JP2000000402A - 油水分離フィルターとその製造方法 - Google Patents

油水分離フィルターとその製造方法

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JP2000000402A JP18340898A JP18340898A JP2000000402A JP 2000000402 A JP2000000402 A JP 2000000402A JP 18340898 A JP18340898 A JP 18340898A JP 18340898 A JP18340898 A JP 18340898A JP 2000000402 A JP2000000402 A JP 2000000402A
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Shinji Kato
真示 加藤
Misao Iwata
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Hirokazu Matsunaga
博和 松永
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Noritake Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】使用中におけるシリコーン系のオイルの脱離に
よるフィルターの目詰まりがなく、油水混合液から油
(水分含有率が著しく低い油)を効率よく回収すること
ができる油水分離フィルター及びその製造方法を提供す
る。 【解決手段】窒化ホウ素粉末を捕集した実質的に非晶質
のシリカ繊維の凝集体を含む成形体を、1300℃で1
時間焼成することにより、比表面積が0.6m2/gの
高気孔体から成る油水分離フィルターを得た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油水混合液から油
(特に、水分含有率の低い油)を効率よく回収するため
に用いられる油水分離フィルター及びその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】食品製造、繊維処理、機械加工、石油精
製などの廃液処理、また事故などによる河川、海洋など
への油の流出による油回収作業として、油水混合液を油
と水とに分離する処理が行われている。
【0003】従来の分離方法としては、比重分離、加圧
浮上分離、遠心分離、吸着分離、電気的方法などが行わ
れてきた。また、最近では高濃度分離が可能であり且つ
省エネルギーの点で有利な逆浸透法、限外濾過法、精密
濾過法が注目されている。特にセラミック質材料の化学
的、機械的安定性から以下のような様々な方法が開示さ
れている。
【0004】特開平1−139107号公報には、アル
ミナ製の多孔質セラミックスから成る筒状多層構造体の
フィルタを用いた油水分離装置が開示されている。特開
平6−15164号公報には、シリコーン系のオイル等
を用いて撥水処理をした中空セラミック粒よりなる吸油
材が開示されており、前記中空セラミック粒は、ポリス
チロールの球形発泡体にシリカ、アルミナ等の粘土質を
含む無機質を被覆し、造粒、乾燥、焼成して得る旨が記
載されている。
【0005】特開平7−60277号公報には、汚水に
浮かべて水面の汚れや油膜を処理する汚水浄化用中空セ
ラミックボールが開示されている。特開平8−5230
5号公報には、多数の細孔を有するセラミックスから成
ると共にカップリング剤から成る撥水親油膜が形成され
た濾過膜を備えて、油水混合液から水分含有率の低い油
を回収するために用いられる油水分離用濾過器が開示さ
れている。
【0006】また、これまで油水分離用として用いられ
るセラミックフィルターには、セラミック粒子を焼結
し、気孔を残して得られるフィルター、あるいは、セラ
ミック粒子が含まれるスラリーを樹脂製のスポンジに含
浸し焼結して得られるセラミックフォームがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のセラミックフィ
ルターは、ある程度の親水性を有するが、親水性が十分
ではないため、油に対しても親和性がある。そのため、
濾過された液体の中に油の微粒子が混入することを防止
することができず、油水分離フィルターとして十分なも
のではなかった。
【0008】そこで、従来のセラミックフィルターにシ
リコーン系のオイルで撥水処理などの加工を施し油水分
離フィルターとして使用することが考えられた。しか
し、シリコーン系のオイルで撥水処理をしたセラミック
フィルターは、使用中に前記オイルが脱離しフィルター
が目詰まりするという問題点があった。
【0009】本発明は、上記従来のセラミックフィルタ
ーとは全く異なる新規な油水分離フィルター及びその製
造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、
上記従来技術の問題点を解消し、使用中におけるシリコ
ーン系のオイルの脱離によるフィルターの目詰まりがな
く、油水混合液から油(水分含有率が著しく低い油)を
効率よく回収することができる油水分離フィルター及び
その製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、無機質結合
剤形成原料粉末(例えば、窒化ホウ素粉末)を捕集した
無機質繊維(例えば、実質的に非晶質のシリカ繊維)の
凝集体を含む成形体を、前記無機質結合剤形成原料粉末
と前記無機質繊維が反応する最低温度以上の温度で焼成
することにより、比表面積が高く、単位体積あたりの−
OH基の数が多く、水を通過させ油を遮断するのに十分
な程度に親水性が高い高気孔焼成体を得ることができ
る、ということを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】本発明の第1の視点によれば、無機質繊維
と前記無機質繊維を結合する無機質結合剤を含有して成
る高気孔体を有し、前記高気孔体の少なくとも油水混合
液との接触部分は、水を通過させ油を遮断するのに十分
な親水性である油水分離フィルターにより、上記目的を
達成することができる。この油水分離フィルターは、次
のようにすることができる。
【0012】前記高気孔体は、3次元網目構造の高気孔
体にすることができる。前記接触部分は、水を通過させ
油を遮断するのに十分な比表面積を有するものにするこ
とができる。前記比表面積は0.6m2/g以上にする
ことができる。前記高気孔体の気孔率は、80体積%以
上にすることができる。前記高気孔体の曲げ強度は、8
kgf/cm2以上にすることができる。
【0013】前記無機質繊維は、実質的に非晶質のシリ
カ繊維を主たる無機質繊維として含むものにすることが
できる。前記無機質繊維は、さらに、アルミナ繊維、ア
ルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維の
うちの1種以上を補強用無機質繊維として含むものにす
ることができる。
【0014】前記無機質結合剤は、実質的に非晶質のシ
リカ繊維の結晶化を抑制する結晶化抑制剤の粉末と無機
質繊維との反応生成物を含むものにすることができる。
前記結晶化抑制剤の粉末は、(a)非金属ホウ化物、
(b)ジルコニウムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化
物、(c)クロムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化
物、(d)イットリウムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び
硼化物、(e)バナジウムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及
び硼化物、(f)ランタノイド系元素の窒化物、硝酸
塩、炭酸塩及び硼化物のうちの少なくとも1種を含有す
る粉末にすることができる。
【0015】本発明の第2の視点によれば、無機質結合
剤形成原料粉末を捕集した無機質繊維の凝集体を含む成
形体を、前記無機質結合剤形成原料粉末と前記無機質繊
維が反応する最低温度以上の温度で焼成する焼成工程を
含む油水分離フィルターの製造方法により、上記目的を
達成することができる。この油水分離フィルターの製造
方法は、次のようにすることができる。
【0016】前記凝集体として、無機質結合剤形成原料
粉末と無機質繊維が分散する分散液のpHを調整して得
られた凝集体を用いることができる。前記分散液とし
て、pH3以上の弱酸性の分散液を用いることができ
る。前記成形体として、前記凝集体を真空成形して得ら
れる成形体を用いることができる。
【0017】前記分散液をpH4〜10に調整し、pH
3以上の弱酸性の分散液に分散していた無機質繊維の凝
集の程度を変化させることによって、焼成後に得られる
高気孔体の気孔率を制御することができる。前記分散液
を、前記焼成工程の焼成後に得られる高気孔体の気孔率
に対応するpH4〜10の範囲内の所定pHに調整する
ことができる。前記無機質繊維として、実質的に非晶質
のシリカ繊維を主原料として含有する無機質繊維を用い
ることができる。
【0018】前記無機質結合剤形成原料粉末として、
(a)ホウ素酸化物形成原料、(b)ジルコニウムの窒
化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(c)クロムの窒化
物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(d)イットリウムの
窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(e)バナジウム
の窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(f)ランタノ
イド系元素の窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物のうち
の少なくとも1種の粉末を用いることができる。
【0019】本発明の着想は、セラミックス製のフィル
ターの親水性を高めることにより、フィルターの水に対
する吸着能を高め、油水を分離しようとしたところにあ
る。
【0020】セラミックス製のフィルターの親水性を高
めるには、フィルター表面に存在する−OH基を増やす
ことが必要であるが、セラミックスの表面の−OH基は
通常ほぼ一定であるため、本発明ではフィルターの比表
面積を高めることにより、単位体積あたりの−OH基の
数を多くし親水性を高めようとするものである。
【0021】なお、表面積を高める方法としては、微細
な穴の空いた活性炭、シリカゲルなどの粒子の使用が挙
げられるが、細孔径が小さすぎることと穴の一方がふさ
がっている閉気孔であるため、一旦細孔に油が吸着され
た場合、油の脱離が起こりにくいため目詰まりを起こ
し、連続的に使用できないという欠点がある。これに対
して、本発明の油水分離フィルターは、無機質繊維を用
いた上記構成により、このような欠点を解消することが
できた。なお、本発明において数値範囲の記載は、両端
値のみならず、その中に含まれる全ての任意の中間値を
含むものとする。
【0022】
【発明の実施の形態】〔油水分離フィルター〕本発明の
油水分離フィルターは、無機質繊維と前記無機質繊維を
結合する無機質結合剤を含有して成る高気孔体を含むも
のである。そして、前記高気孔体の少なくとも油水混合
液との接触部分が、水を通過させ油を遮断するのに十分
な親水性である。前記高気孔体の形状は、例えばチュー
ブ状、板状、お椀形にできる。
【0023】前記高気孔体は、好ましくは3次元網目構
造(特に、無機質繊維が複雑に絡み合った3次元網目構
造)の高気孔体である。本発明の油水分離フィルター
は、このような高気孔体のみから成るものにすることが
できるが、必要に応じて前記高気孔体を保持あるいは保
護する支持体を具備することができる。前記支持体は、
例えば、セラミックス、樹脂及び金属のうちの1種以上
の材料から成るもの(例えば、油水混合液を通過させな
い低気孔性ないし実質的に無気孔性のもの)から適宜選
択することができる。
【0024】本発明の油水分離フィルターにおける前記
高気孔体の油水混合液と接触しない部分は、水を通過さ
せ油を遮断するのに十分な親水性にする必要はないが、
油水混合液と接触しない部分を含めた前記高気孔体の全
表面(気孔の内面も含む)を、水を通過させ油を遮断す
るのに十分な親水性にすることができる。
【0025】[油水分離フィルターの特性] 〈比表面積〉油水分離フィルターにおける前記高気孔体
の油水混合液との接触部分は、好ましくは、水を通過さ
せ油を遮断するのに十分な比表面積を有するようにす
る。前記比表面積は、0.05m2/g以上にすること
ができ、好ましくは0.08m2/g以上であり、より
好ましくは0.1m2/g以上(さらに好ましくは0.
2m2/g以上、よりさらに好ましくは0.3m2/g以
上、特に好ましくは0.4m2/g以上)であり、0.
6m2/g程度以上までにすることができる。
【0026】このためフィルター単位体積あたりの−O
H基が多くなっているので、見かけの親水性が高い。従
って、油をほとんど吸収することがないようにできるた
め、十分な油水分離が可能となる。なお、セラミック粒
子を焼結させて得られたフィルターあるいはセラミック
フォームの比表面積は、一般的に0.06m2/g程度
までである。
【0027】〈気孔率及び嵩密度〉油水分離フィルター
における前記高気孔体の気孔率は、好ましくは70〜9
7体積%(より好ましくは75〜97体積%、さらに好
ましくは80〜95体積%)にすることができる。気孔
率が80体積%以上と極めて高い場合には、油水分離フ
ィルター体積あたりの処理量は、従来のもの(例えば、
セラミック粒子を焼結して得られたもの等)よりも大き
い。
【0028】また、気孔の径は、数μm以上にすること
ができ、実用上の点から5μm以上、10〜100μm
にすることができ、例えば平均細孔径40〜50μmに
することができる。なお、前記高気孔体は、例えば、水
銀圧入法等の気孔径測定法により測定された場合、気孔
の孔径分布がそろっているものにすることができる。
【0029】油水分離フィルターにおける前記高気孔体
の嵩密度は、好ましくは0.15g/cm3以下(より
好ましくは0.12〜0.08g/cm3、さらに好ま
しくは0.11〜0.09g/cm3)にすることがで
きる。
【0030】〈強度〉油水分離フィルターにおける前記
高気孔体の曲げ強度は、5kgf/cm2以上にするこ
とができ、好ましくは8kgf/cm2以上(より好ま
しくは10kgf/cm2以上)であり、10〜15k
gf/cm2程度までの高い曲げ強度にすることができ
る。このため、板状、円筒状などの形状を油水分離フィ
ルターに付与して、従来の装置の中に組み込んでの連続
使用にも十分耐え得る。
【0031】油水分離フィルターにおける前記高気孔体
の引張り強度は、高さ方向の引張り強度が2.5kgf
/cm2(およそ0.245MPa)以上(好ましくは
0.294MPa以上)である。ここで、高さ方向の引
張り強度における「高さ方向」とは、成形時における加
圧方向のことであり、通常は、成形に用いるプレス装置
の軸方向のことをいう。例えば、プレス装置により得ら
れた成形体のプレス面に対して直交する方向である。
【0032】[無機質繊維]本発明の油水分離フィルタ
ーの前記高気孔体における無機質繊維の全重量の好まし
くは60〜100重量%(より好ましくは60〜90重
量%)を実質的に非晶質のシリカ繊維にすることができ
る。前記高気孔体における実質的に非晶質のシリカ繊維
以外の無機質繊維は、アルミナ繊維、アルミノシリケー
ト繊維、アルミノボロシリケート繊維等のような、実質
的に非晶質のシリカ繊維と併用した場合に前記非晶質の
シリカ繊維を補強することができる無機質補強繊維のう
ちの1種以上の無機質繊維にすることができる。また、
前記高気孔体における無機質繊維に含まれている全ての
シリカ繊維を、実質的に非晶質のシリカ繊維にすること
ができる。
【0033】[無機質結合材]無機質結合材は、無機質
繊維を結合する。無機質結合材は、好ましくは、実質的
に非晶質のシリカ繊維の結晶化を抑制する結晶化抑制剤
の粉末と無機質繊維との反応生成物を含む。実質的に非
晶質とは、X線回折的に非晶質のみから構成されている
ことである。即ち、X線回折法によって結晶が確認でき
ないことである。図1は、非晶質のシリカ繊維を含むフ
ィルターのX線回折法によるパターンであるが、例え
ば、この図1に示すとおりである。前記反応生成物は、
好ましくは、前記結晶化抑制剤の粉末が無機質繊維と反
応して、無機質繊維との界面に生成した反応生成物であ
る。この反応生成物を介して無機質繊維と無機質繊維の
間は融着している。
【0034】なお、本発明の油水分離フィルターが実質
的に非晶質のシリカ繊維の結晶化を抑制する結晶化抑制
剤の粉末と前記非晶質のシリカ繊維との反応生成物を含
む場合は、前記非晶質のシリカ繊維の結晶化を防止しつ
つ、使用後のフィルターに付着した油水混合液(特に、
油分)を燃焼させて除去することができる。
【0035】より好ましくは、無機質繊維と無機質結合
剤が三次元結節状網状に結合して、即ち、無機質繊維と
無機質繊維の交点ないし接点で無機質結合剤を介して互
いに結合し(少なくとも、接点では必ず結節を有するよ
うに結合し)、三次元結節状網状体を形成している。
【0036】無機質結合剤は、より好ましくは、次の
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)の
うちの少なくとも1種の粉末と無機質繊維との反応生成
物を含有する。即ち、(a)非金属ホウ化物の粉末、
(b)ジルコニウムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化
物の各粉末、(c)クロムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及
び硼化物の各粉末、(d)イットリウムの窒化物、硝酸
塩、炭酸塩及び硼化物の各粉末、(e)バナジウムの窒
化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物の各粉末、(f)ラン
タノイド系元素の窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物の
各粉末のうちの少なくとも1種の粉末と無機質繊維との
反応生成物である。
【0037】ランタノイド系元素とは、原子番号57の
ランタンと、原子番号58のセリウムから原子番号71
のルテチウムを含めた15元素のことである。前記粉末
は、好ましくは1400℃以下(より好ましくは900
〜1400℃、さらに好ましくは900〜1200℃)
で酸化反応を起こす粒度を有するものである。
【0038】非金属ホウ化物の粉末は、好ましくは水に
溶解しない非金属系のホウ化物であり、より好ましくは
ホウ素酸化物を形成する粉末である。かかる非金属ホウ
化物としては、例えば窒化ホウ素(BN)、炭化ホウ素
(B4C)、ホウ化珪素(SiB4、SiB6)等があ
る。好ましくは、窒化ホウ素を用いる。窒化ホウ素とし
ては、六方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、正方晶窒
化ホウ素を用いることができるが、好ましくは安価な六
方晶窒化ホウ素を用いる。
【0039】[油水分離フィルターの分離対象]本発明
の油水分離フィルターの分離対象は、油水混合液、即
ち、油と水の混合液であり、特に、食品製造、繊維処
理、機械加工、石油精製などの際の廃液や、事故などに
よる河川水、海洋水などと油の混合物のような、油と水
を含む各種の油水混合液である。ここで、「水」は、水
に溶解する水以外の水溶性媒体を包含する。なお、油及
び水以外の各種の不溶性含有物を含む油水混合液に対し
ても適用できるが、必要であれば、油及び水以外の不溶
性含有物を取り除いた油水混合液に適用することができ
る。
【0040】好適な分離対象は、油の含有率よりも水の
含有率が高い油水混合液であり、水100重量部に対し
て好ましくは油10重量部以下(より好ましくは油5重
量部以下、さらに好ましくは油1重量部以下)を含有す
る油水混合液である。
【0041】〔油水分離フィルターの製造方法〕本発明
の油水分離フィルターの製造方法は、無機質結合剤形成
原料粉末を捕集した無機質繊維の凝集体を含む成形体
を、前記無機質結合剤形成原料粉末と前記無機質繊維が
反応する最低温度以上の温度で焼成する焼成工程を含
む。
【0042】前記無機質結合剤形成原料粉末と前記無機
質繊維が反応する最低温度以上の温度は、好ましくは1
200℃以上(より好ましくは1200〜1400℃、
さらに好ましくは1200〜1300℃、特に好ましく
は1250〜1350℃)である。
【0043】無機質結合剤形成原料粉末を捕集した無機
質繊維の凝集体を含む成形体は、前記凝集体(必要であ
れば、前記凝集体100重量に対して好ましくは有機質
結合剤0〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部
を混合して得られた混合物)を成形して(好ましくは真
空成形して)得ることができる。前記凝集体における、
無機質結合剤形成原料粉末の重量は、無機質繊維の全重
量に対して、好ましくは3〜7.5重量%(より好まし
くは3〜6重量%、さらに好ましくは3〜5重量%)に
する。前記成形体は、そのまま放置して自然乾燥させる
ことができるが、好ましくは80〜110℃(より好ま
しくは90〜110℃)で強制的に乾燥することができ
る。本発明の油水分離フィルターの製造方法は、このよ
うな成形工程及び乾燥工程を前記焼成工程の前に設ける
ことができる。
【0044】前記凝集体は、無機質結合剤形成原料粉末
と無機質繊維が分散する分散液(好ましくは弱酸性の分
散液)のpHを調整して得ることができる。好ましく
は、前記分散液をpH4〜10に調整し、前記無機質繊
維の凝集の程度を変化させることによって、焼成後に得
られる高気孔体の気孔率を制御することができる。凝集
させる際のpHが高いほど、焼成後に得られる高気孔体
の密度は小さくなる。
【0045】前記分散液をpH4に調整することによ
り、4mm以上(4〜7mm程度)の径の凝集体を得る
ことができる。前記分散液をpH10に調整することに
より、30mm以下(通常は20〜25mm、場合によ
っては30mm程度)の径の凝集体を得ることができ
る。このような凝集体を多数集積し、成形し(好ましく
は真空成形して)、成形体を得ることができる。
【0046】pH4未満の場合は、凝集体の径は4mm
よりも小さくなり凝集体の効果が小さくなる。pH10
を越える場合は、凝集体の径が30mmを越える場合が
多く、凝集体がほぐれすぎる傾向があり凝集体の効果が
小さくなる。なお、pH5〜9に調整することにより、
10〜20mmの径の凝集体を得ることができる。
【0047】好ましくは、前記分散液を、前記焼成工程
の焼成後に得られる高気孔体の気孔率に対応するpH4
〜10の範囲内の所定pHに調整する。本発明の油水分
離フィルターの製造方法は、このような凝集工程を前記
成形工程の前に設けることができる。
【0048】前記無機質繊維として、好ましくは、実質
的に非晶質のシリカ繊維を主原料として(好ましくは6
0〜100重量%、より好ましくは60〜90重量%、
さらに好ましくは70〜90重量%)含有する無機質繊
維を用いる。実質的に非晶質のシリカ繊維としては、好
ましくはSiO2を99重量%以上含有するものを用い
る。前記無機質繊維は、さらに、アルミナ繊維、アルミ
ノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維等のよ
うな、実質的に非晶質のシリカ繊維と併用した場合に実
質的に非晶質のシリカ繊維を補強することができる補強
用無機質繊維を副原料として含むことができる。
【0049】無機質結合剤形成原料粉末としては、好ま
しくは、(a)ホウ素酸化物形成原料粉末、(b)ジル
コニウムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(c)
クロムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(d)イ
ットリウムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、
(e)バナジウムの窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化
物、(f)ランタノイド系元素の窒化物、硝酸塩、炭酸
塩及び硼化物のうちの少なくとも1種の粉末を用いる。
ランタノイド系元素とは、既述のものである。
【0050】ホウ素酸化物形成原料粉末としては、水に
溶解しない非金属系のホウ化物を用いることができ、か
かるホウ化物としては例えば窒化ホウ素(BN)、炭化
ホウ素(B4C)、ホウ化珪素(SiB4、SiB6)等
がある。好ましくは、窒化ホウ素を用いる。窒化ホウ素
としては、六方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、正方
晶窒化ホウ素を用いることができるが、好ましくは安価
な六方晶窒化ホウ素を用いる。
【0051】[好適な製造方法]次に、無機質結合剤形
成原料粉末として非金属系のホウ素化合物粉末を用いる
場合の好適な製造方法について説明する。
【0052】本発明の油水分離用フィルターは、無機質
繊維とホウ素化合物粉末を水中で分散、混合して、ホウ
素化合物粉末を捕集した無機質繊維の凝集体を得て、前
記凝集体を真空成形し、乾燥後1200〜1400℃の
温度で焼成することで製造することができる。
【0053】上記無機質繊維はフィルターの親水性をよ
り高めるという点から、シリカ質の無機質繊維が選択さ
れるべきである。通常、シリカ繊維は他の無機質繊維よ
り単位表面積あたりの−OH基が多いためである。ま
た、高温で使用する場合には、ガラス転移点のあるシリ
カガラス質繊維ではなく、好ましくは、シリカ非晶質繊
維(実質的に非晶質のシリカ繊維、以下同様。)にす
る。
【0054】しかし、シリカ非晶質繊維は繊維自体の強
度が弱いため、アルミナ繊維、アルミノシリケート繊
維、アルミノボロシリケート繊維のうち1つ又は複数の
繊維を補強用無機質繊維として添加することが強度向上
に好ましい。また、シリカ非晶質繊維は加熱されると結
晶化し、クリストバライトとなり繊維自体がもろくな
る。そのため、焼成後もシリカ非晶質繊維を非晶質のま
ま保持する必要がある場合には、結晶抑制剤としてホウ
素化合物を添加する。ホウ素化合物はシリカ及びアルミ
ナとアルミノボロシリケートを生成することから無機質
繊維間を融着させることを可能とする。
【0055】ホウ素化合物としては様々な化合物がある
が、金属ホウ化物はシリカ非晶質繊維を結晶化させる可
能性があるのみならず、ボロシリケート、アルミノボロ
シリケートのガラス化温度を変化させ、無機質繊維間の
融着を阻害するため望ましくない。非金属系のホウ化物
としては、酸化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ
化珪素などが知られているが、酸化ホウ素は水溶性があ
り、水中での分散、混合を伴う製造方法には適していな
い。窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化珪素は、いずれの
ものも使用できるが、入手のしやすさから窒化ホウ素の
方が望ましい。
【0056】無機質繊維の直径は0.65〜10μmが
望ましい。0.65μmよりも細い場合は強度が低くな
り、10μmよりも太すぎるとフィルターの細孔径が大
きくなり、水中に分散した油の微粒子が通りやすくなる
ため油水分離が困難となる。シリカ非晶質繊維としては
径が例えば1〜2.5μmのものを、アルミナ繊維等の
補強用無機質繊維としては径が例えば1〜3.5μmの
ものをそれぞれ用いることができる。繊維の長さは特に
制限はないが、1〜30mm程度が望ましい。シリカ非
晶質繊維と補強用無機質繊維との割合は、−OH基がよ
り多く付いているシリカ非晶質繊維を90〜60重量%
とすべきである。
【0057】無機質結合剤形成原料粉末として添加する
窒化ホウ素粉末の粒度は、1200〜1400℃で焼成
する際に酸化し、無機質繊維とボロシリケート、又はア
ルミノボロシリケートを生成させ、無機質繊維の界面を
融着させなければならないため、900〜1200℃
(より好ましくは1000〜1200℃、さらに好まし
くは1100〜1200℃)付近で酸化反応を起こす程
度の粒度が望ましい。
【0058】窒化ホウ素粉末が900℃よりも低温で酸
化反応を起こすと、無機質繊維と反応する前に窒化ホウ
素粉末が酸化して生成した酸化ホウ素が昇華し、所定量
よりもホウ素量が不足するため強度低下が起こる。ま
た、1200℃よりも高い温度で酸化する窒化ホウ素粉
末では、窒化ホウ素粉末の酸化が起こる前に、無機質繊
維の結晶化が起こる。窒化ホウ素粉末は扁平な形状をし
ているため測定方法により平均粒径は大きく異なるの
で、使用する窒化ホウ素粉末の粒度は酸化反応を引き起
こす温度から決定すべきである。
【0059】窒化ホウ素粉末は、無機質繊維の全重量に
対して好ましくは約3〜7.5重量%添加する。3重量
%未満では無機質繊維間の融着が悪く、強度が不足する
傾向がある。一方7.5重量%よりも多くの窒化ホウ素
粉末等のホウ素化合物粉末を添加しても強度上昇は確認
できないためである。
【0060】無機繊維質はそのまま水中に分散させるこ
とは困難であるので、一旦、pH1〜2程度の強酸水溶
液中に攪拌モータにて1〜2時間分散させ、無機質繊維
表面に親水基を吸着させる。強酸水溶液を除去した後、
水を加え無機質繊維を15〜30分程度攪拌モータで攪
拌する。その後、加えた水を除去し、再度水を加え無機
質繊維を15〜30分程度攪拌モータで攪拌すれば水中
に均質に分散できる。
【0061】水を加え攪拌した後、一旦水を除去するの
は、無機質繊維、特にシリカ非晶質繊維は強酸水溶液中
に長時間分散させておくと溶解が開始するためであり、
無機質繊維を分散させる水溶液のpHを3〜6程度にす
る必要があるからである。2回の脱水でpHが3より大
きくならない場合pHが3よりも大きくなるまで同様の
操作を行う。この時に用いる水は水道水でも構わないが
脱イオン水の方が好ましい。
【0062】シリカ非晶質繊維を用いる場合には、水道
水中のナトリウム、カリウム、マグネシウムといったア
ルカリ金属及びアルカリ土類金属がシリカ非晶質繊維の
結晶化を促進するため、脱イオン水を使用するべきであ
る。強酸水溶液中及び水中に無機質繊維を分散させる際
には、無機質繊維全体を1〜3重量%程度の含有率にな
るように分散させることが望ましい。分散させる際の無
機質繊維の重量割合を大きくすると、分散させる攪拌モ
ータの出力を大きくすることが必要であり、分散中に無
機質繊維を短く折ってしまい、強度を低下させる可能性
がある。
【0063】窒化ホウ素は攪拌モータと超音波洗浄機を
用いてpH3〜6の水溶液中に分散させておく。これは
1つには窒化ホウ素が弱酸性域で分散が良好であるため
であり、もう一つは分散させた無機質繊維懸濁液に合わ
せるためである。窒化ホウ素の分散は、pH3〜6の水
溶液に対し1.5〜2.0重量%の含有率とすることが
望ましい。このようにpH3〜6の水溶液中に窒化ホウ
素粉末を分散させて得られた窒化ホウ素粉末懸濁液を、
無機質繊維を分散させたpHが3よりも大きい水溶液中
に加え、30分間程度混合する。
【0064】無機質繊維はpH3〜6の弱酸性域で水中
に分散されているが、無機質繊維はpHをアルカリ側に
変化させる(分散時のpHの値よりもpHの値を大きく
する)ことで分散状態から凝集状態へと変化し、窒化ホ
ウ素粉末を捕集した無機質繊維の凝集体を得ることがで
きる。
【0065】凝集した前記無機質繊維は脱水・成形時に
緩衝材料のように抵抗として働くため、前記無機質繊維
の凝集度合いを変化させることにより、成形時の抵抗の
度合いを変化させ、充填の度合いを変化させることがで
きる。この結果、フィルターの気孔率、強度を、希望す
るものにコントロールすることが可能である。
【0066】また、成形中においては、無機質繊維の凝
集体単位で成形させることができるため、無機質繊維の
配向を抑制できる。通常、抄造といった成形方法を用い
る場合には、加圧方向に繊維が配向してしまい、厚さ方
向の引張強度が低いといった問題点があったが、本発明
では配向を抑制できるため、フィルターの方向性をなく
し、強度を高くすることを可能とした。
【0067】この様な配向を抑制するには懸濁液を成形
前にpH4以上に調整すればよいが、好ましくはpH4
〜10である。pHを10以上にしても抑制効果は変わ
らないが、廃液の処理等のように工程が煩雑になるため
pHを10以下とすることが好ましい。
【0068】pH調整に用いられるpH調整剤は、アン
モニア水、又は酢酸アンモニウムなどが好ましく、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物はシ
リカ非晶質繊維を結晶化させ、フィルターの強度を著し
く低下させてしまうため望ましくない。
【0069】pH制御を行った無機質繊維とホウ素化合
物粉末の混合懸濁液は、真空成形により脱水、成形す
る。その後、成形体を80〜110℃で乾燥し、窒化ホ
ウ素が酸化し、無機質繊維と反応する温度以上の120
0〜1400℃(好ましくは1300〜1400℃)で
焼成する。昇温速度は成形体内部まで均一な温度になる
ように選択し、1時間で100〜250℃昇温させる程
度、即ち100〜250℃/hr.(好ましくは100
〜200℃/hr.)程度が望ましい。最高温度での保
持時間は1〜2時間程度で良い。焼成時の雰囲気は窒化
ホウ素の酸化を促進するため、酸化雰囲気が好ましい。
【0070】
【実施例】シリカ非晶質繊維(米国Shuller社製Q-Fibe
r、純度:99.7wt%SiO2、真比重:2.0g/
cm3、繊維の平均径:2μm)600gをpH1の塩
酸水溶液35l中に攪拌モータを用いて分散させ、強酸
水溶液を除去した。強酸水溶液を除去したシリカ非晶質
繊維に脱イオン交換水を35l加え攪拌モータで20分
間分散し、分散液を除去するという一連の操作を2回繰
り返した。
【0071】アルミナ繊維(英国ICI社製SAFFI
L、純度:96wt%Al23、真比重:3.2g/c
3、繊維の平均径:3μm)150gもpH1の塩酸
水溶液25l中に攪拌モータを用いて分散させ、強酸水
溶液を除去した。強酸水溶液を除去したアルミナ繊維も
シリカ非晶質繊維と同様に脱イオン水を25l加え攪拌
モータで20分間分散し、分散液を除去するという一連
の操作を2回繰り返した。
【0072】このシリカ非晶質繊維とアルミナ繊維を混
合し、六方晶窒化ホウ素粉末(電気化学工業(株)製デ
ンカボロンナイトライド、平均粒径:7.3μm、酸化
温度:950℃)31.2gを分散させた水溶液を1.
5l加え攪拌モータで30分混合した後、濃アンモニア
水(28%NH3)で4.3〜9.0の各pH(pH
9.0、7.0、5.0及び4.3)に調整し、シリカ
非晶質繊維、アルミナ繊維及び窒化ホウ素粉末から成る
凝集体を得た。
【0073】pH調整後、有効口径36cm×36cm
の真空成型機で脱水して縦36cm×横36cmの成形
体を得て、この成形体をさらに高さ8.5cmまで加圧
し、得られた成形体を100℃で乾燥した。乾燥後、成
形体を大気雰囲気中で1300℃、1.5時間焼成し、
実施例1〜4のフィルターを得た。得られた実施例1〜
4の各々のフィルターの気孔率(体積%)及び曲げ強度
(kgf/cm2)を表1に示す。また、各々のフィル
ターの気孔径は、実施例1のものが58μmであり、実
施例2のものが56μmであり、実施例3のものが56
μmであり、実施例4のものが54μmであった。
【0074】
【表1】
【0075】表1には、シリカ非晶質繊維76.8重量
%、アルミナ繊維19.2重量%、窒化ホウ素4重量%
で調合し、成形直前のpHを変えて得られた各フィルタ
ーの気孔率と曲げ強度を示している。通常、フィルター
の気孔率を変化させるためには、調合の変更、成形時の
加圧力の変更により行っていたが、本発明の方法によれ
ば、pHのみを変化させるだけで原料の調合、製造方法
を変えることなく気孔率を所望の値に変更することがで
きる。
【0076】実施例1のフィルターのXRD(X線回折
法)パターンを図1に示す。補強用に用いたアルミナ繊
維のコランダムのピークは確認できるが、クリストバラ
イトのピークは確認できなかった。
【0077】[比較例]比較例として、アルミナ粒子
(#320)をホウ珪酸ガラスで結合させた粒子結合型
フィルターを作製した。このフィルターは、気孔率が4
0%、細孔径が10μmであった。
【0078】表1に示した本発明の実施例1〜4のフィ
ルターをトレー(縦10cm、横10cm、高さ7c
m、壁の厚さ2cmの升)形状に加工し、その中へ油水
混合液を入れたところ、トレー構造の内側に油の吸着は
見られたものの、トレー構造裏側からしみ出した液体は
水であり、油微粒子の存在は全く見られなかった。油水
分離の終了時において、油はトレー構造の内側に残って
いた。前記実施例のフィルターにより、油水分離が可能
となった。なお、使用した油水混合液は、粘度4.12
cP(B型粘度計による測定)のサラダ油1重量部と水
100重量部の混合液である。
【0079】一方、従来からの粒子を焼結した比較例の
フィルターの場合、しみ出した液体の中に油の微粒子が
存在していることを確認した。
【0080】上記実施例のフィルターは、無機質繊維を
用い、無機質繊維が複雑に絡み合った3次元網目構造の
フィルターである。比表面積は、0.6m2/gであ
り、粒子を焼結させた比較例のフィルターあるいはセラ
ミックフォームの0.06m2/gより大きい。このた
めフィルター単位体積あたりの−OH基が多くなってい
るから、見かけの親水性が高い。従って、油をフィルタ
ー内部にほとんど吸収することがないため、油水分離が
可能となる。
【0081】また、無機繊維質による前記実施例の各フ
ィルターは、いずれも気孔率が80%以上と極めて高い
ため、セラミックフィルター体積あたりの処理量も従来
より大きい。
【0082】なお、従来から無機質繊維のフェルト、マ
ットの成形体は存在するが、前記各実施例のフィルター
は、3次元網目構造を有するため、高い気孔率を持つに
もかかわらず、曲げ強度でいづれも10kgf/cm2
以上の高い強度を持つ。
【0083】このため、板状、円筒状などの形状を付与
して、従来の装置の中に組み込んで連続して使用する場
合にも十分耐えうる。
【0084】
【発明の効果】請求項1〜10の油水分離フィルター
は、無機質繊維と前記無機質繊維を結合する無機質結合
剤を含有して成る高気孔体を有し、前記高気孔体の少な
くとも油水混合液との接触部分は、水を通過させ油を遮
断するのに十分な親水性であるので、次の基本的効果を
奏することができる。
【0085】請求項1〜10の油水分離フィルターは、
前記高気孔体を含有するので、比表面積が高く、単位体
積あたりの−OH基が多いと共に、前記高気孔体の少な
くとも油水混合液との接触部分は、水を通過させ油を遮
断するのに十分な親水性であるから、油水混合液(特
に、油の含有率が水の含有率よりも著しく小さい油水混
合液)を水と油に良好に分離することができる。特に、
濾過された液体(水等の水溶性成分)の中に油の微粒子
が混入することを防止して、油水混合液から水のみを良
好に分離して、水分含有率が小さい油を得ることができ
る。
【0086】また、請求項1〜10の油水分離フィルタ
ーは、前記高気孔体を含有するので、気孔率が高いため
油水混合液の処理能力(油水分離能力)が高く、短時間
で大量の油水混合液を処理することができる。よって、
油(特に、水分含有率が著しく低い油)を極めて効率よ
く回収することができる。従って、本発明の油水分離フ
ィルターを使用する装置をコンパクトにすることも可能
である。
【0087】さらに、請求項1の油水分離フィルター
は、シリコーン系のオイルを必須とすることなしに、油
水混合液を分離することができる。従って、使用中にお
けるシリコーン系のオイルの脱離によるフィルターの目
詰まりなしに油水混合液を分離することができる。
【0088】請求項2〜10の油水分離フィルターは、
請求項1の構成に加えてそれぞれの各請求項に記載の構
成をさらに具備するので、上記基本的な効果がより一層
顕著である。
【0089】請求項11〜18の油水分離フィルターの
製造方法は、無機質結合剤形成原料粉末を捕集した無機
質繊維の凝集体を含む成形体を、前記無機質結合剤形成
原料粉末と前記無機質繊維が反応する最低温度以上の温
度で焼成する焼成工程を含むので、本発明の油水分離フ
ィルターを簡単に製造することができるという基本的な
効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1のフィルターのXRD(X線
回折法)パターンである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 000004293 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 愛知県名古屋市西区則武新町3丁目1番36 号 (74)上記3名の代理人 100080816 弁理士 加藤 朝道 (72)発明者 垰田 博史 愛知県名古屋市名東区平和が丘1丁目70番 地猪子石住宅4棟301号 (72)発明者 野浪 亨 愛知県名古屋市名東区平和が丘1丁目70番 地猪子石住宅1棟302号 (72)発明者 矢野 賢司 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 加藤 真示 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 岩田 美佐男 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 松永 博和 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 Fターム(参考) 4D019 AA04 BA01 BA05 BB06 BB07 BC13 BD01 BD10 CB06

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機質繊維と前記無機質繊維を結合する無
    機質結合剤を含有して成る高気孔体を有し、前記高気孔
    体の少なくとも油水混合液との接触部分は、水を通過さ
    せ油を遮断するのに十分な親水性であることを特徴とす
    る油水分離フィルター。
  2. 【請求項2】前記高気孔体は、3次元網目構造の高気孔
    体であることを特徴とする請求項1に記載の油水分離フ
    ィルター。
  3. 【請求項3】前記接触部分は、水を通過させ油を遮断す
    るのに十分な比表面積を有することを特徴とする請求項
    1〜2のいずれかに記載の油水分離フィルター。
  4. 【請求項4】前記比表面積は、0.6m2/g以上であ
    ることを特徴とする請求項3に記載の油水分離フィルタ
    ー。
  5. 【請求項5】前記高気孔体は、気孔率が80体積%以上
    であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載
    の油水分離フィルター。
  6. 【請求項6】前記高気孔体は、曲げ強度が8kgf/c
    2以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれ
    かに記載の油水分離フィルター。
  7. 【請求項7】前記無機質繊維は、実質的に非晶質のシリ
    カ繊維を主たる無機質繊維として含むことを特徴とする
    請求項1〜6のいずれかに記載の油水分離フィルター。
  8. 【請求項8】前記無機質繊維は、さらに、アルミナ繊
    維、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート
    繊維のうちの1種以上を補強用無機質繊維として含むこ
    とを特徴とする請求項7に記載の油水分離フィルター。
  9. 【請求項9】前記無機質結合剤は、実質的に非晶質のシ
    リカ繊維の結晶化を抑制する結晶化抑制剤の粉末と無機
    質繊維との反応生成物を含むことを特徴とする請求項7
    〜8のいずれかに記載の油水分離フィルター。
  10. 【請求項10】前記結晶化抑制剤の粉末は、(a)非金
    属ホウ化物、(b)ジルコニウムの窒化物、硝酸塩、炭
    酸塩及び硼化物、(c)クロムの窒化物、硝酸塩、炭酸
    塩及び硼化物、(d)イットリウムの窒化物、硝酸塩、
    炭酸塩及び硼化物、(e)バナジウムの窒化物、硝酸
    塩、炭酸塩及び硼化物、(f)ランタノイド系元素の窒
    化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物のうちの少なくとも1
    種を含有する粉末であることを特徴とする請求項9に記
    載の油水分離フィルター。
  11. 【請求項11】無機質結合剤形成原料粉末を捕集した無
    機質繊維の凝集体を含む成形体を、前記無機質結合剤形
    成原料粉末と前記無機質繊維が反応する最低温度以上の
    温度で焼成する焼成工程を含むことを特徴とする油水分
    離フィルターの製造方法。
  12. 【請求項12】前記凝集体として、無機質結合剤形成原
    料粉末と無機質繊維が分散する分散液のpHを調整して
    得られた凝集体を用いることを特徴とする請求項11に
    記載の油水分離フィルターの製造方法。
  13. 【請求項13】前記分散液として、pH3以上の弱酸性
    の分散液を用いることを特徴とする請求項12に記載の
    油水分離フィルターの製造方法。
  14. 【請求項14】前記成形体として、前記凝集体を真空成
    形して得られる成形体を用いることを特徴とする請求項
    11〜13のいずれかに記載の油水分離フィルターの製
    造方法。
  15. 【請求項15】前記分散液をpH4〜10に調整し、p
    H3以上の弱酸性の分散液に分散していた無機質繊維の
    凝集の程度を変化させることによって、焼成後に得られ
    る高気孔体の気孔率を制御することを特徴とする請求項
    12〜14のいずれかに記載の油水分離フィルターの製
    造方法。
  16. 【請求項16】前記分散液を、前記焼成工程の焼成後に
    得られる高気孔体の気孔率に対応するpH4〜10の範
    囲内の所定pHに調整することを特徴とする請求項12
    〜15のいずれかに記載の油水分離フィルターの製造方
    法。
  17. 【請求項17】前記無機質繊維として、実質的に非晶質
    のシリカ繊維を主原料として含有する無機質繊維を用い
    ることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載
    の油水分離フィルターの製造方法。
  18. 【請求項18】前記無機質結合剤形成原料粉末として、
    (a)ホウ素酸化物形成原料、(b)ジルコニウムの窒
    化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(c)クロムの窒化
    物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(d)イットリウムの
    窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(e)バナジウム
    の窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物、(f)ランタノ
    イド系元素の窒化物、硝酸塩、炭酸塩及び硼化物のうち
    の少なくとも1種の粉末を用いることを特徴とする請求
    項11〜17のいずれかに記載のセラミックシートの製
    造方法。
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