WO2021117901A1 - 多層吸音材 - Google Patents

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Abstract

(A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である厚み(L)2~80mmの通気性樹脂発泡体層、(B'')厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする、多層吸音材。

Description

多層吸音材
 本発明は、多層吸音材に関する。詳細には、低通気性樹脂層、通気性樹脂発泡体層、空気層、及び低通気性樹脂層が、この順に積層されている多層吸音材、或いは、繊維集合体を含む層を空気層中に更に設けた多層吸音材に関する。
 樹脂発泡材は、従来の中実の樹脂材料や金属材料を代替する材料として、自動車や電子機器の部材、容器の構造材料として使用されている。これらの樹脂発泡材の特長として低密度、高断熱性、緩衝性があり、主にこれらの特性が有効に利用されている。一方、樹脂発泡材に期待される特性として吸音性、遮音性が挙げられるが、利用範囲は従来限られたものであった。
 その理由としては、吸音性、遮音性は発泡体全般に発現する特性ではなく、気泡構造に依存し、発泡体構造の隣接する気泡が樹脂の隔壁で隔てられた構造である独立気泡構造の発泡体は、剛性、機械強度に優れる一方で吸音、遮音性能が非常に低いのに対して、気泡の隔壁が破壊又は消失した連通気泡構造の発泡体は、吸音、遮音性能に優れる一方で剛性、機械強度に劣るというように、各性質が互いに相反する傾向があり、それらの両立が困難な点が挙げられる。
 連通気泡型の樹脂発泡体の例としては、ウレタン樹脂、メラミン樹脂が有り、主な用途は、流体を吸収するスポンジ用途や柔軟性、衝撃吸収性を利用した緩衝材用途である。これらは吸音性に優れるため、無機材料と比較して軽量な吸音材としても広く使用されるが、剛性が低いため、自立した構造材料としてではなく、主に他の構造材との積層材の構成層として使用されている。
 発泡体の主な製造方法としては、ビーズ発泡成形法、押出発泡成形法が有り、ビーズ発泡成形法は、樹脂粒子を予備的に発泡させて得られた粒状の樹脂発泡粒子を所望の形状の成形用型内に充填した後、樹脂発泡粒子の熱膨張による融着により成形品を形成させる機構により成形させる方法であって、押出発泡成形法と比較した利点として、様々な複雑な3次元形状の発泡体製品が高生産性で製造可能な点、切削加工で発生する材料ロスの発生が無い点、及び成形用金型が低コストで製造可能な点が挙げられ、種々の構造部材用発泡材の成形方法として特に好ましい方法である。
 しかし、ビーズ発泡成形法の発泡成形プロセスは、気泡セルが樹脂膜で隔てられた独立気泡であり、気泡の膨張に起因する発泡粒子間の相互に融着する機構によるため、通常得られる発泡体の気泡構造は基本的に独立気泡構造となるため、吸音性能に劣るのが一般的である。
 一方、ビーズ発泡成形法により、発泡体内に連続した空隙構造、すなわち、連通空隙構造を設けた発泡体及びその製造方法が提案され、吸音性発泡材として使用できることも知られている。
 また、樹脂発泡体に他の通気性の異なる単層または複数の層を積層させて積層体とすることにより、吸音、遮音性能を向上させることが知られている。
 特許文献1には、車両においてノイズ低減と断熱とをもたらすよう、特に、フロア遮音や端部壁遮音やドアカバーや屋根内側カバーにおいて、吸音性かつ遮音性かつ振動減衰性かつ断熱性のカバーを形成するための多機能キットが記載され、当該多機能キットは、少なくとも1つの面状車体パーツと、複数層からなるノイズ低減アセンブリパッケージとを具備してなり、前記アセンブリパッケージは、少なくとも1つのポーラスなスプリング層、とりわけ開放ポアを有したフォーム層と、微小ポーラスを有した硬質層、とりわけ開放ポアを有したファイバ層又はファイバ/フォーム複合体層とを備え、前記アセンブリパッケージと前記面状車体パーツとの間には空気層が設けられている。
 特許文献2には、熱可塑性樹脂と強化用繊維とを含んでなる多孔質基材層の一方の面に、非通気性層が設けられ、他方の面に、前記熱可塑性樹脂よりも高く、前記非通気性層よりも低い融点を有する耐熱用熱可塑性樹脂層及び表皮接着用熱可塑性樹脂層を少なくとも含む多層構造からなる通気性層と、表皮層とが順次設けられているとともに、前記通気性層には、前記多孔質基材層に至る複数の孔が形成されていることを特徴とする多孔質材料が記載されている。
 特許文献3には、密度0.005~0.100g/cmの低密度弾性多孔質体層が一層以上と、通気量が10cc/cm・sec以下である低通気性シートで周囲を被覆された密度0.125~1.000g/cmの高密度弾性多孔質体層が一層以上積層された積層材からなることを特徴とする防音カバーが記載されている。
 更に、近年、吸音、遮音性能が、特に自動車のエンジンルーム等で要求されている1000Hz前後の低周波数領域で更に優れる薄い構造体が求められているのが現状である。
国際公開第98/18657号公報 特開2003-225959号公報 特開2017-167251号公報
 しかしながら、特許文献1~3に記載された吸音材は、低周波数領域での吸遮音性の点で改善の余地がある。また、特許文献1に記載の吸音材においては、硬質材料ではないため自立性がない点、特許文献2に記載の吸音材においては、多層構造であるだけでなく樹脂層の孔を設けた複雑な構成であるため製造が困難である点、特許文献3に記載の吸音材においては、高密度多孔体と低密度多孔体とを組み合わせた複雑な構成であるため製造が困難と考えられる点で、それぞれ問題点があった。
 そこで、本発明が解決しようとする課題は、500~2000Hzの低周波数域、特に1000Hz前後の低周波数において、薄くても高い吸遮音性能を有し、自立性がある多層吸音材を提供することである。
 本発明者は、課題解決のため鋭意検討した結果、驚くべきことに、特定の厚みを有する低通気性樹脂層、特定の空隙率及び厚みを有する通気性樹脂発泡体層、特定の厚みを有する空気層、及び特定の通気抵抗を有する低通気性樹脂層を、この順に積層させた多層吸音材、或いは、特定の通気度を有する繊維集合体を含む特定の厚みの層を、前記空気層中に更に設けた多層吸音材とすることにより、500~2000Hzの低周波数域、特に1000Hz前後の低周波数において、薄くても高い吸遮音性能を示す好適な構造材料となり得ることを見出した。
 更には、特定範囲の表面張力又はガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂を原料樹脂として選択することにより、機械強度、耐熱性、耐熱変形性、難燃性、耐溶剤性、剛性から選ばれる性能と高度の吸遮音性能とを併せ持った自立型の吸音構造材となり得ることを見出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
 (A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である厚み(L)2~80mmの通気性樹脂発泡体層、(B’’)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする、多層吸音材。
[2]
 (A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である厚み(L)2~80mmの通気性樹脂発泡体層、(B’’1)厚み0.01~2.0mmの空気層、(B’)通気度が2~70cc/(cm・sec)である繊維集合体を含む厚み(t’)0.1~4mmの層、(B’’2)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする、多層吸音材。
[3]
 (A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である通気性樹脂発泡体層であり、前記(A)低通気性樹脂層側と反対側の表面に複数の凹孔を有し、前記凹孔が設けられた部分以外の部分の厚み(L)が2~80mmであり、前記凹孔の深さが前記厚み(L)の30~95%であり、開口率が20~90%である通気性樹脂発泡体層、(B’’1)厚み0.01~2.0mmの空気層、(B’)通気度が2~70cc/(cm・sec)である繊維集合体を含む厚み(t’)0.1~4mmの層、(B’’2)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする、多層吸音材。
[4]
 前記(B)通気性樹脂発泡体層が、凹構造部を有する樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であり、融着した前記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の多層吸音材。
[5]
 前記繊維集合体は、目つけが100~1000g/m、平均みかけ密度が0.10~1.0g/cm、平均繊維径が0.6~50μmであり、
 厚みが3~80mmである、[2]~[4]のいずれかに記載の多層吸音材。
[6]
 前記(B)通気性樹脂発泡体層は、20℃における表面張力が37~60mN/mである樹脂、又は、ガラス転移温度が-10℃以上280℃以下である樹脂を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の多層吸音材。
[7]
 自立型吸音体である、[1]~[6]のいずれかに記載の多層吸音材。
 本発明によれば、500~2000Hzの低周波数域、特に1000Hz前後の低周波数において、薄くても高い吸遮音性能を有し、自立性がある多層吸音材を提供することができる。
本実施形態の多層吸音材に用いることが可能な樹脂発泡粒子の断面図の一例を示す図である。 本実施形態の多層吸音材に用いることが可能な樹脂発泡粒子の斜視図である。 実施例で用いた異形押し出しダイの吐出口形状の断面図(1段目)、及び得られた樹脂発泡粒子の凹構造部を示す断面図(2段目)を示す図である。 本実施形態の多層吸音材の模式的な断面図である。(A)は、本実施形態における第一の態様に従う多層吸音材の一例であり、(B)は、本実施形態における第二の態様に従う多層吸音材の一例であり、(C)は、本実施形態における第三の態様に従う多層吸音材の一例である。 本実施形態の多層吸音材の実施例及び比較例について、周波数と残響室吸音率との関係を示す図である。 本実施形態の多層吸音材の実施例及び比較例について、周波数と音響透過損失との関係を示す図である。
[多層吸音材]
 本実施形態の多層吸音材の第一の態様は、(A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である厚み(L)2~80mmの通気性樹脂発泡体層、(B’’)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする。
 本実施形態の多層吸音材は、上記の(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’)空気層、及び(C)低通気性樹脂層以外にも、無機又は有機の粒子、難燃剤、安定剤等の添加剤を含む樹脂層、ガスバリア層、帯電防止層、表面硬化層、電磁遮蔽層、滑剤層、導電性層、誘電体層、電気絶縁層、防曇層、磁性体層、印刷層、加飾層等の他の層を含んでいてもよい。また、意匠性を付与するために、最表面に鏡面やシボ面をもつ樹脂層を設けてもよい。
 中でも、本実施形態の多層吸音材は、吸音性能に一層優れる観点から、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’)空気層、及び(C)低通気性樹脂層のみからなることが好ましい。
 図4(A)は、本実施形態の多層吸音材の第一の態様の模式的な断面図である。
 本実施形態の多層吸音材の厚みは、自立材として使用するための剛性、及び発泡体の軽量性の特長を活かす観点から、3~80mmであることが好ましく、5~50mmであることがより好ましく、3~30mmであることが更に好ましい。
((A)低通気性樹脂層)
 本実施形態の多層吸音材を構成する、(A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層について以下に説明する。
 なお、本明細書において、(A)低通気性樹脂層の「低通気性」とは、気体を遮断又はほとんど通さない状態を意味し、通気抵抗が20kN・s/m以上である樹脂層とする。
 上記通気抵抗は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 (A)低通気性樹脂層に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられ、例えば、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、スチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリフェニレンオキサイドとポリスチレンとのブレンド又はグラフトポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、後塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン又はプロピレンと塩化ビニルのコポリマー等の塩化ビニル系重合体、ポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6、単独及び共重合ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、単独及び共重合ポリエステル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(フェニレンエーテル-ポリスチレンアロイ樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メタクリルイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
 上記ポリオレフィン系樹脂としては、チーグラー触媒又はメタロセン触媒等を用いて重合されたポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリエチレン系樹脂が、それぞれ単独であるいは混合して用いられる。
 上記樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 更に、樹脂特性を制御する等の目的で、ガラス繊維、ガラス粒子、金属繊維、金属粒子、炭素繊維、炭素粒子、セルロース繊維等の無機又は有機充填材を適宜分散配合させた樹脂を用いてもよい。
 更に、多層吸音材としての性能及び特徴を損なわない範囲で、(A)低通気性樹脂層の一部に積層する形で単層又は複数層の、ガラス、金属、金属酸化物等の無機材料の薄層を用いることもできる。
 (A)低通気性樹脂層の厚みは、遮音性と軽量性との両立の観点から、0.5~10mmであり、0.6~8mmであることが好ましく、0.8~6mmであることがより好ましい。
((B)通気性樹脂発泡体層)
 本実施形態の多層吸音材を構成する、(B)空隙率が15~97%である厚み(L)2~80mmの通気性樹脂発泡体層について以下に説明する。
 (B)通気性樹脂発泡体層は、凹構造部を有する樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であることが好ましく、融着した前記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有することが好ましい。すなわち、本実施形態の(B)通気性樹脂発泡体層は、少なくとも2個以上の樹脂発泡粒子が互いに融着した部分を少なくとも有する成形体であることが好ましい。融着した樹脂発泡粒子間には融着した部分及び空隙部がある。
 また、上記成形体は、樹脂発泡粒子を融合成形することにより得られる成形体であることが好ましい。
 (B)通気性樹脂発泡体層の厚み(L)は、吸音性と厚み低減との両立の観点から、2~80mmであり、3~50mmであることが好ましく、5~20mmであることがより好ましい。
 (B)通気性樹脂発泡体層は、上述のとおり融着した樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有し、空隙率は、遮音性と多層吸音材の剛性の観点から、15~97%であり、好ましくは20~95%、より好ましくは30~90%である。
 (B)通気性樹脂発泡体層の空隙率を制御する方法としては、例えば、樹脂発泡粒子の凹構造部の形状を調整すること等が挙げられ、樹脂発泡粒子の凹構造部の深さを深くする程、空隙率は高くなる傾向にあり、樹脂発泡粒子の凹構造部の深さを浅くする程、空隙率は低くなる傾向にある。また、成形時の粒子相互の融着を低下させない範囲で成形時の粒子の膨張率を制御する方法も可能である。
 上記空隙率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 本実施形態の(B)通気性樹脂発泡体層は、樹脂発泡粒子の集合体が相互に融着して得られる成形体であって、樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有することが好ましい。
 本明細書において、「連続した空隙部」とは、融着している樹脂発泡粒子間に相互に連続した空隙部が形成された結果として、成形体の相対する2面間(2表面間)に連続した空隙が生じ、流体が流動可能な状態となっていることを意味する。本実施形態の成形体は、少なくとも一方向に連続した空隙部を有することが好ましく、厚み方向に連続した空隙部を有することが好ましい。
 本実施形態において、連続した空隙部としては、厚み10mmの(B)通気性樹脂発泡体層の試料を用いて、国際規格ISO9053に規定されているAC法により測定される厚み方向に測定した単位長さ流れ抵抗が、1,000,000N・s/m以下であることが好ましく、より好ましくは500,000N・s/m以下、更に好ましくは200,000N・s/m以下である。
 (B)通気性樹脂発泡体層の融着強度は、JIS K6767Aに基づいて引っ張り強度を測定し、(B)通気性樹脂発泡体層の破断伸度(%)から評価する。破断伸度は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上である。破断伸度が1%未満であると、エンジンルームに設置した際に、走行中の振動や、動力系の振動で(B)通気性樹脂発泡体層が破損する可能性がある。
 (B)通気性樹脂発泡体層の製造は、上記樹脂発泡粒子を閉鎖した金型内に充填、発泡させて得るが、密閉し得ない金型内に充填して加熱し、樹脂発泡粒子相互を融着させる方法を採用してもよい。樹脂種と成形条件によっては汎用の型内発泡自動成形機を使用することができる。
-樹脂発泡粒子-
 (B)通気性樹脂発泡体層を構成する樹脂発泡粒子は、上述の空隙部を形成することが可能であれば特に限定されず、下記の凹構造部を持つ樹脂発泡粒子(少なくとも一方の方向から見た外形において、凹形状部を有する樹脂発泡粒子)であっても、楕円球状、円柱状、多角柱状等の樹脂発泡粒子として一般的な形状の粒子であってもよいが、凹構造部を有する樹脂発泡粒子が好ましい。
 本実施形態において、凹構造部を持つ樹脂発泡粒子と、凹構造部を持たない楕円球状、円柱状、多角柱状等の樹脂発泡粒子として一般的な形状の粒子とを任意の比率で混合使用して成形体を製造することにより、所望の吸音性能、機械的強度のバランスを調整することができる。
 なお、本明細書において凹構造部を有するとは、樹脂発泡粒子の正射影像が凹図形となる正射影像が得られる方向が存在することを意味する。また、本明細書において凹図形とは、凹図形となる正射影像図形の外表面上の2点間を結んだ線分の少なくとも一部(好ましくは全線分)が樹脂発泡粒子の外部領域を通る線分となる2点を選ぶことが可能であることを言う。凹図形の例を図1に示す。
 また、上記凹構造部は、発泡時に形成される発泡気泡と異なる構造である。
 上記凹構造部は、一個でも複数個でもよい。
 上記凹構造部は、上記樹脂発泡粒子の表面を連結する一個又は複数個の貫通孔であってもよいし、粒子を貫通しない一個又は複数個の凹部であってもよいし、一個又は複数個の貫通孔及び一個又は複数個の凹部が混在していてもよい。ここで、貫通孔とは、樹脂発泡粒子外表面に形成された2つの穴を結ぶ空洞であってよく、該空洞が映る正射影像において、該空洞が樹脂発泡粒子に囲まれている正射影像(空洞が樹脂発泡粒子内に孤立した空洞を形成する正射影像)が得られる構造としてよい。
 上記樹脂発泡粒子において、上記凹部としては、凹部が確認できる正射影像において、上記樹脂発泡粒子が占める領域に対する、該凹部に少なくとも2点以上で外接する直線と樹脂発泡粒子の外表面とで囲まれた領域Aの割合(領域A/樹脂発泡粒子が占める領域)が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。中でも、凹部の最深部を含む正射影像において、上記範囲を満たすことが好ましい。ここで、凹部の最深部は、凹部に少なくとも2点以上で外接する直線の垂線の凹部外表面との交点までの距離が最も長くなる部分としてもよい。
 凹構造部が貫通孔の場合は、樹脂発泡粒子の貫通孔が確認できる正射影像において、貫通孔の面積が、樹脂発泡粒子の正射影像の全面積に対して、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。中でも、樹脂発泡粒子の貫通孔の面積が最も大きくなる正射影像において、上記範囲を満たすことが好ましい。また、上記貫通孔は、貫通する空洞形状が確認できる断面において、該断面上の樹脂発泡粒子の全面積に対して、空洞形状の面積が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。上記貫通孔は、空洞形状の面積が上記を満たす断面が少なくとも一面以上あることが好ましく、全断面で上記範囲を満たすことがより好ましい。
 上記凹構造部が、上記の凹部の条件及び/又は上記貫通孔の条件を満足するように樹脂発泡粒子の形状を選択することにより、融着成形後の成形体の連通空隙(連続する空隙、連通する空隙)を良好に形成させることができる。
 上記樹脂発泡粒子の凹構造部は貫通孔であっても貫通孔でなくともよいが、樹脂発泡粒子は凹部を有する形状であることが特に好ましい。凹部を有する形状をとることにより従来の樹脂発泡粒子にはなかった充填状態が有られ、成形後に得られる成形体の連通空隙の構造を吸音性能、機械的強度の両方に特に優れたバランスを実現することができる。
 上記凹部を有する形状として特に優れた形状は、樹脂発泡粒子に溝状凹部を設けた構造が挙げられ、成形体製造時に樹脂発泡粒子間を熱融着させる際に溝状凹部が隣接する樹脂発泡粒子がかみ合った充填状態となり接合されることにより、樹脂発泡粒子間の接合面積が大きく強度の高い成形体を形成すると同時に、隣接する樹脂発泡粒子の溝が連結された形態で接合される場合に樹脂発泡粒子間にわたる空隙、すなわち連通空隙が形成される。
 上記溝状凹部としては、例えば、中空の略円の一部を切り取った形状(C形状、U形状等)の断面(図1)を重ねた形状(図2(a)(b))、中空の略多角形(三角形、四角形等)の一部を切り取った断面(図1)を重ねた形状等が挙げられる。ここで、上記中空の略円及び中空の略多角形における中空とは、略円であってもよいし、略多角形であってもよいが、中空を囲む形状と同一形状であることが好ましい。また、上記中空の形状の中心と、上記中空を囲む形状の中心とが重なる形状(例えば、同心円等)ことが好ましい。
 上記凹部の例としては、例えば、一定の厚みを持つ円盤形状を湾曲させた鞍状の形状、円盤を面外方向に湾曲又は折り曲げて形成される形状、円筒状の外側面に単一又は複数の凹部を設けた構造等が挙げられる。粒子の形状のうち、製造の容易性が有り、生産性に優れ、形状を制御し易い点で特に好ましい粒子形状の例として、円柱からその外径より小さい外径を有する共通の軸を持つ同じ高さの円柱を切除した円筒の、軸方向から見て一定の角度以内の部分を切り出し切除した形状(図2)等が挙げられる。以下ではこの形状をC型断面部分円筒状と呼び、この形状をもとに小変形させた実質的に同形状の形状であっても成形体に同等の空隙を形成させることが可能であり、上記条件を満足すれば本発明の範囲内として利用可能である。図2に、切り出し切除する部分の大きさが異なるC型断面部分円筒状の好ましい例を挙げる。
 上記凹部は、樹脂発泡粒子の特定の一方向に対して断面を連続して形成した場合に、同じ形状であることが好ましい。例えば、図2に示すように、樹脂発泡粒子の一方向(図2の上下方向、押出方向)に対する断面における凹部の形状と、該一方向にずらして形成した異なる断面における凹部形状とが同じであることが好ましい。
 上記樹脂発泡粒子が凹構造部を持つことは光学顕微鏡により樹脂発泡粒子の透過画像を粒子の観察方向を変えながら観察し判定することにより確認することができる。
 上記樹脂発泡粒子は、樹脂発泡粒子に含まれる樹脂の密度ρと樹脂発泡粒子の真密度ρとの比ρ/ρが2.0~20であることが好ましく、より好ましくは2.2~18、更に好ましくは2.5~15である。ρ/ρが2.0未満であると吸音性能発現が十分でなく、20を超えると機械的強度が低下し、好ましくない。
 上記樹脂発泡粒子において、樹脂発泡粒子の真密度ρと樹脂発泡粒子の嵩密度ρとの比ρ/ρが1.5~4.0であることが好ましく、より好ましくは1.8~3.5、更に好ましくは2.0~3.0である。ρ/ρが1.5未満であると吸音性能が十分でなく、4.0を超えると機械的強度が低下し、好ましくない。
 本明細書において嵩密度ρとは、所定重量Mの樹脂発泡粒子をその重量Mにおける樹脂発泡粒子の嵩体積Vで除した値M/Vであり、真密度ρとは所定重量Mの樹脂発泡粒子をその重量Mにおける樹脂発泡粒子の真体積Vで除した値M/Vである。上記嵩体積Vとは、上記所定重量Mの樹脂発泡粒子をメスシリンダー内に充填してメスシリンダーを振動させ、その体積が恒量に達した時の目盛りを読んだ値を指す。また真体積Vとは、上記所定重量Mの樹脂発泡粒子を、樹脂発泡粒子を溶解しない液体の入ったメスシリンダー中に沈めた時に上記液体の増量した部分の体積をいう。
 樹脂の密度ρとは、発泡前の原料樹脂の密度であり、水没法により重計を使用して測定される密度である。
 本明細書においてρ、ρ、ρはすべて、20℃、0.10MPaの環境下において測定し得られた値を意味するものとする。
 上記樹脂発泡粒子の平均粒子径は、100gの樹脂発泡粒子をJIS Z8801で規定される標準ふるいを用いた分級法により測定することができる。上記樹脂発泡粒子の平均粒子径は0.5~6.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.7~5.0mmである。平均粒子径が0.5mm未満であると製造工程での取り扱いが難しく、6.0mmを超えると複雑な成形品の表面精度が低下する傾向が現れ、好ましくない。
 なお、本実施形態の樹脂発泡粒子の形状は、特に限定されず、様々な形状としてよい。
 上記樹脂発泡粒子の製造方法としては、熱可塑性樹脂の熱可塑性を利用した方法、固体状態の粒子の切削等の後加工による方法等が可能であり、粒子に所望の外形を付与できる方法であれば適用可能である。その中で生産性に優れ、安定した形状の粒子が製造可能な方法として、特殊形状の吐出断面を設けたダイを使用した異形押し出し法が好適に使用できる。特殊形状の吐出断面を設けたダイを有する押出機により熱可塑性樹脂を溶融押し出し、ストランドカット又はアンダーウォーターカット等工業的に通常使用されている方法によりペレタイズして得られたペレットを発泡させ樹脂発泡粒子を得る方法、及び押し出し機に発泡剤をバレル途中から注入し吐出と同時に発泡させ、冷却後、アンダーウォーターカット又はストランドカットし樹脂発泡粒子を直接得る方法、押出機内で溶融させ所望の断面形状を有するダイスから押し出し、冷却後ペレタイザーにより所定の長さに切断することにより樹脂ペレットを製造し、該樹脂ペレットに発泡剤を含浸させ、加熱することにより所定の発泡倍率で発泡させる方法、等従来公知の方法を任意に応用して製造することができる。
 上記樹脂発泡粒子は樹脂を含む。上記樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
 上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、スチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリフェニレンオキサイドとポリスチレンとのブレンド又はグラフトポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、後塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン又はプロピレンと塩化ビニルのコポリマー等の塩化ビニル系重合体、ポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6、単独及び共重合ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、単独及び共重合ポリエステル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(フェニレンエーテル-ポリスチレンアロイ樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メタクリルイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
 上記ポリオレフィン系樹脂としては、チーグラー触媒又はメタロセン触媒等を用いて重合されたポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリエチレン系樹脂が、それぞれ単独であるいは混合して用いられる。
 上記樹脂としては、20℃における表面張力が37~60mN/mであることが好ましく、より好ましくは38~58mN/m、更に好ましくは39~55mN/mである。表面張力が上記範囲内であれば、力学的強度の高い吸音性の成形体が得られ、特に好ましい。
 樹脂の表面張力は、JISK6768「プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法」記載の方法において温度を20℃に変更した方法により測定される値を用いる。
 特に好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル系樹脂、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル-ポリスチレンアロイ樹脂)等で表面張力が上記範囲内である熱可塑性樹脂が挙げられ、中でも、耐熱性、耐薬品、耐溶剤性に優れ、高耐熱発泡構造材料用途に適した樹脂としてポリアミド樹脂、耐熱性、高温剛性に優れた樹脂としては、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル-ポリスチレンアロイ樹脂)が挙げられる。
 樹脂の表面張力を上記範囲とすることにより、特に発泡樹脂の過熱水蒸気による加熱膨張融着時に、水蒸気と表面との親和性が高くなる結果として、融着強度の高い均一な発泡成形体が得られる。なお、樹脂の表面張力とは、樹脂発泡粒子を構成する全ての樹脂の混合樹脂の表面張力としてよく、樹脂発泡粒子を構成する全ての樹脂のうち少なくとも一つの樹脂の表面張力が上記範囲を満たすことが好ましく、全ての樹脂の表面張力が上記範囲を満たすことがより好ましい。
 上記樹脂としては、ガラス転移温度が-10℃以上280℃以下であることが好ましい。
 樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠してDSC法により測定される値を用いる。すなわち、温度23±2℃及び相対湿度50±5%において24時間以上状態調節後、試験片をDSC装置の容器に入れ、非結晶性の場合にはガラス転移終了時より少なくとも約30℃高い温度まで、結晶性の場合には融解ピーク終了時より少なくとも約30℃高い温度まで加熱し、それぞれの温度に10分間保った後、ガラス転移温度より約50℃低い温度まで急冷する。加熱速度は、あらかじめ転移温度より約50℃低い温度で装置が安定するまで保持した後、加熱速度毎分20℃で転移終了時よりも約30℃高い温度まで加熱し、DSC曲線を描かせる。
 前記樹脂原料のガラス転移温度の下限値は、より好ましくは0℃、さらに好ましくは10℃である。ガラス転移温度を上記下限値以上とすることにより、成形品への長時間の圧縮力による吸音性能の低下を抑制することができ、応力のかかる吸音部材にも用いることができる点で好ましい。
 上記ガラス転移温度の上限値は、より好ましくは260℃、さらに好ましくは240℃である。ガラス転移温度の上記上限値以下とすることにより、発泡成形の温度を低く設定することができ、高生産性で発泡を製造することができ特に好ましい。
 上記、好ましいガラス転移温度範囲に含まれる熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル系樹脂、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル-ポリスチレンアロイ樹脂)等でガラス転移温度が上記範囲内である熱可塑性樹脂が挙げられる。
 中でも、耐熱性、耐薬品、耐溶剤性に優れ、高耐熱発泡構造材料用途に適した樹脂としてポリアミド樹脂、耐熱性、高温剛性に優れた樹脂としては、変性ポリエーテル樹脂(フェニレンエーテル-ポリスチレンアロイ樹脂)が挙げられる。
 なお、樹脂のガラス転移温度とは、樹脂発泡粒子を構成する全ての樹脂の混合樹脂のガラス転移温度としてよく、樹脂発泡粒子を構成する全ての樹脂のうち少なくとも一つの樹脂のガラス転移温度が上記範囲を満たすことが好ましく、全ての樹脂のガラス転移温度が上記範囲を満たすことがより好ましい。
 上記熱可塑性樹脂は、無架橋の状態で用いてもよいが。パーオキサイドや放射線等により架橋させて用いてもよい。
 上記樹脂発泡粒子は必要に応じて、通常の配合剤、たとえば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料、顔料等の着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、タルク、炭カル等の無機充填剤等を目的に応じて含んでいてもよい。
 上記難燃剤としては、臭素系、リン系等の難燃剤が使用可能であり、上記酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系等の酸化防止剤が使用可能であり、上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系等の光安定剤が使用可能である。
 上記樹脂発泡粒子の平均気泡径を調節する必要がある場合は、気泡調整剤を添加してもよい。気泡調整剤としては、無機造核剤には、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレー、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等があり、その使用量は通常、樹脂発泡粒子の原料全量に対して、0.005~2質量部を添加する。
 上記樹脂発泡粒子の製造時に用いる発泡剤としては、揮発性発泡剤等が挙げられる。上記揮発性発泡剤としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の鎖状又は環状低級脂肪族炭化水素類、ジシクロジフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、1-クロロ-1、1-ジフルオロエタン、1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、空気、二酸化炭素等の無機ガス系発泡剤等が挙げられる。
((B’’)空気層)
 本実施形態の多層吸音材を構成する、(B’’)厚み0.01~2.0mmの空気層について以下に説明する。
 (B’’)空気層は、(B)通気性樹脂発泡体層と(C)低通気性樹脂層との間に形成される隙間層である。
 (B’’)空気層は、例えば、(B)通気性樹脂発泡体層と(C)低通気性樹脂層とを部分的に接着することにより形成することができる。両層が部分的に接着した状態としては、特に限定されず、両層が複数の点で接着した状態や、両層の端縁のみが接着した状態等が挙げられる。
 また、(B’’)空気層は、(B)通気性樹脂発泡体層と(C)低通気性樹脂層とを単に重ね合わせることにより形成されてもよい。この場合、両層の間に(B’’)空気層が形成されるように、両層を所定のフレーム(枠)に嵌め込み、少なくとも端部を固定する方法等が挙げられる。
 (B’’)空気層の厚みは、層内に含まれる空気の隙間層の厚みであって、例えば、X線CT法等の断面非破壊解析法や層構造を液状硬化性樹脂により固定化した後、切断面を計測する方法等により測定され、面方向の平均値として評価される。当該面方向の平均値とは、表面の面積がSmmの多層吸音材の場合、(B)通気性樹脂発泡体層と(C)低通気性樹脂層とが接着している面積Tmmの部分を除いた面積(S-T)mmの部分についての平均値として定義され、多層吸音材の表面に対して垂直な切断面における空気層の断面積を、切断面に対して垂直な方向に上記面積(S-T)mmの部分に渡り積分して得られる空気層の全体積をVmmとするとき、V/(S-T)mmとして求められる。面方向の平均値として適切に評価できる方法であれば、面内でサンプリングされた部分の代表値から計算される平均値を用いてもよい。
 上記のように定義される(B’’)空気層の厚みは、吸音性と形状安定性との両立の観点から、0.01~2.0mmであり、0.03~0.8mmであることが好ましく、0.05~0.5mmであることがより好ましい。
((C)低通気性樹脂層)
 本実施形態の多層吸音材を構成する、(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層について以下に説明する。
 なお、本明細書において、(C)低通気性樹脂層の「低通気性」とは、気体を遮断又はほとんど通さない状態を意味する。
 (C)低通気性樹脂層の通気抵抗は、吸音性能の周波数特性の観点から、20kN・s/m以上であり、30kN・s/m以上であることが好ましく、40kN・s/m以上であることがより好ましい。
 (C)低通気性樹脂層の通気抵抗を制御する方法として、例えば、(C)低通気性樹脂層に貫通孔を設けることが挙げられ、貫通孔の直径を大きくする程、また、貫通孔の数を増やす程、通気抵抗を低減することができる。また、通気抵抗を増加させる方法としては、樹脂層の欠陥又は意図的に設けられた貫通孔の数を低減させる、且つ/又は、それらの大きさ(直径)を小さくすることが挙げられる。
 上記通気抵抗は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 (C)低通気性樹脂層の厚み(t)は、吸音率の周波数依存性と多層吸音材の耐久性との両立の観点から、0.05~3.0mmであり、0.07~2.5mmであることが好ましく、0.09~2.0mmであることがより好ましい。
 (C)低通気性樹脂層に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられ、例えば、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、スチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリフェニレンオキサイドとポリスチレンとのブレンド又はグラフトポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、後塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン又はプロピレンと塩化ビニルのコポリマー等の塩化ビニル系重合体、ポリ塩化ビニリデン系共重合樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6、単独及び共重合ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、単独及び共重合ポリエステル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(フェニレンエーテル-ポリスチレンアロイ樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メタクリルイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
 上記ポリオレフィン系樹脂としては、チーグラー触媒又はメタロセン触媒等を用いて重合されたポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリエチレン系樹脂が、それぞれ単独であるいは混合して用いられる。
 上記樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 本実施形態の多層吸音材における、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’)空気層、及び(C)低通気性樹脂層の積層方式について説明する。
 (A)低通気性樹脂層の片面に(B)通気性樹脂発泡体層を積層する手段としては、熱接着による方法の他、接着剤を介して積層一体化する方法等が挙げられるが、接着剤を用いることなく、(A)低通気性樹脂層と(B)通気性樹脂発泡体層とを単に重ね合わせて積層してもよい。接着剤等を用いないことにより、(A)低通気性樹脂層と(B)通気性樹脂発泡体層との間には通気性を確実に確保することができ、安定した吸音性能を維持できる。このように、単に重ね合わせて積層する場合は、所定のフレーム(枠)に嵌め込み、少なくとも端部を固定することにより一体化するとよい。
 (A)低通気性樹脂層と(B)通気性樹脂発泡体層とを接着剤を介して積層一体化する場合は、接着剤を部分的に配置することによって、通気性を確保するとよい。接着剤が膜を形成して接着剤層となり、通気性が損なわれると、(B)通気性樹脂発泡体層から(A)低通気性樹脂層への音の侵入が阻害され、吸音性能が低下する恐れがある。このように部分的に接着剤を存在させる方法としては、パウダー状や繊維状の熱接着剤を用いるとよい。
 (A)低通気性樹脂層と(B)通気性樹脂発泡体層との熱接着による積層法の具体例としては、(A)低通気性樹脂層に含まれる樹脂、及び(B)通気性樹脂発泡体層に含まれる樹脂が軟化又は融解する加熱雰囲気下で、ネット、ロール等で加熱、加圧して接着する熱接着方法;(A)低通気性樹脂層及び/又は(B)通気性樹脂発泡体層にホットメルト系の粉末、接着剤等を、スプレー式、ロール式等で塗布させ、加熱処理すること等で接合する接着方法;低融点繊維を含む不織布、くもの巣状の不織布、テープヤーンクロス、ホトメルト系フィルム、メッシュ等のシート状物を介在させて接着する接着性シート方法、タッカーや釘等を打ち込むことで固定する方法等が挙げられる。接着は、複数の点で接着されていてもよい。
 次に、(B)通気性樹脂発泡体層の、(A)低通気性樹脂層が接着していない側の面に、間に(B’’)空気層が形成されるようにして(C)低通気性樹脂層を積層する。
 (A)低通気性樹脂層と(C)低通気性樹脂層とを、間に(B’’)空気層が形成されるように積層する手段としては、部分的に熱接着する方法の他、接着剤を介して部分的に積層一体化する方法等が挙げられるが、接着剤を用いることなく、(A)低通気性樹脂層と(C)低通気性樹脂層とを単に重ね合わせて積層してもよい。各積層方法は、上述の(A)低通気性樹脂層と(B)通気性樹脂発泡体層との積層方法と同様に行うことができる。
 本実施形態の多層吸音材は、(C)低通気性樹脂層側を音の入射側に位置するように設置して使用する。(C)低通気性樹脂層側を音の入射側に位置することにより、吸音性能を有効に向上させることができる。
 本実施形態の多層吸音材は、(B)通気性樹脂発泡体層単体では、周波数域全体で吸音性能が低く、周波数が高くなるほど吸音率が高くなる傾向にあるが、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’)空気層、及び(C)低通気性樹脂層をこの順に積層した構成とすることで500~2000Hzの低周波数域の吸音率が上昇し、特に1000Hz付近で高い吸音性を発現することが可能となり、自動車のエンジンルーム等で発生する1000Hz付近の低周波数の騒音を抑制することが可能となる。
 図5は、後述する実施例における周波数と残響室吸音率との関係を示す。
 本実施形態の多層吸音材の1000Hzにおける吸音率は、0.25以上であることが好ましく、より好ましくは0.30以上である。
 上記吸音率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 また、本実施形態の多層吸音材は、音源側の最表面に(C)低通気性樹脂層を、音源と反対側の最表面に(A)低通気性樹脂層を有し、更に(B)通気性樹脂発泡体層の音源側に(B’’)空気層が設けられた構成であることにより、周波数域全体で既存の吸音材を凌ぐ遮音性能を発揮することができる。
 図6は、後述する実施例における周波数と音響透過損失との関係を示す。
 本実施形態の多層吸音材の1000Hzにおける透過損失は、10dB以上であることが好ましく、より好ましくは12dB以上である。
 上記透過損失は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 本実施形態の多層吸音材は、種々の騒音を遮蔽する部材、例えば自動車等の車両用エンジンルーム内の防音部材等として用いることができる。特に(B)通気性樹脂発泡体層として硬質の熱可塑性樹脂を選択すること等により、他の部材を更に積層することなく、本実施形態の多層吸音材だけで自立可能な自立型吸音体として用いることができる。
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様は、(A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である厚み(L)2~80mmの通気性樹脂発泡体層、(B’’1)厚み0.01~2.0mmの空気層、(B’)通気度が2~70cc/(cm・sec)である繊維集合体を含む厚み(t’)0.1~4mmの層、(B’’2)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする。
 本実施形態の多層吸音材は、上記の(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、及び(C)低通気性樹脂層以外にも、上述の他の層を含んでいてもよい。また、意匠性を付与するために、最表面に鏡面やシボ面をもつ樹脂層を設けてもよい。
 中でも、多層吸音材は、吸音性能に一層優れる観点から、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、及び(C)低通気性樹脂層のみからなることが好ましい。
 図4(B)は、本実施形態の多層吸音材の第二の態様の模式的な断面図である。
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様において、多層吸音材の厚みとしては、上述の範囲であることが好ましい。
((A)低通気性樹脂層)
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様において、(A)低通気性樹脂層は、上述の(A)低通気性樹脂層を用いることができる。
((B)通気性樹脂発泡体層)
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様において、(B)通気性樹脂発泡体層は、上述の(B)通気性樹脂発泡体層を用いることができる。
((B’’1)空気層及び(B’’2)空気層)
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様において、(B’’1)空気層及び(B’’2)空気層は、それぞれ上述の(B’’)空気層と同様に形成することができる。厚みの好適範囲もそれぞれ上述の範囲である。
((C)低通気性樹脂層)
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様において、(C)低通気性樹脂層は、上述の(C)低通気性樹脂層を用いることができる。
((B’)層)
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様を構成する、(B’)通気度が2~70cc/(cm・sec)である繊維集合体を含む厚み(t’)0.1~4mmの層について以下に説明する。
 (B’)層は、通気度が2~70cc/(cm・sec)である繊維集合体を含む。
 また、(B’)層は、上記繊維集合体以外に、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料、顔料等の着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、タルク、炭カル等の無機充填剤等を含む樹脂相を含んでいてもよい。また、(B’)層には、着色、撥水性、難燃性等を付与する目的で、染色等の着色加工、フッソ樹脂等の撥水加工、りん系等の難燃剤加工等の機能付与加工をしてもよい。
 (B’)層の厚み(t’)は、吸音性能の周波数の広さと多層吸音材の形状維持、耐久性の両立の観点から、0.1~4mmであり、好ましくは0.3~3mm、より好ましくは0.5~2mmである。
 (B’)層の通気度は、2~70cc/(cm・sec)であることが好ましく、より好ましくは3~60cc/(cm・sec)、更に好ましくは4~40cc/(cm・sec)である。通気度が上記範囲であると、吸音性能の周波数特性を良好に制御することができる。
 上記(B’)層の通気度は、後述の繊維集合体の通気度の測定方法と同じ方法により測定することができる。
-繊維集合体-
 (B’)層に含まれる繊維集合体は、一種の繊維からなる集合体であってもよいし、複数種の繊維からなる集合体であってもよい。また、上記繊維集合体は、1つの繊維層からなる単層体であってもよいし、複数の繊維層からなる積層体であってもよい。繊維集合体の形態は、特に制限されず、例えば、織布、不織布、フエルト等のいずれの形態であってもよい。
 繊維集合体を構成する樹脂としては、具体例的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン1,4-シクロヘキサンジメタノール(PCT)、ポリ乳酸(PLA)及び/又はポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル、ポリアセテート、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性高分子が挙げられる。このうちコスト面や加工のしやすさ等から、PETやPP、ポリアミドが使用できる。更に、軽量化の観点からは、より比重が軽いPPが使用できる。
 繊維集合体は、通気度が2~70cc/(cm・sec)であり、好ましくは3~60cc/(cm・sec)、より好ましくは4~50cc/(cm・sec)である。上記通気度が2cc/(cm・sec)未満であると吸音性能が平均的に低下し、通気度が70cc/(cm・sec)を超えると、吸音性能は高くなるが高吸音率を示す周波数域が狭くなるため好ましくない。
 上記繊維集合体の通気度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 上記繊維集合体の単位面積あたり重量(目付け)は、100~1000g/mであることが好ましく、より好ましくは200~900g/m、更に好ましくは300~800g/mである。上記目付けが100g/m未満であると多層吸音材の吸音性能が低下し、繊維集合体の目付けが1000g/mを超えると耐久性が低下する傾向が現れ好ましくない。
 上記繊維集合体の目付けは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 上記繊維集合体の平均みかけ密度は、0.10~1.0g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.15~0.9g/m、更に好ましくは0.20~0.8g/mである。上記平均みかけ密度が0.10g/cm未満であると多層吸音材の吸音性能が低下し、繊維集合体の平均みかけ密度が1.0g/cmを超えると、緻密性が増大し、(B)通気性樹脂発泡体層との密着安定性が低下する。
 上記繊維集合体の平均みかけ密度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 上記繊維集合体は、平均繊維径が0.6~50μmであることが好ましく、より好ましくは0.8~40μm、更に好ましくは1.0~30μmである。上記平均繊維径が0.6μm未満であると(B’)層の耐久性が低下する傾向が現れ、平均繊維径が50μmを超えると吸音率の低下傾向が現れるため、好ましくない。
 上記繊維集合体の平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 上記繊維集合体の厚みは、吸音性能の周波数特性及び形状安定性の両立の観点から、0.1~4mmであることが好ましく、より好ましくは0.15~3mm、更に好ましくは0.2~2mmである。
 本実施形態の多層吸音材における、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、及び(C)低通気性樹脂層の積層方式について説明する。
 (A)低通気性樹脂層の片面に(B)通気性樹脂発泡体層を積層する手段は、上述の積層手段を用いることができる。
 (B)通気性樹脂発泡体層の、(A)低通気性樹脂層が接着していない側の面に、間に(B’’1)空気層が形成されるようにして(B’)層を積層する手段としては、部分的に熱接着する方法の他、接着剤を介して部分的に積層一体化する方法等が挙げられるが、接着剤を用いることなく、(B)通気性樹脂発泡体層と(B’)層とを単に重ね合わせて積層してもよい。このように、単に重ね合わせて積層する場合は、所定のフレーム(枠)に嵌め込み、少なくとも端部を固定することにより一体化するとよい。
 (B)通気性樹脂発泡体層と(B’)層とを接着剤を介して部分的に積層一体化する場合は、パウダー状や繊維状の熱接着剤を用いるとよい。
 (B)通気性樹脂発泡体層と(B’)層とを部分的に熱接着することによる積層法の具体例としては、(B)通気性樹脂発泡体層に含まれる樹脂、及び(B’)層に含まれる繊維が軟化又は融解する加熱雰囲気下で、ネット、ロール等で加熱、加圧して接着する熱接着方法;(B)通気性樹脂発泡体層及び/又は(B’)層にホットメルト系の粉末、接着剤等を、スプレー式、ロール式等で塗布させ、加熱処理すること等で接合する接着方法;低融点繊維を含む不織布、くもの巣状の不織布、テープヤーンクロス、ホトメルト系フィルム、メッシュ等のシート状物を介在させて接着する接着性シート方法、タッカーや釘等を打ち込むことで固定する方法等が挙げられる。接着は、複数の点で接着されていてもよい。
 続いて、(B’)層の、(B)通気性樹脂発泡体層が接着していない側の面に、間に(B’’2)空気層が形成されるようにして(C)低通気性樹脂層を積層する。
 (B’)層と(C)低通気性樹脂層とを、間に(B’’2)空気層が形成されるように積層する手段としては、部分的に熱接着する方法の他、接着剤を介して部分的に積層一体化する方法等が挙げられるが、接着剤を用いることなく、(B’)層と(C)低通気性樹脂層とを単に重ね合わせて積層してもよい。各積層方法は、上述の(B)通気性樹脂発泡体層と(B’)層との積層方法と同様に行うことができる。
 本実施形態において、(B’)層として、2枚以上の繊維層を重ねる場合には、個々の繊維層を逐次に積層する方法又は、2枚以上の繊維層を同時に積層することもできる。
 本実施形態の多層吸音材は、(C)低通気性樹脂層側を音の入射側に位置するように設置して使用する。(C)低通気性樹脂層側を音の入射側に位置することにより、吸音性能を有効に向上させることができる。
 本実施形態の多層吸音材は、(B)通気性樹脂発泡体層単体では、周波数域全体で吸音性能が低く、周波数が高くなるほど吸音率が高くなる傾向にあるが、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、及び(C)低通気性樹脂層をこの順に積層した構成とすることで、500~2000Hzの低周波数域の吸音率が上昇し、特に1000Hz付近で高い吸音性を発現することが可能となり、自動車のエンジンルーム等で発生する1000Hz付近の低周波数の騒音を抑制することが可能となる。
 また、本実施形態の多層吸音材の第二の態様では、(B)通気性樹脂発泡体層よりも音源側に(B’)層及び(B’’2)空気層が更に設けられたことにより、上述の本実施形態の多層吸音材の第一の態様と比較して、更に高い吸音性能を発揮することができる。
 図5は、後述する実施例における周波数と残響室吸音率との関係を示す。
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様において、1000Hzにおける吸音率は、上述の範囲であることが好ましい。
 上記吸音率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 また、本実施形態の多層吸音材は、音源側の最表面に(C)低通気性樹脂層を、音源と反対側の最表面に(A)低通気性樹脂層を有し、更に(B)通気性樹脂発泡体層よりも音源側に(B’’1)空気層、(B’)層、及び(B’’2)空気層が設けられた構成であることにより、周波数域全体で既存の吸音材を凌ぐ遮音性能を発揮することができる。
 また、本実施形態の多層吸音材の第二の態様では、(B)通気性樹脂発泡体層よりも音源側に(B’)層及び(B’’2)空気層が更に設けられたことにより、上述の本実施形態の多層吸音材の第一の態様と比較して、更に高い遮音性能を発揮することができる。
 図6は、後述する実施例における周波数と音響透過損失との関係を示す。
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様において、1000Hzにおける透過損失は、上述の範囲であることが好ましい。
 上記透過損失は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 本実施形態の多層吸音材の第二の態様は、種々の騒音を遮蔽する部材、例えば自動車等の車両用エンジンルーム内の防音部材等として用いることができる。特に(B)通気性樹脂発泡体層として硬質の熱可塑性樹脂を選択すること等により、他の部材を更に積層することなく、本実施形態の多層吸音材だけで自立可能な自立型吸音体として用いることができる。
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様は、(A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である通気性樹脂発泡体層であり、前記(A)低通気性樹脂層側と反対側の表面に複数の凹孔を有し、前記凹孔が設けられた部分以外の部分の厚み(L)が2~80mmであり、前記凹孔の深さが前記厚み(L)の30~95%であり、開口率が20~90%である通気性樹脂発泡体層、(B’’1)厚み0.01~2.0mmの空気層、(B’)通気度が2~70cc/(cm・sec)である繊維集合体を含む厚み(t’)0.1~4mmの層、(B’’2)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする。
 本実施形態の多層吸音材は、上記の(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、及び(C)低通気性樹脂層以外にも、上述の他の層を含んでいてもよい。また、意匠性を付与するために、最表面に鏡面やシボ面をもつ樹脂層を設けてもよい。
 中でも、多層吸音材は、吸音性能に一層優れる観点から、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、及び(C)低通気性樹脂層のみからなることが好ましい。
 図4(C)は、本実施形態の多層吸音材の第三の態様の模式的な断面図である。
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様において、多層吸音材の厚みとしては、上述の範囲であることが好ましい。
((A)低通気性樹脂層)
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様において、(A)低通気性樹脂層は、上述の(A)低通気性樹脂層を用いることができる。
((B)通気性樹脂発泡体層)
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様において、(B)通気性樹脂発泡体層は、空隙率が15~97%であり、(A)低通気性樹脂層側と反対側((B’’1)空気層側)の表面に複数の凹孔を有し、前記凹孔が設けられた部分以外の部分の厚み(L)が2~80mmであり、前記凹孔の深さが前記厚み(L)の30~95%であり、開口率が20~90%である。
 (B)通気性樹脂発泡体層において、凹孔が設けられた部分以外の部分の厚み(L)は、吸音性と厚み低減との両立の観点から、2~80mmであり、3~50mmであることが好ましく、5~20mmであることがより好ましい。
 凹孔の立体的形状について、深さ方向に垂直な断面の形状及び面積は、深さ方向に一定であっても変化していてもよく、内部で広い空洞部に繋がっていても、複数の凹孔が内部で連続的に繋がった形状であってもよい。
 凹孔の開口形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。各凹孔の開口形状は、同じであっても異なっていてもよい。
 凹孔の数及び各凹孔の開口面積は、(B)通気性樹脂発泡体層の開口率が20~90%となれば特に限定されないが、各凹孔の開口面積は、0.01~100cmであることが好ましく、0.03~50cmであることがより好ましく、0.05~30cmであることが更に好ましい。
 なお、各凹孔の開口面積は、(B)通気性樹脂発泡体層の(A)低通気性樹脂層側と反対側((B’’1)空気層側)の表面における各凹孔の開口部の面積を指す。
 また、(B)通気性樹脂発泡体層の(A)低通気性樹脂層側と反対側((B’’1)空気層側)の表面における凹孔の配置は、開口面積密度(単位面積当たりの開口面積)が均一であることが好ましいが、必ずしも周期的に配置される必要はなく、ランダムに配置されていてもよい。
 (B)通気性樹脂発泡体層において、凹孔の深さは、500~2000Hzの低周波領域における遮音性能発現の観点から、(B)通気性樹脂発泡体層の凹孔が設けられた部分以外の部分の厚み(L)の30~95%であり、35~90%であることが好ましく、40~85%であることがより好ましい。上記凹孔の深さが30%未満であると、500~2000Hzの低周波領域における遮音性能の発現が不十分となる傾向にあり、一方、95%超であると、凹孔深部に粒子の不均一な充填状態が発生して外観が不良になる傾向が認められる。
 なお、凹孔の深さは、複数の凹孔の深さの平均値を指す。
 (B)通気性樹脂発泡体層開口率は、20~90%であり、好ましくは30~85%、更に好ましくは40~80%である。前記開口率が20%未満であると、500~2000Hzの低周波領域における遮音性能の発現が不十分となる傾向にあり、前記開口率が90%超であると、機械的強度が低下しやすくなる傾向にある。
 なお、(B)通気性樹脂発泡体層の開口率は、(B)通気性樹脂発泡体層の(A)低通気性樹脂層側と反対側の表面の総面積に対する凹孔の総開口面積の割合を指し、下記式(I)で表される。
  開口率=(各凹孔の開口面積の合計)×100/{(各凹孔の開口面積の合計)+((B)通気性樹脂発泡体層の(A)低通気性樹脂層側と反対側の表面の、凹孔が設けられた部分以外の部分の面積)}・・・(I)
 (B)通気性樹脂発泡体層は、凹構造部を有する樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であることが好ましく、融着した前記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有することが好ましい。すなわち、本実施形態の(B)通気性樹脂発泡体層は、少なくとも2個以上の樹脂発泡粒子が互いに融着した部分を少なくとも有する成形体であることが好ましい。融着した樹脂発泡粒子間には融着した部分及び空隙部がある。
 また、上記成形体は、樹脂発泡粒子を融合成形することにより得られる成形体であることが好ましい。
 すなわち、(B)通気性樹脂発泡体層は、上述の第一及び第二の態様の(B)通気性樹脂発泡体層と同様の樹脂発泡体を用いることができ、上述の第一及び第二の態様の(B)通気性樹脂発泡体層において、(A)低通気性樹脂層側と反対側((B’’1)空気層側)の表面に、凹孔の深さが厚み(L)の50%以上である複数の凹孔を設けられたものを用いることができる。
 (B)通気性樹脂発泡体層の空隙率及び融着強度は、上述の範囲であることが好ましい。
 上記空隙率及び融着強度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 凹孔の形成方法は、特に限定されず、例えば、樹脂発泡体の成形の際に、予め凹孔の形状が付与された金型を用いることにより形成してもよいし、ミルによる切削等により形成してもよい。
((B’’1)空気層及び(B’’2)空気層)
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様において、(B’’1)空気層及び(B’’2)空気層は、それぞれ上述の第二の態様の(B’’1)空気層及び(B’’2)空気層と同様に形成することができる。厚みの好適範囲もそれぞれ上述の範囲である。
 なお、(B’’1)空気層の厚みは、(B)通気性樹脂発泡体層に設けられた凹孔に相当する部分であっても、凹孔の内空は含めずに計算するものとする。
((C)低通気性樹脂層)
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様において、(C)低通気性樹脂層は、上述の(C)低通気性樹脂層を用いることができる。
((B’)層)
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様において、(B’)層は、上述の(B’)層を用いることができる。
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様における、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、及び(C)低通気性樹脂層の積層方式は、上述の第二の態様における積層方式を用いることができる。
 本実施形態の多層吸音材は、(C)低通気性樹脂層側を音の入射側に位置するように設置して使用する。(C)低通気性樹脂層側を音の入射側に位置することにより、吸音性能を有効に向上させることができる。
 本実施形態の多層吸音材は、(B)通気性樹脂発泡体層単体では、周波数域全体で吸音性能が低く、周波数が高くなるほど吸音率が高くなる傾向にあるが、(A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、及び(C)低通気性樹脂層をこの順に積層した構成とすることで、500~2000Hzの低周波数域の吸音率が上昇し、特に1000Hz付近で高い吸音性を発現することが可能となり、自動車のエンジンルーム等で発生する1000Hz付近の低周波数の騒音を抑制することが可能となる。
 また、本実施形態の多層吸音材の第三の態様では、(B)通気性樹脂発泡体層よりも音源側に(B’)層及び(B’’2)空気層が更に設けられたことにより、上述の本実施形態の多層吸音材の第一の態様と比較して、更に高い吸音性能を発揮することができる。
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様において、1000Hzにおける吸音率は、上述の範囲であることが好ましい。
 上記吸音率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 また、本実施形態の多層吸音材は、音源側の最表面に(C)低通気性樹脂層を、音源と反対側の最表面に(A)低通気性樹脂層を有し、更に(B)通気性樹脂発泡体層よりも音源側に(B’’1)空気層、(B’)層、及び(B’’2)空気層が設けられた構成であることにより、周波数域全体で既存の吸音材を凌ぐ遮音性能を発揮することができる。
 また、本実施形態の多層吸音材の第三の態様では、(B)通気性樹脂発泡体層よりも音源側に(B’)層及び(B’’2)空気層が更に設けられたことにより、上述の本実施形態の多層吸音材の第一の態様と比較して、更に高い遮音性能を発揮することができる。
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様において、1000Hzにおける透過損失は、上述の範囲であることが好ましい。
 上記透過損失は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 本実施形態の多層吸音材の第三の態様は、種々の騒音を遮蔽する部材、例えば自動車等の車両用エンジンルーム内の防音部材等として用いることができる。特に(B)通気性樹脂発泡体層として硬質の熱可塑性樹脂を選択すること等により、他の部材を更に積層することなく、本実施形態の多層吸音材だけで自立可能な自立型吸音体として用いることができる。
 以下実施例により本発明の実施態様を説明する。ただし、本発明の範囲は実施例によりなんら限定されるものではない。
 実施例及び比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
(1)(A)低通気性樹脂層及び(C)低通気性樹脂層の通気抵抗(kN・s/m
 国際標準規格ISO9053のAC法を適用して日本音響エンジニアリング(株)製、流れ抵抗測定システムAirReSys型を使用して測定した。すなわち、フィルム状の(A)及び(C)の樹脂層試料を用い、流速F=0.5mm/sの一様流中の流れる状態で材料表裏面の差圧P(Pa)を測定し、その差圧からP/F(kN・s/m)として求めた。20kN・s/mを超える高抵抗を示した場合は、「>20kN・s/m」と表記した。
(2)樹脂の密度ρ(g/cm
 発泡前の樹脂の質量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cm)を測定し、W/V(g/cm)を樹脂の密度とした。
(3)樹脂発泡粒子の真密度ρ(g/cm
 樹脂発泡粒子の質量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cm)を測定し、W/V(g/cm)を樹脂発泡粒子の真密度とした。
 比重計により予備発泡後の樹脂原料ペレットの密度を測定した。
(4)樹脂発泡粒子の嵩密度ρ(g/cm
 樹脂発泡粒子100gをメスシリンダーに入れ振動させその体積が恒量に達した時平坦化させた上面の目盛りを読んだ値として嵩体積V(cm)、樹脂発泡粒子を入れたメスシリンダーの質量W(g)とメスシリンダーの質量W(g)を測定し、下式により求めた。
   ρ=[W-W]/V
(5)樹脂発泡粒子の平均粒子径(mm)
 100gの樹脂発泡粒子をJIS Z8801で規定される、呼び寸法がd=5.6mm、d=4.75mm、d=4mm、d=3.35mm、d=2.36mm、d=1.7mm、d=1.4mm、d=1mmである標準ふるいを用いて分級を行い、ふるいdを通過して、ふるいdi+1で止まる粒子の重量割合をX、全粒子集合体の平均粒子径Dを次式により求めた。
   D=ΣX(d・di+11/2
(iは1~7の整数を表す)
(6)(B)通気性樹脂発泡体層の空隙率(%)
 以下の式より、(B)通気性樹脂発泡体層の空隙率を求めた。
(B)通気性樹脂発泡体層の空隙率(%)=[(B-C)/B]×100
 但し、B:(B)通気性樹脂発泡体層の見掛け体積(cm)、C:(B)通気性樹脂発泡体層の真の体積(cm)であり、見掛け体積は(B)通気性樹脂発泡体層の外形寸法から算出される体積、真の体積Cは(B)通気性樹脂発泡体層の空隙部を除いた実体積をそれぞれ意味する。真の体積Cは(B)通気性樹脂発泡体層を液体(例えばアルコール)中に沈めた時の増量した体積を測定することにより得られる。
(7)連続した空隙部の有無
 単位長さ流れ抵抗の測定から以下のように判定した。
 単位長さ流れ抵抗値の測定方法としては、国際標準規格ISO9053のAC法を適用して日本音響エンジニアリング(株)製、流れ抵抗測定システムAirReSys型を使用して測定した。すなわち、厚み10mmの平板状樹脂発泡成形体試料を用い、流速F=0.5mm/sの一様流中の流れる状態で材料表裏面の差圧P(Pa)を測定し、その差圧と材料厚みt(m)からP/(t・F)(N・s/m)として求めた。単位長さ流れ抵抗値が200,000N・s/m以下の場合を連続した空隙部有り(○)、200,000N・s/mを超える場合を連続した空隙部無し(×)と評価した。
(8)(B)通気性樹脂発泡体層の融着強度
 JIS K6767Aに基づき引っ張り強度を測定し、(B)通気性樹脂発泡体層の破断伸度が2%以上の場合を融着強度に優れる(◎)、破断伸度が1%以上2%未満の場合を融着強度が良好(〇)、破断伸度が1%未満の場合を融着強度が劣る(×)と評価した。
(9)繊維集合体の目付け(g/m
 JIS L-1913「一般不織布試験方法」の単位面積当たりの質量(ISO法)の記載の方法に従って評価した値を繊維集合体の目付けとした。
(10)繊維集合体の平均みかけ密度(g/cm
 JIS L-1913「一般不織布試験方法」の厚さ(ISO法)の記載の方法に従って平均厚み評価し、上記(8)の繊維集合体の目付けの値から、(繊維集合体の平均みかけ密度)=(繊維集合体の目付け)/(厚み)として求めた。
(11)繊維集合体の平均繊維径(μm)
 顕微鏡で500倍の拡大写真を撮り、不作為に選んだ繊維30本の直径の平均値を求めた。
(12)繊維集合体の通気度(cc/(cm・sec))
 JIS L-1096「織物及び編物の生地試験方法」記載の方法に従って測定した。
(13)多層吸音材の吸音特性
 日本音響エンジニアリング社製音響透過損失・残響室法吸音率測定システムAbLossを用い、残響室法により吸音率を気温25℃において測定した。多層吸音材から1000mm×1000mmサイズの試料を作製し、低通気性樹脂層(A)側が床面に接触する向きに試料を静置し測定した。500Hz、630Hz、800Hz、1000Hz、1250Hz、1600Hz、2000Hzの7点を中心周波数とする1/3オクターブ、7帯の平均吸音率を測定し、測定結果より、7帯の平均吸音率のうち、吸音率0.27以上の周波数が6点より多い場合を吸音特性に特に優れる(*)、5~6点の場合を吸音特性に優れる(◎)、3~4点の場合を吸音特性が良好(〇)、2点以下の場合を吸音特性が劣る(×)として評価した。
(14)多層吸音材の遮音特性
 日本音響エンジニアリング社製音響透過損失・残響室法吸音率測定システムAbLossを用い、無響室・残響室法により透過損失を気温25℃において測定した。多層吸音材から600mm×600mmサイズの試料を作製し、有効測定面を500mm×500mmとして、低通気性樹脂層(A)側が無響室側となる向きに無響室―残響室間に試料を設置して透過損失(dB)を測定した。測定結果より、500Hz、630Hz、800Hz、1000Hz、1250Hz、1600Hz、2000Hzの7点を中心周波数とする1/3オクターブ、7帯の平均透過損失のうち、透過損失12dB以上の周波数が6点より多い場合を遮音特性に特に優れる(*)、5~6点の場合を遮音特性に優れる(◎)、3~4点の場合を遮音特性が良好(〇)、2点以下の場合を遮音特性が劣る(×)として評価した。更に、1000Hz、1250Hz、1600Hz,2000Hzの4点を中心周波数とする1/3オクターブ、4帯の平均透過損失のうち、透過損失16dB以上の周波数帯が4点である場合を1000~2000Hz域の遮音特性に特に優れる(*)、3点の場合を同周波数域の遮音特性に優れる(◎)、2点の場合を同周波数域の遮音特性が良好(〇)、1点以下の場合を同周波数域の遮音特性に劣る(×)として評価した。
(15)自立性(たわみ性)
 30cm角の多層吸音材平板サンプルを片持ちで水平に保持し、たわみ量を評価した。1cm程度以上の明確なたわみが発生するサンプルを劣る(×)とし、1cm程度以上の明確なたわみが見られないサンプルを良好(〇)とした。
(A)低通気性樹脂層
(A-1)ポリアミド6(厚み:1mm、通気抵抗:>20kN・s/m)(東レプラスチック精工製)
(A-2)ポリアミド6(厚み:2mm、通気抵抗:>20kN・s/m(東レプラスチック精工製)
(A-3)ポリエチレンテレフタレート(厚み:1mm、通気抵抗:>20kN・s/m(東レプラスチック精工製)
(B)通気性樹脂発泡体層(成形体)
(B-1)
 ポリアミド6樹脂(UBEナイロン「1022B」、宇部興産製、20℃における表面張力46mN/m)を、押出機を用いて溶融し、図3(a1)記載の断面形状の異形押し出しダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、平均粒子径1.4mmのペレットを得た。得られたペレットを10℃の圧力釜に投入し、4MPaの炭酸ガスを吹き込み3時間吸収させた。次いで炭酸ガス含浸ミニペレットを発泡装置に移し、240℃の空気を20秒間吹き込み、ポリアミド樹脂発泡粒子の集合体を得た。得られたポリアミド樹脂発泡粒子の集合体に含まれるポリアミド樹脂発泡粒子の平均粒子径は2.0mmであった。ポリアミド樹脂発泡粒子を切断し観察したところ、ポリアミド樹脂発泡粒子には独立気泡が切断面一面にまんべんなく多数形成されていた。ポリアミド樹脂発泡粒子の断面は図3(a2)に記した形状で凹構造部を有していた。
 得られたポリアミド樹脂発泡粒子集合体を再度圧力釜に入れ、10℃にて4MPaの炭酸ガスを3時間吸収させた。次いでこの炭酸ガスを含浸したポリアミド樹脂発泡粒子を型内発泡成形装置の金型内に充填し、230℃の空気を30秒間吹き込み、ポリアミド樹脂発泡粒子同士が融着した成形体(B-1)を得た。成形体の発泡倍率は7.5倍であった。成形体を切断し観察したところ、セル径が200~400μmである独立気泡を多数有するポリアミド樹脂発泡粒子の集合体が形成されていた。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持つことが確認された。
 樹脂発泡粒子及び成形体の評価結果を表1に記す。
(B-2)~(B-5)、(B-7)
 発泡粒子の断面形状及び平均粒子径、成形体の厚み及び空隙率をそれぞれ表1に示すとおりとした以外は、成形体(B-1)と同様の条件で、成形体(B-2)~(B-5)、(B-7)を得た。
 樹脂発泡粒子及び成形体の評価結果を表1に記す。
(B-6)
 樹脂種として共重合ポリエステル系樹脂を用いて、以下のように樹脂発泡粒子及び成形体を作製した。
 エチレングリコールとイソフタル酸とテレフタル酸との重縮合体(イソフタル酸含有率2質量%、20℃における表面張力43mN/m)100質量部と、ピロメリット酸二無水物0.3質量部と、炭酸ナトリウム0.03質量部との混合物を押出機により270~290℃で溶融、混練しながらバレルの途中で発泡剤としてブタンを混合物に対して1.0質量%の割合で注入し、図3(a1)記載の断面形状の異形押出しダイを通して予備発泡させたのち、直ちに冷却水槽で冷却しペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂発泡粒子を製造した。得られた樹脂発泡粒子の断面形状は、図3(a2)であった。また、得られた樹脂発泡粒子の嵩密度ρは0.14g/cm、平均粒子径は1.5mmであった。
 上記の樹脂発泡粒子を密閉容器に入れ、炭酸ガスを0.49MPaの圧力で圧入して4時間保持したのち、密閉容器から取り出した樹脂発泡粒子を直ちに型内発泡成形機の金型内に充填して型締めし、型内にゲージ圧0.02MPaの水蒸気を10秒間、次いでゲージ圧0.06MPaの水蒸気を20秒間導入し、120秒間保熱したのち水冷して、樹脂発泡粒子同士が融着した成形体(B-6)を得た。成形体の発泡倍率は4.6倍であった。通気抵抗の測定値から連続した空隙部を持つことが確認された。
 樹脂発泡粒子及び成形体の評価結果を表1に記す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
(C)低通気性樹脂層
(C-1)ポリアミド6(厚み:0.2mm、通気抵抗:>20kN・s/m)(東レプラスチック精工製、ポリアミドN6)
(C-2)ポリプロピレン(厚み:0.075mm)(東レ製、トレファン)に直径0.5mmの貫通孔を複数個設けて通気抵抗を2kN・s/mに調節したフィルム。
(C-3)ポリエチレンテレフタレート(厚み:0.1mm、通気抵抗:>20kN・s/m)(東レ製、ルミラー)
(C-4)ポリプロピレン(厚み:0.03mm)(東レ製、トレファン)に直径0.5mmの貫通孔を複数個設けて通気抵抗を1kN・s/mに調節したフィルム。
(B’)層の繊維集合体を構成する繊維層
(F-1)
 ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c0.77、融点263℃)を、紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブを捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウェブ(目付け45g/m、平均繊維径14μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(25℃法の溶液粘度ηsp/c0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm2/hrで糸条を直接に噴出させ、極細繊維ウエブ(目付け10g/m、平均繊維径2μm)を形成した。更に極細繊維ウェブの上に、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が高密度ポリエチレン(融点130℃)、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)からなる複合長繊維ウェブ(目付け45g/m、平均繊維径18μm)を積層した積層ウェブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃/105℃、線圧300N/cmで部分熱圧着し、目付け100g/m、平均みかけ密度0.25g/cm、平均繊維径14μm、厚み0.4mmの不織布(F-1)を得た。
(F-2)
 ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c0.77、融点263℃)を、紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブを捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウェブ(目付け22.5g/m、平均繊維径14μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(25℃法の溶液粘度ηsp/c0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm/hrで糸条を直接に噴出させ、極細繊維ウェブ(目付け10g/m、平均繊維径2μm)を形成した。更に極細繊維ウェブの上に、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点130℃)、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)からなる複合長繊維ウェブ(目付け22.5g/m、平均繊維径18μm)を積層した積層ウェブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃/145℃、線圧300N/cmで部分熱圧着し、目付け55g/m、平均みかけ密度0.25g/cm、平均繊維径13.5μm、厚み0.25mm、熱圧着率20%の繊維集合体(F-2)を得た。
(G-1)
 ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c0.77、融点263℃)を、紡糸口金を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブを捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウェブ(目付け100g/m、平均繊維径14μm)をロール圧延により、目付け400g/m、平均みかけ密度0.23g/cm、平均繊維径14μm、厚み0.5mm、熱圧着率15%の繊維集合体(フェルト)(G-1)を得た。
[実施例1]
 表2に示すとおり、(A)低通気性樹脂層として(A-1)、(B)通気性樹脂発泡体層として(B-1)、(C)低通気性樹脂層として(C-1)を使用した。(A-1)、(B-1)、及び(C-1)を下からこの順に重なるようにセットし、(B-1)と(C-1)との間に(B’’)空気層が形成されるように各層の張力を調整して周期20cmの正方格子点上の固定密度でタッカーで留めて固定し、多層吸音材を得た。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例2~5、11]
 (A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’)空気層、(C)低通気性樹脂層を、表2に示すとおりの構成とした以外は、実施例1と同様にして多層吸音材を得た。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例6]
 表2に示すとおり、(A)低通気性樹脂層として(A-1)、(B)通気性樹脂発泡体層として(B-1)、(C)低通気性樹脂層として(C-1)を使用した。また、(B’)層として、不織布(F-1)6枚を重ね、50本/cmのパンチ密度でニードルパンチ加工した繊維集合体を用いた。(A-1)、(B-1)、繊維集合体、及び(C-1)を下からこの順に重なるようにセットし、(B-1)と繊維集合体との間に(B’’1)空気層が、繊維集合体と(C-1)との間に(B’’2)空気層が、それぞれ形成されるように配置を調整して周囲のみをタッカーで留めて固定し、多層吸音材を得た。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例7~10]
 (A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、(C)低通気性樹脂層を、表2に示すとおりの構成とした以外は、実施例6と同様にして多層吸音材を得た。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
 また、実施例1、6の周波数と吸音率の関係を示すグラフを図5に、周波数と透過損失率の関係を示すグラフを図6に示す。
[実施例12]
 (B)通気性樹脂発泡体層の成形時に片方の金型表面に周期的に配置された凸形状を付与することにより、(B)通気性樹脂発泡体層の(A)低通気性樹脂層側と反対側((B’’1)空気層側)の表面に周期的に凹孔を形成した以外は実施例6と同様の作製方法を適用し、多層吸音材を得た。
 (B)通気性樹脂発泡体層の凹孔の形状は、平均深さ5mm(厚み(L)に対する平均深さの割合が63%)、深さ方向に垂直な断面の形状が、(B)通気性樹脂発泡体層表面側が直径平均28mmの円、内部側(底面側)が直径平均15mmの円の円錐台形であり、各凹孔の断面中心が周期30mmの正方格子配置をなすように作製した。開口率は68%であった。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
 実施例6と比較して、特に1~2kHz域における遮音性能が向上していることが分かる。
[実施例13]
 (B)通気性樹脂発泡体層の成形時に片方の金型表面に周期的に配置された凸形状を付与することにより、(B)通気性樹脂発泡体層の(A)低通気性樹脂層側と反対側((B’’1)空気層側)の表面に周期的に凹孔を形成した以外は実施例7と同様の作製方法を適用し、多層吸音材を得た。
 (B)通気性樹脂発泡体層の凹孔の形状は、平均深さ14mm(厚み(L)に対する平均深さの割合が74%)、深さ方向に垂直な断面の形状が、(B)通気性樹脂発泡体層表面側が直径平均28mmの円、内部側(底面側)が直径平均13mmの円の円錐台形であり、各凹孔の断面中心が格子点間距離50mmの六角格子配置をなすように作製した。開口率は57%であった。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
 実施例7と比較して、特に1~2kHz域における遮音性能が向上していることが分かる。
[実施例14]
 (B)通気性樹脂発泡体層の(A)低通気性樹脂層側と反対側((B’’1)空気層側)の表面に、周期的に配置された凹孔を切削加工により形成した以外は実施例7と同様の作製方法を適用し、多層吸音材を得た。
 (B)通気性樹脂発泡体層の凹孔の形状は、平均深さ12mm(厚み(L)に対する平均深さの割合が63%)、深さ方向に垂直な断面の形状が、(B)通気性樹脂発泡体層表面側が平均1辺28mmの正方形、内部側(底面側)が平均1辺40mmの正方形の四角錐台形であり、各凹孔の断面中心が周期50mmの正方格子配置をなすように作製した。開口率は64%であった。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
 実施例7と比較して、特に1~2kHz域における遮音性能が向上していることが分かる。
 また、実施例12の周波数と吸音率の関係を示すグラフを図5に、周波数と透過損失率の関係を示すグラフを図6に示す。
[比較例1および3]
 (A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’)空気層、(C)低通気性樹脂層を、表2に示すとおりの構成とした以外は、実施例1と同様にして多層吸音材を得た
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例2]
 (A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層のみの構成とした多層吸音材を得た。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。結果を表2に示す。
[比較例4~6]
 (A)低通気性樹脂層、(B)通気性樹脂発泡体層、(B’’1)空気層、(B’)層、(B’’2)空気層、(C)低通気性樹脂層を、表2に示すとおりの構成とした以外は、実施例6と同様にして多層吸音材を得た。
 評価方法(13)~(15)に記載の方法により、多層吸音材の吸音特性、遮音特性、及び自立性を評価した。結果を表2に示す。
 また、比較例1、2の周波数と吸音率の関係を示すグラフを図5に、周波数と透過損失との関係を示すグラフを図6に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 実施例1~14はいずれも、500~2000Hzの周波数域で、薄くても高い吸遮性能を示し、特に1kHz周辺で良好な吸遮音性を示す自立性の有る吸音材としての特性を示した。
 一方、比較例1~6の結果により、本発明の要件を満たさない場合には、500~2000Hzの周波数域で吸遮音性能の何れかが劣る、または自立性を有しない、ということが分かる。
 本実施形態の多層吸音材は、500~2000Hzの低周波数域、特に1000Hz前後の低周波数において、薄くても高い吸遮音性能を有し、自立性がある多層吸音材であり、自動車エンジンの騒音等を効果的に低減させることができる。
 本実施形態の多層吸音材の用途例としては、軽量性と静音化が求められる自動車、電車、汽車等の車両及び航空機等の駆動騒音低減に使用される部材が挙げられ、特に自立性と耐熱変形性と断熱性が要求される自動車エンジンルーム内のエンジンカバー、エンジンカプセル、エンジンルームフード、変速機ケーシング、吸音カバー、電気自動車用モーターのケーシング、吸音カバー等に特に好適に使用できる。
 更に本実施形態の多層吸音材は、静音化が求められるエアコン等の空調機器、冷凍機、ヒートポンプ等や、ダクト等の風路を形成する部分、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、掃除機等の各種家庭用電気製品、プリンター、コピー機、FAX等のOA機器、の他壁材芯材、床材心材等の建築用資材にも好適に用いることができる。
1:(A)低通気性樹脂層
2:(B)通気性樹脂発泡体層
3:(B’’)空気層
3a:(B’’1)空気層
3b:(B’’2)空気層
4:(C)低通気性樹脂層
5:(B’)層
6:凹孔

Claims (7)

  1.  (A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である厚み(L)2~80mmの通気性樹脂発泡体層、(B’’)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする、多層吸音材。
  2.  (A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である厚み(L)2~80mmの通気性樹脂発泡体層、(B’’1)厚み0.01~2.0mmの空気層、(B’)通気度が2~70cc/(cm・sec)である繊維集合体を含む厚み(t’)0.1~4mmの層、(B’’2)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする、多層吸音材。
  3.  (A)厚み0.5~10mmの低通気性樹脂層、(B)空隙率が15~97%である通気性樹脂発泡体層であり、前記(A)低通気性樹脂層側と反対側の表面に複数の凹孔を有し、前記凹孔が設けられた部分以外の部分の厚み(L)が2~80mmであり、前記凹孔の深さが前記厚み(L)の30~95%であり、開口率が20~90%である通気性樹脂発泡体層、(B’’1)厚み0.01~2.0mmの空気層、(B’)通気度が2~70cc/(cm・sec)である繊維集合体を含む厚み(t’)0.1~4mmの層、(B’’2)厚み0.01~2.0mmの空気層、及び(C)通気抵抗が20kN・s/m以上である厚み(t)0.05~3.0mmの低通気性樹脂層が、この順に積層されていることを特徴とする、多層吸音材。
  4.  前記(B)通気性樹脂発泡体層が、凹構造部を有する樹脂発泡粒子が相互に融着した成形体であり、融着した前記樹脂発泡粒子間に連続した空隙部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層吸音材。
  5.  前記繊維集合体は、目つけが100~1000g/m、平均みかけ密度が0.10~1.0g/cm、平均繊維径が0.6~50μmであり、
     厚みが3~80mmである、請求項2~4のいずれか一項に記載の多層吸音材。
  6.  前記(B)通気性樹脂発泡体層は、20℃における表面張力が37~60mN/mである樹脂、又は、ガラス転移温度が-10℃以上280℃以下である樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層吸音材。
  7.  自立型吸音体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層吸音材。
     
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