JP2004060619A - 内燃機関用ピストンリングの組合せ - Google Patents

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Nobuyuki Matsushima
松嶋 伸行
Tsukane Hirase
平瀬 束
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Abstract

【課題】初期なじみ性に優れ、かつ耐摩耗性および耐スカッフ性に優れた、内燃機関用ピストンリングの組合せを提案する。
【解決手段】第一圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に硬質処理層を有し、該硬質処理層の表面がショットピーニング処理を施されてなるピストンリングとし、第二圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとする、第一圧力リングと第二圧力リングとの組合せとする。ショットピーニング処理はセラミックス粒子を用いることが好ましい。また、第一圧力リングに形成される硬質被膜としては、窒化被膜、Crめっき被膜、またはイオンプレーテイング被膜が好ましい。また、第二圧力リングの摺動面に噴射される潤滑剤粒子としては、二硫化モリブデン粒子、二硫化タングステン粒子、金属錫粒子等が好ましい。
【選択図】  図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関用ピストンリングに係り、とくに、耐スカッフ性、 耐摩耗性とともに、耐初期なじみ性を向上させた内燃機関用ピストンリングの組合せに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境の保全という観点から、自動車車体の軽量化が要望されている。このような軽量化の要望から、最近の自動車では、エンジンをアルミニウム合金製とすることが主流となっており、ピストンもアルミニウム合金製となっている。一方、内燃機関用ピストンリングでは、形状面ではできるだけ薄厚化し、材質面では鋳鉄製から鋼製へと種々の改良がなされてきた。最近のピストンリングは、軽量化や、耐摩耗性、耐スカッフ性(耐焼付き性)向上のため、ピストンリング母材として高硬度のマルテンサイト系ステンレス鋼が一般的に使用され、さらに表面には窒化処理や硬質クロムめっき等の表面硬化処理が施されて使用されている。
【0003】
さらに最近では、内燃機関の高出力化、低燃費化の要求に伴い、ピストンリングにも厳しい品質要求がなされ、耐摩耗性、耐スカッフ性等の更なる特性向上が要望されている。
このような耐摩耗性向上要求に対し、ピストンリングには限定されないが、例えば、特開平7−188738 号公報には、金属成品の摺動部の摩耗防止方法が提案されている。特開平7−188738 号公報に記載された技術では、金属成品の摺動部表面に金属成品の硬度と同等以上の硬度を有する略球状のショットを噴射して、該金属成品の摺動部表面温度を鉄系金属成品ではA3 変態点以上に、非鉄系金属成品では再結晶温度以上に、上昇させるとともに、表面に無数の凹部からなる油溜りを形成して、摺動性を向上させるとしている。特開平7−188738 号公報に記載された技術では、SUJ鋼、SCM鋼にショットブラスト処理を施すことにより、表面硬さが処理前のHv700 から処理後のHv1100〜1400と顕著に上昇し、耐摩耗性が向上するとしている。
【0004】
【発明の解決しようとする課題】
しかし、最近では、内燃機関の更なる高出力化、更なる低燃費化の要望がある。このような要望に対し、本発明者らは、ピストンリング摺動面の摩擦力低減に着目した。従来から、第一圧力リングとしてのピストンリングは、少なくとも摺動面が、切削加工とラッピング加工を施され、ついで、Crめっき処理、窒化処理、イオンプレーティング処理等の硬質処理を施されて、摺動特性の向上が図られ使用に供されている。また、第二圧力リングでは、少なくとも摺動面が、研削加工を施されさらに研磨加工さらにラッピング加工を施されて、摺動特性の向上が図られ使用に供されている。しかしながら、このような切削加工やラッピング加工を施されたピストンリングでは、最近の内燃機関の更なる高出力化、更なる低燃費化の要望を満足できるほど、顕著な摩擦力低減が得られないという問題があった。
【0005】
一般に、表面を平滑にすればするほど摺動時の摩擦力が低減できると考えられているが、硬質処理層を有するピストンリングでは、硬質処理層が硬いため、加工による表面粗さの調整が十分にできないという問題がある。また、ラッピング加工では研磨面に研磨傷が残留するため、摩擦力低減に寄与する摩擦係数の低下が得られないという問題もある。
【0006】
このようなことから、摺動時に摩擦力の低下が期待でき、内燃機関の出力向上、燃費向上に寄与できる、ピストンリングが熱望されていた。
本発明は、このような要望に答えるべく、摩擦係数が低く、初期なじみ性に優れ、かつ耐摩耗性および耐スカッフ性に優れた、内燃機関用ピストンリングの組合せを提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、摺動時に低摩擦力が得られるピストンリングの表面状態について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、硬質処理後にショットピーニング処理を施すことにより切削加工やラッピング加工で残存した切削傷や研磨傷が平滑化でき、摩擦係数を低減できること、また潤滑剤粒子を噴射して形成された潤滑剤被膜を表面に形成することによりピストンリング摺動時の摩擦力が顕著に低減できることを見出した。そして、本発明者らは、表面にショットピーニング処理を施した第一圧力リングと、表面に潤滑剤粒子を噴射して潤滑剤被覆層を形成した第二圧力リングとを組み合わせることにより、ピストンリング摺動時の摩擦力が顕著に低減できるとともに、耐摩耗性、耐スカッフ性がともに向上することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)第一圧力リングと第二圧力リングとの内燃機関用ピストンリングの組合せであって、前記第一圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に硬質処理層を有し、該硬質処理層の表面がショットピーニング処理を施されてなるピストンリングとし、前記第二圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとすることを特徴とする内燃機関用ピストンリングの組合せ。
(2)(1)において、前記第一圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に硬質処理層を有し、該硬質処理層の表面がショットピーニング処理を施されてなり、該硬質処理層の上層として、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ピストンリングの組合せ。
(3)(1)または(2)において、前記第二圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に硬質処理層を有し、該硬質処理層の上層として、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとすることを特徴とする内燃機関用ピストンリングの組合せ。
(4)(1)または(2)において、前記ショットピーニング処理が、セラミックス粒子を用いる処理であることを特徴とする内燃機関用ピストンリングの組合せ。
(5)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記潤滑剤粒子が、二硫化モリブデン粒子、二硫化タングステン粒子、金属錫粒子のうちから選ばれた1種であることを特徴とする内燃機関用ピストンリングの組合せ。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記硬質処理層が、窒化処理層、Crめっき処理層、またはイオンプレーテイング処理層であることを特徴とする内燃機関用ピストンリングの組合せ。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の内燃機関用ピストンリングの組合せでは、第一圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に硬質処理層を有し、該硬質処理層の表面がショットピーニング処理を施されてなり、あるいはさらに該硬質処理層の上層として、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとする。
【0010】
第一圧力リングとして使用するピストンリングの材質は、本発明ではとくに限定する必要がなく、従来公知のピストンリング用材料がいずれも好適に利用できる。第一圧力リングは面圧が高く厳しい環境下で使用されるため、耐久性の観点から、好ましい材質として、8Cr系鋼、10Cr系鋼、13Crマルテンサイト系ステンレス鋼、17Crマルテンサイト系ステンレス鋼、球状黒鉛鋳鉄等が例示できる。
【0011】
第一圧力リング用のピストンリングは、少なくとも外周摺動面に硬質処理層を有する。切削加工等により所定の形状に加工され、さらにラッピング加工等を施された第一圧力リング用のピストンリングには、図1(a)に示すように、少なくとも外周摺動面に硬質処理が施され、硬質処理層が形成される。硬質処理層としては、窒化処理層、硬質Crめっき処理層、分散めっき処理層またはイオンプレーテイング処理層が好適である。窒化処理としては、プラズマ窒化、ガス窒化、イオン窒化が例示できる。また、イオンプレーティング処理は、Cr−N系被膜、Cr−B−N系被膜、Ti−N系被膜等を形成できるイオンプレーティング処理(PVD処理)とすることが好ましい。硬質処理層の厚さは5〜50μmとすることが好ましい。5μm未満では耐久性が低下し、一方、50μmを越えると剥離性が増大する。なお、15〜35μm程度とすることがより好ましい。
【0012】
なお、硬質処理層の下層として、図1(b)に示すように、ガス窒化処理を施し全周にガス窒化処理層を形成してもよい。これにより、上層として形成される硬質処理層の密着性が向上するという効果が期待できるとともに、ピストンリング上下面の耐摩耗性が向上するという効果がある。
本発明では、上記した摺動面に形成された硬質処理層は、表面にショットピーニング処理が施された平滑な表面を有する硬質処理層とする。硬質処理層表面にショットピーニング処理を施すことにより、硬質処理層表面は、ラッピング処理による研磨傷が消去され、好ましくは表面粗さがRzで0.5 〜0.9 μmの平滑な表面となる。さらに望ましくは表面粗さRz0.6 〜0.8 μm の範囲が望ましい。これにより、摺動面の摩擦係数が低下し、ピストンリング摺動時の摩擦力が顕著に低下する。
【0013】
また、ショットピーニング処理により極く表面の表面硬さが増加し、耐摩耗性および耐スカッフ性が向上するという効果もある。さらには、ショットピーニング処理により表面に圧縮応力が残留しピストンリングの疲労強度が上昇するというという効果もある。
硬質処理層表面に施すショットピーニング処理方法としては、通常公知のショットピーニング処理装置を利用した処理方法がいずれも好適である。なかでも、重力式装置、直圧式装置等を使用して行なうことが好ましい。また、ショットピーニング処理で使用する粒子は本発明ではとくに限定する必要はないが、セラミック粒子とすることが好ましい。セラミック粒子を使用することにより、ラッピング加工等による研磨傷の凸部が小さくなるという効果が期待できる。なお、使用するセラミック粒子としては、アルミナ、シリカ等が例示できる。また、ショットピーニング処理で使用するセラミック粒子の粒径は10〜50μmとすることが、個々の粒子が高密度に衝突するという観点から好ましい。
また、本発明の第一圧力リング用ピストンリングでは、ショットピーニング処理を施された硬質処理層の上層として、少なくとも外周摺動面に潤滑剤粒子を噴射して形成された潤滑剤被覆層を有しても良い。潤滑剤被覆層を形成することにより、摩擦係数が顕著に低下し、初期なじみ性が向上するとともに、耐摩耗性、 耐スカッフ性が顕著に改善される。なお、潤滑剤被覆層の厚みは1〜20μmとすることが好ましい。1μm未満では上記した効果が認められない。一方、20μmを超えると、短期に剥離が生じる等のトラブルがある。なお、より好ましくは3〜7μm程度である。
【0014】
また、本発明の内燃機関用ピストンリングの組合せでは、第二圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとする。
第二圧力リングとするピストンリングの材質は、第一圧力用リングと同様にとくに限定する必要はないが、第二圧力リングは第一圧力リングにくらべ面圧が低く使用環境がそれほど厳しくないため、従来公知のピストンリング用材料のうち安価な材料とすることができる。安価な材料としては、FCやFCD等の鋳鉄材や、Siを高めたSi−Cr 鋼材や、SWRH62B 等の硬鋼線材(高炭素鋼材)を用いることが好ましい。
【0015】
本発明における第二圧力リング用ピストンリングは、図2(a)に示すように、少なくとも外周摺動面表面に、潤滑剤被覆層を有するピストンリングとする。ピストンリングの少なくとも外周摺動面表面に、潤滑剤被覆層を形成することにより、摩擦係数が顕著に低減し、摺動時の摩擦力が低下して、初期なじみ性が向上するとともに、さらに耐摩耗性、 耐スカッフ性が顕著に改善される。
【0016】
潤滑剤被覆層は、摺動面に潤滑剤粒子を噴射して形成する。潤滑剤粒子の噴射方法としては、通常公知のショットブラスト装置を利用した噴射方法がいずれも好適である。なかでも、直圧式噴射装置、重力式噴射装置等を使用して行なうことが好ましいが、本発明ではこれらに限定されないことはいうまでもない。
第二圧力リング用ピストンリング表面に形成される潤滑剤被覆層の厚さは、1〜20μmとすることが好ましい。潤滑剤被覆層の厚さが1μm未満では、薄すぎて、上記した効果が認められない。一方、20μmを超えると、厚すぎて密着性が低下し、短期に剥離が生じる等のトラブルがある。また、本発明における潤滑剤被覆層は、ピストンリング表面に強固に付着形成されているが、ピストンリング母材への潤滑剤の拡散浸透はなく、耐疲労性等のピストンリング諸特性への変化はないという特徴を有する。
【0017】
潤滑剤被覆層形成に使用する潤滑剤粒子は、二硫化モリブデン(MoS)粒子、二硫化タングステン(WS2 )粒子、金属錫(Sn)粒子のうちから選ばれた1種とすることが好ましい。噴射する潤滑剤粒子は、平均粒径:0.4 〜50μmの粒子とすることが好ましい。潤滑剤粒子の粒径が0.4 μm未満では、狙いの衝突エネルギーが得られず、潤滑剤被覆層の形成において、粒子が脱落するという問題がある。一方、50μmを超えると、緻密で密着性に富む潤滑剤被覆層が形成されない。なお、ここでいう平均粒径はJIS R 6001の規定に準拠して測定された値を用いるものとする。
【0018】
上記したような潤滑剤粒子をピストンリング摺動面表面に噴射する際の噴射速度あるいは噴射圧力は、所望の潤滑剤被覆層特性に応じ適宜決定することが好ましい。例えば、直圧式噴射装置を用いる場合であれば、噴射速度は、100 m/s以上、好ましくは250 m/s以下の高速とすることが好ましい。噴射速度が100 m/s未満では、形成される被膜の密着性が劣化し、さらに表面粗さが粗くであり、潤滑剤被覆層の耐久性が低下する。一方、250 m/sを超えて噴射速度を増加することは、エアー圧力が高くなりすぎるという問題もあるが、装置が大型化し経済的でない。
【0019】
100 m/s以上の高速でピストンリング摺動面表面に噴射された潤滑剤粒子は、ピストンリング摺動面表面に衝突し、減速されるとともに表面に強固に付着する。噴射速度が低速となると、付着強度が低下し、剥離等により被覆層の耐久性が不足する。
なお、噴射速度に代えて、噴射圧力で制御してもよい。噴射圧力は 0.3 MPa以上、好ましくは1.5 MPa 以下とすることが好ましい。
【0020】
潤滑剤被覆層は、脱脂以外は、特別な下地処理を行うことなくピストンリング母材表面にそのまま形成してもよく、また、図2(b)に示すように、潤滑剤被覆層の下層として、第二圧力リング用ピストンリングの外周摺動面に硬質処理層を形成してもよい。また、硬質処理層は、外周摺動面に加えてさらにピストンリングの上下面、あるいはピストンリングの全周に形成してもよい。潤滑剤被覆層の下層として形成される硬質処理層には、表面に第一圧力リングと同様にショットピーニング処理を施してもよい。これにより、摩擦係数が顕著に低下し、摺動時の摩擦力低下が顕著となる。なお、硬質処理層としては、第一圧力リングと同様に窒化処理層、硬質Crめっき処理層、分散めっき処理層、イオンプレーティング処理層等が好ましい。なお、第二圧力リングに形成される硬質処理層の厚さは5〜50μmとすることが好ましい。5μm未満では耐久性が低下し、一方、50μmを越えると剥離性が増大する。
【0021】
【実施例】
表1に示す組成の材料を用いて、切削加工を施して所定の形状としたのち、所望の強度となるように熱処理等で調整して、さらにラッピング加工して第一圧力リング用および第二圧力リング用ピストンリング相当材とした。第一圧力リング用は13Crおよび17Crマルテンサイト系ステンレス鋼材を、第二圧力リング用はFC(鋳鉄)材を主として使用した。
【0022】
【表1】
Figure 2004060619
【0023】
なお、第一圧力リング用ピストンリング相当材および一部の第二圧力リング用ピストンリング相当材には、外周摺動面相当の表面に、硬質処理層として、(a)窒化処理層、(b)硬質Crめっき処理層、(c)分散めっき処理層、または(d)イオンプレーテイング処理層を形成した。
(a)窒化処理層は、ガス窒化処理により硬さ:Hv1050の処理層(厚さ:70μm)を形成した。また、(b)硬質Crめっき処理層は公知のフッ化浴を用いるCrめっき処理により硬さ:Hv900 の処理層(厚さ:100 μm)を形成した。また、(c)分散めっき処理層は、特許第2602499 号に記載された方法により硬さ:Hv85 の処理層(厚さ:100 μm)を形成した。(d)イオンプレーテイング処理層はアークイオンプレーテイングにより硬さ:Hv1400のCr−N系層(厚さ:30μm)を形成した。
【0024】
ついで、これら得られた硬質処理層の表面に、セラミック粒子によるショットピーニング処理を施し、表面を平滑化した。セラミック粒子としては、アルミナ(Al3 )粒子を用い、噴射速度:100 m/s 、噴射圧力:0.5 MPa で行なった。なお、一部のピストンリング相当材ではショットピーニング処理を省略した。
第二圧力リング用ピストンリング相当材、および一部の第一圧力リング用ピストンリング材については、外周摺動面表面に、表2に示す条件で潤滑剤被覆層を形成した。表2に示す潤滑剤粒子を使用し、表2に示す条件で潤滑剤粒子をピストンリング摺動面表面に噴射し、表2に示す厚さの潤滑剤被覆層を形成した。
【0025】
【表2】
Figure 2004060619
【0026】
これらピストンリング相当材から試験片を採取し、摩耗試験およびスカッフ試験を実施した。なお、ピストンリングに組み合わせる相手材としてのシリンダーは、FC250 (硬さ:Hv250 )とし、表面は研磨加工を施し、表面粗さをRz :2.0 μm とした。また、これらピストンリング相当材について、摺動面相当の表面粗さを測定した。表面粗さは触針式表面粗さ計を用い、JIS B 0601−2001 の規定に準拠して、Rz (μm)を求めた。
【0027】
次に、摩擦係数測定およびスカッフ試験の試験条件について説明する。
(1)摩擦試験
得られた試験片から固定片を切り出し、 アムスラー型摩耗試験機を用いて、相手材である回転片(シリンダ内周面相当材)の半分を油に浸漬し荷重をかけながら固定片に接触させて下記に示す条件で摩耗試験を実施した。
【0028】
潤滑油:タービン油(#100 )
油温:80℃
周回転速度:478 rpm
荷重:80kgf(784N)
時間:7h
なお、摩耗試験時に、そのときの摩擦抵抗を求め、初期摩擦係数を算出した。得られた初期摩擦係数について、第一圧力リング相当材ではステンレス鋼製で硬質処理層をガス窒化処理層とし、ショットピーニング処理なしのピストンリング相当材(従来例)(No.A1 )の初期摩擦係数を基準(100 )として、また、 第二圧力リング相当材では鋳鉄製で硬質処理層なし、潤滑剤被覆層なしのピストンリング相当材(従来例)(No.20 )の初期摩擦係数を基準(100 )として、基準値に対する相対値(初期摩擦係数比)で初期なじみ性を評価した。初期摩擦係数比は数値が小さい方が低い摩擦係数を示す。
(2)スカッフ試験
得られた試験片から固定片を切り出し、 アムスラー型摩耗試験機を用いて、相手材である回転片(シリンダ内周面相当材)を油に付着させ、荷重をかけながら固定片に接触させて下記に示す条件で、荷重を10kgf/min (98N/min)の割合で線形連続的に増加させ続け、スカッフが発生して負荷信号が発生した時点の荷重をスカッフ限界荷重とした。
【0029】
潤滑油:スピンドル油
周回転速度:478rpm
得られたスカッフ限界荷重について、第一圧力リング相当材ではステンレス鋼製で硬質処理層をガス窒化処理層とし、ショットピーニング処理なしのピストンリング相当材(No.A1 )のスカッフ限界荷重を基準(100 )として、また、 第二圧力リング相当材では鋳鉄製で硬質処理層なし、潤滑剤被覆層なしのピストンリング相当材(No.20 )のスカッフ限界荷重を基準(100 )として、基準値に対する相対値(スカッフ限界荷重比)で耐スカッフ性を評価した。スカッフ限界荷重比は、100 より大の場合が、基準(従来例)よりスカッフ荷重が高いことを示している。なお、数値が大きい方が望ましい。
【0030】
得られた結果を表3、表4、表5に示す。
【0031】
【表3】
Figure 2004060619
【0032】
【表4】
Figure 2004060619
【0033】
【表5】
Figure 2004060619
【0034】
表3に示す、第一圧力リング相当材では、硬質処理層を形成し、その表面にショットピーニング処理を施すことにより、従来例にくらべ、初期摩擦係数が低くなり初期なじみ性に優れ、また、スカッフ限界荷重比が大きく耐スカッフ性に優れたピストンリングとなっている。また、表4に示す、硬質処理層を形成し、その表面にショットピーニング処理を施し、さらに、潤滑剤被覆層を形成することにより、さらに初期なじみ性、耐スカッフ性が向上することがわかる。
【0035】
また、表5に示す第二圧力リング相当材では、潤滑剤粒子を噴射して潤滑剤被覆層を形成することにより、従来例と同等あるいはそれ以上の初期なじみ性、耐スカッフ性を有するピストンリングとなることがわかる。
つぎに、上記した単独のピストンリング相当材を用いた試験により、初期なじみ性、 耐スカッフ性に優れた特性を示した構成(第一圧力リング相当材、第二圧力リング相当材)をそれぞれ、表6に示すように第一圧力リング、第二圧力リングとして組み合わせて、モータリング試験を実施した。
【0036】
モータリング試験では、φ80mmのボア径を有するシリンダライナのピストンに、第一圧力リング、第二圧力リングを表6に示す組み合わせで装着し、ピストンを摺動させ、モータに係る負荷の変動(トルク)を測定した。なお、オイルリングは公知の3ピースタイプを用いた。また、リングの仕様(各リング形状寸法等)及び張力はいずれの組み合わせでも同一となるようにした。得られたトルク値が大きければピストンリングとシリンダライナとの摩擦力が大きく、トルク値が小さければ摩擦力が小さいことになる。
【0037】
得られたトルク値を用い、従来例のトルク値を基準(100 )として、基準値に対する相対値 (トルク指数)で摩擦力低減効果を評価した。トルク指数が大きければトルク値が大きく、トルク指数が小さければトルク値は小さいこととなる。なお、摩擦力低減効果は、第一圧力リング相当材をステンレス鋼製で硬質処理層をガス窒化処理層とし、第二圧力リング相当材を鋳鉄製で硬質処理層の形成を行なわないピストンリングとするピストンリングの組合せ(組合せNo.1)を従来例とし、評価した。
【0038】
得られたモータリング試験の結果を表6に示す。
【0039】
【表6】
Figure 2004060619
【0040】
本発明例の第一圧力リングと第二圧力リングの組合せはいずれも、トルク指数が小さくなり、摩擦力が顕著に低減していることが確認できる。本発明例におけるトルク指数は、 従来例に比べて最小で0.7%、 最大で1.9 %低下している。なお、本発明者らは、このトルク指数が0.5 %以上低下すれば、実機の摺動特性を想定して大きな摩擦力低減効果が得られることを見出している。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、摩擦係数が顕著に低下し、ピストンリング摺動時の摩擦力が低くなり、初期なじみ性に優れるとともに、耐スカッフ性、耐摩耗性が改善され、ピストンリングの耐久性が向上するとともに、内燃機関の高出力化、低燃費化に多大の寄与が可能となり、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一圧力リング表面の硬質処理層形成の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第二圧力リング表面の潤滑剤被覆層形成の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 ピストンリング
2 潤滑剤被覆層
3 硬質処理層

Claims (6)

  1. 第一圧力リングと第二圧力リングとの内燃機関用ピストンリングの組合せであって、前記第一圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に硬質処理層を有し、該硬質処理層の表面がショットピーニング処理を施されてなるピストンリングとし、前記第二圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとすることを特徴とする内燃機関用ピストンリングの組合せ。
  2. 前記第一圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に硬質処理層を有し、該硬質処理層の表面がショットピーニング処理を施されてなり、該硬質処理層の上層として、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ピストンリングの組合せ。
  3. 前記第二圧力リングを、少なくとも外周摺動面表面に硬質処理層を有し、該硬質処理層の上層として、潤滑剤粒子を噴射して形成した潤滑剤被覆層を有するピストンリングとすることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関用ピストンリングの組合せ。
  4. 前記ショットピーニング処理が、セラミックス粒子を用いる処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関用ピストンリングの組合せ。
  5. 前記潤滑剤粒子が、二硫化モリブデン粒子、二硫化タングステン粒子、金属錫粒子のうちから選ばれた1種であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関用ピストンリングの組合せ。
  6. 前記硬質処理層が、窒化処理層、Crめっき処理層、またはイオンプレーテイング処理層であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関用ピストンリングの組合せ。
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