JP2896144B2 - 耐摩耗性の優れた合金鋼 - Google Patents

耐摩耗性の優れた合金鋼

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JP2896144B2 JP14200188A JP14200188A JP2896144B2 JP 2896144 B2 JP2896144 B2 JP 2896144B2 JP 14200188 A JP14200188 A JP 14200188A JP 14200188 A JP14200188 A JP 14200188A JP 2896144 B2 JP2896144 B2 JP 2896144B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、自動車等の内燃機関のピストンリング、ロ
ッカーアーム、ピニオンシャフト等に用いられる特に耐
摩耗性の優れた合金鋼に関するものである。
[従来の技術] 内燃機関に用いられるピストンリングは、燃焼室の機
密性を保持するための圧力リングと、ピストンリングお
よびシリンダーライナー間の潤滑油膜を調製するための
オイルかきリングにより構成されている。このピストン
リングのうち、圧力リングはピストンヘッドの直下に遊
嵌され燃焼ガスの影響を大きく受けるものであり、耐摩
耗性(カーボンスーツによるアブレッシブ摩耗および腐
食性燃焼生成物による腐食摩耗)、耐スカッフィング性
および耐熱性等が要求される。
近年、内燃機関の軽量化、高出力化および高回転化に
伴い、圧力リングの薄幅化が積極的に進められてきた。
このピストンリングの薄幅化は、ピストンリングを軽量
化し、ピストンリング溝内でのピストンリングの挙動の
安定化、油膜厚さが薄くできることによる潤滑油消費量
の改善が図られる。
しかし、このようにピストンリングの薄幅化が進めら
れると、従来一般的であった鋳鉄製のリングや、炭素
鋼、シリコンクローム鋼、あるいはオイルテンパー線製
のリングでは使用に耐えなくなってきた。すなわち、鋳
鉄製のリングでは軸方向に薄いものが製造しがたく、か
つ耐折損強度の点で不十分であり、シリコンクローム鋼
リングは高温での強度が小さいため比較的断面積の大き
いものとなり、慣性が大きくフラッタリング現象を起こ
しやすい。そこで、最近ではピストンリングの材料とし
て工具鋼、ばね鋼およびステンレス鋼が用いられるよう
になっており、特にステンレス鋼としては13Crマルテン
サイト系ステンレス鋼(0.65C-13.5Cr-0.3Mo-0.1V)が
圧力リングとして用いられ好結果が得られている。ま
た、オイルリングはピストンリングとシリンダー壁との
摺動時の潤滑油量を適度に調節して、余分な潤滑油が燃
焼室内に入り込まないように掻き落とすという重要な役
割を果たしている。このため、オイルリング用サイドレ
ールとして圧力リングと同様に耐熱性、耐摩耗性が要求
されるため、圧力リングで使用するのと同じ材料が用い
られ好結果が得られている。しかし、これらマルテンサ
イト系ステンレス鋼製のピストンリングも、未だ耐摩耗
性の点において不十分であり、さらに耐摩耗性を増して
ピストンリングの長寿命化が望まれている。
また、自動車等の内燃機関用部品としてピストンリン
グと同様に耐摩耗性が要求されるものとしてロッカーア
ームがある。エンジンのロッカーアームはカムシャフト
と当接された状態にあることから耐摩耗性および耐スカ
ッフィング性が優れたものでなければならない。また、
当然のことながら、相手部品のカムへの攻撃性をも考慮
しなければならない。
また、FF車の差動装置等に用いられ耐摩耗性を要求さ
れる部品としてピニオンシャフトがある。このピニオン
シャフトについては、低粘度潤滑油を使用するため、ピ
ニオンギヤとピニオンシャフトのごとく高面圧の厳しい
条件で摺動する部材では、優れた耐焼付性および耐摩耗
性が要求され、FR車で使用してきた従来の素材(SCr 41
5・浸炭焼入れ)では焼付を生じたり、摩耗が大となる
問題が発生することがあった。
ピニオンギヤは、SCr 415を浸炭焼入したものであ
り、ピニオンシャフトとの摺動面である内径面の仕上げ
は、Rz 6μm前後である。従って、ピニオンギヤとピニ
オンシャフトは高面圧の摺動条件であり、表面凸部では
油膜が形成されず、アブレシング作用によりピニオンシ
ャフト、ピニオンギヤの摺動面が摩耗する。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明はステンレス鋼製等のピストンリング、ロッカ
ーアーム、ピニオンシャフトの前記のごとき問題点に鑑
みてなされたもので、従来のマルテンサイト系ステンレ
ス鋼の耐摩耗性をさらに改善することによって、内燃機
関の高出力化および高速化を達成できる圧力リングおよ
びオイルリング(サイドレール)材料を提供すると共
に、相手材への攻撃性を減少させ耐摩耗性を高めたロッ
カーアーム用材料および耐焼付性と耐摩耗性に優れたピ
ニオンシャフト用材料を提供することを目的とする。
[問題点を解決するための手段] 本発明者等は従来のマルテンサイト系ステンレス鋼の
耐摩耗性について鋭意研究を重ねた結果、Crの炭化物を
増加することが、耐摩耗性の改善に効果的であるとの着
想の下に、C、SiおよびMn等についてCr含有量との関連
において最適含有量の範囲を見出だすことによって本発
明を完成したものである。
すなわち、本発明の耐摩耗性の優れた合金鋼の第1発
明鋼は、重量比でC;0.55〜1.10%、Si;0.9%以下、Mn;
2.0%以下、Cr;20.8〜25.0%を含有し、残部がFeおよび
不純物元素からなり、生地組織が熱間加工し凝固組織を
破壊した焼もどしマルテンサイトであり、かつ微細粒状
クロム炭化物が分散していることを要旨とする。
しかして、本発明の第2発明鋼は、第1発明鋼にさら
にNi;0.2〜2.0%を含有し、残部がFeおよび不純物元素
からなることを要旨とし、第3発明鋼は、第1発明鋼に
さらにMo;0.2〜3.0%、V;0.1〜1.5%、Nb;0.05〜0.70%
のうち1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不
純物元素からなることを要旨とし、第4発明鋼は、第1
発明鋼にさらにNi;0.2〜2.0%を含有し、さらにMo;0.2
〜3.0%、V;0.1〜1.5%、Nb;0.05〜0.70%のうち1種ま
たは2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物元素から
なることを要旨とする。
また、第5発明の耐摩耗性の優れた合金鋼は、第1〜
第4発明鋼に対して少なくとも摺動面に窒化、メッキ、
セラミックコーティング、溶射から選ばれるいずれかの
表面硬化処理を施して用いることを要旨とする。
また、本発明の耐摩耗性の優れた合金鋼を用いたピニ
オンシャフトは、母材の生地組織が熱間加工し凝固組織
を破壊した焼もどしマルテンサイトであり、かつ2〜12
μmの微細粒状クロム炭化物が面積率で0.2〜8%分散
し、表面には窒化化合物層を2μm以上有し、さらに窒
化化合物の下部には20μm以上の拡散層を有し、かつ重
量比でC;0.55〜1.10%、Cr;20.8〜25.0%を含有する軟
窒化処理を施した耐摩耗性、耐焼付性に優れたピニオン
シャフトである。
[作用] 本発明ではCr含有量を増加することにより、Crの炭化
物を従来鋼より多量に形成せしめ、耐摩耗性の改善が図
られている。また、炭化物を生成するに充分なCを添加
すると共に、冷間加工性を害しない範囲でSi、Mnと共に
その上限を規制している。本発明鋼は熱間圧延等の熱間
加工のまま用いても充分な耐摩耗性を示すが、熱処理と
して、焼入、焼戻しあるいは焼入れ(窒化処理にて焼も
どしを兼ねるもの)して用いるのがよいが、さらに窒
化、メッキ、セラミックコーティング、溶射等の表面処
理を施して用いると著しくその効果を向上させることが
できる。表面処理は摺動面を含む表面に施され、ガス窒
化、ガス軟窒化、イオン窒化、塩浴窒化等の窒化処理、
Crメッキ、複合メッキ等のメッキ、P.V.DもとくはC.V.D
によるTi N、Ti Cx Ny、Ti C等のセラミックコーティン
グおよび溶射等のいずれも適用することができる。
本発明ではさらに高温強度、焼入性および耐食性を向
上させるために必要に応じてNiを添加し、炭化物を微細
化し耐摩耗性をさらに改善するために、必要に応じてM
o、VおよびNbを添加する。
次に、本発明の耐摩耗性の優れた合金鋼の化学成分の
限定理由について述べる。
C;0.55〜1.10% Cは焼入れにおいて必要な硬さを得ると同時に、炭化
物を形成して高強度と耐摩耗性を付与する元素である。
0.55%未満では炭化物生成量が少なく炭化物の存在によ
って得られる耐摩耗性が劣る。しかし、1.10%を越える
と炭化物の粒度が大きくなって相手材であるシリンダラ
イナを摩耗させ、かつピストンリング形状への冷間加工
性が不可能となるので上限を1.10%とした。なお、焼入
れ焼戻しにおいて最適な硬さ(Hv350〜450)を得ようと
するには0.80%以上とすることが好ましい。
Si;0.9%以下 Siは精錬時に脱酸元素として添加され、耐熱性を与え
る元素であるが、多量に添加されると引き抜き等の冷間
加工性を害するので、上限を0.9%とした。
Mn;2.0%以下 MnはSiと同様に精錬時に脱酸元素として添加され、靱
性を増大させる元素であるが、多量に添加すると冷間加
工性を害するので、上限を2.0%とした。
Cr;20.8〜25.0% CrはCと結合して炭化物を形成し、耐摩耗性を向上す
ると共に、耐食性と生地強度を向上させ、さらには窒化
硬化層の硬さを増す効果を有する。20.8%未満ではこれ
らの効果特に耐摩耗性の向上が不充分なので、20.8%以
上を含有せしめた。しかし、多量に含有すると前記の効
果が顕著でなくなり、逆に靱性が低下して冷間成形性を
阻害するのでCrの上限を25.0%とした。
Ni;0.2〜2.0% Niは耐食性、靱性および焼入性を付与する元素であ
り、0.2%未満では前記の効果が小さいので下限を0.2%
とした。しかし、2.0%を越えて含有されると、冷間加
工性を害するので上限を2.0%とした。
Mo;0.2〜3.0% MoはCrと同様に炭化物を形成し、窒化処理時に窒化層
硬度を高め、耐摩耗性を向上させるほか高温強度を増強
させる元素であり、これらの効果を得るためには0.2%
以上の含有が必要である。しかし、3.0%を越えて含有
させると前記の効果が顕著でなくなると同時に熱間加工
性を低下させるので、上限を3.0%とした。
V;0.1〜1.5%、Nb;0.05〜0.70% VおよびNbは焼もどし軟化抵抗および高温強度を増加
させると共に、炭化物を微細化するものであり、かつ窒
化処理により窒化物を形成し、表面層硬さを高める元素
である。前記効果を得るためにはV;0.1%以上、Nb;0.05
%以上の含有が必要である。しかし、V;1.5%、Nb;0.70
%を越えて含有すると粗大な共晶炭化物の生成により熱
間加工性を低下させるので、上限をそれぞれ1.5%およ
び0.70%とした。
また、耐食性をさらに高めるためにNiと同様にCuを0.
2〜1.0%添加してもよい。耐食性を向上させるためには
0.2%以上の添加が必要であり、1.0%を越えて含有させ
ると、焼きなましによって鈍らなくなり、冷間加工性を
害するので上限を1.0%とした。
[実施例] 次に本発明の効果を従来鋼と比較した実施例により明
らかにする。
(実施例1) 第1表(1)に示す化学成分からなる本発明鋼および
比較鋼として13Crマルテンサイト系ステンレス鋼を電気
炉で溶製した。第1表において、B〜C鋼およびP〜Q
鋼は第1発明鋼、E〜F鋼は第2発明鋼、H〜I鋼およ
びR〜T鋼は第3発明鋼、K〜L鋼およびU〜V鋼は第
4発明鋼。また、A、D、G、J鋼はCr含有量の少ない
比較鋼、O鋼は従来鋼である13Crマルテンサイト系ステ
ンレス鋼、およびO鋼に硬質クロムめっきを施したもの
である。
溶製した供試鋼は鋳造し熱間圧延を行い、焼入焼もど
しを施して(硬さHv350〜450)摩耗試験用として10×1
5.7×6.3mmの摩耗試験片に加工した。得られた摩耗試験
片について次の条件により摩耗試験を行った。
(LFW-1摩耗試験機による摩耗試験) 相手材 FC 荷重 60kg 時間 120分 速度 0.3m/sec 潤滑油 低粘度エンジンオイル1.5cc/min供給 試験後に摩耗試験片について摺動面の摩耗量を測定
し、結果を第1表(2)に示した。
続いて別の摩耗試験片をアンモニアガス気流中で530
〜590℃に加熱して5時間以上のガス窒化を施した。ガ
ス窒化後に表面硬さを測定したところ、Hv1000以上であ
った。窒化処理後の摩耗試験片を前記と同様の条件で摩
耗試験に供した。試験後の測定した摺動面の摩耗量は、
第1表(2)に併せて示した。
第1表(2)から知られるように、摩耗試験におい
て、従来材であるO鋼の摩耗量は、焼入焼戻し品が5.8
μm、窒化品が3.5μm、またCrめっき品が10.0μmに
対し、本発明のB、C、E、F、H、I、K、L鋼およ
びP〜V鋼の摩耗量は、焼入焼戻し品で1.7〜2.7μm、
窒化品で0.7〜1.8μm(窒化層硬度はいずれもHv1000以
上)と優れた耐摩耗性を示すことが確認できた。なお、
Cr含有量が本発明の組成範囲より僅かに少なかった比較
鋼であるA、D、G、J鋼の摩耗量は、焼入焼戻品で3.
10〜3.40μm、窒化品で1.60〜2.20μmであって、耐摩
耗性は従来品よりは優れているものの、Cr以外の成分が
同一の本発明品と比べて若干劣るものである。本発明が
窒化処理の有無にかかわらず優れた耐摩耗性を示すの
は、0.55〜1.10%C、20.8〜25%Crという成分組成によ
って現行のO鋼と比しCr炭化物(平均粒径2μm強)を
多量に形成していることにより優れた耐摩耗性を示す。
Mo、VおよびNbの添加は微細な炭化物を形成するので、
添加量が多いほど耐摩耗性を向上させる。
また、炭化物形成元素であるCr、Mo、V、Nbはフェラ
イト形成元素であり、これら多量の添加はCおよびNiの
添加量によっては、α相(フェライト)の析出となり
[本発明B、H、I]、α相の析出しない均一マルテン
サイト組織のもの[本発明C、E、F、K、L]と比較
すると耐摩耗性が劣ることになる。従って、Ni添加は炭
化物を多量に析出しながら生地を強化するという点で、
優れた耐摩耗性を得るに重要な役割を果たしている。
ガス窒化処理による耐摩耗性の向上は、生地における
微細なクロム窒化物の析出による析出硬化(Hv1000以
上)、クロム炭化物のクロム炭窒化物、クロム窒化物へ
の置換、および炭化物から排斥された炭素により生成す
る波状析出物(粒界セメンタイトと考えられる)によっ
て、焼入焼戻し品をはるかに上回る優れた耐摩耗性を得
ている。
次に、摩耗試験片と同様にして製作した焼付試験片に
ついて、次の条件により焼付試験を行い、焼付荷重を第
1表に併せて示した。
(機械試験所型摩擦摩耗試験機による焼付試験) 相手材 ;FC 荷重 ;2分毎に25kgづつ増大させ、焼付が発生する
まで行う 速度 ;1.2m/sec 潤滑油 ;低粘度エンジンオイルの滴下潤滑 焼付荷重 ;摩擦係数が0.2以上に急上昇した荷重をも
って焼付荷重とする ピストンリングの場合、第1表(2)に示す焼付荷重
で125.0kg以上の良好な耐スカッフ性を有しておれば、
エンジンの実機運転において、リングスカッフを発生す
ることなく良好な結果を得ることができる。ところが、
焼付荷重が112.5kgを下回る材料を使用した場合、トッ
プリングにおいては、油膜が部分的に切られるような厳
しいエンジン運転条件では、リングスカッフを発生し、
致命的な損傷を受ける。一方、オイルリング・サイドレ
ールにおいては、トップリングほどではないが、軽い縦
傷を発生する。従って、焼付荷重が高い材料ほど熱的に
も厳しいエンジンにも使用できる。
本発明の窒化処理品は、従来材のO鋼と同等以上の耐
スカッフ性を有しており、なかでも本発明[C、E、
H、Q、R、S]は167.5kg、さらに本発明[F、K、
L、T、U、V]は175〜187.5kgと著しく優れた耐スカ
ッフ性を有している。これらが特に優れた耐スカッフ性
を示すのは、相手材と殆ど凝着しない粒状のクロム炭窒
化物、クロム窒化物が摺動面では生地よりも僅かに突き
出て、相手材と生地との凝着を妨げるとともに、相手材
と生地との凝着痕がこの粒状クロム炭窒化物、クロム窒
化物のところで断ち切られ、大きな焼付は発生しないこ
とにより優れた耐スカッフ性を得ることになる。
次に、ピストンリングは合い口をリング寸法(T寸法
mm)の10倍まで広げ(以後10Tと略記)て、ピストンリ
ング溝内に装着するため、少なくとも10Tを越える組付
強度が必要である。ガス窒化処理を行ったピストンリン
グの場合、従来材O鋼の拡散層がもろく、11〜13Tと殆
ど余裕がなく、材料バラツキおよび拡げ量のバラツキに
よっては、時として折損するという問題がある。本発明
の場合、ボア径φ86mm用のピストンリング(B寸法2.0m
m、T寸法3.15mm、窒化深さ90μm)において、第1表
(3)に示すごとく、従来材O鋼の11〜13Tに対し、20T
以上でないと折損しないという優れた組付強度を有して
いる。また、キーストンリングのごとく疲労強度が問題
となるピストンリングにおいては、特にガス窒化処理材
のごとく脆い材料の場合および脆い複合めっきをシリン
ダ壁との摺動面にめっきした場合には折損するという問
題がある。前記ガス窒化処理ピストンについて稀硫酸水
溶液中にて振動応力50kgf/mm2一定疲労試験を行った結
果を第1表(3)に示すごとく、従来材の2×105に対
して、本発明[E、F、K、L、U鋼]は5〜7×105
と大幅に向上することを確認した。本発明がこのように
優れた組付強度、疲労強度を示すのは、20.8〜25.0%Cr
添加によるガス窒化拡散層の生地強化によるものであ
る。
(実施例2) 供試材には第1表に示すB、E鋼、比較鋼J鋼および
従来鋼としてSKD11相当を用い、縦型エンジン用ロッカ
ーアームパットを作製し、次いでこのロッカーアームパ
ットに焼入、焼もどし処理を施した後、530〜590℃で3
時間以上の塩浴窒化処理を施し、下記試験条件により試
験を行い、ロッカーアームパット摩耗量およびカム摩耗
量を測定し、その結果を第2表に示した。
モータリング試験の試験条件 エンジン回転数:2000回転 供試時間:200時間 バルブスプリング荷重:150%以上 (量産エンジンの組み付け荷重に対して) 潤滑油:耐久劣化油 カムシャフト:合金鋳鉄 以上のように、本発明鋼が比較鋼に比べ良好な結果を
示すのは、次の第3表に示したように、炭化物量の増大
による耐摩耗性の向上および炭化物径の微細化(粗大炭
化物の減少)による相手材への攻撃性の減少によるもの
と思われる。
(実施例3) 供試材として、第1表に示すC、E鋼および従来鋼と
してSCr415、SCM440を用い、FF車の差動装置用ピニオン
シャフトを作製し、実車試験として、ピニオンシャフト
上をピニオンギヤが相対運動をする運動条件(8の字旋
回、緊急用タイヤを片輪に装着した走行、悪路(ぬかる
み等滑り易い路面を含む)走行)で5万km走行した時の
ピニオンシャフトの摺動面の段付き摩耗深さを第1図に
示す。従来材では、SCr415・浸炭焼入れが40μm、SCM4
40・軟窒化が25μmであって、段付き摩耗深さが大きい
のに対し、本発明鋼は5μmと摩耗量が1/8〜1/5と小さ
く、優れた耐摩耗性を有することが確認された。
耐焼付性については、差動装置の実車走行試験での焼
付きと相関のとれた機械試験所型摩耗試験機による焼付
試験を前記と同じ供試鋼について行った。試験条件は10
00rpm(1.2m/s)、油浴潤滑下(低粘度潤滑油)におい
て、2分間毎に25kgつづ荷重を増大させ、焼付きが発生
する荷重(焼付き荷重)を測定し、結果を第2図に示し
た。この試験で250kg以上の焼付き荷重があれば差動が
頻繁に発生する条件でも焼付きを発生することがない。
従って、本発明鋼は優れた耐焼付性を有することが確認
された。
本発明鋼が優れた耐摩耗性、耐焼付性を示すのは、従
来材と異なり表面では軟窒化処理による2〜12μmの微
細粒状クロム炭窒化物および炭化物から析出された炭素
により生成する波状析出物(粒界セメンタイトと考えら
れる)によって得られるものである。
次に供試材として本発明鋼である第1表のC鋼および
E鋼(軟窒化)、従来鋼であるSCr415(C;0.15%、Si;
0.25%、Mn;0.75%、Cr; 1.05%、浸炭焼入)およびSC
M440(C;0.41%、Si;0.25%、Mn;0.75%、Cr; 1.05
%、Mo;0.25%、軟窒化)を用い、FF車の差動装置用ピ
ニオンシャフトを作製し、同様の実車試験を行い、ピニ
オンシャフトの段付き摩耗深さおよび焼付き荷重を測定
し、結果を第4表に示す。
第4表に示したように、本発明鋼であるC鋼およびE
鋼は、従来鋼であるSCr415、SCM440鋼に比べ段付き摩耗
深さが極めて少なく、また焼付き荷重についても従来鋼
に比べ2〜3倍と優れていることが確認できた。
[発明の効果] 本発明の耐摩耗性の優れた合金鋼は、以上説明したよ
うに従来のマルテンサイト系ステンレス鋼製のピストン
リング等の耐摩耗性および耐焼付性をさらに向上し長寿
命化を図るため、Cr含有量を増加することにより、Crの
炭化物を従来鋼より多量に形成せしめると共に、C、Si
およびMn量を規制し、Ni、Mo、V、Nbを添加することに
より、従来鋼の持つ高温強度、耐食性、耐スカッフィン
グ性を保持したままさらに耐摩耗性、耐スカッフ性、組
付強度、疲労強度、耐焼付性に優れたものとし、著しく
ピストンリング、ロッカーアーム、ピニオンシャフト等
の長寿命化を図ることができたという効果がある。ま
た、本発明では窒化、めっき、セラミックコーティン
グ、溶射等の表面処理をして使用することにより、前記
の効果をさらに向上するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は従来材と本発明鋼のピニオンシャフトの段付き
摩耗深さを示す図、第2図は従来材と本発明鋼の焼付き
荷重を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 小池 忠裕 愛知県東海市荒尾町ワノ割1番地 愛知 製鋼株式会社内 (72)発明者 加藤 慎治 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 不破 良雄 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 前田 頼成 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 杉本 繁利 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 青柳 光 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−24807(JP,A) 特開 昭55−145179(JP,A) 特開 昭58−123822(JP,A) 特開 昭60−21324(JP,A) 特開 昭62−196324(JP,A) 特公 昭55−19307(JP,B2) 特公 昭46−27140(JP,B1) 鋳物 第58巻(1986年)第3号 第26 〜27頁

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比でC;0.55〜1.10%、Si;0.9%以下、
    Mn;2.0%以下、Cr;20.8〜25.0%を含有し、残部がFeお
    よび不純物元素からなり、生地組織が熱間加工し凝固組
    織を破壊した焼もどしマルテンサイトであり、かつ微細
    粒状クロム炭化物が分散していることを特徴とする耐摩
    耗性の優れた合金鋼。
  2. 【請求項2】重量比でC;0.55〜1.10%、Si;0.9%以下、
    Mn;2.0%以下、Cr;20.8〜25.0%、Ni;0.2〜2.0%を含有
    し、残部がFeおよび不純物元素からなり、生地組織が熱
    間加工し凝固組織を破壊した焼もどしマルテンサイトで
    あり、かつ微細粒状クロム炭化物が分散していることを
    特徴とする耐摩耗性の優れた合金鋼。
  3. 【請求項3】重量比でC;0.55〜1.10%、Si;0.9%以下、
    Mn;2.0%以下、Cr;20.8〜25.0%を含有し、さらにMo;0.
    2〜3.0%、V;0.1〜1.5%、Nb;0.05〜0.70%のうち1種
    または2種以上を含有し、残部がFeおよび不純物元素か
    らなり、生地組織が熱間加工し凝固組織を破壊した焼も
    どしマルテンサイトであり、かつ微細粒状クロム炭化物
    が分散していることを特徴とする耐摩耗性の優れた合金
    鋼。
  4. 【請求項4】重量比でC;0.55〜1.10%、Si;0.9%以下、
    Mn;2.0%以下、Cr;20.8〜25.0%、Ni;0.2〜2.0%を含有
    し、さらにMo;0.2〜3.0%、V;0.1〜1.5%、Nb;0.05〜0.
    70%のうち1種または2種以上を含有し、残部がFeおよ
    び不純物元素からなり、生地組織が熱間加工し凝固組織
    を破壊した焼もどしマルテンサイトであり、かつ微細粒
    状クロム炭化物が分散していることを特徴とする耐摩耗
    性の優れた合金鋼。
  5. 【請求項5】少なくとも摺動面に窒化、メッキ、セラミ
    ックコーティング、溶射から選ばれるいずれかの表面硬
    化処理を施して用いることを特徴とする請求項1乃至請
    求項4のいずれかに記載の耐摩耗性の優れた合金鋼。
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