WO2021075129A1 - 端子付電線、端子付電線の製造装置および製造方法 - Google Patents

Abstract

芯線の断線と端子金具のベントアップをいずれも有利に抑制乃至は防止できる、新規な構造の端子付電線と、当該端子付電線の製造装置および製造方法を提供する。　芯線１４と、芯線１４を覆う被覆部２０と、被覆部２０の端部から芯線１４が露出した芯線露出部２２とを有する被覆電線１２と、芯線露出部２２が載置される底壁３０と、底壁３０から突出して芯線露出部２２に圧着される圧着片３２を含む芯線圧着部２６を有する端子金具１６とを備え、圧着片３２の端縁部が、斜め上方に向かって屈曲されてベルマウス３６ａ，３６ｂを構成し、底壁３０が、芯線圧着部２６の長さ方向におけるベルマウス３６ａ，３６ｂと同じ位置から、斜め下方に向かって屈曲する屈曲部３８ａ，３８ｂを有している。

Description

端子付電線、端子付電線の製造装置および製造方法

　本開示は、端子付電線、端子付電線の製造装置および製造方法に関するものである。

　従来、端子付電線としては、例えば特開２０１２－１９９１６８号公報（特許文献１）に記載のものが知られている。特許文献１においては、被覆電線の端末において絶縁被覆が剥がされた芯線は、端子金具の芯線圧着部を構成する底壁と底壁から突出する圧着片の間に配置される。そして、上下に配された芯線圧着用金型を用いて芯線圧着部を芯線に対して圧着することにより、芯線が端子金具に対して電気的に接続されるようになっている。

特開２０１２－１９９１６８号公報

　ところで、被覆電線の端末に露呈する芯線を端子金具の芯線圧着部に圧着する際には、圧着片の端縁部において芯線に大きな押圧力が加わることにより、芯線が断線する等の不具合が発生するおそれがあった。また、圧着時の押圧力により、芯線や端子金具に長さ方向の伸びが発生し、圧着用の上金型に押圧されていない端子金具の先端部分や基端部分が上金型側に持ち上がるいわゆるベントアップ等の問題が生じるおそれもあった。

　本開示は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、芯線の断線と端子金具のベントアップをいずれも有利に抑制乃至は防止できる、新規な構造の端子付電線と、当該端子付電線の製造装置および製造方法を提供することにある。

　本開示の端子付電線は、芯線と、前記芯線を覆う被覆部と、前記被覆部の端部から前記芯線が露出した芯線露出部とを有する被覆電線と、前記芯線露出部が載置される底壁と、該底壁から突出して前記芯線露出部に圧着される圧着片を含む芯線圧着部を有する端子金具とを備え、前記圧着片の端縁部が、斜め上方に向かって屈曲されてベルマウスを構成し、前記底壁が、前記芯線圧着部の長さ方向における前記ベルマウスと同じ位置から、斜め下方に向かって屈曲する屈曲部を有している端子付電線である。
　本開示の端子付電線の製造装置は、被覆電線の芯線露出部に端子金具の芯線圧着部が圧着された端子付電線の製造装置であって、前記芯線圧着部の底壁が載置される下金型と、前記芯線圧着部の前記底壁から突出する圧着片を前記底壁に載置された前記芯線露出部に上方から圧着する上金型とを備え、前記芯線圧着部の長さ方向となる前記上金型の押圧面の長さ方向の少なくとも一方の角部に、斜め上方に傾斜する上型傾斜面が設けられている一方、前記下金型の押圧面の前記上型傾斜面と対向する部位に、斜め下方に傾斜する下型傾斜面が設けられており、前記上型傾斜面と前記下型傾斜面が前記長さ方向で同じ位置から延び出している端子付電線の製造装置である。
　本開示の端子付電線の製造方法は、本開示の端子付電線の製造装置を用い、前記下金型に前記端子金具の前記芯線圧着部を載置して、該芯線圧着部の前記底壁と該底壁から突出する前記圧着片の間に前記被覆電線の前記芯線露出部を配置する工程と、前記下金型と前記上金型との間で前記芯線圧着部を挟んで、前記圧着片と前記底壁を前記芯線露出部に圧着し、前記圧着片にベルマウスを形成し、前記底壁に屈曲部を形成する工程と、を含む端子付電線の製造方法である。

　本開示によれば、芯線の断線と端子金具のベントアップをいずれも有利に抑制乃至は防止することができる端子付電線と、この端子付電線を製造する製造装置および製造方法を提供することができる。

図１は、実施形態１にかかる端子付電線を示す斜視図である。 図２は、図１に示す端子付電線の側面図である。 図３は、図１に示す端子金具の圧着前の斜視図である。 図４は、下金型に端子金具の芯線圧着部を載置して、芯線圧着部の底壁と圧着片の間に被覆電線の芯線露出部を配置する工程を示す側面図である。 図５は、下金型と上金型との間で芯線圧着部を挟んで、圧着片と底壁を芯線露出部に圧着する工程を示す側面図である。

＜本開示の実施形態の説明＞
　最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
　本開示の端子付電線は、
（１）芯線と、前記芯線を覆う被覆部と、前記被覆部の端部から前記芯線が露出した芯線露出部とを有する被覆電線と、前記芯線露出部が載置される底壁と、該底壁から突出して前記芯線露出部に圧着される圧着片を含む芯線圧着部を有する端子金具とを備え、前記圧着片の端縁部が、斜め上方に向かって屈曲されてベルマウスを構成し、前記底壁が、前記芯線圧着部の長さ方向における前記ベルマウスと同じ位置から、斜め下方に向かって屈曲する屈曲部を有している端子付電線である。

　本開示の端子付電線によれば、端子金具の芯線圧着部において、圧着片の端縁部には、斜め上方に向かって屈曲するベルマウスが構成されている。これにより、圧着により圧着片の端縁部が芯線に対して大きな圧力で食い込むことがなく、それによる断線の発生が有利に抑制乃至は防止されている。また、芯線圧着部の底壁は、ベルマウスと対応する位置に斜め下方に向かって屈曲する屈曲部を有している。これにより、芯線や端子金具が圧着時に長さ方向へ伸びた際に、上金型に押圧されていないか上金型の押圧力が下金型よりも小さいことにより、端子金具にベントアップが発生する問題が有利に抑制される。また、端子金具にベントアップが生じた場合でも、ベント角度を小さくでき角度のばらつきも低減することができる。

　なお、ベルマウスは、圧着片の少なくとも一方の端縁部に設定されていればよく、両方の端縁部に設定されていてもよい。また、圧着片の両方の端縁部にベルマウスが設定されている場合には、芯線圧着部の底壁において、少なくとも一方のベルマウスと同じ位置から、斜め下方に向かって屈曲する屈曲部が設けられていればよいが、すべてのベルマウスに対応する屈曲部が設けられていることが好ましい。

（２）前記長さ方向において、前記底壁の前記屈曲部の長さ寸法が、前記ベルマウスの長さ寸法以上であることが好ましい。底壁の屈曲部の長さ寸法が、ベルマウスの長さ寸法以上であることにより、圧着時の上金型および下金型の押圧力の緩和領域（上金型と下金型の傾斜領域）の長さ寸法が、上金型と下金型で同じであるか、下金型の方が長くなる。その結果、圧着用の下金型のみに押圧されているか上金型の押圧力が下金型よりも弱いことにより、端子金具にベントアップが生じる不具合が一層確実に抑制されるからである。

（３）前記長さ方向に対する前記底壁の前記屈曲部の傾斜角度が、前記長さ方向に対する前記ベルマウスの傾斜角度以上であることが好ましい。芯線圧着部の長さ方向に対する屈曲部の傾斜角度が、ベルマウスの傾斜角度以上であることにより、圧着時のベルマウスの形成領域における下金型の押圧力が上金型の押圧力よりも大きくなることが防止されている。その結果、端子金具にベントアップが生じることが一層確実に抑制されるからである。

（４）前記芯線が単芯線であることが好ましい。これにより、芯線の断線と端子金具のベントアップをいずれも一層有利に抑制乃至は防止することができるからである。

　本開示の端子付電線の製造装置は、
（５）被覆電線の芯線露出部に端子金具の芯線圧着部が圧着された端子付電線の製造装置であって、前記芯線圧着部の底壁が載置される下金型と、前記芯線圧着部の前記底壁から突出する圧着片を前記底壁に載置された前記芯線露出部に上方から圧着する上金型とを備え、前記芯線圧着部の長さ方向となる前記上金型の押圧面の長さ方向の少なくとも一方の角部に、斜め上方に傾斜する上型傾斜面が設けられている一方、前記下金型の押圧面の前記上型傾斜面と対向する部位に、斜め下方に傾斜する下型傾斜面が設けられており、前記上型傾斜面と前記下型傾斜面が前記長さ方向で同じ位置から延び出している端子付電線の製造装置である。

　本開示の端子付電線の製造装置によれば、上金型にベルマウスを形成するための上型傾斜面が設けられている。これにより、圧着により圧着片の端縁部が芯線に対して大きな圧力で食い込むことがなく、それによる断線の発生が有利に抑制乃至は防止されている。また、下金型の上型傾斜面と対応する部位には下型傾斜面が設けられており、上型傾斜面と下型傾斜面が長さ方向の同じ位置から延び出している。これにより、芯線や端子金具が圧着時に長さ方向へ伸びた際に、上金型に押圧されていないか上金型の押圧力が下金型よりも小さいことにより、端子金具にベントアップが発生する問題が有利に抑制される。また、端子金具にベントアップが生じた場合でも、ベント角度を小さくでき角度のばらつきも低減することができる。

（６）上記（５）において、前記長さ方向において、前記下型傾斜面の長さ寸法が、前記上型傾斜面の長さ寸法以上であることが好ましい。下型傾斜面が上型傾斜面よりも長くなることにより、上型傾斜面の押圧力が下型傾斜面の押圧力よりも弱くなることが回避され、端子金具のベントアップが一層確実に抑制されるからである。

（７）上記（５）または上記（６）において、前記長さ方向に対する前記下型傾斜面の傾斜角度が、前記長さ方向に対する前記上型傾斜面の傾斜角度以上であることが好ましい。芯線圧着部の長さ方向に対する下型傾斜面の傾斜角度が上型傾斜面の傾斜角度以上であることにより、圧着時のベルマウスの形成領域における下金型の押圧力が上金型の押圧力よりも大きくなることが防止されている。その結果、端子金具にベントアップが生じることが一層確実に抑制されるからである。

　本開示の端子付電線の製造方法は、
（８）上記（５）から上記（７）のいずれか１つに記載の端子付電線の製造装置を用い、前記下金型に前記端子金具の前記芯線圧着部を載置して、該芯線圧着部の前記底壁と該底壁から突出する前記圧着片の間に前記被覆電線の前記芯線露出部を配置する工程と、前記下金型と前記上金型との間で前記芯線圧着部を挟んで、前記圧着片と前記底壁を前記芯線露出部に圧着し、前記圧着片にベルマウスを形成し、前記底壁に屈曲部を形成する工程と、を含む端子付電線の製造方法である。

　本開示の端子付電線の製造方法によれば、上記（５）から上記（７）のいずれか１つに開示された製造装置を用いていることから、下金型と上金型の間で芯線圧着部を挟んで圧着した際に、圧着片にベルマウスが形成される。これにより、圧着により圧着片の端縁部が芯線に対して大きな圧力で食い込むことがなく、それによる断線の発生が有利に抑制乃至は防止されている。また、下金型には、上金型の上型傾斜面と対応する部位に下型傾斜面が設けられており、上型傾斜面と下型傾斜面が長さ方向の同じ位置から延び出している。これにより、芯線や端子金具が圧着時に長さ方向へ伸びた際に、上金型に押圧されていないか上金型の押圧力が下金型よりも小さいことにより、端子金具にベントアップが発生する問題が有利に抑制される。また、端子金具にベントアップが生じた場合でも、ベント角度を小さくでき角度のばらつきも低減することができる。

＜本開示の実施形態の詳細＞
　本開示の端子付電線、端子付電線の製造装置および製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

＜実施形態１＞
　以下、本開示の実施形態１について、図１から図５を参照しつつ説明する。図１から図２には、本開示の実施形態１に従う端子付電線１０が示されている。端子付電線１０は、被覆電線１２と、被覆電線１２の端末に露呈された芯線１４が圧着された端子金具１６と、を含んで構成されている。なお、以下では、Ｚ方向を上方、Ｙ方向を幅方向左方、Ｘ方向を長さ方向後方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。

＜被覆電線１２＞
　被覆電線１２は、芯線１４と、芯線１４を絶縁被覆１８で覆う被覆部２０と、被覆部２０の端部から芯線１４が露出した芯線露出部２２とを有している。なお、被覆電線１２は、導体である銅やアルミニウムその他の金属線からなる単芯線や撚線によって構成された芯線１４が、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆１８で覆われた構造とされている。

＜端子金具１６＞
　図３に示されているように、端子金具１６は、金属平板を所定の形状にプレス打ち抜きし屈曲加工して一体的に形成されている。ここで、金属平板を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の電気抵抗の低い金属を適宜に選択することができる。端子金具１６は、前方側に、図示しない相手方の端子に対して導通されて接続される接続部２４が構成されている。また、後方側には、被覆電線１２の芯線１４に圧着されることで被覆電線１２と接続される芯線圧着部２６と、被覆部２０の端部に対して圧着されることで被覆部２０の端部に固定される被覆圧着部２８と、が構成されている。

　接続部２４は、プレス打ち抜き後に矩形筒体形状に屈曲加工されて前後方向に向かって開口するように構成されており、図示しない相手方の端子が挿通されて接続されるようになっている。また、端子金具１６の芯線圧着部２６は、被覆電線１２の芯線露出部２２が載置される矩形平板状の底壁３０と、この底壁３０の幅方向の両側縁部から上方に向かって突出して芯線露出部２２に圧着される一対の矩形平板状の圧着片３２，３２を有している。そして、後述の圧着する工程において、底壁３０と一対の圧着片３２，３２を備えた芯線圧着部２６が塑性変形して、芯線１４を外周面から包み込むようにして圧着されるようになっている。さらに、被覆圧着部２８は、被覆部２０の端部が載置される矩形平板状の底壁３０と、この底壁３０の幅方向の両側縁部から上方に向かって突出して被覆部２０の端部に圧着される一対の矩形平板状の被覆部圧着片３４，３４を有している。なお、一対の被覆部圧着片３４，３４は、底壁３０の幅方向の両側縁部において長さ方向に異なる位置に設けられている。そして、後述の圧着する工程において、底壁３０と一対の被覆部圧着片３４，３４を備えた被覆圧着部２８が塑性変形して、被覆部２０の端部を外周面から包み込むようにして圧着されるようになっている。

＜端子付電線１０＞
　このようにして形成された端子付電線１０は、図１および図２に示すように、芯線圧着部２６の長さ方向（図１，２のＸ方向）となる、圧着片３２，３２の長さ方向の両端縁部において、斜め上方に向かって屈曲されたベルマウス３６ａ，３６ｂが構成されている。また、芯線圧着部２６の底壁３０には、芯線圧着部２６の長さ方向においてベルマウス３６ａ，３６ｂと同じ位置から斜め下方に向かって屈曲する屈曲部３８ａ，３８ｂが設けられている。本実施形態においては、ベルマウス３６ａ，３６ｂの芯線圧着部２６の長さ方向に対する傾斜角度α１，β１がそれぞれ、長さ方向で同じ位置に設けられた対応する芯線圧着部２６の長さ方向に対する底壁３０の屈曲部３８ａ，３８ｂの傾斜角度α２，β２と同じとされている（α１＝α２，β１＝β２）。加えて、ベルマウス３６ａ，３６ｂの長さ寸法ａ１，ｂ１に対して、対応する芯線圧着部２６の長さ方向における底壁３０の屈曲部３８ａ，３８ｂの長さ寸法ａ２，ｂ２がそれぞれ大きくされている（ａ１＜ａ２，ｂ１＜ｂ２）。

＜端子付電線１０の製造装置３９および製造方法＞
　次に、本実施形態としての端子付電線１０の製造装置３９について、図３から図５を用いて説明する。まず、金属平板をプレス加工および折り曲げ加工することにより、端子金具１６を形成する。端子金具１６は、図３に示されているように、前方側には、前後方向に開口する矩形筒形状の接続部２４が形成されている。後方側には、芯線露出部２２が載置される底壁３０と一対の圧着片３２，３２からなり前後方向に樋状に延びる芯線圧着部２６と、被覆部２０の端部が載置される底壁３０と一対の被覆部圧着片３４，３４からなり前後方向に樋状に延びる被覆圧着部２８が形成されている。図４に示すように、端子付電線１０の製造装置３９は、芯線圧着部２６用の下金型４０および上金型４２と、被覆圧着部２８用の下金型４４および上金型４６を備えており、いずれもブロック形状を有している。下金型４０，４４は、図示しない基台上の所定の位置に固定されており、上金型４２，４６は、下金型４０，４４の上方で対向する位置に配置され、エアシリンダや油圧シリンダ等からなるアクチュエータ４８により、下金型４０，４４に対して接近離隔移動可能に構成されている。本実施形態では、理解を容易とするため、アクチュエータ４８を仮想線で記載している。芯線圧着部２６用の下金型４０の上金型４２に対向する押圧面である上面５０の長さ方向（図４，５中、Ｘ方向）の両角部には、斜め下方に向かって傾斜する下型傾斜面５２ａ，５２ｂが設けられている。また、芯線圧着部２６用の上金型４２の押圧面である下面５４の長さ方向（図４，５中、Ｘ方向）の両角部には、斜め上方に傾斜する上型傾斜面５６ａ，５６ｂが設けられている。本実施形態１では、上型傾斜面５６ａ，５６ｂの長さ寸法Ａ１，Ｂ１に対して、対応する上面５０の長さ方向両側の下型傾斜面５２ａ，５２ｂの長さ寸法Ａ２，Ｂ２がそれぞれ大きくされている（Ａ１＜Ａ２，Ｂ１＜Ｂ２）。また、上金型４２の下面５４の長さ方向に対する上型傾斜面５６ａ，５６ｂの傾斜角度α１，β１が、下金型４０の上面５０の長さ方向に対する下型傾斜面５２ａ，５２ｂの傾斜角度α２，β２とそれぞれ同じとされている（α１＝α２，β１＝β２）。加えて、下金型４０の上面５０の上型傾斜面５６ａ，５６ｂと対向する部位に下型傾斜面５２ａ，５２ｂが設けられ、上型傾斜面５６ａ，５６ｂと下型傾斜面５２ａ，５２ｂがそれぞれ長さ方向で同じ位置から延び出して構成されている。

　次に、図４および図５を用いて、端子付電線１０の製造装置３９を用いた端子付電線１０の製造方法について説明する。まず、図４に示されているように、芯線圧着部２６用の下金型４０の上面５０に、端子金具１６の芯線圧着部２６の底壁３０を載置し、被覆圧着部２８用の下金型４４の上面に、端子金具１６の被覆圧着部２８の底壁３０を配置する。さらに、芯線圧着部２６の底壁３０とこの底壁３０から突出する一対の圧着片３２，３２の間に被覆電線１２の芯線露出部２２を配置し、被覆圧着部２８の底壁３０とこの底壁３０から突出する一対の被覆部圧着片３４，３４の間に被覆電線１２の端部の被覆部２０を配置する。続いて、図５に示されているように、端子金具１６の芯線圧着部２６が載置された芯線圧着部２６用の下金型４０の上面５０に対して、芯線圧着部２６用の上金型４２を重ねてプレス加工を施す。すなわち、芯線圧着部２６の底壁３０の幅方向の両端縁部から突出する一対の圧着片３２，３２を底壁３０に載置された被覆電線１２の芯線露出部２２に対して上方から圧着する。これにより、底壁３０と一対の圧着片３２，３２を備えた芯線圧着部２６が塑性変形して、芯線１４を外周面から包み込むようにして圧着されて、芯線圧着部２６を圧着する工程が実行される。この工程は、下金型４０と上金型４２との間で端子金具１６の芯線圧着部２６を挟んで、芯線圧着部２６の底壁３０と一対の圧着片３２，３２を芯線露出部２２に対して圧着する工程である。この工程により、一対の圧着片３２，３２にはベルマウス３６ａ，３６ｂが形成され、底壁３０には屈曲部３８ａ，３８ｂが形成される。同時に、端子金具１６の被覆圧着部２８が載置された被覆圧着部２８用の下金型４４の上面に対して、被覆圧着部２８用の上金型４６を重ねてプレス加工を施す。これにより、底壁３０と一対の被覆部圧着片３４，３４を備えた被覆圧着部２８が塑性変形して、芯線１４を外周面から包み込むようにして圧着されて、被覆圧着部２８を圧着する工程が実行される。このようにして、本実施形態の端子付電線１０が完成される。

　このような構造とされた本開示の端子付電線１０によれば、端子金具１６の芯線圧着部２６において、長さ方向の両端縁部が斜め上方に向かって屈曲されてベルマウス３６ａ，３６ｂを構成している。これにより、図４および図５に示されているように、圧着により圧着片３２の端縁部が芯線１４に対して大きな圧力で食い込むことがなくなる。それゆえ、大きな圧力で食い込むことによる断線の発生が有利に抑制乃至は防止されている。また、端子金具１６の芯線圧着部２６の底壁３０は、ベルマウス３６ａ，３６ｂと対応する位置に斜め下方に向かって屈曲する屈曲部３８ａ，３８ｂを有している。これにより、圧着時において、ベルマウス３６ａ，３６ｂと屈曲部３８ａ，３８ｂ間では、下金型４０の押圧力が上金型４２の押圧力よりも大きくなることが防止されている。それゆえ、そこに配設された芯線露出部２２の芯線１４や端子金具１６の芯線圧着部２６の底壁３０が芯線圧着部２６の長さ方向の両端縁部で圧着時に長さ方向へ伸びつつ上方に屈曲する、いわゆるベントアップの発生が有利に抑制される。また、仮に端子金具１６にベントアップが生じたとしても、ベントアップの角度を小さくでき、その角度のばらつきも低減することができる。

　加えて、本実施形態では、芯線圧着部２６の長さ方向で対応する位置に設けられたベルマウス３６ａ，３６ｂの長さ寸法ａ１，ｂ１に対して、芯線圧着部２６の底壁３０の屈曲部３８ａ，３８ｂの長さ寸法ａ２，ｂ２がそれぞれ大きくされている（ａ１＜ａ２，ｂ１＜ｂ２）。すなわち製造装置３９においては、芯線圧着部２６用の上金型４２の上型傾斜面５６ａ，５６ｂと下金型４０の下型傾斜面５２ａ，５２ｂにおいて、上型傾斜面５６ａ，５６ｂの長さ寸法Ａ１，Ｂ１に対して、下型傾斜面５２ａ，５２ｂの長さ寸法Ａ２，Ｂ２がそれぞれ大きくされている（Ａ１＜Ａ２，Ｂ１＜Ｂ２）。その結果、圧着時に上金型４２の押圧力が下金型４０よりも弱くなることにより、端子金具１６にベントアップが生じる不具合が一層確実に抑制される。また、ベルマウス３６ａ，３６ｂの傾斜角度α１，β１がそれぞれ、対応する長さ方向位置に設けられた芯線圧着部２６の長さ方向に対する屈曲部３８ａ，３８ｂの傾斜角度α２，β２と同じとされている（α１＝α２，β１＝β２）。すなわち、製造装置３９では、芯線圧着部２６用の上金型４２の上型傾斜面５６ａ，５６ｂと下金型４０の下型傾斜面５２ａ，５２ｂにおいて、上型傾斜面５６ａ，５６ｂの傾斜角度α１，β１と、下型傾斜面５２ａ，５２ｂの傾斜角度α２，β２がそれぞれ同じとされている（α１＝α２，β１＝β２）。これにより、圧着時のベルマウス３６ａ，３６ｂの形成領域における下金型４０の押圧力が上金型４２の押圧力よりも大きくなることが防止されている。それゆえ、端子金具１６のベルマウス３６ａ，３６ｂによるベントアップの発生が一層確実に抑制される。

＜他の実施形態＞
　本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。

（１）上記実施形態では、ベルマウス３６ａ，３６ｂは、芯線圧着部２６の圧着片３２の長さ方向の両端縁部に設けられていたが、これに限定されず、ベルマウスは、圧着片３２の長さ方向の一方の端縁部のみに設けられていてもよい。また、芯線圧着部２６の圧着片３２の長さ方向の両端縁部にベルマウス３６ａ，３６ｂが設けられている場合において、芯線圧着部２６の底壁３０に、ベルマウスに対応する１つの屈曲部が設けられている態様も本発明に含まれる。

（２）また、上記実施形態では、芯線圧着部２６の長さ方向に対するベルマウス３６ａ，３６ｂの傾斜角度α１，β１がそれぞれ、芯線圧着部２６の長さ方向に対する屈曲部３８ａ，３８ｂの傾斜角度α２，β２と同じとされていたが、これに限定されない。長さ方向に対するベルマウス３６ａ，３６ｂの傾斜角度α１，β１に対して、長さ方向に対する芯線圧着部２６の屈曲部３８ａ，３８ｂの傾斜角度α２，β２がそれぞれ小さいものや大きいものも本発明に含まれるが、好ましくは、ベルマウス３６ａ，３６ｂの傾斜角度α１，β１に対して、芯線圧着部２６の屈曲部３８ａ，３８ｂの傾斜角度α２，β２はそれぞれ同一かそれよりも大きくされる。これにより、圧着時のベルマウス３６ａ，３６ｂの形成領域における下金型４０の押圧力の増大が制限され、端子金具１６のベルマウス３６ａ，３６ｂ形成によりベントアップが生じることが一層確実に抑制される。

（３）加えて、上記実施形態では、ベルマウス３６ａ，３６ｂの長さ寸法ａ１，ｂ１に対して、対応する底壁３０の屈曲部３８ａ，３８ｂの長さ寸法ａ２，ｂ２がそれぞれ大きくされていたが、これに限定されない。ベルマウス３６ａ，３６ｂの長さ寸法ａ１，ｂ１がそれぞれ、屈曲部３８ａ，３８ｂの長さ寸法ａ２，ｂ２と同じとされていてもよい。この場合でも、ベルマウス３６ａ，３６ｂと屈曲部３８ａ，３８ｂ間では、下金型４０の押圧力が上金型４２の押圧力よりも大きくなることが防止されていることから、そこに配設された芯線１４や底壁３０により端子金具１６にベントアップが生じる不具合が抑制される。また、同様の理由から、上型傾斜面５６ａ，５６ｂの長さ寸法Ａ１，Ｂ１がそれぞれ、下金型４０の下型傾斜面５２ａ，５２ｂの長さ寸法Ａ２，Ｂ２と同じとされていてもよい。

１０　端子付電線
１２　被覆電線
１４　芯線
１６　端子金具
１８　絶縁被覆
２０　被覆部
２２　芯線露出部
２４　接続部
２６　芯線圧着部
２８　被覆圧着部
３０　底壁
３２　圧着片
３４　被覆部圧着片
３６ａ，３６ｂ　ベルマウス
３８ａ，３８ｂ　屈曲部
３９　製造装置
４０　下金型（芯線圧着部用）
４２　上金型（芯線圧着部用）
４４　下金型（被覆圧着部用）
４６　上金型（被覆圧着部用）
４８　アクチュエータ
５０　上面（押圧面）
５２ａ，５２ｂ　下型傾斜面
５４　下面（押圧面）
５６ａ，５６ｂ　上型傾斜面

Claims (8)

1. 　芯線と、前記芯線を覆う被覆部と、前記被覆部の端部から前記芯線が露出した芯線露出部とを有する被覆電線と、
   　前記芯線露出部が載置される底壁と、該底壁から突出して前記芯線露出部に圧着される圧着片を含む芯線圧着部を有する端子金具とを備え、
   　前記圧着片の端縁部が、斜め上方に向かって屈曲されてベルマウスを構成し、
   　前記底壁が、前記芯線圧着部の長さ方向における前記ベルマウスと同じ位置から、斜め下方に向かって屈曲する屈曲部を有している端子付電線。
2. 　前記長さ方向において、前記底壁の前記屈曲部の長さ寸法が、前記ベルマウスの長さ寸法以上である請求項１に記載の端子付電線。
3. 　前記長さ方向に対する前記底壁の前記屈曲部の傾斜角度が、前記長さ方向に対する前記ベルマウスの傾斜角度以上である請求項１または請求項２に記載の端子付電線。
4. 　前記芯線が単芯線である請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の端子付電線。
5. 　被覆電線の芯線露出部に端子金具の芯線圧着部が圧着された端子付電線の製造装置であって、
   　前記芯線圧着部の底壁が載置される下金型と、
   　前記芯線圧着部の前記底壁から突出する圧着片を前記底壁に載置された前記芯線露出部に上方から圧着する上金型とを備え、
   　前記芯線圧着部の長さ方向となる前記上金型の押圧面の長さ方向の少なくとも一方の角部に、斜め上方に傾斜する上型傾斜面が設けられている一方、
   　前記下金型の押圧面の前記上型傾斜面と対向する部位に、斜め下方に傾斜する下型傾斜面が設けられており、
   　前記上型傾斜面と前記下型傾斜面が前記長さ方向で同じ位置から延び出している
   端子付電線の製造装置。
6. 　前記長さ方向において、前記下型傾斜面の長さ寸法が、前記上型傾斜面の長さ寸法以上である請求項５に記載の端子付電線の製造装置。
7. 　前記長さ方向に対する前記下型傾斜面の傾斜角度が、前記長さ方向に対する前記上型傾斜面の傾斜角度以上である請求項５または請求項６に記載の端子付電線の製造装置。
8. 　請求項５から請求項７のいずれか１項に記載の端子付電線の製造装置を用い、
   　前記下金型に前記端子金具の前記芯線圧着部を載置して、該芯線圧着部の前記底壁と該底壁から突出する前記圧着片の間に前記被覆電線の前記芯線露出部を配置する工程と、
   　前記下金型と前記上金型との間で前記芯線圧着部を挟んで、前記圧着片と前記底壁を前記芯線露出部に圧着し、前記圧着片にベルマウスを形成し、前記底壁に屈曲部を形成する工程と、
   を含む端子付電線の製造方法。

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