルク容量が増大していることが分かる。
回転数の伝達トルク容量に及ぼす影響に着目すると、比較例1の浸炭プーリでは、入力回転数の高い3000rpmの方が1000rpm時に比べて、伝達トルク容量が低下していることが分かる。これに対して、実施例1および実施例2のCr23溶射プーリではいずれも、入力回転数3000rpmと1000rpmの伝達トルク容量が概ね一致しており、伝達トルク容量の回転数依存性が少ないことが分かる。入力回転数の増加に伴い、ベルトとプーリとの間のすべり速度は増加する。溶射材の伝達トルク特性が回転数依存性が少ないのは、試験例でも言及したように、すべり速度の増加に伴うμ値の低下が少ない良好なμ−v特性に起因すると考えられる。
Cr23溶射プーリに関して、実施例1の炭素鋼基材を用いた場合と、実施例2のアルミ基材を用いた場合を比較すると、概ね一致した特性を示している。したがって、伝達トルク特性に及ぼす基材種類の影響は小さいと判断される。また、試験終了後のプーリを観察した所、溶射膜の剥離ならびに欠け等の発生は、いずれも認められなかった。
(4)相手材攻撃性の比較:
一連の試験に伴う相手伝動ベルト端面の摩耗量を図16に示す。表面粗さを突出山部高さRpk値で、0.07μmに仕上げた実施例1および実施例2のCr23溶射プーリは、相手ベルト材の摩耗量が比較例1の浸炭プーリと同程度となっており、相手材攻撃性が少ない。一方、実施例3の研削仕上げのみで研磨仕上げを施していないのRpk値0.67μmのCr23溶射粗面プーリを用いた場合には、前記したように、実施例1,2に比べると相手ベルトの磨耗が促進されていた。
この結果から、溶射膜の仕上げ表面粗さは、相手材に対する攻撃性を抑えるため、突出山部高さRpk値で、0.6μm以下とする必要があり、0.1μm以下とすることが特に好ましいといえる。
なお、本発明に係る溶射膜を有する限り、本発明は、上記実施例や実験例で例示した材料に限定されることはない、また、当該溶射膜を伝動ベルトのブロックに形成しても同様の効果が発揮される。
湿式ベルト式無段変速機のプーリ部の概略を示す部分断面図である。 (A)は伝動ベルトの一部を示す斜視図であり、(B)はブロックを示す斜視図である。 ブロック・オン・リング型の摩擦試験の概略を示す説明図である。 μ値とすべり速度(v)との関係(μ−v特性)と示す図である。 μ値とすべり速度(v)との関係(μ−v特性)と示す図である。 μ値とすべり速度(v)との関係(μ−v特性)と示す図である。 各試験例とμ500/μ75の比率との関係を示す図である。 Cr23溶射膜表面の電子顕微鏡写真である。 浸炭材表面の電子顕微鏡写真である。 表面3次元形状の測定結果を示す図である。 表面3次元形状の測定結果を示す図である。 溶射膜が形成されたプーリ試験片の外観を示す概略図である。 表面粗さ形状を示す図である。 表面粗さ形状を示す図である。 ベルト・プーリ型摩擦試験における伝達トルク特性の結果を示す図である。 ベルト・プーリ型摩擦試験における伝達トルク特性の結果を示す図である。
符号の説明
20・・・入力側可変プーリ
22・・・出力側可変プーリ
24・・・伝動ベルト
28,34・・・可動回転体(円盤状回転体)
40,52・・・摺動面
42,54・・・V溝
60・・・溶射膜
124・・・伝動ベルト

Claims (3)

  1. 円錐状摺動面が互いに対向するように配設されてなる1対の円盤状回転体からなり、該1対の円盤状回転体の間に形成されるV溝に伝動ベルトが巻き掛けられるプーリであって、
    少なくとも、前記V溝において前記伝動ベルトが接触する前記円錐状摺動面に、Cr23およびTiO2から選択される1以上の酸化物系セラミック材料を、90質量%以上含有する溶射膜が被覆されてなり、
    前記溶射膜表面が気孔を有し、
    前記気孔の前記溶射膜表面における面積率(気孔の投影面積の合計/溶射膜表面の面積)が、1〜12%であり、
    前記溶射膜表面側のマイクロビッカース硬さが、Hv400以上であることを特徴とする湿式ベルト式無段変速機に用いられるプーリ。
  2. 前記溶射膜の表面粗さが、プラトー部の突出山部高さ(Rpk値)で、0.14μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のプーリ。
  3. 少なくとも、請求項1又は請求項2に記載のプーリを具備することを特徴とする湿式ベルト式無段変速機。
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