WO2022209116A1 - 接着用樹脂組成物、接着フィルム及び接着構造体 - Google Patents

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Abstract

同種もしくは異種の2つの被接着体を接着するための熱可塑性の接着用樹脂組成物であって、フェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーを含有し、(a)示差走査熱量測定(DSC)法にて測定される融点が180℃以上である、(b)JIS K 7161にて測定される引張破断伸びが10%以上である、を満たす接着用樹脂組成物。フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度が65℃~160℃の範囲内のビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましく、熱可塑性エラストマーは、引張破断伸びが200%以上であり、融点が180℃を超えるポリエステルエラストマーであることが好ましい。

Description

接着用樹脂組成物、接着フィルム及び接着構造体
 本発明は、樹脂材料と金属材料のような2つの材料を接着する際に使用する接着用樹脂組成物、それを用いる接着フィルム及び接着構造体に関するものである。
 多くの工業製品は、金属、樹脂、セラミックスなど、種々の材料により構成されており、これらの異なる材質からなる部材をあらかじめ所望の形状に成形した上で、ねじ、リベットなどの接合部材によって接合・一体化されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
 しかし、ねじ、リベットなどの機械的な接合部材を用いた接合は、穴あけ加工など接合のための作業が煩雑であり、接合部に応力が集中しやすいという問題がある。
 一方、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂を用いた接着接合は作業が簡便であり、機械的な接合部材が不要なために製品の意匠性等が良好となることから、2つ以上の部材の接合には接着を利用することも近年多くなってきている。
 さらに、昨今の省資源・省エネルギーの観点から材料や製品の軽量化のための取り組みが推進されており、特に自動車産業においては、車体の軽量化を図り、燃費や走行性能を向上させるための積極的な検討が進められている。
 この分野では、従来の金属部材を単純に樹脂部材(特に繊維強化プラスチックからなる部材)へ置き換えることも検討されている。また、金属部材と樹脂部材を組み合わせて(例えば両者を「接着接合」して)双方の特徴を生かす「マルチマテリアル化」とも呼ばれる部材設計も広く検討されている。
 このマルチマテリアル化検討の一例として、特許文献3では、アルミニウム合金製アウターパネルと繊維強化プラスチック製インナーパネルを接着剤で接着することによって接合パネルを製造する方法が開示されている。
 ところが、このように接着剤を用いる場合、接着剤が硬化するために長い時間が必要となる。しかも、被接着体が異なる線膨張率を有する材料であるが故に、残留応力などの問題により外力が加わることによって剥離してしまうトラブルが起きる可能性がある。
 また、特許文献4は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂と金属部材とを熱可塑性エラストマーを介して、内部加熱により溶着させて接合体を作成する方法を開示している。しかし、特許文献4に開示されている方法は、レーザー光照射や超音波照射などの方法で溶着させるために特殊な装置を用いる必要があり、汎用性が低く、エラストマー単体では接着力が不足する可能性がある。
特開2008-111536号公報 特開2015-175460号公報 特開2015-196326号公報 特開2016-221970号公報
 本発明の目的は、例えば樹脂材料と金属材料のような2つの材料の接着において、高い耐熱性を有し、せん断及び剥離のいずれの力に対しても強い接着を可能とする接着用樹脂組成物を提供することである。
 上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、フェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーを所定の比率で含有する接着用樹脂組成物が2つの材料の接着において優れた接着性を発現し得ることを見出し、本発明を完成した。
 すなわち、本発明の接着用樹脂組成物は、2つの被接着体を接着するための接着用樹脂組成物であって、フェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーを含み、下記の条件(a)及び(b)を満たすものである。
 (a)示差走査熱量測定(DSC)にて測定される融点が180℃以上である。
 (b)JIS K 7161にて測定される引張破断伸びが10%以上である。
 本発明の接着用樹脂組成物において、フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度が好ましくは65℃~160℃の範囲内、より好ましくは120℃以下のビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂であってもよい。
 本発明の接着用樹脂組成物において、前記熱可塑性エラストマーは、引張破断伸びが好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上で、融点が好ましくは180℃超、より好ましくは200℃以上であるポリエステルエラストマーであってもよい。
 本発明の接着用樹脂組成物において、フェノキシ樹脂とポリエステルエラストマーの重量比(フェノキシ樹脂:ポリエステルエラストマー)は、好ましくは10:90~60:40の範囲内であり、より好ましくは10:90~50:50の範囲内であってもよい。
 さらに、本発明の接着用樹脂組成物は、更に(c)DSC法にて測定される25℃~180℃の範囲内にガラス転移温度を持たないことが望ましい。
 また、本発明の接着フィルムは、上記接着用樹脂組成物からなるものである。
 さらに、本発明の接着構造体は、同種もしくは異種の2つの被接着体が、上記接着フィルムを介して接着接合されたものである。
 本発明の接着用樹脂組成物によれば、2つの材料、例えば樹脂材料と金属材料のような異種材料を強固に接着させることが可能となる。本発明の接着用樹脂組成物を用いることによって、耐熱性に優れるとともに、せん断及び剥離のいずれの力に対しても強い接着強度を発現する接着構造体を得ることができる。また、接着用樹脂組成物が熱可塑性である故に、従来の熱硬化性樹脂系の接着剤に比べて、短時間で接着が可能となる。
耐熱性評価の試験方法の説明に供する図面である。 示差走査熱量測定法(DSC法)による測定結果を示す図面である。
 以下、本発明の実施の形態である接着用樹脂組成物、接着フィルム及び接着構造体について詳細に説明する。
<接着用樹脂組成物>
 本実施の形態の接着用樹脂組成物は、フェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーを必須成分として含有する樹脂組成物である。
 本発明におけるフェノキシ樹脂とは、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応、あるいは2価フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂との重付加反応から得られる非晶性の熱可塑性樹脂である。フェノキシ樹脂は、溶液中あるいは無溶媒下に従来公知の方法で得ることができる。なお、フェノキシ樹脂は、別の呼び方としてポリヒドロキシポリエーテル樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂などと呼ばれることもある。
 フェノキシ樹脂の平均分子量は、質量平均分子量(Mw)として、通常10,000~200,000の範囲内であるが、好ましくは20,000~100,000の範囲内であり、より好ましくは30,000~80,000の範囲内である。Mwが低すぎると接着用樹脂組成物の強度が劣り、高すぎると作業性や加工性に劣るものとなり易い。なお、Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値である。
 フェノキシ樹脂の水酸基当量(g/eq)は、通常50~1000の範囲内であるが、好ましくは50~750の範囲内であり、特に好ましくは50~500の範囲内である。水酸基当量が低すぎると水酸基が増えることで吸水率が上がるため、機械物性が低下する懸念がある。水酸基当量が高すぎると水酸基が少ないため、特に金属材料との接着性が低下する。
 フェノキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば65℃~160℃の範囲内のものが適するが、好ましくは70℃~150℃の範囲内である。ガラス転移温度が65℃よりも低いと成形性は良くなるが、ブロッキングによる粉体もしくはペレットの貯蔵安定性の悪化やプリフォーム時のべたつき(タック性が悪い)などの問題が生じる。ガラス転移温度が160℃よりも高いと加工温度が高くなり、作業性に劣るものとなり易い。また、ガラス転移温度が160℃を超えると、樹脂粘度が高くなり接着力が低下する。ガラス転移温度は、より好ましくは120℃以下であるとよい。なお、フェノキシ樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、10℃/分の昇温条件で、20~280℃の範囲で測定し、セカンドスキャンのピーク値より求められる数値である。
 フェノキシ樹脂には、ビスフェノール骨格やビフェノール骨格、フルオレン骨格、リン原子を含有する骨格など多種多様な構造を有するフェノキシ樹脂が存在するが、ビスフェノール骨格を有するものが好適である。このようなフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の商品名フェノトートYP-50、同YP-50S、同YP-55U)、ビスフェノールAとビスフェノールFの共重合型フェノキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の商品名YP-70)等が挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して使用することができる。
 本発明における熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメント(結晶相)とソフトセグメント(非晶相)とを構成単位として含む熱可塑性樹脂を意味する。熱可塑性エラストマーは、ゴム弾性を示すソフトセグメントを持つことで、本実施の形態の接着用樹脂組成物の引張破断伸びを改善し、特に剥離に対する接着力を高めることができる。また、熱可塑性エラストマーは、疑似架橋構造による結晶相となるハードセグメントを持つことで、本実施の形態の接着用樹脂組成物の耐熱性を高めることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えばオレフィン系(TPV)、ポリウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE)、ポリアミド系(PEBA)、アクリル系、スチレン系などが挙げられる。その中でも、ポリエステル系エラストマー(ポリエステルエラストマー、TPEE)が好ましい。
 上記ポリエステルエラストマー(TPEE)とは、ハードセグメントとしてポリエステル単位を含み、ソフトセグメントとしてポリエーテル及び/又はポリエステル単位を含む熱可塑性のポリエステルブロック共重合体を意味する。
 ハードセグメントとしてのポリエステル単位は、芳香族ポリエステルが好ましく、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等、及び、これらの混合物が挙げられる。
 ソフトセグメントとしてのポリエーテル及び/又はポリエステル単位は、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート等であり、ポリテトラメチレングリコールやポリラクトン、ポリジメチルトリメチレンカーボネート等が例示される。
 ポリエステルブロック共重合体は、公知の方法で製造することができる。例えば、ハードセグメント成分として芳香族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸低級アルキルジエステルなどのエステル形成性誘導体、過剰量のジオール(低分子量グリコール)、及び、ソフトセグメント成分として脂肪族ポリエーテル及び/又は脂肪族ポリエステルを触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法が挙げられる。
 なお、ポリエステルエラストマーのハードセグメントとソフトセグメントの存在の仕方は特に制限はなく、ハードセグメント端部にソフトセグメント端部が結合した完全ブロック、ブロック端部にランダム部分が結合したブロック-ランダム、ブロック部分がランダムに存在するランダムブロックなど、又はこれらの混合物であってもよい。
 上記熱可塑性エラストマーは、引張破断伸びが200%以上であるものが好適であり、300%以上であるものがより好ましい。引張破断伸びが200%を下回ると接着用樹脂組成物の接着力、特に剥離に対する接着力が低くなる。
 なお、本発明における熱可塑性エラストマーの引張破断伸びとは、JIS K 7161にて測定される値を言う。
 また、上記熱可塑性エラストマーは、融点が180℃を超えるものが好適であり、融点が200℃以上であるものがより好ましい。融点が180℃以下であると接着用樹脂組成物の融点が低下し、耐熱性が低くなる。
 なお、本発明における熱可塑性エラストマーの融点とは、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される値を言う。
 熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、市販品から上記物性を満たすものを選んで利用することもできる。市販品としては、例えばポリエステルエラストマーであれば、ペルプレン(商品名、東洋紡社製)、ハイトレル(商品名、東レ・デュポン社製)、テファブロック(商品名、三菱ケミカル社製)、エステラール(商品名、アロン化成社製)等が挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して使用することができる。
 本実施の形態の接着用樹脂組成物を構成する成分としては、上記フェノキシ樹脂と上記熱可塑性エラストマー以外に任意成分を含んでいても良い。好ましい任意成分としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ナイロン6やナイロン610などのポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。このとき、接着用樹脂組成物中の樹脂成分の総重量に占めるフェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーの合計の重量割合は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが望ましい。フェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーの合計の重量割合が70%未満となると所望の特性が発現しにくくなってしまう。
 接着用樹脂組成物は、更に、目的に応じて難燃剤、無機フィラー、着色剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、架橋剤、着色剤などの任意成分を含んでも良い。この場合も、接着用樹脂組成物中の溶剤を除く固形分の総重量に占めるフェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーの合計の重量割合は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが望ましい。フェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーの合計の重量割合が70%未満となると所望の特性が発現しにくくなってしまう。
 接着用樹脂組成物は、フェノキシ樹脂、熱可塑性エラストマー、及び、必要に応じて任意成分を混合することによって調製できる。
 フェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマー及びそのほかの成分を混合する方法に特に制限はなく、一般公知の方法を用いることが出来る。例えば、各成分を溶剤で溶かしてワニス化し、プロペラミキサーや自転公転式脱泡撹拌機などの撹拌・混合機を用いてブレンドする方法や、ニーダーや押出機などを用いて各成分を溶融混練する方法などが挙げられる。なかでも、各成分を均一に混合できる方法として溶融混練が好ましく、2軸押出機により溶融混錬する方法が最も好ましい。
 本実施の形態の接着用樹脂組成物におけるフェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーの重量比としては、好ましくは10:90~60:40の範囲内であり、より好ましくは10:90~50:50の範囲内である。フェノキシ樹脂の重量比率が10%未満であると、接着力が低下する恐れがある。フェノキシ樹脂の重量比率が60%を超えると、耐熱性が低下する恐れがある。
 本実施の形態の接着用樹脂組成物の融点は180℃以上であることが好ましく(条件a)、より好ましくは、200℃以上である。融点が180℃以上であれば、自動車用途など耐熱性の要求される部材への応用が可能となる。なお、本発明における接着用樹脂組成物の融点とは、示差走査熱量測定装置(DSC)により測定される値を言う。
 また、本実施の形態の接着用樹脂組成物の引張破断伸びは10%以上であることが好ましく(条件b)、より好ましくは100%以上である。引張破断伸びが10%を下回ると、特に剥離に対する接着力が低くなる。なお、本発明における接着用樹脂組成物の引張破断伸びとは、JIS K 7161にて測定される値を言う。
 さらに、本実施の形態の接着用樹脂組成物は25~180℃の範囲においてガラス転移温度を持たない(条件c)ことが望ましい。条件cは、本実施の形態の接着用樹脂組成物が25~180℃の範囲に貯蔵弾性率の急激な低下(つまり、軟化を意味する)がなく、接着力の変化が少ないことを示している。すなわち、条件cを満たすことで耐熱性が高いことを示している。なお、本発明における接着用樹脂組成物のガラス転移温度とは、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて0~280℃の範囲で測定し、セカンドスキャンのピーク値より求められる数値である。
 上記条件a、条件bのいずれかが満たされない場合、本実施の形態の接着用樹脂組成物を用いて作成された接着構造体において、接着力と耐熱性の両立が難しくなる場合がある。
 また、本実施の形態の接着樹脂組成物は、その固形物の表面の10μm×10μmの面積範囲において、原子間力顕微鏡(AFM)により観察することができる弾性率位相イメージ画像にてフェノキシ樹脂とポリエステルエラストマーの両者に起因する相分離構造が観察されないか、ほとんど観察されない、という特徴を有している。
 ここで、「フェノキシ樹脂とポリエステルエラストマーの両者に起因する」とは、フェノキシ樹脂自体、又は、ポリエステルエラストマー自体に起因する相分離構造は除くことを意味する。
 弾性率位相イメージ画像は、具体的には、クライオミクロトーム(-40℃)を用いて接着用樹脂組成物の表面を平滑にする面出しを行った後、Bruker-AXS社製NCHVプローブ(先端曲率半径10nm、ばね定数42N/m)をセットしたBruker-AXS社製Dimension Icon型AFMを用いて、タッピングモードでスキャンして観測することができる。上記方法により、本実施の形態の接着用樹脂組成物の任意の表面を観測すると、フェノキシ樹脂とポリエステルエラストマーの両者の弾性率の差に起因する陰陽の無い一様なイメージ画像となり、海島構造や共連続構造をとるような場合にみられる斑点もしくは縞状の明瞭な模様(相分離構造)が観測されないか、ほとんど観察されない。
 このような構造を有することによって本実施の形態の接着用樹脂組成物は、引張せん断接着強度と十字剥離強度の両立を図ることができる。
 本実施の形態の接着用樹脂組成物は、固形状(ペレット状)、粉末状、液状などの様々な形態とすることが可能であり、例えば、ペレットをそのまま使用しても良いし、溶剤によりワニス化しても良いし、粉末化して使用することもできるが、ハンドリング性などの観点からフィルム化された接着フィルムとして用いることが好ましい。なお、溶剤を使用して接着用樹脂組成物を液状の形態とする場合は、溶剤を除去した固形の状態で上記条件を判断すればよい。
<接着フィルム>
 本実施の形態の接着用樹脂組成物をフィルム化する方法に特に制限はなく、一般公知の方法を用いることが出来る。例えば、溶融押出成形法、溶液キャスティング成形法、カレンダー成形法などが挙げられる。
 本実施の形態に係る接着フィルムは、たとえば、5~500マイクロメートルの範囲内の厚さを有する。好ましくは、5~250マイクロメートルの範囲内の厚さを有するフィルムであり、より好ましくは、10~100マイクロメートルの範囲内の厚さを有するフィルムである。
 本実施の形態の接着用樹脂組成物及び接着フィルムは、同種もしくは異なる材質の2つの被接着体を接着するために好適に使用される。以下、本発明の接着用樹脂組成物又は接着フィルムを用いて接着した接着構造体について説明する。
<接着構造体>
 本実施の形態の接着構造体は、第1の被接着体と、この第1の被接着体と同種もしくは異なる第2の被接着体と、第1の被接着体と第2の被接着体との間に介在する接着樹脂層と、を備え、接着樹脂層が接着用樹脂組成物又は接着フィルムによって構成されている。つまり、接着構造体は、同種もしくは異なる2つの被接着体を、接着用樹脂組成物又は接着フィルムを用いて接着したものである。
 なお、被接着体の形状や大きさについては特に制限はなく、例えば、板状であってもよく、立方体や直方体などであっても良いし、事前に所望の形状に賦形された形状であっても良く、第1の被接着体と第2の被接着体の形状や大きさが異なっていても良い。
 接着構造体の2つの被接着体は、例えば金属部材同士や樹脂部材同士の同種の材質であってもよいが、被接着体の一方は樹脂材料であり、もう一方は樹脂材料以外の異種材料(以下、単純に「異種材料」と呼称する)であることが好ましい。本実施の形態の接着用樹脂組成物又は接着フィルムを用いて接着した接着構造体は、両者が強く接着しており、特に自動車関連部材にて要求される耐熱性も満足することができる。実用上好ましい異種材料による接着構造体の一例としては、繊維強化プラスチック材料と金属部材とによるものであり、フェノキシ樹脂を含有する繊維強化プラスチック材料と金属部材の組合せがより好ましい。
 上記樹脂材料は、合成樹脂またはプラスチックからなる材料である。樹脂材料としては、例えば、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルフォン、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなど、熱硬化性樹脂であるポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
 樹脂材料は、強化材により強化されたものでもよい。強化材としては、例えばシリカ、タルク、マイカ、クレー、鉄粉、アルミ粉、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなどの粉体状のものや、炭素繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの繊維状のものが挙げられる。これらの中でも、炭素繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、ガラス繊維、アラミド繊維のような繊維状の強化材が好ましく、より好ましくはこれらの連続繊維による強化繊維基材(例えば、織布や一方向に引き揃えられた連続繊維束)により強化されたものであることがよい。
 次に、異種材料について説明する。本発明における異種材料とは、上記樹脂材料以外の素材を示す。例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタン、マグネシウムなどの純金属やステンレス、ジュラルミン、真鍮、チタン合金、マグネシウム合金などの合金類のような金属材料およびこれらの表面を亜鉛などによりめっきした表面処理したもの、ガラス、セメント、セラミックス、木材などが挙げられる。本発明ではこれらの材料の組合せについて特に制限はないものの、金属材料やガラス、セメントなどのセラミックス材料への適用が好ましく、特に、樹脂材料と表面めっき材を含む金属材料からなる接着構造体は、産業上の利用範囲が広く極めて有用である。
 樹脂材料と異種材料の特に好ましい組み合わせとしては、例えば、樹脂材料が繊維強化プラスチックであり、異種材料が鋼鈑である組み合わせを挙げることができる。この場合、繊維強化プラスチックにおけるマトリックス樹脂としては、使用する接着用樹脂組成物又は接着フィルムと親和性が高い樹脂を含むことが好ましく、例えばフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などをマトリックス樹脂とするものがよい。なお、特に好ましくはフェノキシ樹脂であり、前記繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂中にフェノキシ樹脂が20重量%以上含まれていることが最も好ましい。
 上記接着構造体を作成する方法としては、接着用樹脂組成物又は接着フィルムを樹脂材料と異種材料の間に配置し、加熱することにより接着用樹脂組成物を軟化させ、樹脂材料と異種材料を圧着させる方法が挙げられる。具体的には、加熱圧縮プレス機にて加熱と圧着を一度に行う方法、高速回転する治具や超音波を発生する治具を押し当てる事で発生した熱により圧着する方法、接着用樹脂組成物又は接着フィルムをホットプレートや熱風オーブン、ハロゲンヒーター、赤外線ヒーターなどにあらかじめ加熱した樹脂材料および/または異種材料で挟み圧着する方法などが挙げられる。加工条件は、例えば、加熱温度200~300℃、圧力0.5~5MPa、時間1~20分程度の条件が好ましい。より好ましくは、加熱温度220~250℃、圧力1~4MPa、時間1~10分である。
 以上説明したように、本実施の形態の接着用樹脂組成物又は接着フィルムを使用することにより、樹脂材料と金属材料のような異種材料を接着し、せん断及び剥離双方の力に対しても強い接着構造体を得ることができる。このように製造された接着構造体は、電気・電子機器などの筐体のみならず、土木建築部材、自動車部材、航空機部材などの用途における構造部材としても好適に使用することができるものである。
 以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各種物性の試験及び測定方法は以下の通りである。
<接着用樹脂組成物の評価方法>
(ガラス転移温度、融点)
 JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠して測定した。測定温度範囲は、-30℃~250℃とした。なお、非晶性樹脂のように明確な融点が測定できないものはNDとした。
(引張破断伸び)
 JIS K 7161(プラスチック-引張特性の求め方)に準拠して測定した。なお、測定は25℃環境下にて実施した。
<接着構造体の評価方法>
(引張せん断接着強度)
 JIS K6850(接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)を参考に測定した。なお、測定は25℃環境下にて行い、評価した被接着体の厚みは各素材により異なるため、厚みの異なる当て板で接着面に負荷が正しくかかるようにした。
(十字剥離試験)
 JIS Z3137(抵抗スポット及びプロジェクション 溶接継手の十字引張試験に対する 試験片寸法及び試験方法)を参考に接着面積625mm(25×25mm)の試験片より測定した。なお、測定は25℃の環境下にて行い、引張速度は2mm/minにて実施した。
(耐熱性評価)
 試験片は引張せん断接着強度試験用試験片と同じものを使用して評価した。図1に示すように、下部に500gの重りWをぶら下げた試験片10を熱風オーブン中に吊るし、180℃で30分放置した後、接着面に変化がないものは「○」(良)、接着面がずれたものは「×」(不良)とした。なお、試験片10は、図1に示すように、被接着体Aと被接着体Bを接着部Cで接着したものであり、被接着体Aと被接着体Bの重さはA<Bの関係である。重さが軽い被接着体Aを上に向けて固定した。
[実施例1]
 フェノキシ樹脂(商品名;フェノトートYP50S、日鉄ケミカル&マテリアル社製、ガラス転移温度84℃)とポリエステルエラストマー(商品名;ハイトレル5577、東レ・デュポン社製、融点208℃、引張破断伸び800%)を前者/後者で50/50の重量割合でドライブレンドした後、スクリュー径26mmの同方向回転の二軸押出機(設定温度:240℃)で溶融混練を行うことで、樹脂組成物1を得た。得られた樹脂組成物1の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
 フェノキシ樹脂とポリエステルエラストマーの配合比を前者/後者で20/80の重量割合としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物2を得た。得られた樹脂組成物2の評価結果を表1に示す。
[実施例3]
 フェノキシ樹脂とポリエステルエラストマーの配合比を前者/後者で10/90の重量割合としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物3を得た。得られた樹脂組成物3の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
 フェノキシ樹脂(商品名;フェノトートFX280S、日鉄ケミカル&マテリアル社製、ガラス転移温度153℃)とポリエステルエラストマー(商品名;ハイトレル5577、東レ・デュポン社製、融点208℃、引張破断伸び800%)を前者/後者で20/80の重量割合でドライブレンドした後、スクリュー径26mmの同方向回転の二軸押出機(設定温度:240℃)で溶融混練を行うことで、樹脂組成物4を得た。得られた樹脂組成物4の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
 フェノキシ樹脂(商品名;フェノトートYP50S、日鉄ケミカル&マテリアル社製、ガラス転移温度84℃)を100重量部使用し、ポリエステルエラストマーを配合しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂組成物5を得た。その評価結果を表1に示す。
[比較例2]
 ポリエステルエラストマー(商品名;ハイトレル5577、東レ・デュポン社製、融点208℃、引張破断伸び800%)を100重量部使用し、フェノキシ樹脂を配合しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂組成物6を得た。その評価結果を表1に示す。
[比較例3]
 フェノキシ樹脂(商品名;フェノトートYP50S、日鉄ケミカル&マテリアル社製、ガラス転移温度84℃)とポリエステルエラストマー(商品名;ハイトレルBD406、東レ・デュポン製、融点142℃、引張破断伸び600%)を50/50の重量割合でドライブレンドした後、スクリュー径26mmの同方向回転の二軸押出機(設定温度:220℃)で溶融混練を行うことで、樹脂組成物7を得た。その評価結果を表1に示す。
[比較例4]
 フェノキシ樹脂(商品名;フェノトートFX280S、日鉄ケミカル&マテリアル社製、ガラス転移温度153℃)とポリエステルエラストマー(商品名;ハイトレルBD406、東レ・デュポン製、融点142℃、引張破断伸び600%)を50/50の重量割合でドライブレンドした後、スクリュー径26mmの同方向回転の二軸押出機(設定温度:220℃)で溶融混練を行うことで、樹脂組成物8を得た。その評価結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 次に、得られた樹脂組成物のフィルム化を行った。
[実施例5]
 37t自動プレス機を用いて樹脂組成物1からなる厚み0.1~0.05mmの接着フィルムaを作成した。成形条件:240℃、8MPaで5分プレスを行い、加圧状態のまま60℃まで冷却した。
[実施例6]
 37t自動プレス機を用いて樹脂組成物2からなる厚み0.1~0.05mmの接着フィルムbを作成した。成形条件:240℃、8MPaで5分プレスを行い、加圧状態のまま60℃まで冷却した。
[実施例7]
 37t自動プレス機を用いて樹脂組成物3からなる厚み0.1~0.05mmの接着フィルムcを作成した。成形条件:240℃、8MPaで5分プレスを行い、加圧状態のまま60℃まで冷却した。
[実施例8]
 37t自動プレス機を用いて樹脂組成物4からなる厚み0.1~0.05mmの接着フィルムdを作成した。成形条件:240℃、8MPaで5分プレスを行い、加圧状態のまま60℃まで冷却した。
[比較例5]
 37t自動プレス機を用いて樹脂組成物5からなる厚み0.1~0.05mmの接着フィルムeを作成した。成形条件:240℃、8MPaで5分プレスを行い、加圧状態のまま60℃まで冷却した。
[比較例6]
 37t自動プレス機を用いて樹脂組成物6からなる厚み0.1~0.05mmの接着フィルムfを作成した。成形条件:240℃、8MPaで5分プレスを行い、加圧状態のまま60℃まで冷却した。
[比較例7]
 37t自動プレス機を用いて樹脂組成物7からなる厚み0.1~0.05mmの接着フィルムgを作成した。成形条件:200℃、8MPaで5分プレスを行い、加圧状態のまま60℃まで冷却した。
[比較例8]
 37t自動プレス機を用いて樹脂組成物8からなる厚み0.1~0.05mmの接着フィルムhを作成した。成形条件:200℃、8MPaで5分プレスを行い、加圧状態のまま60℃まで冷却した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 実施例および比較例で得られた接着フィルムa~hについて、示差走査熱量測定法(DSC法)によってガラス転移温度(Tg)の測定を行い、b、dを除くその結果を図2に示した。図2より、
重量比率(フェノキシ樹脂YP50S/ポリエステルエラストマー5577)が100/0(フェノキシ樹脂のみ)である接着フィルムeについては90℃近辺に明瞭な、
重量比率(フェノキシ樹脂YP50S/ポリエステルエラストマーBD406)が50/50である接着フィルムgについては10℃近辺に明瞭な、
重量比率(フェノキシ樹脂FX280S/ポリエステルエラストマーBD406)が50/50である接着フィルムhについては30℃近辺になだらかな、
ベースラインのステップ状の変化がそれぞれ観察され、ガラス転移温度を有していることが確認された。
 一方、接着フィルムa、cについては、ベースラインに明瞭なステップ状の変化は観察されず、25~180℃の範囲内にはガラス転移温度を持たないことが確認された。
 次に、得られた接着フィルムを用いて接着構造体を作成し、評価を行った。
[接着構造体(引張せん断接着試験片)の作成方法]
 接着構造体は、JIS K6850を参考に作成した。一方の被接着体(幅25mm×長さ100mm×厚み1.5~2.0mm)の先端に、幅25mm×長さ12.5mmにカットした接着フィルムを乗せ、その上にもう一方の被接着体を重ねた。これを、表3~4の条件で加熱プレスすることで試験片を作成した。
[接着構造体(十字剥離試験片)の作成方法]
 幅25mm×長さ100mm×厚み1.6mmの亜鉛メッキ鋼板(SGCC)の中央に幅25mm×長さ25mmにカットした接着フィルムを、合計の厚さが0.3mmとなるように積層して置いた。その上に、前記亜鉛メッキ鋼板と十字になるようにもう一方の亜鉛メッキ鋼板を重ねた。これを、表3~4の条件で加熱プレスすることで試験片を作成した。
[接着構造体の評価結果]
 得られた接着構造体の評価結果を表3~4に示す。なお、接着構造体(引張せん断接着試験片)が作成できた場合は〇(良好)、試験片が作成できなかった(つまり、接着できなかった)場合は×(不良)と評価した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 表3および表4中の略号は、以下の内容を意味する。
◎SGCC:亜鉛メッキ鋼板(スタンダードテストピース社製;幅25mm×長さ100mm×厚み1.6mm)
◎CF-Ph:炭素繊維強化フェノキシ樹脂板
 フェノキシ樹脂(商品名;フェノトートYP50S、日鉄ケミカル&マテリアル社製)を凍結粉砕、分級して平均粒子径D50が80μmである粉体を準備した。これを、開繊炭素繊維織物(商品名;SA-3203、サカイオーベックス社製)に対して、前記粉体を静電塗装装置(商品名;GX8500、日本パーカライジング社製)にて粉体塗装を行った。その後、オーブンで240℃、1分間加熱溶着させることでプリプレグを作成した。なお、樹脂付着量は30重量%となるように調整した。得られたプリプレグを所定の枚数積層し、240℃、3MPaで5分間熱プレスし、加圧状態を維持したまま50℃まで冷却することで厚み約2.0mmの成型板を作成した。これをカットすることで、幅25mm×長さ100mm×厚み2.0mmの成型板を得た。
 評価例1~8より、本発明の接着フィルムを用いることで高い接着性と耐熱性の両立が確認できる。評価例9~10、13~16のように明確な融点を示さないか、又は、ガラス転移温度が25~180℃の範囲内である接着フィルムは耐熱性に劣り、評価例11~12のように高融点のポリエステルエラストマーのみでは接着性に劣ることが分かる。
 以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
 本出願は、2021年3月31日に日本国で出願された特願2021-060762号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容をここに援用する。
 

 

Claims (8)

  1.  同種もしくは異種の2つの被接着体を接着するための熱可塑性の接着用樹脂組成物であって、
     フェノキシ樹脂と熱可塑性エラストマーを含有し、下記の条件(a)及び(b);
     (a)示差走査熱量測定(DSC)法にて測定される融点が180℃以上である、
     (b)JIS K 7161にて測定される引張破断伸びが10%以上である、
    を満たすことを特徴とする接着用樹脂組成物。
  2.  前記フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度が65℃~160℃の範囲内のビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂であり、
     前記熱可塑性エラストマーは、引張破断伸びが200%以上であり、融点が180℃を超えるポリエステルエラストマーである請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
  3.  前記フェノキシ樹脂と前記ポリエステルエラストマーの重量比(フェノキシ樹脂:ポリエステルエラストマー)が10:90~60:40の範囲内である請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
  4.  前記フェノキシ樹脂と前記ポリエステルエラストマーの重量比(フェノキシ樹脂:ポリエステルエラストマー)が10:90~50:50の範囲内である請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
  5.  前記フェノキシ樹脂のガラス転移温度が120℃以下であり、
     前記ポリエステルエラストマーの引張破断伸びが300%以上であり、融点が200℃以上である請求項2に記載の接着用樹脂組成物。
  6.  更に下記の条件(c); 
    (c)DSC法にて測定される25℃~180℃の範囲内にガラス転移温度を持たないこと、
    を満たす請求項1に記載の接着用樹脂組成物。
  7.  請求項1~5のいずれか1項に記載の接着用樹脂組成物からなる接着フィルム。
  8.  同種もしくは異種の2つの被接着体が、請求項7に記載の接着フィルムを介して接着接合された接着構造体。
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