JP4883018B2 - 表面改質方法とパワートレイン系部品 - Google Patents

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Description

本発明は、表面改質方法とそれより作製されたパワートレイン系部品に関する。
高速度工具鋼に対する表面改質方法において、焼入れ工程後、焼戻しを兼ねてハイブリッド成膜処理を行うことで、生産効率を高める方法がある(特許文献1)。そのハイブリッド成膜処理は、高速度工具鋼の表面にPVD(Physical Vapor Deposition)皮膜又は窒化皮膜からなる第1膜の形成と第1回目の焼戻しとを同時に行い、その後、第1膜上にDLC(Diamond Like Carbon)成膜又はMoS(硫化モリブデン)皮膜からなる第2膜の形成と第2回目の焼戻しとを同時に行うことで、組織の粗大化と軟化による信頼性の劣化に対処している。
基材に対して表面保護膜としてDLC膜を密着させる方法が特許文献2に開示されている。それによると、高速度鋼、ステンレス鋼、炭素鋼などの基材表面を423〜623Kに加熱して金属膜を形成することにより、金属膜を構成する金属が基材へ拡散し、DLC膜の密着性を向上させている。
一方、基材の熱処理技術に関し、転がり軸受の耐転がり疲れ性を向上させる方法が特許文献3に開示されている。それによると、転動部品に深さ0〜50μmの範囲で最大圧縮残留応力を100kgf/mmとし、かつ、深さ300μmで最大圧縮残留応力を40kgf/mm以上とすることにより、異物混入潤滑環境下で転がり軸受の耐転がり疲れ性を向上させる。
さらに、短時間急速加熱による輪郭焼入れにより疲労強度は向上するが、硬さが支配的要因であるため、トライポロジーについては考慮されていない。
特開2004−323898号公報 特許第4022048号公報 特開平04−54312号公報
ところで、パワートレイン系部品としての歯車についての損傷は、歯元の曲げ疲労破壊、衝撃破壊、ピッチ円直径位置での歯面疲労破壊に大別される。急速高周波加熱を行うことで、歯元の曲げ疲労及び衝撃破壊、ピッチ円直径位置での内部破壊に起因する歯面疲労破壊、即ちスポーリングは大幅に改善されることが知られている。しかしながら、高周波焼入れ処理を施しても、ピッチ円直径位置での表面破壊型の歯面疲労、即ちピッチングは急速高周波加熱でも改善されるが浸炭処理に比べ改善されない。これは、急速高周波加熱処理を施した場合と比べて浸炭処理を施した方が軟化抵抗がより高くなるためである。
なお、特許文献1に開示された手法では高速度工具鋼を対象としていることから、焼戻し処理を兼ねた成膜工程は823〜873K程度の高温でなされていると推察される。高温での成膜工程により二次硬化が生じ、焼入れの時より硬度が増す。高速度工具鋼では、W(タングステン)やCr(クロム)などの元素が比較的多いことから、一度にマルテンサイトにならず、一部オーステナイトが残留する。そのため、特許文献1に開示された手法では、一回目の焼戻しにより残留オーステナイトがマルテンサイトに変態し、残留オーステナイトから炭化物が排出されることで硬度が増す。二度目の焼戻しにより、一回目の焼戻しで変態したマルテンサイトを安定化させている。ところが、炭素鋼からなる基材を高速度工具鋼のように高温で処理すると、組織の粗大化及び軟化により強度が低下するという問題が生じる。
特許文献2に開示された手法では、焼戻しにより基材が軟化する点について配慮されていない。
本発明は、上述した点に鑑み、急速高周波焼入れ処理の弱点を克服し、高い疲労強度を維持したままで、優れた摩擦特性を付与する表面改質方法と、それにより作製されるパワートレイン系部品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の表面改質方法は、急速高周波焼入れにより基材表面から所定の深さ硬化させる焼入れ工程と、中間層として金属含有DLC膜を形成し、その後、被膜層として金属含有のDLC膜と金属非含有のDLC膜とを交互に積層する成膜工程と、を含む。ここで、中間膜の形成は、金属ターゲットに印加するスパッタリング電力を徐々に低下させて行う。成膜工程は473K以下で行う。
本発明のパワートレイン系部品は、基材と基材上に形成された中間層と中間層上に形成された被膜層とからなり、基材が所定の深さの硬化層を有し、中間層が金属含有DLC膜であって被膜層側に近づくに伴い硬さが増すように形成された層であり、被膜層は金属含有のDLC膜と金属非含有のDLC膜とが交互に積層してなる。ここで、被膜層の最表面層は金属非含有のDLC膜である。基材における硬化層は500〜2000MPaの圧縮残留応力を有する。所定の深さとは、例えば1.5mm以下である。
本発明の表面改質方法によれば、先ず適切な深さで硬化層を形成するように基材に焼入れ処理を行い、次に中間層及び被膜層を順に堆積する。よって、中間層で基材との密着性が向上し、積層構造の被膜層が堆積される。このときの膜堆積温度が例えば473K以下と低温、即ち必要以上に焼戻しされない温度であるので、基材が軟化しない。よって、急速高周波焼入れ処理の浸炭処理に対する不足分を被膜層としてのDLC膜で補うことができる。
本発明のパワートレイン系部品によれば、上述の本発明の表面改質方法により作製することができるので、高い疲労強度を維持したまま、材料表面に優れた磨耗特性を付与することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
(パワートレイン系部品)
本発明の実施形態に係るパワートレイン系部品について説明する。
図1は、実施形態に係るパワートレイン系部品10の断面図である。パワートレイン系部品10は、図1に示すように、基材11と、この基材11上に形成された中間層12と、この中間層12上に形成された被膜層13と、からなる。
基材11は例えば炭素鋼からなり、各種駆動伝達部品の形状を有する。基材11には所定の深さを有するよう硬化層が形成されている。耐疲労性が要求されるパワートレイン系部品10では、0.3mm以上1.5mm以下の硬化層が形成されることが好ましい。耐摩耗性が要求されるパワートレイン系部品10では、1mm以上1.5mm以下の硬化層が形成されることが好ましい。この硬化層は急速高周波加熱により焼入れ処理を行うことで形成される。なお、硬化層の深さは、ビッカース硬さ計で測定される測定断面硬さ分布により求められる。また、硬化層が500〜2000MPaの圧縮残留応力を有することが好ましい。
中間層12は、W(タングステン)などの金属を含むDLC膜である。この中間層12は基材11との密着性を向上させるために設けられている。中間層12は、金属含有DLC膜であって被膜層側に近づくに伴い硬さが増すように形成された層である。よって、中間層12は、被膜層側が基材側より硬い傾斜構造となっている。
被膜層13は、W(タングステン)などの金属を含むDLC膜(以下、「Me-DLC膜」とする)13aと金属を含まないDLC膜13bとが交互に積層してなる。ここで、最表面側は金属非含有のDLC膜13bである。Me-DLC膜13aはDLC膜と比べて軟質であり、金属の含有%が増えると低硬度となる。Me−DLC膜13aは被膜弾性のためと被膜層13の強靭化を向上させるために設け、DLC膜13bは耐摩耗性、耐摺動性特性を確保するためである。被膜層13が低硬度のMe−DLC膜13aと高硬度のDLC膜13bとを交互に積層してなるので、内部応力も緩和する。なお、被膜層13で最も中間層側は、Me−DLC膜13aでも金属非含有のDLC膜13bでもよい。
(表面改質方法)
本発明の実施形態に係る表面改質方法について説明する。この表面改質方法は、前述のパワートレイン系部品10の作製方法でもある。
第1工程として、基材11に焼入れ処理を行う。
この焼入れ処理は、例えば急速高周波焼入れによりなされ、所定の深さだけ硬化処理が施される。ここで、急速高周波焼入れとは、高周波電力を投入して1秒以下という短時間で急速に加熱して焼入処理を行うことをいう。焼入れ処理後、表面が研磨され、超音波洗浄がなされる。これは、あとでコーティングする膜が2〜3μmと薄いことに起因し、基材表面粗さの影響を抑えるためである。即ち、基材11の表面粗さを緩和させるためである。ここで、基材11には、調質処理と所定の形状及び大きさを有するように切削等の加工が予め施されている。
高周波焼入れにより基材11の表面から所定の深さだけ硬化させることで、硬化層に圧縮残留応力を生じさせる。滑りを伴う転動疲労の内部せん断応力を考慮すると、有効硬化深さが1.5mmより深くても効果は変わらないので、有効硬化深さは1.5mmで十分である。1.5mm以下であれば目的に応じて適宜有効硬化深さを設定することが可能である。例えば、滑りを伴う転動疲労の内部せん断応力よりも、表面の圧縮残留応力を高くしたいのであれば、有効硬化層を浅くすればよい。なお、有効硬化深さはJIS規格で定められている手順で求めた値である。
第2工程として成膜処理を行う。その際、PVD法などの各種成膜方法を採用することができ、特にUBMS(Unbalanced Magnetron Sputtering)法を用いることが好ましい。以下の説明ではUBMS法を前提に説明する。
図2は第2工程における成膜処理を説明するための図である。横軸はプロセス時間で、縦軸はスパッタリング電力である。
焼入れ処理を施した基材11において、改質を施す部位又は全表面に、中間層12と被膜層13とを順に堆積させる。成膜温度は、必要以上に焼戻しされない温度以下であればよく、例えば423±50Kが好ましい。この温度範囲であれば、基材11の表面から所定の深さまでに形成された硬化層が必要以上に軟化しないためである。よって、急速高周波加熱による焼入れ処理の特性が失われない。
中間層12と被膜層13とを次の要領で連続して堆積させる。なお、使用する成膜装置にはWターゲットとカーボンターゲットとを備え、各ターゲットに対向する位置に基材11が配置される。この成膜装置では、Wターゲットに印加するスパッタ電力とカーボンターゲットに印加するスパッタ電力とを独立に制御することができる。
先ず、カーボンターゲットに印加する電力を一定とする一方、Wターゲットに印加する電力を徐々に低下させることで、W含有%が徐々に減少したMe-DLC膜を基材11に堆積させる。よって、中間層12はWとDLCとによる傾斜構造となり、中間層12内で深さが浅くなるに従い硬度が徐々に増す。
引き続いて、被膜層13として、Wを所定の割合で含んだMe−DLC膜13aとDLC膜13bとをそれぞれ所定の厚みで交互に繰り返して堆積させる。被膜層13は、Me−DLC膜13aとDLC膜13bとが交互に積層してなる。よって、硬度の異なる膜が互い違いに積層される。ここで、Me−DLC膜13aに含まれる金属、例えばWは例えば5〜15%前後である。被膜層13において、パワートレイン系部品表面における硬度が高い方が好ましい場合にはWの含有割合を例えば5%と低下させる一方、パワートレイン系部品表面における硬度が通常より低い方が好ましい場合にはWの含有割合を例えば15%と増加させる。Wターゲットに印加する電力を制御することで、Me−DLC膜中のWの含有%を調整することができる。
Wターゲット及びカーボンターゲットに印加する電力は具体的には次の通りである。Wターゲットに印加する電力を、t〜tの間でPw1一定し、その後時間t〜tの間でPw1から徐々に例えば直線的に減少させ、時間tでPw2になると、堆積終了までの時間t〜tの間、間隔t=(t−t)/nでデューティ比を50%としてPw2とゼロとを所定の回数繰り返す。なお、nは繰り返し数であり、Me−DLC膜13a及びDLC膜13bの各積層回数である。
カーボンターゲットに印加する電力を、t〜tの間でゼロから徐々に例えば直線的に上昇させ、時間tでPc1になると堆積終了までのt〜tの間Pc1一定とする。
この連続プロセスにより、中間層12では徐々に硬度が高くなり、被膜層13では低硬度の膜と高硬度の膜とが積層される。成膜時の基材温度は、成膜可能な温度であればよく、423±50Kの範囲が好ましい。基材11が好ましい温度に達すると、中間層12の堆積を開始し、被膜層13の堆積終了に伴い、基材の温度を下げる。
試験片における基材の素材として、構造用炭素鋼S45Cを用いた。構造用炭素鋼S45Cは、重量%として、Cを0.47%、Siを0.24%、Mnを0.67%、Pを0.022%、Sを0.012%、Niを0.07%、Crを0.20%、Cuを0.14%含んでいる。炉加熱により同材に調質処理を施した。具体的には1173Kの焼入れと873Kの焼戻しを行った。
調質処理後、図3及び図4に示す形状、寸法を有する疲労試験用試験片と摩擦磨耗試験片との各基材を作製した。図3は実施例1における疲労試験用試験片の基材1の側面図であり、図4は実施例1における摩擦磨耗試験片の基材2を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
疲労試験用試験片における基材1は、直径16mm、長さ180mmの棒材であり、長手方向の中心部位が太さ7mmとなるよう断面曲率20mmで窪んでおり、そのセンターが角度60°、深さ0.5mm、断面曲率0.4mmで切り欠き部を有している。
摩擦磨耗試験片の基材2は、直径φ15mmで、高さ10mmの円柱状である。
先ず、第1工程として、各基材1,2に急速高周波焼入れ処理を行った。図3及び図4にハッチングを付した領域に急速高周波焼入れ処理を施した。図5及び6はそれぞれ、図3、図4に示す各基材の急速高周波焼入れ処理を行う熱サイクルを示す図である。
疲労試験用試験片の基材1は、図5に示すように、加熱開始から0.22秒で1248Kに加熱し、その後、水で急速に冷却した。硬化層の深さは0.5mmであった。
磨耗摩擦試験用試験片の基材2は、図6に示すように、加熱開始から1秒で1246Kに加熱し、その後水で急速に冷却した。その結果、硬化層の深さは1.0mmであった。
急速高周波焼入れを施した基材1,2は、その表面を研磨して超音波洗浄を行った。これにより、基材の表面粗さを緩和させた。
次に、第2工程として、UBMSにより成膜処理を行った。
図7は、第2工程での成膜処理における基材の温度を示す図である。横軸は時間(分)であり、縦軸は温度(K)である。約100分間で室温から423Kまで昇温し、その後、423Kで一定に維持して成膜を行い、その後、加熱を止めて降温した。
基材が423Kまで昇温して成膜を開始した。カーボンターゲットに印加する電力がPc1に達すると一定とする一方、Wターゲットに印加する電力を低下させ、中間層を堆積させた。これにより、WとDLCとの傾斜構造を有する約2μmの厚さの中間層を基材上に堆積させた。
中間層12の堆積に続けて、基材温度を423Kのままに維持し、カーボンターゲットに印加する電力がPc1になると一定とする一方、Wターゲットに印加する電力をON/OFFさせた。これにより、被膜層13として、Wを10%含有したMe−DLC膜13aとWを含まないDLC膜13bを交互に5層ずつ積層させた。Me−DLC膜13aとDLC膜13bは何れも100nmの厚みを有し、被膜層13全体の厚みを約1μmとした。つまり、最表面には、金属を含まないDLC膜13bを堆積させた。
(比較例)
比較例として、実施例と同様に第1工程のみ行い、第2工程を行わなかった。なお、応力除去のため真空加熱炉を用いて423Kで2時間保温した後、炉冷した。
<硬度>
被膜の硬度をダイナミックス超微小硬さ計で測定した。なお、ダイヤモンド圧子で負荷荷重を5mNとした。実施例1では、約2250Hvであったが、比較例では約700Hvであった。つまり、成膜処理により硬さが約3倍増加した。
<磨耗摩擦試験結果>
ボールオンディスク型磨耗摩擦試験機により磨耗摩擦試験を行った。なお、ボール材はSUJ2であり、負荷荷重を2Nとし、摺動速度を20mm/秒とした。
図8は、磨耗摩擦試験結果を示す図である。横軸は摺動距離(Km)、縦軸は摩擦係数μ(無次元)である。実施例1では、摺動開始直後では摩擦係数μは0.4と高いものの、摺動距離が0.3km以降では0.1程度と低下している。これは、相手材への攻撃性が低いためと推察される。一方、比較例では、摺動距離の増加によりやや増加し、全体として0.4〜0.5程度であった。
<疲労特性>
小野式回転曲げ疲労試験機による疲労試験を行った。なお、回転数を300rpmとした。図9は、疲労試験結果を示す図である。横軸は、破断繰り返し数Nfであり、左縦軸は公称応力(MPa)であり、右縦軸は実応力(MPa)である。図中、●プロットが実施例1の結果を示し、○プロットが比較例の結果を示す。
実施例1、比較例を問わず、同様の疲労寿命曲線が得られた。実施例1で作製した試験片について疲労試験を行った後の様子を観察したところ、中間層及び被膜層の状態も良好で、マクロ的な割れも生じていなかった。また、基材から中間層や被膜層が剥がれておらず、基材との界面も密着していた。
<ローラピッチング特性>
ローラピッチング試験機によりローラピッチング特性を調べた。図10は、ローラピッチング特性の結果を示す図である。横軸は繰り返し数(回)であり、縦軸は面圧(MPa)である。図中、◆プロットが実施例1の結果を示し、■プロットが比較例の結果を示す。3200MPaの面圧で比較すると、寿命は、実施例1では1.5×10回であったのに対し、比較例では2.5×10回であった。よって、被膜処理により約6倍性能が向上した。
実施例1と同様な素材、即ち、構造用炭素鋼S45Cを用いて平歯車を作製した。作製した歯車の主な諸元は、モジュール2、歯数40、圧力角20°、歯先円直径126mm、厚さ20mmとした。この歯車に対し、実施例1と同様に急速高周波焼入れ処理を施した。図11は、実施例2に関し、急速高周波焼入れの際の熱サイクルを示す図である。図の横軸は時間であり、縦軸は温度である。図11に示すように、加熱開始から時間t11で温度Tまで加熱し、所定時間経過後、別の加熱開始から時間t12で温度Tまで急速に加熱することで、急速高周波焼入れを行う。ケース1では、時間t11を1.5秒、温度Tを695Kとし、時間t12を0.19秒、温度Tを1143Kとした。ケース3では、時間t11を1.5秒、温度Tを907Kとし、時間t12を0.27秒、温度Tを1237Kとした。ケース4では、時間t11を8.0秒、温度Tを761Kとし、時間t12を0.23秒、温度Tを1261Kとした。ここで、最初の加熱が所謂予熱処理で、二番目の加熱が本加熱処理であり、この本加熱処理が急速高周波焼入れ処理に該当する。
図12は、実施例2の結果として、硬化層深さ(mm)と圧縮残留応力(MPa)の関係を示す図表である。図表から、有効硬化層深さが0.3〜0.82mmのとき、圧縮残留応力が1000MPa以上と高い値を示している。このように、高い圧縮残留応力が生じている基材に対し実施例1と同様に、傾斜構造の中間層と積層構造の被膜層とを順に堆積させた。
実施例1と同様の試験評価を行ったところ、ローラピッチング特性、動作時における歯元応力の低減、低騒音の点で性能が向上したことを確認した。よって、本発明に係る処理方法を施すことにより、歯車の寿命を延ばすことができた。
なお、有効硬化深さは、モジュール3以下の歯車においては0.3〜0.8mmが好適であり、第2工程に沿って成膜を行うことが好ましく、歯車以外のパワートレイン系部品、例えばカムやシャフト等では、有効硬化深さは1.5mm程度でよいことを確認した。
本発明の実施形態に係るパワートレイン系部品の断面図である。 本発明の実施形態に係る表面改質方法に関し、第2工程における成膜処理を説明するための図である。 実施例1における疲労試験用試験片の基材の側面図である。 実施例1における摩擦磨耗試験片の基材を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。 図3に示す基材の急速高周波焼入れ処理を行う熱サイクルを示す図である。 図4に示す基材の急速高周波焼入れ処理を行う熱サイクルを示す図である。 第2工程における成膜処理での基材の温度を示す図である。 磨耗摩擦試験結果を示す図である。 疲労試験結果を示す図である。 ローラピッチング特性の結果を示す図である。 実施例2に関し、急速高周波焼入れの際の熱サイクルを示す図である。 実施例2の結果として、硬化層深さと圧縮残留応力との関係を示す図表である。
符号の説明
1,2,11 基材
10:パワートレイン系部品
12:中間層
13:被膜層
13a:金属含有DLC膜(Me−DLC膜)
13b:DLC膜

Claims (6)

  1. 急速高周波焼入れにより基材表面から所定の深さ硬化させる焼入れ工程と、
    金属ターゲットに印加するスパッタリング電力を徐々に低下させて中間層として金属含有DLC膜を形成し、その後被膜層として金属含有のDLC膜と金属非含有のDLC膜とを交互に積層する成膜工程と、を含む、表面改質方法。
  2. 前記成膜工程は473K以下で行う、請求項1に記載の表面改質方法。
  3. 基材とこの基材上に形成された中間層とこの中間層上に形成された被膜層とからなり、
    上記基材が所定の深さの硬化層を有し、
    上記中間層が金属含有DLC膜であって上記被膜層側に近づくに伴い硬さが増すように形成された層であり、
    上記被膜層が金属含有DLC膜と金属非含有のDLC膜とが交互に積層してなる、パワートレイン系部品。
  4. 前記被膜層の最表面層は金属非含有のDLC膜である、請求項に記載のパワートレイン系部品。
  5. 前記基材における硬化層が500〜2000MPaの圧縮残留応力を有する、請求項に記載のパワートレイン系部品。
  6. 前記所定の深さが1.5mm以下である、請求項に記載のパワートレイン系部品。
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