JP2000002183A - 圧縮機のオイル分離構造 - Google Patents

圧縮機のオイル分離構造

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JP2000002183A JP10167109A JP16710998A JP2000002183A JP 2000002183 A JP2000002183 A JP 2000002183A JP 10167109 A JP10167109 A JP 10167109A JP 16710998 A JP16710998 A JP 16710998A JP 2000002183 A JP2000002183 A JP 2000002183A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 区画部材を収容室に対して簡単な作業で組み
込むことが可能な圧縮機のオイル分離構造を提供するこ
と。 【解決手段】 吐出通路18はリヤハウジング13に形
成され、吐出室25から外部冷媒回路に向かう吐出冷媒
ガスの通路となる。収容室41は、リヤハウジング13
において吐出通路18上に設けられている。区画部材4
4は収容室41に圧入固定され、収容室41を区画する
ことで、吐出通路18上に分離室49を形成する。オイ
ル戻し通路31は分離室49とクランク室15とを連通
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、車両空調
システムに適用される圧縮機において、吐出冷媒ガス中
にミスト状として含まれているオイルを分離するための
オイル分離構造に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の圧縮機においては、図5(a)
及び図5(b)に示すようなオイル分離構造を備えたも
のが存在する。すなわち、ハウジング101 は図示しない
圧縮機構を収容する。吐出通路102 はハウジング101 に
形成され、圧縮機構から外部冷媒回路へ向かう吐出冷媒
ガスの通路となる。収容室103 はハウジング101 におい
て吐出通路102 上に形成されている。収容室103 は横断
面円形をなし、従って、内周面103aは円筒面をなしてい
る。区画部材104 は、円盤状をなす第1区画壁部105 、
同じく円盤状をなす第2区画壁部106 、及び両区画壁部
105,106 を連結する連結部107 とが一体化されてなる。
前記区画部材104 は、第1区画壁105 側から収容室103
に挿入され、収容室103 の内周面103aにおいて奥側に形
成された位置決め用段差103bに当接する位置にまで押し
込められている。
【0003】係合溝103cは環状をなし、収容室103 の内
周面103aにおいて開口側に形成されている。テーパサー
クリップ108 は外周部108aが先細りとなるテーパ状をな
し、この外周部108aを以って係合溝103cに挿入係合され
ている。区画部材104 は、テーパサークリップ108 によ
って収容室103 からの抜けが防止され、さらには、位置
決め用段差103bとの間で押え込まれている。
【0004】図5(b)に示すように、前記テーパサー
クリップ108 は、外周部108aの係合溝103cに対する入り
込み量を変更することで、加工精度が低いこと等に起因
して、係合溝103cの位置決め用段差103bからの高さhに
多少の誤差が生じたとしても、区画部材104 を位置決め
用段差103bとの間で確実に押え込むことができる。図5
(b)において実線は、係合溝103cの高さhが、区画部
材104 の高さを下回った時のテーパサークリップ108 の
状態を示している。図5(b)において二点鎖線は、係
合溝103cの高さhが、区画部材104 の高さとほぼ同じに
なった時のテーパサークリップ108 の状態を示してい
る。
【0005】前記のようにして区画部材104 が組み込ま
れた収容室103 は、その奥側に分離室109 が第1区画壁
部105 によって区画形成されるとともに、その開口側に
連通室110 が第1及び第2区画壁部105,106 によって区
画形成されている。連通路111 は第1区画壁105 及び連
結部107 の中心部に形成され、分離室109 と連通室110
とを連通する。オイル戻し通路112 はハウジング101 に
形成され、吐出圧領域である分離室109 と吐出圧領域よ
りも低圧な低圧領域とを連通する。
【0006】さて、圧縮機構から吐出通路102 を介して
外部冷媒回路へ向かう吐出冷媒ガスは、分離室109 にお
いて円筒内面103aに沿って旋回される。従って、吐出冷
媒ガス中にミスト状として含まれるオイルが、遠心力の
作用によって分離される。オイルが分離された吐出冷媒
ガスは、連通路111 及び連通室110 を介して外部冷媒回
路に排出される。一方、吐出冷媒ガスから分離されたオ
イルは、分離室109 と低圧領域との圧力差から、オイル
戻し通路112 を介して低圧領域に移動され、圧縮機内部
の各摺動部分に潤滑液及び冷却液として供給される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来技
術においては、係合溝103cの高さhが、加工誤差に起因
して区画部材104 の高さを大きく下回ると、テーパサー
クリップ108 を係合溝103cに対して係合させることがで
きなくなる。
【0008】また、係合溝103cの高さhが区画部材104
の高さを上回ると、区画部材104 を位置決め用段差103b
との間で押え込むことができなくなる。区画部材104 を
位置決め用段差103bとの間で押え込むことができない
と、例えば、区画部材104 が、分離室109 における吐出
冷媒ガスの旋回流に運動力を付与されて回転する。従っ
て、第1及び第2区画壁部105,106 の外周面105a,106a
が、収容室103 の内周面103aと摺動されて摩耗損傷する
おそれがあった。また、区画部材104 が収容室103 にお
いてガタつき、圧縮機が発する振動や異音の要因となっ
ていた。
【0009】このような問題を解決するために従来は、
高さの異なる区画部材104 を複数準備していた。そし
て、区画部材104 を収容室103 に組み込む作業の際に
は、係合溝103cの高さhを測定し、この測定高さhに合
わせて区画部材104 の高さを選択することで、係合溝10
3cの高さhの加工誤差を区画部材104 側で吸収するよう
にしていた。このように、区画部材104 を収容室103 に
組み込む作業は面倒な作業であって、作業時間が長引い
ていた。
【0010】本発明は、上記従来技術に存在する問題点
に着目してなされたものであって、その目的は、区画部
材を収容室に対して簡単な作業で組み込むことが可能な
圧縮機のオイル分離構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1の発明では、ハウジングにおいて吐出通路上
には収容室が設けられ、収容室には区画部材が圧入固定
され、区画部材によって収容室を区画することで分離室
を形成してなるオイル分離構造である。
【0012】請求項2の発明では、前記ハウジングと区
画部材とは同系の金属材料により構成されている。請求
項3の発明では、前記ハウジング及び区画部材はアルミ
ニウム系の金属材料により構成されている。
【0013】請求項4の発明では、前記ハウジングと区
画部材とは異系の金属材料により構成されている。請求
項5の発明では、前記ハウジング及び区画部材の一方は
アルミニウム系の金属材料よりなり、ハウジング及び区
画部材の他方は黄銅系の金属材料により構成されてい
る。
【0014】請求項6の発明では、前記ハウジングと区
画部材との間において少なくとも一方の接触面に、固体
潤滑剤よりなるコート層を形成したものである。請求項
7の発明では、前記ハウジング或いは区画部材において
コート層を形成する面には、その面粗度を高める粗面処
理が施されている。
【0015】請求項8の発明では、前記分離室は円筒内
面を有し、導入された吐出冷媒ガスを円筒内面に沿って
旋回させることで、遠心力の作用によって吐出冷媒ガス
からオイルを分離する構成である。
【0016】請求項9の発明では、前記区画部材は、収
容室を区画して分離室又は連通室の一方を形成する第1
区画壁部、及び収容室を第1区画壁部とで区画して分離
室又は連通室の他方を形成する第2区画壁部を備え、連
通室は吐出通路において分離室の下流側に配置され、第
1区画壁部には分離室に対して円筒内面の中心軸線位置
で開口して分離室と連通室とを連通する連通路が形成さ
れている。
【0017】請求項10の発明では、前記区画部材は、
第1及び第2区画壁部を連結して一体化する連結部を備
えている。 (作用)上記構成の請求項1の発明においては、圧縮機
構から吐出通路を介して外部冷媒回路へ向かう吐出冷媒
ガスは、分離室を通過する。分離室は、吐出冷媒ガス中
に含まれているオイルを分離する。オイルが分離された
吐出冷媒ガスは、分離室から外部冷媒回路に排出され
る。一方、吐出冷媒ガスから分離されたオイルは、分離
室と低圧領域との圧力差から、オイル戻し通路を介して
低圧領域に移動され、やがては圧縮機内部の各摺動部分
に供給される。
【0018】さて、前記分離室は、吐出通路上に設けら
れた収容室を区画部材によって区画することで形成され
ている。区画部材は収容室に圧入固定される。従って、
区画部材を収容室に対して押し込むのみの簡単な作業
で、区画部材を収容室に組み込むことが可能となる。
【0019】請求項2の発明においては、ハウジングと
区画部材とが同系の金属材料、つまり、熱膨張率が近い
金属材料により構成されている。従って、例えば、収容
室(ハウジング)と区画部材との間の圧入固定関係が、
熱影響により解除されてしまうことを防止できる。
【0020】請求項3の発明においては、例えば、ハウ
ジング及び区画部材を鉄系の金属材料により構成した場
合と比較して、圧縮機の軽量化に有利となる。請求項4
の発明においては、ハウジングと区画部材とが異系の金
属材料により構成されており、区画部材の収容室に対す
る圧入時にカジリが発生することを防止できる。
【0021】請求項5の発明においては、例えば、ハウ
ジング及び区画部材の一方を鉄系の金属材料により構成
した場合と比較して、圧縮機の軽量化に有利となる。ま
た、ハウジング及び区画部材の他方は、例えば、鉄系の
金属材料と比較して、アルミニウム系の金属材料に熱膨
張率が近い黄銅系の金属材料により構成されている。従
って、例えば、収容室(ハウジング)と区画部材との間
の圧入固定関係が、熱影響により解除されてしまうこと
を防止できる。
【0022】請求項6の発明においては、区画部材の収
容室に対する組み込みを、コート層が低摩擦係数である
ことを利用してスムーズに行い得る。また、ハウジング
と区画部材とが同系の金属材料であった場合には、コー
ト層が両者間に介在されることで、区画部材の収容室に
対する圧入時にカジリが発生することを防止することが
できる。
【0023】請求項7の発明においては、区画部材の表
面に対する固体潤滑剤の食い付き状態が良好となり、強
固なコート層を形成できる。請求項8の発明において
は、分離室に導入された吐出冷媒ガスは、円筒内面に沿
って旋回される。従って、遠心力の作用によって、吐出
冷媒ガスからオイルが分離される。
【0024】請求項9の発明においては、連通路が分離
室に対して円筒内面の中心軸線位置で開口されている。
従って、分離室の吐出冷媒ガスは、旋回流の中心側の領
域、つまり、オイルが遠心力の作用によって存在し難く
なっている領域から、連通路を介して連通室に取り出さ
れる。従って、分離室のオイルが、吐出冷媒ガスの流れ
に乗って連通室に持ち出されてしまう量、ひいては外部
冷媒回路に持ち出されてしまう量を低減できる。
【0025】請求項10の発明においては、第1及び第
2区画壁部が連結部によって一体化されてなる。従っ
て、区画部材を収容室に組み込む作業の際、区画部材の
準備や取り扱いが容易となる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、車両空調システ
ムに適用される可変容量型圧縮機のオイル分離構造にお
いて具体化した一実施形態について説明する。
【0027】先ず、可変容量型圧縮機の構成について説
明する。図1に示すように、フロントハウジング11は
シリンダブロック12の前端に接合固定されている。リ
ヤハウジング13は、シリンダブロック12の後端に弁
・ポート形成体14を介して接合固定されている。クラ
ンク室15は、フロントハウジング11とシリンダブロ
ック12とに囲まれて区画形成されている。前記フロン
トハウジング11、シリンダブロック12及びリヤハウ
ジング13は圧縮機のハウジングをなし、アルミニウム
合金等のアルミニウム系の金属材料により構成されてい
る。ハウジング11〜13をアルミニウム系の金属材料
により構成することで、例えば、鉄系の金属材料により
構成した場合と比較して、圧縮機の軽量化に有利であ
る。
【0028】回転軸16は、クランク室15を貫通する
ようにして、フロントハウジング11とシリンダブロッ
ク12との間に回転可能に架設支持されている。回転軸
16は、図示しない外部駆動源としての車両エンジン
に、電磁クラッチ等のクラッチ機構を介して連結されて
いる。従って、回転軸16は、車両エンジンの動作時に
おいてクラッチ機構の接続により回転駆動される。
【0029】回転支持体19は、クランク室15におい
て回転軸16に止着されている。斜板20は、回転軸1
6においてその軸線L方向へスライド移動可能でかつ傾
動可能に支持されている。ヒンジ機構21は回転支持体
19と斜板20との間に介在されている。斜板20は、
ヒンジ機構21の介在により、回転軸16に対して傾動
可能でかつ回転軸16と一体的に回転可能となってい
る。斜板20の半径中心部が、シリンダブロック12側
に移動すると斜板20の傾斜角が減少され、逆に回転支
持体19側に移動すると斜板20の傾斜角が増大され
る。
【0030】シリンダボア12aはシリンダブロック1
2に貫設形成されている。片頭型のピストン22は、一
端側がシリンダボア12aに収容され、他端側がシュー
23を介して斜板20の外周部に係留されている。ピス
トン22は、斜板20の回転運動によりシリンダボア1
2a内で前後往復運動される。
【0031】吸入室24及び吐出室25は、リヤハウジ
ング13にぞれぞれ区画形成されている。吸入ポート2
6、吸入弁27、吐出ポート28及び吐出弁29は、そ
れぞれ弁・ポート形成体14に形成されている。そし
て、外部冷媒回路から吸入室24に導入された冷媒ガス
は、ピストン22の上死点側から下死点側への移動によ
り、吸入ポート26及び吸入弁27を介してシリンダボ
ア12aに吸入される。シリンダボア12aに吸入され
た冷媒ガスは、ピストン22の下死点側から上死点側へ
の移動により所定の圧力にまで圧縮されるとともに、吐
出ポート28及び吐出弁29を介して吐出室25へ吐出
される。
【0032】マフラ部17は、シリンダブロック12の
外郭部とリヤハウジング13の外郭部とに跨って設けら
れている。マフラ室17aはマフラ部17に形成され、
外部冷媒回路に連通される。吐出通路18はリヤハウジ
ング13に形成され、吐出室25とマフラ室17aとを
連通する。従って、吐出室25に吐出された吐出冷媒ガ
スは、吐出通路18及びマフラ室17aを介して外部冷
媒回路に向けて排出される。マフラ室17aを通過する
吐出冷媒ガスは、マフラ室17aによる膨張型のマフラ
作用によって圧力脈動が減衰される。
【0033】抽気通路30は、回転軸16の軸心に形成
された通路30aと、シリンダブロック12及び弁・ポ
ート形成体14に形成された通孔30bとからなる。抽
気通路30はクランク室15と吸入室24とを連通す
る。給気通路31は吐出圧領域(後述する分離室49)
とクランク室15とを連通する。電磁弁である容量制御
弁32は、給気通路31上に介在されている。容量制御
弁32は、ソレノイド32aと、ソレノイド32aの励
磁・消磁により給気通路31を開閉する弁体32bとを
備えている。ソレノイド32aは、冷房負荷等に応じた
図示しないコンピュータの制御によって励磁・消磁され
る。従って、給気通路31の開度が弁体32bにより調
節され、クランク室15の圧力が変更されて、ピストン
22の前後に作用するクランク室15の圧力とシリンダ
ボア12aの圧力との差が調整される。その結果、斜板
20の傾斜角が変更され、ピストン22のストローク量
が変更されて、吐出容量が調整される。
【0034】つまり、ソレノイド32aが消磁されると
弁体32bによって給気通路31が開かれ、吐出圧領域
(49)とクランク室15とが連通される。従って、吐
出圧領域(49)の高圧冷媒ガスが給気通路31を介し
てクランク室15へ供給され、クランク室15の圧力が
上昇される。クランク室15の圧力が上昇すると斜板2
0の傾斜角が最小となり、ピストン22のストローク量
が小さくなって吐出容量が最小となる。ソレノイド32
aが励磁されると弁体32bによって給気通路31が閉
じられ、クランク室15の圧力が抽気通路30を介した
放圧に基づいて低下してゆく。クランク室15の圧力が
低下すると斜板20の傾斜角が最大となり、ピストン2
2のストローク量が大きくなって吐出容量が最大とな
る。
【0035】次に、前記可変容量型圧縮機が備えるオイ
ル分離構造について説明する。図2及び図3に示すよう
に、収容室41は、リヤハウジング13において吐出通
路18上に形成され、吐出室25の内壁面25aで開口
されている。収容室41の開口縁部41aは、面取り加
工によって吐出室25に向かって拡開するテーパ面をな
している。収容室41は横断面円形をなし、従って、そ
の内周面41bは円筒面をなしている。収容室41の内
周面41bは、開口側の大径部42と奥側の小径部43
とからなっている。位置決め用段差41cは、内周面4
1bにおいて大径部42と小径部43との接続位置に形
成されている。位置決め用段差41cは、大径部42と
小径部43とを傾斜面にて接続する。
【0036】区画部材44は、リヤハウジング13と同
一の材料により構成されている。つまり、区画部材44
は、アルミニウム合金等のアルミニウム系の金属材料に
より構成されている。区画部材44は、第1区画壁部4
5、円盤状をなす第2区画壁部46、及び両区画壁部4
5,46を連結して一体化する柱状の連結部47が、鋳
造や鍛造等による一体成形により製作されている。第1
区画壁部45は、円盤部52と、円盤部52において連
結部47とは反対側の端面に形成された円柱状をなす圧
入部48とからなっている。第1区画壁部45の円盤部
52の外径及び第2区画壁部46の外径は、収容室41
の内周面41bにおいて大径部42の内径とほぼ同じで
ある。圧入部48の外径は、収容室41の内周面41b
において小径部43の内径よりも大きく設定されてい
る。第1区画壁部45において円盤部52と圧入部48
との接続部分には、両者52,48を斜面で接続する前
記収容室41の位置決め用段差41cに対応した段差4
5aが形成されている。
【0037】図4(a)に示すように、前記のようにし
て各部45〜47が一体成形されてなる区画部材44
は、粗面処理としてのショットブラステイング加工によ
って、第1区画壁部45において円盤部52及び圧入部
48の外周面52a,48a、及び第2区画壁部46の
外周面46aを含む表面全体の面粗度が高められてい
る。図面は、ショット(粒体)が区画部材44の表面に
打ち付けられている様子を示している。
【0038】図4(b)に示すように、面粗度が高めら
れた区画部材44の表面には、固体潤滑剤のコート層が
形成される。コート層の形成には、浸漬塗布法が用いら
れている。つまり、溶液は、溶剤に固体潤滑剤を溶かし
込んだものであり、この溶液中に粗面処理を終えた区画
部材44が漬け込まれる。溶液が浸漬塗布された区画部
材44は、乾燥工程において溶剤が除去されることで、
その表面には固体潤滑剤よりなるコート層が形成され
る。なお、固体潤滑剤としては、二硫化モリブデンや、
ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等が挙げら
れる。
【0039】図4(c)に示すように、コート層が形成
された区画部材44は、第1区画壁部45の圧入部48
側から収容室41に挿入され、治具Jを用いることで、
第1区画壁45の段差45aが、位置決め用段差41c
に当接する位置にまで押し込められる。圧入部48の外
径は収容室41の小径部43の内径よりも大きいため、
圧入部48が小径部43に押し込められることで、区画
部材44は圧入部48を以って小径部43の所定の締め
代で、収容室41に対して圧入固定されることとなる。
【0040】前記のようにして区画部材44が組み込ま
れた収容室41は、奥側に分離室49が第1区画壁部4
5によって区画形成されるとともに、開口側に連通室5
0が第1及び第2区画壁45,46によって区画形成さ
れている。連通路51は第1区画壁45及び連結部47
に形成され、分離室49と連通室50とを連通する。連
通路51は、第1区画壁部45の圧入部48において、
収容室41の内周面(円筒内面)41bの中心軸線位置
で開口されている。
【0041】導入通路18aは吐出通路18の上流側
(吐出室25側)を構成し、吐出室25と分離室49と
を連通する。導入通路18aは、分離室49に対して内
周面41bの接線位置で接続されている。導出通路18
bは吐出通路18の下流側(マフラ室17a側)を構成
し、連通室50とマフラ室17aとを連通する。
【0042】さて、吐出室25に吐出された吐出冷媒ガ
スは、導入通路18aを介して分離室49に導入される
とともに、分離室49においてその内周面41bに沿っ
て旋回される。従って、吐出冷媒ガスにミスト状として
含まれているオイルが、遠心力の作用によって分離され
る。オイルが分離された吐出冷媒ガスは、連通路51、
連通室50、導出通路18b及びマフラ室17aを介し
て外部冷媒回路に排出される。分離室49で分離された
オイルは、吐出圧領域である分離室49と低圧領域であ
るクランク室15との圧力差から、吐出容量の制御のた
めの吐出冷媒ガスとともに、オイル戻し通路を兼ねる給
気通路31を介して低圧領域としてのクランク室15に
供給される。クランク室15に供給されたオイルは、例
えば、ピストン22とシュー23との連結部分や、シュ
ー23と斜板20との連結部分等の各摺動部分に供給さ
れ、潤滑及び冷却作用を奏する。
【0043】上記構成の本実施形態においては、次のよ
うな効果を奏する。 (1)区画部材44は収容室41に圧入固定される。従
って、区画部材44を収容室41に押し込むのみの簡単
な作業で、区画部材44を収容室41に組み込むことが
でき、図5に示す従来技術と比較して作業時間を大幅に
短縮できる。
【0044】(2)リヤハウジング13と区画部材44
とが同一の材料、つまり、熱膨張率が同じ材料により構
成されている。従って、例えば、収容室41(小径部4
3)における区画部材44(圧入部48)の締め代が熱
影響により消失してしまうこと、つまり、収容室41
(リヤハウジング13)と区画部材44との圧入固定関
係が解除されてしまうことを防止できる。
【0045】(3)固体潤滑剤よりなるコート層が、区
画部材44の表面、特に、収容室41の内周面41bに
対して接触する、第1区画壁部45において円盤部52
及び圧入部48の外周面52a,48a、及び第2区画
壁部46の外周面46aに形成されている。従って、区
画部材44の収容室41に対する組み込みを、コート層
が低摩擦係数であることを利用してスムーズに行い得
る。
【0046】ここで、例えば、区画部材44の表面に潤
滑油等の液体潤滑剤を塗布した状態で、収容室41に対
する組み込みを行うとする。しかし、区画部材44(圧
入部48)と収容室41(小径部43)との圧入部分の
寸法管理は厳しく、液体潤滑剤は圧入部48の小径部4
3に対する押し込みと同時に押し出されてしまい、圧入
をスムーズとするには至らないのである。
【0047】同一の材料であるリヤハウジング13(小
径部43)と区画部材44(圧入部48)との間に、異
なる材料のコート層が介在されることとなり、区画部材
44の収容室41に対する圧入時にカジリが発生するこ
とを防止できる。従って、カジリにより生じるリヤハウ
ジング13及び区画部材44の材料屑や材料片が、オイ
ルに混ざることを防止でき、例えば、給気通路31に材
料屑や材料片の詰まりが生じる等の問題を回避できる。
【0048】(4)コート層が形成される区画部材44
の表面は、粗面処理によって面粗度が高められている。
従って、区画部材44の表面に対する固体潤滑剤の食い
付き状態が良好となり、強固なコート層を形成できる。
【0049】(5)区画部材44の粗面処理は、ショッ
ト加工によりなされている。従って、例えば、区画部材
44の粗面処理を薬品等を用いて化学的に行う場合と比
較して、粗度の設定が容易であるし、作業者の作業環境
も良好となる。
【0050】(6)連通路51は、内周面41bの中心
軸線位置で分離室49に開口されている。従って、分離
室49の吐出冷媒ガスは、その旋回流の中心側の領域、
つまり、遠心力の作用によってオイルが存在し難くなっ
ている領域から、連通路51を介して連通室50に取り
出される。その結果、分離室49のオイルが、吐出冷媒
ガスの流れに乗って連通室50に持ち出されてしまう
量、ひいては外部冷媒回路に持ち出されてしまう量を低
減でき、オイルの回収効率が高められる。
【0051】(7)区画部材44は、第1及び第2区画
壁45,46が連結部47によって一体化されてなる。
従って、区画部材44を収容室41に組み込む作業の
際、その準備や取り扱いが容易となる。
【0052】(8)収容室41の開口縁部41aは、吐
出室25に向かって拡開するテーパ面状をなしている。
従って、区画部材44の収容室41に対する挿入をスム
ーズに行うことができる。
【0053】(9)位置決め用段差41cが収容室41
に設けられている。従って、区画部材44を位置決め用
段差41cに突き当たる位置にまで押し込むのみで、押
し込み距離の計測等の特別な作業を必要とせずに、分離
室49の容積を一定とすること、つまり、分離室49の
オイル分離能力のバラツキを抑えることができる。
【0054】(10)位置決め用段差41cは傾斜され
ている。従って、区画部材44を収容室41に組み込む
際、圧入部48の小径部43に対する圧入をスムーズに
行うことができる。
【0055】(11)吐出容量の制御のための給気通路
31が、オイル分離構造のオイル戻し通路を兼ねてい
る。従って、専用のオイル戻し通路を形成する必要がな
く、圧縮機の構成を簡単にできる。
【0056】本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、例え
ば、上記実施形態を以下の態様に変更しても良い。 ○上記実施形態において、区画部材44を黄銅系の金属
材料により構成すること。つまり、区画部材44をリヤ
ハウジング13と異系の金属材料により構成すること。
この構成によれば、前述した、両者13,44が同系の
材料であることによるカジリの問題を解消できる。ま
た、黄銅系の金属材料は、例えば、鉄系の金属材料等と
比較して、アルミニウム系の金属材料と熱膨張率が近い
ため、収容室41(リヤハウジング13)と区画部材4
4との圧入固定関係が、熱影響により解除される問題も
ほとんど生じない。
【0057】○上記実施形態においてリヤハウジング1
3と区画部材44とは、同一の材料により構成されてい
た。つまり、リヤハウジング13と区画部材44とは、
同系の材料でかつ成分構成や配合割合が全く同じ材料に
より構成されていた。これを変更し、リヤハウジング1
3と区画部材44を、同系の材料であっても、成分構成
や配合割合が異なる材料により構成すること。例えば、
同じアルミニウム系の金属材料であっても、シリコンよ
りなる硬質粒子を含有している材料でリヤハウジング1
3又は区画部材44の一方を構成し、硬質粒子を含有し
ていない材料で他方を構成すること。或いは、他方も硬
質粒子を含有した材料により構成し、一方とは硬質粒子
の含有割合を変えること。
【0058】○区画部材44を合成樹脂により構成する
こと。このようにすれば、区画部材44の成形が容易と
なるし、軽量化も図り得る。 ○オイル分離構造を、慣性分離により吐出冷媒ガスから
オイルを分離する構成とすること。このようにすれば、
例えば、区画部材44を第1区画壁部45のみの構成と
し、導出通路18bを分離室49に直接接続する簡単な
構成とすることができる。
【0059】○第1区画壁部45、第2区画壁部46及
び連結部47をそれぞれ別個に成形し、後に接着剤や溶
接等によって一体化して区画部材44とすること。この
ようにすれば、それぞれの形状が簡単となって成形し易
いし、後に一体化することで、収容室41に対する組み
込み作業の際の取り扱いも容易となる。
【0060】○吐出室25とクランク室15とを給気通
路31により連通する。給気通路31と別通路のオイル
戻し通路によって、分離室49とクランク室15とを連
通させること。
【0061】○区画部材44の粗面処理を、他のショッ
ト加工としての液体ホーニング加工によって行うこと。 ○区画部材44に対する溶液の塗布に、スプレー塗布法
を用いること。
【0062】○区画部材44のコート層を、スズメッキ
等のメッキにより形成すること。上記実施形態から把握
できる技術的思想について記載する。 (1)前記ハウジング13と区画部材44とは同一の材
料により構成されている請求項1に記載のオイル分離構
造。
【0063】このようにすれば、ハウジング13と区画
部材44の熱膨張率を同じとすることができ、収容室4
1(ハウジング13)と区画部材44との圧入固定関係
が、熱影響により解除される問題は生じない。
【0064】(2)前記粗面処理はショット加工により
なされている請求項7〜10のいずれかに記載のオイル
分離構造。このようにすれば、例えば、区画部材44の
粗面処理を薬品等を用いて化学的に行う場合と比較し
て、粗度の設定が容易であるし、作業者の作業環境も健
康的となる。
【0065】(3)収容室41には、区画部材44の位
置決めを当接規定により行うための位置決め手段41c
が設けられている請求項1〜10のいずれかに記載のオ
イル分離構造。
【0066】このようにすれば、区画部材44を位置決
め手段41cに突き当たる位置にまで押し込むのみで、
押し込み距離の測定等の特別な作業を必要とせずに、分
離室49の容積を一定とすることができる。
【0067】(4)前記ハウジング11〜13には低圧
領域としてのクランク室15及びピストン22を収容す
るシリンダボア12aが形成され、ハウジング11〜1
3にはクランク室15を挿通するようにして回転軸16
が回転可能に支持され、クランク室15において回転軸
16にはカムプレート20が一体回転可能に連結され、
カムプレート20にはピストン22が連結されており、
回転軸16の回転運動がカムプレート20を介してピス
トン22のシリンダボア12aでの往復運動に変換され
ることで、冷媒ガスの圧縮が行われる構成である請求項
1〜10のいずれかに記載のオイル分離構造。
【0068】このようにすれば、分離室49において分
離されたオイルは、オイル戻し通路31を介してクラン
ク室15に供給され、例えば、カムプレート20とピス
トン22との連結部分等の各摺動部分の潤滑及び冷却作
用を奏する。
【0069】(5)前記カムプレート20は回転軸16
に傾動可能に連結され、クランク室15と吐出圧領域4
9とは給気通路31により接続され、クランク室15と
吸入圧領域24とは抽気通路30により接続され、給気
通路31及び抽気通路30の少なくとも一方には容量制
御弁32が介在され、容量制御弁32により給気通路3
1及び抽気通路30の少なくとも一方の開度を調節する
ことでクランク室15の圧力を変更して吐出容量を制御
する構成である前記(4)に記載のオイル分離構造。
【0070】このようにすれば、分離室49において分
離されたオイルは、オイル戻し通路31を介してクラン
ク室15に供給され、例えば、カムプレート20とピス
トン22との連結部分等の各摺動部分の潤滑及び冷却作
用を奏する。
【0071】(6)前記給気通路31がオイル戻し通路
を兼ねる前記(5)に記載のオイル分離構造。このよう
にすれば、専用のオイル戻し通路を形成する必要がな
く、圧縮機の構成を簡単にできる。
【0072】
【発明の効果】上記構成の本発明においては、区画部材
が収容室に圧入固定される。従って、区画部材を収容室
に押し込むのみの簡単な作業で、区画部材を収容室に組
み込むことができ、作業時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 可変容量型圧縮機の縦断面図。
【図2】 図1においてオイル分離構造付近を拡大して
示す図。
【図3】 分離室の横断面図。
【図4】 (a)区画部材の粗面処理工程を説明する
図、(b)区画部材にコート層を形成する工程を説明す
る図、(c)区画部材を収容室に組み込む工程を説明す
る図。
【図5】 (a)従来のオイル分離構造を説明する図、
(b)図5(a)においてテーパサークリップの外周部
付近の拡大図。
【符号の説明】
11…ハウジングとしてのフロントハウジング、12…
同じくシリンダブロック、13…同じくリヤハウジン
グ、15…低圧領域としてのクランク室、18…吐出通
路、31…オイル戻し通路を兼ねる給気通路、41…収
容室、43…圧入固定を達成する小径部、44…区画部
材、48…圧入固定を達成する圧入部、49…分離室。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 廣田 英 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 中内 健太 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 3H003 AA03 AB07 AC03 BD12 CC11 CD05 CE01 3H076 AA06 BB40 CC70 CC93

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧縮機構を収容するハウジングには、吐
    出圧領域よりも低圧な低圧領域が形成されるとともに、
    圧縮機構から外部冷媒回路に向かう吐出冷媒ガスの通路
    となる吐出通路が形成され、吐出通路上には吐出冷媒ガ
    ス中に含まれるオイルを分離するための分離室が設けら
    れ、分離室と低圧領域とはオイル戻し通路により連通さ
    れた圧縮機のオイル分離構造において、 前記ハウジングにおいて吐出通路上には収容室が設けら
    れ、収容室には区画部材が圧入固定され、区画部材によ
    って収容室を区画することで分離室を形成してなるオイ
    ル分離構造。
  2. 【請求項2】 前記ハウジングと区画部材とは同系の金
    属材料により構成されている請求項1に記載のオイル分
    離構造。
  3. 【請求項3】 前記ハウジング及び区画部材はアルミニ
    ウム系の金属材料により構成されている請求項2に記載
    のオイル分離構造。
  4. 【請求項4】 前記ハウジングと区画部材とは異系の金
    属材料により構成されている請求項1に記載のオイル分
    離構造。
  5. 【請求項5】 前記ハウジング及び区画部材の一方はア
    ルミニウム系の金属材料よりなり、ハウジング及び区画
    部材の他方は黄銅系の金属材料により構成されている請
    求項4に記載のオイル分離構造。
  6. 【請求項6】 前記ハウジングと区画部材との間におい
    て少なくとも一方の接触面に、固体潤滑剤よりなるコー
    ト層を形成した請求項1〜5のいずれかに記載のオイル
    分離構造。
  7. 【請求項7】 前記ハウジング或いは区画部材において
    コート層を形成する面には、その面粗度を高める粗面処
    理が施されている請求項6に記載のオイル分離構造。
  8. 【請求項8】 前記分離室は円筒内面を有し、導入され
    た吐出冷媒ガスを円筒内面に沿って旋回させることで、
    遠心力の作用によって吐出冷媒ガスからオイルを分離す
    る構成である請求項1〜7のいずれかに記載のオイル分
    離構造。
  9. 【請求項9】 前記区画部材は、収容室を区画して分離
    室又は連通室の一方を形成する第1区画壁部、及び収容
    室を第1区画壁部とで区画して分離室又は連通室の他方
    を形成する第2区画壁部を備え、連通室は吐出通路にお
    いて分離室の下流側に配置され、第1区画壁部には分離
    室に対して円筒内面の中心軸線位置で開口して分離室と
    連通室とを連通する連通路が形成された請求項8に記載
    のオイル分離構造。
  10. 【請求項10】 前記区画部材は、第1及び第2区画壁
    部を連結して一体化する連結部を備えている請求項9に
    記載のオイル分離構造。
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