JP4799004B2 - Fe系シール摺動部材及びその製造方法 - Google Patents

Fe系シール摺動部材及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4799004B2
JP4799004B2 JP2005028516A JP2005028516A JP4799004B2 JP 4799004 B2 JP4799004 B2 JP 4799004B2 JP 2005028516 A JP2005028516 A JP 2005028516A JP 2005028516 A JP2005028516 A JP 2005028516A JP 4799004 B2 JP4799004 B2 JP 4799004B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
weight
martensite matrix
volume
seal
cast iron
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005028516A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005290549A (ja
Inventor
武盛 高山
恒二 山田
茂夫 大塚
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Komatsu Ltd
Original Assignee
Komatsu Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Komatsu Ltd filed Critical Komatsu Ltd
Priority to JP2005028516A priority Critical patent/JP4799004B2/ja
Priority to CN200510053153.3A priority patent/CN1667133A/zh
Priority to US11/071,469 priority patent/US8257514B2/en
Publication of JP2005290549A publication Critical patent/JP2005290549A/ja
Priority to US11/882,823 priority patent/US20070289714A1/en
Application granted granted Critical
Publication of JP4799004B2 publication Critical patent/JP4799004B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D5/00Heat treatments of cast-iron
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B22CASTING; POWDER METALLURGY
    • B22DCASTING OF METALS; CASTING OF OTHER SUBSTANCES BY THE SAME PROCESSES OR DEVICES
    • B22D13/00Centrifugal casting; Casting by using centrifugal force
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D9/00Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor
    • C21D9/40Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor for rings; for bearing races
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C37/00Cast-iron alloys
    • C22C37/06Cast-iron alloys containing chromium
    • C22C37/08Cast-iron alloys containing chromium with nickel
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C37/00Cast-iron alloys
    • C22C37/10Cast-iron alloys containing aluminium or silicon

Description

本発明は、建設機械用転輪、アイドラー、減速装置などのフローティングシール部材等に適用して好適なFe系シール摺動部材及びその製造方法に関するものである。
建設機械の下転輪ローラアッセンブリや歯車減速装置に組み込まれるFe系フローティングシールは、その内部の潤滑油の漏れを防止するとともに内部への土砂の侵入を防止するものである。このため、そのシール摺動面を焼入れ処理によって高硬度なマルテンサイト組織としたり、硬質なセメンタイト、Cr炭化物を30体積%ほどに多量に晶出させるとともに焼入れ処理によって母相をマルテンサイト組織とすることによって、その耐焼付き性や耐摩耗性を改善したFe系フローティングシールが多く製造されている。例えば、ニハード(Ni−Hard)鋳鉄(標準組成は、C:2.7〜3.5重量%、Si:0.4〜1.0重量%、Mn:0.4〜0.6重量%、Ni:4.2〜4.7重量%、Cr:1.4〜2.5重量%)、高炭素高Cr鋳鉄(例えば、C:3.3〜3.6重量%、Cr:15〜17重量%、Mo:2.5〜3.5重量%、V:0.2〜0.5重量%)を用いたFe系フローティングシールがその例である(例えば特許文献1参照)。
さらに、目的に応じては、上記摺動面にWCと自溶性合金からなる肉盛用耐摩耗性材料を溶射したフローティングシールが使用されている。
特開昭51−59007号公報
上記減速装置や転輪装置中の潤滑油を密封するフローティングシールは、その機構において、土砂中の籾摺り運動によって微細な土砂粒子がシール面に進入しながら摩耗が進行するものであるとともに、密封する潤滑油によってそのシール面が潤滑されているものである。このため、耐摩耗性と耐焼付き性に優れたものが要求され、最も汎用的に利用される高硬度な高炭素高Cr鋳鉄製のフローティングシールにおいても、それらを組み込む際のセット圧(押し付け力)が高くなるとその摺動面において顕著な焼割れ(ヒートクラック)、焼付き、異常摩耗を発生し、油漏れを引き起こす問題がある。
また、上記耐焼付き性と耐摩耗性を向上させる材料として冷間工具鋼や高速度鋼(SKH材料)等の各種工具鋼を適用した場合においても、耐焼付き性不足によるかじりが発生しやすく、その結果として摩擦熱によるヒートクラック、耐摩耗性が十分でない問題がある。また、前記各種工具鋼は極めて高価な鋼材であるために、製品形状に仕上げるまでの材料歩留まりを考慮した時の材料費が高価になる問題がある。
さらに、近年のブルドーザ等の建設機械においては、より高速走行による作業効率の向上が要望され、フローティングシールの高速回転化によっても同様の焼割れ、焼付き、異常摩耗を発生し、油漏れを引き起こす問題がある。
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、耐ヒートクラック性、耐焼付き性及び耐摩耗性に優れたFe系シール摺動部材およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係るFe系シール摺動部材は、シール摺動面を備えたFe系シール摺動部材において、
前記シール摺動面に形成され、0.15〜0.6重量%の炭素が固溶されたマルテンサイト母相と、
前記マルテンサイト母相中に分散された5〜70体積%のセメンタイトおよび0.1〜10体積%のMC型炭化物の少なくも一方の第1分散物と、
前記マルテンサイト母相中に分散された1〜15体積%の黒鉛および1〜20体積%のCu合金相の少なくとも一方の第2分散物と、
を具備し、
前記第1分散物と前記第2分散物との総量が5〜70体積%であることを特徴とする。
また、本発明に係るFe系シール摺動部材において、前記シール摺動面を構成する部位は、2〜5重量%の炭素、0.5〜6重量%のSiおよび0.3〜5重量%のCrを含有し、Al,Mn,Ni,Cu,Co,Mo,W,V,Ti,Zr,Nb,Ta,P,B,Ca,Sの群から選択された一種以上を含有する鋳鉄材を用いて形成されていることが好ましい。
また、本発明に係るFe系シール摺動部材において、前記Fe系シール摺動部材が前記鋳鉄材を用いた鋳造によって形成されることも可能である。
また、前記Fe系シール摺動部材は、前記鋳鉄材を用いた鋳造によって形成されたフローティングシール部材であっても良い。
本発明に係るFe系シール摺動部材の製造方法は、2〜5重量%の炭素、0.5〜6重量%のSiおよび0.3〜5重量%のCrを含有し、Al,Mn,Ni,Cu,Co,Mo,W,V,Ti,Zr,Nb,Ta,P,B,Ca,Sの群から選択された一種以上を含有する鋳鉄素材を鋳造する工程を具備するFe系シール摺動部材の製造方法であって、
前記Fe系シール摺動部材は、0.15〜0.6重量%の炭素が固溶されたマルテンサイト母相と、
前記マルテンサイト母相中に分散された5〜70体積%のセメンタイトおよび0.1〜10体積%のMC型炭化物の少なくも一方の第1分散物と、
前記マルテンサイト母相中に分散された1〜15体積%の黒鉛および1〜20体積%のCu合金相の少なくとも一方の第2分散物と、を有し、
前記第1分散物と前記第2分散物との総量が5〜70体積%であることを特徴とする。
以上説明したように本発明によれば、耐ヒートクラック性、耐焼付き性及び耐摩耗性に優れたFe系シール摺動部材およびその製造方法を提供することができる。
発明を実施するための形態
本発明の実施の形態は、次のような性能を有する鋳鉄系摺動材料に関するものであり、この鋳鉄系摺動材料は例えばフローティングシールに用いられる。
(1)マルテンサイト母相中に、相手摺動材料に対するアタック性が少なく、かつ高靭性で硬質なセメンタイトを5〜70体積%分散させることにより、耐凝着性と耐摩耗性を改善する。
(2)耐凝着性とシール摺動面における潤滑油供給性(オイルポケットの形成)に優れた黒鉛およびCu合金相の少なくとも一方を1〜20体積%分散、析出させることによって、上記シール摺動面における潤滑性改善による耐焼付き性の向上を図る。
(3)マルテンサイト母相の耐ヒートクラック性を改善するために、前記マルテンサイト母相中の炭素濃度を0.15〜0.6重量%に抑制する。
(4)マルテンサイトの焼戻し軟化抵抗性を高めるためや馴染み性を改善する残留オーステナイト量を調整するために、Si,Al,Ni,V,Mo,Wの合金元素を適正に添加する。
(5)V,Ti,Zr,Nb,Ta等のMC型炭化物を分散させて耐凝着性と耐摩耗性を改善する。
本実施の形態によるFe系シール摺動部材の一例であるフローティングシールは、その使用環境で重要な耐ヒートクラック性、耐焼付き性と耐摩耗性を改善することが要求される。そこで、本実施の形態によるフローティングシールはFe系シール摺動材料によって形成されており、このFe系シール摺動材料は、マルテンサイト母相中に0.15〜0.6重量%の炭素を固溶させることにより耐ヒートクラック性を改善し、前記マルテンサイト母相中に5〜70体積%のセメンタイトおよび0.1〜10体積%のMC型炭化物の少なくとも一方を分散させることにより耐焼付き性と耐摩耗性を改善し、さらに、前記マルテンサイト母相中に1〜15体積%の黒鉛および1〜20体積%のCu合金相の少なくとも一方を分散させることにより耐焼付き性を改善したものであり、前記マルテンサイト母相中に分散される前記セメンタイトおよび前記MC型炭化物の少なくとも一方と前記黒鉛および前記Cu合金相の少なくとも一方の総量が5〜70体積%である。
また、前記Fe系摺動材料は、少なくとも2〜5重量%の炭素、0.5〜6重量%のSiおよび0.3〜5重量%のCrを含有し、さらに、Al,Mn,Ni,Cu,Co,Mo,W,V,Ti,Zr,Nb,Ta,P,B,Ca,Sからなる群から選択された一種以上を含有する鋳鉄材が用いられる。
本実施の形態においては、上述したようにフローティングシールの摺動面における耐ヒートクラック性を改善するために、そのマルテンサイト母相中に固溶させる炭素濃度を0.15〜0.6重量%の範囲に調整した理由は次の通りである。前述の高炭素高Cr鋳鉄等のフローティングシールのマルテンサイト相中の炭素濃度が約0.8重量%と推定されることから、マルテンサイト相中に固溶される炭素の上限濃度は0.7重量%が好ましいと考えられ、さらに、耐ヒートクラック性が要求される熱間工具鋼(SKD6,SKD7,SKD61,SKD62,SKD8,3Ni−3Mo鋼)等の含有炭素濃度を参考にすると、マルテンサイト相中に固溶される炭素の上限濃度は0.6重量%がより好ましく、下限濃度は0.15重量%とすることが好ましい。
さらに、耐土砂摩耗性を考慮した場合においては、そのマルテンサイト母相の硬さがHv500以上であることが好ましく、より安定した耐ヒートクラック性を確保させるためには、マルテンサイト母相中に固溶される炭素の濃度が0.15〜0.5重量%に調整されることがより好ましい。
なお、焼入れ硬化させたマルテンサイト母相中に固溶される炭素の濃度を上記の範囲に調整する方法について説明する。鋳鉄材のマトリックスを安定したパーライト組織とするためには0.3重量%以上のCrが含有されることが好ましい。(方法1)パーライト組織となる鋳鉄材を鋳造時に焼入れる場合には、Fe−C系のパーライト組織の共析炭素濃度が約0.8重量%であって、さらに、オーステナイト相中の炭素活量を顕著に高めるSiの添加によって、約0.1重量%C/重量%Siの割合で上記共析炭素濃度を低減できることを利用して、オーステナイト相(焼入れ後にはマルテンサイト相)中のSi濃度が2重量%以上になるように調整することを基本とするが、そのSi濃度を3重量%以上に調整することがより好ましい。
なお、Siが黒鉛、セメンタイトおよびMC型炭化物にほとんど固溶せず、マルテンサイト相中にほぼ全てのSiが濃縮される。このことから、マルテンサイト相中のSi濃度の制御は、例えば、セメンタイトが40体積%分散される鋳鉄材における3重量%のSiが含有されるマルテンサイト母相を得るためには、鋳鉄材に1.8重量%のSiを添加すればよいことがわかる。また、後述する(セメンタイト+黒鉛)量の好ましい下限値16体積%では、前記マルテンサイト母相中に固溶される炭素の濃度範囲を0.15〜0.6重量%に調整するために、1.5〜6重量%のSiを鋳鉄材に添加すればよいことがわかる。また、共析炭素濃度を低減する元素としては、CrもSiとほぼ同じ作用を示すので、マルテンサイト母相中の(Si重量%+Cr重量%)が2重量%以上を基本とし、3〜6.5重量%に調整することがより好ましい。したがって、本実施の形態では、少なくとも鋳鉄材に1.8〜6重量%のSiを含有し、マルテンサイト母相中のSi濃度が3〜6.5重量%に調整されていることが好ましい。前記鋳鉄系のSi含有量の上限値を6重量%としたのは靭性を確保するためである。
さらに、前記マルテンサイト母相中に固溶される炭素の濃度を調整する他の方法について説明する。
(方法2)例えば、黒鉛とフェライト相が析出する鋳鉄材であっても、A1温度以上に適正に加熱して、黒鉛からオーステナイト中に炭素を拡散固溶させ、フェライト相を消失させる熱処理後に直接焼入れる方法も好ましい。
(方法3)上記(方法2)の熱処理後に一旦冷却し、母相をパーライト組織もしくは粒状セメンタイトが分散した組織に調整した鋳鉄材を焼入れ処理する方法も好ましい。
また、その焼入れ処理が、摺動面に限定して、150℃/sec以上の加熱速度で高周波焼入れすることによってパーライト状の板状セメンタイトや粒状セメンタイトを未固溶な状態でマルテンサイト母相中に残留させることも好ましい方法である。この場合のマルテンサイト相中に固溶される炭素の濃度は、セメンタイト中のCr濃度によって制御され、セメンタイト中のCr濃度を4〜15重量%に調整することによってマルテンサイト母相中に固溶される炭素の濃度をほぼ0.15〜0.6重量%に調整できることがわかる。また、この炭素濃度がオーステナイト中のSi濃度によって、0.1重量%C/重量%Siの割合で減ぜられ、例えば、4重量%Siを含有する場合においては、セメンタイト中のCr濃度が2.5重量%であってもよいことから、セメンタイト中のCr濃度範囲としては2.5〜15重量%が好ましい。したがって、本実施の形態では、少なくとも鋳鉄材に0.5〜1.5重量%のSi、0.9〜5重量%のCrを含有し、マルテンサイト母相中の(Si+Cr)濃度を2〜4重量%、セメンタイト中のCr濃度を2.5〜15重量%に調整することが好ましい。
なお、マルテンサイト相中に共晶反応で晶出するセメンタイト以外にマルテンサイト母相中に極めて微細にパーライト状にセメンタイトが分散する組織は、フローティングシールの摺動面における潤滑油の供給性を高めることや母相の耐摩耗性を高めることから、本実施の形態のFe系シール摺動材料として好ましい組織である。
さらに、マルテンサイト相のSi濃度が4重量%以上においては、HANSENのFe−Si系状態図から予測されるように、FeSi規則・不規則相変態性が発現され、顕著な焼戻し軟化抵抗性の改善と摺動面における凝着性が改善されること、7重量%Si以上で規則相の出現による脆化が顕著になることから、マルテンサイト母相中のSi濃度を4〜6.5重量%に調整することが好ましく、前記マルテンサイト母相中に固溶される炭素の濃度を0.15〜0.4重量%の範囲で調整することがより好ましい。
なお、後述するように、上記規則・不規則相変態性を示す合金元素としてSiと同様にセメンタイト中にほとんど固溶しないAlが挙げられるので、本実施の形態においてもAlの添加は好ましい。なお、マルテンサイト相中に固溶される炭素の濃度を減じる作用が小さいことから、マルテンサイト母相中のSi濃度で固溶炭素濃度を調整し、さらに、Alを複合添加することによって規則・不規則変態性を実現し、それによって、脆弱性を回避し、耐焼付き性と耐摩耗性を向上させることが好ましい。
また、本実施の形態において、前記鋳鉄材にはAlが0.5〜6重量%含有され、マルテンサイト母相中のAl濃度が1〜12重量%に調整されていることが好ましい。
また、マルテンサイト相中のSiは焼戻し軟化抵抗性を高める元素としてよく知られており、とりわけ、450℃以下の低温域ではMo、Wよりも優れた作用を示すが、450℃以上の高温域での焼戻し軟化抵抗性はMo、Wが優れた作用を示すことから、Mo、W等の合金元素を積極的に固溶させることが好ましい。Mo、WはSiと共存して添加された場合に、有効に作用する最大のMo添加量であるMo=2.3−0.5×Si重量%の範囲内でMoを添加することがMoの焼戻し軟化抵抗性を活かせること、および、凝固過程で晶出するセメンタイトとオーステナイト間のMoの分配係数(セメンタイト中のMo重量%/オーステナイト中のMo重量%)γKMoが2〜2.5であり、セメンタイトへのMoの最大固溶度が約2重量%であることから、その際のマルテンサイト母相中のMo濃度が約1重量%であることを考慮すると、本実施の形態のFe系シール摺動材料においては、少なくとも鋳鉄材にSiが1〜3重量%含有されるとともにMoおよびWが合計で0.5〜2重量%含有され、マルテンサイト母相中のSi濃度が2〜4重量%に調整されるとともにMoおよびWの合計濃度が0.5〜1重量%に調整されることが好ましい。また、低温域における焼戻し軟化抵抗性を高め、さらに、高温域での焼戻し軟化抵抗性を高めるために、マルテンサイト母相中のMo濃度を0.3〜1重量%に調整できるように前記鋳鉄材に0.5〜2重量%のMoが添加されることが好ましい。また、Wに関しては、γKWが約1.5、セメンタイトへの最大固溶度が2重量%であることを考慮してMoと同様の検討をした結果、Moとほぼ同程度以上に有効であるといえる。そこで、本実施の形態においては、前記鋳鉄材にMoおよびWが合計で0.5〜2重量%を添加することが好ましいこととした。なお、Mo、Wの上限添加量においては、FeMo型特殊炭化物がわずかに析出し、マルテンサイト母相中にセメンタイトと共存する際の最大のMo、Wを固溶させたものとしており、それ以上の添加は経済的に好ましくない。なお、Mo特殊炭化物(FeMoC)は汎用の高炭素高CrMo系フローティングシール用材料中に利用されていることから、耐焼付き性と耐摩耗性を減じることがない。
上記オーステナイト相中の炭素活量を高め、固溶炭素濃度を減じるSiと同様な作用を示す元素としては、Pが挙げられるが、オーステナイトへのP固溶度が1重量%未満で、固溶炭素濃度を減じる作用は少ない。しかし、析出するFeP燐化合物は摺動面での耐焼付き性を改善するので、鋳鉄材を顕著に脆化しない、1.5重量%以下で鋳鉄材に添加されることが好ましい。
また、前述したように本実施の形態においては、MC型炭化物を0.1〜10体積%分散させることを規定したが、0.1体積%以上の極めて硬質で耐凝着性に優れたMC型炭化物を分散させることによって、摺動面における耐焼付き性が顕著に改善されるとともに、摺動面での凝着摩耗性が顕著に改善される(硬質粒子分散効果と呼ぶ)。さらに、約10体積%のVが分散される高速度鋼において、その耐土砂摩耗性が顕著に改善されることから、MC型炭化物を析出させる経済性を考慮するとMC型炭化物の上限値は10体積%とすることが好ましい。したがって、前記マルテンサイト母相中にMC型炭化物と摺動面の潤滑性を改善する黒鉛およびCu合金相の少なくとも一方が分散した鋳鉄系耐摩耗摺動材料がフローティングシール部材に適しており、より耐土砂摩耗性を高める観点からMC型炭化物が2〜10体積%に調整されることがより好ましい。
さらに、土砂侵入に対する耐摩耗性が必要とされるフローティングシール部材に適用する鋳鉄材料においては、より多くの硬質な炭化物を多く分散させることが好ましいことから、本実施の形態においては、安価なセメンタイトの分散量を5〜70体積%に規定した。この分散セメンタイト量の下限値を5体積%とした理由は、例えば、極めて耐摩耗性に優れた高速度鋼中の焼入れ後の炭化物量が5〜17体積%に調整されていることを参考にしたものである。さらに、厳しい油摺動条件での耐焼付き性と耐摩耗性を向上させるために、より多くの硬質粒子分散効果がより有効であり、とりわけ耐摩耗性を重視する場合においては、従来の上記高速度鋼を参考にすると15体積%を下限値とすることがより好ましい。したがって、上記セメンタイトとMC型炭化物を混在させることによって前記耐焼付き性と耐摩耗性がより効果的に改善される。さらに、黒鉛およびCu合金相の少なくとも一方を分散させることによってより耐焼付き性と耐凝着摩耗性が改善される。尚、前記マルテンサイト母相中のCu合金相の分散量は1〜10体積%であることがより好ましい。
さらに、土砂の侵入に対する耐摩耗性や耐焼付き性をより改善する場合にセメンタイト量をより多く分散させることが有効である。そこで、本実施の形態においては、上限のセメンタイト量を70体積%と規定したが、例えば、前記高炭素高Cr鋳鉄材を用いたフローティングシール部材においては、炭化物量を50体積%以上にした場合には脆くなりすぎることを参考にすると、上限のセメンタイト分散量を50体積%とすることがより好ましい。
したがって、上記鋳鉄材の炭素添加量がセメンタイト量の上・下限値からそれぞれ2〜5重量%であることが好ましい。この炭素添加量が、4重量%を越えた場合には、極めて粗大な初晶セメンタイトが多く晶出し、脆化するので、炭素添加量の一部を黒鉛として析出分散させて利用することが好ましい。そこで、前記マルテンサイト母相中に平均粒径が15μm以下の粒状黒鉛が1〜10体積%分散されていることが好ましい。
また、本実施の形態のように高濃度なSiを添加した鋳鉄系耐摩耗摺動部材においては、Siが黒鉛化形成元素であって、通常の冷却速度での凝固組織はMaurer鋳鉄組織図の関係から、Si添加重量%=0.6×(4.3−C添加重量%)以下のSiの添加によって白鋳鉄組織、またそのSi添加量以上のSiの添加によってパーライト母相中に黒鉛が分散したものとなり、さらに、Si添加重量%≧1.65×(4.3−C添加重量%)以上のSiの添加によってフェライト母相中に黒鉛が分散した組織となる。前記のようにSiをより多く添加する本発明の鋳鉄材中に共晶セメンタイトを分散させることが難しくなることから、共晶セメンタイトを安定化させるために、0.9重量%以上のCrを添加し、黒鉛化処理によってセメンタイトが黒鉛化し易いようにセメンタイト中のCr濃度が2.5〜6重量%の範囲になるようにCrを0.9〜3.5重量%の範囲で添加することが好ましい。なお、下限値15体積%のセメンタイトが分散する場合、凝固過程で晶出するセメンタイトとオーステナイト間の分配係数(セメンタイト中のCr重量%/オーステナイト中のCr重量%)γKCrが約4であることから、鋳鉄材に対する下限の添加量は0.9重量%と計算される。また、セメンタイト中のCr濃度が10重量%を越えると長時間の黒鉛化処理によっても黒鉛化が進行しない。このことから、後述するように黒鉛化処理によって短時間で適量の黒鉛を分散させることを積極的に活用する本耐摩耗摺動材料においては、セメンタイト中のCr濃度が6重量%となるCr添加量3.5重量%を上限とすることが好ましく、より経済的である。
また、Mnもセメンタイトを安定化させ、セメンタイトの黒鉛化を抑制する元素であり、かつ0.1重量%以上のMnは鋳鉄材に不可避的に含まれやすいものであり、さらに、鋳鉄材に5重量%以上添加する場合に白銑化するものであり、またその結果から、Mnの分配係数γKMnが1.5〜2であり、共晶セメンタイト中のMn濃度が10重量%以上で共晶セメンタイトが安定化されることがわかる。従って、Mnは、前記Crほどの大きな安定化作用は期待されないが、積極的に添加されることが好ましい元素である。さらに、後述するようにMnはNiと同様にオーステナイトを顕著に安定化する元素であって、かつ焼入れ性を高め、残留オーステナイト相を形成する安価な元素であることから、より積極的に0.7〜5重量%のMnを添加することが好ましい。例えば50体積%のセメンタイトが分散する鋳鉄材に5重量%のMnを添加した場合においては、マルテンサイト母相中のMn濃度は約3.3重量%になり、オーステナイトの安定化による凝固時のフェライト生成の抑制と顕著な焼入れ性と適正な残留オーステナイトが確保される。
なお、マルテンサイト母相中の残留オーステナイトの体積%であるFはマルテンサイト母相のMs温度(マルテンサイト変態開始温度)と、下記式(d)
F=100exp(−0.011×(Ms−Q))・・・(d)
の関係式から経験的に算出され、また、Ms温度はマルテンサイト母相中の組成から、下記の近似式(e)
Ms(K)=993−514×(C重量%)1/2−20×Si重量%+23×Al重量%−46×Mn重量%−30×Cr重量%−21×Ni重量%−9×Cu重量%−20×Mo重量% ・・・(e)
によって算出され、またQは冷却温度303K(ケルビン絶対温度)で与えられるので、残留オーステナイト量の調整が容易に実施できることがわかる。
尚、前記近似式(e)において、前記C重量%は前記マルテンサイト母相中のC含有量であり、前記Si重量%は前記マルテンサイト母相中のSi含有量であり、前記Al重量%は前記マルテンサイト母相中のAl含有量であり、前記Mn重量%は前記マルテンサイト母相中のMn含有量であり、前記Cr重量%は前記マルテンサイト母相中のCr含有量であり、前記Ni重量%は前記マルテンサイト母相中のNi含有量であり、前記Cu重量%は前記マルテンサイト母相中のCu含有量であり、前記Mo重量%は前記マルテンサイト母相中のMo含有量である。
本実施の形態において、前記鋳鉄材にMnが0.7〜5重量%含有され、前記マルテンサイト母相中のMn濃度が2〜4重量%であり、前記近似式(e)で与えられるMs温度が95〜260℃に調整され、前記マルテンサイト母相中に残留オーステナイトが10〜50体積%残留されることが好ましい。
なお、Ni、Cuの分配係数はそれぞれγKNi:0.3、γKCu:0であり、これらは、セメンタイトの黒鉛化を促進する元素であるが、Mnよりも効率的にマルテンサイト母相中に濃縮し、オーステナイトを顕著に安定化する元素であり、焼入れ性を高め、残留オーステナイトを形成する元素であることから積極的に含有させることが好ましい元素である。また、マトリックス母相における2重量%Cuのオーステナイトの安定化作用(後述する)と上記Ms温度降下作用は1重量%Niに相当する。
また、より耐焼付き性に優れた特殊炭化物、窒化物、炭窒化物等のより硬質な粒子を分散させることが耐摩耗性の改善に有効である。多量に添加したCr,Mnはセメンタイト中に36重量%以上に固溶することができるが、MoとWについてはMoが2重量%、Wが1.5重量%、さらに、VとTiについてはVが0.6重量%まで、Tiがほぼ0重量%しか固溶することができない。これらの合金元素のほとんどが特殊炭化物、窒化物として析出するために、セメンタイトをより安定化して黒鉛化を防止する機能をほとんど持たずに、前述の黒鉛を分散させた鋳鉄材に耐焼付き性と耐摩耗性を改善するMo、W、V、Ti等の特殊炭化物を効率的に分散させることができる。またさらに、より耐焼付き性に優れ、極めて硬質なMC炭化物を形成するV、Ti、Nb、Zr、Ta、Hf等の合金元素を高速度鋼に倣って1重量%以上添加し、2〜10重量%のMC型炭化物を分散させることによって耐焼付き性と耐摩耗性の改善を図ることが好ましい。
つまり、本実施の形態において、前記鋳鉄材には、V,Ti,Zr,Nb,Taからなる群から選択された一種以上の合金元素が1〜5重量%含有されるとともに、前記マルテンサイト母相中には前記合金元素が主体となるMC型炭化物、窒化物および炭窒化物の少なくとも一種が2〜10体積%分散されていることが好ましい。
さらに、前記固溶炭素濃度が調整されたマルテンサイト母相を形成させる前記(方法2)および前記(方法3)の方法については、鋳造工程において片状黒鉛、球状黒鉛および芋虫状黒鉛の少なくとも一の黒鉛がフェライトおよび(フェライト+パーライト)の少なくとも一方の組織からなる母相中に分散した鋳鉄材料においては、A1温度以上に加熱して、上記黒鉛を一部固溶させて、前記固溶炭素濃度にした後に、焼入れることが必要となる。またさらに、上記A1温度以上に加熱後に、一旦冷却し、母相をパーライト組織化したものを焼入れることがより好ましい。また、上記鋳造工程において、大きな共晶セメンタイトがマルテンサイト、ベイナイト、パーライト組織中に分散した鋳鉄材においては、黒鉛化のためやセメンタイト中にCr等を濃縮させるための熱処理後に焼入れすることが好ましい。また、上記焼入れ方法として、前記のような急速な誘導加熱によって摺動面を焼入れすることが好ましく、とりわけ、A1温度〜(900〜1100℃)の焼入れ温度範囲を150℃/sec以上、好ましくは500℃/sec以上の加熱速度で加熱した後に焼入れることが好ましい。これによって、大きな晶出セメンタイト以外にマルテンサイト母相中に未固溶な状態で微細なセメンタイトを分散させることができる。なお、マルテンサイト相中にパーライト状にセメンタイトが分散する組織は、フローティングシールの摺動面における潤滑油の潤滑性を高めることから、鋳鉄系耐摩耗摺動材料として好ましい組織である。
前述したように本実施の形態は、2〜5重量%の炭素、0.5〜6重量%のSiおよび0.3〜5重量%のCrを含有し、Al,Mn,Ni,Cu,Co,Mo,W,V,Ti,Zr,Nb,Ta,P,B,Ca,Sの群から選択された一種以上を含有する鋳鉄材を用いることにより、0.15〜0.6重量%の炭素が固溶されたマルテンサイト母相と、前記マルテンサイト母相中に分散された5〜70体積%のセメンタイトおよび0.1〜10体積%のMC型炭化物の少なくも一方の第1分散物と、前記マルテンサイト母相中に分散された1〜15体積%の黒鉛および1〜20体積%のCu合金相の少なくとも一方の第2分散物と、を具備し、前記第1分散物と前記第2分散物との総量が5〜70体積%であるFe系シール摺動部材を作製するものである。
前記黒鉛は、鋳鉄の凝固過程で形成される片状、球状、芋虫状の少なくとも一種の黒鉛であってもよいが、できるだけ多くのセメンタイトを分散させるとともに、前記固体潤滑剤となる極軟質な黒鉛をより微細に、かつ均一に分散させるために、本実施の形態においては、一旦白鋳鉄化したものを黒鉛化焼鈍し、平均粒径が15μm以下の粒状黒鉛であることが好ましい。また、上記黒鉛化焼鈍条件を適正化することによって、前記大きな共晶セメンタイトの均質・分散化を図りながら、多量のセメンタイト(15〜50体積%)を残存させ、耐焼付き性と耐摩耗性を向上させることができる。
なお、セメンタイトの分散量は上記のように15〜50体積%とすることが好ましい。また、黒鉛分散量は、固体潤滑剤およびオイルポケットとしての黒鉛の潤滑改善作用が明らかに出現する1体積%を下限値とし、従来の鋳鉄中の黒鉛最大量である15体積%を上限とするが、その潤滑改善作用が飽和し、強靭性を備えた10体積%を上限値とすることがより好ましい。なお、黒鉛量の下限値は、摺動材料の耐焼付き性の改善作用が1体積%の粒子分散量で顕著に発現することを参考にしているが、3体積%以上の黒鉛を分散させることがより好ましい。
さらに、一般的にCu合金粒子は鉄系合金材との耐凝着性に優れることから摺動材料としてよく利用される。さらに、上記マルテンサイト母相中に分散するCu合金相が軟質であり、摺動時にフローティングシール材中の炭化物によってわずかに摩耗され、摺動面への潤滑油の供給を補助するオイル溜まりを形成し、摺動面における潤滑改善作用を示す。摺動面における微小なヒートクラックが発生した場合であっても、そのクラックの拡大を抑制する作用が顕著である。これらのことから、本実施の形態においては、潤滑改善作用を示し始める1体積%を、マルテンサイト母相中のCu合金相の下限分散量とすることが好ましい。また、Cu合金相は析出分散によるフローティングシール部材の脆弱化を招かないが、軟質Cu合金粒子の増加に伴って、フローティングシール部材の耐摩耗性が低下することから、マルテンサイト母相中のCu合金相の上限分散量を10体積%とすることが好ましい。
なお、上記マルテンサイト母相やパーライト状にセメンタイトを分散させたマルテンサイト母相を形成させる方法においては、焼入れ処理が必要となるために、その製造コストの経済性が問題になるので、鋳造時の冷却速度を高めて、鋳造過程でマルテンサイト母相を形成させることが好ましい。凝固過程において軟質なフェライト相が析出した場合においては、耐焼付き性と耐摩耗性が改善されない問題がある。とりわけ、Siは顕著なフェライト安定化元素である。マルテンサイト母相(加熱時はオーステナイト母相)の固溶炭素濃度が0.15〜0.5重量%で、2〜6.5重量%の高濃度なSiを含有する鋳鉄材においては、フェライトが析出しやすく、このフェライトの析出を防止するためには、適正なオーステナイト安定化元素を添加することが必要となる。そこで、本実施の形態においては、少なくともオーステナイト母相中のMn、Ni、Cuのうちの一種以上が総量で2〜7重量%含有されることが好ましい。
図1は、4.5重量%のSiを含有したときのFe−4.5重量%Si−C−M(合金元素)系の(フェライト+オーステナイト)/オーステナイト相平衡縦断面状態図を熱力学的に計算したものである。0.2〜0.5重量%の固溶炭素濃度のオーステナイト母相(焼入れ後にマルテンサイト)を得るためには、Mn、Ni、Cuなどのオーステナイト安定化元素の添加が極めて有効であり、(Mn+Ni+0.5×Cu)が合計で2重量%以上が含有されていることが好ましいことがわかるが、逆にMo、W、Vなどの合金元素がオーステナイトに多量に含有されることは好ましくない。前記のように1重量%以上のMo、Wがオーステナイトに固溶する場合には、Mo特殊炭化物が析出するために、Mo、Wがオーステナイトを不安定化させる作用は限定されることがわかる。さらにVについては、V(MC型炭化物)として析出するために、オーステナイト中にほとんど固溶しないことから、フェライト安定化作用は極めて限定されることがわかる。したがって、本実施の形態では、マルテンサイト母相中のMn濃度が2〜4重量%および(Mn+Ni+0.5×Cu)濃度が2〜7重量%の範囲の少なくとも一方で調整されることが好ましいが、Mo、Wが合計で1重量%以下、Niが3重量%以下含有されることがより好ましい。
また、セメンタイトもしくは後述するMC型炭化物がマルテンサイト母相中に多量に分散されるほど、フローティングシール部材としての耐土砂摩耗性が向上するが、馴染み性が悪くなり、シール当り幅が顕著に狭くなり、摺動面における発熱による焼付きやヒートクラックが発生しやすくなる。このために、少なくとも鋳鉄材にMnが0.7〜5重量%含有され、マルテンサイト母相中のMn濃度が2〜4重量%に調整され、あるいは少なくとも鋳鉄材に0.1〜5重量%のMn、1〜2.5重量%のNiおよび1〜10重量%のCuのうち二種以上が含有され、マルテンサイト母相中の(Mn+Ni+0.5×Cu)濃度が2〜7重量%に調整されることが好ましい。そして、前記Ms温度の算出式にしたがって、Ms温度が95〜260℃に調整され、摺動面における馴染み性と靭性を改善するために、マルテンサイト母相中に残留オーステナイトが10〜50体積%存在することが好ましい。
また、前述した本実施の形態における前記鋳鉄材中の共晶セメンタイトの黒鉛化処理を利用する場合には、Cr以外の黒鉛化阻止元素(Mn、Mo)と黒鉛化促進元素のセメンタイト中での濃度と黒鉛化の関係を規定しておくことが重要である。セメンタイト中の合金元素M濃度CΘMは、鋳鉄材の合金元素Mの濃度CMとセメンタイトの分散量VΘ(体積分率)およびγKMから、
CΘM=CM×γKM/(1−VΘ+γKM×VΘ)
の関係式から算出される。そこで、本実施の形態においては、Cr、Mn、Mo、Niを対象にした、
2重量%≦CΘCr+0.3×CΘMn+0.3×CΘMo−CΘNi≦6重量%
の関係式で与えるものとする。下限値の2重量%は前記0.8重量%Crの添加によって一般鋳鉄材が白銑化することを考慮し、その際の共晶セメンタイト中のCr濃度が約1.6重量%であることから設定したものである。さらに、前記5重量%のMnの添加により白銑鉄化し、そのときのセメンタイト中のMn濃度から係数0.3を推定したものである。また、Moのセメンタイト安定化は前記分配係数がほぼ同じであることからMnと同じ係数0.3倍とする。Niは黒鉛化形成元素であるが、後述する実施例におけるニハード鋳鉄材の950×1hrの黒鉛化処理によって、Cr濃度が5.7重量%、Ni濃度が1.91重量%のセメンタイトが十分短時間で黒鉛化することから上限値を6重量%とし、Ni濃度の係数を1と設定するが、好ましくはその上限値が4重量%である。
より具体的には、セメンタイトを35体積%分散させた平均的な鋳鉄材においては各合金元素の添加量が、
2重量%≦0.4×CΘMn+0.4×CΘMo+2.0×CΘCr−0.4×CΘNi≦5重量%
の関係を満足するように鋳鉄材成分が調整されることが好ましい。
残留オーステナイトは、摺動時にその半数以上は馴染み性を取るためにマルテンサイト変態化して硬質化し、未硬化な残留オーステナイトは、軟質であるために、摺動面において前述のオイルポケットとして機能することが期待されるが、多すぎた場合においては耐摩耗性が劣化するために、残留オーステナイトは10〜40体積%の範囲で調整されることが適正である。
さらに、上記マルテンサイト母相の焼戻し軟化抵抗を高めると、より優れた耐摩耗摺動特性を示すので、顕著に焼戻し軟化抵抗性を改善するSi,Al,Mo,V,Wを積極的に添加することが好ましい。とりわけ、マルテンサイト母相中のAlは、Siと同様に顕著に焼戻し軟化抵抗性を高める作用を持ち、さらに、3重量%以上ではFeAl規則相の規則不規則変態性を示し始め、顕著な耐焼付き性改善作用が認められ、さらにまた、AlがNi,Coと共存する場合においては顕著な時効硬化性を示し、AlはSiと同様にセメンタイト中から排出され、マルテンサイト母相中に濃縮されること等の効果を示す。これらのことから、本実施の形態においては、前記鋳鉄材に少なくともAlが0.5〜6重量%添加され、マルテンサイト母相中のAl濃度が1〜12重量%である。また、本実施の形態においては、前記鋳鉄材に1〜7重量%のNiおよび2〜15重量%のCoの少なくとも一方と1〜6重量%のAlが添加されることが好ましい。
また、Coは磁気変態を顕著に上昇させ、炭素、合金元素の拡散係数を低減させることによって、Mo,V,W,Al,Si等の焼戻し軟化抵抗を高めることができる。本実施の形態においても、経済性の観点からCoが15重量%以下で添加されることが好ましい。
またさらに、本実施の形態において、前記マルテンサイト母相中にCu合金相を1〜10体積%分散させるために、鋳造フローティングシール材料中においては、少なくともCuが1〜10重量%添加されることが好ましい。さらに、鋳鉄系耐摩耗摺動材料は、Cu合金相の耐焼付き性を高めるために、分散するCu合金相は3〜12重量%の(Si+Al)を含有するCu−Si−Al系合金からなることが好ましく、また、β相や金属間化合物相が分散されていることが好ましい。
さらに、MC型炭化物は、V,W,Ti,Zr,Nb,Taを主体として形成される炭化物であって、炭化物中で最も硬質であり、耐摩耗性の改善に大きく寄与するものであるが、セメンタイト中への固溶度が小さく、セメンタイトをほとんど安定化させず、黒鉛の析出を阻害しない。このことから、本実施の形態の鋳鉄系耐摩耗摺動材料においては、V,Ti,Zr,Nb,Taからなる群から選択された一種以上の合金元素を1〜5重量%添加することによって2〜10体積%のMC型炭化物、窒化物および炭窒化物の一種以上を分散させ、それにより耐摩耗性を改善することができる。例えばMC型炭化物としてTiCを選定した場合には、TiCの比重がほぼ4.9gr/cmであることから、1〜5重量%のTi添加によって2〜10体積%のTiCが分散し、耐摩耗性が有効に改善される。これら合金元素の上限添加量を5重量%としたのは、前記高速度鋼におけるMC型炭化物量が約10体積%を超えることがないからであり、さらに、前記5重量%を超えるとフローティングシール部材としての初期馴染み性が悪くなるからである。
また、燐化物やMC型炭化物を微量分散させることによって、摺動面における耐焼付き性が顕著に改善されることから、燐化合物以外においても同様の前記粒子分散効果が期待されるので、本実施の形態においては、Fe、V、Tiのうち一種以上の合金元素が主体となる燐化物が総量で0.2〜5体積%(より好ましくは1〜5体積%)分散されていることが好ましく、またMn、Tiの少なくとも一方の合金元素が主体となる硫化物が総量で0.2〜5体積%(より好ましくは1〜5体積%)分散されていることが好ましく、また前記燐化物および前記硫化物が総量で0.2〜5体積%(より好ましくは1〜5体積%)分散されていることが好ましい。
また、本実施の形態においては、前述したFe系シール摺動材料、前述した鋳鉄系耐摩耗摺動材料を、鋳造によって形成したフローティングシール部材に適用することも可能である。また、本実施の形態によるFe系シール摺動部材、例えばフローティングシールは、前記鋳鉄材を用いた鋳造によって形成されることが好ましい。
なお、上記Fe系シール摺動部材、上記フローティングシール部材としては、遠心鋳造法による急冷チルド化鋳鉄を用いて形成されることがより好ましいが、金型を鋳鉄材母相の前記Ms温度以上に加温して遠心鋳造法を実施し、フローティングシール部材を作成し、そのフローティングシール部材をMs温度以上の状態で金型から離型させた後に焼入れ硬化させることによって、鋳造時の割れ発生と歪の低減を図ることがより好ましい。
本発明の実施の形態によるFe系シール摺動部材の製造方法は、2〜5重量%の炭素、0.5〜6重量%のSiおよび0.3〜5重量%のCrを含有し、Al,Mn,Ni,Cu,Co,Mo,W,V,Ti,Zr,Nb,Ta,P,B,Ca,Sの群から選択された一種以上を含有する鋳鉄素材を鋳造する工程を具備するものである。
前記Fe系シール摺動部材は、0.15〜0.6重量%の炭素が固溶されたマルテンサイト母相と、前記マルテンサイト母相中に分散された5〜70体積%のセメンタイトおよび0.1〜10体積%のMC型炭化物の少なくも一方の第1分散物と、前記マルテンサイト母相中に分散された1〜15体積%の黒鉛および1〜20体積%のCu合金相の少なくとも一方の第2分散物と、を有し、前記第1分散物と前記第2分散物との総量が5〜70体積%であることが好ましい。
また、本実施の形態において、前記鋳造する工程は、前記鋳鉄素材を、鋳鉄材母相のMs温度以上に加温された金型を用いた遠心鋳造法により鋳造し、前記金型から離型後に焼入れ処理を行う工程であっても良い。また、前記鋳造する工程の後に、鋳鉄材のA1温度以上に再加熱し、黒鉛化処理を実施後に焼入れ処理を行う工程をさらに具備するものであっても良い。
次に、本発明の実施の形態による鋳鉄系耐摩耗摺動材料について、図面を参照しつつより詳細に説明する。
図2には、本発明の一実施形態に係る転輪アッセンブリの要部構造を示す図である。本実施形態は、図示のような転輪アッセンブリにおけるフローティングシール装置に適用された例を示すものである。
本実施形態に係る転輪アッセンブリ36は、転輪リテーナ49と、この転輪リテーナ49に支持される転輪シャフト50およびその転輪シャフトに外嵌される転輪ブッシュ51を介して配される転輪ローラ52とが、互いに回転可能に連結された構造となっている。この転輪アッセンブリ36において、フローティングシール装置53は、シール面が相接するように配される一対のシールリング54,54と、各シールリング54に外嵌されるOリング55を備え、向き合った一対のシール面が、圧縮して取り付けられたOリング55の弾性力によって転輪シャフト50の軸方向に押し付けられ、適当な面圧で接しながら摺動し、外部からの水、土砂等の侵入と内部からの潤滑油の漏洩を防止するように構成されている。そして、一対のシールリング54,54のシール面は、5〜70体積%のセメンタイトおよび1〜10体積%のMC型炭化物の少なくとも一方を含有し、さらに、黒鉛およびCu合金相の少なくとも一方が硬質なマルテンサイト母相中に分散する組織に調整されている。
また、歯車減速装置等に利用される大径のフローティングシール装置においては、そのシール面での摺動速度が速くなり、とりわけ、耐焼付き性と耐ヒートクラック性に優れたフローティングシールリングが必要とされるが、本実施形態によれば、前記摺動速度が1m/secを超えて使用する鋳造フローティングシール材料中に黒鉛およびCu合金相の少なくとも一方を3〜10体積%の範囲で分散させることが好ましい。
本実施形態によれば、より耐焼付き性と耐ヒートクラック性に優れたフローティングシール装置を提供することができるが、より耐ヒートクラック性と耐焼付き性を改善するためには、マルテンサイト相中の固溶炭素濃度が0.15〜0.7重量%になるようにSi,Cr,Cu,Mo,W,Vの合金元素添加量を調整することや、焼入れ温度を850〜1000℃に設定し、150℃/sec以上の急速加熱焼入れすることが好ましく、セメンタイトとしては60〜180℃に磁気変態点を持つようにV,Mn,Crを主として調整され、かつ潤滑性を促進する黒鉛およびCu合金相の少なくとも一方が分散されることが好ましい。なお、マルテンサイト母相中に固溶された炭素の濃度が0.15〜0.6重量%になるようにSi、Crの合金元素の添加量を調整することや、マルテンサイト母相中の(Si+Al)濃度を4重量%以上に高め、規則不規則変態性を持たせること、顕著な硬質粒子分散効果を発現するMC型炭化物、燐化物、硫化物をマルテンサイト母相中に分散させること、潤滑性を促進する黒鉛およびCu合金相の少なくとも一方が分散されることが好ましい。さらに、鋳鉄材中のセメンタイトのキュリー温度を60〜150℃になるようにV、Mn、Crで調整し、摺動面での潤滑油が劣化し始める際の吸熱作用を持たせることが好ましい。なお、黒鉛化処理で粒状黒鉛を分散させた後に、焼入れ処理を実施する場合においては、急速加熱が可能な誘導加熱によって150℃/sec以上の昇温速度で850〜1050℃の焼入れ温度にすばやく加熱し、その後に急冷することによって上記マルテンサイト母相中に共晶セメンタイトと粒状黒鉛以外にパーライト状の板状セメンタイトや粒状セメンタイトを分散させることが好ましい。
図3には、鋳造法で製作される鋳鉄材中に晶出し、分散する黒鉛形状が示されている。この図3に示される、(a)片状黒鉛、(b)球状化黒鉛、(c)芋虫状黒鉛が凝固過程で多く出現するが、その母相はフェライト、アシキュラーフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトの各組織をとる。本実施形態においては、0.3重量%以上のCrを添加することによってパーライト組織となるべき鋳鉄材を凝固過程で急冷して母相をマルテンサイト化したものであって、さらに、少なくともマルテンサイト母相中にはMC型炭化物を1〜10体積%分散させた鋳鉄系耐摩耗摺動材料である。
また、図4には、後述する実施例におけるNihard比較材の鋳込み組織(a)と黒鉛化処理後の熱処理組織(b)がそれぞれ示されている。図4(a)に示されるように、チルド化された鋳鉄組織はマルテンサイト母相中に共晶セメンタイトが多量に分散したものとなり、その後950℃で黒鉛化焼鈍し、その温度から直接焼入れした組織は、図4(b)に示すように、粗大な共晶セメンタイトが分解して微細な粒状黒鉛を析出し、マルテンサイト母相中に、その黒鉛と微細化、かつ均一分散化された未分解な共晶セメンタイトが分散された組織となり、強靭性化の点で好ましい。
また、鋳鉄系耐摩耗摺動材料の母相中へのCuの固溶度は、炭素量やNi、Mn量によって変動するが、ほぼ5〜6重量%程度であることから、7重量%以上のCu添加によってCu合金相が上記鋳造素材において粒状に分散した組織を得ることができる。従って、図3,図4の各組織中にCu合金相が分散した組織も本発明の範疇に入る。
また、鋳鉄系耐摩耗摺動材料の耐焼付き性と耐摩耗性をより高める観点からは、セメンタイトやVの炭化物を分散させることが好ましい。
次に、本発明の実施例による鋳鉄系耐摩耗摺動材料について、図面を参照しつつ説明する。
本実施例では、表1に示される鋳造フローティングシール材料と鋳造比較材料をシェル鋳型に鋳造したものと、この鋳造後に950℃で再加熱(黒鉛化)して焼入れ処理を施し、その後図5に示されるフローティングシール形状に研削後、図中に示すシール面にラップ加工を施したものとを作成し、図6の概略図に示すフローティングシールテスターでその耐焼付き性について評価した。
なお、フローティングシールテスターは、作成した試験片を、シール面が相接するように配される一対のシールリングとする、フローティングシール装置を用いて、一方のシールリングと接するOリングを固定し、他方のシールリングと接するOリングに荷重及びシールリング中心軸周りの回転を与える。耐焼付き性は、フローティングシール同士の押し付け荷重63kgf(線圧P:2kgf/cm、線圧=荷重/シール位置長さ)を一定にしてEO#30のエンジンオイルを封入し、空気中での回転速度(周速V、単位:m/sec)を変えながら摺動抵抗が急激に増大する焼付く時点でのPV値(P×V)で評価した。その結果が表1の「PV値1」および「PV値2」の各欄に合わせて示されている。なお、「PV値1」は鋳造しっ放しのフローティングシール、「PV値2」は上記熱処理を施したフローティングシールに関して求めた結果である。さらに、表2には各合金元素について調査した分配係数γKMを用いて計算されるチルド化鋳鉄材のマルテンサイト母相中の固溶炭素濃度、セメンタイト分散率、母相中の合金元素濃度、セメンタイト中の合金元素濃度を参考に示した。
No.1,2は鋳造比較材のニハード(Ni−hard)チルド鋳鉄材に類する合金である。比較材のチルド鋳鉄、ニハード鋳鉄材とNo.1,2の結果を比べることによって、Si増量によりマルテンサイト母相中の固溶炭素濃度を低下させることによって耐焼付き性が改善され、さらに、熱処理(950℃×1hr)により分散析出させた黒鉛によってシール面における耐焼付き性がより改善されていることがわかる。図4(a),(b)に、ニハード鋳鉄材の代表的な組織が示されているが、シール面における油漏れを起こさせない平均粒径が約5μmの微細な黒鉛粒子と、微細で均一に分散された共晶セメンタイト粒が分散していることがわかる。しかし、顕著な共晶セメンタイトの低減が起こり、耐摩耗性の不足が心配されるので、より軽度な耐土砂摩耗性用シールとして有効である。
No.3,4はさらに、No.1,2の耐摩耗性改善水準としてVのMC型炭化物(V)を分散させたものであって、V炭化物が分散されることによって、顕著な耐焼付き性の改善が認められるとともに、耐摩耗性が改善されることがわかる。また、黒鉛加熱処理による黒鉛の析出が認められ、黒鉛粒子分散による耐焼付き性の改善が認められ、耐摩耗性を重視するフローティングシール材料として有効である。このことから、Vの代わりにTi,Zr,Nb等のMC型炭化物を析出分散させる合金元素の添加が有効であるといえる。とりわけ、Tiは黒鉛化を阻害しない元素であることからより好ましい元素である。
No.5,6,7,8はさらに、Si添加量を増量し、マルテンサイト母相中のSi濃度を5重量%以上となるようにし、FeSiの規則相変態性を発現させたもの、さらに、それにV型炭化物を分散させたものであるが、耐焼付き性と耐摩耗性に極めて優れたフローティングシール材料が得られることがわかった。また、高濃度にVを添加し、Vを多量に分散させたNo.8では、Mnを増量して、残留オーステナイトを多量に残留させることによって、シール面での馴染み性が改善され、より耐焼付き性が改善されていることがわかる。
No.9,10はMnを増量し、前記共晶セメンタイト、共晶セメンタイトと黒鉛粒子が分散するマルテンサイト母相中の残留オーステナイト量を高め、さらに、FeP燐化物を分散させた作用とマルテンサイト母相中のMo添加による焼戻し軟化抵抗性を高めたものであるが、鋳造比較材に比べて優れた耐焼付き性が得られることがわかる。また、このことから、燐化物に代わる硫化物などの分散によっても耐焼付き性の改善が図れるといえる。
No.11,12は、Cu合金相を分散させた影響を調べた水準であるが、Cu合金相の増大によって耐焼付き性が改善される。また、Cu合金相にAlが含有されるNo.13がより改善されることから、そのCu−Si−Al系合金相の増加によって耐焼付き性が改善される。
また、No.14はAl添加によるマルテンサイト母相のFeAl規則相変態性を高めた水準であり、耐焼付き性が顕著に改善され、さらに、No.14においてはNiを増量して時効硬化性を付与しているのでその耐摩耗性に優れる。また、これらの水準に前記MC型炭化物を分散させることがより耐摩耗性を高めるのに有効である。
尚、本発明は上記実施の形態及び上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
Fe−4.5重量%Si−C−M(合金元素)系の(フェライト+オーステナイト)/オーステナイト相平衡縦断面状態図。 本発明の一実施形態に係る転輪アッセンブリの要部構造を示す図。 鋳鉄材中に分散する黒鉛形状を示す図。 Ni−hard合金の鋳込み組織(a)と熱処理組織(b)を示す写真。 フローティングシールの形状を示す断面図。 フローティングシールテスターの概略図。
符号の説明
36 転輪アッセンブリ
49 転輪リテーナ
50 転輪シャフト
51 転輪ブッシュ
52 転輪ローラ
53 フローティングシール装置
54 シールリング

Claims (17)

  1. シール摺動面を備えたフローティングシールのシールリングであって、
    前記シールリングは、2〜5重量%の炭素、0.5〜6重量%のSi、0.1〜5重量%のMn、1〜7重量%のNiおよび0.3〜5重量%のCrを含有し、下記(a)〜(f)の群から選択された一以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋳鉄材を用いて形成され、
    前記シール摺動面に形成され、0.15〜0.6重量%の炭素が固溶されたマルテンサイト母相と、
    前記マルテンサイト母相中に分散された5〜70体積%のセメンタイトおよび0.1〜10体積%のMC型炭化物の少なくも一方の第1分散物と、
    前記マルテンサイト母相中に分散された1〜15体積%の黒鉛および1〜20体積%のCu合金相の少なくとも一方の第2分散物と、
    を具備し、
    前記第1分散物と前記第2分散物との総量が5〜70体積%であることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
    (a)0.5〜6重量%のAl
    (b)1〜10重量%のCu
    (c)2〜15重量%のCo
    (d)合計で0.5〜2重量%のMoおよびWの少なくとも一方
    (e)合計で1〜5重量%のV,Ti,Zr,Nb,Taからなる群から選択された一種以上
    (f)0.01〜1.5重量%のP
  2. 請求項1において、前記鋳鉄材にはSiが1.8〜6重量%含有され、前記マルテンサイト母相中のSi濃度が3〜6.5重量%であることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  3. 請求項1において、前記鋳鉄材にはSiが1〜3重量%含有されるとともにMoおよびWが合計で0.5〜2重量%含有され、前記マルテンサイト母相中のSi濃度が2〜4重量%であるとともにMoおよびWの合計濃度が0.5〜1重量%であることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  4. 請求項1において、前記鋳鉄材には0.5〜1.5重量%のSiおよび0.9〜5重量%のCrが含有され、前記マルテンサイト母相中のSiおよびCrの合計濃度が2〜4重量%であり、前記セメンタイト中のCr濃度が2.5〜15重量%であることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  5. 請求項1において、前記マルテンサイト母相中のセメンタイトの分散量が15〜50体積%であり、前記マルテンサイト母相中に平均粒径が15μm以下の粒状黒鉛が1〜10体積%分散されていることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  6. 請求項1において、前記マルテンサイト母相中のセメンタイトの分散量が15〜50体積%であり、前記マルテンサイト母相中のCu合金相の分散量が1〜10体積%であることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  7. 請求項1において、前記マルテンサイト母相中のMC型炭化物の分散量が2〜10体積%であり、前記マルテンサイト母相中の黒鉛の分散量が1〜10体積%であることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  8. 請求項1において、前記鋳鉄材にMnが0.7〜5重量%含有され、前記マルテンサイト母相中のMn濃度が2〜4重量%であり、下記式で与えられるMs温度が95〜260℃に調整され、前記マルテンサイト母相中に残留オーステナイトが10〜50体積%残留されることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
    Ms=993−514×(C重量%)1/2−20×Si重量%+23×Al重量%−46×Mn重量%−30×Cr重量%−21×Ni重量%−9×Cu重量%−20×Mo重量%
    但し、前記C重量%は前記マルテンサイト母相中のC含有量であり、前記Si重量%は前記マルテンサイト母相中のSi含有量であり、前記Al重量%は前記マルテンサイト母相中のAl含有量であり、前記Mn重量%は前記マルテンサイト母相中のMn含有量であり、前記Cr重量%は前記マルテンサイト母相中のCr含有量であり、前記Ni重量%は前記マルテンサイト母相中のNi含有量であり、前記Cu重量%は前記マルテンサイト母相中のCu含有量であり、前記Mo重量%は前記マルテンサイト母相中のMo含有量である。
  9. 請求項1において、前記鋳鉄材には、1〜2.5重量%のNiおよび1〜10重量%のCuの少なくとも一方が含有され、前記マルテンサイト母相中のMnとNiと0.5×Cuとの合計濃度が2〜7重量%であり、下記式で与えられるMs温度が95〜260℃に調整され、前記マルテンサイト母相中に残留オーステナイトが10〜50体積%残留されることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
    Ms=993−514×(C重量%)1/2−20×Si重量%+23×Al重量%−46×Mn重量%−30×Cr重量%−21×Ni重量%−9×Cu重量%−20×Mo重量%
    但し、前記C重量%は前記マルテンサイト母相中のC含有量であり、前記Si重量%は前記マルテンサイト母相中のSi含有量であり、前記Al重量%は前記マルテンサイト母相中のAl含有量であり、前記Mn重量%は前記マルテンサイト母相中のMn含有量であり、前記Cr重量%は前記マルテンサイト母相中のCr含有量であり、前記Ni重量%は前記マルテンサイト母相中のNi含有量であり、前記Cu重量%は前記マルテンサイト母相中のCu含有量であり、前記Mo重量%は前記マルテンサイト母相中のMo含有量である。
  10. 請求項1において、前記鋳鉄材にはAlが0.5〜6重量%含有され、前記マルテンサイト母相中のAl濃度が1〜12重量%であることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  11. 請求項1において、前記鋳鉄材には2〜15重量%のCoと1〜6重量%のAlが含有されていることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  12. 請求項1において、前記鋳鉄材には、V,Ti,Zr,Nb,Taからなる群から選択された一種以上の合金元素が1〜5重量%含有されるとともに、前記マルテンサイト母相中には前記合金元素が主体となるMC型炭化物、窒化物および炭窒化物の少なくとも一種が2〜10体積%分散されていることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  13. 請求項1において、前記マルテンサイト母相中には、Fe、V、Tiのうち一種以上の合金元素が主体となる燐化物およびMn、Tiのうち一種以上の合金元素が主体となる硫化物の少なくとも一方が総量で0.2〜5体積%分散されていることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  14. 請求項1において、前記シールリングが前記鋳鉄材を用いた鋳造によって形成されることを特徴とするフローティングシールのシールリング。
  15. シール摺動面を備えたフローティングシールのシールリングの製造方法であって、
    2〜5重量%の炭素、0.5〜6重量%のSi、0.1〜5重量%のMn、1〜7重量%のNiおよび0.3〜5重量%のCrを含有し、下記(a)〜(f)の群から選択された一以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋳鉄素材を鋳造する工程を具備し、
    前記シールリングは、0.15〜0.6重量%の炭素が固溶されたマルテンサイト母相と、
    前記マルテンサイト母相中に分散された5〜70体積%のセメンタイトおよび0.1〜10体積%のMC型炭化物の少なくも一方の第1分散物と、
    前記マルテンサイト母相中に分散された1〜15体積%の黒鉛および1〜20体積%のCu合金相の少なくとも一方の第2分散物と、を有し、
    前記第1分散物と前記第2分散物との総量が5〜70体積%であることを特徴とするフローティングシールのシールリングの製造方法。
    (a)0.5〜6重量%のAl
    (b)1〜10重量%のCu
    (c)2〜15重量%のCo
    (d)合計で0.5〜2重量%のMoおよびWの少なくとも一方
    (e)合計で1〜5重量%のV,Ti,Zr,Nb,Taからなる群から選択された一種以上
    (f)0.01〜1.5重量%のP
  16. 請求項15において、前記鋳造する工程は、前記鋳鉄素材を、鋳鉄材母相のMs温度以上に加温された金型を用いた遠心鋳造法により鋳造し、前記金型から離型後に焼入れ処理を行う工程であることを特徴とするフローティングシールのシールリングの製造方法。
  17. 請求項15において、前記鋳造する工程の後に、鋳鉄材のA1温度以上に再加熱し、黒鉛化処理を実施後に焼入れ処理を行う工程をさらに具備することを特徴とするフローティングシールのシールリングの製造方法。
JP2005028516A 2004-03-08 2005-02-04 Fe系シール摺動部材及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4799004B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005028516A JP4799004B2 (ja) 2004-03-08 2005-02-04 Fe系シール摺動部材及びその製造方法
CN200510053153.3A CN1667133A (zh) 2004-03-08 2005-03-04 铁系密封滑动构件及其制造方法
US11/071,469 US8257514B2 (en) 2004-03-08 2005-03-04 Ferrous seal sliding parts and producing method thereof
US11/882,823 US20070289714A1 (en) 2004-03-08 2007-08-06 Ferrous seal sliding parts and producing method thereof

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004063751 2004-03-08
JP2004063751 2004-03-08
JP2005028516A JP4799004B2 (ja) 2004-03-08 2005-02-04 Fe系シール摺動部材及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005290549A JP2005290549A (ja) 2005-10-20
JP4799004B2 true JP4799004B2 (ja) 2011-10-19

Family

ID=34914533

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005028516A Expired - Fee Related JP4799004B2 (ja) 2004-03-08 2005-02-04 Fe系シール摺動部材及びその製造方法

Country Status (3)

Country Link
US (2) US8257514B2 (ja)
JP (1) JP4799004B2 (ja)
CN (1) CN1667133A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2571016C1 (ru) * 2014-09-29 2015-12-20 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун

Families Citing this family (38)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4799006B2 (ja) * 2004-03-01 2011-10-19 株式会社小松製作所 Fe系シール摺動部材およびその製造方法
CN101778959A (zh) * 2007-06-26 2010-07-14 国立大学法人岩手大学 片状石墨铸铁及其制造方法
KR101091839B1 (ko) * 2009-03-10 2011-12-12 캐터필라정밀씰 주식회사 씰 제조용 합금주철, 씰 및 씰의 제조 방법
US9249887B2 (en) 2010-08-03 2016-02-02 Dresser-Rand Company Low deflection bi-metal rotor seals
CN102191425A (zh) * 2011-05-26 2011-09-21 阳山县联合铸锻有限公司 可锻耐磨合金铸铁
CN102260817B (zh) * 2011-07-21 2013-05-01 芜湖市金贸流体科技股份有限公司 高强度耐高温耐腐蚀铸铁的制造方法
CN103946610B (zh) 2012-08-13 2016-09-21 株式会社小松制作所 浮动密封件
DE112012005191B4 (de) 2012-08-13 2020-06-18 Komatsu Ltd. Gleitdichtung
RU2492266C1 (ru) * 2012-09-03 2013-09-10 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2499074C1 (ru) * 2012-11-06 2013-11-20 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2510421C1 (ru) * 2013-02-19 2014-03-27 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
JP6195727B2 (ja) * 2013-04-25 2017-09-13 虹技株式会社 鋳鉄鋳物とその製造方法
RU2529333C1 (ru) * 2013-07-08 2014-09-27 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
CN103624492B (zh) * 2013-11-27 2016-07-06 浙江广力工程机械有限公司 一种提高浮动油封机械性能的加工工艺
CN103757519A (zh) * 2013-12-13 2014-04-30 芜湖金鹰机械科技开发有限公司 一种含硼高硬度低铬多元合金铸球材料及其制备方法
RU2554234C1 (ru) * 2014-04-08 2015-06-27 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
CN104178702A (zh) * 2014-08-08 2014-12-03 无棣向上机械设计服务有限公司 一种高韧性耐磨合金材料及其制备方法
RU2561541C1 (ru) * 2014-09-29 2015-08-27 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2556454C1 (ru) * 2014-09-29 2015-07-10 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
CN104846179A (zh) * 2015-05-05 2015-08-19 柳州金特新型耐磨材料股份有限公司 一种平地机用耐磨钢主刀板的热处理方法
CN105018860A (zh) * 2015-08-05 2015-11-04 启东市佳宝金属制品有限公司 一种耐磨合金
RU2610097C1 (ru) * 2015-10-19 2017-02-07 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2625191C1 (ru) * 2016-10-10 2017-07-12 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2624543C1 (ru) * 2016-10-10 2017-07-04 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
CN106435343A (zh) * 2016-10-18 2017-02-22 河池学院 用于伺服机械手的滑轨的合金
RU2626258C1 (ru) * 2016-10-31 2017-07-25 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2629409C1 (ru) * 2016-12-13 2017-08-29 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2629410C1 (ru) * 2016-12-13 2017-08-29 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2629406C1 (ru) * 2016-12-13 2017-08-29 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2634336C1 (ru) * 2017-02-06 2017-10-25 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2634532C1 (ru) * 2017-02-06 2017-10-31 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
KR101877511B1 (ko) * 2017-09-29 2018-07-11 주식회사동방금속 공작기계용 합금주철 및 그 제조방법
RU2657393C1 (ru) * 2017-10-04 2018-06-13 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2659517C1 (ru) * 2017-10-04 2018-07-02 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2657954C1 (ru) * 2017-11-20 2018-06-18 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
RU2661381C1 (ru) * 2017-11-27 2018-07-16 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун
US11618937B2 (en) * 2019-10-18 2023-04-04 GM Global Technology Operations LLC High-modulus, high-strength nodular iron and crankshaft
CN113862609B (zh) * 2021-09-03 2022-05-27 北京科技大学 利用渗碳、表面石墨化提高中低碳钢工件耐磨减摩的方法

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US2973564A (en) * 1957-05-02 1961-03-07 Int Nickel Co Method of graphitizing cast iron
US3518128A (en) 1966-07-23 1970-06-30 Nippon Piston Ring Co Ltd Process for manufacturing high-strength,wear-resistant piston rings
US3532561A (en) * 1967-05-11 1970-10-06 Gen Electric Ferrous metal die casting process and products
JPS5149573B2 (ja) * 1971-09-09 1976-12-27
DE2233148C3 (de) * 1972-07-06 1975-07-03 Goetzewerke Friedrich Goetze Ag, 5673 Burscheid Verfahren zur Herstellung von SchleuderguBstücken aus legierten Werkstoffen mit verschleißfesten Oberflächen
JPS5159007A (ja) 1974-11-21 1976-05-22 Komatsu Mfg Co Ltd Taishokutaimamoseihakusenchutetsu
JPS5830382B2 (ja) * 1979-10-26 1983-06-29 株式会社クボタ 高クロムワ−クロ−ル
JPS5920448A (ja) * 1982-07-23 1984-02-02 Nippon Piston Ring Co Ltd フロ−テイングシ−ル
JPS5920447A (ja) * 1982-07-23 1984-02-02 Nippon Piston Ring Co Ltd フロ−テイングシ−ル
JPS60200950A (ja) * 1984-03-27 1985-10-11 Nippon Piston Ring Co Ltd フロ−テイングシ−ル
JPS60247037A (ja) * 1984-05-22 1985-12-06 Mitsui Eng & Shipbuild Co Ltd Cv鋳鉄製シリンダライナ
DE3942091C1 (ja) * 1989-12-20 1991-08-14 Etablissement Supervis, Vaduz, Li
EP0525932B1 (en) 1991-07-09 1996-09-11 Hitachi Metals, Ltd. Compound roll and method of producing same
US5478523A (en) * 1994-01-24 1995-12-26 The Timken Company Graphitic steel compositions
DE19525863A1 (de) * 1995-07-15 1997-01-16 Ae Goetze Gmbh Gleitringdichtung für die Laufwerke von Gleiskettenfahrzeugen
JP3909902B2 (ja) * 1996-12-17 2007-04-25 株式会社小松製作所 高耐面圧用鋼部品およびその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2571016C1 (ru) * 2014-09-29 2015-12-20 Юлия Алексеевна Щепочкина Чугун

Also Published As

Publication number Publication date
US20070289714A1 (en) 2007-12-20
JP2005290549A (ja) 2005-10-20
US20050194071A1 (en) 2005-09-08
CN1667133A (zh) 2005-09-14
US8257514B2 (en) 2012-09-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4799004B2 (ja) Fe系シール摺動部材及びその製造方法
JP4799006B2 (ja) Fe系シール摺動部材およびその製造方法
JP4820562B2 (ja) Fe系耐摩耗摺動材料および摺動部材
JP4390526B2 (ja) 転動部材およびその製造方法
JP5122068B2 (ja) Fe系耐摩耗摺動材料
CN102605273B (zh) 一种钢结硬质合金及其制备方法
CN103834854B (zh) 一种用于热处理生产线推拉车的等温淬火球墨铸铁辊轮及其生产方法
JP2004285474A (ja) 転動部材およびその製造方法
JPS5910988B2 (ja) 球状黒鉛鋳鉄及びその製造方法
JP2015537113A (ja) 亜共析軸受鋼
CN1103830C (zh) 固体自润滑高耐磨合金铸件材料
CN1332264A (zh) 一种超高硫具有多种复合自润滑相的高耐磨合金铸造材料
RU2443795C2 (ru) МНОГОФУНКЦИОНАЛЬНЫЕ АНТИФРИКЦИОННЫЕ НАНОСТРУКТУРИРОВАННЫЕ ИЗНОСОСТОЙКИЕ ДЕМПФИРУЮЩИЕ С ЭФФЕКТОМ ПАМЯТИ ФОРМЫ СПЛАВЫ НА МЕТАСТАБИЛЬНОЙ ОСНОВЕ ЖЕЛЕЗА СО СТРУКТУРОЙ ГЕКСАГОНАЛЬНОГО ε-МАРТЕНСИТА И ИЗДЕЛИЯ С ИСПОЛЬЗОВАНИЕМ ЭТИХ СПЛАВОВ С ЭФФЕКТОМ САМООРГАНИЗАЦИИ НАНОСТРУКТУРНЫХ КОМПОЗИЦИЙ, САМОУПРОЧНЕНИЯ И САМОСМАЗЫВАНИЯ ПОВЕРХНОСТЕЙ ТРЕНИЯ, С ЭФФЕКТОМ САМОГАШЕНИЯ ВИБРАЦИЙ И ШУМОВ
CN1360082A (zh) 整体自润滑耐磨复合材料
KR100368540B1 (ko) 인성 및 강도가 우수한 열간·온간 겸용 저합금고속도공구강 및 그의 제조방법
JP3723706B2 (ja) 高強度球状黒鉛鋳鉄及びその製造方法
JP2012036465A (ja) 耐摩耗性に優れた球状黒鉛鋳鉄品
JP4912385B2 (ja) 転動部材の製造方法
CN105886889A (zh) 一种高性能金属材料制造的载重汽车钢板弹簧支架
JP2896144B2 (ja) 耐摩耗性の優れた合金鋼
CN107779753B (zh) 一种低淬透性高碳齿轮钢及热处理工艺
Kantipudi et al. Metals and their Tribological Applications
JPH0466956B2 (ja)
JPS60128239A (ja) 形鋼圧延用複合ロ−ル外殻用鋳造合金
JPH0575819B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071221

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100419

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100427

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100621

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110510

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110708

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110802

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110802

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140812

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees